説明

ドアロックシステム

【課題】 通信線及び電力線の配線工事を必要とせず、待機状態での電力消費を少なくし、商用電源が停電時でも施開錠できるドアロックシステムを提供すること。
【解決手段】 電磁誘導によって電力の送受電及びコマンドとレスポンスの送受信を行うためのアンテナ9及び12を備え、開錠装置1は、データをメモリ回路11に記憶する機能と、記憶されたデータをドアロック装置2へ送信するコマンド送信回路8と、レスポンスを受信するレスポンス受信回路7と、電力を送電する電力送電回路10と、携帯性を備え、ドアロック装置2は、電気錠20と、開錠装置1からコマンドを受信するコマンド受信回路21と、受信されたデータを判別し認証を行う機能と、レスポンスを開錠装置1に送信するレスポンス送信回路22と、電気錠ドライバ19などを備え、電磁誘導により受電した電力を用いて電気錠20を開錠する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な施設の部屋やボックスなど、例えば、宿泊施設における客室、会議室、ロッカー、集合住宅の宅配ボックス、金庫等の、ドアの錠の施開錠を制御するドアロックシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティの向上及び利便性からICカードや磁気カードとそのカード用のリーダライタを用いた、様々なドアロックシステムが提案されている。
【0003】
図7は、従来のドアロックシステムの一例を示す図であり、特許文献1に記載のカード式客室鍵集中制御システムの構成を示したものである。このシステムは、ホテル等の施設において、客室の施錠/開放を集中制御するシステムとして開示されたものであり、顧客の所有するクレジットカードを部屋の鍵として利用することにより、毎回専用カードを発行する必要がないので、運用経費を低く抑えることができる認証システムとして提案されている。
【0004】
この例では、図7に示すように、フロントでチェックインする際、顧客が持つクレジットカード31の内容を読取り、このクレジットカード31をその顧客に割当てた客室の入室用鍵とするように登録し、各客室のカード式鍵に対応する端末33をセンタ装置32で集中制御するよう構成している。
【0005】
各客室の端末33は、入室用鍵として挿入されたクレジットカード31の内容を読取り、センタ装置32にそのクレジットカード31がその客室用の入室鍵として登録されたクレジットカード31であるか否かを問合せ、センタ装置32から登録済のクレジットカード31である旨の応答を得ることによって、その客室のドアを開放するものである。
【0006】
図8は、従来のドアロックシステムの他の例を示す図であり、特許文献2に記載のセキュリティシステムの構成を示したものである。このシステムは、停電時に、バックアップ動作時間を引き延ばしつつ、在室者が残っている区画やセキュリティレベルの高い区画は最後まで監視することができるようにしたセキュリティシステムとして提案されている。
【0007】
この例では、図8に示すように、区画52または53において、カードリーダ44によりIDカード46に記憶された認証用データを読み込んでコントローラ41に送信し、CPU42によりコントローラ41内のメモリに登録されているデータと照合して認証を行い、その結果に基づいて電気錠45の施錠及び解錠を行う。このシステムは、停電時に電力線47及び48を介して電気錠45及びカードリーダ44に対して電力を提供するバックアップ用のバッテリ43を備え、コントローラ41においてバッテリ43のバッテリ残量を監視して、バッテリ残量が一定値以下になった場合に、セキュリティレベルの低い区画あるいは在室者のいない区画から順にカードリーダ44及び電気錠45への電力供給を停止させ動作時間を引き延ばすというものである。
【0008】
【特許文献1】特開平6−240937号公報
【特許文献2】特開2009−009268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のシステムを新たに設置する場合は、カード式客室鍵集中制御システムの被制御機器である各端末と集中制御するセンタ装置間において通信線を配線工事する必要がある。また、各端末へ電力を給電するために電力線を配線工事する必要がある。これらの配線工事には高額の費用を要すると共に、ドアのヒンジ部等では度重なるドアの開閉により通信線及び電力線の断線障害が発生しやすいという課題がある。
【0010】
また、停電等によってセンタ装置及び各端末への電力給電が停止した場合、全ての機能が一斉に利用できなくなるという課題がある。
【0011】
特許文献2の例は、バックアップ用のバッテリを装備し商用電源が停電時に備え且つ電力を給電する区画を限定しバッテリの動作時間を引き延ばすというものである。しかし、このシステムを設置する場合にも各部屋の端末の電力線及び通信線の配線工事を行う必要があり、同様に配線工事に高額な費用を要することや、ドアのヒンジ部等で度重なるドアの開閉により通信線及び電力線が断線しやすいという課題がある。
【0012】
また、両者のシステムは共に、電気錠の開錠制御を行う必要のない待機状態においても各区画に設置されたカードリーダやコントローラ等に電源を給電する必要があり、常に電力を消費しているという課題がある。
【0013】
本発明の目的は前記の従来技術の課題を解決し、通信線及び電力線の配線工事を必要とせず、待機状態での電力消費を少なくし、商用電源が停電時でも施開錠できるドアロックシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明によるドアロックシステムは、開錠装置とドアロック装置とを備えるドアロックシステムであって、前記開錠装置は、データを内部メモリに記憶する機能と、前記内部メモリに記憶された前記データをコマンドとして前記ドアロック装置へ送信する機能と、前記ドアロック装置からの前記コマンドに対するレスポンスを受信する機能と、電磁誘導方式により前記ドアロック装置に電力を送電する機能と、携帯性とを備え、前記ドアロック装置は、電気錠と、前記開錠装置からコマンドとして送信された前記データを受信する機能と、前記受信されたデータを判別し前記電気錠を開錠するための認証を行う機能と、前記コマンドに対するレスポンスを前記開錠装置に対して送信する機能と、前記電気錠を施開錠する機能と、電磁誘導方式により前記開錠装置より電力を受電する機能とを備え、前記コマンド及びレスポンスの送信及び受信は無線方式によって行われ、前記ドアロック装置は前記の電磁誘導方式により受電した電力を用いて前記電気錠を開錠することを特徴とする。
【0015】
ここで、前記開錠装置が行う前記コマンドの送信は、前記開錠装置から電磁誘導方式により電力を送電するために送出する搬送波に変調信号を重畳して行い、前記ドアロック装置が行う前記レスポンスの送信は、前記開錠装置から電磁誘導方式により電力を送電するために送出された搬送波に変調信号を重畳して行ってもよい。
【0016】
また、前記ドアロック装置は、前記の受電した電力から少なくとも2種類の異なる電源電圧を生成する機能を備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、携帯型の開錠装置から電源が給電されるので、ドアロック装置へ電源を給電する電力線の配線工事を必要としないドアロックシステムが得られる。よって、ドアのヒンジ部等で電力線の断線障害の無いドアロックシステムが得られる。さらに、商用電源が停電しても施開錠できるドアロックシステムが得られる。
【0018】
また、本発明では、開錠装置とドアロック装置間で電磁誘導方式などを含めた無線方式によりコマンドとレスポンスの送受信を行うことにより、通信線の配線工事を必要としないドアロックシステムが得られる。よって、ドアのヒンジ部等で通信線の断線障害の無いドアロックシステムが得られる。さらに、開錠装置から電磁誘導方式により電力を送電するために送出する搬送波、または送出された搬送波に変調信号を重畳してコマンドとレスポンスの送受信を行うことにより、電力の送受電と信号の送受信でアンテナなどの部分を共有でき、よりシステムを簡素化できる。
【0019】
また、前記ドアロック装置が、受電した電力から少なくとも2種類の異なる電源電圧を生成する機能を備えることにより、より効率的にシステムを構成できる。例えば、2種類の電源電圧をコントローラ用の電圧V1と電気錠用の電圧V2とし、V1<V2とすると、コントローラ部の電圧V1より高い電圧V2を要する電気錠を駆動する必要がない場合、すなわち、ドアロック装置へ開錠データの正当性を判別するための登録データの設定及び更新を行う場合等では、電気錠を駆動できる電圧V2のレベルまで電力の受電及び蓄電を行う必要がないので、待機状態での電力消費を少なくするドアロックシステムが得られる。
【0020】
以上のように、本発明により、通信線及び電力線の配線工事を必要とせず、待機状態での電力消費を少なくし、商用電源が停電時でも施開錠できるドアロックシステムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るドアロックシステムの第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明に係るドアロックシステムの第2の実施の形態を示す構成図。
【図3】第1の実施の形態の整流回路、定電圧回路、蓄電回路、電圧検出回路の回路構成の概念図。
【図4】第2の実施の形態の整流回路、定電圧回路、蓄電回路、電圧検出回路の回路構成の概念図。
【図5】第1の実施の形態の開錠装置とドアロック装置間の基本的な通信手順の概略を示すシーケンス図。
【図6】第2の実施の形態の開錠装置とドアロック装置間の基本的な通信手順の概略を示すシーケンス図。
【図7】従来のドアロックシステムの一例を示す図。
【図8】従来のドアロックシステムの他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明に係るドアロックシステムの第1の実施の形態を示す構成図である。図1において、本実施の形態のドアロックシステムは、開錠装置1とドアロック装置2とを備えるドアロックシステムであって、開錠装置1とドアロック装置2は、それぞれ電磁誘導によって電力の送受電及びコマンドとレスポンスの送受信を行うためのアンテナ9及び12を備えている。開錠装置1は、データを内部メモリであるメモリ回路11に記憶する機能と、メモリ回路11に記憶されたデータをコマンドとしてアンテナ9を介してドアロック装置2へ送信するコマンド送信回路8と、ドアロック装置2からのコマンドに対するレスポンスをアンテナ9を介して受信するレスポンス受信回路7と、電磁誘導方式によりドアロック装置2にアンテナ9を介して電力を送電する電力送電回路10とを備え、携帯性を備えている。ドアロック装置2は、電気錠20と、開錠装置1からコマンドとして送信されたデータをアンテナ12を介して受信するコマンド受信回路21と、受信されたデータを判別し電気錠20を開錠するための認証を行う機能と、コマンドに対するレスポンスをアンテナ12を介して開錠装置1に対して送信するレスポンス送信回路22と、電気錠20を施開錠する電気錠ドライバ19と、電磁誘導方式によりアンテナ12を介して前記開錠装置より電力を受電する整流回路13などを備え、ドアロック装置2は電磁誘導方式により受電した電力を用いて電気錠20を開錠する。
【0024】
また、本実施の形態のドアロックシステムでは、開錠装置1が行うコマンドの送信は、開錠装置から電磁誘導方式により電力を送電するために送出する搬送波に変調信号を重畳して行い、ドアロック装置2が行うレスポンスの送信は、開錠装置1から電磁誘導方式により電力を送電するために送出された搬送波に変調信号を重畳して行う。
【0025】
開錠装置1において、メモリ回路11は動作プログラム及び開錠データを記憶する。また、開錠装置1は、開錠装置1を駆動するためのバッテリ回路5、電力の送電とコマンド及びレスポンスの送受信の指示を入力する操作器4、動作状態を示す表示器3、開錠装置1の全体を制御するコントローラ6を有する。
【0026】
バッテリ回路5は充電可能なものが望ましく、図示しない充電回路によって充電される。
【0027】
操作器4は、例えばスイッチやテンキー等からなる。操作器4の所定のスイッチやキー操作を行うことで、ドアロック装置2への電磁誘導による電力の送信、ドアロック装置2へのコマンドの送信、及びドアロック装置2からのレスポンスの受信を行う。ドアロック装置2へ送信するコマンドの種類は、少なくとも、開錠データを送信するコマンド、ドアロック装置2が開錠データを判別し認証を行うためのデータを登録するコマンド、電気錠20の施開錠状態を取得するコマンド、蓄電回路16の電圧レベルを取得するコマンドがある。
【0028】
表示器3は、例えばLCDやLEDランプ等からなる。操作器4の操作に従い、電気錠20の施開錠状態、蓄電回路16の電圧レベル等の情報を表示する。
【0029】
メモリ回路11には開錠装置1の動作プログラム及びドアロック装置2の開錠データ等を記憶しておく。ドアロック装置2の開錠データは図示しないインタフェース、例えばUSBやRS−232C等を介してメモリ回路11に記憶する。
【0030】
電力送電回路10はアンテナ9とのインピーダンスを整合する図示しない整合回路と、図示しないEMCフィルタと、図示しないドライバ回路などから構成され、コントローラ6から送信する信号で前記ドライバ回路が入力をスイッチングして送電電力波形に変換し、アンテナ9へ送出する。アンテナ9及び12としては、一般的な非接触電力伝送、近接通信などで用いられるループアンテナなどを用いることができる。
【0031】
レスポンス受信回路7は、アンテナ9で受信した、ドアロック装置2からのレスポンスのデータで変調された信号を復調しコントローラ6へ送出する。
【0032】
コマンド送信回路8はコントローラ6から送信するコマンドを受け、送電電力波形を搬送波としてこの搬送波にコマンドのデータによる変調波を重畳し、アンテナ9へ送出する。
【0033】
ドアロック装置2において、整流回路13は、アンテナ12を介して電磁誘導により受電した電力を直流の電力とするための整流を行い、整流回路13で整流した直流電圧を安定化させる定電圧回路14、定電圧回路14で電圧を安定化させた電力を蓄える蓄電回路16、蓄電回路16に蓄電されている電力の電圧レベルを検出しコントローラ17へ電圧検出信号を送出する電圧検出回路15を備える。また、コマンド受信回路21は、アンテナ12で受信したコマンドを復調してコントローラ17へ送出する。コントローラ17は、コマンドに従って処理を行い、その処理結果をレスポンスとしてレスポンス送信回路22へ送出する。レスポンス送信回路22は、レスポンスのデータにより搬送波を変調してアンテナ12へ送出する。また、ドアロック装置2は、ドアロック装置2の動作プログラムと開錠装置1からの開錠データを判別し認証を行うためのデータを記憶するメモリ回路23、動作状態を表示する表示器18、電気錠20を駆動する電気錠ドライバ19、ドアのロックを行う電気錠20を有する。
【0034】
電気錠20は常にスプリングで錠から飛び出している先端が三角状のラッチボルトと、回転することでラッチボルトを錠内に引き入れるドアノブと、ドアノブの回転を禁止する自己保持型のソレノイドからなる。電気錠20はドアに設置され、電気錠20のラッチボルトが対向するドア枠側には受け座の穴がある。施錠とは、飛び出しているラッチボルトが対向するドア枠の受け座の穴に入り、ドアノブは自己保持型のソレノイドで回転できないようにロックされている状態である。開錠とは、自己保持型のソレノイドに電気錠ドライバ19からパルス状に電力を給電しドアノブの回転ロックを解いた状態に保持されている状態である。この状態で、ドアノブを回転しドアを開放することができる。再施錠の動作は、ドアノブを回転しラッチボルトを錠内に引き入れたときに自己保持されたソレノイドを開放する。そして、回転したドアノブを元に戻した位置で回転できないように再ロックされるものである。開放されたドアを閉める際のラッチボルトは、スプリングと三角状の先端により対向する受け座の穴に滑り込む構造であって、特に前記自己保持型のソレノイドを操作する必要は無い。
【0035】
電気錠ドライバ19は、コントローラ17からの開錠信号を受けて、電気錠20の自己保持型のソレノイドへ、蓄電回路16に蓄えられた電力により上記のパルス状の電力の給電を行う。
【0036】
メモリ回路23はドアロック装置2が動作するためのプログラムと、開錠装置1から送出される開錠データを判別し認証するためのデータを記憶する。
【0037】
表示器18は、例えばLCDやLEDランプ等からなり、ドアロック装置2の状態、例えば施開錠状態や蓄電回路16の電圧レベル等を表示する。
【0038】
図3は、第1の実施の形態の、整流回路13、定電圧回路14、蓄電回路16、電圧検出回路15の回路構成の概念図を示す。整流回路13はダイオードブリッジ等を用いた整流回路であってもよい。定電圧回路14はリニアレギュレータまたはスイッチングレギュレータなどであってもよい。蓄電回路16には高容量の電気二重層コンデンサ等を用いるのがよい。容量については使用する電気錠の自己保持型ソレノイドを駆動でき、コントローラを駆動できるものを選定する。電圧検出回路15は、蓄電回路16の電圧を監視し、コントローラの駆動及び電気錠の駆動が可能な電力が蓄電されたかを判断し、コントローラへ通知する。この通知信号はコントローラのリセット解除信号等に用いてもよい。
【0039】
図5は、第1の実施の形態の、開錠装置1とドアロック装置2間の基本的な通信手順の概略を示すシーケンス図である。
【0040】
図5において、最初のステップS1で開錠装置1は電力送電を開始する。ドアロック装置2は開錠装置1から送電される電力を受電し、整流し、定電圧化を行い蓄電回路16へ蓄電する。
【0041】
次のステップS2で開錠装置1は電圧レベル取得コマンドを送信する。ドアロック装置2は、未だ蓄電を完了せず、電気錠及びコントローラを駆動するのに十分な電力でない場合は無応答である。この場合、開錠装置1はレスポンスが返るまで電圧レベル取得コマンドを繰り返し送信する。
【0042】
ステップS3として、蓄電回路16に十分な電力が蓄電された後に電圧レベル取得コマンドを送信すると、ステップS4として電気錠とコントローラを駆動可能な状態に蓄電が完了した旨のレスポンスが返る。
【0043】
次のステップS5として、開錠装置1は開錠データ送信コマンドを送信する。ドアロック装置2は送信された開錠データが開錠すべき正しいデータかをメモリ回路に登録されたデータに基づいて判別し、開錠データが正当と認証したときのみ電気錠20を開錠し、ステップS6としてレスポンスを返す。開錠データが正当と認証できなかった場合はその旨のレスポンスを返し、開錠装置1はそのレスポンスに従いエラー処理、例えば開錠データ送信コマンドを再送する、または、更新した開錠データで開錠データ送信コマンドを再送する等の処理を行なう。
【0044】
次にステップS7として開錠装置1は開錠状態取得コマンドを送信し、ステップS8としてドアロック装置2からのレスポンスを受け、開錠状態であることを確認し、その後、最後にステップS9として電力送電を終了する。
【0045】
上記のように、本実施の形態では、電磁誘導で電力送電及び通信を行うことで高額な配線工事が不要となり、停電時にも動作可能であり、待機時の電力消費が無いドアロックシステムが得られる。
【0046】
図2は本発明に係るドアロックシステムの第2の実施の形態を示す構成図である。
【0047】
本実施の形態のドアロックシステムに用いる開錠装置1は第1の実施の形態に用いた開錠装置1と同じである。本実施の形態においては、ドアロック装置26が、受電した電力から2種類の異なる電源電圧を生成する機能を備えていることのみが第1の実施の形態と異なっている。
【0048】
図2において、ドアロック装置26は、受電した電力を整流回路13により直流に整流した後、電気錠20の駆動用の電力として蓄電回路16に送出する第2の定電圧回路24と、受電した電力を直流に整流した後、コントローラ駆動用としてコントローラ17と電圧検出回路15に送出する第1の定電圧回路25とを備えている。第2の定電圧回路24で電圧を安定化させた電力は蓄電回路16で蓄えられ、第1の定電圧回路25の電圧レベルは電圧検出回路15で検出され、その電圧検出信号がコントローラ17へ送出される。アンテナ12、コントローラ17、コマンド受信回路21、レスポンス送信回路22、メモリ回路23、表示器18、電気錠ドライバ19などの構成、機能は第1の実施の形態のドアロック装置2と同様である。
【0049】
図4は、第2の実施の形態の、整流回路13、第1の定電圧回路25、第2の定電圧回路24、蓄電回路16、電圧検出回路15の回路構成の概念図を示す。整流回路13はダイオードブリッジ等を用いた整流回路でよい。第1の定電圧回路25はコントローラの駆動用でありリニアレギュレータまたはスイッチングレギュレータなどでよい。第2の定電圧回路24は電気錠の駆動用でありリニアレギュレータまたはスイッチングレギュレータなどでよい。ここで、第1の定電圧回路25の出力電圧は第2の定電圧回路24の出力電圧よりも小さい。蓄電回路16には高容量の電気二重層コンデンサ等を用いる。電圧検出回路15は第1の定電圧回路25の電圧を監視し、コントローラの駆動が可能なレベルになった場合にコントローラへ通知する。この通知信号はコントローラのリセット解除信号等に用いてもよい。蓄電回路16の蓄電された電力の監視はコントローラの図示しないAD変換回路で行う。
【0050】
図6は、第2の実施の形態の、開錠装置1とドアロック装置26間の基本的な通信手順の概略を示すシーケンス図である。
【0051】
図6において、最初にステップS10として開錠装置1は電力送電を開始する。ドアロック装置26は開錠装置1から送電される電力を受電し、整流回路13で整流し、第2の定電圧回路で定電圧化を行い蓄電回路16へ蓄電を開始する。また、第1の定電圧回路で定電圧化した電圧を電圧検出回路15で検出し、コントローラへ検出信号を送出する。この信号をコントローラのリセット信号等に用いる。
【0052】
次に、ステップS11として、開錠装置1は電圧レベル取得コマンドを送信する。ドアロック装置26はコントローラの図示しないAD変換回路で蓄電回路16の電圧を計測して電気錠20の駆動の可否を判定し、ステップS12としてその結果をレスポンスとして送信する。開錠装置1は電気錠が駆動可能とのレスポンスを得るまで電圧レベル取得コマンドを繰り返し送信する。
【0053】
ステップS13として、電気錠20を駆動できる電力まで蓄電回路が蓄電された後に電圧レベル取得コマンドを送信すると、ステップS14として電気錠を駆動可能な状態である旨のレスポンスが返る。
【0054】
次にステップS15として、開錠装置1は開錠データ送信コマンドを送信する。このコマンドを受信したドアロック装置26は送信された開錠データが正しいかを判別し、開錠データが正しいと認証したときのみ電気錠20を開錠し、ステップS16としてレスポンスを返す。開錠データが正しいと認証できなかった場合はその旨のレスポンスを返し、開錠装置1はそのレスポンスに従いエラー処理、例えば開錠データ送信コマンドを再送する、または、更新した開錠データで開錠データ送信コマンドを再送する等の処理を行なう。
【0055】
ステップS17として、開錠装置1は開錠状態取得コマンドを送信し、ステップS18のドアロック装置26からのレスポンスで開錠状態であることを確認し、最後にステップS19として電力送電を終了する。
【0056】
第2の実施の形態では、上記のように、電磁誘導で電力を送信後に電気錠が駆動可能になる前に開錠装置1とドアロック装置26の通信が可能になる。すなわち、電気錠を駆動しない処理、例えば、ドアロック装置に対し、開錠データを判別し認証するための登録データの設定または更新を行う場合等は、電気錠を駆動できるレベルまでの電力送電及び蓄電を必要とせず、短時間で開錠装置とドアロック装置間の通信を開始できるドアロックシステムが得られる。
【0057】
本発明は、例えば、宿泊施設における客室、会議室、ロッカー、集合住宅の宅配ボックス、金庫等様々なドアの錠の開錠を制御するドアロックシステムに利用することができる。開錠装置としては、電磁誘導で非接触ICカードと通信できるNFC(Near Field Communication)機能を搭載した携帯電話なども利用できる。携帯電話を用いることで、開錠データをインターネット等で事前に配信することも可能であり、会議室やロッカー等の予約許可サービス等をインターネット上で行うことも可能である。
【0058】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではないことはいうまでもなく、目的や用途に合わせて設計変更可能である。例えば、本発明を構成する各機能部分の実現方法は上記の実施の形態の回路構成以外のものであってもよく、また、必要に応じて他の機能を追加しても良い。
【符号の説明】
【0059】
1 開錠装置
2、26 ドアロック装置
3、18 表示器
4 操作器
5 バッテリ回路
6、17 コントローラ
7 レスポンス受信回路
8 コマンド送信回路
9、12 アンテナ
10 電力送電回路
11、23 メモリ回路
13 整流回路
14 定電圧回路
15 電圧検出回路
16 蓄電回路
19 電気錠ドライバ
20、45 電気錠
21 コマンド受信回路
22 レスポンス送信回路
24 第2の定電圧回路
25 第1の定電圧回路
31 クレジットカード
32 センタ装置
33 端末
41 コントローラ
42 CPU
43 バッテリ
44 カードリーダ
46 IDカード
47、48 電力線
52、53 区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開錠装置とドアロック装置とを備えるドアロックシステムであって、前記開錠装置は、データを内部メモリに記憶する機能と、前記内部メモリに記憶された前記データをコマンドとして前記ドアロック装置へ送信する機能と、前記ドアロック装置からの前記コマンドに対するレスポンスを受信する機能と、電磁誘導方式により前記ドアロック装置に電力を送電する機能と、携帯性とを備え、前記ドアロック装置は、電気錠と、前記開錠装置からコマンドとして送信された前記データを受信する機能と、前記受信されたデータを判別し前記電気錠を開錠するための認証を行う機能と、前記コマンドに対するレスポンスを前記開錠装置に対して送信する機能と、前記電気錠を施開錠する機能と、電磁誘導方式により前記開錠装置より電力を受電する機能とを備え、前記コマンド及びレスポンスの送信及び受信は無線方式によって行われ、前記ドアロック装置は前記の電磁誘導方式により受電した電力を用いて前記電気錠を開錠することを特徴とするドアロックシステム。
【請求項2】
前記開錠装置が行う前記コマンドの送信は、前記開錠装置から電磁誘導方式により電力を送電するために送出する搬送波に変調信号を重畳して行い、前記ドアロック装置が行う前記レスポンスの送信は、前記開錠装置から電磁誘導方式により電力を送電するために送出された搬送波に変調信号を重畳して行うことを特徴とする請求項1に記載のドアロックシステム。
【請求項3】
前記ドアロック装置は、前記の受電した電力から少なくとも2種類の異なる電源電圧を生成する機能を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のドアロックシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−256567(P2011−256567A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130695(P2010−130695)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】