説明

プリント配線板、電子装置およびプリント配線板の製造方法

【課題】 単純な構成で、表面実装部品等との接続信頼性を向上させることができ、かつ基板の割れ等の発生を抑制可能なプリント配線板、電子装置およびプリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のプリント配線板10は、基板11の少なくとも一方の面に、絶縁層12が形成され、前記絶縁層12上面から前記基板11の前記絶縁層形成面まで達する深さの凹部13が形成され、前記基板11の前記絶縁層形成面における前記凹部13底面に、金属層14を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、電子装置およびプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術の発展に伴い、電子部品の表面実装化がすすみ、BGAなどの表面実装部品の採用も増えてきている。このような表面実装部品は、例えば、はんだ等を用いて多層プリント配線板に実装される。ここで、前記表面実装部品は、その線膨張係数(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)が比較的小さい。一方、前記プリント配線板は、そのCTEが比較的大きい。このように、前記表面実装部品と前記プリント配線板との間には線膨張係数差(CTE差)があるため、温度変化により応力が発生し、前述の実装構造に反り等の変形が発生する場合がある。
【0003】
また、前述の線膨張係数差以外にも、プリント配線板の製造工程における硬化収縮等による内部応力が、リフロー加熱等により開放されることによって、プリント配線板に反り等の変形が発生する場合がある。これらの変形により、はんだ接合部の断線、または各部材の変形、破壊等が生じる。この結果、プリント配線板と表面実装部品との接続信頼性が低下する。
【0004】
そこで、特許文献1では、CTEの違いによる応力の緩和のために、応力緩和用接続媒体を介して、ランドグリッドアレイ(LGA:Land Grid Array)をプリント配線板上に実装している。また、特許文献2に記載の半導体装置は、半導体素子を実装した配線基板に、前記半導体素子の角部を平面視で内側外側から挟み込むL字状の溝部またはスリット部を配線基板に少なくとも1対備えている(同文献の請求項1、図1等参照)。この溝部またはスリット部により、半導体素子にかかる応力を緩和している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−236898号公報
【特許文献2】特開2004−247464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の応力緩和型実装体では、前記線膨張係数差等による応力を緩和して、接続信頼性を向上させるのに、前記応力緩和用接続媒体が必要である。このため、その構造が複雑である。
【0007】
一方、前記特許文献2に記載の半導体装置では、半導体にかかる応力を、前述の溝部またはスリット部により緩和しているため、その構造は単純である。しかしながら、前述の溝部またはスリット部は、プリント配線板の他の部分より強度が低い。このため、例えば、発生する反り等の変形または、筐体への組み付けの際の矯正等により、配線基板に割れ等が発生するおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、単純な構成で、表面実装部品等との接続信頼性を向上させることができ、かつ基板の割れ等の発生を抑制可能なプリント配線板、電子装置およびプリント配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のプリント配線板は、
基板の少なくとも一方の面に、絶縁層が形成され、
前記絶縁層上面から前記基板の前記絶縁層形成面まで達する深さの凹部が形成され、
前記基板の前記絶縁層形成面における前記凹部底面に、金属層を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電子装置は、
前記本発明のプリント配線板と、表面実装部品とを有し、
前記絶縁層が、表面実装部品実装領域を有し、
前記表面実装部品実装領域上に、前記表面実装部品が実装されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のプリント配線板の製造方法は、
基板の少なくとも一方の面に、金属層により、凹部パターンを形成する凹部パターン形成工程と、
前記凹部パターンを形成した面上に、絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記凹部パターン上の前記絶縁層を除去して凹部を形成する凹部形成工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、単純な構成で、表面実装部品等との接続信頼性を向上させることができ、かつ基板の割れ等の発生を抑制可能なプリント配線板、電子装置およびプリント配線板の製造方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、本発明のプリント配線板における実施形態1の一例の構成を示す斜視図である。(b)は、図1(a)に示すプリント配線板のI−I方向に見た断面図である。
【図2】(a)は、本発明の電子装置の一例の構成を示す斜視図である。(b)は、図2(a)に示す電子装置のII−II方向に見た断面図である。
【図3】(a)および(b)は、本発明のプリント配線板における実施形態2の一例の構成を示す断面図である。(c)および(d)は、比較対象のプリント配線板の構成を示す断面図である。
【図4】(a)は、本発明のプリント配線板および電子装置における実施形態3の一例の構成を示す斜視図である。(b)は、図4(a)に示すプリント配線板および電子装置のIII−III方向に見た断面図である。
【図5】(a)は、本発明の電子装置における実施形態4の一例の構成を示す斜視図である。(b)は、図5(a)に示す電子装置のIV−IV方向に見た断面図である。
【図6】本発明のプリント配線板および電子装置における実施形態5の一例の構成を示す断面図である。
【図7】線膨張係数差による変形の一例を示す断面図である。
【図8】変形の矯正の一例を説明する断面図である。
【図9】リフロー後のプリント配線板の変形の一例を示す断面図である。
【図10】リフロー後のプリント配線板の変形のその他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、「絶縁層上面」とは、その絶縁層における前記基板側とは反対側の面を意味する。
【0015】
以下、本発明について、例を挙げて詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。なお、以下の図1から図10において、同一部分には、同一符号を付している。また、図面においては、説明の便宜上、各部の構造は適宜簡略化して示す場合があり、各部の寸法比等は、実際とは異なる場合がある。
【0016】
〔実施形態1〕
本実施形態のプリント配線板は、多層プリント配線板の一例である。図1に、本実施形態のプリント配線板の構成を示す。図1(a)は、本実施形態のプリント配線板の斜視図である。図1(b)は、図1(a)のI−I方向に見た断面図である。図1に示すように、本実施形態のプリント配線板10は、前記基板として配線層11を有する。配線層11の一方の面(図1(b)において上側の面)には、絶縁層12が形成されている。この絶縁層12には、前記凹部として、その上面から配線層11の絶縁層形成面にまで達する深さの溝13が形成されている。溝13は、複数であり、互いに交差して絶縁層12の一端側から他端側まで横断して形成されている。配線層11の前記絶縁層形成面における溝13の底面には、前記金属層として銅箔パターン14が配置されている。絶縁層12は、その表面に表面実装部品実装領域15Aを有する(図1(b)における二点鎖線で囲われた領域)。配線層11には、例えば、FR−4等のエポキシ材料が用いられる。銅箔パターン14の幅は、例えば、後述のレーザ加工のスポット径と位置決め精度とを足した幅である。なお、図示していないが、前記配線層および前記絶縁層の層中または層間には、例えば、再配線層または層間配線(ビア)等が形成されている。
【0017】
一般に、リフロー後のプリント配線板は、予想がつかない方向に反り等の変形が発生する。例えば、図9に示すように、プリント配線板101とBGA(Ball Grid Array)102とが、プリント配線板101の裏面側(同図における下側)に反る場合がある。また、例えば、図10に示すように、プリント配線板101とBGA102とが、BGA102の実装面とは反対側(同図における上側)に反る場合がある。このような変形は、BGA等の表面実装部品とプリント配線板とのCTE差により発生する応力、またはプリント配線板内部の残留応力等に起因する。また、この反り等の変形を矯正して平面(筐体)にプリント配線板を組み付ける場合には、前記矯正によりBGA端部のはんだ接合部にもっとも大きな負荷が作用する。これらにより、はんだ接合部の断線等が生じる。この結果、プリント配線板と表面実装部品との接続信頼性が低下する。
【0018】
本実施形態のプリント配線板の前記表面実装部品実装領域に表面実装部品としてBGAが実装された状態(電子装置)を例にとり、前記CTE差による反り等の変形を、図7を参照して説明する。BGAとプリント配線板とは、リフロー時において、互いに応力ゼロの状態で、はんだ凝固点温度で接合される。本例では、図7(a)に示すように、本実施形態のプリント配線板に、BGA102が、溝13の両側にまたがって、溝13の両側の表面実装部品実装領域15Aに、バンプ103により実装される。前記リフロー後に、室温まで冷却すると、図7(b)に示すように、BGA102および本実施形態のプリント配線板は、それぞれのCTEの大きさに応じて寸法が変化して変形する(同図において、下向きの反り)。一方、図7(c)に、比較対象として、前記溝を設けていないプリント配線板に、前述と同様にリフローして、BGA102が、表面実装部品実装領域15Aにバンプ103により実装された状態を示す。このプリント配線板を、前記リフロー後に、室温まで冷却すると、図7(d)に示すように、BGA102および比較対象のプリント配線板は、それぞれのCTEの大きさに応じて寸法が変化して変形する(同図において、下向きの反り)。比較対象のプリント配線板は一様の形状であるため、前記変形がそのまま作用して、プリント配線板端部に大きな変形として現れる。この変形により、はんだ接合部の断線、破壊等が生じ、プリント配線板とBGAとの接続信頼性が低下する。
【0019】
ここで、本実施形態のプリント配線板では、溝13が形成されている。この溝13の部分では、プリント配線板の板厚を部分的に薄くして剛性を低下させており、例えば、曲がりやすくなっている。このため、プリント配線板における前述の変形が溝13により分断され、BGA102端に、変形による応力が集中するのを抑制することができる。また、前記変形を溝13の部分で発生させることができ、プリント配線板全体としての反りを低減することができる。この結果、前記特許文献1および前記特許文献2で懸念された、はんだ接合部への変形による負荷を低減でき、プリント配線板とBGA(表面実装部品)との接続信頼性を向上させることができる。また、溝13底面に銅箔パターン14が配置されているため、例えば、銅箔の柔軟性により、前述のように、溝13で剛性を低下させていても、配線層(基板)11の割れまたはひび等の発生を抑制することができる。この結果、例えば、リフロー後における前記割れ等による不良を低減することができ、製造効率の向上およびコスト削減が可能である。
【0020】
前述のように反りが発生したプリント配線板を筐体またはマザーボード等に取り付ける際には、取り付ける対象に倣わせるように、反りを矯正して組み付けることとなる。BGAパッケージ、チップ部品などの表面実装部品のはんだ接合部では、前述の矯正により、プリント配線板の両端に最も近いはんだ接合部に応力が集中しはんだ接合部を破壊するおそれがある。
【0021】
図8(a)に、本実施形態のプリント配線板に発生した反り(同図において、上向きの反り)を矯正して、筐体に組み付ける状態を示す。また、図8(b)に、前記比較対象のプリント配線板に発生した反り(同図において、上向きの反り)を矯正して、筐体に組み付ける状態を示す。図8(a)に示すように、反りの発生した本実施形態のプリント配線板の両端を、筐体81に組み付けるために、筐体81側に押し下げると(同図における下向き矢印)、前記両端に最も近いBGA102のはんだ接合部に負荷がかかる。ここで、前述のように、BGA102が溝13をまたいで接合されているため、前記CET差による反りが低減されている。また、前記両端を、筐体81側に押し下げる際には、溝13が曲がることで、加えられた力を分散して変形(矯正)されるため、BGA102の前記はんだ接合部への負荷を低減することができる。この結果、プリント配線板とBGA(表面実装部品)との接続信頼性を向上させることができる。また、銅箔パターン14により、前述と同様に、反り矯正のために加えられた力による配線層11(基板)の割れまたはひび等の発生を抑制することができる。この結果、例えば、反り矯正時の不良を低減することができ、製造効率の向上およびコスト削減が可能である。
【0022】
一方、図8(b)に示すように、反りの発生した比較対象のプリント配線板の両端を、筐体81に組み付けるために、筐体81側に押し下げると(同図における下向き矢印)、前記両端から最も近いBGA102のはんだ接合部に、はんだ接合部を剥離する方向に負荷がかかる。この負荷により、はんだ接合部の断線、破壊等が生じ、プリント配線板とBGAとの接続信頼性が低下する。
【0023】
また、本発明者による検討の結果、BGAを用いない特許文献1の技術には、以下のような問題点がある。特許文献1では、前記応力緩和用接続媒体の基板には、フレキシブルシートが用いられている。同文献の記載によれば、このフレキシブルシートは、その特性から反り矯正による変形に対して変形し易く、変形後の繰り返し応力により破壊され得る。前記フレキシブルシートが破壊される方が、応力がかからない点で好ましい(同文献の0028段落)。しかし、フレキシブルシートが破壊された後は、はんだ接合部を連絡するパターン化された銅箔(例えば、18μm)のみで、ランドグリッドアレイ(LGA)パッケージ等を支えることとなる。この結果、LGAパッケージ等の重量または熱変形の繰り返し等による負荷により、前記銅箔が破断して、接続信頼性が十分に確保できない。
【0024】
このため、前記フレキシブルシートに代えて、プリント配線板と同様のリジッド配線板を用いることが考えられる。前記プリント配線板と前記リジッド配線板との間には、大きなCTE差は無いが、前記LGAパッケージ等と前記リジッド配線板との間には、CTE差が存在する。このため、前記リジッド配線板と前記プリント配線板との良好な接合を確保しようとすると、前記リジッド配線板は両面から拘束されて変形し難くなり、応力を緩和する機能が低下してしまう。特に両面同位置に実装した基板と同様に信頼性が著しく落ちることが予想される。
【0025】
さらに、チップ部品、サイズの異なるLGA部品など電極構造の異なる多くの表面実装部品の全てに対して、前記特許文献1に記載された構造を用いるには、各部品毎に応力緩和用接続媒体を用意する必要がある。このため、応力緩和用接続媒体を、予め前述の部品に組み付ける作業、はんだ接合部箇所の検査数などの作業数の多さにより、生産性に問題がある。
【0026】
本実施形態のプリント配線板では、前記特許文献1のように、CTE差等による応力を緩和して、接続信頼性を向上させるのに、前記応力緩和用接続媒体を必要としないため、本実施形態のプリント配線板10は、その構成が単純である。また、本実施形態のプリント配線板10では、前記応力緩和用接続媒体のような別部品を必要としないため、例えば、部品点数を削減できて、コスト削減にもつながる。
【0027】
また、本実施形態のプリント配線板では、反り矯正時には配線が絶縁層に支持、保護された状態である。特許文献1に記載のフレキシブル基板(応力緩和用接続媒体)において、銅箔部分が接合部を支持するという構造とは異なるため、例えば、接続信頼性が確保される。
【0028】
本発明のプリント配線板は特に制限されないが、前記本発明の製造方法により製造することが好ましい。また、前記本発明の製造方法において、前記各工程は逐次で行ってもよいし、同時に行ってもよい。以下、本実施形態のプリント配線板の製造方法の一例を、図1を参照して説明する。
【0029】
まず、従来のBU(Build Up)工法により配線層11を形成する。この配線層11の表面に、銅箔により、溝パターン(銅箔パターン14)を形成する。銅箔パターン14は、レーザ加工での加工限界として機能するように、例えば、その厚みが12μmから50μmの範囲、その幅が50μmから500μmの範囲の形状を確保する。この状態で、配線層11の前記溝パターンを形成した面上に、絶縁層12を形成する。銅箔パターン14上の絶縁層12を、レーザ加工により除去して、前述のような溝13を形成する。このように、銅箔パターン14が配置されていることで、溝13の深さとパターンとを正確に形成することが可能である。このようにして、本実施形態のプリント配線板を製造可能である。ただし、本実施形態のプリント配線板を製造する方法は、この例に限定されない。なお、本実施形態のプリント配線板では、絶縁層12を溝13により分断するため、主となる面内方向の配線は、配線層11で形成される。溝13で分断された範囲内には、BGA等の表面実装部品との配線のみである。このため、他の表面実装部品との配線を受け持つ下層の配線から上に配線を引き出すのに、例えば、一般に層間接続構造の設計自由度の高いBU工法が有利である。
【0030】
本実施形態のプリント配線板は、例えば、上記のようにして製造されるため、前記特許文献1に記載の応力緩和用接続媒体を必要としない。このため、例えば、BGA毎に異なる応力緩和用接続媒体を準備する必要がない。したがって、例えば、製造にかかるコストを低減可能である。また、その製造工程において、例えば、前記応力緩和用接続媒体をプリント配線板またはBGA−PKGに実装しておく必要がないため、それに伴う組み立てコストが不要であり、製造にかかるコストを低減可能である。また、例えば、電子部品の実装後の後加工も不要であるため、製造にかかるコストを低減可能である。
【0031】
前記溝の深さは、特に制限されず、好ましくは0.06〜0.5mmの範囲であり、より好ましくは0.1〜0.25mmの範囲である。また、前記配線層および前記絶縁層の合計厚さは、特に制限されず、好ましくは1〜5mmの範囲であり、より好ましくは1.2〜2.5mmの範囲である。
【0032】
前記絶縁層を形成する材料は、特に制限されず、例えば、一般的なガラスエポキシ基材、ポリイミド基板材料等があげられる。
【0033】
前記金属層は、特に限定されないが、例えば、箔状(金属箔)である。なお、本実施形態では、前記金属箔として銅箔を用いているが、本発明は、これには限定されない。前記金属箔の厚みは、例えば、12〜20μmの範囲である。
【0034】
前記溝は、互いに交差して、前記絶縁層の一端側から他端側まで横断して形成されているが、本発明は、この例に限定されない。前述の効果が得られるのであれば、前記溝は、プリント配線板を横断せずに形成されていてもよい。なお、本発明において、前記凹部は、溝には限定されず、前記CTE差等による応力を緩和できればよい。前記凹部としては、例えば、ドット状、破線状等の形状があげられる。
【0035】
つぎに、本実施形態のプリント配線板における前記表面実装部品実装領域に、表面実装部品が実装された状態(電子装置)を、図2に示す。図2(a)は、この電池装置の斜視図である。図2(b)は、図2(a)に示す電子装置のII−II方向に見た断面図である。図2に示すとおり、この電子装置100は、前述のプリント配線板10と、表面実装部品として、BGA(Ball Grid Array)102aおよび102b等とを有する。BGA102aは、溝13の両側にまたがって、プリント配線板10の溝13の両側の表面実装部品実装領域15Aに、バンプ103aにより実装されている。BGA102bは、プリント配線板10の表面実装部品実装領域15Aに、バンプ103bにより実装されている。この電子装置は、本実施形態のプリント配線板を用いているため、例えば、その接続信頼性が高い。また、前述のように、BGA102aは、前述のように実装されているため、例えば、BGA102aとプリント配線板10との前記CTE差による応力は、溝13により緩和され、これに伴う反りが低減される。
【0036】
〔実施形態2〕
本実施形態のプリント配線板は、多層プリント配線板の一例である。図3(a)の断面図に、本実施形態のプリント配線板の構成を示す。図示のように、本実施形態のプリント配線板20は、前述の絶縁層12に代えて、絶縁層22を有する。この絶縁層22は、その面内方向のCTEが配線層11の面内方向のCTEと異なっている。これら以外の構成は、前述のプリント配線板10と同様である。配線層11には、例えば、FR−4等のガラス基材エポキシ樹脂等が用いられる。絶縁層22には、例えば、FR−5または、ビスマレイドトリアジン樹脂(例えば、BTレジン(登録商標))等の、配線層11に用いられる基板材料よりCTEの小さい基板材料が用いられる。なお、プリント配線板に実装されるBGAパッケージ、チップ部品等は、例えば、プリント配線板より前記CTEが小さい材料で構成される。
【0037】
図3(c)に示すように、一様な形状の配線層11と絶縁層22とに前記CTEの異なる基板を用いた場合には、図3(d)に示すように、プリント配線板全体が一様に変形した構造となってしまう。ここで、本実施形態のプリント配線板では、溝13により絶縁層22が分断されている。このため、溝13により分断された範囲内では、前記CTE差による応力により、前述と同様にそりが発生する。しかしながら、プリント配線板全体では、例えば、図3(b)に示すように、図3(d)と比較して小さな反りに収まる。さらに、例えば、前述のBGA等とのCTE差も小さくできるため、前記CTE差に起因するプリント配線板と表面実装部品との接続信頼性の低下を防止することができる。
【0038】
〔実施形態3〕
本実施形態は、多層プリント配線板および電子装置の一例である。図4に、本実施形態のプリント配線板および電子装置の構成を示す。図4(a)は、本実施形態のプリント配線板および電子装置の斜視図である。図4(b)は、図4(a)に示すプリント配線板および電子装置のIII−III方向に見た断面図である。図4に示すように、本実施形態のプリント配線板30は、表面実装部品実装領域間配線としてワイヤ31を有する。ワイヤ31は、溝13の両側の表面実装部品実装領域15Aに電気的に接続されている。これら以外の構成は、前述のプリント配線板10と同様である。本実施形態のプリント配線板は、例えば、実施形態1のプリント配線板を製造した後に、ワイヤボンディングによりワイヤ31を配線して製造する。また、本実施形態のプリント配線板に、前記実施形態1と同様にBGA等を実装することにより、電子装置300を製造可能である。
【0039】
本実施形態のプリント配線板では、前記ワイヤにより、例えば、表層配線の密度を向上させて表層配線数を確保することができる。なお、前記表面実装部品実装領域間配線は、前記ワイヤに限定されず、例えば、フレキシブルプリント配線板等であってもよい。
【0040】
〔実施形態4〕
本実施形態の電子装置は、プリント配線板に表面実装部品を実装した電子装置の一例である。図5に、本実施形態の電子装置の構成を示す。図5(a)は、この電子装置の斜視図である。図5(b)は、図5(a)に示す電子装置のIV−IV方向に見た断面図である。図5に示すように、本実施形態の電子装置400は、弾性体としてエラストマー層41を含む。このエラストマー層41は、電子装置の表面(BGA102a、102b、絶縁層12上面および溝13)を覆うように形成されている。エラストマー層41により、BGA102aおよび102bが封止されている。これら以外の構成は、前述の電子装置300と同様である。エラストマー層41は、例えば、絶縁性を確保でき、弾性率の低い層である。エラストマー層41を形成する材料としては、例えば、熱可塑性エラストマー、シリコーン材料等があげられる。前記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ウレタン系エラストマー等があげられる。エラストマー層41の弾性率は、好ましくは3MPa〜10GPaの範囲であり、より好ましくは3MPa〜100MPaの範囲である。本実施形態の電子装置は、例えば、前述のようにして、電子装置300を製造した後に、前記形成材料を、電子装置表面であるBGA102a、102b、絶縁層12の上面および溝13に充填して、BGA102aおよび102bを封止することで製造することができる。
【0041】
一般に熱可塑性材料は射出成形などに用いる際には短時間で形成することが可能であるが、例えば、反応性に乏しく溶融した樹脂は、プリント配線板表面には接着し難い。ここで、本実施形態の電子装置では、エラストマー層41が溝13にも形成されているため、例えば、密着力の低い熱可塑性材料を用いても、プリント配線板への密着性を向上させることができる。この結果、例えば、前記エラストマーを封止材料として機能させることができ、かつ前述の反り矯正時の変形にも、より追従可能である。また、エラストマー層41により、例えば、ワイヤ31等の実装構造の保護も可能である。
【0042】
〔実施形態5〕
本実施形態は、多層プリント配線板および表裏同位置に表面実装部品が実装された電子装置の一例である。図6の断面図に、本実施形態のプリント配線板および電子装置の構成を示す。同図において、説明の便宜上、同一の構成要素に付す符号は、一部省略している。図示のように、本実施形態のプリント配線板50は、配線層51の両面(同図において、上下の面)に、絶縁層52−1および52−2が形成されている。絶縁層52−1には、その表面から配線層51の表面に達する溝53−1が形成されている。同様に、絶縁層52−2には、その表面から配線層51の表面に達する溝53−2が、溝53−1と同位置に形成されている。前記両溝の形成パターンは、前記実施形態1と同様である。溝53−1の底面には、前記金属層として銅箔パターン54−1が配置されている。同様に、溝53−2の底面には、前記金属層として銅箔パターン54−2が配置されている。絶縁層52−1は、その表面に表面実装部品実装領域55A−1を有する(図6における二点鎖線で囲われた領域)。同様に、絶縁層52−2は、その表面に表面実装部品実装領域55A−2を有する(図6における二点鎖線で囲われた領域)。これら以外の構成は、前述のプリント配線板10と同様である。本実施形態のプリント配線板は、図6に示すように、層間配線(ビア)、再配線層等を含んでいる。なお、前記層間配線等は、図6に示す構造には限定されない。また、例えば、前述の実施形態1から4においても、同様である。
【0043】
本実施形態のプリント配線板は、例えば、以下のようにして製造可能である。すなわち、配線層51の両表面の同位置に、銅箔により、溝パターン(銅箔パターン54−1および54−2)を形成する。この状態で、配線層51の前記両溝パターンを形成した面上に、絶縁層52−1および52−2を形成する。銅箔パターン54−1上の絶縁層52−1を、レーザ加工により除去して、前述のような溝53−1を形成する。同様に、銅箔パターン54−2上の絶縁層52−2を、レーザ加工により除去して、前述のような溝53−2を形成する。これら以外は、前述のプリント配線板10と同様にして製造可能である。ただし、本実施形態のプリント配線板を製造する方法は、この例に限定されない。また、前記実施形態1と同様に、本実施形態のプリント配線板の表面実装部品実装領域55A−1に、BGA等を実装する。また、BGA等が実装された表面実装部品実装領域55A−1と同位置の55A−2に、BGA等を実装する。このようにして、電子装置500を製造可能である。
【0044】
前記CTE差による変形は、実装される表面実装部品毎に発生する。このため、各表面実装部品同士は、プリント配線板を介して相互に影響し合う。この結果、これらの表面実装部品と前記プリント配線板との接続信頼性は、更に低下することとなる。特に、プリント配線板の表裏同位置にBGA−PKGが実装される場合には、プリント配線板の変形が、プリント配線板の表裏から拘束される。このため、プリント配線板の反り等の変形としては小さいが、はんだ接合部への影響は大きく、接続信頼性が著しく低下する。この場合の電子部品との接続信頼性は、片面にBGA−PKGが実装される場合と比較して、例えば、その寿命が半分以下に低下することが知られている。
【0045】
本実施形態のプリント配線板では、前記実施形態1と同様に、前記溝により、例えば、前記CTE差による変形および表裏実装による潜在化した応力を緩和することができる。この結果、プリント配線板とその両面に実装されたBGA(表面実装部品)との接続信頼性を向上させることができる。また、前記実施形態1と同様に、前記銅箔パターンにより、前記配線層の割れ等の発生を抑制することができる。
【0046】
なお、本発明における、表裏同位置に表面実装部品を実装するプリント配線板は、これに限定されない。前記実施形態2に示すように、例えば、前記絶縁層のCTEが、前記配線層のCTEより小さくてもよい。このようにすれば、例えば、前記CTE差による変形および表裏実装による潜在化した応力を、より緩和することができる。また、前記実施形態3に示すように、前記溝の両側の表面実装部品実装領域に、前記ワイヤ等が電気的に接続されていてもよいし、前記実施形態4に示すように、前記エラストマー層が、前記電子装置の表面を覆うように形成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のとおり、本発明のプリント配線板は、単純な構成で、表面実装部品等との接続信頼性を向上させることができ、かつ基板の割れ等の発生を抑制可能である。このため、例えば、特にセラミックBGA(Ball Grid Array)等の表面実装部品と、有機基板のようにCTE差の大きい電子部品との組み合わせにおいても、その接続信頼性を確保することができる。また、例えば、プリント配線板全体の反り等の変形を低減できるため、プリント配線板と表面実装部品との接続信頼性を向上可能である。また、例えば、表面実装部品をプリント配線板表裏両面に実装する場合のように、複雑な応力を受けて拘束される場合においても、前述のとおり、CTE差による影響を限定することができるため、プリント配線板表裏の電子部品からの影響(応力)が緩和される。この結果、接続信頼性を向上させることができる。従って、本発明のプリント配線板を用いた本発明の電子装置は、例えば、その接続信頼性が高い。このような電子装置の用途は限定されず、広い分野に適用可能である。
【0048】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載しうるが、以下には限定されない。
【0049】
(付記1)
基板の少なくとも一方の面に、絶縁層が形成され、
前記絶縁層上面から前記基板の前記絶縁層形成面まで達する深さの凹部が形成され、
前記基板の前記絶縁層形成面における前記凹部底面に、金属層を有することを特徴とするプリント配線板。
【0050】
(付記2)
前記凹部が、溝であることを特徴とする付記1に記載のプリント配線板。
【0051】
(付記3)
前記金属層が、銅箔であることを特徴とする付記1または2に記載のプリント配線板。
【0052】
(付記4)
前記絶縁層と、前記基板との線膨張係数が異なることを特徴とする付記1から3のいずれかに記載のプリント配線板。
【0053】
(付記5)
前記絶縁層の少なくとも一部の線膨張係数が、前記基板の線膨張係数よりも低いことを特徴とする付記1から4のいずれかに記載のプリント配線板。
【0054】
(付記6)
前記絶縁層が、表面実装部品実装領域を有し、
前記表面実装部品実装領域の線膨張係数が、前記基板の線膨張係数よりも低いことを特徴とする付記5に記載のプリント配線板。
【0055】
(付記7)
さらに、表面実装部品実装領域間配線を有し、
前記絶縁層が、前記凹部の両側に前記表面実装部品実装領域を有し、
前記表面実装部品領域間配線が、前記両表面実装部品実装領域に電気的に接続されていることを特徴とする付記1から6のいずれかに記載のプリント配線板。
【0056】
(付記8)
前記絶縁層が、前記基板の両面に形成されていることを特徴とする付記1から7のいずれかに記載のプリント配線板。
【0057】
(付記9)
付記1から8のいずれかに記載のプリント配線板と、表面実装部品とを有し、
前記絶縁層が、表面実装部品実装領域を有し、
前記表面実装部品実装領域上に、前記表面実装部品が実装されていることを特徴とする電子装置。
【0058】
(付記10)
前記絶縁層が、前記凹部の両側に前記表面実装部品実装領域を有し、
前記表面実装部品が、前記凹部の両側にまたがって実装されていることを特徴とする付記9に記載の電子装置。
【0059】
(付記11)
前記表面実装部品が、バンプにより、前記表面実装部品実装領域上に実装されていることを特徴とする付記9または10に記載の電子装置。
【0060】
(付記12)
前記プリント配線板が、付記8に記載のプリント配線板であり、
前記表面実装部品が、前記プリント配線板の両面側に実装されていることを特徴とする付記9から11のいずれかに記載の電子装置。
【0061】
(付記13)
さらに、弾性体を含み、
前記表面実装部品、前記絶縁層上面および前記凹部が、前記弾性体により覆われていることを特徴とする付記9から12のいずれかに記載の電子装置。
【0062】
(付記14)
基板の少なくとも一方の面に、金属層により、凹部パターンを形成する凹部パターン形成工程と、
前記凹部パターンを形成した面上に、絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記凹部パターン上の前記絶縁層を除去して凹部を形成する凹部形成工程とを含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【符号の説明】
【0063】
10、20、30、50 プリント配線板
11、51 配線層(基板)
12、22、52−1、52−2 絶縁層
13、53−1、53−2 溝(凹部)
14、54−1、54−2 銅箔パターン(金属層)
15A、55A−1、55A−2 表面実装部品実装領域
31 ワイヤ(表面実装部品領域間配線)
41 エラストマー層(弾性体)
81 筐体
100、200、300、400、500 電子装置
101 プリント配線板
102、102a、102b BGA(表面実装部品)
103a、103b バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の少なくとも一方の面に、絶縁層が形成され、
前記絶縁層上面から前記基板の前記絶縁層形成面まで達する深さの凹部が形成され、
前記基板の前記絶縁層形成面における前記凹部底面に、金属層を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記凹部が、溝であることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記金属層が、銅箔であることを特徴とする請求項1または2記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記絶縁層と、前記基板との線膨張係数が異なることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記絶縁層の少なくとも一部の線膨張係数が、前記基板の線膨張係数よりも低いことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記絶縁層が、表面実装部品実装領域を有し、
前記表面実装部品実装領域の線膨張係数が、前記基板の線膨張係数よりも低いことを特徴とする請求項5記載のプリント配線板。
【請求項7】
さらに、表面実装部品領域間配線を有し、
前記絶縁層が、前記凹部の両側に前記表面実装部品実装領域を有し、
前記表面実装部品領域間配線が、前記両表面実装部品実装領域に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のプリント配線板。
【請求項8】
前記絶縁層が、前記基板の両面に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のプリント配線板。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のプリント配線板と、表面実装部品とを有し、
前記絶縁層が、表面実装部品実装領域を有し、
前記表面実装部品実装領域上に、前記表面実装部品が実装されていることを特徴とする電子装置。
【請求項10】
基板の少なくとも一方の面に、金属層により、凹部パターンを形成する凹部パターン形成工程と、
前記凹部パターンを形成した面上に、絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記凹部パターン上の前記絶縁層を除去して凹部を形成する凹部形成工程とを含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−228455(P2011−228455A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96382(P2010−96382)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】