説明

セラミック多層基板とセラミック多層基板の製造方法

【課題】その製造工程の歩留まり向上する事ができるセラミック多層基板を提供する。
【解決手段】複数のセラミック製のグリーンシート(グリーンシート11A、11B、11C)を焼成して形成されたセラミック基板部2と、セラミック基板部2内部に形成された内部配線部7と、セラミック基板部2の表面に設けられた凹部5と、凹部5の内部に配置され、内部配線部7と電気的に接続されたチップ型電子部品3と、セラミック基板部2上に、湿式めっき法にて形成された金属層(第1の金属層16、第2の金属層17から形成された外部電極部9や、電子回路パターン配線部10)と、を有するセラミック多層基板1において、凹部5のチップ型電子部品3上から充填されたガラス部15、を有することを特徴とするセラミック多層基板1としたので、セラミック多層基板1の製造工程の歩留まり向上する事ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック多層基板セラミック多層基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック多層基板は、耐熱性・耐湿性に優れ、また、高周波回路において良好な周波数特性を有することから、液晶のバックライト向けLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)を用いた電子回路用の基板として用いられている。
現在、この液晶のバックライト向けLEDを、より小型化するため、そのセラミック多層基板内部にチップ型電子部品が内蔵することが要求されている(例えば、これに類似する技術は下記特許文献1に記載されている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/030562号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のセラミック多層基板は、複数のセラミック製のグリーンシートを積層し、更にその最表面(最外層)のグリーンシートのチップ型電子部品を配置した後に、それら積層されたグリーンシートを焼成し、更にその後、その表面に湿式めっき法によって金属層を形成されていたため、その湿式めっき法によって金属層を形成する際に使用する薬液(例えばめっき溶液)によって、チップ型電子部品の電気的特性が悪化するという問題を有していた。
【0005】
すなわち、前記従来例におけるセラミック多層基板においては、湿式めっき法によって金属層を形成する際に使用する薬液によって、チップ型電子部品の電気的特性が悪化することによるセラミック多層基板の製造工程の歩留まりの低下が生じるという課題を有していた。
【0006】
そこで、本発明は、この課題を解決し、セラミック多層基板の製造工程の歩留まり向上する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために本発明は、複数のセラミック製のグリーンシートを焼成して形成されたセラミック基板部と、前記セラミック基板部内部に形成された内部配線部と、前記セラミック基板部の表面に設けられた凹部と、前記凹部の内部に配置され、前記内部配線部と電気的に接続されたチップ型電子部品と、前記セラミック基板部上に、湿式めっき法にて形成された金属層と、を有するセラミック多層基板において、前記凹部の前記チップ型電子部品上から充填されたガラス部、を有することを特徴とするセラミック多層基板とした。
【0008】
これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明は、複数のセラミック製のグリーンシートを焼成して形成されたセラミック基板部と、前記セラミック基板部内部に形成された内部配線部と、前記セラミック基板部の表面に設けられた凹部と、前記凹部の内部に配置され、前記内部配線部と電気的に接続されたチップ型電子部品と、前記セラミック基板部上に、湿式めっき法にて形成された金属層と、を有するセラミック多層基板において、前記凹部の前記チップ型電子部品上から充填されたガラス部、を有することを特徴とするセラミック多層基板としたので、セラミック多層基板の製造工程の歩留まり向上する事ができる。
【0010】
すなわち、本発明においては、最表面(最外層)のグリーンシートに凹部を形成し、その後、前記凹部にチップ型電子部品を配置し、その後、前記凹部の前記チップ型電子部品上からガラスペーストを充填することによりガラス部を形成することによって、このガラス部が、湿式めっき法による金属層を形成する際に使用する薬液から、前記チップ型電子部品を保護することができ、チップ型電子部品の電気的特性が悪化することを防止することができるので、その結果として、セラミック多層基板の製造工程の歩留まりを向上することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1におけるセラミック多層基板の断面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるセラミック多層基板のプロセスフローを示す図
【図3】本発明の実施の形態1におけるグリーンシートの断面図を示すものであり、図3(a)はグリーンシート11Aの断面図、図3(b)はグリーンシート11Bの断面図、図3(c)はグリーンシート11Cの断面図
【図4】本発明の実施の形態1におけるチップ型電子部品−グリーンシート積層体の積層手順を示す断面図
【図5】本発明の実施の形態1における積層配置工程にて作成されるチップ型電子部品−グリーンシート積層体の断面図
【図6】本発明の実施の形態1における焼成工程にて作成されるチップ型電子部品−グリーンシート積層体の断面図
【図7】本発明の実施の形態1における拘束層除去工程にて作成されるチップ型電子部品−グリーンシート積層体の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明のセラミック基板の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
まず、はじめに、本発明の実施1におけるセラミック多層基板の構成に関して説明する。
【0013】
図1は、実施の形態1におけるセラミック多層基板の断面図を示すものである。図1に示すように、セラミック多層基板1は、複数(具体的には本実施形態では後述のように3枚)のセラミック製のグリーンシートを焼成して形成されたセラミック基板部2と、そのセラミック基板部2内部に形成された内部配線部7と、セラミック基板2の表面に設けられた凹部5と、その凹部5の内部に配置され、内部配線部7と電気的に接続されたチップ型電子部品3と、凹部5のチップ型電子部品3上から充填されたガラス部15とを有している。また、チップ型電子部品3の両端のチップ型電子部品電極4には、内部配線部7が接続されている。
【0014】
更に、セラミック基板部2内部のチップ型電子部品3の周辺には、ビア6、内部配線部7が形成されている。また、セラミック基板部2の表裏面には、このセラミック多層基板1に所望の電子部品(例えばLED)を実装するための、金属膜で形成された外部電極部9や、金属膜で形成された電子回路パターン配線部10を有している。図1に示すように、本実施形態において、外部電極部9と所望の電子回路パターン配線部10は、第1の金属層16、第2の金属層17という2層の金属層から形成されている。
【0015】
本実施形態において、セラミック基板部2は、後述で再度説明するが、何れも、アルミナ粉末を55[wt%]、ガラス粉末を45[wt%]の割合で配合したガラス・セラミックの組成物で、シート状の形状のグリーンシートと呼ばれるものを、複数枚(少なくとも2枚以上)積層し、その後、900[℃]にて焼成することによって形成する。 なお、本実施形態のセラミック基板部2においては、三枚のグリーンシートを積層、焼成したものを用いた。
【0016】
また、本実施形態において、セラミック基板部2の内部にあるビア6は、前述の焼成前のグリーンシートに、予め、例えば、NCパンチプレス(Numerical Controlパンチプレス)によって孔を形成し、その後、その孔に導体ペーストを充填し、更に前述のセラミックシートを焼成する際に同時に焼成される事によって形成する。なお、本実施形態において、銀(Ag)粒子とガラス成分を含有する導体ペーストを用いた。
【0017】
また、本実施形態において、セラミック基板部2の内部にある内部配線部7は、前述の焼成前のグリーンシートに、予め、スクリーン印刷法を用いて所望のパターンに印刷して形成後、前述のセラミックシートを焼成する際に同時に焼成される事によって形成している。なお、本実施形態においては、銀(Ag)粒子とガラス成分を含有する導体ペーストを用いた。
【0018】
また、本実施形態において、図1に示すように、セラミック基板部2の表裏面の外部電極部9、および、電子回路パターン配線部10は、第1の金属層16と第2の金属層17から形成されている。
【0019】
ここで、本実施形態においては、第1の金属層16は、湿式めっき法の一種である無電解めっき法によって銅(Cu)を形成し、その膜厚は0.5[um](=500[nm])とした。本実施形態においては、第1の金属層16は、無電解めっき法によって形成された銅(Cu)を用いたが、その他に、無電解めっき法によって形成されたニッケル−リン(Ni−P)を用いることもできる。
【0020】
また、本実施形態においては、第2の金属層17は、湿式めっき法の一種である電解めっき法によって銅(Cu)を形成し、その膜厚は、50[um]としたが、この第2の金属層17は、5[um]から100[um]の間の膜厚で、適宜決定を行うことができるが、本実施形態において、第2の金属層17の膜厚は25[um]形成した。また、本実施形態においては、第2の金属層17は、電解めっき法によって形成された銅(Cu)を用いたが、その他に、無電解めっき法によって形成された金(Au)や銀(Ag)を用いることもできる。
【0021】
また、本実施形態において、チップ型電子部品3は、液晶のバックライト向けLEDの駆動する電子回路にしばしば使用されるバリスタを用いた。
【0022】
それでは、以下に、本発明の実施の形態1におけるセラミック多層基板1の製造方法について説明する。
【0023】
図2は、本実施形態のセラミック多層基板1のプロセスフローを示す図であり、大きく分けて、ステップ1:グリーンシート準備工程と、ステップ2:積層配置工程と、ステップ3:焼成工程と、ステップ4:拘束層除去工程と、ステップ5:外部電極・電子回路パターン配線部形成工程という、5つのステップからなるものである。
【0024】
[ステップ1:グリーンシート準備工程]
先ずは、図3を用いてステップ1について説明する。
【0025】
図3は、本発明の実施の形態1におけるグリーンシート準備工程において作成するグリーンシートの断面図を示すものである。
【0026】
本実施形態においては、純のグリーンシート(アルミナ粉末を55[wt%]、ガラス粉末を45[wt%]の割合で配合したガラス・セラミックの組成物で、シート状の形状のもの)から、図3(a)〜図3(c)に示すように、グリーンシート11A(図3(a))、グリーンシート11B(図3(b))、グリーンシート11C(図3(c))を作成する。
【0027】
まず、はじめに、図3(a)に示すグリーンシート11Aに関して説明する。グリーンシート11Aには、例えば、NCパンチプレスによって孔を形成し、その後、その孔に導体ペーストを充填することによって、ビア6を形成する。これにて、グリーンシート11Aが完成する。
【0028】
次に、図3(b)に示すグリーンシート11Bに関して説明する。グリーンシート11Bは、はじめに、グリーンシート11Aと同様に、ビア6を形成する。その次に、グリーンシート11B上面に導体ペーストを、クリーン印刷法を用いて所望のパターンに印刷して形成後、内部配線部7を形成する。これにて、グリーンシート11Bが完成する。
【0029】
次に、図3(c)に示すグリーンシート11Cに関して説明する。グリーンシート11Cは、はじめに、グリーンシート11Aと同様に、ビア6を形成する。その次に、レーザー加工機器によって、凹部5を形成する。本実施形態においては、後の工程で、この凹部5内に配置するチップ型電子部品3のサイズが0603サイズ(縦0.6[mm]x横0.3[mm]x高さ0.15[mm])であるため、縦0.65[mm]x横0.35[mm]の凹部5を形成した。また、グリーンシート11Cの厚みは、焼成後の厚さ方向の収縮率(後述の図4中のZ軸方向)とチップ型電子部品3の高さを考慮し、0.235[mm]の厚さのグリーンシートを用い、凹部5は、グリーンシート11Cを貫通するように形成した。これにて、グリーンシート11Cが完成する。
【0030】
[ステップ2:積層配置工程]
次に、図4、図5を用いてステップ2について説明する。
【0031】
図4は、本発明の実施の形態1におけるチップ型電子部品−グリーンシート積層体12の積層手順を示す断面図である。また、図5は、本発明の実施の形態1における積層配置工程にて作成されるチップ型電子部品−グリーンシート積層体12の断面図を示すものである。
【0032】
まず、はじめに、図4、図5、及び後述の図6中に示している拘束層13に関して説明する。
【0033】
一般に、アルミナ粉末とガラス粉末を配合したガラス・セラミックの組成物で、シート状の形状のグリーンシートを、高温を印加すると、アルミナ粉末とガラス粉末が焼成することによって、そのグリーンシートの体積(平面方向、および厚さ方向)に収縮する。
【0034】
本実施形態においても、次の工程であるステップ3:焼成工程にて、チップ型電子部品−グリーンシート積層体12に熱を印加するのであるが、その際、それらグリーンシート11A、11B、11Cを挟み込むように、印加する温度では焼成しない成分のセラミックからなる拘束層13を上下面に配置しておく。
こうすることによって、グリーンシート11A、11B、11Cは、図4中に示す、X方向、およびY方向(すなわち、チップ型電子部品−グリーンシート積層体12の平面方向)には収縮せず、Z方向(すなわち、チップ型電子部品−グリーンシート積層体12の厚さ方向)にのみ収縮する。このX方向、Y方向に収縮させないために、この拘束層13を使用するのである。本実施形態においては、アルミナ粉末をシート状に成形したものを拘束層13として用いた。
【0035】
次に、図4を用いて、グリーンシート11A、11B、11C、およびチップ型電子部品3を積層し、チップ型電子部品−グリーンシート積層体12を準備する方法を説明する。
【0036】
まず、拘束層13上に、グリーンシート11Aを積層する。次に、グリーンシート11A上にグリーンシート11Bを、グリーンシート11Aに形成されているビア7と、グリーンシート11Bに形成されているビア7の位置が合うように位置合わせを実施しながら積層する。次に、グリーンシート11B上の所望の位置に、グリーンシート11Cを位置合わせを実施しながら積層する。
【0037】
次に、グリーンシート11C上の凹部5の位置に、チップ型電子部品3を配置する。その次に、グリーンシート11Bの凹部5中にあるチップ型電子部品3上から、ガラスペースト14を塗布する。
最後に、グリーンシート11C上に、拘束層13を配置する。
【0038】
このようにして、図5に示すような、チップ型電子部品−グリーンシート積層体12が準備されるのである。
【0039】
ここで、本実施形態においては、ガラスペースト14としては、アルミナ粉末を55[wt%]、ガラス粉末を45[wt%]の割合で配合し、それをガラスに混合したガラス・セラミック含有のガラスペーストを用いた。
【0040】
[ステップ3:焼成工程]
次に、ステップ3の焼成工程について説明する。
【0041】
この工程では、図5に示すチップ型電子部品−グリーンシート積層体12をグリーンシート11A、11B、11Cが焼成する温度にて加熱を行う。
本実施形態では、印加した熱の温度は900℃、印加時間1時間で行なった。
この焼成工程後、図6に示すように、チップ型電子部品−グリーンシート積層体12は、
その厚さ方向に収縮したものになる。
【0042】
[ステップ4:拘束層除去工程]
次に、ステップ3の拘束層除去工程について説明する。
【0043】
この工程では、水96gと平均粒径0〜10umのアルミナ粉末4gの割合の混合物を、圧力0.4[MPa]の圧縮空気にて、拘束層13上から吹き付ける。
【0044】
こうすることによって、拘束層13のみ除去することができ、図7に示すようなものになる。
【0045】
[ステップ5:外部電極・電子回路パターン配線部形成工程]
次に、ステップ5の外部電極・電子回路パターン配線部形成工程について説明する。
【0046】
ステップ3にて焼成されたチップ型電子部品−グリーンシート積層体12の表裏面(上下面)に、図1に示すような、所望の外部電極部9や、電子回路パターン配線部10を形成する。
【0047】
本実施形態においては、以下のように、まず第1の金属層16、第2の金属層17を形成し、その後、レジスト塗布/エッチングをすることによって、所望の外部電極部9や、電子回路パターン配線部10を形成するのである。
【0048】
まずはじめに、前処理として、セラミック基板部2上の表面に付着している異物及び油分などを除去する。この前処理は、本発明に必須の工程ではなく、セラミック基板部2上の表面がきれいな状態であれば不要である。次に、セラミック基板部2上の表面を、金属触媒を含む水溶液に接触させる。この金属触媒としては、第1の金属層16を形成するための触媒となり得るもの、例えばパラジウム(Pd)触媒、銅(Cu)触媒等を用いることができる。本実施形態においては、銅(Cu)触媒を用いた。また、触媒付与工程における触媒の濃度、処理時間、温度等の諸条件は、適宜変更可能である。こうして、セラミック基板部2上の表面に、これら金属触媒(本実施形態においては銅(Cu)触媒)が結合する。
【0049】
次に、無電解めっき法によって第1の金属層16を形成するが、このとき無電解めっき液に含まれる還元成分により、セラミック基板部2の表面の金属触媒が還元されるため、触媒作用が働き、触媒金属を核として、無電解めっき膜が形成される。本実施形態においては、前述のように、無電解めっき法によって、銅(Cu)を形成した。また、この第1の金属層16の膜厚は、前述のように、0.5[um](500[nm])を用いた。
【0050】
次に、この第1の金属層16の表面に、電解めっき法によって、第2の金属層17を形成する。本実施形態においては、上述したように、第2の金属層17として銅(Cu)を用いた。また、この第2の金属層17の膜厚は、前述のように、25[um]を用いた。
【0051】
次に、第1の金属層16、及び第2の金属層17を加工し、図1に示すような、外部電極部9や、電子回路パターン配線部10を形成する。本実施形態においては、必要な第1の金属層16、及び第2の金属層17上にレジストを塗布し、その後、エッチングを行うことによって、所望の外部電極部9や、電子回路パターン配線部10を形成した。以上が、ステップ5:外部電極・電子回路パターン配線部形成工程の説明である。
【0052】
以上のように、図2に示すステップ1からステップ5を行うことによって、本実施形態のセラミック多層基板1を製造することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態においては、複数のセラミック製のグリーンシート(グリーンシート11A、11B、11C)を焼成して形成されたセラミック基板部2と、セラミック基板部2内部に形成された内部配線部7と、セラミック基板部2の表面に設けられた凹部5と、凹部5の内部に配置され、内部配線部7と電気的に接続されたチップ型電子部品3と、セラミック基板部2上に、湿式めっき法にて形成された金属層(第1の金属層16、第2の金属層17から形成された外部電極部9や、電子回路パターン配線部10)と、を有するセラミック多層基板1において、凹部5のチップ型電子部品3上から充填されたガラス部15、を有することを特徴とするセラミック多層基板1としたので、セラミック多層基板1の製造工程の歩留まり向上する事ができる。
【0054】
すなわち、本発明においては、最表面(最外層)のグリーンシート(グリーンシート11C)に凹部5を形成し、その後、凹部5にチップ型電子部品3を配置し、その後、凹部5のチップ型電子部品3上からガラスペースト14を充填することによりガラス部15を形成することによって、このガラス部15が、湿式めっき法による金属層(第1の金属層16、第2の金属層17から形成された外部電極部9や、電子回路パターン配線部10)を形成する際に使用する薬液から、チップ型電子部品3を保護することができ、チップ型電子部品3の電気的特性が悪化することを防止することができるので、その結果として、セラミック多層基板の製造工程の歩留まりを向上することができるのである。
実際に、従来のセラミック多層基板(ガラス部15がない場合のセラミック多層基板)の場合、湿式めっき法による金属層形成後のチップ型電子部品3の電気的特性がほぼ100%悪化したが、本実施形態におけるセラミック多層基板1の場合、湿式めっき法による金属層形成後のチップ型電子部品3の電気的特性の悪化は一切発生しなかった。このことからも、本実施形態におけるセラミック多層基板においては、セラミック多層基板の製造工程の歩留まりを向上することができる、ということがいえる。
【0055】
なお、本実施形態においては、セラミック基板部2上に形成した外部電極部9や、電子回路パターン配線部10は、湿式めっき法によって形成された第1の金属層16と、湿式めっき法によって形成された第2の金属層17から形成されたものを用いたが、少なくとも、セラミック基板部2上に形成した金属層のうち、少なくともその一部が湿式めっき法によって形成された場合に、本発明のセラミック多層基板、及びセラミック多層基板の製造方法は有用である。例えば、第1の金属層16は乾式めっき法、たとえば、RF(Radio Frequency)スパッタ法を用いて形成され、第2の金属層17が湿式めっき法によって形成された場合においても、本発明のセラミック多層基板、及びセラミック多層基板の製造方法は有用である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明にかかるセラミック多層基板は、セラミック多層基板の製造工程の歩留まり向上する事ができるので、特に、最近普及の進んでいる液晶テレビや携帯電話の液晶画面用のバックライト向けLED用の基板として用いられることが大いに期待されるものとなる。
【符号の説明】
【0057】
1 セラミック多層基板
2 セラミック基板部
3 チップ型電子部品
4 チップ型電子部品電極
5 凹部
6 ビア
7 内部配線部
9 外部電極部
10 電子回路パターン配線部
11A、11B、11C グリーンシート
12 チップ型電子部品−グリーンシート積層体
13 拘束層
14 ガラスペースト
15 ガラス部
16 第1の金属部
17 第2の金属部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミック製のグリーンシートを焼成して形成されたセラミック基板部と、
前記セラミック基板部内部に形成された内部配線部と、
前記セラミック基板部の表面に設けられた凹部と、
前記凹部の内部に配置され、前記内部配線部と電気的に接続されたチップ型電子部品と、
前記セラミック基板部上に、湿式めっき法にて形成された金属層と、
を有するセラミック多層基板において、
前記凹部の前記チップ型電子部品上から充填されたガラス部と、
を有することを特徴とするセラミック多層基板。
【請求項2】
前記ガラス部が、前記グリーンシートと同一の無機成分をペースト化したものであることを特徴とする請求項1記載のセラミック多層基板。
【請求項3】
複数のセラミック製のグリーンシートを焼成して形成されたセラミック基板部と、
前記セラミック基板部内部に形成された内部配線部と、
前記セラミック基板の表面に設けられた凹部と、
前記凹部の内部に配置され、前記内部配線部と電気的に接続されたチップ型電子部品と、
前記ガラス部上に、湿式めっき法にて形成された金属層と、
を有するセラミック多層基板の製造方法において、
少なくとも1枚の前記グリーンシートの前記チップ型電子部品を配置する部分に前記凹部を形成することを含むセラミックシート準備工程と、
前記凹部が形成されたセラミックシートを最上面に配置するように複数のセラミック製のグリーンシートを積層配置し、その後、前記凹部に前記チップ型電子部品を配置し、その後、前記凹部の前記チップ型電子部品上からガラスペーストを塗布することによって、チップ型電子部品−グリーンシート積層体を準備する積層配置工程と、
前記チップ型電子部品−グリーンシート積層体を、グリーンシートの焼成温度を印加する焼成工程と、
焼成工程後のチップ型電子部品-グリーンシート積層体の表面に湿式めっき法によって金属層を形成する金属層形成工程と、
を含むセラミック多層基板の製造方法。
【請求項4】
前記ガラスペーストの成分が、前記グリーンシートに含有する同一の無機成分をペースト化したものであること、
を特徴とする請求項3記載のセラミック多層基板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−204711(P2012−204711A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69233(P2011−69233)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】