説明

LED照明駆動用電源回路

【課題】力率改善回路の効率を高めたLED照明駆動用電源回路を提供する。
【解決手段】電源回路115は、PFC回路103と、PFC回路103に接続された整流平滑回路104とを備え、PFC回路103は、チョークコイル13と、トランジスタ19とを含み、整流平滑回路104は、整流用ダイオード14と、サーミスタ15とを含み、PFC回路103を電流連続モードで動作させる制御回路105を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を備えた照明装置に好適に用いられる電源回路に関するものであり、特に、電源回路に含まれるPFC(Power Factor Correction:力率改善)回路(以下、PFC回路とも呼ぶ)を構成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明器具の光源として、熱電球や蛍光灯の代わりにLEDを用いることが研究され、商品化もなされている。しかし、LEDを用いた照明器具では、様々な損失(LEDの発熱や電源回路の損失など)が発生するため、全体的な効率が低下する。そこで、効率を向上させるために、電源回路にPFC回路を設けて、電源回路の力率を改善する方法が提案されている。
【0003】
力率とは、皮相電力に対する実電力(実効電力)の比率である。日本国内では、約100Vの交流電力が60Hzまたは50Hzの周波数で供給される。交流電力は、電気的負荷に有効に働く実電力と、電気的負荷でエネルギーが消費されずに交流サイクルで電源に戻される無効電力との両方において消費される。実電力と無効電力とのべクトル和が皮相電力である。そして、皮相電力に対する実電力の比が力率であり、0から1の間の数値となる。無効電力の存在によって、実電力は皮相電力よりも小さくなり、そのため電気的負荷の力率は1未満の数値となる。
【0004】
商用電源(交流電力)を使用したLED照明用の電源回路としては、例えば、商用電源を全波整流し、整流および平滑して直流電圧に変換した後、該直流電圧をスイッチングレギュレータなどで一定の直流電圧に変換し出力するものがある。これにより、LEDを、一定の直流電圧(電流)で点灯することができる。このような電源回路において、PFC回路は、全波整流を行う整流部(例えばブリッジダイオードにより構成)と、整流および平滑する整流平滑部(例えばショットキーバリアダイオードおよび電解コンデンサにより構成)との間に設けられる。また、PFC回路を備えた電源回路には、PFC回路を制御する制御回路が備えられる。
【0005】
PFC回路は、整流部の出力電圧を昇圧し、このときに整流平滑部に流れ込む電流を調節することで、LED(電気的負荷)の入力電流の電流波形を、力率の高い波形である正弦波に近づける。この動作は、制御回路によって、所定の動作モードに従うように制御されている。動作モードとしては、CRM(Current Resonant Mode:電流臨界モード)や、CCM(Current Continuity Mode:電流連続モード)などがある。例えば、特許文献2には、CRMを適用した構成が記載されており、PFC回路をCRMで動作させることによって、CRMの利点を得つつ、力率を改善することが可能となっている。また、力率の改善により高調波電流の発生を抑制できるため、ノイズを低減することができる。
【0006】
ここで、近年、エコロジーを重視する考えが広まり、省エネルギーを意識した製品を各企業が目指している。このため、PFC回路を備えた電源回路では、さらなる効率の改善およびノイズの低減を実現し、さらには低コスト化も実現することが必要となっている。
【0007】
また、整流平滑部の整流用ダイオードに、従来用いられていたSi(シリコン)からなるショットキーバリアダイオードに代えて、特許文献1に記載のように、SiC(シリコンカーバイド)(炭化ケイ素ともいう)からなるショットキーバリアダイオードを用いることが適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2003−522417号公報(2003年7月22日公開)
【特許文献2】特表2010−541256号公報(2010年12月24日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年エコロジーを重視する考え、省エネルギーを意識した製品を各企業が目指しているため、LED照明駆動用の電源回路の課題としては効率の改善と、雑音の低減、低コスト化が課題となっている。このため本発明に使用する回路構成としては、PFC回路には動作モードをCCM(Continuous Current Mode :電流連続モード)で使用し、整流ダイオードにはSiCダイオードを用い、突入電流防止用に小型パワーサーミスタを用いて実現している。
【0010】
従来のCRM(Critical Current Mode:臨界モード)PFC回路において、整流用ショットキーバリアダイオードにSiダイオードを使用した場合には、チョークコイル、および、MOSFETに流れるピーク電流が大きくなって、MOSFETのON時の損失が大きくなり、かつ、突入電流防止用パワーサーミスタに流れる電流のピーク値も大きくなる。このため、大型のパワーサーミスタが必要となり、回路実装面積も大きくなるという問題があった。
【0011】
本発明は、PFC回路に設けられたチョークコイルおよびMOSFETに流れるピーク電流を低減して効率を高め、突入電流防止用パワーサーミスタを小型化して、高効率化小型化したLED照明駆動用電源回路を実現する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るLED照明駆動用電源回路は、ブリッジダイオードに接続された力率改善回路と、前記力率改善回路に接続された整流平滑回路とを備え、前記力率改善回路は、一端が前記ブリッジダイオードに接続され、他端が前記整流平滑回路に接続されたチョークコイルと、前記チョークコイルの前記整流平滑回路側にドレインが接続されたトランジスタとを含み、前記整流平滑回路は、前記チョークコイルに接続された整流用ショットキーバリアダイオードを含み、前記ショットキーバリアダイオードに接続された突入電流防止用パワーサーミスタと、前記力率改善回路を電流連続モードで動作させる制御回路とを設けたことを特徴とする。
【0013】
この特徴により、チョークコイルに流れる電流が連続である電流連続モードで力率改善回路を動作させるので、チョークコイルの電流はトランジスタがオフの期間もゼロにならず連続して流れている。このため、チョークコイルおよびMOSFETに流れるピーク電流の値が低減されるので、チョークコイルの銅損が少なく、力率改善回路の効率を高めることができる。また、突入電流防止用パワーサーミスタを小型化することができる。その結果、高効率化小型化したLED照明駆動用電源回路を実現することができる。
【0014】
本発明に係るLED照明駆動用電源回路では、前記制御回路は、前記整流平滑回路からの出力信号に基づく信号と基準電圧信号との差分信号を出力する第1増幅器と、前記第1増幅器から出力された差分信号と前記ブリッジダイオードからの出力信号に基づく基準正弦波信号とを乗算した信号を供給する乗算器とを含むことが好ましい。
【0015】
上記構成により、電流連続モードで力率改善回路を動作させる制御回路を簡単に構成することができる。
【0016】
本発明に係るLED照明駆動用電源回路では、前記制御回路は、前記乗算器から供給された信号と前記トランジスタのソース電流に基づく信号とを比較した信号を出力する第2増幅器と、前記第2増幅器から出力された信号と発振器から出力された三角波と比較してパルス信号を出力するPWMコンパレータとを含むことが好ましい。
【0017】
上記構成により、電流連続モードで力率改善回路を動作させる制御回路を簡単に構成することができる。
【0018】
本発明に係るLED照明駆動用電源回路では、前記整流平滑回路に接続された絶縁方式のDC−DCコンバータをさらに備えることが好ましい。
【0019】
上記構成により、DC−DCコンバータが絶縁方式で構成されるので、1次側回路と2次側回路とを分離することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るLED照明駆動用電源回路は、前記力率改善回路を電流連続モードで動作させる制御回路を設けたので、高効率化小型化したLED照明駆動用電源回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係る電源回路の構成を示す回路図である。
【図2】比較例に係る電源回路の構成を示す回路図である。
【図3】実施の形態に係るLED照明システムの構成を示すブロック図である。
【図4】上記LED照明システムのLED照明回路に設けられたDC−DCコンバータの構成を説明するための図である。
【図5】実施の形態に係る電源回路に設けられたPFC制御部の構成を説明するための図である。
【図6】上記電源回路の動作を説明するための波形図である。
【図7】従来例に係る電源回路に設けられたPFC制御部の構成を説明するための図である。
【図8】上記電源回路の動作を説明するための波形図である。
【図9】上記電源回路に設けられた力率改善回路のチョークコイルへの電流波形を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0023】
本実施の形態では、LEDを駆動するために直流電圧(電流)を供給する電源回路であって、特に商用電源(交流電源)を利用したPFC機能付きの電源回路について説明する。まず、電源回路を含む全体のLED照明システムについて説明し、その後、電源回路について詳細に説明する。
【0024】
(LED照明システムの構成)
図3は、LED照明システム100の一構成例を示すブロック図である。図3に示すようにLED照明システム100は、電気的負荷としてのLED群110と、LED群110に電力を供給するLED照明回路120と、LED照明回路120に制御信号を送信することができる外部機器130とを備えている。LED群110およびLED照明回路120は、照明装置を構成している。
【0025】
LED群110は、多数のLEDを含んでおり、全体的またはグループ毎に、直列接続、並列接続、または直並列接続されている。LED群110は、PDM調光方式およびDC調光方式に対応可能に構成されている。また、各LEDは、高演色性の白色光(昼白色〜電球色)を発することができるように構成されている。
【0026】
LED照明回路120は、電源回路115、DC/DCコンバータ106、LEDドライバ107a・107b、調光切替回路108、およびマイコン109を備えている。
【0027】
電源回路115は、PFC機能付きの電源回路である。電源回路115は、商用電源(例えば、AC100V)からノイズ(高調波電流)を低減するためのラインフィルタ101と、ラインフィルタ101を通過した交流電圧を整流する整流回路102と、整流回路102で整流された電圧を整流および平滑する整流平滑回路104と、整流回路102の出力電圧を昇圧し、このときに整流平滑回路104に流れ込む電流を調節することで力率を改善するPFC回路103(力率改善回路)と、PFC回路103を制御するPFC制御部105(制御回路)とにより構成されている。PFC制御部105としては、定電流回路IC(例えば、STマイクロ製のL6562A)が用いられる。この構成により、電源回路115は、商用電源から、高い力率で低ノイズの直流電圧(電流)を形成し、出力することができる。電源回路115の出力電圧(電流)は、DC/DCコンバータ106、LEDドライバ107a、および調光切替回路108に供給される。
【0028】
LEDドライバ107a・107bは、LED群110を駆動する。ここでは、LEDドライバ107aに電圧を印加すると、LEDドライバ107aによりLED群110を昼白色で発光させることができ、LEDドライバ107bに電圧を印加すると、LEDドライバ107bによりLED群110を電球色で発光させることができる。但し、発光色やドライバの数などは、これに限定されるものではない。
【0029】
また、LEDドライバ107a・107bは、調光切替回路108で設定された調光方式に従って、LED群110を駆動する。調光切替回路108は、マイコン109の制御に応じて、PDM調光方式とDC調光方式とを切り替える。例えば、LED群110に大電流が流れる領域は、DC調光方式を使用し、小電流(例えば、定格電流に対して30%)が流れる領域は、可聴周波数上限である20kHz以上の周波数帯によるPDM調光方式を使用することが好ましい。
【0030】
マイコン109は、LED群110の駆動に関する制御(調光方式、調色、停止など)を行う。マイコン109は、DC/DCコンバータ106から出力される制御電圧に応じて、上記制御を行う。DC/DCコンバータ106は、電源回路115の出力電圧から、マイコン109への制御電圧を生成している。
【0031】
また、マイコン109は、外部機器130からの制御信号(例えば、赤外線信号)に応じて、上記制御を行うこともできる。外部機器130としては、リモコン111およびホトセンサ112が設けられている。これにより、例えば、ユーザは、リモコン111への入力操作により、LED群110の発光色を変えることができる。また、例えば、ホトセンサ112により検出した周囲環境の明るさに応じて、LED群110の輝度を変えることができる。
【0032】
さらに、マイコン109は、DC/DCコンバータ106からの制御電圧を、LED群110の常夜灯への電流駆動電圧として用いている。
【0033】
上記の構成を有するLED照明システム100、特に照明装置では、PFC回路103を備えた電源回路115を備えることによって、高い力率を得ることが可能となり、全体的な効率を向上させることが可能となる。また、高調波電流の発生を抑制できるため、ノイズを低減することが可能となる。
【0034】
(電源回路の概要)
次に、電源回路115の構成について具体的に説明する。なお、以下では、まず比較例として、電源回路115を従来のように構成する場合(図2の電源回路915)を説明した後、本実施例の電源回路(図1の電源回路115)の構成について説明する。
【0035】
(電源回路の比較例)
図2は、比較例としての電源回路915の一構成例を示す図である。図2に示すように、電源回路915は、ブリッジダイオード11、フィルムコンデンサ12、チョークコイル13、整流用ダイオード914、サーミスタ15、平滑用コンデンサ17、SLOWタイプのヒューズ984、電圧検出回路18、トランジスタ19、電流検出用抵抗R1、R2、R3、および、PFC制御部905を備えている。
【0036】
なお、ブリッジダイオード11は、整流回路102を構成している。フィルムコンデンサ12、チョークコイル13、トランジスタ19、および電流検出用抵抗R1、R2、R3は、PFC回路103を構成している。整流用ダイオード914および平滑用コンデンサ17は、整流平滑回路993を構成している。また、図3では、ラインフィルタ101を省略して図示している。
【0037】
ブリッジダイオード11の2つの入力端子は、ラインフィルタ101の2つの出力端子にそれぞれ接続されている。ブリッジダイオード11の第1出力端子(高電位側の端子)は、チョークコイル13の主巻線、整流用ダイオード914、サーミスタ15、およびヒューズ984をこの順番に介して、電源回路915の出力端子OUTに接続されている。フィルムコンデンサ12の一方の端子は、ブリッジダイオード11の第1出力端子に接続されている。平滑用コンデンサ17の一方の端子は、サーミスタ15とヒューズ984とを接続する経路に接続されている。ブリッジダイオード11の第2出力端子(低電位側の端子)、フィルムコンデンサ12の他方の端子、平滑用コンデンサ17の他方の端子、およびチョークコイル13の補助巻線の一方の端子は、共通してグランドに接続されている。チョークコイル13の補助巻線の他方の端子は、PFC制御部905に接続されている。
【0038】
フィルムコンデンサ12は、トランジスタ19のスイッチングに伴うリップル電流を除去する。チョークコイル13は、昇圧用のチョークコイルである。整流用ダイオード914は、Si(シリコン)からなるダイオードにより構成されている。サーミスタ15は、電源回路915に商用電源を接続した瞬間に突入電流が流れることを防止する。平滑用コンデンサ17は、電解コンデンサにより構成されている。ヒューズ984は、電源回路915の出力端子に過電流が発生したときに、この過電流から回路内部を保護するための保護回路を構成している。
【0039】
トランジスタ19は、Nチャネル型のMOSFETであり、ドレイン端子が整流用ダイオード914のアノード端子に接続され、ゲート端子がPFC制御部905に接続され、ソース端子が電流検出用抵抗R3を介してグランドに接続されている。トランジスタ19は、PFC制御部905により、オン/オフが切り替えられる。また、電流検出用抵抗R3に発生する電圧を検出することによって、トランジスタ19に流れる電流、ひいてはチョークコイル13の主巻線に流れる電流を検出することができる。これにより、例えば、電流検出用抵抗R3の検出結果をPFC制御部905に供給して、PFC制御部905がて所定値を超えたことを判定したときにトランジスタ19をオフにすることによって、トランジスタ19を過電流から保護することが可能となる。
【0040】
電圧検出回路18は、入力端子が平滑用コンデンサ17の一方の端子とヒューズ984とを接続する経路に接続され、出力端子がPFC制御部905に接続されている。電圧検出回路18は、PFC回路の出力電圧を安定させると同時に、出力電圧が、短絡により異常に低下したり、過電圧になった場合を検出すると、PFC制御部905に通知して、トランジスタ19をオフにさせる。
【0041】
PFC制御部905は、CRM(臨界モード)で、PFC回路103を制御する。つまりは、PFC制御部905は、変動のPWM周波数(自励発振の周波数)で、トランジスタ19のスイッチングを制御する。
【0042】
上記の構成を有する電源回路915では、ラインフィルタ101を通過した交流電圧は、ブリッジダイオード11により整流された後、チョークコイル13により昇圧され、整流用ダイオード914および平滑用コンデンサ17により整流および平滑化されて、直流電圧として出力される。
【0043】
一方、チョークコイル13で昇圧している間、PFC制御部905は、CRM(臨界モード)で、トランジスタ19を高周波数でスイッチング制御している。これにより、整流用ダイオード914、ひいては平滑用コンデンサ17に流れ込む電流が調節されているので、電源回路915の力率が改善されている。
【0044】
しかしながら、CRMモードで動作するPFC回路において、整流用ショットキーバリアダイオード914にSiダイオードを使用した場合には、チョークコイル13、および、トランジスタ(MOSFET)19に流れるピーク電流が大きくなって、MOSFETのON時の損失が大きくなり、かつ、突入電流防止用パワーサーミスタ15に流れる電流のピーク値も大きくなる。このため、大型のパワーサーミスタが必要となり、回路実装面積も大きくなるという問題があった。
【0045】
(電源回路の実施例)
図1は、本実施例の電源回路115の一構成例を示す図である。図1に示すように、電源回路115は、ブリッジダイオード11、フィルムコンデンサ12、チョークコイル13、整流用ダイオード14、サーミスタ15、即断ヒューズ16、平滑用コンデンサ17、電圧検出回路18、トランジスタ19、電流検出用抵抗R1、R2、R3、および、PFC制御部105を備えている。
【0046】
つまりは、電源回路115は、比較例としての電源回路915と比較して、整流用ダイオード914に代えてSiC整流用ダイオード14を備えるとともに、SLOWタイプのヒューズ984を除いて、新たに即断ヒューズ16を備えた構成を有している。なお、説明の便宜上、前述した比較例の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0047】
ブリッジダイオード11の2つの入力端子は、ラインフィルタ101の2つの出力端子にそれぞれ接続されている。なお、図1では、ラインフィルタ101を省略して図示している。ブリッジダイオード11の第1出力端子(高電位側の端子)は、チョークコイル13の主巻線、整流用ダイオード14、サーミスタ15、および即断ヒューズ16をこの順番に介して、電源回路115の出力端子に接続されている。フィルムコンデンサ12の一方の端子は、ブリッジダイオード11の第1出力端子に接続されている。平滑用コンデンサ17の一方の端子は、即断ヒューズ16と出力端子とを接続する経路に接続されている。ブリッジダイオード11の第2出力端子(低電位側の端子)、フィルムコンデンサ12の他方の端子、平滑用コンデンサ17の他方の端子、およびチョークコイル13の補助巻線の一方の端子は、共通してグランドに接続されている。チョークコイル13の補助巻線の他方の端子は、PFC制御部105に接続されている。
【0048】
整流用ダイオード14は、SiC(シリコンカーバイド)からなるショットバリアキーダイオードにより構成されている。即断ヒューズ16は、電源回路115の出力端子OUTが短絡したときに整流用ダイオード14に発生する過大電力から、整流用ダイオード14を保護するための保護回路を構成している。即断ヒューズ16の定格電流値は、例えば、出力電力100Wの場合は1.5A〜2.0Aであることが望ましい。この値により、整流用ダイオード14の安全性を確保することができる。この値以上の定格電流では、オープン破壊に至らない可能性がある。
【0049】
トランジスタ19は、ドレイン端子が整流用ダイオード14のアノード端子に接続され、ゲート端子がPFC制御部105に接続され、ソース端子が電流検出用抵抗R3を介してグランドに接続されている。電圧検出回路18は、入力端子が平滑用コンデンサ17の一方の端子と出力端子OUTとを接続する経路に接続され、出力端子がPFC制御部105に接続されている。
【0050】
PFC制御部105は、CCM(電流連続モード)で、PFC回路103を制御する。つまりは、PFC制御部105は、固定のPWM周波数(発振器による固定された周波数)で、トランジスタ19のスイッチングを制御する。
【0051】
上記の構成を有する電源回路115では、ラインフィルタ101を通過した交流電圧は、ブリッジダイオード11により整流された後、チョークコイル13により昇圧され、整流用ダイオード14および平滑用コンデンサ17により整流および平滑化されて、直流電圧として出力される。
【0052】
一方、チョークコイル13で昇圧している間、PFC制御部105は、CCM(電流連続モード)で、トランジスタ19を高周波数でスイッチング制御している。これにより、整流用ダイオード14、ひいては平滑用コンデンサ17に流れ込む電流が調節されているので、電源回路115の力率が改善されている。
【0053】
また、電源回路115においては、前述の電源回路915と比較して、Siタイプの整流用ダイオード914をSiCタイプの整流用ダイオード14に置き換えるとともに、PFC回路103の動作モードをCRMからCCMに変更しているので、整流用ダイオード14のピーク電流値を低減して熱損失を削減することが可能となり、また、逆回復時間(trr)の低減によりスイッチング損失の削減が可能となる。よって、電源回路115では、高い効率を実現することができる。
【0054】
さらに、電源回路115においては、スイッチングのスパイク成分に起因する、AMラジオ帯域のノイズについても低減が可能となる。これにより、より簡易なフィルタ構成とすることができる分、フィルタ部品のコストダウンが可能となる。
【0055】
そして、電源回路115の構成においては、整流用ダイオード14およびサーミスタ15の後段であって、平滑用コンデンサ17の前段に、即断ヒューズ16が設けられている。よって、アブノーマル試験において、出力端子OUTの短絡を行った時、出力端子OUTの短絡により整流用ダイオード14に発生した最初の過電流により、即座に即断ヒューズ16がオープン破壊するので、整流用ダイオード14が破損することを回避することが可能となる。したがって、整流用ダイオード14が破壊に至る前に、即断ヒューズ16を安全に破壊することが可能となり、ユーザショックを与える破壊モードになることを回避し、高い安全性を確保することが可能となっている。
【0056】
なお、即断ヒューズ16は、上記のようにサーミスタ15と平滑用コンデンサ17との間に接続することが重要である。即断ヒューズ16を、比較例の電源回路915においてSLOWタイプのヒューズ984を設置した位置、つまりは平滑用コンデンサ17の後段に接続した場合は、整流用ダイオード14の出力端を短絡した場合にオープン破壊することができない。このため、SLOWタイプのヒューズ984を使用した時と同様に、整流用ダイオード14は破壊してしまう。
【0057】
(DC−DCコンバータの構成)
図4は、LED照明回路120に設けられたDC−DCコンバータ106の構成を説明するための図である。DC−DCコンバータ106は、絶縁方式のタイプであり、メイン回路20とトランス21とを有している。トランス21は、絶縁されて、1次側回路と2次側回路とに分離されている。
【0058】
(PFC制御部の構成)
図5は、電源回路115に設けられたPFC制御部105の構成を説明するための図である。図6は、電源回路115の動作を説明するための波形図であり、入力電圧波形W1、インダクタ電流波形W2、入力電流平均値波形W3、及びドレイン電圧W4を示している。
【0059】
PFCのCCM(電流連続モード)回路方式の例について、図5、図6を用いて説明する。これは、昇圧式のチョッパー回路であり、入力電流を、入力電圧と同じ正弦波にするものである。CCM(電流連続モード)というのは、チョークコイル13に流れる電流が連続であることに由来している。
【0060】
PFC制御部105は、増幅器23を有している。増幅器23は、整流平滑回路104からの出力電圧を抵抗R6及び抵抗R7により分圧した信号と基準電圧信号Vrefとを比較しその差分信号を乗算器24に供給する。乗算器24は、ブリッジダイオード11の出力を抵抗R4、R5により分圧した基準正弦波信号と、増幅器23から供給された差分信号とを乗算した信号を基準電圧として増幅器25に出力する。増幅器25は、トランジスタ19のソース電流を電流検出のための抵抗R3で検出した信号と、上記基準電圧とを比較してその出力をPWMコンパレータ26に供給する。PWMコンパレータ26は、増幅器25からの出力を発振機27の三角波と比較して出力するパルス信号のON幅を決定する。
【0061】
すなわち、増幅器25の出力が発振機27の三角波に到達するとトランジスタ19のための駆動信号はLOWとなり、トランジスタ19はOFFとなる。発振機27の三角波信号が増幅器25の出力信号を下回った時点でPWMコンパレータ26はHighとなりトランジスタ19は再びONとなりこの動作を繰り返す。インダクタ(チョークコイル13)を流れる電流は、トランジスタ19がOFFの期間もゼロにならず、連続して流れている。このため、ピーク電流の値が小さいのでチョークコイル13の銅損が少なく、さらに図1のサーミスタ15に流れる実効電流が少なくなるため、サーミスタ15は小型のパワーサーミスタを選択することができ、コスト、実装スペースで有利になる。
【0062】
図7は、従来例に係る電源回路に設けられたPFC制御部905の構成を説明するための図である。図8は、上記電源回路の動作を説明するための波形図であり、入力電圧波形W5、インダクタ電流波形W6、入力電流平均値波形W7、及びドレイン電圧W8を示している。
【0063】
従来例に係るCRM(臨界モード)回路方式の例について図7、図8を用いて説明する。これとは、異なる方式で実現させている場合もあるが、動作自体は同じで、区分されるものではない。これも昇圧チョッパー回路で、図8に示す通り、トランジスタ19がOFFの間に、チョークコイル13を流れるインダクタ電流波形W6がゼロAになった瞬間に、チョークコイル13の補助巻線からゼロ検出回路82、遅延回路86を経て、パルス発生器83に信号が入り、パルス発生機83はON信号を出し、トランジスタ19がONになる。パルス発生器83は、トランジスタ19のオンの間、一定の信号をドライバ28を介してトランジスタ19に出力し、整流平滑回路104からのPFC出力を抵抗R6、R7で分圧した信号を増幅器23の一方の基準電圧信号Vrefと比較し、その差分信号が、トランジスタ19のOFF期間を決定することにより電圧制御を行っている。これとは、異なる方式でCRMを実現させている場合もあるが、動作自体は同じであり、区分されるものではない。図8に示す通りトランジスタ19はチョークコイル13に流れる電流がゼロになってからONするため、周波数が変動し、かつチョークコイル13に流れる電流のピークは大きく、チョークコイル13の銅損が大きい上に、図2に示すサーミスタ15に流れる実効電流は大きいため、サーミスタ15は大型になり、コスト、実装スペースで不利である。これに対して、本実施の形態では、図6に示すように、トランジスタ19はチョークコイル13に流れる電流がゼロになる前にONするため、周波数が安定し、かつチョークコイル13に流れる電流のピークは小さく、チョークコイル13の銅損が小さくなる。また、図1に示すサーミスタ15に流れる実効電流は小さくなるため、サーミスタ15は小型にすることができ、コスト、実装スペースで有利になる。
【0064】
図9は、PFC回路103のチョークコイル13への電流波形を説明するための図である。電流不連続モードにおける電流波形W11と、電流臨界モード(CRM)における電流波形W9と、電流連続モード(CCM)における電流波形W10と、平均電流波形W12とが示されている。チョークコイル13に流れる電流を比較しているが、同じ平均電流をとった場合の電流臨界モード(CRM)のピーク電流ΔICRMは、電流連続モード(CCM)のピーク電流ΔICCMに比較して大きいことが分かる。したがって、実効値が少ないCCM方式では、図1に示すCCM方式におけるパワーサーミスタ15は、図2に示すCRM方式におけるパワーサーミスタ15よりも小型化できることが分かる。
【0065】
(サーミスタの小型化)
ここで出力Po=100WのRFC回路について、入力Vin(rms)min=AC85V、出力Vo=385V、10Ωのパワーサーミスタを使用するとすれば、CCM方式にした場合とCRM方式にした場合とを比較してみる。
【0066】
まず、CCM方式で、効率η=92%。力率PF=0.99とすると、
最大交流ライン電流Iin(max)=Po/(η*(Vin(rms)min)*PF
=100/(0.92*(85)*0.99)=1.29A
交流電流ピーク値Iin(pk)max=√2(Po/η)/Vin(rms)min
=(1.414*100/0.92)/85=1.808A
交流ライン入力電流Iin(avg)max=2*Iin(pk)max/π
=2*1.808/3.142=1.151A
Lリップル電流ΔIL=0.3*Iin(pk)max
=0.3*1.808=0.542A
チョークコイルに流れる実効電流 IL(rms)=Iin(avg)max+ΔIL/2/√3
=1.151+0.542/2/1.73=1.308A
一方CRM方式の場合、効率η=90% 力率PF=0.98とすると、
交流電流ピーク値Iin(pk)max=√2(Po/η)/Vin(rms)min
=(1.414*100/0.90)/85=1.848A
交流ライン入力電流Iin(avg)max=2*Iin(pk)max/π
=2*1.848/3.142=1.177A
チョークコイルに流れる実効電流はIL(rms)pk=Iin(avg)max*√3
=1.177*1.73=2.035A
CCM方式に使用できるパワーサーミスタ NTPAA100LDN0 12φ
CRM方式に使用できるパワーサーミスタ NTPAJ100DKB0 20φ
となりCCM方式にすることでサーミスタ15を小型化することができた。
【0067】
また、本実施の形態に使用する即断ヒューズ16については、AC入力時の突入電流にて、通常動作で破壊してしまう危険性がある。本実施の形態では、突入電流で破壊してしまわないように、かつアブノーマル試験時にオープン破壊できるように、サーミスタ15を使用し、さらに定格電流値は適切となるように設定した。
【0068】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、LEDを備えた照明装置に好適に用いられる電源回路に利用することができ、特に、電源回路に含まれるPFC回路を構成する技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
11 ブリッジダイオード
12 フィルムコンデンサ
13 チョークコイル
14 整流用ダイオード(整流用ショットキーバリアダイオード)
15 サーミスタ(突入電流防止用パワーサーミスタ)
16 即断ヒューズ
17 平滑用コンデンサ
19 トランジスタ
20 メイン回路
21 トランス
23 増幅器
24 乗算器
25 増幅器
26 PWMコンパレータ
27 発振機
28 ドライバ
100 LED照明システム
101 ラインフィルタ
102 整流回路
103 PFC回路(力率改善回路)
104 整流平滑回路
105 PFC制御部(制御回路)
106 DC/DCコンバータ
107a,107b LEDドライバ
110 LED群
115 電源回路
120 LED照明回路(LED照明駆動用電源回路)
130 外部機器
W1、W5 入力電圧波形
W2、W6 インダクタ電流波形
W3、W7 入力電流平均値波形
W4、W8 ドレイン電圧波形
W9 電流波形
W10 電流波形
W11 電流波形
W12 平均電流波形



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジダイオードに接続された力率改善回路と、
前記力率改善回路に接続された整流平滑回路とを備え、
前記力率改善回路は、一端が前記ブリッジダイオードに接続され、他端が前記整流平滑回路に接続されたチョークコイルと、前記チョークコイルの前記整流平滑回路側にドレインが接続されたトランジスタとを含み、
前記整流平滑回路は、前記チョークコイルに接続された整流用ショットキーバリアダイオードを含み、
前記ショットキーバリアダイオードに接続された突入電流防止用パワーサーミスタと、
前記力率改善回路を電流連続モードで動作させる制御回路とを設けたことを特徴とするLED照明駆動用電源回路。
【請求項2】
前記制御回路は、前記整流平滑回路からの出力信号に基づく信号と基準電圧信号との差分信号を出力する第1増幅器と、前記第1増幅器から出力された差分信号と前記ブリッジダイオードからの出力信号に基づく基準正弦波信号とを乗算した信号を供給する乗算器とを含む請求項1記載のLED照明駆動用電源回路。
【請求項3】
前記制御回路は、前記乗算器から供給された信号と前記トランジスタのソース電流に基づく信号とを比較した信号を出力する第2増幅器と、前記第2増幅器から出力された信号と発振器から出力された三角波と比較してパルス信号を出力するPWMコンパレータとを含む請求項2記載のLED照明駆動用電源回路。
【請求項4】
前記整流平滑回路に接続された絶縁方式のDC−DCコンバータをさらに備える請求項1記載のLED照明駆動用電源回路。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−45754(P2013−45754A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185148(P2011−185148)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】