説明

スイッチング電源装置及びその制御方法

【課題】電流共振コンバータ部を備え、通常動作用の制御回路を二重系にすることなく保護動作を実行可能なスイッチング電源装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】スイッチング電源装置1は、PFC電圧を変換して負荷回路に出力する電流共振コンバータ部3と、スイッチ素子Q3、Q4のスイッチング動作を制御するスイッチング制御部12と、出力電圧を検出し、その検出値に応じた出力信号をスイッチング制御部12に出力する出力電圧検出部11とを含んでおり、スイッチング制御部12は、出力電圧検出部11からの出力信号に基づいて出力電圧を所定の値とするためのスイッチング周波数を導出するとともに、この導出されたスイッチング周波数に基づいてスイッチング電源装置1の異常の発生を判定し、異常が発生したと判定した場合、スイッチ素子Q3、Q4のスイッチング動作を停止させることにより、異常発生時の装置の安全を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置及びその制御方法に関し、詳しくは、負荷のショート等の異常発生時にスイッチング動作を停止して装置を保護するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノートパソコン、液晶テレビ、プラズマテレビ、ゲーム機等のデジタル機器や家庭用娯楽機器用として、スイッチング電源装置が利用されており、特に、高効率が要求される電源では、電流共振(LLC)コンバータを備えたスイッチング電源装置が広く採用されている。
【0003】
電流共振コンバータは、スイッチング周波数のパルス周波数変調(PFM)制御により、所望の出力電圧を得るものであり、通常、安定した出力を確保するために、装置中の電圧または電流(例えば、出力電圧または出力電流)を検出し、その検出値に応じてスイッチング動作を制御することが実施されている。
【0004】
このようなスイッチング電源装置を安全に使用するためには、通常のスイッチング動作制御に加えて、過負荷または負荷のショート等の異常発生時に、例えばスイッチング動作の停止等の保護動作を実行することが望ましい。一般に、従来のスイッチング電源装置では、この保護動作を実行するために、通常のスイッチング動作制御用の回路系とは別に、装置中の電圧または電流を検出する検出回路及び/またはその検出値に応じて動作する保護回路が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−171837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スイッチング電源装置において、保護動作を実行するための検出回路及び/または保護回路を、通常のスイッチング動作用の制御回路とは別に設けた構成(以下、二重系ともいう)では、スイッチング電源装置の制御回路が複雑化し、装置のコストが増大するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、電流共振コンバータ部を備えたスイッチング電源装置において、通常のスイッチング動作用の制御回路を二重系にすることなく、保護動作を実行可能なスイッチング電源装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、さらに他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0009】
(1)第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換して負荷回路に出力する電流共振コンバータ部と、前記電流共振コンバータ部が有するスイッチ素子のスイッチング動作を制御するスイッチング制御部と、前記第2の直流電圧を検出し、その検出値に応じた出力信号を前記スイッチング制御部に出力する出力電圧検出部と、を含むスイッチング電源装置であって、前記スイッチング制御部は、前記出力電圧検出部からの出力信号に基づいて、前記第2の直流電圧を所定の出力電圧とするための、前記スイッチ素子のスイッチング周波数を導出するとともに、該導出されたスイッチング周波数に基づいてスイッチング電源装置の異常動作の発生を判定し、前記異常動作が発生したと判定した場合、前記スイッチ素子のスイッチング動作を停止させることを特徴とするスイッチング電源装置(請求項1)。
【0010】
(2)(1)項に記載のスイッチング電源装置において、前記スイッチング制御部は、前記導出されたスイッチング周波数が所定の通常動作範囲の下限値以上かつ上限値以下である場合には、前記導出されたスイッチング周波数で前記スイッチ素子をスイッチング動作させるとともに、前記スイッチング電源装置に異常が発生したと判定する条件に、前記導出されたスイッチング周波数が第1の基準周波数よりも小さい状態が、所定期間を超えて継続したこと、が含まれることを特徴とするスイッチング電源装置(請求項2)。
【0011】
(3)(2)項に記載のスイッチング電源装置において、前記第1の基準周波数は、前記通常動作範囲の下限値と一致することを特徴とするスイッチング電源装置(請求項3)。
【0012】
(4)(2)項に記載のスイッチング電源装置において、前記第1の基準周波数は、前記通常動作範囲の下限値よりも大きいことを特徴とするスイッチング電源装置(請求項4)。
【0013】
(5)(2)項に記載のスイッチング電源装置において、前記第1の基準周波数は、前記通常動作範囲の下限値よりも小さいことを特徴とするスイッチング電源装置(請求項5)。
【0014】
(6)(2)〜(5)項に記載のスイッチング電源装置において、前記スイッチング制御部は、前記第1の基準周波数よりも大きい第2の基準周波数をさらに有しており、前記スイッチング電源装置に異常が発生したと判定する条件に、前記導出されたスイッチング周波数が前記第2の基準周波数よりも大きい状態が、所定期間を超えて継続したこと、が含まれることを特徴とするスイッチング電源装置。
【0015】
(2)〜(6)項に記載のスイッチング電源装置において、前記スイッチング制御部は、前記導出されたスイッチング周波数が前記通常動作範囲の下限値よりも小さい場合、前記通常動作範囲の下限値の周波数で前記スイッチ素子を動作させ、前記導出されたスイッチング周波数が前記通常動作範囲の上限値よりも大きい場合、前記通常動作範囲の上限値の周波数で前記スイッチ素子をスイッチング動作させることが好ましい。
【0016】
この場合、前記導出されたスイッチング周波数が、前記通常動作範囲の下限値よりも小さく、かつ、前記第1の基準周波数よりも小さい場合には、前記スイッチ素子は、前記所定期間の経過後に前記スイッチ素子の動作が停止するまでの間、前記通常動作範囲の下限値の周波数でスイッチング動作するものであってもよい。同様に、前記導出されたスイッチング周波数が、前記通常動作範囲の上限値よりも大きく、かつ、前記第2の基準周波数よりも大きい場合には、前記スイッチ素子は、前記所定期間の経過後に前記スイッチ素子の動作が停止するまでの間、前記通常動作範囲の上限値の周波数でスイッチング動作するものであってもよい。
【0017】
(7)第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換して負荷回路に出力する電流共振コンバータ部と、前記電流共振コンバータ部が有するスイッチ素子のスイッチング動作を制御するスイッチング制御部と、前記第2の直流電圧を検出し、その検出値に応じた出力信号を前記スイッチング制御部に出力する出力電圧検出部と、を含むスイッチング電源装置の制御方法であって、前記出力電圧検出部からの出力信号に基づいて、前記第2の直流電圧を所定の出力電圧とするための、前記スイッチ素子のスイッチング周波数を導出するステップと、該導出されたスイッチング周波数に基づいてスイッチング電源装置の異常動作の発生を判定するステップと、前記異常動作が発生したと判定した場合、前記スイッチ素子のスイッチング動作を停止させるステップとを含むことを特徴とする制御方法(請求項6)。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るスイッチング電源装置及びその制御方法によれば、電流共振コンバータ部を備えたスイッチング電源装置において、通常のスイッチング動作用の制御回路を二重系にすることなく、簡素な回路構成により異常発生時の保護動作を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態におけるスイッチング電源装置の一例を示す回路構成図である。
【図2】図1に示すスイッチング電源装置において、そのスイッチング制御部の構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】図1に示すスイッチング電源装置において、出力制御用フィードバック電圧とLLC制御用周波数との関係を示すグラフである。
【図4】図1に示すスイッチング電源装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】図1に示すスイッチング電源装置の制御方法の別の例を示すフローチャートである。
【図6】図1に示すスイッチング電源装置において、出力制御用フィードバック電圧とLLC制御用周波数との関係を示すグラフであり、スイッチング周波数の通常動作範囲の下限値と異なる第1の基準周波数を示した図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるスイッチング電源装置の別の例を示す回路構成図である。
【図8】本発明の一実施形態におけるスイッチング電源装置のさらに別の例を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態におけるスイッチング電源装置の一例を示す回路構成図である。
図1に示すスイッチング電源装置1は、力率改善(PFC)部2と電流共振(LLC共振)型DC/DCコンバータ部(以下、電流共振コンバータ部という)3とを有している。
【0021】
力率改善部2は、第1の整流素子D1と第1のスイッチ素子Q1からなる第1の直列回路と、第2の整流素子D2と第2のスイッチ素子Q2からなる第2の直列回路とを備えている。本実施形態では、第1、第2の整流素子D1、D2としてダイオードが用いられ、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2としてMOS−FETが用いられており、第1の直列回路は、第1の整流素子D1のアノード端子と第1のスイッチ素子Q1のドレイン端子とを接続しており、第2の直列回路は、第2の整流素子D2のアノード端子と第2のスイッチ素子Q2のドレイン端子とを接続している。
【0022】
第1の直列回路と第2の直列回路は、第1、第2の整流素子D1、D2のカソード端子同士を接続し、また、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2のソース端子同士を接続して、互いに並列に接続されている。さらに、第1、第2の整流素子D1、D2のカソード端子同士の接続点には、第1の平滑コンデンサCiの一端が接続され、また、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2のソース端子同士の接続点には、第1の平滑コンデンサCiの他端が接続されている。
【0023】
また、力率改善部2は、リアクトルL1を備えており、リアクトルL1の一端は、第1の整流素子D1と第1のスイッチ素子Q1の接続点に接続され、他端は、交流電源Vacの一端に接続される。そして、交流電源Vacの他端は、第2の整流素子D2と第2のスイッチ素子Q2の接続点に接続されている。
【0024】
スイッチング電源装置1において、電流共振コンバータ部3は、第3、第4スイッチ素子Q3、Q4からなる第3の直列回路を備えており、本実施形態では、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4としてMOS−FETが用いられている。第3の直列回路は、第3のスイッチ素子Q3のソース端子と第4のスイッチ素子Q4のドレイン端子とを接続してなり、力率改善部2の第1の平滑コンデンサCiと並列に接続されるものであり、具体的には、第3のスイッチ素子Q3のドレイン端子は、第2の整流素子D2のカソード端子に、第4のスイッチ素子Q4のソース端子は、第2のスイッチ素子Q2のソース端子にそれぞれ接続されている。
【0025】
また、電流共振コンバータ部3は、高周波トランスTと、高周波トランスTの一次側に設けられた共振インダクタLrと共振コンデンサCrを含む直列共振回路とを有しており、高周波トランスTの一次巻線の一端は、第3のスイッチ素子Q3のソース端子と第4のスイッチ素子Q4のドレイン端子との接続点に接続され、他端は、共振インダクタLrと共振コンデンサCrを含む直列共振回路を介して、第3のスイッチ素子Q3のドレイン端子に接続されている。さらに、電流共振コンバータ部3は、高周波トランスTの二次側に、整流ダイオードD3、D4と第2の平滑コンデンサCoを含む整流回路を有しており、第2の平滑コンデンサCoの両端間には、負荷回路3が接続されている。
【0026】
さらに、スイッチング電源装置1は、第1〜第4スイッチ素子Q1〜Q4のスイッチング動作を制御するスイッチング制御部12と、力率改善部2の第1の平滑コンデンサCiの両端間電圧(以下、PFC電圧ともいう)を検出し、その検出値に応じた出力信号をスイッチング制御部12に出力するPFC電圧検出部10と、スイッチング電源装置1の出力電圧(すなわち、第2の平滑コンデンサCoの両端間電圧)を検出し、その検出値に応じた出力信号をスイッチング制御部12に出力する出力電圧検出部11とを備えている。
【0027】
スイッチング制御部12は、PFC電圧検出部10及び出力電圧検出部11からの出力信号に基づいて、第1〜第4スイッチ素子Q1〜Q4を駆動するパルス信号(この場合、ゲート駆動信号)を生成して、各スイッチ素子Q1〜Q4に出力する。
【0028】
スイッチング電源装置1において、力率改善部2は、所謂ブリッジレスPFC回路をなすものであり、スイッチング制御部12は、PFC電圧検出部10からの出力信号に基づいて第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作をパルス幅変調(PWM)制御することにより、交流電源Vacの交流電圧を力率改善しつつ整流及び昇圧し、所定のPFC電圧(第1の平滑コンデンサCiの両端間電圧)を電流共振コンバータ部3に出力する。
【0029】
また、電流共振コンバータ部3は、力率改善部2のPFC電圧(第1の直流電圧)を入力し、この入力電圧を、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4のスイッチング動作により高周波電圧に変換して高周波トランスTの一次巻線の両端に印加し、高周波トランスTの二次側に発生する高周波電圧を、整流ダイオードD3、D4と第2の平滑コンデンサCoにて整流かつ平滑化することによって、第2の平滑コンデンサCoの両端間電圧として所定の直流出力電圧(第2の直流電圧)を生成し、負荷回路に出力する。
【0030】
この際、スイッチング電源装置1の出力電圧は、電流共振コンバータ部3のゲイン特性に基づいて、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4のスイッチング周波数を変化させることによって制御されるものであり、スイッチング制御部12は、出力電圧検出部11からの出力信号に基づいて、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4のスイッチ素子のスイッチング動作をパルス周波数変調(PFM)制御することにより、所定の出力電圧を達成するものである。
【0031】
スイッチング電源装置1において、出力電圧検出部11は、出力電圧を検出する出力電圧検出回路と、所定の出力電圧に相当する基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、出力電圧検出回路からの出力信号と、基準電圧生成回路からの出力信号を入力し、その誤差に相当する出力信号を生成するエラーアンプを有しており、エラーアンプからの出力信号が、絶縁素子(例えば、フォトカプラ)を介して、スイッチング制御部12に出力される。
【0032】
ここで、図1に示す回路構成において、リアクトルL1は、一端が第1のダイオードD1と第1のスイッチ素子Q1との接続点に接続され、他端が交流電源Vacの一端に接続されているが、交流電源VacとリアクトルL1が逆の配置構成でもよく、また、直列共振回路の共振コンデンサCrと共振インダクタLrのいずれか一方または両方を、第3のスイッチ素子Q3と第4のスイッチ素子Q4の接続点と高周波トランスTの一次巻線との間に接続してもよい。また、共振インダクタLrは、高周波トランスTの漏れインダクタンスで代替することもできる。
【0033】
次に、図2を参照して、スイッチング制御部12の構成について詳述すれば、次の通りである。スイッチング制御部12は、各スイッチ素子Q1〜Q4に対するゲート駆動信号を出力するスイッチ素子ドライブ回路28と、入力されるPFC電圧検出部10及び出力電圧検出部11からの出力信号に基づいて、各スイッチ素子Q1〜Q4に対するゲート駆動信号の周波数及びオンデューティを設定し、スイッチ素子ドライブ回路28に対して所定の指令信号を出力するスイッチ素子制御回路13とを備えている。
【0034】
ここで、スイッチ素子制御回路13は、図2に示すように、その機能ブロックとして、PFC制御部14とLLC制御部15とを有している。さらに、PFC制御部14は、PFC電圧A/D変換部21及びPFC演算処理部24を有し、LLC制御部15は、出力電圧A/D変換部22、周波数演算部23、周波数リミッタ部25、及びLLC共振用PWM出力制御部27を有している。また、図示は省略するが、スイッチ素子制御回路13は、後述する監視タイマとして機能する計時手段を備えている。
【0035】
スイッチ素子制御回路13は、好ましくは、マイクロコンピュータ、DSP、FPGA等のプログラマブルデバイスを用いてデジタル制御装置として構成される。但し、このようなスイッチ素子制御回路13を構成する各機能ブロックは、以下に説明する制御手順を実行する限り、任意の適切なハードウェアまたはソフトウェア、あるいはそれらの組合せにより実装することができる。
【0036】
スイッチ素子制御回路13において、PFC制御部14は、PFC電圧検出部10からの出力信号(PFC出力電圧)をPFC電圧A/D変換部21によりA/D変換し、これによって、デジタルデータであるPFC電圧データが生成される。そして、PFC演算処理部24は、生成されたPFC電圧データに基づき、力率改善部2のスイッチ素子Q1またはQ2のスイッチング動作のためのゲート駆動信号のオンデューティを演算し、対応する指令信号をスイッチ素子ドライブ回路28に出力する。この際、スイッチ素子Q1及びQ2のスイッチング周波数は、予め設定される所定の周波数に固定されているものであってもよく、あるいは、リアクトルL1に流れる電流を検出することによって、決定されるものであってもよい。
【0037】
次に、図2とともに図3及び図4を参照して、LLC制御部15の機能及びLLC制御部15で実行される制御手順を説明すれば、次の通りである。
まず、電流共振コンバータ部3の入出力電圧に関するゲイン特性には、一般に、2つの共振周波数(f1<f2)があり、第1の共振周波数f1においてピークゲインをとり、また、第2の共振周波数f2において負荷に依らずにゲインが一定となる。そして、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4は、通常、第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2との間の周波数範囲で駆動され、この周波数範囲では、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4のスイッチング周波数を小さくすることにより出力電圧を上昇させ、スイッチング周波数を大きくすることにより出力電圧を低下させるように、出力電圧を制御することができる。
【0038】
したがって、スイッチング電源装置1において、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4のスイッチング周波数(LLC制御用周波数)は、検出された出力電圧(出力制御用フィードバック電圧)に対して、図3に示すような関係を有するように設定される。具体的には、検出された出力電圧が所定の出力電圧よりも大きい場合には、その誤差に応じてスイッチング周波数を大きくして出力電圧を低下させ、検出された出力電圧が所定の出力電圧よりも小さい場合には、その誤差に応じてスイッチング周波数を小さくして出力電圧を上昇させることにより、所定の出力電圧が安定して出力されるものである。
【0039】
この際、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4の通常動作において使用されるスイッチング周波数の範囲(図3の例では、下限値Fsmin以上かつ上限値Fsmax以下)は、電流共振コンバータ部3の共振特性等の設計仕様に基づいて設定される。
【0040】
スイッチング電源装置1は、以上のような通常動作における出力電圧のPFM制御を実行するための制御回路に対して、別の保護回路等を設けることなく、過負荷または負荷のショート等の異常の発生を判定し、適切な保護動作を実行可能としたことをその主要な特徴とするものであり、次に、スイッチング電源装置1の制御方法の一例として、LLC制御部15及びスイッチ素子ドライブ回路28で実行される制御手順について説明する。
【0041】
LLC制御部15は、図4に示すように、制御開始後、出力検出回路11からの出力信号(LLC出力電圧)のA/D変換が完了したか否かを判別し(ステップS1)、完了していない場合(No)には、この判別を繰り返す。この間、LLC制御部15は、出力電圧A/D変換部22において、出力電圧検出部11からの出力信号をA/D変換し、これによって、デジタルデータである出力電圧データが生成される。そして、その後に実行されるステップS1において、A/D変換が完了したと判別され(Yes)、制御はステップS2に移行する。
【0042】
次いで、LLC制御部15は、周波数演算部23において、出力電圧データを使用してスイッチング周波数(以下、制御周波数ともいう)FCを演算により導出する(ステップS2)。この制御周波数FCは、図3に示す関係に従って、例えばPID演算等により求められる。
【0043】
次いで、LLC制御部15は、周波数リミッタ部25において、ステップS2において導出された制御周波数FCが、通常動作範囲内であるか否かを判別する。具体的には、制御周波数FCが通常動作範囲の下限値FSminよりも小さいか否かが判別され(ステップS3)、制御周波数FCが通常動作範囲の下限値FSmin以上であった場合(No)、続いて、制御周波数FCが通常動作範囲の上限値FSmaxよりも大きいか否かが判別される(ステップS5)。そして、ステップS5において、制御周波数FCが通常動作範囲の上限値FSmax以下であった場合(No)、LLC制御部15は、後述する異常判定動作のための監視タイマをクリアして監視タイマの動作を停止させ(ステップS8)、次いで、制御はステップS13に移行する。
【0044】
この場合、ステップS2において導出された制御周波数FCは、通常動作範囲内(下限値FSmin以上かつ上限値FSmax以下)であるため、LLC制御部15は、LLC共振用PWM制御部27において、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4のスイッチング周波数を、ステップS2において導出された制御周波数FCに設定する。そして、LLC制御部15は、設定されたスイッチング周波数FCと、所定のオンデューティ(典型的には、50%)を有するゲート駆動信号(駆動パルス信号)を第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4に対して出力するための指令信号を、スイッチ素子ドライブ回路28に対して出力し、さらに、スイッチ素子ドライブ回路28は、この指令信号に従って、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4に対してゲート駆動信号(駆動パルス信号)を出力する(ステップS13)。
以後、LLC制御部15は、ステップS1からの制御手順を繰り返して実行する。
【0045】
一方、ステップS3において、ステップS2で導出された制御周波数FCが通常動作範囲の下限値FSminよりも小さいと判別された場合(Yes)、LLC制御部15は、周波数リミッタ部25において、制御周波数FCに対して通常動作範囲の下限値FSminを設定し(ステップS4)、その後、次のような異常判定動作を実行する。
異常判定動作において、LLC制御部15は、まず、スイッチ素子制御回路13が備える監視タイマが作動中であるか否かを判別し(ステップS9)、監視タイマが作動中でない場合(No)、監視タイマをセットして、監視タイマによる所定期間の計時を開始する(ステップS10)。
【0046】
例えば、監視タイマは、所謂フリーランカウンタによって構成され、スイッチ素子制御回路13に入力されるクロック信号(図示は省略する)に従って、そのカウント値がカウントアップされるように構成されていてもよい。
【0047】
次いで、制御はステップS13に移行し、スイッチ素子ドライブ回路28は、上述したように、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4に対してゲート駆動信号(駆動パルス信号)を出力し、以後、LLC制御部15は、ステップS1からの制御手順を繰り返して実行する。但し、この場合の第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4のスイッチング周波数FCは、ステップS4で設定された通常動作範囲の下限値FSminである。
【0048】
そして、監視タイマのセット以後にステップS1から繰り返される制御手順において、ステップS2で導出される制御周波数FCが通常動作範囲の下限値FSminよりも小さい状態が続けて発生した場合、制御手順は、ステップS3、ステップS4を経てステップS9に移行し、異常判定動作が継続される。この場合、ステップS9において監視タイマが作動中である(Yes)と判別されて、制御はステップS11に移行し、LLC制御部15は、ステップS11において、監視タイマが満了したか否か(例えば、監視タイマのカウント値が、所定期間に相当する値に到達したか否か)を判別する。ステップS11において、監視タイマが満了していない場合(No)には、監視タイマのカウント値を保持して(すなわち、所定期間の計時を持続しつつ)(ステップS12)、制御はステップS13に移行する。
【0049】
次いで、ステップS13において、スイッチ素子ドライブ回路28は、上述したように、LLC制御部15からの指令信号に従って、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4に対してゲート駆動信号(駆動パルス信号)を出力し、以後、LLC制御部15は、ステップS1からの制御手順を繰り返して実行する。但し、この場合の第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4のスイッチング周波数FCは、ステップS4で設定された通常動作範囲の下限値FSminである。
【0050】
また、監視タイマのセット以後にステップS1から繰り返される制御手順において、ステップS2で導出される制御周波数FCが通常動作範囲の下限値FSminよりも小さい状態が続けて発生し、さらに、その結果制御が移行したステップS11において、監視タイマが満了したと判別された場合(Yes)、(必要な場合、監視タイマをクリアして監視タイマの作動を停止した後)、制御はステップS14に移行する。
【0051】
ステップS14において、LLC制御部15は、スイッチ素子ドライブ回路28に対して第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4のスイッチング動作を(好ましくはオフ状態)で停止させるための指令信号を出力し、スイッチ素子ドライブ回路28は、この指令信号に従ってゲート駆動信号(駆動パルス信号)の出力を停止する(言い換えれば、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4のスイッチング動作を、好ましくはオフ状態で、停止させる)。
【0052】
上述した異常判定動作は、通常動作範囲の下限値FSminを第1の基準周波数として使用して、ステップS2で導出された制御周波数FCが第1の基準周波数よりも小さい状態が、所定期間を超えて継続したことを条件として異常の発生を判定するものであり、その条件の成立の結果、電流共振コンバータ部3の第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4を停止する保護動作が実行される。
【0053】
また、図4に示す制御手順では、ステップS5において、ステップS2で導出された制御周波数FCが通常動作範囲の上限値FSmaxよりも大きいと判別された場合(Yes)にも、LLC制御部15は、周波数リミッタ部25において、制御周波数FCに対して通常動作範囲の上限値FSmaxを設定するとともに(ステップS6)、同様の異常判定動作を実行するものである。
【0054】
この場合には、通常動作範囲の上限値FSmaxを第2の基準周波数として使用して、ステップS2で導出された制御周波数FCが第2の基準周波数よりも大きい状態が、所定期間を超えて継続したことを条件として異常の発生を判定し、その条件の成立の結果、電流共振コンバータ部3の第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4を停止する保護動作を実行することになる。
【0055】
尚、図4に示す制御手順において、ステップS2で導出された制御周波数FCが通常動作範囲の下限値FSminよりも小さいか、または、通常動作範囲の上限値FSmaxよりも大きいかのいずれかの条件が成立して、ステップS10において監視タイマがセットされた後、監視タイマが満了する以前に、ステップS2で導出されたスイッチ素子のスイッチング周波数FCが下限値FSmin以上かつ上限値FSmax以下となる事象が発生した場合には、ステップS8において監視タイマがクリアされることによって、異常判定動作が中断され、通常動作が再開される。
【0056】
また、図4に示す制御手順では、上述したような、ステップS2で導出された制御周波数FCが通常動作範囲の下限値FSminよりも小さい状態が、所定期間を超えて継続した場合(第1の条件)と、ステップS2で導出された制御周波数FCが通常動作範囲の上限値FSmaxよりも大きい状態が、所定期間を超えて継続した場合(第2の条件)だけでなく、第3の条件として、ステップS2で導出された制御周波数FCが通常動作範囲の下限値FSminよりも小さいかまたは上限値FSmaxよりも大きい状態が(途中に通常動作範囲内の周波数となる事象が発生することなく)、所定期間を超えて継続した場合にも、異常が発生したと判定され、電流共振コンバータ部3の第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4が停止されることになる。
【0057】
但し、実際のスイッチング電源装置1の動作において、上記第3の条件が成立するような事象が発生する可能性は低いと考えられるため、図4に示す制御手順は、事実上、上記第1の条件及び上記第2の条件の成立を監視して、異常の発生を判定する手順の例であると言える。勿論、図4に示す制御手順において、ステップS2で導出された制御周波数FCが通常動作範囲の下限値FSminよりも小さい状態の発生を契機として監視タイマをセットしたのか、または、ステップS2で導出された制御周波数FCが通常動作範囲の上限値FSmaxよりも大きい状態の発生を契機として監視タイマをセットしたのかを区別するためのフラグ等を使用することにより、上記第1の条件または第2の条件の成立のみを監視するものであってもよい。
【0058】
ここで、ステップS2で導出された制御周波数FCが通常動作範囲の下限値FSminよりも小さい状態が、所定期間を超えて継続したという第1の条件は、スイッチング電源装置1に過負荷または負荷のショート等の異常が発生した場合に、このような異常を検出するための条件に相当する。そして、スイッチング電源装置1にこのような異常が発生した状況において保護動作を実行せず、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4のスイッチング動作を継続すると、スイッチング電源装置1に、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4に貫通電流が流れて第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4が破壊される等の損傷が発生するおそれがある。
【0059】
一方、ステップS2で導出された制御周波数FCが通常動作範囲の上限値FSmaxよりも大きい状態が、所定期間を超えて継続したという第2の条件が成立するような状況では、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4のスイッチング動作を継続しても、スイッチング電源装置1に上述したような損傷が発生する可能性は低いため、第2の条件の成立に相当する異常は、スイッチング電源装置1の保護の観点から、その重大性が比較的低いものである。
【0060】
この点に鑑みて、LLC制御部15は、異常判定動作のための第2の基準周波数を有せず、その制御手順における異常発生を判定するための条件に、上記第2の条件が含まれないものであってもよい。例えば、図4に示すステップS5において、ステップS2で導出された制御周波数FCが通常動作範囲の上限値FSmaxよりも大きいと判別された場合(Yes)、ステップS6において制御周波数FCを通常動作範囲の上限値FSmaxに設定して一定の安全を確保した後、制御をステップS8に移行させ、ステップS9〜S12の異常判定動作を実行することなく、通常動作を継続するものであってもよい。あるいは、より簡易な制御手順として、単に、ステップS5及びステップS6を省略するものであってもよい。
【0061】
上述したようなスイッチング電源装置1及びその制御方法によれば、出力電圧検出部11及びLLC制御部15を含むスイッチング制御部12のような、電流共振コンバータ部3の通常動作において出力電圧をPFM制御するための回路系に対して、異常の発生を検出して保護動作を実行するための検出回路及び/または保護回路を別に設けることなく、LLC制御部15で実行される通常動作の制御手順を拡張することによって、スイッチング電源装置1の異常発生を検出するとともに適切な保護動作を実行し、装置の安全を確保することが可能となる。
【0062】
また、スイッチング電源装置1及びその制御方法は、電流共振コンバータ部3が有する第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4のスイッチング動作に適用され、そのスイッチング動作のオンデューティは所定の値(例えば、50%)に固定されているため、スイッチング周波数のみを使用する簡易な制御方法により、確実に装置の安全を確保することが可能となる。
【0063】
この際、図4に示す制御手順において、ステップS2で導出される制御周波数FCが、通常動作範囲の下限値Fminよりも小さい場合に、その状態が継続する間、及び、通常動作範囲の上限値Fmaxよりも大きい場合に、その状態が継続する間において、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4を、それぞれ、通常動作範囲の下限値Fmin、または、通常動作範囲の上限値Fmaxの周波数でスイッチング動作させる構成は、装置の安全を確保する上でさらに有利なものである。
【0064】
ここで、図4に示す制御手順では、通常動作範囲の下限値FSminが、異常判定動作における第1の基準周波数として使用され、通常動作範囲の上限値FSmaxが、異常判定動作における第2の基準周波数として使用された。
但し、スイッチング電源装置1において、このような第1及び第2の基準周波数は、電流共振コンバータ部3の共振特性等の設計仕様に基づいて設定される通常動作範囲の下限値FSmin及び上限値FSmaxに対して、個別のスイッチング電源装置の特性のばらつき及び/またはスイッチング電源装置に要求される安全率を加味することにより、それぞれ、通常動作範囲の下限値FSmin及び上限値FSmaxとは異なる周波数(典型的には、それぞれ、下限値FSmin及び上限値FSmaxの近傍)に設定されるものであってもよい。
【0065】
図5は、スイッチング電源装置1の制御方法の別の例として、異常判定動作における第1の基準周波数(図6に示すFref1)を、通常動作範囲の下限値FSminよりも大きい(かつ、通常動作範囲の上限値Fmaxよりも小さい)周波数に設定した場合のLLC制御部15における制御手順を示したフローチャートである。
尚、図5に示す制御手順において、ステップS101、S102、S108〜S114については、図4に示す制御手順のステップS1、S2、S8〜S14とそれぞれ同様のものであるため、以下では、図4に示す制御手順と重複する部分の説明は適宜省略し、主として相違点について説明する。
【0066】
図5に示す制御手順において、LLC制御部15は、周波数リミッタ部25において、ステップS102において導出された制御周波数FCが、通常動作範囲の下限値FSminよりも小さいか否かを判別し(ステップS103)、制御周波数FCが通常動作範囲の下限値FSmin以上であった場合(No)、続いて、制御周波数FCが通常動作範囲の上限値FSmaxよりも大きいか否かを判別する(ステップS105)。そして、図5に示す制御手順では、ステップS105において、制御周波数FCが通常動作範囲の上限値FSmax以下であると判別され(No)、したがって、制御周波数FCが通常動作範囲内にあった場合でも、図4に示す制御手順とは異なり、さらに、制御周波数FCが第1の基準周波数Fref1(>FSmin)よりも小さいか否かが判別される(ステップS107)。
【0067】
そして、ステップS107において、制御周波数FCが第1の基準周波数Fref1以上であると判別された場合(No)に、LLC制御部15は、監視タイマをクリアして(ステップS108)、通常動作を継続し、また、ステップS107において、制御周波数FCが第1の基準周波数Fref1よりも小さい判別された場合(Yes)に、LLC制御部15は、ステップS109〜S112の異常判定動作を実行する。
【0068】
図5に示す制御手順において、第1の基準周波数Fref1を、通常動作範囲の下限値FSminに対してどの程度大きく設定するかは、個別のスイッチング電源装置の特性のばらつき及び/またはスイッチング電源装置に要求される安全率を勘案の上、適切に設定されるものである。これによって、図5に示す制御手順では、図4に示す制御手順と比較して、スイッチング電源1における過負荷及び負荷のショート等の異常の発生を、より確実に検出して、装置の安全性を向上させることができる。
【0069】
尚、ステップS103において、ステップS102で導出された制御周波数FCが、通常動作範囲の下限値FSminよりも小さいと判別された場合(Yes)には、ステップS104において、制御周波数FCが通常動作範囲の下限値FSminに設定された後、ステップS107に制御が移行するが、この場合にも、FSmin<Fref1より、制御周波数FCは第1の基準周波数Fref1よりも小さいと判別されて(Yes)、ステップS109〜S112の異常判定動作が実行される。
【0070】
また、図5に示す制御手順は、LLC制御部15が、異常判定動作のための第2の基準周波数を有せず、その制御手順における異常の発生を判定するための条件に、ステップS102で導出された制御周波数FCが第2の基準周波数よりも大きい状態が、所定期間を超えて継続したという第2の条件が含まれない場合に相当する。
例えば、ステップS105において、ステップS102で導出された制御周波数FCが、通常動作範囲の上限値FSmaxよりも大きいと判別された場合(Yes)には、ステップS106において、制御周波数FCが通常動作範囲の上限値FSmaxに設定された後、ステップS107に制御が移行するが、この場合には、FSmax>Fref1より、制御周波数FCは第1の基準周波数Fref1よりも大きいと判別されて(No)、制御はステップS108に移行し、通常動作が継続される。
【0071】
但し、図5に示す制御手順においても、LLC制御部15は、第1の基準周波数Fref1よりも大きい第2の基準周波数を有し、異常の発生を判定するための条件に、上記第2の条件が含まれるものであってもよい。この際、第2の基準周波数は、通常動作範囲の上限値FSmaxと一致するものであってもよく、あるいは、通常動作範囲の上限値FSmaxに対して、個別のスイッチング電源装置の特性のばらつき及び/またはスイッチング電源装置に要求される安全率を加味し、通常動作範囲の上限値Fmaxとは異なる値に設定されるものであってもよい。
【0072】
さらに、スイッチング電源装置1において、異常判定動作における第1の基準周波数は、図6に示すFref2のように、通常動作範囲の下限値FSminよりも小さい周波数に設定されるものであってもよい。このような設定は、例えば、制御周波数FCの通常動作範囲(FSmin≦FC≦FSmax)が、個別のスイッチング電源装置の特性のばらつき及び/またはスイッチング電源装置に要求される安全率が十分に加味されて設定されている場合に、異常発生の検出が過敏になり、実際には異常が発生していない状況を異常が発生した判定してしまう誤認を抑制して、スイッチング電源装置1を安定に動作させるために有利な構成である。
【0073】
以上、本発明を好ましい実施形態を用いて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述したスイッチング制御部12の構成及びその制御手順は、本発明に係るスイッチング電源装置の制御方法を実装するスイッチング制御部12の構成及びその制御手順の一例に過ぎず、本発明に係るスイッチング電源装置の制御方法を実装するスイッチング制御部を、アナログ回路によって構成するものであってもよい。
【0074】
また、上述した実施形態では、異常判定動作に使用される監視タイマは、スイッチ素子制御回路13が備えるものとしたが、監視タイマは、スイッチ素子制御回路13の外部に備えられるものであってもよい。
【0075】
また、本発明が適用されるスイッチング電源装置の構成は、図1に示すスイッチング電源装置1に限定されるものではなく、出力電圧をフィードバックすることによりPFM制御するように構成された電流共振コンバータ部を含むものである限り、任意のスイッチング電源装置に対して適用することができる。
【0076】
例えば、本発明に係るスイッチング電源装置は、図7に示すスイッチング電源装置1aのように、その力率改善部2aが、2つのダイオードD1、D5の直列回路と2つのスイッチ素子Q5、Q2の直列回路とが並列接続され、両直列回路の中間点間にリアクトルL1と交流電源Vacが直列に接続されており、さらに、第1、第2ダイオードD1、D2の直列回路の両端に対して第1平滑コンデンサCiが並列接続された構成を有しており、電流共振コンバータ部3aは、力率改善部2aと上記2つのスイッチ素子Q5、Q2を共有するとともに、このスイッチ素子Q5、Q2の直列回路と、第3、第4のスイッチ素子Q3、Q4の直列回路とを並列接続してなるフルブリッジ回路を含むものであってもよい。
【0077】
あるいは、本発明に係るスイッチング電源装置は、図8に示すスイッチング電源装置1bのように、その力率改善部2bが、第1のリアクトルL1と第2のリアクトルL2とを備え、第1のリアクトルL1の一端は、第1の整流素子D1と第1のスイッチ素子Q1の接続点に接続され、他端は、交流電源Vinの一端に接続されており、第2のリアクトルL2の一端は、第2の整流素子D2と第2のスイッチ素子Q2の接続点に接続され、他端は、交流電源Vinの他端に接続されているものであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1,1a,1b:スイッチング電源装置、2,2a,2b:力率改善部、3,3a:電流共振コンバータ部、10:PFC電圧検出部、11:出力電圧検出部、12,12a:スイッチング制御部、Q1〜Q4:第1〜第4のスイッチ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換して負荷回路に出力する電流共振コンバータ部と、前記電流共振コンバータ部が有するスイッチ素子のスイッチング動作を制御するスイッチング制御部と、前記第2の直流電圧を検出し、その検出値に応じた出力信号を前記スイッチング制御部に出力する出力電圧検出部と、を含むスイッチング電源装置であって、
前記スイッチング制御部は、前記出力電圧検出部からの出力信号に基づいて、前記第2の直流電圧を所定の出力電圧とするための、前記スイッチ素子のスイッチング周波数を導出するとともに、該導出されたスイッチング周波数に基づいてスイッチング電源装置の異常の発生を判定し、前記異常が発生したと判定した場合、前記スイッチ素子のスイッチング動作を停止させることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記スイッチング制御部は、前記導出されたスイッチング周波数が所定の通常動作範囲の下限値以上かつ上限値以下である場合には、前記導出されたスイッチング周波数で前記スイッチ素子をスイッチング動作させるとともに、前記スイッチング電源装置に異常が発生したと判定する条件に、前記導出されたスイッチング周波数が第1の基準周波数よりも小さい状態が、所定期間を超えて継続したこと、が含まれることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記第1の基準周波数は、前記通常動作範囲の下限値と一致することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記第1の基準周波数は、前記通常動作範囲の下限値よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記第1の基準周波数は、前記通常動作範囲の下限値よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
第1の直流電圧を第2の直流電圧に変換して負荷回路に出力する電流共振コンバータ部と、前記電流共振コンバータ部が有するスイッチ素子のスイッチング動作を制御するスイッチング制御部と、前記第2の直流電圧を検出し、その検出値に応じた出力信号を前記スイッチング制御部に出力する出力電圧検出部と、を含むスイッチング電源装置の制御方法であって、
前記出力電圧検出部からの出力信号に基づいて、前記第2の直流電圧を所定の出力電圧とするための、前記スイッチ素子のスイッチング周波数を導出するステップと、該導出されたスイッチング周波数に基づいてスイッチング電源装置の異常の発生を判定するステップと、前記異常が発生したと判定した場合、前記スイッチ素子のスイッチング動作を停止させるステップとを含むことを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−46462(P2013−46462A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181606(P2011−181606)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】