説明

ディスクブレーキ及びその製造方法

【課題】平滑化のための加工を容易に、かつ精度良く行なえるようにして生産効率の向上を図ることのできるディスクブレーキを提供する。
【解決手段】ブレーキディスクを挟んで対向配置されるシリンダ部20,21と、ブレーキディスクの径方向外側を跨いでシリンダ部20,21同士を連結するブリッジ部22A,22Cを有するキャリパ11を設ける。キャリパ11に柱状に突出するボス部34を設け、ボス部34を貫通する取付孔35をブレーキディスクの回転軸線と直交するように形成する。ボス部34を車体側の支持部に重合し、取付孔35にボルトを挿通してボルトによってキャリパ11を締結固定する。ボルトの頭部が当接するボス部34の座面37とブリッジ部22A,22Cの間に座面37に対して窪む凹所38を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の車輪制動等に用いられるディスクブレーキ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の車輪制動に用いられるディスクブレーキとして、ブレーキディスクを両側から挟み込むようにシリンダ部が設けられ、この各シリンダ部に設けられたピストンによってパッドをブレーキディスクの両面に圧接させる構造のものが知られている。このディスクブレーキは、両側のシリンダ部がブレーキディスクの径方向外側を跨ぐブリッジ部によって相互に結合され、これらが一体のキャリパを構成するようになっている。
【0003】
また、この種のディスクブレーキとして、キャリパに柱状に突出する一対のボス部が設けられるとともに、ボス部間中心の延長線とブレーキディスクの回転軸線とが直交するように設けられ、このボス部に平行に取付孔が設けられ、ボス部が車体側の支持部に重合された状態において、取付孔に挿通されたボルトによってキャリパが車体側の支持部に固定されるものが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
このディスクブレーキは、ボルトの頭部が当接するボス部の取付孔周囲に形成される座面がブリッジ部に隣接して設けられ、ブレーキディスクの径方向外側からボルトの締め込みが行われるようになっている。
【特許文献1】特開2003−269502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のディスクブレーキにおいては、キャリパが鋳造によって形成された後に、キャリパの各部に切削等の加工が施される。
上記従来のディスクブレーキにおいては、ボス部の座面がブリッジ部とともに鋳型内で連続して造形され、鋳型から取り出されたキャリパのボス部の座面に、切削加工を施すことによって座面を所定の寸法精度に仕上げるようにしている。
しかし、上記従来のディスクブレーキの場合、ブレーキディスクの径方向外側を跨ぐブリッジ部の膨出部分に隣接してボス部の座面が鋳造されるため、座面の切削加工時に工具が片当たりし易く、工具を均一に座面に当てることが難しい。このため、座面の水平度寸法や表面粗さを出すための作業が困難であり、生産効率が良くないというのが実状である。
【0005】
そこで、この発明は、平滑化のための加工を容易に、かつ精度良く行なえるようにして生産効率の向上を図ることのできるディスクブレーキ及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、ブレーキディスクを挟んで対向配置される対を成すシリンダ部と前記ブレーキディスクの径方向外側を跨いで前記対を成すシリンダ部同士を連結するブリッジ部とを有するキャリパに一対の取付孔が設けられ、該取付孔は該取付孔間中心の延長線が前記ブレーキディスクの回転軸線と直交するように前記キャリパを貫通してなり、前記取付孔に挿通される固定手段によって前記車体側の支持部に取り付けられるラジアルマウント型のディスクブレーキにおいて、前記取付孔周囲の前記固定手段が当接する座面と前記ブリッジ部との間に、前記座面に対して窪む凹所を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のディスクブレーキにおいて、前記ブリッジ部の前記座面に隣接する部分は、前記座面よりも前記ブレーキディスクの径方向外側に膨出していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のディスクブレーキにおいて、前記凹所は、前記キャリパの鋳造時に形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスクブレーキにおいて、前記凹所は、前記取付孔の中心部を中心とする略円弧状に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスクブレーキにおいて、前記座面の外周は、ほぼ円形状となっていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のディスクブレーキにおいて、前記固定手段の前記座面に当接する部分はボルトの頭部またはナットであり、前記座面の径は、前記ボルトの頭部またはナットの前記座面との当接面の径よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のディスクブレーキにおいて、前記凹所は、前記座面から遠ざかるに従って拡径するテーパ形状となっていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、ブレーキディスクを挟んで対向配置される対を成すシリンダ部と前記ブレーキディスクの径方向外側を跨いで前記対を成すシリンダ部同士を連結するブリッジ部とを有するキャリパに一対の取付孔が設けられ、該取付孔は取付孔間中心の延長線が前記ブレーキディスクの回転軸線と直交するように前記キャリパを貫通してなり、前記取付孔に挿通される固定手段によって前記車体側の支持部に取り付けられるラジアルマウント型のディスクブレーキの製造方法において、前記取付孔周囲の前記固定手段が当接する座面と前記ブリッジ部との間に、前記座面に対して窪む凹所を前記キャリパの鋳造時に形成し、その後に前記座面を平滑加工することを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のディスクブレーキの製造方法において、前記ブリッジ部の前記座面に隣接する部分は、前記座面よりも前記ブレーキディスクの径方向外側に膨出していることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載のディスクブレーキの製造方法において、前記キャリパは、前記ブレーキディスクの回転面を含む平面に対して直交する上下面により型割りした鋳型により鋳造され、前記鋳型のうちの一方の鋳型に前記凹所を形成する凸部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項8〜10のいずれか1項に記載のディスクブレーキの製造方法において、前記凹所は、前記取付孔の中心部を中心とする略円弧状に設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項8〜11のいずれか1項に記載のディスクブレーキの製造方法において、前記座面の外周は、ほぼ円形状となっていることを特徴とする。
【0018】
請求項13に記載の発明は、請求項8〜12のいずれか1項に記載のディスクブレーキの製造方法において、前記固定手段の前記座面に当接する部分はボルトの頭部またはナットであり、前記座面の径は、前記ボルトの頭部またはナットの前記座面との当接面の径よりも大きいことを特徴とする。
【0019】
請求項14に記載の発明は、請求項8〜13のいずれか1項に記載のディスクブレーキの製造方法において、前記凹所は、前記座面から遠ざかるに従って拡径するテーパ形状となっていることを特徴とする。
【0020】
請求項15に記載の発明は、ブレーキディスクを挟んで対向配置される対を成すシリンダ部と、前記ブレーキディスクの径方向外側を跨いで前記対を成すシリンダ部同士を連結するブリッジ部を有するキャリパに、該キャリパの長手方向中心と前記ブレーキディスクの回転軸線とを結んだ線分に対する垂直面と平行な配管取付用座ぐり部の加工面が前記ブリッジ部に隣接して設けられたディスクブレーキにおいて、前記加工面と前記ブリッジ部との間に、前記加工面に対して窪む凹所を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1,8に記載の発明によれば、座面とブリッジ部との間に、座面に対して窪む凹所を設けたため、切削等の座面の平滑加工に際して、工具を座面のほぼ全域に均一に当接させることが可能になり、その結果、座面に対する加工を容易に、かつ精度良く行うことが可能になる。したがって、この発明によれば、生産効率の向上を図ることができる。
また、請求項3,8,10に記載の発明によれば、凹所をキャリパの鋳造時に形成するため、凹所を切削等で後加工する場合に比較して工数が少なくなり、生産効率がさらに高まる。
【0022】
請求項2,9に記載の発明によれば、座面の加工用の工具がブリッジ部の膨出部分に当接するのを回避できるため、生産効率の向上において特に有効となる。
【0023】
請求項4,5,11,12に記載の発明によれば、キャリパの取付時に固定手段や工具が座面の周囲と干渉しにくくなり、特に、固定手段がボルトやナット等の締結手段である場合には、締結トルクが安定するとともに脱着性も良好になる。
【0024】
請求項6,13に記載の発明によれば、ボルトの頭部やナットを座面に安定的に当接させ、キャリパの取付精度を高めることができる。
【0025】
請求項7,14に記載の発明によれば、座面の周囲が安定した末広がり形状となり、キャリパの取付精度や取付安定性が高まる。
【0026】
請求項15に記載の発明によれば、配管取付用座ぐり部の加工面とブリッジ部との間に、加工面に対して窪む凹所を設けたため、切削等の加工面の平滑加工に際して、工具を加工面のほぼ全域に均一に当接させ、加工面の加工を容易に、かつ精度良く行うことができる。したがって、これにより生産効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係るディスクブレーキであって自動二輪車に適用される例を示す。このディスクブレーキ1は、制動対象となる車輪(回転体)と一体回転するブレーキディスク12と、このブレーキディスク12に摩擦抵抗を付与するキャリパ11を備えている。キャリパ11は、ブレーキディスク12を跨いだ状態で車両の非回転部95にブラケット96(車体側の支持部)を介して取り付けられるキャリパボディ16と、ブレーキディスク12を挟んで互いに対向するようにキャリパボディ16に摺動可能に設けられる複数対、具体的には二対(図2の断面図において一対のみ示す。)のピストン17とを有する対向ピストン型のものである。なお、以下においては、車両への取付状態をもって説明し、この取付状態におけるブレーキディスク12の半径方向をディスク半径方向と称し、ブレーキディスク12の軸線方向をディスク軸線方向と称し、ブレーキディスク12の円周方向をディスク円周方向と称す。なお、図1において矢印Fは車両前進時におけるブレーキディスク12の回転方向を示している。
【0028】
キャリパボディ16は、図2〜図6に示すように、ブレーキディスク12を挟んでアウタ側(ブレーキディスク12に対し車輪と反対側)に配置されるアウタ側シリンダ部20と、インナ側(ブレーキディスク12に対し車輪側)に配置されるインナ側シリンダ部21とが対を成して対向配置されている。また、キャリパボディ16は、これらアウタ側シリンダ部20とインナ側シリンダ部21とをブレーキディスク12の半径方向外側で連結するブリッジ部22A,22B,22Cを有している。
【0029】
キャリパボディ16には、ディスク軸線方向に沿ってアウタ側シリンダ部20及びインナ側シリンダ部21間に橋架されるパッドピン24がディスク円周方向に離間して複数本具体的には二本設けられている。
アウタ側シリンダ部20及びインナ側シリンダ部21には、互いにディスク軸線方向において対向して対をなすボア26が、ディスク円周方向に離間して複数対具体的には二対設けられており、これらボア26それぞれに上記ピストン17が摺動可能に挿入されている。これにより、ディスク軸線方向で対向する一対のボア26がディスク円周方向に複数対、具体的には二対並列に形成され、ディスク軸線方向で対向する一対のピストン17,17がディスク円周方向に複数対、具体的には二対並列に配置されている。なお、図2中90は、各ボア26内に配置されてピストン17を摺動自在にシールするピストンシールである。
【0030】
キャリパボディ16に取り付けられた各パッドピン24には、それぞれ一対のブレーキパッド31がディスク軸線方向に移動可能に支持されている(図2の断面図においては一対のみ示す)。これらパッド31は、ブレーキディスク12の軸線方向における両側にそれぞれ配置され、対応するピストン17によってブレーキディスク12に押し付けられ、同ディスク12に制動力を付与するようになっている。なお、図中39は、各ボア26にブレーキ液を供給する供給通路(図示せず)に介装されたエア抜き用のブリーダプラグである。
【0031】
また、図3〜図6に示すように、キャリパボディ16のうちの、アウタ側シリンダ部20のディスク円周方向の両側位置には、ブリッジ部22A,22Cのアウタ側シリンダ部20との連接部に隣接してボス部34が一体に形成されている。この各ボス部34は、略円柱状であって、各ボス部34間の円周方向中間位置でディスク半径方向に沿って前記ディスク12の回転軸線に直交する延長線である直線Pと平行に延出している。そして、各ボス部34の各軸心部にボルト挿通用の取付孔35が形成されており、これら取付孔35も前記直線Pと平行になっている。各ボス部34のディスク半径方向内側の端面は、図1に示すように、車体側の支持部であるブラケット96の端面に重合され、取付孔35に挿通されたボルト36(固定手段)によってブラケット96に締結固定されるようになっている。一方、各ボス部34のディスク半径方向外側の端面、すなわち取付孔35の開口の周囲は、取付孔35と直交する平面によって構成され、車体取付時にボルト36の頭部36aが当接する座面37となっている。この座面37は、外周が取付孔35の軸心を中心とする円形状に形成されるとともに、ボルト36の頭部36aの当接面の径よりも大きい径に形成されている。また、ディスク円周方向両側のブリッジ部22A,22Cは、ディスク軸線方向の略中間位置付近が最も膨出するように全体がボス部34の座面37に対してディスク半径方向外側に膨出している。
【0032】
ところで、各ボス部34の座面37と、その座面37に隣接するブリッジ部22A,22Cの間には、座面37に対して窪んだ凹所38が形成されている。この凹所38は、図4中のクロスハッチングで示されるように、座面37の周域のうちのブリッジ部22A,22C側の略半分の領域に、取付孔35の中心部を中心とする略円弧状に設けられている。そして、凹所38は、図7に示すように、座面37から遠ざかるに従って拡径するテーパ形状を成すように形成されている。
【0033】
前述のボス部34,34を含むキャリパボディ16は、インナ側シリンダ部21の底部を除いて全体がアルミニウム等の鋳造によって一体に形成され、インナ側シリンダ部21の底部の一部が別体の蓋部材43(図2参照。)によって形成されている。つまり、キャリパボディ16は、鋳造時にインナ側シリンダ部21の底部に開口部45が形成され、この開口部45に別体の蓋部材43が摩擦撹拌接合(FSW)によって取り付けられている。なお、開口部45は、キャリパボディ16の鋳造後にボア26内部の加工を行うための加工孔として利用される。
【0034】
また、ディスク円周方向中央のブリッジ部22Bとアウタ側シリンダ部20との連接位置には、キャリパ11内の各ボア26にブレーキ液を給排する配管(図示せず。)を接続するためのボス部40が設けられ、そのボス部40の上面に配管取付用の座ぐり部41がキャリパ11の長手方向中心と前記ブレーキディスクの回転軸線とを結んだ線分(上記直線Pと同様)に対する垂直面と平行に設けられている。さらに詳細には、ボス部40の上面は、ディスク軸線方向と平行な偏平な座ぐり部加工面47(加工面)とされ、この座ぐり部加工面47の略中央位置に座ぐり部41が形成されている。そして、座ぐり部加工面47と、その加工面47に隣接するブリッジ部22Bの間には、図8に示すように、座ぐり部加工面47に対して窪んだ凹所42が形成されている。この凹所42の場合も、図4中のクロスハッチングで示されるように、座ぐり部加工面47の周域のうちのブリッジ部22B側の略半分の領域に、配管取付孔46の中心部を中心とする略円弧状に設けられている。
【0035】
ところで、インナ側シリンダ部21の底部を除くキャリパボディ16は、例えば、図9,図10に示すような鋳造型56A,56Bによって造形される。今、アウタ側、インナ側の両シリンダ部20,21間にブレーキディスク12が挿入される側(図1の図中下側)をキャリパボディ16の下側と呼ぶものとすると、鋳造型56A,56Bは、キャリパボディ16を上下にほぼ二分するように形成されている。なお、図9,図10中、57A,57Bは、アウタ側シリンダ部20を造形する外シリンダ造形部であり、58A,58Bは、インナ側シリンダ部21を造形する内シリンダ造形部、59A,59B,59Cは、ブリッジ部22A,22B,22Cを造形するブリッジ部造形部、60は、ディスク円周方向両側のボス部34の座面37を造形する座面造形部、61は、ディスク円周方向中央のボス部40の座ぐり部加工面47を造形する加工面造形部である。座面造形部60と加工面造形部61は、鋳造品のディスク半径方向に沿う直線P(図5参照。)と直交する偏平面な面とされ、鋳造型56A,56Bの型抜き方向と直交するようになっている。
また、図9に示すように、上側の鋳造型56Aには、座面造形部60とブリッジ部造形部59A,59Cの各間に凹所38を造形する略円弧状の凸部62が形成されるとともに、加工面造形部61とブリッジ部造形部59Bの間に凹所42を造形する略円弧状の凸部63が形成されている。
【0036】
この鋳造型56A,56Bを用いてキャリパボディ16を造形した場合、アウタ側シリンダ部20の両側のボス部34の座面37と、中央のボス部40の座ぐり部加工面47が直線P(図5参照。)と直交する偏平な面として造形されるとともに、座面37とブリッジ部22A,22Cの各間と、座ぐり部加工面47とブリッジ部22Bの間に凹所38,42が夫々造形される。
この後、キャリパボディ16の各部に孔あけや切削等の加工が施され、両側のボス部34の座面37と中央のボス部40の座ぐり部加工面47には、切削加工等の平滑化のための加工が施される。
【0037】
両側のボス部34の座面37に切削加工を行うに際しては、鋳造後の座面37が直線Pと直交する偏平な面とされるうえ、座面37とブリッジ部22A,22Cの各間に凹所37が造形されるため、切削工具のほぼ全域を座面37に均一に、かつ周囲と干渉することなく当接されることができる。したがって、このディスクブレーキ1においては、座面37に対する加工を容易に、かつ精度良く行うことができ、生産効率の大幅な向上を図ることができる。
また、中央のボス部40の座ぐり部加工面47に切削加工を行うに際しては、鋳造後の座ぐり部加工面47が直線Pと直交する偏平な面とされるうえ、座ぐり部加工面47とブリッジ部22Bの間に凹所42が造形されるため、座面37の切削加工の場合と同様に、切削工具のほぼ全域を座ぐり部加工面47に均一に、かつ周囲と干渉することなく当接させることができる。したがって、座ぐり部加工面47を容易に、かつ精度良く加工することができる。
【0038】
なお、凹所37,42は、キャリパボディ16の鋳造後に切削加工によって形成することも可能であるが、この実施形態のように鋳造時に型によって造形するようにすれば、加工工数を減らし、より生産効率を高めることができる。
また、このディスクブレーキ1においては、座面37とブリッジ部22A,22C、座ぐり部加工面47とブリッジ部22Bの各間に凹所38,42を設け、座面37や座ぐり部加工面47に対する切削工具の片当たりを抑制できるようにしたものであり、座面37とブリッジ部22A,22C、座ぐり部加工面47とブリッジ部22Bの各高さが同じであっても片当たり防止効果を得ることができるが、特に、この実施形態のようにブリッジ部22A,22B,22Cが座面37や座ぐり部加工面47に対して径方向外側に膨出するものにおいては、切削工具とブリッジ部22A,22B,22Cの干渉の可能性を少なくできるため、切削加工の効率化を図るうえで有効となる。
【0039】
さらに、この実施形態のディスクブレーキ1においては、両側のボス部34の座面37の外周が円形状であり、ボス部34とブリッジ部22A,22Cの各間の凹所38が取付孔35を中心とする略円弧状に形成されているため、座面37の加工時に切削工具が干渉しにくくなるだけでなく、キャリパ11の取付時や取外し時に締め付け工具が周囲と干渉するのを防止できるとともに、ボルト36の締結トルクを安定化させることができる。
【0040】
また、このディスクブレーキ1においては、座面37の径がボルト36の頭部36aの当接面の径よりも大きくなるように設定されているため、ボルト36の頭部36aを座面37に安定的に当接させ、キャリパ11の取付精度を高めることができる。
【0041】
また、この実施形態のディスクブレーキ1の場合、ボス部34とブリッジ部22A,22Cの各間の凹所38が、座面37から遠ざかるに従って拡径する末広がりのテーパ状に形成されているため、座面37の周囲の剛性が高まり、その結果、キャリパ11の取付精度や取付安定性が高まるという利点がある。
【0042】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、ボス部34の座面37にはボルト36の頭部36aが当接するようになっているが、車体側の支持部側にボルトを設け、座面37にはボルトに螺合されるナットが当接するようにしても良い。
また、鋳造時に座面37が形成されるものであれば、特にボス部34を形成しないキャリパに本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の一実施形態のディスクブレーキの車体取付状態を示す正面図。
【図2】同実施形態を示す図1のA−A断面に対応する断面図。
【図3】同実施形態のディスクブレーキの斜視図。
【図4】同実施形態のディスクブレーキの平面図。
【図5】同実施形態のディスクブレーキの側面図。
【図6】同実施形態のディスクブレーキの正面図。
【図7】同実施形態を示す図5のR−R断面に対応する断面図。
【図8】同実施形態を示す図5のS−S断面に対応する断面図。
【図9】同実施形態のキャリパを製造するための鋳造型の一方のブロックを示す斜視図。
【図10】同実施形態のキャリパを製造するための鋳造型の他方のブロックを示す斜視図。
【符号の説明】
【0044】
1…ディスクブレーキ
11…キャリパ
12…ブレーキディスク
20…アウタ側シリンダ部(シリンダ部)
21…シンナ側シリンダ部(シリンダ部)
22A,22C…ブリッジ部
34…ボス部
35…取付孔
36…ボルト(固定手段)
36a…頭部
37…座面
38…凹所
41…座ぐり部
42…凹所
47…座ぐり加工面(加工面)
62…凸部
96…ブラケット(車体側の支持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキディスクを挟んで対向配置される対を成すシリンダ部と前記ブレーキディスクの径方向外側を跨いで前記対を成すシリンダ部同士を連結するブリッジ部とを有するキャリパに一対の取付孔が設けられ、該取付孔は該取付孔間中心の延長線が前記ブレーキディスクの回転軸線と直交するように前記キャリパを貫通してなり、前記取付孔に挿通される固定手段によって前記車体側の支持部に取り付けられるラジアルマウント型のディスクブレーキにおいて、
前記取付孔周囲の前記固定手段が当接する座面と前記ブリッジ部との間に、前記座面に対して窪む凹所を設けたことを特徴とするディスクブレーキ。
【請求項2】
前記ブリッジ部の前記座面に隣接する部分は、前記座面よりも前記ブレーキディスクの径方向外側に膨出していることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
前記凹所は、前記キャリパの鋳造時に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
前記凹所は、前記取付孔の中心部を中心とする略円弧状に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のディスクブレーキ。
【請求項5】
前記座面の外周は、ほぼ円形状となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のディスクブレーキ。
【請求項6】
前記固定手段の前記座面に当接する部分はボルトの頭部またはナットであり、前記座面の径は、前記ボルトの頭部またはナットの前記座面との当接面の径よりも大きいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のディスクブレーキ。
【請求項7】
前記凹所は、前記座面から遠ざかるに従って拡径するテーパ形状となっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のディスクブレーキ。
【請求項8】
ブレーキディスクを挟んで対向配置される対を成すシリンダ部と前記ブレーキディスクの径方向外側を跨いで前記対を成すシリンダ部同士を連結するブリッジ部とを有するキャリパに一対の取付孔が設けられ、該取付孔は取付孔間中心の延長線が前記ブレーキディスクの回転軸線と直交するように前記キャリパを貫通してなり、前記取付孔に挿通される固定手段によって前記車体側の支持部に取り付けられるラジアルマウント型のディスクブレーキの製造方法において、
前記取付孔周囲の前記固定手段が当接する座面と前記ブリッジ部との間に、前記座面に対して窪む凹所を前記キャリパの鋳造時に形成し、その後に前記座面を平滑加工することを特徴とするディスクブレーキの製造方法。
【請求項9】
前記ブリッジ部の前記座面に隣接する部分は、前記座面よりも前記ブレーキディスクの径方向外側に膨出していることを特徴とする請求項8に記載のディスクブレーキの製造方法。
【請求項10】
前記キャリパは、前記ブレーキディスクの回転面を含む平面に対して直交する上下面により型割りした鋳型により鋳造され、前記鋳型のうちの一方の鋳型に前記凹所を形成する凸部が形成されていることを特徴とする請求項8または9に記載のディスクブレーキの製造方法。
【請求項11】
前記凹所は、前記取付孔の中心部を中心とする略円弧状に設けられていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のディスクブレーキの製造方法。
【請求項12】
前記座面の外周は、ほぼ円形状となっていることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のディスクブレーキの製造方法。
【請求項13】
前記固定手段の前記座面に当接する部分はボルトの頭部またはナットであり、前記座面の径は、前記ボルトの頭部またはナットの前記座面との当接面の径よりも大きいことを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載のディスクブレーキの製造方法。
【請求項14】
前記凹所は、前記座面から遠ざかるに従って拡径するテーパ形状となっていることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載のディスクブレーキの製造方法。
【請求項15】
ブレーキディスクを挟んで対向配置される対を成すシリンダ部と、前記ブレーキディスクの径方向外側を跨いで前記対を成すシリンダ部同士を連結するブリッジ部を有するキャリパに、該キャリパの長手方向中心と前記ブレーキディスクの回転軸線とを結んだ線分に対する垂直面と平行な配管取付用座ぐり部の加工面が前記ブリッジ部に隣接して設けられたディスクブレーキにおいて、
前記加工面と前記ブリッジ部との間に、前記加工面に対して窪む凹所を設けたことを特徴とするディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−232397(P2008−232397A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77053(P2007−77053)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】