説明

フロントフォーク

【課題】 フロントフォークにおける全体重量のいたずらな増大化を阻止する。
【解決手段】 車体側チューブ1と車輪側チューブ2とが上下に間隔を有して配設の軸受1a,1bを介して出没可能に嵌合されながら懸架バネSで伸長方向に附勢されるフォーク本体を有すると共に、このフォーク本体内に車輪側チューブ2に結合したシリンダ体3と車体側チューブ1に結合したロッド体4とからなるダンパを収装し、このダンパにおけるシリンダ体3のロッドガイド31が連結手段10を介して車輪側チューブ2に連結されてなるフロントフォークにおいて、連結手段10が上記の上下に間隔を有して配設の軸受1a,1bが摺接しない車輪側チューブ2の非摺動域Lにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントフォークに関し、特に、車体側チューブと車輪側チューブとを有しながら懸架バネで伸長方向に附勢されるフォーク本体内にダンパを収装してなるフロントフォークの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車体側チューブと車輪側チューブとを有しながら懸架バネで伸長方向に附勢されるフォーク本体内にダンパを収装してなるフロントフォークとしては、従来から種々の提案がある。
【0003】
その中で、たとえば、特許文献1および特許文献2には、車体側チューブと車輪側チューブとからなるフォーク本体内に収装のダンパにあって、特許文献1では、シリンダ体が車体側チューブの下端にコネクタを介して連結されて支承され、また、特許文献2では、シリンダ体が車輪側チューブの上端部に延設部を介して連結されて吊持される提案が開示されている。
【0004】
それゆえ、この二つの提案にあっては、二輪車の走行時に生じる車輪側チューブの曲げ作用がダンパに伝達され難くなるため、ダンパにおいて、ロッド体とシリンダ体との作動が円滑になり、両者間における摺動抵抗を減ずる利点がある。
【特許文献1】特開平8‐26168公報(図面参照)
【特許文献2】特開2006‐57781公報(要約,明細書中の段落0009,同0011および0012,図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した二つの提案にあって、ダンパにおけるロッド体とシリンダ体との間の摺動抵抗を減ずる点で問題がある訳ではないが、その実施化に際して、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0006】
まず、特許文献1に開示の提案の実施に際して、シリンダ体を車体側チューブに連結するためのコネクタが必須になり、重量が嵩む不具合がある。
【0007】
つぎに、特許文献2に開示の提案の実施に際して、気室による気体バネ特性を得る場合に、気室の容積を保障しようとすると、どうしても油面が下がる傾向になる。
【0008】
このことから、ダンパを作動油中に臨在させるには、上記の公報中の図1にも開示されているように、シリンダ体に上方に延びる延設部を連設すると共に、この延設部の上端を車輪側チューブの上端に連結することを要す。
【0009】
そして、この延設部は、シリンダ体を吊持するから、シリンダ体との間におけるいわゆる一体性や所定の機械的強度を有することが要求され、そのため、ダンパにおいてこの延設部を設けることによって、フロントフォークにおける重量の軽減化が妨げられる傾向になる。
【0010】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、全体重量のいたずらな増大化の阻止を可能にして、その汎用性の向上を期待するのに最適となるフロントフォークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、この発明によるフロントフォークの構成を、基本的には、車体側チューブと車輪側チューブとが上下に間隔を有して配設の軸受を介して出没可能に嵌合されながら懸架バネで伸長方向に附勢されるフォーク本体を有すると共に、このフォーク本体内に車輪側チューブに結合したシリンダ体と車体側チューブに結合したロッド体とからなるダンパを収装し、このダンパにおけるシリンダ体の上端部が連結手段を介して車輪側チューブに連結されてなるフロントフォークにおいて、連結手段が上記の上下に間隔を有して配設の軸受が摺接しない車輪側チューブの非摺動域にあるとする。
【発明の効果】
【0012】
それゆえ、この発明にあって、ダンパにおけるシリンダ体の上端部と車輪側チューブとの連結を実現する連結手段が上下に間隔を有して配設される軸受が摺接しない車輪側チューブにおける非摺動域に位置決められるから、連結手段が上記の軸受を介して出没可能に嵌合する車体側チューブと車輪側チューブとの作動性に悪影響を及ぼすことがなく、かつ、文献開示の提案に比較して、フロントフォークにおける全体重量のいたずらな増大化を招来せずして、シリンダ体を車輪側チューブに連結できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるフロントフォークは、二輪車の前輪側に架装されて前輪に入力される路面振動を吸収する油圧緩衝器とされ、全体図たる図1に示すように、車体側チューブ1と車輪側チューブ2とが上下に間隔を有して配設の軸受1a,1bを介して出没可能に嵌合する倒立型に設定のフォーク本体を有してなる。
【0014】
そして、図示するフォーク本体の内部には両ロッド型のダンパが収装され、このダンパは、シリンダ体3が車輪側チューブ2に結合しロッド体4が車体側チューブ1に結合されている。
【0015】
また、フォーク本体は、懸架バネSによって車体側チューブ1内から車輪側チューブ2が抜け出るようになる伸長方向に附勢され、この懸架バネSは、図1に示すところでは、下端が後述する連結手段10を構成するアダプタ101の上端に担持される。
【0016】
なお、懸架バネSの下端は、アダプタ101の上端にのみ担持されずして、シリンダ体3の上端部たるロッドガイド31、すなわち、シリンダ体3の上端開口をロッド体4の貫通下に閉塞するロッドガイド31の上端にも担持されて良く、また、ロッドガイド31の上端にのみ担持されても良い(図8および図9参照)。
【0017】
そして、懸架バネSの上端は、図2に示すように、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ部材11におけるホルダ部11aに配設のバネ受S1に筒状に形成のスペーサS2の配在下に係止される。
【0018】
ホルダ部11aは、ダンパにおけるロッド体4、すなわち、上方ロッド体41の上端部を螺入させ、これによって、ロッド体4の車体側チューブ1への連結を実現している。
【0019】
一方、このフロントフォークにあって、図1に示すように、フォーク本体内のダンパの外は、リザーバ室Rとされ、このリザーバ室Rには作動油が注入され、その作動油の油面Oを境にする気室Aが画成され、この気室Aは、フォーク本体の収縮作動時にエアバネ力を発揮する。
【0020】
そして、このダンパにあって、図3に示すように、シリンダ体3内には作動油を充満させながらピストン体5が摺動可能に収装され、このピストン体5は、シリンダ体3内に上方油室R1と下方油室R2を画成している。
【0021】
また、このダンパにあって、ピストン体5は、伸側減衰バルブ51および圧側減衰バルブ52を有し、この伸側減衰バルブ51および圧側減衰バルブ52は、上方油室R1と下方油室R2との連通を許容しながら所定の減衰力を発生させる。
【0022】
ロッド体4、すなわち、上方ロッド体41および下方ロッド体42は、前記したピストン体5の図1中で上下側となる両側にそれぞれの基端が連設されながらそれぞれの先端がシリンダ体3における上端開口を閉塞するロッドガイド31および下端開口を閉塞するボトム端部32を貫通してシリンダ体3外に突出している。
【0023】
上方ロッド体41の図中で上端となる先端は、前記したように、車体側チューブ1に連結されているが、下方ロッド体42の先端は、シリンダ体3におけるボトム端部32を貫通して前記したダンパの外のリザーバ室Rに突出している。
【0024】
ちなみに、図3に示すように、上方ロッド体41の先端側が貫通するシリンダ体3におけるロッドガイド31は、軸受部材31aを有し、この軸受部材31aで上方ロッド体41の摺動性を保障している。
【0025】
一方、図4に示すように、下方ロッド体42の先端側が貫通するシリンダ体3におけるボトム端部32は、下方ロッド体42の摺動性を保障しつつシール部材32aを有し、このシール部材32aによってリザーバ室Rとシリンダ体3内の下方油室R2との連通を遮断している。
【0026】
以上のように形成されたフロントフォークにあっては、フォーク本体の伸縮作動時に両ロッド型のダンパが伸縮作動して、ピストン体が有する減衰バルブで所定の減衰力を発生する。
【0027】
そして、ダンパにおいて、シリンダ体3内をピストン体5が最上昇する伸び切り時には、図3に示すように、上方油室R1内にあって上方ロッド体41の外周に介装される伸び切りバネS3が最収縮されて衝撃が緩和される。
【0028】
また、上記と逆に、ダンパにおいて、シリンダ体3内をピストン体5が最下降する最収縮時には、図2中に架装線図で示すように、車輪側チューブ2の上端が前記したキャップ部材11の下端に隣接のクッション部材12に当接して衝撃が緩和される。
【0029】
なお、フロントフォークにおける最収縮時の衝撃緩和については、上記のクッション部材12を利用する方策に代えて、あるいは、これに併せて、図示しないが、オイルロック機構を利用しても良い。
【0030】
ところで、この発明のフロントフォークを構成するフォーク本体内に収装のダンパにあっては、両ロッド型のダンパを形成する上方ロッド体41が車体側チューブ1に結合されて垂設されるのに対して、シリンダ体3が車輪側チューブ2に結合されて吊持されてなる。
【0031】
すなわち、シリンダ体3は、図4に示すように、下端が車輪側チューブ2のボトム部側に連結されないのはもちろんだが、図3に示すように、ロッドガイド31が車体側チューブ1に設けた前記の軸受1a,1bの間に位置しながら連結手段10によって車輪側チューブ2に連結される。
【0032】
これにより、シリンダ体3のロッドガイド31は、車輪側チューブ2における曲げ作用が小さい位置に連結され、車輪側チューブ2におけるの曲げ作用をダンパに一層伝達し難くする。
【0033】
前記した軸受1a,1bは、車体側チューブ1に対する車輪側チューブ2の出没可能にする嵌合を許容するもので、車輪側チューブ2の外周にあっては、軸受1a,1bを全く摺接させない非摺動域Lが出現する。
【0034】
すなわち、図1に示すところでは、最伸長状態にあるダンパにおける作動ストロークLdに基づいて、軸受1aが車輪側チューブ2に対して摺接するストロークL1と、軸受1bが車輪側チューブ2に対して摺接するストロークL2とが出現し、このストロークL1,L2間に上記の非摺動域Lが出現する。
【0035】
そして、この非摺動域Lに連結手段10を設けることで、フロントフォークの作動性を阻害せずして、車輪側チューブ2にシリンダ体3を連結することが可能になる。
【0036】
さらに、車輪側チューブ2におけるこの非摺動域Lの外周について、メッキ加工を省略すれば、後述する連結手段10におけるアダプタ101を車輪側チューブ2に連結させるための諸加工によるメッキの剥がれなどの危惧を解消できる。
【0037】
一方、連結手段10は、その一実施例として、図3に示すように、シリンダ体3のロッドガイド31の外周に形成の螺条部31bに螺着されながら外周を車輪側チューブ2の内周に隣接させる断面を環状にして筒状に形成されるアダプタ101を有してなる。
【0038】
そして、このアダプタ101は、図3に示すところでは、その肉厚を貫通するように周方向に開穿された複数の孔101aを有すると共に、この孔101aに対向するように車輪側チューブ2に開穿した孔2aに圧入されると共に上記の孔101aに圧入される複数本のピン102を有してなる。
【0039】
それゆえ、この図3に示す連結手段10にあっては、詳しくは図5に示すように、車輪側チューブ2およびアダプタ101に対するピン102の圧入でアダプタ101を車輪側チューブ2に連結させている。
【0040】
ちなみに、アダプタ101の外周部には車輪側チューブ2の内周に隣接するシール103が嵌装され、アダプタ101の内周部にはシリンダ体3の外周に隣接するシール104が嵌装されている。
【0041】
上記したように、連結手段10は、結果的に、シリンダ体3における上端部たるロッドガイド31を車輪側チューブ2に連結させて、シリンダ体3が車輪側チューブ2に吊持される態勢を具現化できれば足りる。
【0042】
この観点からすれば、この連結手段10は、上記したアダプタ101と、このアダプタ101に開穿の孔101aおよび車輪側チューブ2の孔2aに圧入されるピン102とを有してなるのに代えて、任意の構成が採用されて良い。
【0043】
たとえば、図示しないが、アダプタ101とロッドガイド31とを一体成形して、ロッドガイド31の外周部に上記の孔101aに相当する穴を開穿し、この穴に上記のピン102を圧入しても良く、この場合には、いわゆるアダプタを要しないことおよび後述するシール104の配設を省略でき、部品点数を減ずる点で有利になる。
【0044】
図6に示すところは、アダプタ101が周方向の複数箇所で孔101aを開穿させると共に、この孔101aが内側から車輪側チューブ2の孔2aに向けて変形加工されてアダプタ101の肉厚が外側に折り曲げられ(図6(B)参照)、これによってアダプタ101が車輪側チューブ2に連結される(図6(A)参照)としている。
【0045】
アダプタ101における内側から外側に向けて変形加工は、図示する孔101aから変形加工されるのではなく、図示しないが、車輪側チューブ2に開穿の孔2aに嵌入される外周側への突出部とされても良い。
【0046】
また、図7に示すところは、アダプタ101に対して車輪側チューブ2を連結するについて、車輪側チューブ2を外周側から加締め加工で変形するもので、このとき、車輪側チューブ2における変形部2bは、アダプタ101の外周に形成の凹陥部たる横向きに開口する環状溝101b内に嵌入される。
【0047】
そして、車輪側チューブ2における変形部2bは、全周に亙るロール加締めで環状に形成されても良く、また、部分加締めでスポット状に形成されても良い。
【0048】
また、図示しないが、アダプタ101とロッドガイド31とを一体成形してロッドガイド31の外周に上記の凹陥部たる環状溝101bに相当する環状溝を形成し、この環状溝に向けて加締め加工をして、変形部を凹陥部に嵌入しても良く、この場合には、シール104が不要になる点で有利となる。
【0049】
この実施形態による場合には、車輪側チューブ2に孔2a(図5参照)を開穿しないから車輪側チューブ2における機械的強度の低下を危惧させず、そして、図示しないが、シール103と同様のシールを上記の環状溝101b内に収装することでシール機能の一層の向上を図ることが可能になる。
【0050】
図8に示すところは、シリンダ体3における上端部を形成するロッドガイド31が車輪側チューブ2の内周側部に嵌装されるスナップリング105に上方から担持されると共に、この状態から下方から上昇するアダプタ101がロッドガイド31の外周に螺合してその外周を車輪側チューブ2の内周に隣接させるもので、スナップリング105は、アダプタ101とロッドガイド31とに挟持される。
【0051】
それゆえ、この実施形態による場合には、前記した図5および図6に示す実施形態の場合に比較して、図7に示す実施形態の場合と同様に、車輪側チューブ2に孔2a(図5参照)を開穿しないから、車輪側チューブ2における強度をいたずらに低下させない点で有利となる。
【0052】
図9に示すところは、アダプタ101(図5,図6,図7および図8参照)がシリンダ体3におけるロッドガイド31に一体成形されて車輪側チューブ2に螺着されるもので、この実施形態による場合には、連結手段10においてアダプタ101と言う部品の削減が可能になる点で有利になる。
【0053】
そして、この実施形態の場合に、シリンダ体3のロッドガイド31が車輪側チューブ2の内周に直接連結される限りには、その連結構造については任意とされて良いが、好ましくは、図示するように、車輪側チューブ2に螺着されるのが良い。
【0054】
このとき、連結手段10としては、車輪側チューブ2の相応する外周に環状凹陥部2cを形成して肉厚を挟む反対側の車輪側チューブ2の内周に環状突起部を形成し、この環状突起部を螺条部2dにすると共に、ロッドガイド31の螺条部31bを螺合するのが良い。
【0055】
なお、この実施形態による場合に、シリンダ体3とロッドガイド31との間にはシール33が配在され、ロッドガイド31と車輪側チューブ2との間にはシール34が配在されている。
【0056】
以上のように、連結手段10を構成するアダプタ101がダンパを構成するシリンダ体3におけるロッドガイド31に一体に形成される場合、および、前記した各実施形態に示すように別部品としてロッドガイド31に結合される場合のいずれにあっても、フォーク本体における径の変更およびダンパにおけるシリンダ体3の径の変更にアダプタ101の径の選択で対処できる。
【0057】
ところで、アダプタ101をシリンダ体3におけるロッドガイド31に連結する方策については、懸架バネSの下端を担持させることからすれば、前記した螺着に代えて溶接が利用されても良い。
【0058】
しかし、爾後におけるアダプタ101へのピン102の圧入のことを考察すると、シリンダ体3に対する配設位置の調整を可能にする点から、螺着される場合の方に融通性があると言い得るし、また、車輪側チューブ2の径やシリンダ体3の径が変更される場合にも、このアダプタ101におけるの寸法の変更で対処できる。
【0059】
以上からすれば、ダンパにおいて、シリンダ体3のロッドガイド31を車体側チューブ1に連結するについて、その連結手段10を上下の軸受1a,1b間に位置して車輪側チューブ2の非摺接域Lに設けるから、車輪側チューブ2の曲げ作用を受け難く、ロッド体4とシリンダ体3との作動が円滑になる。
【0060】
さらに、シリンダ体3を車輪側チューブ2に吊持させる場合に、連結手段10を介してであるが、シリンダ体3のロッドガイド31が車輪側チューブ2に連結させるから、前記した文献開示の提案に比較して、フロントフォークにおける重量の軽減化に寄与する。
【0061】
すなわち、特許文献2に開示のダンパにおいては、シリンダ体に上方に延びる延設部(15)を連設すると共に、この延設部(15)の上端を車輪側チューブの上端に連結するから、この延設部(15)を有する分、フロントフォークにおける重量の軽減化を妨げるのは、前記した通りである。
【0062】
それに対して、この発明における連結手段10は、たとえば、シリンダ体3のロッドガイド31をあたかも膨径させるように筒状に形成のアダプタ101をロッドガイド31に連設させるのみとするから、いたずらな重量の増大を招来せず、フロントフォークにおける重量の軽減化を妨げない。
【0063】
ところで、上記したところにあって、連結手段10を構成するアダプタ101については、このアダプタ101の下方となるリザーバ室R部分を油室にするのも気室にするのも自由になる。
【0064】
すなわち、図5(A),図6(A)および図7,図8に示すように、アダプタ101は、シール103の介在下に車輪側チューブ2に隣接すると共に、ピン102を圧入させる、あるいは、変形加工させる部位以外の部位において、シール104の介在下にシリンダ体3に隣接している。
【0065】
それゆえ、このアダプタ101にあっては、アダプタ101の上方にある作動油をアダプタ101の下方に流入させず、したがって、アダプタ101の下方たるリザーバ室R部分を気室にすることが可能になる。
【0066】
ちなみに、図9に示す場合にあっては、上記のシール103に相当するシール34を有してなるが、このシール34の配在で上記したアダプタ101の下方たるリザーバ室R部分を気室にすることが可能になるのはもちろんである。
【0067】
そして、アダプタ101の下方のリザーバ室R部分を気室にする場合には、ここに封入される分の作動油量を削減でき、フロントフォークにおける重量削減に寄与すると共に、作動油の封入時間の短縮や封入される作動油量の削減でコスト上有利になる。
【0068】
また、アダプタ101の下方のリザーバ室R部分を気室にする場合には、この気室にロッド体4を形成する他方のロッド体42が出没することで、気室が膨縮されて、エアバネ力の発生を期待できる。
【0069】
なお、アダプタ101の下方の気室にエアバネ力の発揮を期待しない場合には、図4中に仮想線図で示すように、車輪側チューブ2の下端開口を閉塞するボトム部材21に大気に連通する通孔21aを開穿しても良く、この通孔21aを開穿する場合には、いわゆる放熱効果を期待できる。
【0070】
上記に対して、図示しないが、アダプタ101が上記のシールの103,104を有せずして、図5(B)中に破線図で示すように、アダプタ101の上方側と下方側との連通を許容する通路101cを有する場合には、アダプタ101の下方に作動油を流入できる。
【0071】
ちなみに、この通路101cは、基本的には形成されていれば足りるが、アダプタ101の外周側に形成される場合には、流路面積を大きく確保でき、作動油の流量を保障する上で有利になる。
【0072】
前記したところにあって、ダンパにおけるロッド体4を形成する上方ロッド体41は、図示しないが、軸芯部にプッシュロッドを挿通させ、このプッシュロッドは、車体側チューブ1の上端開口を閉塞するキャップ11に配設の内側アジャスタ13(図1参照)の回動操作で上下動する。
【0073】
そして、同じく図示しないが、プッシュロッドの下端にはニードル状に形成の弁体を有し、この弁体が前記したピストン体5が有する伸側減衰バルブ51あるいは圧側減衰バルブ52を迂回するバイパス路における作動油の通過流量を調整して、ダンパで発生される減衰力を高低調整する。
【0074】
また、前記したところにあって、連結手段10を形成するアダプタ101に圧入されるピン102の後端(図5参照)、アダプタ101を変形加工せる場合の外側端(図6参照)、車輪側チューブ2に対する外周側からの加締め加工による変形部2b(図7参照)、および、車輪側チューブ2の内周に環状突起部2dを形成するための外周側から形成する環状凹陥部2cは、車体側チューブ1の内周に干渉しないのはもちろんだが、車輪側チューブ2における非摺動域Lに設けられるため、フロントフォークの伸縮作動で軸受1aにも干渉しない。
【0075】
前記したところでは、車体側チューブ1と車輪側チューブ2との間における摺動性を保障する軸受1a,1bが車体側チューブ1の内周部に設けられてなるとしたが、これに代えて、図示しないが、車体側チューブ1の下端開口部と車輪側チューブ2の上方外周部に設けられても良い。
【0076】
そして、前記したところでは、フォーク本体内に収装されるダンパが両ロッド型からなるとして説明したが、この発明が意図するところからすれば、ダンパが片ロッド型からなるとしても良いことはもちろんで、この場合には、シリンダ体3の取付部を車輪側チューブ2の下底から立設するための複雑な構造を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明の一実施形態によるフロントフォークを一部破断して示す正面図である。
【図2】図1のフロントフォークにおける上端側部を拡大して示す部分半截縦断面図である。
【図3】図1のフロントフォークにおける中間部を図2と同様に示す図である。
【図4】図1のフロントフォークにおける下端側部を図2と同様に示す図である。
【図5】(A)は、図3に示すところを部分的に拡大して示す縦断面図で、(B)は、(A)中のX−X線位置で示す横断面図である。
【図6】(A)は、他の実施形態を図5(A)と同様に示す図で、(B)は、(A)中のX−X線位置で示す横断面図である。
【図7】さらに他の実施形態を図5(A)と同様に示す図である。
【図8】さらに他の実施形態を図7と同様に示す図である。
【図9】さらに他の実施形態を図7と同様に示す図である。
【符号の説明】
【0078】
1 車体側チューブ
1a,1b 軸受
2 車輪側チューブ
2a 孔
2b 変形部
3 シリンダ体
4 ロッド体
10 連結手段
31 上端部たるロッドガイド
31b 螺条部
101 アダプタ
101c 通路
102 ピン
103,104 シール
105 スナップリング
L 非摺動域
S 懸架バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側チューブと車輪側チューブとが上下に間隔を有して配設の軸受を介して出没可能に嵌合されながら懸架バネで伸長方向に附勢されるフォーク本体を有すると共に、このフォーク本体内に車輪側チューブに結合したシリンダ体と車体側チューブに結合したロッド体とからなるダンパを収装し、このダンパにおけるシリンダ体の上端部が連結手段を介して車輪側チューブに連結されてなるフロントフォークにおいて、連結手段が上記の上下に間隔を有して配設の軸受が摺接しない車輪側チューブの非摺動域にあることを特徴とするフロントフォーク。
【請求項2】
シリンダ体の上端部がシリンダ体の上端開口をロッド体の貫通下に閉塞するロッドガイドからなると共に、連結手段がロッドガイドの外周に形成の螺条部と、車輪側チューブの非摺動域で車輪側チューブの内周に形成されてロッドガイドの螺条部を螺合させる螺条部とからなる請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項3】
シリンダ体の上端部がシリンダ体の上端開口をロッド体の貫通下に閉塞するロッドガイドからなると共に、連結手段がロッドガイドの外周に形成の凹陥部と、車輪側チューブの非摺動域で車輪側チューブの外周に対する変形加工で形成されてロッドガイドの凹陥部に嵌入される変形部とからなる請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項4】
シリンダ体の上端部がシリンダ体の上端開口をロッド体の貫通下に閉塞するロッドガイドからなると共に、連結手段がロッドガイドの外周に形成の穴と、車輪側チューブの非摺動域で車輪側チューブを外側から貫通して車輪側チューブおよびロッドガイドの穴に圧入されるピンとからなる請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項5】
シリンダ体の上端部がシリンダ体の上端開口をロッド体の貫通下に閉塞するロッドガイドからなると共に、連結手段がロッドガイドの外周に形成の螺条部に螺合しながら外周を車輪側チューブの内周に隣接させるアダプタを有してなる請求項1に記載のフロントフォーク。
【請求項6】
アダプタが車輪側チューブの非摺動域で車輪側チューブを外側から貫通するピンの圧入で車輪側チューブに連結されてなる請求項5に記載のフロントフォーク。
【請求項7】
アダプタが車輪側チューブの非摺動域で内側から外側に向けて変形加工されて車輪側チューブに連結されてなる請求項5に記載のフロントフォーク。
【請求項8】
アダプタが車輪側チューブの非摺動域にある外周に対して車輪側チューブの外側からする変形加工で車輪側チューブに連結されてなる請求項5に記載のフロントフォーク。
【請求項9】
アダプタが車輪側チューブの内周に嵌装のスナップリングに係止されながらロッドガイドの外周に螺着されてなる請求項5に記載のフロントフォーク。
【請求項10】
アダプタがシールの介在下に車輪側チューブに隣接すると共に加締め加工を許容しもしくはピンを圧入させあるいは変形加工させる部位以外の部位においてシールの介在下にシリンダ体に隣接してアダプタの下方を気室にしてなる請求項5から請求項9のいずれかに記載のフロントフォーク。
【請求項11】
アダプタがこのアダプタの上方と下方との連通を許容する通路を有してアダプタの下方を油室にしてなる請求項5から請求項9のいずれかに記載のフロントフォーク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−222221(P2009−222221A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164539(P2008−164539)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】