説明

LED点灯回路

【課題】商用電源等からの入力電圧が無くなった場合に出力電圧をすみやかに降下させることで、安全に取り扱うことができるLED点灯回路を提供する。
【解決手段】入力電圧を所望の直流電圧に変換してLEDに供給するLED点灯回路であって、少なくとも一次巻線および二次巻線を有するトランスと、スイッチング素子と、制御器と、出力コンデンサと、入力電圧検出器と、放電器と、を備え、前記入力電圧検出器は、前記入力電圧を検出し、検出された前記入力電圧の高さに応じた放電信号を前記放電器に出力し、前記放電器は、前記出力コンデンサの両端に接続され、前記入力電圧検出器から出力される前記放電信号に応じて前記出力コンデンサに蓄えられた電荷を放電することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源としてLED(Light Emitting Diode)を点灯させる絶縁型のLED点灯回路に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDは、家庭用等の一般的な照明装置の光源にも近年利用されるようになり、直管型、環状型等の蛍光灯に対応する形態ばかりでなく、白熱電球に対応する電球型の照明装置が製造されるようになった。また、一般的に人が比較的容易に手を触れることができる用途の照明装置においては、感電防止等の安全性を備えることが要求されるため、LED点灯回路は、商用電源と負荷(LED)との間を電気的に絶縁するトランスを含んで構成される。
【0003】
特許文献1には、上記のようにトランスを含む絶縁型のLED点灯回路が開示される。詳細には、図3に示すように、特許文献1に記載される従来のLED照明装置300は、LED駆動装置201とLED202とを有する。LED駆動装置201は、入力コンデンサ211と、トランス212と、MOSFET213と、制御器219と、出力コンデンサ220とを有する。また、LED駆動装置201は、誤差増幅器215と、ダイオード216と、フォトカプラ217とを有する。
【0004】
従来のLED照明装置300の誤差増幅器215は、電流検出抵抗218に発生する電圧と基準電圧源の電圧値とに基づいて演算を行い、フォトカプラ217を介して制御器219に演算結果をフィードバックすることで、LED駆動装置201がLED202に流れる電流を一定に制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−092997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のLED照明装置300を取り外すとき等、LED照明装置300が商用電源から切り離され入力電圧が無くなった場合、出力コンデンサ220に蓄えられた電荷が放電されにくく、出力電圧が0V付近まで降下せずLED202に触れた人や物に放電する可能性があった。このような可能性は、入力電圧がバッテリ等の直流電源から供給される場合においても同様である。
【0007】
本発明は、商用電源等からの入力電圧が無くなった場合に出力電圧をすみやかに降下させることで、安全に取り扱うことができるLED点灯回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、入力電圧を所望の直流電圧に変換してLEDに供給するLED点灯回路であって、少なくとも一次巻線および二次巻線を有するトランスと、スイッチング素子と、制御器と、出力コンデンサと、入力電圧検出器と、放電器と、を備え、前記トランスは、前記一次巻線の一端に前記入力電圧を受け、前記二次巻線を介して前記LEDに前記直流電圧を供給し、前記スイッチング素子は、前記一次巻線の他端に接続され、前記制御器から出力される制御信号に応じてスイッチング動作し、前記出力コンデンサは、前記二次巻線の両端に接続され、前記入力電圧検出器は、前記入力電圧を検出し、検出された前記入力電圧の高さに応じた放電信号を前記放電器に出力し、前記放電器は、前記出力コンデンサの両端に接続され、前記入力電圧検出器から出力される前記放電信号に応じて前記出力コンデンサに蓄えられた電荷を放電することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、商用電源等からの入力電圧が無くなった場合に出力電圧をすみやかに降下させることで、安全に取り扱うことができるLED点灯回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るLED点灯回路の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施形態に係るLED点灯回路の詳細な構成を示す回路図である。
【図3】従来のLED照明装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。又、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るLED点灯回路の構成を示す回路図である。本実施形態に係るLED点灯回路1は、少なくとも一次巻線W1および二次巻線W2を有するトランス11と、スイッチング素子12と、制御器13と、出力コンデンサ14と、入力電圧検出器15と、放電器16と、を備える。
【0013】
LED点灯回路1は、入力電圧を所望の直流電圧に変換して出力する絶縁型の電力変換回路を含んで構成される。LED2は、少なくとも1つのLED素子を含んで構成され、複数のLED素子を含む直列接続パッケージおよび並列接続パッケージあるいはこれらの組合せにより構成される。入力電源3は、直流入力電圧を出力する電源からなり、バッテリ等の直流電源より構成されても良く、商用電源等の交流電源と整流平滑回路との組合せより構成されても良い。LED点灯回路1とLED2と入力電源3とは、それぞれ互いに接続され、LED点灯回路1とLED2とは、本実施形態に係るLED照明装置100を構成する。
【0014】
図1においてトランス11の一次巻線W1および二次巻線W2に示す●は、トランスの極性を示す。二次巻線W2がフライバック出力の巻線となるように、一次巻線W1と二次巻線W2とは互いに逆極性に巻き回される。トランス11の一次巻線W1は入力電源3に接続され、トランス11の二次巻線W2はLED2が接続される。トランス11は、一次巻線W1の一端(正極側)に入力電源3から入力電圧を受け、二次巻線W2の両端に接続されるLED2に直流電圧を供給する。
【0015】
スイッチング素子12は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)からなる。スイッチング素子12のドレインは、トランス11の一次巻線W1の他端(負極側)に接続され、ソースは一次側接地に接続され、ゲートは制御器13に接続される。スイッチング素子12は、制御器13から出力されるハイレベルまたはローレベルの制御信号に応じてスイッチング動作(オンオフ動作)し、入力電源3から一次巻線W1に流れる電流を導通または遮断させる。スイッチング素子12のスイッチング動作により、交流電圧が二次巻線W2に発生する。
【0016】
出力コンデンサ14は、電解コンデンサまたはセラミックコンデンサからなり、二次巻線W2の両端に接続され、LED2と等価的に並列接続される。出力コンデンサ14の一端はダイオード17を介して二次巻線W2の一端(負極側)に接続され、出力コンデンサ14の他端は二次巻線W2の他端(正極側)および二次側接地に接続される。出力コンデンサ14とダイオード17とは、整流平滑回路を構成し、LED2に供給するために二次巻線W2に発生する交流電圧を直流電圧に変換する。
【0017】
入力電圧検出器15は、放電器16に接続され、入力電源3から出力される入力電圧を検出し、入力電圧の高低に応じた放電信号を放電器16に出力する。入力電圧検出器15は、少なくともLED点灯回路1が入力電源3から切り離され入力電圧が無くなったことを検出し、入力電圧が無くなったときに放電器16に放電動作をさせられるように構成される。
【0018】
放電器16は、2つの端子間を導通および遮断させることができる周知の開閉器からなり、出力コンデンサ14の両端に接続される。放電器16は、入力電圧検出器15から出力される放電信号に応じて動作し、LED点灯回路1が入力電源3から切り離され入力電圧が無くなった場合に出力コンデンサ14に蓄えられた電荷を放電する。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係るLED点灯回路の詳細な構成を示す回路図である。本実施形態に係るLED点灯回路1は、さらにフィードバック回路18と補助電源19とを備える。LED2は、複数のLED素子が直列接続されたLEDストリングからなり、入力電源3は、ダイオードブリッジ32およびコンデンサ33を含む整流平滑回路と商用電源31とからなる。
【0020】
本実施形態において、トランス11はさらに三次巻線W3と補助巻線Waとを有し、一次巻線W1の一端(正極側)は、整流平滑回路の出力端であるコンデンサ33の一端に接続される。三次巻線W3は上記の二次巻線W2と異なるフォワード出力の巻線であり、補助巻線はフライバック出力の巻線である。三次巻線W3の一端(負極側)は二次側接地に接続され、他端(正極側)は入力電圧検出器15のダイオード151のアノードに接続される。補助巻線Waの一端(負極側)は、ダイオードとコンデンサとからなる整流平滑回路を介して制御器13に接続され、他端(正極側)は一次側接地に接続される。補助巻線Waと整流平滑回路とは、制御器13に駆動電力を供給する補助電源19を構成する。
【0021】
本実施形態において、制御器13はPWM(Pulse Width Modulation)制御方式の制御回路であり、PWMコンパレータ131と三角波発生器132と分圧抵抗133、134とドライバ135とスタート回路136とレギュレータ137とを備える。PWMコンパレータ131は、後述するフィードバック信号と三角波信号とを比較して、出力端子からドライバ135を介してスイッチング素子12を制御するためのPWM信号を出力する。三角波発生器132は、PWMコンパレータの反転入力端子に接続され、三角波信号を出力する。分圧抵抗133の一端はレギュレータに接続され、分圧抵抗133の他端と分圧抵抗134の一端とは互いに接続され、分圧抵抗134の他端は一次側接地に接続される。分圧抵抗133、134の接続点は、PWMコンパレータ131の非反転入力端子と制御器13の外部に接続されるフォトトランジスタ185とに接続され、LED2に流れる電流に応じたフィードバック信号を出力する。スタート回路136は、抵抗を介してコンデンサ33の一端と補助電源19とレギュレータ137とに接続され、レギュレータ137は制御器13の各部に駆動電力を供給する。
【0022】
本実施形態に係るLED点灯回路1における入力電圧検出器15は、ダイオード151とコンデンサ152と分圧抵抗153、154とトランジスタ155とを備える。ダイオード151のアノードは三次巻線W3の他端に接続され、カソードはコンデンサ152の一端とトランジスタ155のベースとに接続される。コンデンサ152の他端は二次側接地に接続される。トランジスタ155はnpnトランジスタからなり、コレクタは抵抗を介して出力コンデンサ14の一端に接続され、エミッタは二次側接地に接続される。またトランジスタ155のベースには、コンデンサ152の充電電圧が分圧抵抗153、154で分圧されて印加される。なお、本実施形態において、トランス11の三次巻線W3を入力電圧検出器15の一部とみなしても良い。
【0023】
本実施形態に係るLED点灯回路1における放電器16は、npnトランジスタからなり、コレクタは出力コンデンサ14の一端に接続され、エミッタは二次側接地に接続され、ベースはトランジスタ155のコレクタに接続される。すなわち、入力電圧検出器15の放電信号はトランジスタ155のコレクタから放電器16に出力される。
【0024】
フィードバック回路18は、誤差増幅器181と検出抵抗182とツェナーダイオード183とフォトダイオード184とフォトトランジスタ185とを備える。誤差増幅器181はLED2に流れる電流と基準値との誤差を求め、フォトダイオード184に出力する。検出抵抗182の一端はLED2と直列に接続され且つ誤差増幅器181の反転入力端子に接続され、他端は二次側接地に接続される。検出的高182は、LED2に流れる電流に基づく電圧信号(検出信号)を出力する。ツェナーダイオード183のアノードは二次側接地に接続され、カソードは抵抗を介して出力コンデンサ14の一端と誤差増幅器181の非反転入力端子とに接続される。ツェナーダイオード183は、出力コンデンサ14の電圧をクランプすることで基準値を出力する基準電圧源として機能する。フォトダイオード184のアノードは出力コンデンサ14の一端に接続され、カソードは誤差増幅器181の出力端子に接続される。フォトトランジスタ185のコレクタは制御器13に接続され、エミッタは一次側接地に接続される。フォトダイオード184とフォトトランジスタ185とはフォトカプラを構成する。フィードバック回路18は、LED2に流れる電流と基準値との誤差に基づくフィードバック信号を、フォトカプラを介して制御器13に出力する。
【0025】
本実施形態に係るLED点灯回路1における入力電圧検出器15および放電器16の動作について説明する。まず、入力電源3からLED点灯回路1に電力が供給される場合、フォワード出力巻線である三次巻線W3には入力電圧に基づくフォワード電圧が発生する。フォワード電圧は、ダイオード151およびコンデンサ152により整流平滑され、入力電圧の高低に応じた直流信号に変換される。入力電圧に基づく直流信号は、分圧抵抗153、154により分圧され、トランジスタ155のベースに供給される。そのため、トランジスタ155のコレクタ・エミッタ間には電流が流れ、放電器16はオフする。
【0026】
次に、入力電源3からの入力電圧が無く、LED点灯回路1に電力が供給されない場合、フォワード電圧に基づく直流信号のレベルが低くなり、トランジスタ155のコレクタ電位が上昇するため、放電器16がオンする。出力コンデンサ14に蓄えられた電荷は、放電器16の導通により急速に放電されるため、LED点灯回路1の出力電圧はすみやかにベース・エミッタ電圧(約0.6V)付近まで降下する。
【0027】
本実施形態に係るLED点灯回路1によれば、以下の条件で出力コンデンサ14が放電され始める。ただし、以下の式において、ダイオードブリッジ32による電圧降下をVF1、ダイオード151による電圧降下をVF2、トランジスタ155によるベース・エミッタ電圧降下をVBE、分圧抵抗153、154の抵抗値をそれぞれR1、R2、一次巻線W1の巻数をnW1、三次巻線W3の巻数をnW3とする。まず、入力コンデンサ14として容量が比較的大きい電解コンデンサ等を用いる場合、交流入力電圧の実効値が(VF1+(VF2+VBE×(R1+R2)/R2)×nW1/nW3以下であることが条件となる。次に、入力コンデンサとして容量が比較的小さいフィルムコンデンサ等を用いる場合、交流入力電圧の瞬時値がVF1+VBE×(R1+R2)/R2×nW1/nW3以下であることが条件となる。
【0028】
本実施形態に係るLED点灯回路によれば、入力電圧が所定値以下になったことを検出し、出力コンデンサに蓄えられた電荷を急速に放電することができる。これにより、LED照明装置の取り外し作業等において入力電源からLED照明装置に供給されていた入力電圧が無くなった場合に、周囲の人や物に放電してしまう可能性を低減することができる。従って、作業者が安全に取り扱うことができるLED点灯回路ならびにLED照明装置を提供することができる。
【0029】
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。即ち、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0030】
1 LED点灯回路
2 LED
3 入力電源
11 トランス
12 スイッチング素子
13 制御器
14 出力コンデンサ
15 入力電圧検出器
16 放電器
17 ダイオード
18 フィードバック回路
19 補助電源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を所望の直流電圧に変換してLEDに供給するLED点灯回路であって、
少なくとも一次巻線および二次巻線を有するトランスと、スイッチング素子と、制御器と、出力コンデンサと、入力電圧検出器と、放電器と、を備え、
前記トランスは、前記一次巻線の一端に前記入力電圧を受け、前記二次巻線を介して前記LEDに前記直流電圧を供給し、
前記スイッチング素子は、前記一次巻線の他端に接続され、前記制御器から出力される制御信号に応じてスイッチング動作し、
前記出力コンデンサは、前記二次巻線の両端に接続され、
前記入力電圧検出器は、前記入力電圧を検出し、検出された前記入力電圧の高さに応じた放電信号を前記放電器に出力し、
前記放電器は、前記出力コンデンサの両端に接続され、前記入力電圧検出器から出力される前記放電信号に応じて前記出力コンデンサに蓄えられた電荷を放電することを特徴とするLED点灯回路。
【請求項2】
前記トランスは少なくとも三次巻線を有し、前記三次巻線はフォワード出力巻線であり、前記入力電圧検出器は前記三次巻線を介して前記入力電圧を検出することを特徴とする請求項1に記載のLED点灯回路。
【請求項3】
前記入力電圧検出器は、前記入力電圧が所定値以下になったことを検出し、前記放電器を動作させ、前記出力コンデンサに蓄えられた電荷を放電させることを特徴とする請求項1または2に記載のLED点灯回路。
【請求項4】
前記二次巻線はフライバック出力巻線であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のLED点灯回路。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−69426(P2013−69426A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205201(P2011−205201)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】