説明

ペプチダーゼエフェクターとしての医薬用途のための新規化合物

【課題】エクトエンザイムであるジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)およびアラニルアミノペプチダーゼN(APN)を協調的に阻害することが可能な新規な化合物の提供。
【解決手段】式(I)の化合物または有機酸および/もしくは無機酸との酸付加塩。


[式中、残基R1、R2、R3およびR4は、同一または異なってもよく、−H、>C(=O)、−C(=O)O−などであり、Eは、−O−、−S−、−NH−などであり、Yは、−O−、−NH−などであり、Bは、アリール基やヘテロ環を有すアルキル置換基またはアルコキシ置換基であり、Cはアミド結合またはスルホンアミド結合を有す置換基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、新規な化合物に関する。さらに、本発明は、エクトエンザイムであるジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)およびアラニルアミノペプチダーゼN(APN)の活性部位との直接的な相互作用を介して、ならびに/またはこれらの酵素の新たに定義された機能的に関連する結合部位[特許文献1]を介して、これら酵素を協調的に阻害することが可能な上記の新規な化合物(「デュアルインヒビター」)に関する。新規化合物はまた、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)に類似の酵素作用(「DPIV類似酵素作用」)を所有するエクトペプチダーゼに対して作用を及ぼし、および/またはアラニルアミノペプチダーゼN(APN)に類似の酵素作用「(APN類似酵素作用」)を有するエクトペプチダーゼに対して作用を及ぼす。
【0002】
さらに、本発明は、DPIVとAPNとの新規なデュアルインヒビターを調製するプロセスに関する。
【0003】
本発明はまた、医療分野での使用のための上述の新規な化合物に関する。
さらに、本発明は、過度の免疫応答を示し、かつ炎症の発生を伴う疾患、神経疾患、脳損傷の原因となる疾患、腫瘍疾患、皮膚病、1型糖尿病およびSARSの予防ならびに治療のための使用のための上述の新規な化合物に関する。
【背景技術】
【0004】
ジペプチジルペプチダーゼIV酵素(DPIV、CD26、EC 3.4.14.5)は、広範に存在し、N末端から2番目の位置で、プロリンの後、さらに、程度は低いがアラニンの後、または制限付きでセリン、トレオニン、バリンおよびグリシンのようなさらなるアミノ酸の後で、ペプチドの加水分解を特異的に触媒するセリンプロテアーゼである。DPIV類似酵素作用を有する酵素の遺伝子ファミリーに属する酵素には、とりわけ、DPII、DP8、DP9およびFAP/セプラーゼがある[非特許文献1]。DPIVに類似の基質特異性が、アトラクチン(マハゴニータンパク質)にも認められた[非特許文献2]。上記の酵素は、DPIVインヒビターによっても阻害される。
【0005】
ジペプチジルペプチダーゼIVは、血液および他の体液で可溶な形態として、細胞上および組織中で膜に結合した形態としての2つの形態で存在する。膜結合形態は、全DPIVの99パーセント超を占める。可溶性形態は、膜性の酵素がタンパク分解により分断されることによる人為的産物と考えられるべきである。
【0006】
アミノペプチダーゼNについても同様のことが言える。
可溶性および膜結合のDPIVならびにAPNの分子メカニズムおよび機能は異なっている。これは、細胞膜とは反対に局在する中心孔を介する、膜結合DPIVでの基質の活性部位への好ましいアクセスのためである。
【0007】
驚くべきことに、DPIVの中心孔の分析により、この酵素の活性部位からおよそ2.17nmにある中心孔内の結合部位によって、膜DPIVが強く調節されることが示される。この部位への好適なリガンドは、基質の活性部位へのアクセスを阻止し、G1/S期における細胞周期停止およびサイトカイン産生などのDPIVの細胞作用を媒介する。したがって、中心孔結合部位を占有するが、活性部位を介してDPIVを直接阻害しないことは、DPIVの細胞機能を阻害するための必要条件である[特許文献1]。
【0008】
大腸菌由来アミノペプチダーゼNの結晶構造のモデルを考察したところ、APNについても同様の状況が認められた[非特許文献3]。
【0009】
同じく広範に存在するアラニルアミノペプチダーゼの群に属するものに、大部分がII型の膜タンパク質として現れるアミノペプチダーゼN(APN、CD13、EC 3.4.11.2)と細胞質可溶性アラニルアミノペプチダーゼ(EC 3.4.11.14、ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ、アミノペプチダーゼPS、エンケファリン分解アミノペプチダーゼ)とがある。アラニルアミノペプチダーゼ(上述の2つのアミノペプチダーゼを含む)は、金属依存的に、たとえば亜鉛依存的に作用し、オリゴペプチドのN末端アミノ酸の後で、APNの場合にはN末端のアラニンを優先して、ペプチド結合の加水分解を触媒する[非特許文献4]。アミノペプチダーゼNのインヒビターはすべて細胞質アラニルアミノペプチダーゼも阻害するが、一方で、細胞質アミノペプチダーゼの特異的インヒビターが存在する[非特許文献5]。
【0010】
DPIVと同様に、APN分子への2つのアクセス経路が同定された。活性部位に加えて、中心孔内の基質およびインヒビターの結合部位がドッキングアプローチによって認識され、該追加の部位は、膜に隣接するAPNのN末端部分の反対に位置する[非特許文献6 ;非特許文献3;特許文献1を参照]。アクセス部位から1.51nmにあるこの中心孔結合部位にAPNインヒビターを結合させると、DPIVの場合と同様に、基質のAPNの活性部位へのアクセスが、立体的に阻止される。したがって、このペプチダーゼのこれらの中心孔結合部位を介して、APNの機能特性も調節される。
【0011】
APNおよびDPIVの2つのアクセス経路の相対的位置を図1に概略的に示す。
DPIVおよびAPNのいずれの群の酵素についても、異なる細胞系において重要な生物学的機能が証明された。このことは、とりわけ免疫系[非特許文献13;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;特許文献2;特許文献3;特許文献4];神経系[特許文献5および特許文献6];線維芽細胞[特許文献7];ケラチノサイト[特許文献3];皮脂腺細胞/脂腺細胞[特許文献8];腫瘍および、たとえばコロナウイルスによって引き起こされる感染などのウイルスによる感染[非特許文献10]について言える。
【0012】
内分泌ホルモンであるGIPおよびGLPを特異的に不活性化する血液中の可溶性DPIVの能力は、グルコース代謝異常を処置するための新たな治療概念の開発につながった[非特許文献11]。
【0013】
いずれの群の酵素についても、異なるインヒビターが知られている[非特許文献11および非特許文献12の中に概要が記載されている]。これらのほとんどが、細胞性の膜結合DPIVおよびAPNでなく、可溶性ペプチダーゼに対する作用に基づいている。
【0014】
アラニルアミノペプチダーゼおよびジペプチジルペプチダーゼIVの単独阻害ならびに類似の基質特異性を有する酵素の阻害、特に、両方の酵素群の酵素の組合せ阻害によって、免疫細胞ならびに、たとえば皮膚細胞および腫瘍細胞などの他の細胞のDNA合成が強く阻害されることになる。よって、細胞の増殖が強く阻害され、また、サイトカイン産生が変化し、特に免疫抑制性サイトカインであるTGF−β1が誘導され[特許文献2;特許文献3]、さらに、たとえばインターロイキン2(IL−2)などのTH1型、たとえばインターロイキン4(IL−4)などのTH2型、たとえばIL−17などのTH17型の炎症性サイトカインの発生および放出が阻害される[特許文献3および特許文献9;非特許文献13]。
【0015】
さらに、DPIVは、免疫抑制特性および神経保護特性または神経発生特性をそれぞれ有する血管作用性小腸ペプチド(VIP)、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)およびニューロペプチドY(NPY)を不活性化することが可能である。VIPはまた、インビトロおよびインビボで制御性T細胞(Treg)を活性化することが示された(非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17)。したがって、これらのサイトカインの不活性化を抑制すると、免疫抑制特性および神経保護特性の損失からそれらを保護し、かつ、多発性硬化症、パーキンソン病およびアルツハイマー病などの神経変性疾患の治療の必要条件である抗炎症性および神経保護の状態が誘発される。
【0016】
アラニルアミノペプチダーゼのインヒビターは、制御性T細胞でのTGF−β1の強い誘発をもたらし[特許文献4]、また、制御性T細胞の免疫抑制性表現型の活性化をもたらす[特許文献10]。神経系では、両方の酵素系の阻害により、急性および慢性の脳損傷のプロセスが低減または遅滞されることが証明された[特許文献5および特許文献6]。さらに、繊維芽細胞[特許文献7]、ケラチノサイト[特許文献3]および脂腺細胞[特許文献8]については、アラニルアミノペプチダーゼNとDPIVとの組合せ阻害によって、細胞生育が阻害され、サイトカイン産生が変化することが証明された。
【0017】
このことから、アラニルアミノペプチダーゼおよびジペプチジルペプチダーゼIVならびに類似の酵素作用を有する酵素が、異なる臓器および細胞系で基本的な中心的生物学的機能を担っているという驚くべき事実が得られる。よって、両方の群の酵素を、特に中心孔結合部位を介して組合せ阻害することが、さまざまな、多くの場合、慢性炎症性疾患および腫瘍疾患を治療するための新しい有効な治療原理となる。
【0018】
一方で出願人は、容認されている動物モデルにおいて、特に、両方の群の上記のペプチダーゼのインヒビターを組合せ投与すると、異なる細胞系の生育が阻害され、かつ、慢性炎症のプロセスおよび脳損傷での過度の免疫応答が、インビボでも抑制されることを示すことができた[特許文献2]。単一の公知のインヒビターを単独投与すると、効果が低減する。
【0019】
以前に報告された結果は、主に、文献に記載され、また一部は市販されているアラニルアミノペプチダーゼNおよびジペプチジルペプチダーゼIVの公知のインヒビターを単独で用いて、しかし特に、両方の酵素群のインヒビターの組合せによって得られた。
【0020】
特許文献11で、プロドラッグとして使用され、生理学的および病理学的条件下でアラニルアミノペプチダーゼNおよび類似の基質特異性を有する酵素を阻害し、さらにジペプチジルペプチダーゼIVおよび類似の基質特異性を有する酵素も二重で阻害する、有効な薬剤または有効な薬剤の混合物として作用し得る、新規な、大部分が非ペプチド性の低分子量物質が報告された。プロドラッグの変換は、好ましくは細胞性のチオール類(−SH−基を持つ化合物)による、−S−S−または−Se−Se−架橋の還元によって行なわれる。
【0021】
特許文献12で、医薬用途のための別の新規な多機能性ペプチダーゼインヒビター群が報告された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許出願第10156805.3号(2010年3月17日出願)
【特許文献2】国際特許公開第WO01/89,569号
【特許文献3】国際特許公開第WO02/053,170号
【特許文献4】国際特許出願第PCT/EP03/07,199号明細書
【特許文献5】国際特許公開第WO02/053,169号
【特許文献6】独国特許出願第10337074.9号明細書
【特許文献7】独国特許出願第10330842.3号明細書
【特許文献8】国際特許出願第PCT/EP03/02,356号
【特許文献9】独国特許出願第10102392.8号
【特許文献10】独国特許出願第102006703942号
【特許文献11】EP−A 1948627(WO−A 2007/057,128)
【特許文献12】欧州特許出願第09169269.9号(2009年9月2日出願)
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】T. Chen et al.:Adv. Exp. Med. Biol. 524, 79, 2003
【非特許文献2】J. S. Duke-Cohan et al.:J. Immunol. 156, 1714, 1996
【非特許文献3】K. Ito et al., 2006, J. Biol. Chem. 281, 33664-33676
【非特許文献4】A. J. Barrett et al.: Handbook of Proteolytic Enzymes, Academic Press, 1998
【非特許文献5】M. Komodo et al.:Bioorg. and Med. Chem. 9, 121, 2001
【非特許文献6】H. B. Rasmussen et al., 2003, Nat. Struct. Biol. 10, 3-5
【非特許文献7】U. Lendeckel et al.:Intern. J. Mol. Med. 4, 17, 1999
【非特許文献8】T. Kahne et al.:Intern. J. Mol. Med. 4, 3, 1999
【非特許文献9】I. De Meester et al.:Advanc. Exp. Med. Biol. 524, 3, 2002
【非特許文献10】D. P. Kontoyiannis et al.:Lancet 361, 1558, 2003
【非特許文献11】D. M. Evans:Drugs 5, 577, 2002
【非特許文献12】M.-C.Fournie-Zaluski and B. P. Roques: in J. Langner and S. Ansorge "Ectopeptidases", Kluwer Academic/Plenum Publishers, p.51, 2002
【非特許文献13】S. Ansorge et al., 2009, Clin. Chem. Lab. Med. 47, 253-261
【非特許文献14】P. Anderson and E. Gonzalez-Rey, 2010, Mol. Cell. Biol. 30, 2537-2551
【非特許文献15】E. Gonzalez-Rey et al., 2007, Ann. Rheum. Dis. 66, 70-76
【非特許文献16】J. Holler et al., 2008, J. Immunol. 181, 6909-6912
【非特許文献17】J.-R. Zhou et al., 2008, Neurosci. Bull. 24, 155-159
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、新規な化合物を提供することにあった。
本発明の別の目的は、上記の2つのペプチダーゼ群、すなわち、(ia)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および(ib)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)と類似の酵素作用(「DPIV類似酵素作用」)を有するペプチダーゼならびに/または(iia)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)および(iib)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)と類似の酵素作用(「APN類似酵素作用」)を有するペプチダーゼ、に対するデュアルインヒビターとして好適である新規な化合物を提供することにあった。
【0025】
本発明のさらなる目的は、医療分野での使用に好適である新規な化合物を提供することにあった。
【0026】
さらに、本発明の目的は、過度の免疫応答を示し、炎症の発生を伴う疾患、神経疾患、脳損傷を引き起こす疾患、腫瘍疾患、皮膚病、1型糖尿病およびSARSの予防ならびに治療のための使用に好適である新規な化合物を提供することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0027】
驚くべきことに、エクトペプチダーゼを阻害する研究において出願人により見出された新規な物質は、ジペプチジルペプチダーゼIVおよびアラニルアミノペプチダーゼNを特異的に阻害することが可能なため、1つの物質で両方のペプチダーゼ群の協調(「デュアル」)阻害の能力を組み合わせることができることが見出された。当然ながら、本発明の新規な物質は、該ペプチダーゼ、すなわち、(ia)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および(ib)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)と類似の酵素作用(「DPIV類似酵素作用」)を有するペプチダーゼまたは(iia)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)および(iib)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)と類似の酵素作用(「APN類似酵素作用」)を有するペプチダーゼのうち1つだけを阻害してもよい。
【0028】
さらに、本発明によって、驚くべきことに、上記の新規な化合物は、これらのペプチダーゼの活性部位と相互作用するのみならず、これらのペプチダーゼの中心孔結合部位とも同様に、または代替的に、相互作用することが可能であることが見出された。DPIVについて示したように、細胞の膜の反対に位置する中心孔アクセスの前房にあるこの結合部位は、酵素の活性部位への基質アクセスを援助する。この部位を占有すると、活性部位への基質のアクセスが立体的に阻止され、細胞酵素の機能が阻害される。この結合部位は、細胞性のDPIVの自動立体調節を媒介し、生育調節およびサイトカイン産生のような細胞機能を調節するために最も決定的な標的部位である[特許文献1]。
【0029】
一方で、アラニルアミノペプチダーゼNについても同様のメカニズムが発見された。該当データは、大腸菌由来APNの結晶構造に基づく[非特許文献3]。
【0030】
IC50値などの阻害定数により定義されるAPNおよびDPIVの「古典的な」インヒビターとは対照的に[詳細には、上述の特許出願を参照]、本明細書に記載される細胞性のペプチダーゼの中心孔結合部位と相互作用するインヒビター/リガンドは、主としてドッキングアプローチによって特徴付けられることを言及しておかなければならない。これらの特徴のためのルーチンな酵素アッセイは、未だ利用可能ではない。したがって、これらの特性は、リガンドとDPIVまたはAPNそれぞれの中心孔結合部位との間の相互作用の自由エネルギー(−kcal/モル)によって主に定義される。
【0031】
DPIVおよびAPNの立体阻害を図示する目的で、酵素阻害の効力も活性部位との相互作用も有さないインヒビター物質について、両方の酵素における中心孔経路の阻止を図2に例示的に示す。両方の例において、それぞれの酵素の強力なインヒビター、すなわち、DPIVの場合はシタグリプチン、APNの場合はベスタチンによって、中心孔結合部位が占有されている。
【0032】
さらに、驚くべきことに、該新規な化学物質は、過度の免疫応答を伴う疾患(自己免疫疾患、アレルギーおよび移植片拒絶反応、敗血症)、動脈硬化症を含む他の慢性炎症性疾患、神経疾患、脳損傷(とりわけ多発性硬化症、アルツハイマー病およびパーキンソン病)、皮膚病(とりわけざ瘡および乾癬)、腫瘍疾患、特定のウイルス感染(とりわけSARS)および1型糖尿病の予防ならびに治療のために用いられてよいが、それらの予防ならびに治療のための他の物質の出発原料として用いてもよいことが、本発明により見出された。
【0033】
これらの新たな化学成分であるペプチダーゼインヒビター/リガンドの、さまざまな炎症性疾患および腫瘍疾患の予防ならびに/または治療における使用の論拠を以下に示す。
【0034】
炎症性疾患
炎症性疾患はすべて、物理的、生物学的、または化学的な攻撃に対する免疫系の活性化を特徴とする。免疫応答の第1工程は、生来のままで、抗原に対して非特異的である。この後に、抗原特異的で適応性のある免疫応答が起こる。慢性炎症においても、免疫応答が、非特異的相互作用を排除しない外界由来のまたは自身の体由来のいずれかの抗原に特異的であることは、よく受入れられている。顆粒球およびマクロファ−ジのような非特異的細胞の活性化による非特異的応答に加えて、抗原特異的TおよびBリンパ球は、特定の免疫応答の主な細胞性の手段である。決定的なプロセスは、十分な免疫応答のための十分に高い細胞ポテンシャルを達成するための、抗原特異的TおよびBリンパ球の活性化およびクローン性繁殖/増殖である。後者の後に、炎症性サイトカイン産生が起き、最後に抗炎症性サイトカイン産生が起きて、このプロセスが終結する。
【0035】
慢性炎症性疾患の場合には、終結が適切に働かない。これが、免疫細胞の永久増殖および炎症性サイトカインの持続的産生につながり、その後、これらの病原性免疫細胞による関連細胞および関連組織の破壊が起きる。
【0036】
免疫系の活性化は、いわゆる「活性化マーカー」として特徴付けられるAPN/CD13およびDPIV/CD26の発現のアップレギュレーションを伴うことが周知であることは特筆すべきである。
【0037】
最も一般的な慢性炎症性疾患として以下が挙げられる。
・多発性硬化症、アテローム性動脈硬化、乾癬、パーキンソン病および慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患群(百近いこれら疾患の一部の目立った例を挙げる);
・気管支喘息および枯草熱などのアレルギー群;
・同種移植の拒絶反応;および
・アルツハイマー病および糖尿病などの他の(未だ完全には解明されていない)炎症性疾患。
【0038】
共通のメカニズムがすべての炎症性疾患の原因となるため、これらの作用に対抗する、または処置するための最も強力な方法の一つは、活性化リンパ球の増殖を抑制し、炎症性サイトカイン(例えばIL−2、IL−17、IL−4)の産生を阻害するとともに、抗炎症性サイトカイン(例えばTGF−β1、Il−10、NPY、Il−16)の産生を誘発することであることが、現在よく受入れられている。リンパ球生育の抑制を介して作用する医薬において広く受入れられている免疫抑制性物質は、シクロスポリンA、FK506およびラパマイシンである。3つの化合物すべてが、イムノフィリンとして知られる細胞内タンパク質のファミリーの一種に結合し、リンパ球のクローン性繁殖に重要であるシグナル経路に干渉する複合体を形成することによって、それらの薬学的作用を及ぼす[Immunobiology, 2001, C. Janaway et al, “Immunobiology”, Garland Publishing, Churchill Livingstone, p565-566]。
【0039】
DPIVおよびAPNのインヒビター/リガンドもこれらの要求を満たし、炎症性障害の治療に有望な新規なクラスの物質である[非特許文献13;非特許文献8;非特許文献7;D. M. T. Yu et al., 2010, FEBS J., 2010, 1-19]。すべてのDPIVおよびAPNインヒビターは、それらの分子の化学構造が互いに広く多様かつ異なっているとしても、これらのペプチダーゼの活性部位および/または中心孔結合部位と十分な相互作用を示せば、DNA合成を抑制し、そのためのこれらの要件を満たすことが可能であるとの証拠が提示された[非特許文献13;特許文献1]。
【0040】
腫瘍疾患
腫瘍は、制御不能な細胞生育およびDNA合成ならびに、過剰に活性化された血管新生、すなわち、腫瘍細胞の生育のための栄養を供給するのに必要な小脈管の発生を特徴とする。
【0041】
ほとんどの腫瘍細胞は、DPIVまたは/およびAPNをその表面で発現する。DPIVおよびAPNのインヒビター/リガンドが、腫瘍細胞のDNA合成を抑制することができることは特筆すべきである[D. M. T. Yu et al., 2010, FEBS J. 2010, 1-19; N. Petrovic et al., 2004, in: N. Hooper and U. Lendeckel, "Aminopeptidases in biology and diseases", Kluwer Academic/Plenum Publishers, New York, p.179-200]。特に、APNのインヒビターは、血管形成の強いアンタゴニストであることが示された[R. Pasqualini et al., 2000, Cancer Res. 60, 722-727;R. Rangel et al., 2007, Proc. Nat. Acad. Sci. 104, 4588-4593;N. Petrovic et al., 2004, in: N. Hooper and U. Lendeckel, "Aminopeptidases in biology and diseases", Kluwer Academic/Plenum Publishers, New York, p.179-200]。
【0042】
したがって、DPIVおよびAPNのインヒビター/リガンドは、それぞれのインヒビターまたはリガンドとこれらのペプチダーゼの活性部位および/または中心孔結合部位それぞれとの相互作用を介して、腫瘍細胞のDNA合成、血管形成および転移を抑制する点において、腫瘍と戦う主な要件を満たしている。驚くべきことに、この能力は、インヒビター/リガンド分子の特定の分子構造から独立していることが見出された。
【0043】
本発明は、一般式(I)の化合物に関する。
【0044】
【化1】

【0045】
上記一般式(I)中の残基B、E、CおよびYの意味を以下に詳細に特定および説明する。
【0046】
特別に明示するか構造式から明らかでない限り、関連する実施形態のすべての可能な立体異性体が許容される。
【0047】
一般式(I)の化合物の好ましい実施形態は、請求項2(表1)から得られる。
上記一般式(I)の化合物は、単一の化合物または化合物群について、以下に例示的に詳細に説明される有機化学の一般的に公知の合成方法によって合成することができる。この合成方法は、有機合成の分野の当業者には周知である。これらの方法は特に、目標化合物を高収率、高純度で得られるとして一般的に公知である。また、これらの公知の合成方法に従って得られる化合物の純度は、十分であるだけでなく、この化合物の医学的な適用における使用、特に、この化合物を1つ、またはこの化合物を2つもしくはそれ以上投与する必要性のある患者に投与する際における使用に、具体的に好適であることも公知である。
【0048】
本発明はまた、上記一般式(I)の、以下に詳細に説明される医薬に用いられるための化合物のうち少なくとも1つに関する。
【0049】
本発明はまた、医薬用途のための、上述の一般式(I)の、以下に詳細に記載される化合物のうち少なくとも1つに関し、上記医薬用途は、動脈硬化症、神経疾患、脳損傷、皮膚病、腫瘍疾患、ウイルスによる疾患、および1型糖尿病を含む過剰な免疫応答および炎症発生を伴う疾患の予防ならびに治療のためのものである。
【0050】
本発明はまた、請求項1および2のうち1つに記載されかつ下記の詳細な説明に記載の一般式(I)の化合物のうち少なくとも1つを含有し、随意に1つ以上の医薬または化粧料として有効な化合物と組合され、さらに随意に1つ以上の医薬または化粧料として許容されるキャリア、補助化合物および/またはアジュバントと組合される、医薬または化粧料製剤に関する。
【0051】
本発明はまた、請求項1および2のうち1つに記載されかつ以下に詳細に説明される一般式(I)の化合物のうち少なくとも1つを含有する、医薬用途のための医薬製剤に関する。
【0052】
さらに、本発明は、請求項1および2のうち1つに記載されかつ以下に詳細に説明される一般式(I)の化合物のうち少なくとも1つを含有する医薬用途のための医薬製剤であって、上記医薬用途は、動脈硬化症、神経疾患、脳損傷、皮膚病、腫瘍疾患、ウイルスによる疾患、および1型糖尿病を含む過剰な免疫応答および炎症発生を伴う疾患の予防ならびに治療のためのものである、医薬製剤に関する。
【0053】
最後に、本発明はまた、上記一般式(I)の少なくとも1つの化合物の化粧用途のための使用に関する。
【0054】
以下に本発明を詳細に説明する。この説明においては、本発明の好ましい実施形態に言及し、好ましい実施形態は、例示的に、本発明をそのより十分な理解のために説明し、かつ、現在知られている発明の最良の形態をも説明する。しかし、本発明は、その十分な理解のために提供される例に制限されない。
【0055】
本発明による新たな化合物は、一般式(1)を有する。
【0056】
【化2】

【0057】
[式中、残基R1、R2、R3およびR4は、同一または異なってもよく、−H;−ハロゲン(すなわち、−F、−Cl、−Br、−I);1〜25個の炭素原子を有するアルキル{該アルキルは、直鎖もしくは分枝鎖、飽和または1つ、2つもしくはそれ以上不飽和(−C=C−二重結合および/もしくは−C≡C−三重結合)であるか、または非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または割り込まれていないか、もしくは残基−O−、−NH−、−NR5−、−S−、>C(=O)、−C(=O)O−、−O−C(=O)−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR5−、−NHC(=O)−、−NR5(C=O)−、>C(=S)、−C(=S)O−、−O−C(=S)−、−C(=S)NH−、−C(=S)NR5−、−NHC(=S)−、−NR5(C=S)−、−PH−、−PR5−、>P(=O)H、>P(=O)H、>P(=O)R5、>P(=O)(OH)、>P(=O)OR5のいずれかで割り込まれていてもよい。};3〜9環構成原子を有するシクロアルキル{該シクロアルキルは、飽和または1つ、2つもしくはそれ以上不飽和(−C=C−二重結合および/もしくは−C≡C−三重結合)であるか、または非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または−O−、非置換もしくはアルキル置換された−N<、−S−および−P<からなる群から選択されてもよい1つもしくはいくつかのヘテロ原子を環構造内に含んでいてもよい。};3〜9環構成原子を有するアリール{該アリールは、非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または−O−、非置換もしくはアルキル置換された−N<、−S−および−P<からなる群から選択されてもよい1つもしくはいくつかのヘテロ原子を環構造内に含んでもよい。};{該シクロアルキルおよび/もしくは該アリール基は、非縮合環系であるか、またはシクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環もしくはヘテロアリール環から選択される1つ、2つ、もしくはそれ以上の縮合環を含む環系を構成してもよい。};−OH、−OR5、−NH、−NHR5、−NR5R6、−C(=O)H、−C(=O)R5、−C(=O)OH、−C(=O)OR5、−C(=O)NH、−C(=O)NHR5、−C(=O)NR5R6、−NH−C(=O)H、−NR5(C=O)H、−NH−C(=O)R5、−NR5(C=O)R5、−C(=S)OH、−C(=S)OR5、−C(=S)NH、−C(=S)NHR5、−C(=S)NR5R6、−O−C(=O)H、−OC(=O)R5、−NH(C=O)R5、−NR5(C=O)R6、−C(=O)(NHOH)、−C(C=O)(NR5OH)、−C(C=O)(NR5OR6)、−C(C=O)NHOR5、−PH、−PHR5、−PR5R6、−P(=O)H、−P(=O)R5H、−P(=O)R5R6、−P(=O)(OH)、−P(=O)R5OH、−P(=O)OR5OR6からなる群から独立して選択される;
式中、R5およびR6は、同一または異なってもよく、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい;
Eは、−O−、−S−、−NH−または−NR7−から選択される基を表してもよい(式中、R7は、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい。);
Yは、−O−、−NH−、−NR8−、−S−、−CH−、−CHR8−および−CR8R9−から選択される群を表してもよい(式中、R8およびR9は、同一または異なってもよく、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい。);
Bは、一般式(II)を有する基を表してもよい:
【0058】
【化3】

【0059】
式中、Cy1は、3〜9環構成原子を有する(縮合系の場合、各部分環ごとに3〜9環構成原子を有する)縮合もしくは非縮合の、芳香族もしくは非芳香族の単素環系または複素環系{該単素環系または複素環系は、非芳香族基である場合、飽和または1つ、2つもしくはそれ以上不飽和(−C=C−二重結合および/もしくは−C≡C−三重結合)であってもよい。}を表してもよく、またCy1は、非置換であるか、または残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または−O−、非置換もしくはアルキル置換された−N<、−S−および−P<からなる群から選択されてもよい1つもしくはいくつかのヘテロ原子を環構造内に含んでもよく、またはCy1は、3〜9環構成原子を有する(縮合系の場合、各部分環ごとに3〜9環構成原子を有する)アリール{該アリールは、非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または−O−、非置換もしくはアルキル置換された−N<、−S−および−P<からなる群から選択されてもよい1つもしくはいくつかのヘテロ原子を環構造内に含んでもよい。該シクロアルキルおよび/もしくは該アリール基は、非縮合環系であるか、またはシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリール環から選択される1つ、2つもしくはそれ以上の縮合環を含む環系を構成してもよい}で置換されていてもよい;
Xは、単結合、−O−、−S−、−NH−、−NR10−、−CH−、−CHR10−、−CR10R11−、>C(=O)、>C(=S)、>C(=NH)、>C(=NR10)、−C(=O)O−、−C(=S)O−、−C(=NH)NH−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR10−、−O(C=O)−、−NH(C=O)−、−NR10(C=O)−、−O(C=S)−、−NH(C=S)−、または−NR10(C=S)−を表してもよい(式中、R10およびR11は、同一または異なってもよく、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい。);
kおよびlは、同一または異なってもよく、ゼロ(0)を表してもよくまたは1〜5の範囲の整数であってもよい;
Cは、一般式(III)を有する基を表してもよい:
【0060】
【化4】

【0061】
式中、mは、同一または異なってもよく、ゼロ(0)を表してもよく、または1〜5の範囲の整数であってもよい;
配列A−L1−J−L2は、全体として単結合であってもよく、または
Aは、存在しないか、上記にR1について定義される残基からなる群から選択されてもよく(ただし、炭素鎖は、1〜10個の炭素原子を有してもよい。);および
Jは、存在しないか、または1〜10個の炭素原子を有するアルキレン{該アルキレンは、直鎖または分枝鎖、飽和または1つ、2つもしくはそれ以上不飽和(−C=C−二重結合および/もしくは−C≡C−三重結合)であるか、または非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または割り込まれていないか、もしくは残基−O−、−NH−、−NR5−、−S−、>C(=O)、−C(=O)O−、−O−C(=O)−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR5−、−NHC(=O)−、−NR5(C=O)−、>C(=S)、−C(=S)O−、−O−C(=S)−、−C(=S)NH−、−C(=S)NR5−、−NHC(=S)−、−NR5(C=O)−、−PH−、−PR5−、>P(=O)H、>P(=O)H、>P(=O)R5、>P(=O)(OH)、>P(=O)OR5のいずれかで割り込まれていてもよい。};3〜9環構成原子を有するシクロアルキレン{該シクロアルキレンは、飽和または1つ、2つもしくはそれ以上不飽和(−C=C−二重結合および/もしくは−C≡C−三重結合)であるか、または非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または−O−、非置換もしくはアルキル置換された−N<、−S−および−P<からなる群から選択されてもよい1つもしくはいくつかのヘテロ原子を環構造内に含んでいてもよい。};3〜9環構成原子を有するアリーレン{該アリーレンは、非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または−O−、非置換もしくはアルキル置換された−N<、−S−および−P<からなる群から選択されてもよい1つもしくはいくつかのヘテロ原子を環構造内に含んでいてもよい。};{該シクロアルキレン基および/もしくは該アリーレン基は、非縮合環系であるか、またはシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリール環から選択される1つ、2つ、もしくはそれ以上の縮合環を含む環系を構成してもよい。};−NH−、−NR5−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)R5−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR5−、−NH−C(=O)−、−NR5−C(=O)−、−C(=S)O−、−C(=S)R5−、−C(=S)NH−、−C(=S)NHR5−、−C(=S)NR5−、−NH−C(=O)−、−NR5−C(=O)−、−C(=O)(NHO)−、−C(=O)(NR5O)−、−PH−、−PR5−、−P(=O)H−、−P(=O)R5−、−P(=O)(OH)−、−P(=O)OR5−(式中、R5およびR6は、同一または異なってもよく、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい。)からなる群から選択されてもよく;
L1およびL2は、同一または異なってもよく、単結合を表すか、または−CH−、−O−、>C=O、−NH−、−NR12−、−S−、>C=S、−SO−、−C(=O)−O−、−C(=S)−O−、−C(=O)−S−、−C(=S)−S−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR14−、−C(=S)NH−、−C(=S)NR14−、−C(=NH)−、−C(=NH)−NH−、−C(=NH)−NR14−、−C(=NR1)−NR14−(式中、R12、R13およびR14は、同一または異なってもよく、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい。)からなる群から各々独立して選択される基を表してもよい;
Dは、構造(IVa)および(IVb)のいずれかを表す:
【0062】
【化5】

【0063】
式中、Cy2は、単素環または複素環の非芳香族または芳香族の非縮合または1もしくは2環縮合して環化した構造要素であり、構造の残りに直接結合する{該構造要素は、複素芳香族残基の場合、環構成原子として基−N=、−NH−、−NR1−、−S−、−O−、−S(=O)−、−S(=O)−、−P=、−PH−、−PR15−、−P(=O)−、−OP(=O)−および−P(=O)O−を含有してもよく、そのCy2の炭素またはヘテロ原子原子団は、それぞれ構造ユニットであるC(IVa)および=A2(IVb)への接続単位であってもよい。また、非芳香族基Cy2の場合、Cy2を構成する環構造は、飽和であってもよく、部分的に不飽和であってもよく、非置換であるか、または脂環式残基および芳香族残基の置換基として上記に定義された置換基のいずれかにより、任意の化学的に可能な位置で1つ、2つもしくはそれ以上置換されていてもよく、またCy2は、3〜9環構成原子(縮合系の場合、各部分環ごとに3〜9環構成原子)を含んでもよい。};
A2は、=C、=CH、=CR16、−O−、−S−、−NH−および−NR16−から選択される基を表してもよい(式中、R15およびR16は、同一または異なってもよく、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい。)。]
上記一般式(I)の新規な化合物は、上記一般式(I)により表される中性分子として、存在することができ、合成することができ、またはいかなる分野において、特に医療分野において使用することができる。代替的には、一般式(I)の新規な化合物は、生理学上もしくは医薬上許容される無機もしくは有機酸との酸付加塩として、存在することができ、合成することができ、またはいかなる分野において、特に医療分野において使用することができる。この本発明の一般式(I)の化合物の酸付加塩のための酸は、具体的には制限されないが、塩酸、トリフルオロ酢酸、酒石酸、コハク酸、ギ酸および/またはクエン酸からなる群から好適に選択され、それにより、塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩および/またはクエン酸塩から選択される一般式(I)の化合物の酸付加塩が得られる。
【0064】
驚くべきことに、上記式(I)の化合物そのものが、以下に詳細に述べる酵素に対して阻害作用を有することが見出された。さらに、上記の化合物は、定義された条件下で他の化合物へと反応するため、このような他の化合物の前駆体でもある。これらの他の化合物はさらに、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)酵素および類似酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビター/リガンドでもあり、また、アラニルアミノペプチダーゼN(APN)酵素および類似酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビター/リガンドでもある。
【0065】
本明細書および請求項、たとえば請求項15または17で用いられる「含む/含有する(comprise)」という用語は、(i)本発明の上記の組成物が一般式(I)の少なくとも1つの化合物を含んでもよく、もしくは(ii)本発明の上記の組成物が一般式(I)の化合物の2つもしくはそれ以上を含んでもよく、または(iii)さらなる成分(以下により具体的に定義する)が組成物に含まれてもよいという意味を有する。
【0066】
しかし、本明細書および請求項で用いられる「含む/含有する」という用語は、本発明の組成物が、随意に本発明の目的を達成するために当業者がこの組成物に包含させてもよい任意の必要な成分とともに、主として(i)一般式(I)の少なくとも1つの化合物からなるか、または主として(ii)一般式(I)の化合物の2つもしくはそれ以上からなる場合を包含してもよい。または、「含む/含有する」という用語は、本発明の組成物が、随意に本発明の目的を達成するために当業者がこのような組成物に包含させてもよい任意の必要な成分とともに、排他的に(i)一般式(I)の少なくとも1つの化合物からなるか、または排他的に(ii)一般式(I)の2つ以上の化合物からなる場合をも包含してもよい。
【0067】
言い換えれば、本明細書および請求項において、「含む/含有する(comprise)」または「含む/含有する(comprises)」または「含んでいる/含有している(comprising)」という用語は、要素の網羅的な、または代替的には、非網羅的な列挙を記載する意味を有してもよい。
【0068】
「ジペプチジルペプチダーゼIV」(DPIV,CD26,EC 3.4.14.5)という用語を使用して、以下の説明および請求項では、ペプチドのN末端から2番目の位置で、プロリンの後、また、程度は低いがアラニンの後、さらに、制限付きでセリン、トレオニン、バリンおよびグリシンのような他のアミノ酸それぞれの後で、ペプチド結合の加水分解を特異的に触媒するセリンプロテアーゼが認識される。
【0069】
「ジペプチジルペプチダーゼIVと類似の酵素作用を有するペプチダーゼ」という用語を使用して、本説明および請求項では、N末端から2番目の位置でプロリンまたはアラニン後でのペプチドの加水分解を特異的に触媒するペプチダーゼが認識される。ジペプチジルペプチダーゼIVと類似の酵素作用を有するペプチダーゼの例としては、本発明をこれらに制限することなく、DPII、DP8、DP9、FAP/セプラーゼ[T. Chenら,上掲]およびアトラクチン(マハゴニータンパク質)[J. S. Duke-Cohanら,上掲]が挙げられる。
【0070】
「アラニルアミノペプチダーゼN」(APN,CD13,EC 3.4.11.2)という用語を使用して、本説明および請求項では、金属(亜鉛)依存的に働き、ペプチドのN末端アミノ酸、好ましくはN末端のアラニンの後でペプチド結合の加水分解を特異的に触媒するプロテアーゼが認識される。
【0071】
「アラニルアミノペプチダーゼNと類似の酵素作用を有するペプチダーゼ」という用語を使用して、本説明および請求項では、APNのように、金属依存的に働き、ペプチドのN末端アミノ酸、好ましくはN末端のアラニンの後でペプチド結合の加水分解を特異的に触媒するペプチダーゼが認識される。アラニルアミノペプチダーゼNと類似の酵素作用を有するペプチダーゼの例としては、本発明をこれらに制限することなく、細胞質可溶性アラニルアミノペプチダーゼ(EC 3.4.11.14,ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ,アミノペプチダーゼPS,エンケファリン分解アミノペプチダーゼ)[A. J. Barretら,上掲]が挙げられる。
【0072】
「インヒビター」および「リガンド」という用語を使用して、本説明および請求項では、合成上の修飾を施した天然由来、合成由来または天然由来のこのような化合物であって、酵素または酵素群への調節作用、特に阻害作用を有するものとして認識される。このような調節作用、特に阻害作用は、主にまたは部分的に、酵素または酵素群の中心孔結合部位における作用であってもよい。
【0073】
このことは、前駆体自体が、定義される薬学的作用(例えば、阻害作用)を有する薬に転換される前に、薬学的作用を発揮する(たとえば、上述の酵素2つのうち1つまたは両方を阻害する)ことができることを除外するものではない。
【0074】
「アルキル残基」という用語を使用して、本説明および請求項では、単結合により互いに結合した炭素原子からなり、水素原子が炭素原子に結合した一価の直鎖(「非分枝鎖」)または分枝鎖の残基が認識される。したがって、アルキル残基は、本発明に従うと、一価の飽和炭化水素残基である。好ましくは、一般式(1)の化合物中のアルキル残基は、1〜18個の炭素原子を含み、よって、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル残基、ならびに、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルおよびオクタデシル残基の多数の異なる直鎖および分枝鎖の異性体から選択される。特に好ましいのは、1〜12個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルキル残基である。1〜6個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルキル残基がより一層好ましい。本明細書および請求項において、1〜6個の炭素原子を有するアルキル残基を「低級アルキル」残基と呼ぶことも時々ある。最も好ましいアルキル残基は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル残基である。
【0075】
したがって、本明細書および請求項では、「アルケニル残基」および「アルキニル残基」という用語は、任意ではあるが分子内の定義された位置でそれぞれ単結合および少なくとも1つの二重結合または三重結合によって互いに結合した炭素原子からなり、水素原子が炭素原子の残りの結合に結合した、少なくとも2個の炭素原子であって最大18個の炭素原子を有する一価の直鎖(「非分枝鎖」)または分枝鎖の残基が認識される。好ましくは、一般式(1)の化合物中のアルケニル残基またはアルキニル残基は、2〜18個の炭素原子を含み、よってエテニル/エチニル、n−プロペニル/プロピニル、i−プロペニル/プロピニル残基、ならびに、ブテニル/ブチニル、ペンテニル/ペンチニル、ヘキセニル/ヘキシニル、ヘプテニル/ヘプチニル、オクテニル/オクチニル、ノネニル/ノニニル、デセニル/デシニル、ウンデセニル/ウンデシニル、ドデセニル/ドデシニル、トリデセニル/トリデシニル、テトラデセニル/テトラデシニル、ペンタデシニル/ペンタデシニル、ヘキサデセニル/ヘキサデシニル、ヘプタデセニル/ヘプタデシニルおよびオクタデセニル/オクタデシニル残基の多数の異なる直鎖および分枝鎖の異性体から選択される。特に好ましいのは、1〜12個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルケニル/アルキニル残基である。1〜6個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルケニル/アルキニル残基がより一層好ましい。本明細書および請求項において、1〜6個の炭素原子を有するアルケニル/アルキニル残基を「低級アルケニル」または「低級アルキニル」残基と呼ぶことも時々ある。最も好ましいアルケニル/アルキニル残基は、エテニル、ビニル、エチニル、n−プロペニル、アリル、n−プロピニル、i−プロペニル、i−プロピニル、n−ブテニル、n−ブチニル、i−ブテニル、i−ブチニル、sec−ブテニル、sec−ブチニル、tert−ブテニルおよびtert−ブチニル残基である。本発明に従うアルケニルおよびアルキニル残基は、1つよりも多くの多重C−C結合もまた含有してよい。このような多重C−C結合は、孤立C−C多重結合(すなわち、1つより多くのC−C単結合が2つのC−C多重結合間にある)であっても、共役C−C多重結合であってもよい。共役C−C多重結合の一般的な例は、1,3−ブタジエン−3−イル残基に見出される。しかし、炭素−炭素多重結合を含有する残基は、上記に具体的に述べた残基に制限されない。
【0076】
本説明および請求項では、「アルキレン残基」という用語は、単結合によって互いに結合した炭素原子からなり、水素原子が別の炭素原子に結合していない炭素原子の残りの結合に結合した、二価の直鎖(「非分枝鎖」)または分枝鎖の残基として認識される。したがって、アルキレン残基は、本発明に従うと、二価の飽和炭化水素残基である。好ましくは、一般式(1)および(2)の化合物中のアルキレン残基は、1〜18個の炭素原子を含み、メチレン、エチレン、n−プロピレン、2,2−プロピレン、1,2−プロピレン残基、ならびに、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、テトラデシレン、ペンタデシレン、ヘキサデシレン、ヘプタデシレンおよびオクタデシレン残基の多数の異なる直鎖および分枝鎖の異性体から選択される。特に好ましいのは、1〜12個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルキレン残基である。1〜6個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルキレン残基がより好ましい。本明細書および請求項において、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン残基を「低級アルキレン」残基と呼ぶことも時々ある。最も好ましいのは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、2,2−プロピレン、1,2−プロピレン残基および多数の異なるブチレンの位置異性体である。
【0077】
本発明に従うと、一般式(1)の化合物の一部であってもよいアルキル残基および/またはアルキレン残基において、炭素原子鎖は、O原子、N原子、S原子またはP原子によって割り込まれてもよい。よって、鎖の途中に、1つ以上の−CH−基の代わりに、−O−、−NH−、−S−および−P−の基の1つ以上の基が存在してもよい一方で、通常、−O−、−NH−、−S−および/または−P−の基のうち2つは鎖中で互いに連続しない。上記の1つ以上の−O−、−NH−、−S−または−P−の基は、分子中の任意の位置に挿入され得る。好ましくは、ある種のヘテロ基が存在する場合、分子中にその種の基が存在する。
【0078】
さらに別の実施形態の一般式(1)の化合物においては、本発明に従うと、直鎖および分枝鎖のアルキル残基またはアルキレン残基は、1つ以上の置換基、好ましくは1つの置換基で置換されていてもよい。より一層好ましくは、置換基は、R1、R2、R3およびR4について上記に定義される残基から選択される。置換基は、炭素原子で形成される主鎖の任意の位置に位置することができ、好ましくは、発明をこれに制限することなく、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のようなハロゲン原子、特に好ましくは、塩素および臭素、各々が1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、特に好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、アルキル残基中に1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、好ましくはアルキル残基中に1〜3個の炭素原子を有するアルコキシ基、非置換アミノ基、または互いに独立した1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子、を含有する1または2つのアルキル残基で置換されたアミノ基、カルボニル基およびカルボキシル基からなる群から選ぶことができる。後者はまた、アルキル残基に1〜6個の炭素原子を有するアルコールとのエステルまたは塩の形態でも存在し得るものであり、よって、「カルボキシル基」という用語には、一般構造−COO(M=アルカリ金属原子などの一価の金属原子、またはアルカリ土類金属原子のような二価の金属原子の1/2当量など、多価金属原子の一致する当量)を有する基、または一般構造−COOR(R=1〜6個の炭素原子を有するアルキル基)を有する基を包む。置換するアルキル基は、上記に詳細に述べられたアルキル基から選択され、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基が特に好ましい。
【0079】
アルコキシ基は、炭素原子で形成される主鎖にO原子を介して結合する、上記に定義した意味でのアルキル基である。これらは、好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシおよびtert−ブトキシ残基からなる群から選択される。
【0080】
アミノ基は、一般構造−NRの基[式中、残基RおよびRは互いに独立して、水素または1〜6個の炭素原子、特に好ましくは1〜3個の炭素原子を有するアルキル基(上述した定義に従う)を示し、残基RとRとは互いに同一であっても異なっていてもよい。]である。置換基として特に好ましいこのようなアミノ基は、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(Cである。「アミノ基」という用語はまた、有機酸または無機酸との塩形成(たとえば、構造Rの残基[式中、R、RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一であり、RおよびRは上記で定義した意味を有してもよく、該残基のうち少なくとも1つが有機酸または無機酸との四級化からの水素であり、Qは有機酸または無機酸の酸からの酸残基である。])による、またはこれに制限されないが、ハロゲン化アルキルなど当該分野の当業者に公知の好適な四級化試薬との塩形成による、第四級アンモニウムイオンとして存在する、上記で定義した構造の基も含有する。
【0081】
本説明および請求項では、「シクロアルキル」という用語は、閉じた環の形態で互いに結合した−CH基の置換または非置換の一価の残基に用いられる。本発明に従うと、上記環は、好ましくは環を形成する3〜8個の原子を含有してもよく、また、炭素原子を排他的に含有する(「炭素環式シクロアルキル残基」)か、−O−、−S−および−NR−[式中、Rは水素または(上記に定義したような)1〜6個の炭素原子を有するアルキル残基である。]から選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよい(「ヘテロ環式残基」)。ヘテロ原子が環に挿入される場合、上記へテロ原子は、1つよりも多くのヘテロ原子の場合、同一であるか異なることができる。好ましくは、ヘテロ原子が存在する場合、1つのヘテロ原子が環に挿入される。純粋に炭素環式の環で特に好ましいのは、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロヘプタジエニルおよびシクロヘプタトリエニル残基である。ヘテロ原子を含有するシクロアルキル残基(「ヘテロ環式残基」)の例としては、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルおよびモルホリニル残基がある。
【0082】
炭素環式または複素環式のシクロアルキル残基での可能な置換基は、好ましくは、本発明をこれに制限することなく、直鎖アルキル基について上述した置換基の群から選択してもよい。シクロアルキル基に対する特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシおよび−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシル置換基である。
【0083】
本説明および請求項では、「シクロアルキレン」という用語は、閉じた環に結合した−CH基の置換または非置換の二価の残基に用いられる。本発明に従うと、これらは好ましくは環に3〜8個の原子を含むことができ、排他的に炭素原子からなるか、−O−、−S−および−NR−[式中、Rは水素または1〜6個の炭素原子を有する(上記に定義したような)アルキル残基である。]から選択される1個以上のヘテロ原子を含むこともできる。純粋に炭素環式の環のうち特に好ましいのは、シクロペンチレン、シクロペンテニレン、シクロペンタジエニレン、シクロヘキシレン、シクロヘキセニレン、シクロヘキサジエニレン、シクロヘプチレン、シクロヘプテニレン、シクロヘプタジエニレンおよびシクロヘプタトリエニレン残基である。また、シクロアルキル残基に関して上記に定義した複素環式基が、基「B」として二価の残基の形態で一般式(I)の化合物に現れることができ、特に好ましいのは、1つの基−O−または−NR−が環に挿入されたこのような環式の二価の残基である。これらの場合、どちらの原子価も環中の任意の炭素原子に局在する。好ましくは、1個のヘテロ原子または2個のヘテロ原子が環に挿入され、このような基の特に好ましい実施形態では、テトラヒドロフラン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンから二価の残基が誘導される。
【0084】
これらの炭素環式または複素環式シクロアルキレン残基の可能な置換基は、好ましくは、本発明をこれに制限することなく、直鎖アルキル基について上述した置換基の群から選ぶことができる。シクロアルキレン基での特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシおよび−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシル置換基である。
【0085】
「アリール残基」という用語を使用して、本説明および請求項では、非置換であっても置換されていてもよい、芳香族の特徴(環状軌道に非局在化しているπ電子が4n+2個)を有する環状分子から誘導される一価の炭化水素残基が認識される。このようなアリール残基の環構造は、5員、6員または7員の単環構造か、互いに結合した2つ以上の(「環化した」)環で形成される構造であることができ、環化した環の環員、特にC原子の数は同一であるか異なる。少なくとも2つの環が互いに縮合してなる系の場合、ベンゾ縮合環、すなわち、環のうちの少なくとも1つが排他的にC原子を含有する6員環芳香族(たとえばフェニル環)である環系が特に好ましい。アリール環の典型的ではあるが非限定的な例としては、シクロペンタジエニル残基(C)(5員アリール環)、フェニル残基(6員アリール環)、シクロヘプタトリエニル残基(C)(7員アリール環)、ナフチル残基(2つの環化された6員環を含む環系)ならびにアントラセンおよびフェナントレンから誘導される一価の残基(3つの環化された6員環)がある。本発明に従うと、最も好ましいアリール残基は、フェニル残基およびナフチル残基である。
【0086】
炭素環式アリール残基の可能な置換基は、好ましくは、発明をこれらの置換基に制限することなく、直鎖アルキル基について上述した置換基の群から選ぶことができる。アリール基の特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシおよび−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシル置換基である。互いに同一または異なってもよいこのような基の1つ以上の置換基は、本発明に従う1個のアリール残基に結合することができる。アリール環(系)での置換位置は、任意に選ぶことができる。
【0087】
アリール残基の場合と同等の定義が、「アリーレン残基」という用語の定義に関して本説明および請求項に適用される。この点について、任意の2つの炭素原子に挿入することが可能である二価の残基である点を除いて、元素組成、その選択およびその置換基がアリール残基の上述の定義と同等の、二価の残基が認識される。
【0088】
本説明および請求項では、「ヘテロアリール残基」という用語により、環構造が分子の芳香族の特徴を失わずに、好ましくはO、NまたはSの群からの1個以上のヘテロ原子を含有する、(上述した定義に従う)アリール残基が認識される。このようなヘテロアリール残基の環構造は、5員、6員または7員の単環構造であってもよく、互いに結合した2つ以上の(「環化した」)環で形成される構造であってもよく、環化した環は、環員数が同一であっても異なっていてもよい。ヘテロ原子は、1つの環のみ、もしくは環系の1つよりも多くの環にあることができ、またはヘテロ原子は、2つの環化した環の間の「架橋位」に存在してもよい。
【0089】
ヘテロアリール残基は、好ましくは1つまたは2つの環からなる。1つよりも多くの環からなる系、たとえば、2つの環が互いに縮合してなる系の場合、ベンゾ縮合環、すなわち、環のうちの少なくとも1つが芳香族炭素環式(すなわち炭素原子のみを含有する)の6員環である環系が特に好ましい。特に好ましいヘテロアリール残基は、フラニル、チオフェニル、ピリジル、インドリル、クマロニル、チオナフテニル、キノリニル(ベンゾピリジル)、キナゾリニル(ベンゾピリミジニル)およびキノキシリニル(ベンゾピラジニル)から選択される。
【0090】
ヘテロアリール残基は、本発明に従って非置換であるか、または置換され得る。これらのヘテロアリール残基での可能な置換基は、本発明をこれらの置換基に制限することなく、好ましくは、直鎖アルキル基について上述した置換基の群から選ぶことができる。ヘテロアリール基に特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシ、−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシル置換基である。互いに同一または異なってもよいそのような群の1つ以上の置換基は、本発明に従う1個のヘテロアリール残基に結合してもよい。ヘテロアリール環(系)での置換位置は、任意に選ぶことができる。
【0091】
ヘテロアリール残基の場合と同等の定義が、「ヘテロアリーレン残基」という用語の定義に関して本説明および請求項に適用される。この点について、環もしくは環系それぞれの任意の2個の炭素原子、または窒素原子でも挿入を行うことが可能な二価の残基である点を除いて、一般組成およびその選択およびその置換基が「ヘテロアリール残基」の上述の定義と同等の、二価の残基が認識される。
【0092】
本説明および請求項の文脈では、「アラルキル残基」、「ヘテロアリールアルキル残基」、「ヘテロシクロアルキル残基」、「アリールアミドアルキル残基」および「ヘテロアリールアミドアルキル残基」という用語は、その結合のうちの1つで、アリール残基(上述の一般的かつ具体的な定義に従う)、ヘテロアリール残基(上述の一般的かつ具体的な定義に従う)、ヘテロシクリル残基(ヘテロ原子で置換されたシクロアルキル残基の上述の一般的かつ具体的な定義に従う)、アリールアミド残基(以下の一般的かつ具体的な定義に従う)またはヘテロアリールアミド残基(以下の一般的かつ具体的な定義に従う)で置換される、上述の一般的かつ具体的な定義に従うアルキル残基(またはより具体的には、アルキレン残基)を意味する。これらの残基は、非置換であるか、または置換され得る。
【0093】
本発明の好ましい実施形態では、アラルキル残基は、アリール残基がフェニル残基、置換フェニル残基、ナフチル残基または置換ナフチル残基であり、アルキル(アルキレン)基が1〜6個の炭素原子を有してもよく、直鎖または分枝鎖である、残基である。非常に特別かつ有利な態様においては、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチルおよびナフチルエチル残基は、アラルキル残基として用いられることができ、中でもベンジル残基が特に好ましい。
【0094】
アラルキル残基のアリール基の可能な置換基は、本発明をそのような置換基に制限することなく、好ましくは、直鎖アルキル基について上述した置換基の群から選ぶことができる。アラルキル残基のアリール基の特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシ、−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシル置換基である。互いに同一または異なってもよいそのような群の1つ以上の置換基は、本発明に従うアラルキル残基の1つのアリール基に結合することができる。アリール環(系)での置換位置については、任意に選ぶことができる。
【0095】
本発明の好ましい実施形態では、ヘテロアリールアルキル残基とは、本発明に従うヘテロアリールアルキル残基のヘテロアリール残基が置換され、アルキレン基が1〜6個の炭素原子を有していてもよい直鎖または分枝鎖であるアルキレン基であるような残基である。このようなヘテロアリール残基の環構造は、単環の環構造であるか、互いに結合した2つ以上の(「環化した」)環により形成される構造であることができ、環化した環は、環員数が同一であっても異なっていてもよい。ヘテロ原子は、環系の1つ以上の環に存在することもできる。ヘテロアリールアルキル残基のヘテロアリール残基は、好ましくは1つまたは2つの環からなる。互いに縮合された少なくとも2つの環から構成されるヘテロアリールアルキル系の場合、ベンゾ縮合環、すなわち、環の少なくとも1つが芳香族炭素環式6員環である環系が特に好ましい。特に好ましいヘテロアリールアルキル残基は、フラニルメチルおよびフラニルエチル、チオフェニルメチルおよびチオフェニルエチル、ピリジルメチルおよびピリジルエチル、インドリルメチルおよびインドリルエチル、クマロニルメチルおよびクマロニルエチル、チオナフテニルメチルおよびチオナフテニルエチル、キノリニル(ベンゾピリジル)メチルおよびキノリニル(ベンゾピリジル)エチル、キナゾリニル(ベンゾピリミジニル)およびキノキシリニル(ベンゾピラジニル)メチルおよびキノキシリニル(ベンゾピラジニル−)エチルから選択される。
【0096】
ヘテロアリールアルキル残基のこれらのヘテロアリール基での可能な置換基については、本発明をこれに制限することなく、好ましくは、直鎖アルキル基について上述した置換基の群から選ぶことができる。ヘテロアリール基の特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシおよび−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシル置換基である。互いに同一であるかまたは異なっていることも可能である、そのような群の1つ以上の置換基を、本発明に従うヘテロアリールアルキル残基に結合させることが可能である。ヘテロアリール環(系)での置換位置については、任意に選ぶことができる。
【0097】
発明の好ましい実施形態では、ヘテロシクロアルキル残基は、−O−、−S−および−NR−[式中、Rは水素または(上記に定義したような)1〜6個の炭素原子を有するアルキル残基である。]から選択される1個以上のヘテロ原子を含む、上述の一般的かつ具体的な定義に従うシクロアルキル残基であり、ヘテロシクロアルキル残基のアルキル(アルキレン)基は1〜6個の炭素原子を有してもよい直鎖または分枝鎖である。2個以上のヘテロ原子が環に挿入される場合、これらは同一であるかまたは異なっていることもできる。好ましくは、1個のヘテロ原子が環に取り込まれる。ヘテロシクロアルキル残基とも呼ばれる、ヘテロ原子を含有するシクロアルキル残基の好ましい例は、本発明のさらなる実施形態では、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルおよびモルホリニル残基である。
【0098】
これらのヘテロシクロアルキル残基での可能な置換基は、発明をこれらの置換基に制限することなく、好ましくは、直鎖アルキル基について上述した置換基の群から選択することができる。ヘテロアリール基での特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシおよび−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシル置換基である。互いに同一または異なってもよいそのような群の1つ以上の置換基は、本発明に従う1個のヘテロシクロアルキル残基に結合することができる。ヘテロシクロアルキル環(系)での置換位置については、任意に選ぶことができる。
【0099】
「アリールアミドアルキル残基」および「ヘテロアリールアミドアルキル残基」という用語を使用して、本説明および請求項では、一般式Ar−NR−C(=O)−または一般式Ar−C(=O)−NR−[式中、Rは水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキルであり、Arは、上述の一般的または具体的な定義に従う任意のアリール残基またはヘテロアリール残基である。]のアリールアミド残基またはヘテロアリールアミド残基によって、その結合のうちの1つで置換される、上述の一般的かつ具体的な定義に従うアルキル残基(より厳密には、アルキレン残基)が認識される。これらのアリールまたはヘテロアリール残基は、非置換であるか、または置換され得る。アリールアミドアルキル残基の好ましい例としては、発明を制限することなく、2−、3−もしくは4−安息香酸−アミノ−n−ブチル残基、もしくは2−ニトロ−3−、−4−、−5−もしくは−6−安息香酸−アミド−n−ブチル残基である。ヘテロアリールアミドアルキル残基の好ましいが限定的ではない例は、2−、4−、5−または6−ピリジン−3−カルボン酸−アミド−n−ブチル残基である。
【0100】
これらのアリールアミドアルキル残基およびヘテロアリールアミドアルキル残基での可能な置換基は、本発明をこれらの置換基に制限することなく、好ましくは、直鎖アルキル基について上述した置換基の群から選ぶことができる。アリールアミドアルキル残基およびヘテロアリールアミドアルキル残基のアリール基またはヘテロアリール基の特に好ましい置換基は、−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシ、−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシル置換基である。互いに同一であるかまたは異なっていることも可能である、そのような群の1つ以上の置換基を、本発明に従うアリールアミドアルキル残基またはヘテロアリールアミドアルキル残基のアリールまたはヘテロアリール基に結合させることが可能である。芳香環(系)での置換位置は、任意に選ぶことができる。
【0101】
アラルキル残基、ヘテロアリールアルキル残基、ヘテロシクロアルキル残基、アリールアミドアルキル残基およびヘテロアリールアミドアルキル残基の場合と同等の定義が、「アラルキレン残基」、「ヘテロアリールアルキレン残基」、「ヘテロシクロアルキレン残基」、「アリールアミドアルキレン残基」および「ヘテロアリールアミドアルキレン残基」という用語の定義に関して本説明および請求項の文脈に適用される。それぞれのアルキレン基の環もしくは環系の任意の2個の炭素原子で、またはヘテロアリールもしくはヘテロシクリル環系の窒素原子でも挿入を行い得る二価の残基である場合も除いて、これらは、その一般組成および選択ならびにその置換基が、上述した定義の「アラルキル残基」、「ヘテロアリールアルキル残基」、「ヘテロシクロアルキル残基」、「アリールアミドアルキル残基」および「ヘテロアリールアミドアルキル残基」と同等の、二価の残基であると理解される。
【0102】
本発明に従うと、一般式(I)の化合物は中性分子の形態で存在し、本発明に従うと、中性分子として用いられる。代替的には、一般式(I)の化合物は、無機酸および/または有機酸との酸付加塩の形態で存在してもよい。分子中に塩基性原子(非共有電子対を有し、ほとんどはアルカリ窒素原子である)が存在するため、このような酸付加塩は、H酸化合物(ブレンステッド酸)の1つ以上の分子、好ましくはH酸化合物の1つの分子を加えることで形成され、たとえば水中のような極性媒質での分子の溶解性を改善する。後者の特徴は、薬学的作用を発揮するような化合物には特に影響がある。
【0103】
本発明の好ましい実施形態において、酸付加塩は、医薬上許容される酸の塩であり、一般式(I)の化合物の塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩および/またはクエン酸塩からなる群から有利に選ばれる(ただし、本発明を限定することはない)。
【0104】
本発明の特に好ましい実施形態において、下記の表1に示され要約される一般式(I)の多くの例示的な(非制限的)化合物を調製した。化合物は、有機化学の十分に確立された合成方法に従って調製した。具体的な合成例は、本説明の実験の項で、以下に説明される。しかしながら、説明される合成ルートは例示的であり、本発明を十分に理解するためのみに示され、本発明を制限するものではない。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
【表5】

【0110】
【表6】

【0111】
【表7】

【0112】
【表8】

【0113】
【表9】

【0114】
【表10】

【0115】
【表11】

【0116】
【表12】

【0117】
【表13】

【0118】
【表14】

【0119】
【表15】

【0120】
【表16】

【0121】
1.酵素測定
1.1.DPIVおよび関連酵素の酵素活性および阻害の測定
精製された組換ヒトDPIV(トランスフェクトSf9細胞から精製、最終酵素濃度約1nM)ならびに精製された組換DP8およびDP9(Biomolから購入)を用いることにより、DPIVおよび関連する酵素の酵素活性の阻害を測定した。アッセイは、0.05%トリトン(v/v)、0.05%BSA(w/v)、2mMのMgClを添加した0.05Mトリス/HCl緩衝液pH7.5にて行われた。
【0122】
DPIVの酵素活性は、蛍光性基質H−Gly−Pro−4−アミノ−7−メチルクマリン(蛍光性基AMCの略称;Bachemから購入)または(Ala−Pro)−ローダミン110(略称R110)の加水分解によって評価した。最終基質濃度は、それぞれ50μMまたは1μMであった。
【0123】
アッセイは、蛍光測定用の白色マイクロタイタープレート中で行なわれた。試験品目、基質および酵素は、アッセイ緩衝液で希釈した。使用した最も高い試験品目濃度は、25μMであった。IC50値の算出については、各試験品目の少なくとも16個のlog2希釈物が分析された。コントロールとして、試験品目の非存在の下、基質の自発的加水分解の下で、DPIV活性を求めた。
【0124】
基質を加えた直後、ならびに30、60および120分後に、マイクロタイタ−蛍光リ−ダ−を用いることにより、励起波長380nmおよび発光波長460nmで蛍光性加水分解生成物AMCの放出を測定した。励起波長488nmおよび発光波長530nmで基質(Ala−Pro)−ローダミン110の加水分解を求めた。
【0125】
1.2.アミノペプチダーゼの酵素活性および阻害の測定
精製した組換ヒト酵素(トランスフェクトECV細胞から精製、最終酵素濃度約1nM)を用いることによって、アミノペプチダーゼN(APN)の酵素活性の阻害を測定した。細胞質アミノペプチダーゼ(cAAP)は、APNを発現しないJurkat細胞から精製した。アッセイは、0.05%トリトン(v/v)、0.05%BSA(w/v)、2mMのMgClを添加した0.05Mトリス/HCl緩衝液pH7.5にて行われた。
【0126】
アミノペプチダーゼ活性は、蛍光性基質H−Ala−4−アミノ−7−メチルクマリン(蛍光性基AMCの略称;Bachemから購入)または(Ala)−ローダミン110(略称R110)の加水分解によって評価した。最終基質濃度は今回も、それぞれ50および1μMであった。
【0127】
アッセイは、蛍光測定用の白色マイクロタイタープレート中で行なわれた。試験品目、基質および酵素は、アッセイ緩衝液で希釈した。使用した最も高い試験品目濃度は、25μMであった。IC50値の算出については、各試験品目の少なくとも16個のlog2希釈物が分析された。コントロールとして、試験品目の非存在の下、基質の自発的加水分解の下で、DPIV活性を求めた。
【0128】
蛍光性加水分解生成物AMCおよびR110の放出をDPIV基質について上記の通りに測定した。
【0129】
2.異なる細胞型中でのDNA合成に対する試験品目の作用の評価
2.1.ヒト末梢血単核細胞およびTリンパ球の増殖の阻害
健常なヒトボランティアからの末梢血単核細胞(PBMC)が、密度勾配遠心分離によって新鮮に単離された。Tリンパ球(T細胞)は、ナイロンウール付着を介してPBMC分画から単離された。両方の細胞集団を無血清リンパ球媒体(AIMV媒体、Invitrogen)中で培養し、96ウェル平底マイクロタイタープレートで48時間、1μg/mlフィトヘマグルチニンを加えることにより刺激した。試験化合物を全アッセイ期間にわたって、0.1〜250μMまでの濃縮範囲で加えた。
【0130】
ヌクレオチド類似ブロモデオキシウリジン(BrdU)を取り込み、次にメーカーのプロトコルに従ってELISA技術により(細胞増殖BiotrakTM ELISA系、GEヘルスケア)、BrdUを検出することにより、PBMCを増殖するDNA合成を評価した。放射性標識トリチウムチミジンを取り込み、次に放射検出を行うことにより、T細胞を増殖するDNA合成を求めた。
【0131】
データ出力は、生データおよび試験化合物の非存在下でのPHA活性化T細胞に関連する相対的な増殖応答(コントロールを100%とする)の算出に基づくものであった。増殖抑制のIC50値は、グラフィック評価によって評価した。
【0132】
2.2.正常なヒトの表皮ケラチノサイト(NHEK)のDNA合成および増殖の阻害
NHEK細胞(30歳の白人女性からの一次細胞)をPromoCellから購入した。これらのアッセイ用に、平底マイクロタイタープレート中、表皮増殖因子(EGF)およびウシ脳下垂体抽出物を添加した無血清ケラチノサイト生育培地2中で、付着細胞を48時間培養した。EGFは、これらの細胞のDNA合成および増殖を刺激する。試験品目を0.1〜100μMまでの濃度で加えた。
【0133】
ブロモデオキシウリジン(BrdU)を取り込み、次にELISA技術によりBrdUを検出することにより、DNA合成を評価した。これらの生データを基に、試験化合物の非存在下で培養した細胞に関連する相対的な増殖応答(コントロールを100%とする)を算出した。コンピュータ支援グラフィック評価によって、増殖抑制のIC50値を評価した。
【0134】
2.3.不死化ヒト脂腺細胞のDNA合成および増殖の阻害
不死化ヒト脂腺細胞株SZ95が、C Zouboulis教授[CC Zouboulis, H Seltmann, H Neitzel, CE Orfanos, 不死化ヒト皮脂腺細胞株(SZ95)の確立および特徴付け(Establishment and characterization of an immortalized human sebaceous gland cell line (SZ95)), J. Invest. Dermatol., 113(6):1011-1020 (1999)]により提供された。これらの接着生育細胞を無血清 Sebomed Complete(Biochrom)中で培養した。SZ95細胞のDNA合成および増殖を刺激するために、組換EGFを加えた。試験品目を0.1〜100μMまでの濃度で加えた。
【0135】
放射性標識トリチウムチミジン(3HT)を取り込み、ベータカウンターでカウントすることにより、増殖性細胞のDNA合成を検出した。これらの生データを基に、試験化合物の非存在下で培養した細胞に関連する相対的な増殖応答(コントロールを100%とする)を算出した。コンピュータ支援グラフィック評価によって、増殖抑制のIC50値を評価した。
【0136】
3.コンピューター分析
酵素のデータはすべて、H. B. Rasmussenらにより2003年に解明されたDPIV結晶構造に関連する。
【0137】
活性部位ポケット周囲のタンパク質表面の詳細な研究により、活性部位ポケットと中心アクセスとの間の中心孔(トンネル)内に浅い凹部があることが明らかになった。ここで述べた活性部位ポケットおよび浅い凹部の両方の周囲の領域を含む、公知のDPIVインヒビターとのドッキングを数回実行した結果、浅い凹部領域についての結合定数は、活性部位ポケット内のそれぞれのインヒビターの結合について得られた結合定数の1または2桁以内であった。ドッキング手順において検討した領域の制限と、幅広い化合物への適用により、この浅い凹部が、代替的な結合部位である可能性が証明された。この結合部位は、中心孔結合部位と称される。
【0138】
幾何学的研究のために、活性部位ポケットをGLU205、GLU206およびARG358により表し、中心孔結合部位をGLU361、HIS363およびGLU408により表す。
【0139】
このモデルには、2つの決定的な間隔が含まれている。活性部位ポケットまでの中心孔結合部位内の小分子の位置を特徴付ける第1の間隔は、ARG206のカルボキシル炭素とインヒビター/リガンド(ras)の座標の中心との間の間隔である。第2の間隔は、DPIV中心孔の中心アクセス点とインヒビター/リガンド(rcpbs)の塊の中心との間の間隔であり、中心孔の入口までのインヒビター/リガンドの位置を特徴付ける。インヒビター/リガンドのファンデルワールス面AvdWは、DPIV中心アクセス孔の妨害を表す。さらに、インヒビター/リガンドと中心孔結合部位を表す残基のうち少なくとも2つとの間の短い極性の接点が、安定した熱力学的相互作用のためには決定的である。
【0140】
4.分子ドッキングおよび量子化学的算出
ウィンドウズ(登録商標)XP下の4CPUコンピュータシステム上で、Autodock4パッケージ[www.Scripps.edu]により、ドッキング研究を行なった。
【0141】
ドッキング手順のために、我々は二量体のDPIV結晶構造のAモノマーを使用した。ここで検討されるモノマーの領域内の水分子は、事前に取り除かれた。すべてのドッキングについて、256の汎用アルゴリズムを実行した。
【0142】
ChemSketchソフトウェアパッケージ[www.acdlabs.com]で実現した力場手順を用いて、リガンド/インヒビター分子を事前に最適化した。ChemSketchソフトウェアパッケージ[www.acdlabs.com]で、オプションのアドオンとして実現した方法により、LogP値を算出した。
【0143】
分子容積および表面は、MOPAC2002[http://www.cache.fujitsu.com/mopac/index.shtml]で実現したCOSMO方法[A.Klamt et al.,Journal of the Chemical Society, Perkin Transaction 2, 799 (1993)]を用いることにより得られた。
【0144】
5.T細胞増殖阻害のモデルとしての多重線形回帰分析
我々は、以下の方程式に従うT細胞増殖抑制の3記述子線形回帰分析を開発した。
【0145】
【数1】

【0146】
下記略称が使用された。
DNA−Supp.は、T細胞DNA合成の抑制のIC50であり、
CPBSは、中心孔結合部位の見かけの親和定数であり、
ASは、活性部位を意味し、
CPBSは、中心孔結合部位を表し、
AS−rPBSは、中心孔結合部位と活性部位との間隔の二乗と、中心孔結合部位とアクセス部位との間隔の二乗との間の差である。
【0147】
活性部位は、Glu206残基のカルボキシル炭素原子の座標によって定義され、中心孔結合部位は、His363近くの中心孔結合部位に結合したリガンドの座標中心によって定義され、アクセス部位は、Glu464近くの中心孔のアクセスのおよその中心点によって定義される。
【0148】
ここで述べるモデルの最も便宜的な、間隔に関連するパラメータは、ここで検討する2つの間隔の二乗の差、ras−rCPBSである。それらの二乗の形での表現は、異なる位置について等しい差が発生してしまうことを回避するために必要と思われる。なぜなら、単なる間隔の差では、等しい差が起こりがちであろうためである。Nは、アミノ基の数である。c、c、cおよびcは、最小二乗法に従う回帰算出によって求められる線形係数である。
【0149】
その熱力学的、動力学的バックグラウンドのため、上記に紹介された回帰方程式は、DNA−SuppおよびKCPBSの自然対数を用いる。それらの値は、μMで示される。較正データセットには、DNA−Supp値が3.23〜200の範囲である全体で41種類の構造的に多様な化合物が含まれる。相関係数Rは、0.8213であり、標準偏差(対数)は、0.7647である。
【0150】
本発明に従う一般式(I)の新規な化合物と、例示的な酵素であるジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)およびアミノペプチダーゼN(APN)との間の相互作用の基本原理が、付随の図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】DPIVおよびAPNのモノマー分子中での本質的な間隔(オングストロ−ム)を示す概略図である。
【図2】a〜dは、DPIVおよびAPNの中心孔結合部位へのリガンドの結合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0152】
本発明に従うと、上記一般式(I)全般の化合物、または表1に従う上述の化合物は、医療分野での使用のための化合物である。「医療分野での使用のため」という用語は、上記一般式(I)の1つの化合物、もしくは一般式(I)全般の化合物もしくは表1に従う上述の化合物の2つ以上の使用のためとして、または医療分野での一切の使用のためとして、たとえば、体、好ましくは哺乳類の体、より好ましくはヒトの体の中で医療作用を有する物質に対するエフェクターとして、疾患または病態に対抗するそのような物質を必要とする体、好ましくは哺乳類の体、より好ましくはヒトの体に対するその作用により、それ自体が医療作用を有する物質として、疾患または病態に対抗するそのような医薬もしくは医薬上有効な製剤を必要とする体、好ましくは哺乳類の体、より好ましくはヒトの体に対して作用を及ぼす医薬または医薬上有効な製剤の成分として、または疾患または病態に対抗してそのような診断上有効な製剤が投与または適用される体、好ましくは哺乳類の体、より好ましくはヒトの体の中で作用を及ぼすか、作用を探求する診断製剤の成分として、本明細書および請求の範囲において、最も広義な意味で理解される。医療分野での使用例(発明を制限するものではないが)は、そのほんの数例を挙げると、疾患または病態の治療、疾患または病態の羅患の予防、疾患または病態からの回復状態の体の改善、体が以前に患った疾患または病態の再発からの防止、疾患もしくは病態から保護されている状態、疾患もしくは病態を罹患している状態、または疾患もしくは病態から回復している状態の体を試験するための診断手順が挙げられる。
【0153】
上記一般式(I)の全ての化合物全般、または表1に従う上述の化合物のすべてが、医療分野での使用に好適であることが見出された。一般式(I)全般の化合物または表1に従う上述の化合物のいずれか1つ以上の医療分野で使用されるための適性について、それぞれの化合物が作用する特定のメカニズムは、本明細書により提案されるメカニズムであってよい。しかしながら、明細書に記載される作用メカニズムは、発明を制限するものとして解釈されるべきではなく、単に例示的な特性を有し、発明がなされた当時の発明の最良の形態を表すものであり、上記以外の別の(随意に関連する)メカニズムであってもよい。
【0154】
具体的には、上記一般式(I)全般の化合物、または表1に従う上述の化合物は、Tリンパ球、ケラチノサイトおよび脂腺細胞のDNA合成(増殖)を抑制し、中心孔結合部位に結合し、細胞APNおよびDPIVの活性部位への基質のアクセスを阻止することによって、DPIVおよびAPNを酵素的に阻害する能力により特徴付けられる。これは、両方のペプチダーゼ、一般式(I)全般の化合物、または表1に従う上述の化合物の結晶構造を用いたドッキングアプローチによって定義された。
【0155】
より具体的には、上記一般式(I)全般の化合物、または表1に従う上述の化合物は、ジペプチジルペプチダーゼIVおよびDPIV類似酵素作用を有するペプチダーゼならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)およびAPN類似酵素作用を有するペプチダーゼのデュアルインヒビターもしくは中心孔結合リガンドとしての使用のためのものである。より一層具体的には、上記一般式(I)の化合物は、DNA合成および炎症性サイトカイン産生の抑制ならびにインビトロおよびインビボでの抗炎症性サイトカイン産生の刺激における使用のためのものである。
【0156】
驚くべきことに、上記一般式(I)全般の化合物、または表1に従う上述の化合物は、ジペプチジルペプチダーゼIVおよび類似酵素作用を有するペプチダーゼならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似酵素作用を有するペプチダーゼから選択されるエクトペプチダーゼの阻害の一般原則に従って、自己免疫疾患の予防または治療、または動脈硬化症、神経疾患、脳損傷、皮膚病、腫瘍疾患、移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患(GvHD)およびウイルスもしくは細菌による疾患を含む過剰な免疫応答および/もしくは炎症発生を伴う疾患の予防または治療のための使用に好適であることが、本発明者によって見出された。
【0157】
さらに、本発明の好ましい実施形態においては、一般式(I)全般の化合物、または表1に従う上述の化合物は、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性結腸炎、1型糖尿病、関節リウマチ、動脈硬化症、動脈炎、ステント再狭窄およびその他の自己免疫疾患ならびに炎症性疾患から選択される疾患または症状の予防および治療のための使用に好適である。
【0158】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、上記一般式(I)全般の化合物、または表1に従う上述の化合物は、腫瘍および転移の防止および治療における使用のためのものである。
【0159】
本発明のさらなる好ましい実施形態は、皮膚および粘膜に関する疾患、乾癬、ざ瘡、ならびに線維芽細胞の過剰増殖および分化が変性した症状を伴う皮膚科学的な疾患、良性線維化、硬化性皮膚病および線維芽細胞の悪性の過剰増殖症状から選択される疾患または症状の防止および治療における使用のための上記一般式(I)全般の化合物、または表1に従う上述の化合物に向けられる。
【0160】
本発明のさらに好ましい形態においては、一般式(I)全般の化合物、または表1に従う上述の化合物は、気管支喘息および他のアレルギー性疾患ならびに慢性閉塞性肺疾患(COPD)の疾患および症状の防止および治療における使用のためである。
【0161】
本発明は、さらなる好ましい実施形態として、急性神経疾患、虚血もしくは出血性卒中卒中後の虚血による脳損傷、頭蓋脳損傷、心停止、心臓発作、または心臓手術介入の結果としての疾患または症状、たとえばアルツハイマー病の慢性神経疾患、ピック病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭認知症、パーキンソン病、特に第17番染色体にカップリングしたパーキンソニズム、ハンチントン病、プリオンによる症状もしくは疾患および筋萎縮性側索硬化症から選択される疾患および症状の治療および防止における使用のための上記一般式(I)全般の化合物、または表1に従う上述の化合物を含む。
【0162】
さらに、本発明は、さらなる好ましい実施形態において、骨髄、腎臓細胞、心臓細胞、肝臓細胞、膵臓細胞、皮膚細胞または幹細胞細胞などの同種移植または異種移植した臓器、組織および細胞、ステント、関節インプラント(膝関節インプラント、股関節インプラント)、骨インプラント、心臓ペースメーカーまたは他のインプラント、血管バルーンの拒絶反応、ならびに移植片対宿主疾患(GvHD)の治療および防止/予防における使用のための一般式(I)全般の化合物、または表1に従う上述の化合物を含む。
【0163】
さらに、本発明のさらなる好ましい実施形態は、マラリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)、敗血症および敗血症様症状などの炎症性感染症疾患から選択される疾患または症状の防止/予防および治療における使用のための一般式(I)全般の化合物、または表1に従う上述の化合物を含む。
【0164】
一般式(I)全般の化合物、または本発明による表1に従う上述の化合物は、合成された状態で、または医療分野において化合物を適用する当業者に知られている好適な精製後に、1つの化合物として単独で、または2つもしくはさらにそれ以上の化合物として用いてもよい。一般式(I)全般の化合物、または表1に従う上述の化合物は、単独で用いてもよく、または、代替的には、1つ以上の医薬上許容されるキャリア、補助物質および/またはアジュバントと組合せて用いてもよい。本発明に従って、1つの医薬上許容されるキャリアおよび/もしくは補助物質および/もしくはアジュバントを用いてもよく、または、2つもしくはさらにそれ以上の医薬上許容されるキャリアおよび/もしくは補助物質および/もしくはアジュバントを用いてもよい。このような医薬上許容されるキャリア、補助物質および/またはアジュバントは、医療分野において一般的に知られており、ここでの詳細な説明は必要ない。さらに、医療分野での使用に好適なキャリア、補助物質および/またはアジュバントを取り扱う標準教科書を参照してもよく、その1つとして、「レミントン 薬学の科学と実践(Remington, The Science and Practice of Pharmacy); Lippincott, Williams & Wilking(編集)、2000年」がある。
【0165】
別の実施形態においては、本発明はまた、上記詳細な定義および説明全般に従う一般式(I)の化合物のうち少なくとも1つ、または表1に従う上述の化合物のうち少なくとも1つを含有する医薬製剤に関する。本発明および請求項では、「医薬製剤」という用語は、体、具体的には哺乳類の体、より好ましくはヒトの体に何らかの医薬的作用を及ぼす1つまたは2つもしくはさらにそれ以上の物質を含有する製剤を意味すると考えられ、該製剤は、医薬的作用を及ぼす目的で、そのような物質または製剤を必要とする場合は、上記体に、如何なるルートで投与されてもよい。本発明の医薬製剤は、医薬上有効な物質として、一般式(I)の1つの化合物を含んでもよく、または一般式(I)の2つもしくはさらにそれ以上の化合物を含んでもよい。好ましいのは、一般式(I)全般の1つの化合物、または本発明による表1に従う上述の化合物のうち1つを含有する医薬製剤である。
【0166】
特定の医薬作用が得られ得る発明のさらなる実施形態においては、本発明の医薬製剤は、一般式(I)全般の少なくとも1つの化合物に加えて、または、表1に従う上述の化合物のうち少なくとも1つに加えて、少なくとも1つ、好ましくは1つのさらなる医薬上有効な化合物を含んでもよい。このようなさらなる医薬上有効な化合物は、上記に定義した一般式(I)の本化合物と同一の分野の薬理作用を有してもよく(もしくは数種類の薬理作用を有してもよく)、または、上記の一般式(I)の上記化合物がその薬理作用を及ぼす分野とは異なる1つの分野もしくはいくつかの分野の1種類(もしくは数種類の)薬理作用を有してもよい。
【0167】
本発明の医薬製剤においては、一般式(I)全般の化合物の1つもしくは複数、または表1に従う上述の化合物1つもしくは複数を単独で用いてもよく、または、代替的には、1つ以上の医薬上許容されるキャリア、補助物質および/またはアジュバントと組合せて用いてもよい。本発明のこのような医薬製剤においては、1つの医薬上許容されるキャリアおよび/もしくは補助物質および/もしくはアジュバントを用いてもよく、または、本発明に従って、2つもしくはさらにそれ以上の医薬上許容されるキャリアおよび/もしくは補助物質および/もしくはアジュバントを用いてもよい。本発明の医薬製剤中に用いられるこのような医薬上許容されるキャリア、補助物質および/またはアジュバントは、医療分野において一般的に公知であり、ここでの詳細な説明は必要ない。さらに、医療または医薬分野での使用に好適なキャリア、補助物質および/またはアジュバントを取り扱う標準教科書を参照してもよく、その1つとして、「レミントン 薬学の科学と実践(Remington, The Science and Practice of Pharmacy);Lippincott, Williams & Wilking(編集)、2000年」がある。
【0168】
上記一般式(I)全般の化合物のうち少なくとも1つを含有するか、または表1に従う上述の化合物のうち少なくとも1つを含有する本発明の医薬製剤は、たとえば、クリーム、軟膏、ペースト、ゲル、溶液、スプレー、リポソームおよびナノソーム(nanosome)、振盪混合物、「ペグ化」剤形、分解可能(たとえば生理学的条件下で分解可能)デポーマトリクス、親水コロイド包帯、プラスター、マイクロスポンジ、プレポリマーおよび同様のキャリア基質、ジェット注射または点滴適用(instillative application)を含む他の皮膚科学的成分/ビヒクルの形態で、局所的ルートにより投与されるための製剤であってもよい。代替的には、医薬製剤は、たとえば、錠剤、糖衣錠、トローチ、カプセル、エアロゾール、スプレー、溶液、エマルジョンおよび懸濁液の形態での好適な剤型または好適な調剤形態で行なわれてもよい、経口、経皮、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、髄腔内ルートのいずれかによる全身投与のためのものであってもよい。
【0169】
本発明に従って、また、その好ましい実施形態において、本発明の医薬製剤中の一般式(I)全般の化合物のうち少なくとも1つ、または表1に従う上述の少なくとも1つの化合物の量は、当業者にいかなる制限も課すことなしに、幅広く選べばよい。特に、通常のパラメータ、たとえば、治療されるべき人に依存するパラメータ、上記人の疾患状態、疾患または症状の重症度、および他の通常のパラメータに従って、医療分野の当業者がほんのいくつかの方向付け実験を行うことにより、投与量を容易に求めることが可能となる。具体的には、量は(発明をこれらの量に制限することなく)、一般式(I)全般の化合物の少なくとも1つに関して、または表1に従う上述の化合物のうち少なくとも1つに関して、適用単位当たり、0.01〜1000mgの範囲であればよく、好ましくは、適用単位当たり0.1〜100mgの範囲であればよい。
【0170】
別の実施形態においては、本発明はさらに、上記の詳細な定義および説明全般に従う一般式(I)の化合物のうち少なくとも1つを含むか、または表1に従う上述の化合物のうち少なくとも1つを含む化粧料製剤にも関する。本発明および請求項では、「化粧料製剤」という用語は、体、具体的には哺乳類の体、より好ましくはヒトの体に何らかの化粧料としての作用を及ぼす1つまたは2つもしくはさらにそれ以上の物質を含有する製剤を意味すると考えられ、該製剤は、化粧料としての作用を及ぼす目的でそのような物質または製剤の適用が望ましければ、上記体に、如何なるルートで適用されてもよい。本発明の化粧料製剤は、化粧料として有効な物質として、一般式(I)の1つの化合物を含んでもよく、または一般式(I)の2つもしくはそれ以上の化合物を含んでもよい。好ましいのは、一般式(I)全般の1つの化合物、または本発明による表1に従う上述の化合物のうち1つを含有する化粧料製剤である。
【0171】
特定の化粧料としての作用が得られ得る本発明のさらなる実施形態においては、本発明の化粧料製剤は、一般式(I)全般の少なくとも1つの化合物に加えて、または、表1に従う上述の化合物のうち少なくとも1つに加えて、少なくとも1つ、好ましくは1つの、化粧料として有効な化合物をさらに含んでもよい。このようなさらなる化粧料として有効な化合物は、上記に定義した一般式(I)の本化合物と同一の分野の化粧料としての作用を有してもよく(または数種類の化粧料としての作用を有してもよく)、または、上記一般式(I)の上記化合物がその化粧料としての作用を及ぼす分野とは異なる1つの分野もしくはいくつかの分野の1つ(もしくはいくつか)の化粧料としての作用を有してもよい。
【0172】
本発明の化粧料製剤においては、一般式(I)全般の化合物の1つもしくは複数、または表1に従う上述の化合物の1つもしくは複数は、単独で用いてもよく、または、代替的には、1つ以上の化粧料として許容されるキャリア、補助物質および/またはアジュバントと組合せて用いてもよい。本発明のこのような化粧料製剤においては、1つの化粧料として許容されるキャリアおよび/もしくは補助物質および/もしくはアジュバントを用いてもよく、または、本発明に従って、2つもしくはさらにそれ以上の化粧料として許容されるキャリアおよび/もしくは補助物質および/もしくはアジュバントを用いてもよい。本発明の化粧料製剤中に用いられるこのような化粧料として許容されるキャリア、補助物質および/またはアジュバントは、化粧料分野において一般的に公知であり、ここでの詳細な説明は必要ない。さらに、化粧料分野での使用に好適なキャリア、補助物質および/またはアジュバントを取り扱う標準教科書を参照してもよく、そのうちの1つに、「G. A. Nowak、Die kosmetischen Praparate, Band 2: Die kosmetischen Praparate-Rezepturen, Rohstoffe, wissenschaftliche Grundlagen, Verlag fur Chemische Industrie, H. Ziolkowsky KG,アウグスブルク」がある。
【0173】
上記一般式(I)全般の少なくとも1つの化合物を含有するか、または表1に従う上述の化合物のうち少なくとも1つを含有する本発明の化粧料製剤は、たとえば、クリ−ム、軟膏、ペースト、ゲル、溶液、スプレー、リポソームおよびナノソーム(nanosome)、振盪混合物、「ペグ化」剤形、分解可能(たとえば生理学的条件下で分解可能)デポーマトリクス、親水コロイド包帯、プラスター、マイクロスポンジ、プレポリマーおよび同様のキャリア基質、ジェット注射または点滴適用(instillative application)を含む他の皮膚科学的成分/ビヒクルの形態で、局所的ルートにより適用されるための製剤であってもよい。代替的には、化粧料製剤は、たとえば、錠剤、糖衣錠、トローチ、カプセル、エアロゾール、スプレー、溶液、エマルジョンおよび懸濁液の形態での好適な剤型または好適な調剤形態で行なわれてもよい、経口、経皮、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、髄腔内のいずれかでの全身投与用であってもよい。化粧料分野においては、任意の局所的ルートでの適用のための本発明の製剤が好ましい。
【0174】
本発明に従って、また、その好ましい実施形態において、本発明の化粧料製剤中の一般式(I)全般の化合物のうち少なくとも1つ、または表1に従う上述の少なくとも1つの化合物の量は、当業者にいかなる制限も課すことなしに、幅広く選べばよい。特に、通常のパラメータ、たとえば、処置されるべき人に依存するパラメータ、上述の人の皮膚状態および他の通常のパラメータに従って、化粧料分野の当業者がほんのいくつかの方向付け実験を行うことにより、適用量(または投与量さえも)を容易に求めることが可能となる。具体的には、量は(発明をこれらの量に制限することなく)、一般式(I)全般の化合物のうち少なくとも1つに関して、または表1に従う上述の化合物のうち少なくとも1つに関して、適用単位当たり、0.01〜1000mgの範囲であればよく、好ましくは、適用単位当たり0.1〜100mgの範囲であればよい。
【0175】
以下に、実施例により本発明をさらに説明する。これらの実施例は、十分な理解のために本発明を主に例示および説明するために与えられる本発明の好ましい実施形態に言及する。しかし、実施例は、本発明を制限するように解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0176】
一般式(I)の化合物の調製
一般式(I)の化合物を調製する際、下記スキーム1〜17の合成ルートが選択された。選択された工程の反応条件は、以下のスキームに示される:
【0177】
【化6】

【0178】
試薬および条件:a)1.LiAlH,THF,還流。2.NaOH/HO,BocO,DCM,室温。b)1.(COCl),DMSO,DCM,−78℃→−10℃。2.臭化ビニルマグネシウム,DCM,THF,室温。c)AcO,ピリジン,DCM,0℃→室温。d)NaIO,触媒RuCl,CHCN,EtOAc,HO。e)DCC,HOBt,DCM,17,0℃→室温。f)LiOH,MeOH,HO。g)HCl水溶液(37%),EtOH。
【0179】
【化7】

【0180】
試薬および条件:a)H,Pd/C,MeOH。b)NaH,NaI,PMB−Cl,THF。c)LiOH,MeOH,HO。d)n−C13COCl,TEA,DMAP,DCM,室温。e)f)
【0181】
【化8】

【0182】
試薬および条件:a)RCOCl,TEA,DMAP,DCM。b)LiOH,MeOH,HO。c)ROCOCl,NaHCO,HO,1,4−ジオキサン。
【0183】
【化9】

【0184】
試薬および条件:a)1.TBS−Cl,イミダゾール,DMF。2.H,Pd/C,メタノール。b)プリン,PPh,DIAD,THF。c)HCl水溶液(37%),EtOH。
【0185】
【化10】

【0186】
試薬および条件:a)t−Bu−COCl,TEA,DMAP,DCM。
【0187】
【化11】

【0188】
試薬および条件:a)NBD−F,EtOH,還流。
【0189】
【化12】

【0190】
試薬および条件:a)1.TFA,DCM。2.BnOCOCl,NaHCO,HO,1,4−ジオキサン。b)DCC,HOBt,1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン,DCM,0℃→室温。c)DCC,HOBt,13,DCM,0℃→室温。d)LiOH,MeOH,HO。e)HCl水溶液(37%),EtOH。f)H,Pd/C,MeOH。g)アセトン,MS3Å,NaCNBH,THF。h)1.LiOH,MeOH,HO。2.HCl水溶液(37%),EtOH。
【0191】
【化13】

【0192】
試薬および条件:a)DCC,HOBt,13,DCM,0℃→室温。b)LiOH,MeOH,HO。c)HCl水溶液(37%),EtOH。d)n−C−COCl,TEA,DMAP,DCM。
【0193】
【化14】

【0194】
試薬および条件:a)H,Pd/C,MeOH。b)NaH,NaI,PMB−Cl,THF。
【0195】
【化15】

【0196】
試薬および条件:a)EDC,DIPEA,チアゾリジン,DCM,0℃→室温。b)H,Pd/C,MeOH。c)DCC,HOBt,72,DCM,0℃→室温。d)LiOH,MeOH,HO。e)HCl水溶液(37%),EtOH。f)1.MsCl,TEA,DCM。2.KSAc,DMF,60℃。g)LiOH,MeOH,HO。h)HCl水溶液(37%),EtOH。
【0197】
【化16】

【0198】
試薬および条件:a)TFAA,ピリジン,DCM。b)1.SOCl,DMF。2.TEA,71,DCM。c)LiOH,MeOH,HO。d)DCC,HOBt,72,DCM,0℃→室温。e)LiOH,MeOH,HO。f)HCl水溶液(37%),EtOH。
【0199】
【化17】

【0200】
試薬および条件:a)BnOCOCl,NaHCO,HO,1,4−ジオキサン。b)DCC,HOBt,71,DCM,0℃→室温。c)H,Pd/C,MeOH。d)DCC,HOBt,72,DCM,0℃→室温。e)LiOH,MeOH,HO。f)HCl水溶液(37%),EtOH。
【0201】
【化18】

【0202】
試薬および条件:a)(1)TBS−Cl,イミダゾール,DMF。(2)NaCO,HO,メタノール。b)DPPA,TEA,トルエン,ベンジルアルコール。c)96,Pd(PPh,CsCO,DME。d)HCl水溶液(37%),EtOH。e)LiOH,MeOH,HO。f)62,DCC,HOBt,DCM。g)H,Pd/C,MeOH。
【0203】
【化19】

【0204】
試薬および条件:a)TEA,DCM。b)NaN,DMF,60℃。c)H,Pd/C,MeOH。d)DCC,HOBt,72,DCM,0℃→室温。e)LiOH,MeOH,HO。f)HCl水溶液(37%),EtOH。
【0205】
【化20】

【0206】
試薬および条件:a)Z−Cl,NaHCO,HO,1,4−ジオキサン。b)DCC,HOBt,103,DCM,0℃→室温。c)H,Pd/C,MeOH。d)DCC,HOBt,72,DCM,0℃→室温。e)LiOH,MeOH,HO。f)HCl水溶液(37%),EtOH。
【0207】
【化21】

【0208】
試薬および条件:a)DCC,DMAP,L−メントール,DCM,0℃→室温。
【0209】
【化22】

【0210】
試薬および条件:a)1.CHSOCl,TEA,DCM。2.KSAc,DMF。b)オキソン(登録商標),n−BuNOH,HO,メタノール。c)SOCl,DMF,DCM。d)1,4−ジアミノブタン,TEA,DCM。e)DCC,HOBt,72,DCM,0℃→室温。f)LiOH,MeOH,HO。
【0211】
一般手順A:DCCおよびHOBtを用いたペプチドカップリング
ジクロロメタン(1mmol当たり10ml)中のカルボン酸(1.0当量)の溶液を0℃に冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)およびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を加えた。この温度で1時間後、アミン(1.0当量)を加えて温度を周囲温度に上昇させた。懸濁液を18時間攪拌し、濾過に先立って、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。次にろ液をNaHCO飽和水溶液およびNaCl飽和水溶液で洗浄した。有機相を乾燥(MgSO)して蒸発させた。粗生成物をシリカ上でのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/ジエチルエーテルまたはジクロロメタン/酢酸エチル)により精製した。
【0212】
一般手順B:LiOHを用いたエステル分解
メタノール/水(9:1、1mmol当たり10ml)中のエステル(1.0当量)の溶液をLiOH・HO(5.0当量)で処理して、TLCコントロールが出発材料の消失を示すまで周囲温度で攪拌した。メタノールを蒸発させて、残渣を酢酸エチルと食塩水との間に分配させた。層を分離して、有機相を乾燥(MgSO)した。必要に応じて、適切な溶離液を用いてシリカ上でのフラッシュクロマトグラフィーにより粗生成物を精製した。
【0213】
一般手順C:EtOH中のHCl水溶液を用いたBoc脱保護
エタノールと塩酸(37%)との8:1混合物(1mmol当たり1.5ml)で、Boc保護化合物(1.0当量)を処理した。得られた溶液を、TLCコントロールが出発材料の消失を示すまで周囲温度で攪拌した。溶媒を蒸発させて、残渣を高真空中で乾燥した。得られたアミンは、その塩酸塩として得られた。
【0214】
一般手順D:酸塩化物でのN−およびO−アシル化
アミノおよび/またはヒドロキシル化合物(1.0当量)をジクロロメタン(1mmol当たり2.5ml)に溶解し、トリエチルアミン(アシル化可能な官能基当たり2.5当量)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(0.2当量)および酸塩化物(アシル化可能な官能基当たり2.0当量)を加えた。混合物を一晩撹拌した後、塩酸(1M、トリエチルアミン1mmol当たり2ml)でクエンチした。層を分離して、水層をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して蒸発した。粗生成物をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)により精製した。
【0215】
【化23】

【0216】
および(スキーム1):対応するO−ベンジル保護D−またはL−セリンまたは(5.00g、25.6mmol)をTHF(100ml)中のLiAlH(1.46g、38.5mmol)の懸濁液に徐々に加えた。得られた混合物を還流下で5時間加熱した後、0℃に冷却した。次に、過剰なLiAlHを10%NaOH水溶液(6ml)および水(6ml)でクエンチした。スラリーを周囲温度で30分間攪拌して、ジクロロメタン(20ml)中のBocO(6.15g、28.2mmol)を加えた。反応混合物を一晩撹拌し、短い経路のシリカによって濾過した。溶媒を蒸発させ、MTBEおよびペンタンからの再結晶により、生成物またはを与えた(8.18g)。
【0217】
【化24】

【0218】
および(スキーム1):ジクロロメタン(1mmol当たり3ml)中の塩化オキサリル(1.1当量)の溶液をドライアイス/アセトンで−78℃に冷却し、ジクロロメタン(1mmol当たり3ml)中のジメチルスルホキシド(2.4当量)の溶液を10分間にわたって加えた。混合物を15分間攪拌した後、ジクロロメタン(1mmol当たり3ml)中のまたは(1.0当量)の溶液を20分間にわたって加えた。混合物を30分間攪拌した後、エチル−ジイソプロピル−アミン(4.0当量)を加えた。温度を徐々に−10℃に上昇した後、反応混合物を再び−78℃に冷却した。両頭針の使用によって、冷たい混合物をビニル臭化マグネシウムの混合物(5.0当量、テトラヒドロフラン/ジクロロメタン1:1中の0.5M溶液)に移した。得られた混合物を周囲温度で1時間撹拌した後、KHSO(1M水溶液)でクエンチした。層を分離して、水相をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して蒸発した。出発材料からのエピマー性の生成物および(またはからのおよび)は、全収率57%で単離された(シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ペンタン/ジエチルエーテル)によるそれぞれの比率=3:1)。エピマー性およびおよびそれぞれは、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ペンタン/ジエチルエーテル)によって部分的に分離された。
【0219】
【化25】

【0220】
1011および12(スキーム1):テトラヒドロフラン(1mmol当たり2.5ml)中のまたは(1.0当量)の溶液を0℃に冷却して、ピリジン(4.0当量)、酢酸無水物(2.0当量)およびN,N−ジメチルアミノピリジン(0.2当量)を徐々に加えた。反応混合物を周囲温度で一晩撹拌した。溶液を塩酸水溶液(1mmol当たり10ml)に注ぎ入れ、層を分離した。水層を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層をNaHCO飽和水溶液で洗浄して乾燥(MgSO)した。溶媒を蒸発させ、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ペンタン/ジエチルエーテル)により、生成物が提供された。
【0221】
【化26】

【0222】
131415および16(スキーム1):アセトニトリル/酢酸エチル/水(2:2:3、1mmol当たり10ml)中の1011または12(1.0当量)の溶液をNaIO(4.0当量)およびRuCl水和物(0.02当量)で処理した。得られたスラリーを周囲温度で18時間撹拌した。NaCl(1mmol当たり10ml)飽和水溶液を加えて、混合物を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して、溶媒を蒸発した。得られた生成物をさらなる精製なしに使用した。
【0223】
【化27】

【0224】
一般手順Aを用いて、131415または16から181920および21(スキーム1)を得た。
【0225】
【化28】

【0226】
一般手順Bを用いて、181920または21から222324および25(スキーム1)を得た。
【0227】
【化29】

【0228】
一般手順Cを用いて、222324または25から262728および29(スキーム1)を得た。
【0229】
【化30】

【0230】
30(スキーム2):パラジウム炭素(10%、0.2当量)をメタノール(1mmol当たり10ml)中の18(1.0当量)の溶液に加えた。得られた懸濁液を水素雰囲気下で18時間攪拌した。固形分を短い経路のセライトを通じて濾過して、ろ液を蒸発させて30を得た。
【0231】
【化31】

【0232】
31(スキーム2):THF(1mmol当たり3ml)中の30(1.0当量)の冷却した(0℃)溶液に、水素化ナトリウム(60%、1.5当量)、ヨウ化ナトリウム(2.0当量)および塩化p−メトキシベンジル(4.0当量)を続けて加えた。反応混合物を周囲温度で19時間撹拌した。反応をNHCl(THF1ml当たり5ml)飽和水溶液でクエンチして、層を分離した。水層を酢酸エチルで2回抽出して、合わせた有機層を食塩水で洗浄した。乾燥(MgSO)および溶媒の蒸発後、31をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)により精製した。
【0233】
【化32】

【0234】
一般手順Bを用いて、31から32(スキーム2)を得た。
【0235】
【化33】

【0236】
一般手順Dを用いて、32およびオクタノイルクロリドから33(スキーム2)を得た。
【0237】
【化34】

【0238】
一般手順Cを用いて、32から3435との混合物(1:1)を得た。
【0239】
【化35】

【0240】
35(スキーム2):ジクロロメタン(1.5ml)中の32(26.7mg)の溶液をBBr(ジクロロメタン0.5ml中の1M溶液)で処理した。周囲温度で3時間後、メタノール(10ml)を加えて、揮発分を留去した。この手順を3回繰り返して、35(21.9mg)を得た。
【0241】
【化36】

【0242】
一般手順Dを用いて、26および塩化ブチリルから36(スキーム3)を得た。
【0243】
【化37】

【0244】
一般手順Dを用いて、26および塩化ヘキサノイルから37(スキーム3)を得た。
【0245】
【化38】

【0246】
一般手順Dを用いて、26および塩化オクタノイルから38(スキーム3)を得た。
【0247】
【化39】

【0248】
一般手順Dを用いて、26および塩化テトラデカノイルから39(スキーム3)を得た。
【0249】
【化40】

【0250】
一般手順Dを用いて、26および塩化ピバロイルから40(スキーム3)を得た。
【0251】
【化41】

【0252】
一般手順Bを用いて、36から41(スキーム3)を得た。
【0253】
【化42】

【0254】
一般手順Bを用いて、37および塩化ヘキサノイルから42(スキーム3)を得た。
【0255】
【化43】

【0256】
一般手順Bを用いて、38から43(スキーム3)を得た。
【0257】
【化44】

【0258】
一般手順Bを用いて、39から44(スキーム3)を得た。
【0259】
【化45】

【0260】
一般手順Bを用いて、40から45(スキーム3)を得た。
【0261】
【化46】

【0262】
46(スキーム3):水(1mmol当たり5ml)中の26(1.0当量)およびNaHCO(5.0当量)の溶液に、1,4−ジオキサン(1mmol当たり5ml)中のクロロ蟻酸ベンジル(2.5当量)の溶液を加えた。反応混合物を周囲温度で7時間攪拌した後、揮発分を蒸発した。残渣を酢酸エチルと水との間に分配させて、層を分離した。水層を酢酸エチルで2回抽出して、合わせた有機層を食塩水で洗浄した。乾燥(MgSO)および溶媒の蒸発後、46をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)により精製した。
【0263】
【化47】

【0264】
47(スキーム3):水(1mmol当たり5ml)中の26(1.0当量)およびNaHCO(5.0当量)の溶液に、1,4−ジオキサン(1mmol当たり5ml)中のクロロ蟻酸エチル(2.5当量)の溶液を加えた。反応混合物を周囲温度で7時間攪拌した後、揮発分を蒸発した。残渣を酢酸エチルと水との間に分配させて、層を分離した。水層を酢酸エチルで2回抽出して、合わせた有機層を食塩水で洗浄した。乾燥(MgSO)および溶媒の蒸発後、47をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)により精製した。
【0265】
【化48】

【0266】
48(スキーム4):N,N−ジメチルホルムアミド(1mmol当たり1ml)中の22(1.0当量)、イミダゾール(1.4当量)およびt−ブチルジメチルクロロシラン(1.2当量)の溶液を一晩攪拌して、短い経路のシリカによって濾過した(溶離液:ペンタン/ジエチルエーテル)。ろ液を蒸発させて、残渣をメタノール中に溶解させた。パラジウム炭素(10%、0.05当量)を加えて、懸濁液を水素雰囲気下で18時間攪拌した。反応混合物を濾過して蒸発した。48をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)により精製した。
【0267】
【化49】

【0268】
49(スキーム4):THF(1mmol当たり8ml)中の48(1.0当量)、プリン(1.5当量)およびトリフェニルホスフィン(3当量)の溶液を0℃に冷却して、ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(2.5当量)を加えた。混合物を24時間撹拌して、トリブチルホスフィン(3当量)およびジイソプロピルアゾジカルボキシラート(2.5当量)を加えた。さらに24時間後、溶液を食塩水に注ぎ入れ、酢酸エチルで3回抽出した。生成物をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/メタノール)により単離した。
【0269】
【化50】

【0270】
一般手順Cを用いて、49から50(スキーム4)を得た。
【0271】
【化51】

【0272】
一般手順Dを用いて、22および塩化ピバロイルから51(スキーム5)を得た。
【0273】
【化52】

【0274】
52(スキーム):エタノ−ル(1mmol当たり20ml)中の26(1.0当量)、4−フルオロ−7−ニトロベンゾフラザン(2.2当量)、およびN−エチルジイソプロピルアミン(4.2当量)の溶液を還流下で3分間で加熱した。揮発分を蒸発させて、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル)に供した。
【0275】
【化53】

【0276】
54(スキーム7):53(1.0当量)をトリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(1:1;1mmol当たり2ml)とともに周囲温度で4時間攪拌した後、揮発分を蒸発した。残渣を水(1mmol当たり5ml)およびNaHCO(2.5当量)に溶解して、1,4−ジオキサン(1mmol当たり5ml)中のクロロ蟻酸ベンジル(1.2当量)の溶液を加えた。反応混合物を17時間撹拌した後、溶媒を減圧で留去した。残渣を酢酸エチルと水との間に分配させて、層を分離した。水層を酢酸エチルで2回抽出して、合わせた有機層を食塩水で洗浄した。乾燥(MgSO)および溶媒の蒸発後、54をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)により精製した。
【0277】
【化54】

【0278】
55(スキーム7):ジクロロメタン(1mmol当たり10ml)中の54(1.0当量)の溶液を0℃に冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)およびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を加えた。この温度で1時間後、1,2−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン(5当量)を加えて温度を周囲温度に上昇させた。懸濁液を18時間攪拌して、濾過に先立って酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。ろ液をNaHCO飽和水溶液およびNaCl飽和水溶液で続けて洗浄した。有機層を乾燥(MgSO)して蒸発させた。55をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)により単離した。
【0279】
【化55】

【0280】
一般手順Aを用いて、55および13から56(スキーム7)を得た。
【0281】
【化56】

【0282】
一般手順Bを用いて、56から57(スキーム7)を得た。
【0283】
【化57】

【0284】
一般手順Cを用いて、57から58(スキーム7)を得た。
【0285】
【化58】

【0286】
59(スキーム7):パラジウム炭素(10%、0.05当量)をメタノール(1mmol当たり10ml)中の56(1.0当量)の溶液に加えた。得られた懸濁液を水素雰囲気下で1時間攪拌した。固形分を短い経路のセライトを通じて濾過して、ろ液を蒸発させて59を得た。
【0287】
【化59】

【0288】
60(スキーム7):THF(1mmol当たり20ml)中の59(1.0当量)およびアセトン(1.2当量)の溶液をモレキュラーシーブ3Å(0.3nm;1mmol当たり1g)とともに2時間攪拌した。シアノ水素化ホウ素ナトリウム(5.0当量)を加えて、反応を17時間継続した。NaHCO(1mmol当たり20ml)飽和水溶液を加えて、混合物を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して、蒸発後、60をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/メタノール)により単離した。
【0289】
【化60】

【0290】
一般手順Bを適用した後に一般手順Cを用いることにより、60から61(スキーム7)を得た。
【0291】
【化61】

【0292】
一般手順Aを用いて、62および13から63(スキーム8)を得た。
【0293】
【化62】

【0294】
一般手順Bを用いて、63から64(スキーム8)を得た。
【0295】
【化63】

【0296】
一般手順Cを用いて、64から65(スキーム8)を得た。
【0297】
【化64】

【0298】
一般手順Dを用いて、64および塩化ブチリルから66(スキーム8)を得た。
【0299】
【化65】

【0300】
67(スキーム9):パラジウム炭素(10%、0.2当量)をメタノール(1mmol当たり10ml)中の45(1.0当量)の溶液に加えた。得られた懸濁液を水素雰囲気下で18時間攪拌した。固形分を短い経路のセライトを通じて濾過して、ろ液を蒸発させて67を得た。
【0301】
【化66】

【0302】
68(スキーム9):THF(1mmol当たり3ml)中の67(1.0当量)の冷却した(0℃)溶液に、水素化ナトリウム(60%、2.5当量)、ヨウ化ナトリウム(4.0当量)および塩化p−メトキシベンジル(5.0当量)を続けて加えた。反応混合物を周囲温度で19時間撹拌した。反応をNHCl飽和水溶液(THF1ml当たり5ml)でクエンチして、層を分離した。水層を酢酸エチルで2回抽出して、合わせた有機層を食塩水で洗浄した。乾燥(MgSO)および溶媒の蒸発の後、68をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)により精製した。
【0303】
【化67】

【0304】
70(スキーム10):ジクロロメタン(1mmol当たり10ml)中の69(1.0当量)の溶液を0℃に冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.0当量)およびN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N′−エチルカルボジイミド(1.2当量)を加えた。この温度で1時間後、チアゾリジン(1.2当量)を加えて温度を周囲温度に上昇させた。懸濁液を塩酸(1mmol当たり2ml)の添加に先立って18時間撹拌した。層を分離して、水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して蒸発させた。粗生成物をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジエチルエーテル)により精製した。
【0305】
【化68】

【0306】
71(スキーム10):パラジウム炭素(10%、0.05当量)をメタノール(1mmol当たり10ml)中の70(1.0当量)の溶液に加えた。得られた懸濁液を水素雰囲気下で18時間攪拌した。固形分を短い経路のセライトを通じて濾過して、ろ液を蒸発させた。粗原料71をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)により精製した。
【0307】
【化69】

【0308】
一般手順Aを用いて、71および72から73(スキーム10)を得た。
【0309】
【化70】

【0310】
一般手順Bを用いて、73から74(スキーム10)を得た。
【0311】
【化71】

【0312】
一般手順Cを用いて、74から75(スキーム10)を得た。
【0313】
【化72】

【0314】
76(スキーム10):ジクロロメタン(1mmol当たり15ml)中の74(1.0当量)、トリエチルアミン(3.0当量)、塩化メシル(2.4当量)および4−N,N−ジメチルアミノピリジン(0.2当量)の溶液を周囲温度で一晩撹拌した。反応を塩酸(1M、1mmol当たり15ml)でクエンチし、層を分離して水層をジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して蒸発させた。粗生成物をDMF(1mmol当たり2ml)に溶解し、チオ酢酸カリウム(5当量)を加えた。反応混合物を60℃で不活性雰囲気下17時間撹拌した。水およびジクロロメタンを加えて、層を分離した。水層をジクロロメタンで2回抽出して、合わせた有機層を乾燥(MgSO)して蒸発させた。76をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)により精製した。
【0315】
【化73】

【0316】
一般手順Bを用いて、76から77(スキーム10)を得た。
【0317】
【化74】

【0318】
一般手順Cを用いて、77から78(スキーム10)を得た。
【0319】
【化75】

【0320】
80(スキーム11):ジクロロメタン(1mmol当たり1.5ml)中の79(1.0当量)の冷却した(0℃)懸濁液をピリジン(1.2当量)およびトリフルオロ酢酸無水物(1.1当量)で処理した。反応混合物を周囲温度で4時間撹拌した。塩酸(1M、1mmol当たり3ml)を加えて、層を分離した。水層を酢酸エチルで3回抽出して、合わせた有機層を乾燥(MgSO)して蒸発させた。粗生成物は、さらなる変換のために十分純粋であることを示した。
【0321】
【化76】

【0322】
81(スキーム11):DMF(1mmol当たり1ml)中の80(1.5当量)の溶液を塩化チオニル(2.25当量)で処理して、周囲温度で3時間撹拌した。反応をNaHCO飽和水溶液でクエンチして、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して減圧下蒸発させた。残渣をジクロロメタン(1mmol当たり10ml)中に溶解させて、71(1.0当量)およびトリエチルアミン(2.5当量)を加えて、混合物を一晩撹拌した。塩酸(1M、1mmol当たり3ml)を加えて、層を分離した。水層をジクロロメタンで2回抽出して、合わせた有機層を乾燥(MgSO)して蒸発した。81をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)により精製した。
【0323】
【化77】

【0324】
一般手順Bを適合させて、81から82(スキーム11)を得た。
【0325】
【化78】

【0326】
一般手順Aを用いて、82および72から83(スキーム11)を得た。
【0327】
【化79】

【0328】
一般手順Bを用いて、83から84(スキーム11)を得た。
【0329】
【化80】

【0330】
一般手順Cを用いて、84から85(スキーム11)を得た。
【0331】
【化81】

【0332】
87(スキーム12):水(1mmol当たり5ml)中の86(1.1当量)およびNaHCO(2.0当量)の溶液に、1,4−ジオキサン(1mmol当たり5ml)中のクロロ蟻酸ベンジル(1.0当量)の溶液を加えた。反応混合物を周囲温度で7時間攪拌した後、揮発分を蒸発させた。残渣を酢酸エチルと水との間に分配させて、層を分離した。水層を酢酸エチルで2回抽出して、合わせた有機層を食塩水で洗浄した。乾燥(MgSO)および溶媒の蒸発の後、粗生成物をMTBE/ペンタンから再結晶化した。
【0333】
【化82】

【0334】
一般手順Aを用いて、87および71から88(スキーム12)を得た。
【0335】
【化83】

【0336】
82(スキーム12):パラジウム炭素(10%、0.05当量)をメタノール(1mmol当たり10ml)中の70(1.0当量)の溶液に加えた。得られた懸濁液を水素雰囲気下で18時間攪拌した。固形分を短い経路のセライトを通じて濾過してろ液を蒸発させて、得られた生成物82をさらなる精製なしに用いた。
【0337】
【化84】

【0338】
一般手順Aを用いて、89および72から90(スキーム12)を得た。
【0339】
【化85】

【0340】
一般手順Bを用いて、90から91(スキーム12)を得た。
【0341】
【化86】

【0342】
一般手順Cを用いて、91から92(スキーム12)を得た。
【0343】
【化87】

【0344】
94(スキーム13):DMF(9ml)中の93(3,00g、9.06mmol)の溶液を塩化tert−ブチルジメチルシリル(3.28g、21.8mmol)およびイミダゾール(2.68g、39.8mmol)で3時間処理した。反応を1M塩酸でクエンチして、ジエチルエーテルで2回抽出した。合わせた有機層を蒸発させて、残渣を0.5MのKCO(MeOH/水3:1;100ml)とともに撹拌した。2時間後、濃縮塩酸でpH2に調整し、混合物をジエチルエーテルで抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して、溶媒を減圧下で蒸発させた。94(2.75g、68%)をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ペンタン/ジエチルエーテル)により得た。
【0345】
【化88】

【0346】
95(スキーム13):トルエン(20ml)中の94(2.51g、5.64mmol)、トリエチルアミン(934μl、6.77mmol)およびDPPA(1.34ml、6.20mmol)の溶液を80℃に加熱した。2時間後、ベンジルアルコール(1.75ml、16.9mmol)を加えて、加熱を3時間継続した。周囲温度に冷却後、水(100ml)を加えて混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して、溶媒を減圧下で蒸発させた。95(2.44g、78%)をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ペンタン/ジエチルエーテル)によって得た。
【0347】
【化89】

【0348】
97(スキーム13):DME(10ml)中の65(909mg、1.65mmol)、96(510mg、2.47mmol)およびCsCO(809mg、2.47mmol)の溶液を15分間の窒素でのパージによって脱ガスした。Pd(PPh(95mg、83μmol)を加えて、得られた混合物を封管中で120℃まで4時間加熱した。周囲温度に冷却後、1M塩酸(50ml)を加えて混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して、溶媒を減圧下で蒸発させた。97(865mg、96%)は、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ジエチルエーテル)によって得られた。
【0349】
【化90】

【0350】
一般手順Cを用いて、97から98(スキーム13)を得た。
【0351】
【化91】

【0352】
一般手順Bを用いて、97から99(スキーム13)を得た。
【0353】
【化92】

【0354】
一般手順Aを用いて、99および62から100(スキーム13)を得た。
【0355】
【化93】

【0356】
101(スキーム13):パラジウム炭素(10%、0.2当量)をメタノール(1mmol当たり10ml)中の100(1.0当量)の溶液に加えた。得られた懸濁液を水素雰囲気下で18時間攪拌した。固形分を短い経路のセライトを通じて濾過して、ろ液を蒸発させて101を得た。
【0357】
【化94】

【0358】
104(スキーム14):ジクロロメタン(5ml)中の102(282mg、0.986mmol)、103(144μl、1.18mmol)およびトリエチルアミン(206μl、1.50mmol)の溶液を周囲温度で一晩撹拌した。1M塩酸(10ml)を加えて混合物をジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して、溶媒を減圧下で蒸発させた。104(300mg、71%)をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ペンタン/ジエチルエーテル)により得た。
【0359】
【化95】

【0360】
105(スキーム14):DMF(7ml)中の104(299mg、0.7mmol)およびNaN(91mg、1.4mmol)の溶液を50℃で一晩撹拌した。周囲温度に冷却後、水(50ml)を加えて混合物をジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して、溶媒を減圧下で蒸発させて、純粋な105を得た(300mg、定量的)。
【0361】
【化96】

【0362】
106(スキーム14):パラジウム炭素(10%、0.2当量)をメタノール(1mmol当たり10ml)中の105(1.0当量)の溶液に加えた。得られた懸濁液を水素雰囲気下で18時間攪拌した。固形分を短い経路のセライトを通じて濾過して、ろ液を蒸発させて105を得た。
【0363】
【化97】

【0364】
一般手順Aを用いて、106および72から107(スキーム14)を得た。
【0365】
【化98】

【0366】
一般手順Bを用いて、107から108(スキーム14)を得た。
【0367】
【化99】

【0368】
一般手順Cを用いて、108から109(スキーム14)を得た。
【0369】
【化100】

【0370】
111(スキーム15):110(6.19g、60.1mmol)を水(25ml)およびNaHCO(5.55g、66.1mmol)に溶解して、1,4−ジオキサン(25ml)中のクロロ蟻酸ベンジル(8.12ml、57.1mmol)の溶液を加えた。反応混合物を17時間撹拌した後、溶媒を減圧で留去した。残渣を酢酸エチルと1M塩酸との間に分配させて、層を分離した。水層を酢酸エチルで2回抽出して、合わせた有機層を食塩水で洗浄して乾燥(MgSO)した。溶媒を蒸発させることで、純粋な111(12.8g、95%)が与えられた。
【0371】
【化101】

【0372】
一般手順Aを用いて、111および103から112(スキーム15)を得た。
【0373】
【化102】

【0374】
113(スキーム15):パラジウム炭素(10%、0.2当量)をメタノール(1mmol当たり10ml)中の112(1.0当量)の溶液に加えた。得られた懸濁液を水素雰囲気下で18時間攪拌した。固形分を短い経路のセライトを通じて濾過して、ろ液を蒸発させて113を得た。
【0375】
【化103】

【0376】
一般手順Aを用いて、113および72から114(スキーム15)を得た。
【0377】
【化104】

【0378】
一般手順Bを用いて、114から115(スキーム15)を得た。
【0379】
【化105】

【0380】
一般手順Cを用いて、115から116(スキーム15)を得た。
【0381】
【化106】

【0382】
117(スキーム16):ジクロロメタン(5ml)、L−メントール(103mg、660μmol)およびDMAP(44.3mg、363μmol)中の53(104mg、330μmol)の溶液を0℃に冷却し、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(88.6mg、429μmol)を加えた。この温度で1時間後、温度を周囲温度に上昇させた。懸濁液を18時間攪拌して、濾過に先立って酢酸エチル(25ml)で希釈した。ろ液を1M塩酸、NaHCO飽和水溶液およびNaCl飽和水溶液で続けて洗浄した。有機層を乾燥(MgSO)して蒸発した。粗生成物をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ペンタン/ジエチルエーテル)により精製して、117(122mg、82%)を得た。
【0383】
【化107】

【0384】
119(スキーム17):ジクロロメタン(20ml)中の118(2.05g、7.14mmol)の溶液を0℃に冷却した。トリエチルアミン(1.19ml、8.57mmol)および塩化メタンスルホニル(608μl、7.86mmol)を加えた。得られた混合物を周囲温度で2時間撹拌した。1M塩酸(20ml)を加えて、混合物をジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をDMF(6ml)に溶解して、KSAc(979mg、8.57mmol)を加えた。反応混合物を周囲温度で一晩撹拌した。混合物をジエチルエーテルと水との間に分配させて、層を分離した。水層をジエチルエーテルで2回抽出して、合わせた有機層を食塩水で洗浄して乾燥(MgSO)した。粗生成物をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離液:ペンタン/ジエチルエーテル)により精製して、119(1.84g、75%)を得た。
【0385】
【化108】

【0386】
120(スキーム17):水(160ml)中のオキソン(登録商標)(8.2g、13.3mmol)をメタノール(160ml)中の119(1.84g、5.33mmol)の溶液に加えて、周囲温度で30分間撹拌した。水(40ml)中のn−BuNOH(8.2ml 40%水溶液)を加えて、得られた溶液を一晩撹拌した。メタノールをほぼ完全に蒸発させて、水性残渣をジクロロメタンで4回抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄して乾燥(MgSO)した。溶媒を蒸発させることで、粗120(3.75g)が与えられ、これはさらなる精製なしに用いられた。
【0387】
【化109】

【0388】
122(スキーム17):ジクロロメタン中の120(200mg、337μmol)、DMF(98μl、1.35mmol)およびSOCl(52.2μl、675μmol)の溶液を周囲温度で一晩撹拌した。揮発分をすべて蒸発させて粗121を得て、これをジクロロメタン(10ml)中に溶解させた。1,4−ジアミノブタン(339μl、3.37mmol)を加え、得られた混合物を周囲温度で17時間撹拌した。反応をNaHCO飽和水溶液でクエンチし、層を分離して水層をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)して、溶媒を蒸発させることで粗122(81mg)を与え、これをさらなる精製なしに使用した。
【0389】
【化110】

【0390】
一般手順Aを用いて、122および72から123(スキーム17)を得た。
【0391】
【化111】

【0392】
一般手順Bを用いて、123から124(スキーム17)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、残基R1、R2、R3およびR4は、同一または異なってもよく、−H;−ハロゲン(すなわち、−F、−Cl、−Br、−I);1〜25個の炭素原子を有するアルキル{該アルキルは、直鎖もしくは分枝鎖、飽和または1つ、2つもしくはそれ以上不飽和(−C=C−二重結合および/もしくは−C≡C−三重結合)であるか、または非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または割り込まれていないか、もしくは残基−O−、−NH−、−NR5−、−S−、>C(=O)、−C(=O)O−、−O−C(=O)−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR5−、−NHC(=O)−、−NR5(C=O)−、>C(=S)、−C(=S)O−、−O−C(=S)−、−C(=S)NH−、−C(=S)NR5−、−NHC(=S)−、−NR5(C=S)−、−PH−、−PR5−、>P(=O)H、>P(=O)H、>P(=O)R5、>P(=O)(OH)、>P(=O)OR5のいずれかで割り込まれていてもよい。};3〜9環構成原子を有するシクロアルキル{該シクロアルキルは、飽和または1つ、2つもしくはそれ以上不飽和(−C=C−二重結合および/もしくは−C≡C−三重結合)であるか、または非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または−O−、非置換もしくはアルキル置換された−N<、−S−および−P<からなる群から選択されてもよい1つもしくはいくつかのヘテロ原子を環構造内に含んでいてもよい。};3〜9環構成原子を有するアリール{該アリールは、非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または−O−、非置換もしくはアルキル置換された−N<、−S−および−P<からなる群から選択されてもよい1つもしくはいくつかのヘテロ原子を環構造内に含んでもよい。};{該シクロアルキルおよび/もしくは該アリール基は、非縮合環系であるか、またはシクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環もしくはヘテロアリール環から選択される1つ、2つ、もしくはそれ以上の縮合環を含む環系を構成してもよい。};−OH、−OR5、−NH、−NHR5、−NR5R6、−C(=O)H、−C(=O)R5、−C(=O)OH、−C(=O)OR5、−C(=O)NH、−C(=O)NHR5、−C(=O)NR5R6、−NH−C(=O)H、−NR5(C=O)H、−NH−C(=O)R5、−NR5(C=O)R5、−C(=S)OH、−C(=S)OR5、−C(=S)NH、−C(=S)NHR5、−C(=S)NR5R6、−O−C(=O)H、−OC(=O)R5、−NH(C=O)R5、−NR5(C=O)R6、−C(=O)(NHOH)、−C(C=O)(NR5OH)、−C(C=O)(NR5OR6)、−C(C=O)NHOR5、−PH、−PHR5、−PR5R6、−P(=O)H、−P(=O)R5H、−P(=O)R5R6、−P(=O)(OH)、−P(=O)R5OH、−P(=O)OR5OR6からなる群から独立して選択される;
式中、R5およびR6は、同一または異なってもよく、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい;
Eは、−O−、−S−、−NH−または−NR7−から選択される基を表してもよい(式中、R7は、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい。);
Yは、−O−、−NH−、−NR8−、−S−、−CH−、−CHR8−および−CR8R9−から選択される群を表してもよい(式中、R8およびR9は、同一または異なってもよく、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい。);
Bは、一般式(II)を有する基を表してもよい:
【化2】

式中、Cy1は、3〜9環構成原子を有する(縮合系の場合、各部分環ごとに3〜9環構成原子を有する)縮合もしくは非縮合の、芳香族もしくは非芳香族の単素環系または複素環系{該単素環系または複素環系は、非芳香族基である場合、飽和または1つ、2つもしくはそれ以上不飽和(−C=C−二重結合および/もしくは−C≡C−三重結合)であってもよい。}を表してもよく、またCy1は、非置換であるか、または残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または−O−、非置換もしくはアルキル置換された−N<、−S−および−P<からなる群から選択されてもよい1つもしくはいくつかのヘテロ原子を環構造内に含んでもよく、またはCy1は、3〜9環構成原子を有する(縮合系の場合、各部分環ごとに3〜9環構成原子を有する)アリール{該アリールは、非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または−O−、非置換もしくはアルキル置換された−N<、−S−および−P<からなる群から選択されてもよい1つもしくはいくつかのヘテロ原子を環構造内に含んでもよい。該シクロアルキルおよび/もしくは該アリール基は、非縮合環系であるか、またはシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリール環から選択される1つ、2つもしくはそれ以上の縮合環を含む環系を構成してもよい}で置換されていてもよい;
Xは、単結合、−O−、−S−、−NH−、−NR10−、−CH−、−CHR10−、−CR10R11−、>C(=O)、>C(=S)、>C(=NH)、>C(=NR10)、−C(=O)O−、−C(=S)O−、−C(=NH)NH−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR10−、−O(C=O)−、−NH(C=O)−、−NR10(C=O)−、−O(C=S)−、−NH(C=S)−、または−NR10(C=S)−を表してもよい(式中、R10およびR11は、同一または異なってもよく、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい。);
kおよびlは、同一または異なってもよく、ゼロ(0)を表してもよくまたは1〜5の範囲の整数であってもよい;
Cは、一般式(III)を有する基を表してもよい:
【化3】

式中、mは、同一または異なってもよく、ゼロ(0)を表してもよく、または1〜5の範囲の整数であってもよい;
配列A−L1−J−L2は、全体として単結合であってもよく、または
Aは、存在しないか、上記にR1について定義される残基からなる群から選択されてもよく(ただし、炭素鎖は、1〜10個の炭素原子を有してもよい。);および
Jは、存在しないか、または1〜10個の炭素原子を有するアルキレン{該アルキレンは、直鎖または分枝鎖、飽和または1つ、2つもしくはそれ以上不飽和(−C=C−二重結合および/もしくは−C≡C−三重結合)であるか、または非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または割り込まれていないか、もしくは残基−O−、−NH−、−NR5−、−S−、>C(=O)、−C(=O)O−、−O−C(=O)−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR5−、−NHC(=O)−、−NR5(C=O)−、>C(=S)、−C(=S)O−、−O−C(=S)−、−C(=S)NH−、−C(=S)NR5−、−NHC(=S)−、−NR5(C=O)−、−PH−、−PR5−、>P(=O)H、>P(=O)H、>P(=O)R5、>P(=O)(OH)、>P(=O)OR5のいずれかで割り込まれていてもよい。};3〜9環構成原子を有するシクロアルキレン{該シクロアルキレンは、飽和または1つ、2つもしくはそれ以上不飽和(−C=C−二重結合および/もしくは−C≡C−三重結合)であるか、または非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または−O−、非置換もしくはアルキル置換された−N<、−S−および−P<からなる群から選択されてもよい1つもしくはいくつかのヘテロ原子を環構造内に含んでいてもよい。};3〜9環構成原子を有するアリーレン{該アリーレンは、非置換であるか、もしくは残基R1、R2、R3および/もしくはR4のいずれかで置換されていてもよく、および/または−O−、非置換もしくはアルキル置換された−N<、−S−および−P<からなる群から選択されてもよい1つもしくはいくつかのヘテロ原子を環構造内に含んでいてもよい。};{該シクロアルキレン基および/もしくは該アリーレン基は、非縮合環系であるか、またはシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリール環から選択される1つ、2つ、もしくはそれ以上の縮合環を含む環系を構成してもよい。};−NH−、−NR5−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)R5−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR5−、−NH−C(=O)−、−NR5−C(=O)−、−C(=S)O−、−C(=S)R5−、−C(=S)NH−、−C(=S)NHR5−、−C(=S)NR5−、−NH−C(=O)−、−NR5−C(=O)−、−C(=O)(NHO)−、−C(=O)(NR5O)−、−PH−、−PR5−、−P(=O)H−、−P(=O)R5−、−P(=O)(OH)−、−P(=O)OR5−(式中、R5およびR6は、同一または異なってもよく、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい。)からなる群から選択されてもよく;
L1およびL2は、同一または異なってもよく、単結合を表すか、または−CH−、−O−、>C=O、−NH−、−NR12−、−S−、>C=S、−SO−、−C(=O)−O−、−C(=S)−O−、−C(=O)−S−、−C(=S)−S−、−C(=O)NH−、−C(=O)NR14−、−C(=S)NH−、−C(=S)NR14−、−C(=NH)−、−C(=NH)−NH−、−C(=NH)−NR14−、−C(=NR1)−NR14−(式中、R12、R13およびR14は、同一または異なってもよく、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい。)からなる群から各々独立して選択される基を表してもよい;
Dは、構造(IVa)および(IVb)のいずれかを表す:
【化4】

式中、Cy2は、単素環または複素環の非芳香族または芳香族の非縮合または1もしくは2環縮合して環化した構造要素であり、構造の残りに直接結合する{該構造要素は、複素芳香族残基の場合、環構成原子として基−N=、−NH−、−NR1−、−S−、−O−、−S(=O)−、−S(=O)−、−P=、−PH−、−PR15−、−P(=O)−、−OP(=O)−および−P(=O)O−を含有してもよく、そのCy2の炭素またはヘテロ原子原子団は、それぞれ構造ユニットであるC(IVa)および=A2(IVb)への接続単位であってもよい。また、非芳香族基Cy2の場合、Cy2を構成する環構造は、飽和であってもよく、部分的に不飽和であってもよく、非置換であるか、または脂環式残基および芳香族残基の置換基として上記に定義された置換基のいずれかにより、任意の化学的に可能な位置で1つ、2つもしくはそれ以上置換されていてもよく、またCy2は、3〜9環構成原子(縮合系の場合、各部分環ごとに3〜9環構成原子)を含んでもよい。};
A2は、=C、=CH、=CR16、−O−、−S−、−NH−および−NR16−から選択される基を表してもよい(式中、R15およびR16は、同一または異なってもよく、R1、R2、R3およびR4により上記に定義される残基の群から選択されてもよい。)。]
の化合物。
【請求項2】
前記化合物は、下記の表1:
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

の化合物から選択される、請求項1に記載の一般式(1)を有する化合物。
【請求項3】
請求項1および2のいずれかに記載の化合物の少なくとも1つを含む医薬。
【請求項4】
ジペプチジルペプチダーゼIVおよび/もしくは類似酵素効果を有するペプチダーゼならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および/もしくは類似酵素効果を有するペプチダーゼのデュアルインヒビターもしくは中心孔結合リガンドとしての使用、またはジペプチジルペプチダーゼIVおよび/もしくは類似酵素効果を有するペプチダーゼもしくはアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および/もしくは類似酵素効果を有するペプチダーゼの単独インヒビターもしくは中心孔結合リガンドとしての使用のための、請求項1および2のいずれかに記載の化合物の少なくとも1つを含む、薬剤。
【請求項5】
DNA合成および炎症性サイトカイン産生の抑制ならびにインビトロおよびインビボでの抗炎症性サイトカイン産生の刺激における使用のための、請求項1および2のいずれかに記載の化合物の少なくとも1つを含む、薬剤。
【請求項6】
自己免疫疾患の予防または治療、または動脈硬化症、神経疾患、脳損傷、皮膚病、腫瘍疾患、移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患(GvHD)およびウイルスもしくは細菌による疾患を含む過剰な免疫応答および/もしくは炎症発生を伴う疾患の予防または治療のための、請求項1および2のいずれかに記載の化合物の少なくとも1つを含む、薬剤。
【請求項7】
前記疾患または症状は、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性結腸炎、1型糖尿病、関節リウマチ、動脈硬化症、動脈炎、ステント再狭窄および他の自己免疫疾患ならびに炎症性疾患である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項8】
前記疾患または症状は、腫瘍および転移である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項9】
前記疾患または症状は、皮膚および粘膜に関する疾患、乾癬、ざ瘡、ならびに線維芽細胞の過剰増殖および分化が変性した症状を伴う皮膚科学的な疾患、良性線維化、硬化性皮膚病および線維芽細胞の悪性の過剰増殖症状である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項10】
前記疾患または症状は、気管支喘息および他のアレルギー性疾患ならびに慢性閉塞性肺疾患(COPD)である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項11】
前記疾患または症状は、急性神経疾患、虚血もしくは出血性卒中後の虚血による脳損傷、頭蓋脳損傷、心停止、心臓発作、または心臓手術介入の結果としての疾患または症状、たとえばアルツハイマー病の慢性神経疾患、ピック病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭認知症、パーキンソン病、特に第17番染色体にカップリングしたパーキンソニズム、ハンチントン病、プリオンによる症状もしくは疾患および筋萎縮性側索硬化症である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項12】
前記疾患または症状は、骨髄、腎臓細胞、心臓細胞、肝臓細胞、膵臓細胞、皮膚細胞または幹細胞などの同種移植または異種移植した臓器、組織および細胞、ステント、関節インプラント(膝関節インプラント、股関節インプラント)、骨インプラント、心臓ペースメーカーまたは他のインプラント、血管バルーンの拒絶反応ならびに移植片対宿主疾患(GvHD)である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項13】
前記疾患または症状は、マラリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)、敗血症および敗血症様症状などの炎症性感染症疾患である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項14】
1つ以上の医薬上許容されるキャリア、補助物質および/またはアジュバントと組合される、請求項1または2に記載の一般式(1)の化合物。
【請求項15】
請求項1または2に記載の一般式(I)の化合物の少なくとも1つを含有し、随意に1つ以上の医薬上許容されるキャリア、補助物質および/またはアジュバントと組合される、医薬製剤。
【請求項16】
少なくとも1つのさらなる医薬上有効な化合物をさらに含む、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
請求項1または2に記載の一般式(I)の化合物の少なくとも1つを含有し、随意に1つ以上の化粧料として許容されるキャリア、補助物質および/またはアジュバントと組合される、化粧料製剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−31170(P2012−31170A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−162967(P2011−162967)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(505008187)イーエムテーエム ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】