説明

スパイクシューズ

【課題】 衝撃緩衝性と反発性とに優れたスパイクシューズを提供する。
【解決手段】 靴底1の踵部分に前後する形態で設けられた複数のスタッド2rに対応させた位置に、動歩行時又は走行時において、踵部分にかかる各スタッド2rからの突き上げによる衝撃を緩和するための合成樹脂製の弾性体3を配設してあるスパイクシューズSであって、踵部分の前側に位置するスタッド2rfに対応する弾性体3の硬度を、それよりも後側に位置するスタッド2rrに対応する弾性体3よりも高硬度にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球、サッカー、ラグビー等のフィールドスポーツにおいて、靴底の踵部分に前後する形態で設けられた複数の各スタッドに対応させた位置に、動歩行時又は走行時において、踵部分にかかる各スタッドからの突き上げによる衝撃を緩和するための合成樹脂製の弾性体を配設してあるスパイクシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスパイクシューズでは、それの踵部分に設けられたスタッド配設箇所に対応する位置に踵部分にかかる各スタッドからの突き上げによる衝撃を緩和するための衝撃吸収材として弾性体を配設していた(例えば、特許文献1参照。)。
そして、一般的に、これら弾性体は同一の硬度のものを使用している。
【特許文献1】実公平6−10814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、野球やサッカー等のフィールドスポーツでは、動歩行時や走行時における各スタッドから踵への突き上げに対する衝撃緩衝性のみならず、瞬発力を向上させるために反発性も備えていることが望ましいが、従来のスパイクシューズは、衝撃緩衝性の高い軟質で同一硬度の弾性体を配設して、動歩行時や走行時における各スタッドから踵への突き上げに対する衝撃を緩和する構成であるため、衝撃を緩衝する反面、着用者の瞬発力を低減させていた。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、スパイクシューズにおいて、合理的な改良により踵部分にかかる衝撃を緩和するだけでなく、着用者の瞬発力をも向上させる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1特徴構成は、スパイクシューズに係り、その特徴は、
靴底の踵部分に前後する形態で設けられた複数のスタッドに対応させた位置に、動歩行時又は走行時において、踵部分にかかる各スタッドからの突き上げによる衝撃を緩和するための合成樹脂製の弾性体を配設してあるスパイクシューズにおいて、
前記踵部分の前側に位置するスタッドに対応する弾性体の硬度を、それよりも後側に位置するスタッドに対応する弾性体よりも高硬度にしてある点にある。
【0005】
つまり、この構成であれば、動歩行時及び走行時における足の動きは、踵から着地して、重心を前方のつま先側に移動させて、親指で地面を蹴るローリング運動を行うことが多いため、靴底の踵部分に前後する形態で設けられた複数のスタッドに対応させた位置に弾性体を配設することで、着地時に踵部分全体にかかる各スタッドからの突き上げによる衝撃を緩和するとともに、踵部分の前側に位置するスタッドに対応する弾性体を反発性の高い高硬度(硬質)にし、踵部分の後側に位置するスタッドに対応する弾性体を衝撃緩衝性の高い低硬度(軟質)にすることで、特に着地時における衝撃の大きい踵部分の後側のスタッドからの突き上げによる衝撃を効果的に緩和することができ、更に、ローリング運動において重心が移動する際に、前側の硬質の弾性体が踵に反発力を付与するので、ローリング運動をスムーズ、かつ、俊敏に行うことができる。
【0006】
要するに、野球やサッカー等のフィールドスポーツにおいて着用されるスパイクシューズにおいて、このように構成すれば、後側の弾性体の衝撃緩衝性により、足にかかる負担を効果的に低減することができ、これによって、足の故障や怪我を極力回避することができる。
そして、前側の弾性体の反発性により、ローリング運動をスムーズ、かつ、俊敏に行うことができ、これにより、瞬発力を必要とするフィールドスポーツに着用するスパイクシューズとして非常に有利なものにすることができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施において好適な構成であり、その特徴は、
前記弾性体の内側縁部が、それら弾性体が対応する各スタッドの配設箇所よりも靴底の内方側に位置する状態に配設してある点にある。
【0008】
靴底の踵部分は、着用者の荷重により内方側部分が下方に位置する形態に湾曲するため、各スタッドからの突き上げによる衝撃は、各スタッドの内側に偏って弾性体に伝わる。
【0009】
つまり、この構成であれば、弾性体が各スタッドの配設箇所よりも靴底の内方側に位置する状態で配置されているので、各スタッドの内側に偏る衝撃を効率よく弾性体に伝達することができ、これによって、効率的に衝撃緩衝性を向上させることができると共に、反発性も効率的に向上させることができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施において好適な構成であり、その特徴は、
前記弾性体の外側縁部が、それら弾性体が対応する各スタッドの配設箇所よりも靴底の外方側に位置する状態で配設してある点にある。
【0011】
つまり、この構成であれば、各弾性体の外側縁部が各スタッドの配設箇所よりも靴底の外方側に位置する状態に配設してあるので、動歩行又は走行において着地した際、スタッドからの突き上げにより踵部分にかかる衝撃力を外方側にも分散させて外部に逃がすことができるので、衝撃による足にかかる負担を一層低減させることができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれか1つの特徴構成の実施において好適な構成であり、その特徴は、
前記靴底の踵部分が、少なくともスタッドを備えた表底体の上側に、前記弾性体を備えた中間層体を積層させた状態で形成されている点にある。
【0013】
つまり、この構成であれば、スタッドを備えた地面と接触する表底体と弾性体を備えた中間層体とが別体で形成されているので、これら表底体と中間層体とを別部材で形成することが可能で、これによって、表底体を磨耗の少ない耐久性に優れた硬質の材料で形成し、中間層体を衝撃緩衝性の高い軟質の材料で形成することができ、野球やサッカー等に使用するスパイクシューズとして、耐久性がよく、衝撃緩和に優れ、瞬発力を向上させることのできる優れたものにすることができる。
【0014】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成の実施において好適な構成であり、その特徴は、
前記靴底の踵部分において、前記表底体の周縁部の少なくとも一部が中間層体を包み込む形態で立ち上がった波形状に形成してあるとともに、
前記中間層体の側面に、表底体の波状周縁部と上下方向から係合する波形状の係合部が形成されている点にある。
【0015】
つまり、この構成であれば、表底体の周縁部の少なくとも一部が中間層体を包み込む形態で立ち上がった形状に形成されていることで、着用した際に中間層体にかかる上方からの荷重により中間層体が型崩れして外方に広がることを抑制することができるとともに、その表底体の周縁部が波形状に形成され、中間層体の側面に形成された表底体の波状周縁部と上下方向で係合する波形状の係合部と係合するので、表底体に対して積層する中間層体の位置決め手段となり、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0016】
そして、中間層体の型崩れを抑制することができるので、中間層体に備えられた弾性体の衝撃緩衝性及び反発性を、各スタッドからの突き上げによる衝撃に対して確実に作用させることができる。
【0017】
本発明の第6特徴構成は、第5特徴構成のいずれか1つの特徴構成の実施において好適な構成であり、その特徴は、
前記弾性体の外側縁部が、それら弾性体が対応する各スタッドの配設箇所よりも靴底の外方側に位置する状態で、かつ、その外側縁部の少なくとも一部が、中間層体の側面に露呈する形態で配設されているとともに、
前記表底体の波状周縁部の山形部分が、それら弾性体の露呈箇所に位置するように形成されてある点にある。
【0018】
つまり、この構成であれば、各弾性体の外側縁部が各スタッドの配設箇所よりも靴底の外方側に位置する状態で、かつ、その外側縁部の少なくとも一部が中間層体の側面に露呈する形態で弾性体を配設してあるので、動歩行又は走行において着地した際、スタッドからの突き上げにより踵部分にかかる衝撃力を外方側にも分散させて外部に逃がすことができるので、衝撃による足にかかる負担を一層低減させることができるとともに、表底体の波状周縁部の山形部分が、それら弾性体の外側縁部の露呈箇所に位置するように形成されているので、表底体と中間層体とを積層させた状態では弾性体は、表底体の波状周縁部の山形部分によって覆われた外部に露出していない保護された形態となるので、弾性体の破損等による衝撃緩衝性及び反発力の低下を防止することができる。
【0019】
本発明の第7特徴構成は、第6特徴構成のいずれか1つの特徴構成の実施において好適な構成であり、その特徴は、
前記表底体の波状周縁部の山形部分に、中間層体に配設された各弾性体を透視可能な透過性の窓が形成されている点にある。
【0020】
つまり、この構成であれば、透過窓から各弾性体を透かし見ることができるので、看者(つまり、購入者、着用者、観客等)に対して弾性体の存在を示すことができるとともに、各弾性体を着色することで、デザイン性を向上させることもでき、これによって、本発明のスパイクシューズの注目度が向上する。
【0021】
本発明の第8特徴構成は、第4〜第7特徴構成のいずれか1つの特徴構成の実施において好適な構成であり、その特徴は、
前記中間層体に備えられた弾性体に、前記表底体との間に空隙を設けるための凹部を形成してある点にある。
【0022】
つまり、この構成であれば、凹部が、弾性体が衝撃を緩和する際に変形するためのスペースとなることで、踵部分に衝撃がかかった際に弾性体が容易に変形することができるので、その衝撃緩衝性をより効果的に発揮することができる。
【0023】
本発明の第9特徴構成は、第4〜第8特徴構成のいずれか1つの特徴構成の実施において好適な構成であり、その特徴は、
前記中間層体に上下方向に貫通する貫通孔を形成するとともに、
前記中間層体の上面に、その貫通孔を封塞する弾性蓋部材を配設して、表底体と弾性蓋部材との間の中間層体に中空部を形成する構成にしてある点にある。
【0024】
つまり、この構成であれば、表底体と弾性蓋部材との間の中間層体に形成される中空部がエアクッションとなって、踵部分にかかる衝撃を緩和するとともに、弾性蓋部材が有する衝撃緩衝性により、より一層の衝撃緩和の効果を得ることができる。
【0025】
本発明の第10特徴構成は、第4〜第9特徴構成のいずれか1つの特徴構成の実施において好適な構成であり、その特徴は、
前記中間層体の上面における弾性体配設箇所に対応する位置に、それら弾性体を上面側から同時に押圧可能な高反発性の薄板材が配設されている点にある。
【0026】
つまり、この構成であれば、高反発性薄板材を中間層体の上面における弾性体配設箇所に対応する位置に配設し、着用するとそれら弾性体を上面側から同時に押圧可能にしてあることで、足のローリング運動において高反発性薄板材が板バネ的に作用をし、これによって、弾性体を介して高反発薄板材に伝わった衝撃力を、ローリング運動における踵部分への反発力に変換し、着用者の瞬発力を向上させることができる。
【0027】
本発明の第11特徴構成は、第10特徴構成の実施において好適な構成であり、その特徴は、
前記弾性体のそれぞれを、中間層体に上下方向に貫通形成された嵌装孔に、各弾性体の一部が中間層体の上面に露呈する形態で嵌設されているとともに、
前記高反発性薄板材が、中間層体の上面に露呈している各弾性体に対して当接する複数の押圧部とそれら押圧部を連結する連結杆部とから形成されている点にある。
【0028】
つまり、この構成であれば、高反発性薄板材の押圧部と弾性体とが当接した状態で配設されているので、各弾性体によって緩和された衝撃が高反発薄板材の押圧部に直接伝達され、そして、それら押圧部が連結杆部により一体的に連結されていることで、各弾性体が高反発性薄板材により連結された形態となり、ローリング運動における後側の弾性体に当接した押圧部に伝達された衝撃力が、連結杆部によって前側の弾性体に当接した押圧部に伝達され、これによって、前側の弾性体に生じる反発力が増大して、着用者の瞬発力を向上させることができる。
【0029】
本発明の第12特徴構成は、第11特徴構成の実施において好適な構成であり、その特徴は、
前記高反発性薄板材が、それの連結杆部が前記中間層体に形成された貫通孔を交差する形態で配設されているとともに、
前記表底体の中間層体の貫通孔に対応する位置に、貫通孔を交差する高反発性薄板材の連結杆部を透視可能な透過性の窓が形成されている点にある。
【0030】
つまり、この構成であれば、透過窓から高反発性薄板材の連結杆部を透かし見ることができるので、看者(つまり、購入者、着用者等)に対して高反発薄板材の存在を示すことができるとともに、デザイン性を向上させることもでき、これによって、本発明のスパイクシューズの注目度が向上する。
【0031】
本発明の第13特徴構成は、第4〜第12特徴構成のいずれか1つの特徴構成の実施において好適な構成であり、その特徴は、
前記表底体の中間層体側の面におけるスタッド配設箇所に対応する位置に、すり鉢状の凹部が形成されている点にある。
【0032】
つまり、この構成にすることで、スタッドから弾性体に伝わる衝撃をスタッド配設箇所に対応した部分に集中させることなく、その衝撃力をすり鉢状凹部の形状に沿って拡散させた状態で弾性体に対して平均的に伝達することができるので、弾性体の衝撃緩衝性及び反発性を効率的に作用させることができる。
【0033】
本発明の第14特徴構成は、第1〜第13特徴構成のいずれか1つの特徴構成の実施において好適な構成であり、その特徴は、
前記靴底の踵部分に設けられたスタッドが前後2列に並ぶ構成で、前側スタッドに対応する弾性体の硬度をA40〜A50とし、後側スタッドに対応する弾性体の硬度をA30〜A39としてある点にある。
【0034】
つまり、この構成であれば、JISK6253規格のデュロメータタイプAによる弾性体の硬度を、前側スタッドに対応する弾性体をA40〜A50とし、後側スタッドに対応する弾性体をA30〜A39とすることで、前側の弾性体は高反発性でありながらも衝撃緩衝性をも有する好適なもので、後側の弾性体は高衝撃緩衝性でありながらも反発性をも有する好適なものにすることができ、これによって、足にかかる負担を効果的に低減し、ローリング運動をスムーズ、かつ、俊敏に行うことができるフィールドスポーツに着用するスパイクシューズとして非常に有利なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
〔実施形態〕
図1〜図9は、本発明の実施形態である野球用のスパイクシューズSを示し、1Aは多数の固定スタッド2が一体形成された表底体である熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)製のアウトソール、1Bはアウトソール1Aの踵部分に形成された4つの後部スタッド2rのそれぞれに対応した位置に弾性体3を備えた中間層体であるエチレンビニルアセテート共重合体(EVA)製のミッドソール、1Cは天然皮革や合成皮革、織布、不織布等で製作された甲革であるアッパーUの靴底側周縁部、1Dはアウトソール1A、ミッドソール1B及びアッパーUの靴底側周縁部1Cの上に配設される中間層体であるフィラー、1Eはフィラー1Dの上に配設され、着用者の足Fが接触する中敷であるインナーソールであり、スパイクシューズSの靴底1は、最下層であるアウトソール1A、ミッドソール1B、アッパーUの靴底側周縁部1C、及び、フィラー1Dの順で積層接着して形成され、フィラー1Dの上に靴底1の最上層であるインナーソール1Eが積層非接着の状態で配設された5層構造となっている。
【0036】
アウトソール1Aは、耐磨耗性及び可撓性を有する硬度A95(JISK6253規格・デュロメータタイプA)のTPU材から製作され、アウトソール1Aの下面側には、9つの前部スタッド2f、7つの補助スタッド2a、及び、4つの後部スタッド2rがアウトソール1Aと一体形成されている。
【0037】
そして、アウトソール1Aの上面(ミッドソール側の面)において、それら前部スタッド2f及び後部スタッド2rそれぞれの形成箇所に、それら前部スタッド2f及び後部スタッド2rの長手方向に延びるすり鉢状凹部4が形成されており、このすり鉢状凹部4により、固定スタッド2からの突き上げによる衝撃力をすり鉢状凹部4の形状に沿って拡散させることができる。
【0038】
また、アウトソール1Aの踵部分の周縁部5が、それの上側に位置するミッドソール1Bを包み込む形態で立ち上がった波形状に形成されていて、これによって、着用した際にミッドソール1Bにかかる上方からの荷重によりミッドソール1Bが型崩れして外方に広がることを抑制することができ、ミッドソール1Bの型崩れを抑制することができる。
【0039】
そして、アウトソール1Aの踵部分の中央位置には、上面側に突出した形態で形成された孔6aを、アウトソール1Aと同硬度の透過性TPU材6bにより閉塞することで形成された第1透過窓6が設けられているとともに、アウトソール1Aの踵部分の波状周縁部5の山形部分5aのそれぞれに形成された孔7aを、アウトソール1Aと同硬度の透過性TPU材7bにより閉塞することで形成された第2透過窓7が設けられている。
【0040】
ミッドソール1Bは、アウトソール1Aの土踏まず部分から踵部分にかけての領域に対して積層する形状で、衝撃緩衝性の高い高分子発泡体であるEVA材で成形され、ミッドソール1Bの側面には、アウトソール1Aの波状周縁部5と上下方向から積層係合する波形状の係合部8が形成されている。
【0041】
ミッドソール1Bにおいて、アウトソール1Aに一体形成されている4つの後部スタッド2rに対応する各位置には、着地時に踵部分にかかる4つの後部スタッド2rからの突き上げによる衝撃を緩和する熱可塑性プラスチックゴム(TPR)製の弾性体3を配設することができるように、ミッドソール1Bを貫通する嵌装孔9が形成されていて、弾性体3は嵌装孔9に対して下方から嵌合して配設されるようになっている。
【0042】
更に、4つの嵌装孔9に囲まれた領域の中心位置には、上下方向に貫通する貫通孔10が形成されていて、この貫通孔10の下側周縁部分にアウトソール1Aに形成されている第1透過窓6の上側部分が係合する形態になっている。
【0043】
各弾性体3は、アウトソール1Aに一体形成されている4つの後部スタッド2rの配設箇所に対し、上下方向で完全に覆う状態で、かつ、弾性体3の内側縁部3aが固定スタッド2の配設箇所よりも内方側に位置し、弾性体3の外側縁部3bが固定スタッド2の配設箇所よりも外方側に位置するように重合しているとともに、各弾性体3は、各固定スタッド2の長手方向における長さとほぼ同一に形成されている。
【0044】
これによって、後部スタッド2rからの突き上げにより踵部分にかかる衝撃力をシューズSの外方側にも分散させて外部に逃がすことができるので、衝撃による足Fへの負担を一層低減させることができるとともに、着用者の荷重により靴底1の踵部分の中央部分が下方に位置する形態に湾曲した時に、各固定スタッド2の内側に偏って伝わる衝撃を、効率よく弾性体3に伝達することができ、効率的に衝撃緩衝性を向上させることができると共に、反発性も効率的に向上させることができる。
【0045】
そして、弾性体3は、それの外側縁部3bの下方側部分がミッドソール1Bの側面と面一の状態で露呈するように形成されており、その側面側露呈部分3cに対して、アウトソール1Aの波状周縁部5の山形部分5aが位置するように構成されているので、弾性体3の側面側露呈部分3cがアウトソール1Aの波状周縁部5により覆われる形態で保護されているとともに、その波状周縁部5の山形部分5aに形成されている第2透過窓7により、ミッドソール1Bに嵌装された各弾性体3を目視することができる。
【0046】
また、各弾性体3の側面側露呈部分3cには、アウトソール1Aの波形周縁部5との間に空隙を設けて、衝撃を緩衝する弾性体3の変形を許可するための溝状の凹部3dが上下方向に4本形成されている。
【0047】
アウトソール1Aの4つの後部スタッド2rのうち、前側に位置する2つの前側スタッド2rfに対応する前側弾性体3Aを高反発性と衝撃緩衝性を備える硬度A45(JISK6253規格・デュロメータタイプA)のものにするとともに、後側に位置する2つの後側スタッド2rrに対応する後側弾性体3Bを高衝撃緩衝性と反発性を備える硬度A35(JISK6253規格・デュロメータタイプA)のものにしてある。
【0048】
このように構成することで、4つの弾性体3が着地時に踵部分全体にかかる4つの後部スタッド2rからの突き上げによる衝撃を緩和することができるとともに、前側弾性体3Aを反発性の高い高硬度(硬質)にし、後側弾性体3Bを衝撃緩衝性の高い低硬度(軟質)にすることで、特に、図9(イ)の示す着地時における衝撃の大きい踵部分の後側スタッド2rrからの突き上げによる衝撃を効果的に緩和することができ、更に、ローリング運動において重心が移動し、図9(ロ)に示す前側スタッド2rfの着地時に、硬質の前側弾性体3Aが前側スタッド2rfに反発力を付与するので、ローリング運動をスムーズ、かつ、俊敏に行うことができる。
【0049】
また、弾性体3とアウトソール1Aとの関係において、アウトソール1Aの上面における後部スタッド形成箇所に形成されたすり鉢状凹部4により、固定スタッド2からの突き上げによる衝撃力が弾性体3に対してすり鉢状凹部4の形状に沿って拡散させた状態で平均的に伝達されるので、弾性体3の衝撃緩衝性及び反発性をより効率的に作用させることができる。
【0050】
ミッドソールの上面には、ミッドソール1Bを上下方向で貫通してある嵌装孔9により、ミッドソール1Bの上面側に露呈している4つの弾性体3のそれぞれに対して当接して、それら弾性体3を上面側から同時に押圧可能な高反発性のTPUから製作されている薄板材であるクロスプレート11が配設されている。
なお、TPU製のクロスプレート11の硬度はA35(JISK6253規格・デュロメータタイプA)となっている。
【0051】
クロスプレート11は、4つの弾性体3それぞれの上面側露呈部分3eに当接する押圧部11aとそれら4つの押圧部11aを連結する十字状の連結杆部11bとを備えた形態に一体形成されていて、十字状の連結杆部11bは、4つの嵌装孔9(すなわち、弾性体3の上面側露呈箇所、又は、押圧部11aの配設位置)に囲まれた領域の中心位置に形成された貫通孔10の上で交差する形状となり、よって、アウトソール1Aに形成された第1透過窓6から目視することできる。
【0052】
また、連結杆部11bは、ミッドソール1Bの貫通孔10の周縁部に沿う形態で、交差部分が貫通孔10内に落ち込んだ形状に形成されている。
【0053】
そして、ミッドソール1Bの上面には、クロスプレート11の連結杆部11bに係合して、クロスプレート11の配設箇所の位置決め手段となる係合溝12が、4つの嵌装孔9それぞれの周縁から貫通孔10の周縁に達する形態で形成されている。
【0054】
このようにクロスプレート11を配設することで、足Fのローリング運動における衝撃に対して、クロスプレート11がそれら弾性体3を上面側から同時に押圧して板バネ的に作用をするので、弾性体3を介してクロスプレート11に伝わった衝撃力を、ローリング運動における踵部分への反発力に変換し、着用者の瞬発力を向上させることができる。
【0055】
更に、クロスプレート11の上に、貫通孔10を封塞しアウトソール1Aとの間に中空部13を形成するためのEVAから製作された硬度A65(JISK6253規格・デュロメータタイプA)の弾性蓋部材14が配設されており、この中空部13がエアクッションとなって、踵部分にかかる衝撃を緩和するとともに、EVA製の弾性蓋部材14が有する衝撃緩衝性と相俟って、より一層の衝撃緩和の効果を奏する。
【0056】
そして、アッパーUが、それの靴底側周縁部1Cの一部が弾性蓋部材14の上面にかかる形態で積層しているとともに、アッパーUの靴底側周縁部1C、アウトソール1Aのつま先から土踏まずまでの部分、及び、ミッドソール1Bの上に、天然皮革や合成皮革、不織布等で製作されたフィラー1Dが積層接着されており、更に、フィラー1Dの上に、クッション性に優れたポリエステルやEVA材等から製作され、着用時におけるフィット感やソフト感が良好なインナーソール1Eが積層非接着の状態で配設されている。
【0057】
以上、本実施形態のように構成することで、軟質の後側弾性体3Bの衝撃緩衝性により、着地時における衝撃の大きい踵部分の後側スタッド3rrからの突き上げによる衝撃を効果的に緩和して、足Fにかかる負担を効果的に低減することができ、これによって、足Fの故障や怪我を極力回避することができる。
更に、ローリング運動において重心が移動する際に、硬質の前側弾性体3Aが踵に反発力を付与するので、ローリング運動をスムーズ、かつ、俊敏に行うことができて、瞬発力を必要とするフィールドスポーツに着用するスパイクシューズSとして非常に有利なものにすることができる。
【0058】
〔別実施形態〕
上述の実施形態における弾性体3の形状は如何なる形状のものであってよい。
【0059】
上述の実施形態では、アウトソール1Aの周縁部を波形状に形成し、それに係合する波形状の係合部8をミッドソール1Bの側面に形成していたが、アウトソール1Aの周縁部5の形状はこれに限るものではなく、また、ミッドソール1Bの係合部8についてもアウトソール1Aの周縁部5の形状に合ったものであればよい。
【0060】
また、アウトソール1Aの周縁部5が、ミッドソール1Bを完全に包み込む形態でそれらを積層させる構成であってもよい。
【0061】
更に、アウトソール1Aの周縁部5に、弾性体3を透視可能にする第2透過窓7を形成していたが、第2透過窓7の有無は任意のものであってよい。
【0062】
上述の実施形態では、各弾性体3の側面側露呈部分3cにアウトソール1Aの波形周縁部5とのは、アウトソール1Aの波形周縁部5との間に空隙を設けて、衝撃を緩衝する弾性体3の変形を許可するための溝状の凹部3dが上下方向に4本形成されているが、凹部3dの形状はこれに限るものではなく、また、凹部3dの位置もアウトソール1Aとの間に空隙を形成することができる位置であれば、他の位置(例えば、弾性体3の下側面)であってもよい。
【0063】
上述の実施形態では、弾性体3をミッドソール1Bの嵌装孔9に嵌設させていたが、弾性体3はアウトソール1Aの側に嵌設する構成であってもよく、ミッドソール1Bとアウトソール1Aとの間に配設される構成であればよい。
【0064】
上述の実施形態では、弾性体3を上面側から同時に押圧する高反発性薄板材を設けたが、高反発性薄板材を設けない構成にしてもよい。
【0065】
そして、高反発性薄板材として、4つの押圧部11aと連結杆部11bとから形成したクロスプレート11を採用したが、高反発性薄板材としてはこの構成に限るものではない。
【0066】
また、連結杆部11bの形状は十字形状に限るものではなく、4つの押圧部11aを連結する構成であれば、如何なる形状であってもよい。
【0067】
上述の実施形態では、ミッドソール1Bに貫通孔10を形成し、アウトソール1Aと弾性蓋部材14とで封塞して中空部13を形成していたが、貫通孔10及び中空部13は形成しなくてもよい。
【0068】
また、クロスプレート11を透視可能な第1透過窓6も形成しなくてもよい。
【0069】
上述の実施形態では,前側スタッド2rfに対応する前側弾性体3Aの硬度をA45(JISK6253規格・デュロメータタイプA)、後側スタッド2rrに対応する後側弾性体3Bの硬度をA35(JISK6253規格・デュロメータタイプA)に設定してあるが、硬度の数値はこれに限るものではなく、前側弾性体3Aの硬度が後側弾性体3Bの硬度よりも高硬度であればよい。
【0070】
また、同様に、アウトソール1A、ミッドソール1B、クロスプレート11、並びに、弾性蓋部材14の硬度も任意の硬度であってよい。
【0071】
そして、弾性体3はTPRから成形されていたが、合成樹脂から成形され、衝撃緩衝性及び反発性を備えたものであれば、これに限るものではない。
【0072】
また、アウトソール1A、ミッドソール1B、アッパーU、フィラー1D、インナーソール1E、クロスプレート11、並びに、弾性蓋部材14の材料は、TPUやEVA、TPR、天然皮革、人工皮革、不織布等如何なるものであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明のスパイクシューズの実施形態を示す全体斜視図
【図2】スパイクシューズの全体底面図
【図3】スパイクシューズの全体側面図
【図4】(イ)アウトソールとミッドソールとを積層させた状態の踵部分における平面視図 (ロ)アウトソールとミッドソールとを積層させた状態の踵部分における平面視断面図
【図5】図2のV−V線断面図
【図6】図2のVI−VI線断面図
【図7】図2のVII−VII線断面図
【図8】スパイクシューズの分解斜視図
【図9】ローリング運動を示す図
【符号の説明】
【0074】
1 靴底
1A 表底体
1B 中間層体
1C 中間層体
2 スタッド
2r 踵部分のスタッド(後部スタッド)
3 弾性体
3a 弾性体の内側縁部
3b 弾性体の外側縁部
3d 凹部
4 すり鉢状凹部
5 波状周縁部
5a 山形部分
6 窓
7 窓
8 係合部
9 嵌装孔
10 貫通孔
11 高反発性薄板材
11a 押圧部
11b 連結杆部
13 中空部
14 弾性蓋部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底の踵部分に前後する形態で設けられた複数のスタッドに対応させた位置に、動歩行時又は走行時において、踵部分にかかる各スタッドからの突き上げによる衝撃を緩和するための合成樹脂製の弾性体を配設してあるスパイクシューズであって、
前記踵部分の前側に位置するスタッドに対応する弾性体の硬度を、それよりも後側に位置するスタッドに対応する弾性体よりも高硬度にしてあるスパイクシューズ。
【請求項2】
前記弾性体の内側縁部が、それら弾性体が対応する各スタッドの配設箇所よりも靴底の内方側に位置する状態に配設してある請求項1記載のスパイクシューズ。
【請求項3】
前記弾性体の外側縁部が、それら弾性体が対応する各スタッドの配設箇所よりも靴底の外方側に位置する状態に配設してある請求項1又は2に記載のスパイクシューズ。
【請求項4】
前記靴底の踵部分が、少なくともスタッドを備えた表底体の上側に、前記弾性体を備えた中間層体を積層させた状態で形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のスパイクシューズ。
【請求項5】
前記靴底の踵部分において、前記表底体の周縁部の少なくとも一部が中間層体を包み込む形態で立ち上がった波形状に形成してあるとともに、
前記中間層体の側面に、表底体の波状周縁部と上下方向から係合する波形状の係合部が形成されている請求項4記載のスパイクシューズ。
【請求項6】
前記弾性体の外側縁部が、それら弾性体が対応する各スタッドの配設箇所よりも靴底の外方側に位置する状態で、かつ、その外側縁部の少なくとも一部が、中間層体の側面に露呈する形態で配設されているとともに、
前記表底体の波状周縁部の山形部分が、それら弾性体の露呈箇所に位置するように形成されてある請求項5記載のスパイクシューズ。
【請求項7】
前記表底体の波状周縁部の山形部分に、中間層体に配設された各弾性体を透視可能な透過性の窓が形成されている請求項6記載のスパイクシューズ。
【請求項8】
前記中間層体に備えられた弾性体に、前記表底体との間に空隙を設けるための凹部を形成してある請求項4〜7のいずれか1項に記載のスパイクシューズ。
【請求項9】
前記中間層体に上下方向に貫通する貫通孔を形成するとともに、
前記中間層体の上面に、その貫通孔を封塞する弾性蓋部材を配設して、表底体と弾性蓋部材との間の中間層体に中空部を形成する構成にしてある請求項4〜7のいずれか1項に記載のスパイクシューズ。
【請求項10】
前記中間層体の上面における弾性体配設箇所に対応する位置に、それら弾性体を上面側から同時に押圧可能な高反発性の薄板材が配設されている請求項4〜9のいずれか1項に記載のスパイクシューズ。
【請求項11】
前記弾性体のそれぞれを、中間層体に上下方向に貫通形成された嵌装孔に、各弾性体の一部が中間層体の上面に露呈する形態で嵌設されているとともに、
前記高反発性薄板材が、中間層体の上面に露呈している各弾性体に対して当接する複数の押圧部とそれら押圧部を連結する連結杆部とから形成されている請求項10記載のスパイクシューズ。
【請求項12】
前記高反発性薄板材が、それの連結杆部が前記中間層体に形成された貫通孔を交差する形態で配設されているとともに、
前記表底体の中間層体の貫通孔に対応する位置に、貫通孔を交差する高反発性薄板材の連結杆部を透視可能な透過性の窓が形成されている請求項11記載のスパイクシューズ。
【請求項13】
前記表底体の中間層体側の面におけるスタッド配設箇所に対応する位置に、すり鉢状の凹部が形成されている請求項4〜12のいずれか1項に記載のスパイクシューズ。
【請求項14】
前記靴底の踵部分に設けられたスタッドが前後2列に並ぶ構成で、前側スタッドに対応する弾性体の硬度をA40〜A50とし、後側スタッドに対応する弾性体の硬度をA30〜A39としてある請求項1〜13のいずれか1項に記載のスパイクシューズ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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