説明

ロボットハンド

【課題】把持体を回転させるための駆動源を定位置に設置することができ、被把持物配置予定位置周りで把持体を無制限に回転させることのできるロボットハンドを提供する。
【解決手段】把持体61を移動させる第一駆動部62と、把持体を回転させる第二駆動部63とを備え、第一駆動部は、スライドシャフト64と、駆動源の出力でスライドシャフトを軸線方向に往復動させるスライド手段65と、先端部に把持体が連結された回転レバー66と、回転レバーを回転可能に支持し、所定位置に位置した状態でスライドシャフトの一端部周りで回転自在に設けられた支持体67とを備え、第二駆動部は、駆動源の出力を支持体に伝達し、支持体をスライドシャフト周りで回転させる伝達機構とを備え、スライドシャフトは、支持体に支持された回転レバーの基端部を収容する無端円環状の溝が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータのアーム機構に装着されるロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、製造分野や医療分野等の各種分野において、人間の作業を代替するマニピュレータが導入されている。かかるマニピュレータは、姿勢変更可能なアーム機構と、アーム機構の先端に装着される作業ツールとを備え、アーム機構を姿勢変更させることで、該アーム機構の先端部に装着された作業ツールを作業位置に配置できるようになっている。
【0003】
ところで、作業ツールには、作業内容に応じた種々のものが提供されており、その一つとして、被把持物を把持するロボットハンドが広く普及している。
【0004】
かかるロボットハンドは、被把持物が配置される被把持物配置予定位置周りに等間隔又は略等間隔で配置された二つ以上の把持体と、各把持体を被把持物配置予定位置の中心に向けて移動させる駆動部とを備えている。
【0005】
駆動部は、回転を出力するモータや直線的な運動を出力するアクチュエータ等の駆動源と、該駆動源の出力を受けて把持体を移動させる駆動機構とを備えている。そして、駆動機構として、先端部に把持体が連結されるレバーと、該レバーを所定の軸線周りで回転可能に支持する支持体と、レバーの基端側が作動的に連結され、レバーの回転中心となる前記軸と直交する方向(被把持物配置予定位置の中心を通る軸線方向)に移動可能に設けられた移動体とを備えたものが提供されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
そして、前記駆動部は、移動体を軸線方向に移動させるべく駆動源が支持体に直接的又は間接的に固定され、前記移動体がレバーの回転中心よりも基端側にある端部を回転可能に支持したり、レバーの途中位置に回転自在に連結されたリンク体に回転可能に連結されたりしている。そして、この種の駆動部は、直線的な運動を出力するアクチュエータ(例えば、電動シリンダやエアシリンダ)のロッドが移動体に直結されたり、駆動源であるモータの出力で回転する雄ネジ体に移動体が螺合されたりしており、駆動源の出力を受けて移動体がレバーの回転中心となる軸と直交する方向に往復動するように構成されている。
【0007】
これにより、この種のロボットハンドは、駆動源の出力(駆動)で移動体を移動させることでレバーを軸線周りで回転させ、該レバーの先端部に連結された把持体を被把持物配置予定位置の中心側に移動させるようになっている。
【0008】
そして、この種のロボットハンドには、把持体間に設定される被把持物配置予定位置の中心を回転中心にして各把持体を回転させるように構成されたものが提供されている(例えば、特許文献2)。
【0009】
かかるロボットハンドは、把持体を回転させるときに支持体とともに駆動源が回転し、駆動源に接続された電力ケーブルやエアホース等のエネルギー供給ラインが駆動源全体の回転に伴って捩れてしまい、把持体を無制限に回転させることができないとして、エネルギー供給ラインの途中にロータリージョイントが介設されている。すなわち、上記構成のロボットハンドは、エネルギー供給ラインにロータリージョイントを介設することで、エネルギー供給ラインの捻りの発生を防止し、支持体及び駆動源の連続的な回転を許容するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭60−39089号公報
【特許文献2】実開平3−65687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、駆動源に接続されるエネルギー供給ラインの途中にロータリージョイントを介設すると、トラブル原因となってしまう。すなわち、エネルギー供給ラインが電力ケーブルである場合、ロータリージョイントで接点不良が起こり易くなり、エネルギー供給ラインがエアホースである場合、ロータリージョイントでエア漏れを起こし易くなるため、これらの不具合が発生すると把持体で被把持物を把持できなくなる虞がある。
【0012】
特に、作業者が遠隔操作を行う救助用ロボット(作業者が近寄ることが困難な環境で使用するロボット)のように緊急性を要する分野で使用する場合、ロボットハンドの故障原因となる構成を排除することが要求される。また、上述の如く、エネルギー供給ラインの途中にロータリージョイントを設けると、ロボットハンド内の各構成のレイアウトを制限して大型化の原因となり、救助用ロボットのように各構成のコンパクト化が要求される分野で相応しいものにならない。
【0013】
そこで、本発明は、把持体を回転させるための駆動源を定位置に設置することができ、被把持物配置予定位置周りで把持体を無制限に回転させることのできるロボットハンドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るロボットハンドは、被把持物が配置される被把持物配置予定位置周りに等間隔又は略等間隔で配置された二つ以上の把持体と、各把持体を被把持物配置予定位置の中心に向けて移動させる第一駆動部と、各把持体を被把持物配置予定位置周りで回転させる第二駆動部とを備え、マニピュレータのアーム機構に装着されるロボットハンドであって、第一駆動部は、一方向に延びるスライドシャフトと、駆動源を有し、該駆動源の出力でスライドシャフトを軸線方向に往復動させるスライド手段と、先端部に把持体が連結された回転レバーと、該回転レバーをスライドシャフトと直交する方向に延びる軸線周りで回転可能に支持し、所定位置に位置した状態でスライドシャフトの一端部周りで回転自在に設けられた支持体とを備え、第二駆動部は、駆動源と、該駆動源の出力を支持体に伝達し、該支持体をスライドシャフト周りで回転させる伝達機構とを備え、スライドシャフトは、支持体に支持された回転レバーの基端部を収容する無端円環状の溝が一端部の外周に形成されていることを特徴とする。
【0015】
上記構成のロボットハンドによれば、第一駆動部(スライド手段)の駆動源の出力でスライドシャフトが移動(スライド)すると、スライドシャフトの溝に収容された回転レバーの基端部がスライドシャフトの移動に対応して押し引きされることになる。従って、スライドシャフトが他端側にスライドすると回転レバーの基端部が引かれ、回転レバーは軸線周りで回転し、該回転レバーの先端部に連結された把持体が被把持物配置予定位置の中心側に向けて移動することになる。これとは逆に、スライドシャフトが一端側にスライドすると回転レバーの基端部が押され、回転レバーは軸線周りで回転し、該回転レバーの先端部に連結された把持体が被把持物配置予定位置の中心側から外方に向けて移動することになる。従って、被把持物配置予定位置(把持体間)に被把持物を配置した上で、上述の如く、把持体を移動させることで、把持体が被把持物を把持した状態と、被把持物の把持を解除した状態に切り替えることができる。
【0016】
また、上記構成のロボットハンドによれば、把持体が被把持物を把持した状態、或いは、被把持物の把持を解除した状態で、第二駆動部の駆動源を作動させると、伝達機構を介して駆動源の出力が支持体に伝達され、支持体がスライドシャフト周りで回転することになる。このとき、支持体に支持された回転レバーが支持体と同心で回転することになる。すなわち、上記構成のロボットハンドは、スライドシャフトの一端部に形成された無端環状の溝内に回転レバーの基端部が収容されているため、支持体が回転すると回転レバーの基端部がスライドシャフトの溝内で周方向に移動することになる。これにより、上記ロボットハンドは、被把持物の把持の有無に関係なく、支持体が無制限(連続的)に回転することができるため、該支持体に支持され回転レバーの先端部に連結された把持体についても、無制限(連続的)に回転することができる。そして、上述の如く、第一駆動部及び第二駆動部の何れの駆動源も回転する支持体に固定されないため、駆動源に電力やエアを供給するエネルギー供給ラインが捩れることがない。従って、エネルギー供給ライン上の接点不良やエア漏れ等のロボットハンドの故障原因となる構成が排除される。
【0017】
本発明の一態様として、前記スライドシャフトには一端面上で開放した穴が形成されるとともに該穴に撮像素子が内装され、撮像素子は、撮影中心が被把持物配置予定位置の中央と一致又は略一致するように設けられていることが好ましい。このようにすれば、把持体との配置関係が明らかな映像を得ることができ、撮像素子からの映像を基に容易に被把持物を把持することができる。また、被把持物を把持するときに被把持物の映像(撮像素子からの映像)をモニタの中央に移すことができ、状況を容易に把握することができる。
【0018】
本発明の他態様として、第一駆動部は、スライドシャフトの他端に連設された雄ネジ体と、該雄ネジ体に螺合された螺合部材と、駆動源としてのモータと、該モータの出力を螺合部材に伝達して該螺合部材を回転させる伝達機構とを備えてもよい。このようにすれば、駆動源の出力で螺合部材が回転すると、雄ネジ体が軸線方向に移動することになる。従って、雄ネジ体に連結されたスライドシャフトも軸線方向に移動するため、把持体を移動させて被把持物の把持とその解除とを円滑に切り替えることができる。
【0019】
本発明の別の態様として、第二駆動部の伝達機構は、駆動源としてのモータの出力トルクを所定トルク以下で支持体に伝達するトルクガードを備えていることが好ましい。このようにすれば、被把持物を把持した上で把持体を回転させようとしたときに、把持体を必要以上に回転させることを防止することができる。例えば、ドアノブを操作して閉ざされたドアを開く場合、ドアノブを把持した状態を維持しつつ、駆動源の出力を支持体に伝達すると、支持体がスライドシャフト周りで回転することになり、該支持体に支持された回転レバーについても支持体と一体的になってスライドシャフト周りで回転し、所定の負荷が作用すると、駆動源(モータ)が回転し続けても所定トルクだけが支持体に伝わることになる。
【0020】
従って、把持体が把持したドアノブが回転限界まで回転したとしても、それ以上ドアノブを回転させることがないため、ドアノブを破損させてドアを開放できなくなることはない。すなわち、ドアノブの回転限度やロックの解除される回転範囲は、メーカーによって異なるため、把持体の回転範囲を一定範囲に設定すると、回転限界にあるドアノブに過度なトルクがかかって該ドアノブを破損させたり、ドアノブの回転量が不足してロックが解除できなかったりすることがあるが、上記構成によれば、把持体が無制限に回転でき、且つ把持体のトルク管理を行うようにしているため、如何なるメーカーのドアノブであっても破損させることなく開放することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明のロボットハンドによれば、把持体を回転させるための駆動源を定位置に設置することができ、被把持物配置予定位置周りで把持体を無制限に回転させることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るマニピュレータを搭載した救助用ロボットの全体側面図を示す。
【図2】同実施形態に係る救助用ロボットのアーム機構を延ばした状態の全体図であって、(a)は、側面図を示し、(B)は、背面図を示す。
【図3】同実施形態に係るアーム機構の一構成であるアーム体(第一アーム体)の縦断面図を示す。
【図4】同実施形態に係るアーム機構の概略部分横断面図であって、第一アーム体の一端部及び基台を含む概略部分横断面図を示す。
【図5】同実施形態に係るアーム機構及び作業ツールの連結ベースの一部を含む概略部分横断面図を示す。
【図6】同実施形態に係る作業ツールの連結ベースを除いた概略部分横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係るマニピュレータについて、添付図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態においては、災害現場での救助作業用に導入される救助用ロボットに採用される場合を一例に説明することとする。
【0024】
本実施形態に係る救助用ロボットは、図1及び図2に示す如く、走行台車2と、前記走行台車2上に搭載されたマニピュレータユニット3とを備えている。
【0025】
走行台車2は、シャーシフレーム20と、シャーシフレーム20に連結された走行装置21とを備えている。本実施形態に係る救助用ロボット1は、劣悪な環境下で走行することが要求されるため、本実施形態に係る走行台車2は、シャーシフレーム20の前後左右の四カ所に走行装置21としてのクローラ(無限軌道)が設けられている。かかるクローラ21は、前後方向に間隔をおいて配置された動輪22,22に対してクローラベルト23が掛け渡されたもので、動輪22,22の回転でクローラベルト23を回転させて走行するようになっている。本実施形態に係るクローラ21は、一方の動輪22を中心にして全体が回転可能になっており、走行環境に応じて姿勢を変更させてクローラベルト23を接地させるようになっている。
【0026】
前記マニピュレータユニット3は、走行台車2のシャーシフレーム20に対して着脱可能に構成されたベース4と、ベース4上に搭載されるマニピュレータ5とを備えている。また、本実施形態に係るマニピュレータユニット3は、走行台車2に搭載された状態で前方側になるベース4の一端部に吸引装置Vが搭載されている。
【0027】
前記ベース4は、走行台車2のシャーシフレーム20上に配置されるもので、シャーシフレーム20に対して着脱可能に構成されている。そして、ベース4の上面には、マニピュレータ5を連結するための基台40が取り付けられている。
【0028】
本実施形態に係る基台40は、ベース4の上面に固定されたメイン基台41と、走行台車2の前後方向と一致する方向に延びる連結軸42を介してメイン基台41に連結されたサブ基台43とを備えている。かかるサブ基台43は、ベース4上に搭載された駆動源(図示しない)からの駆動を受けることで、連結軸42を中心にして傾動するようになっている。すなわち、サブ基台43は、走行台車2の前後方向と一致する方向に対して直交する方向(左右幅方向)に傾動するようになっている。
【0029】
前記マニピュレータ5は、一方向に延びるアーム体500,501を少なくとも一つ備え、基端部が基台40に対して連結される一方、先端部に作業ツール6が装着されるアーム機構50と、アーム機構50を姿勢変更させるアーム駆動機構51,52(図3参照)とを備えている。
【0030】
そして、アーム体500,501は、両端部が一方向に対して直交する他方向に向けて延びる軸S1、S2を介して基端側の部材40(43)及び先端側の部材6,501に連結され、アーム体500,501と該アーム体500,501の両端部に連結された部材とが軸S1,S2を中心にして相対的に回転可能に構成されている。
【0031】
本実施形態に係るアーム機構50は、図2(a)及び図2(b)に示す如く、二つのアーム体500,501を備えている。各アーム体500,501は、一方向に長手をなした箱状に形成されている。二つのアーム体500,501は、一方の端部同士が一方向と直交する他方向に延びる軸S2周りで相対回転可能に連結されている。従って、本実施形態に係るアーム機構50は、一方のアーム体(以下、第一アーム体という)500が基台40に連結され、他方のアーム体(以下、第二アーム体という)501に作業ツール6が装着されるようになっている。より具体的に説明すると、本実施形態に係るアーム機構50は、第一アーム体500の長手方向の一端部が基台40(サブ基台43)に対して連結され、該第一アーム体500の長手方向の他端部が先端側の部材である第二アーム体501の長手方向の一端部に連結されている。また、該アーム機構50は、第二アーム体501の他端部に先端側の部材である作業ツール6が連結されている。
【0032】
アーム駆動機構51,52は、図3に示す如く、アーム機構50を構成するアーム体500に内装されている。本実施形態に係るマニピュレータ5は、アーム機構50の最も基端側に位置する第一アーム体500にアーム駆動機構51,52が内装されている。より具体的には、本実施形態に係るマニピュレータ5は、アーム駆動機構51,52を二組備えており、一方のアーム駆動機構(以下、第一アーム駆動機構という)51が第一アーム体500内の一端側(アーム機構50の基端側)に配置される一方、他方のアーム駆動機構(以下、第二アーム駆動機構という)52が第一アーム体500内の他端側(アーム機構50の先端側)に配置されている。
【0033】
第一アーム駆動機構51及び第二アーム駆動機構52は、一方向(第一アーム体500の長手方向)に間隔をあけて配置されるとともに一方向と直交する他方向に延びる軸線周りで回転可能に軸支された一対の回転体(以下、一方の回転体を第一回転体510,520といい、他方の回転体を第二回転体511,521という)510,520,511,521と、第一回転体510,520と第二回転体511,521とに掛け渡される無端環状体(以下、駆動ベルトという)512,522と、駆動モータM1,M2に回転駆動されるスクリューシャフト513,523と、スクリューシャフト513,523に螺合されるとともに駆動ベルト512,522の一部が固着されたスライダ514,524とを備えている。
【0034】
第一アーム駆動機構51及び第二アーム駆動機構52は、第一回転体510,520及び第二回転体511,521に対する駆動ベルト512,522の回転力の伝達を確実にすべく、駆動ベルト512,522に歯付きベルトが採用されている。これに伴い、第一回転体510,520及び第二回転体511,521には、歯付きプーリーが採用されている。また、第一アーム駆動機構51及び第二アーム駆動機構52は、スクリューシャフト513,523とスライダ514,524とを螺合させるネジ構造として台形ネジが採用されている。すなわち、スクリューシャフト513,523は、台形ネジからなる雄ネジが形成され、スライダ514,524には台形ネジからなる雌ネジが形成されている。
【0035】
そして、第一アーム駆動機構51及び第二アーム駆動機構52は、第二回転体511,521が第一回転体510,520よりも小径に設定されている。そして、第一アーム駆動機構51及び第二アーム駆動機構52は、駆動ベルト512,522の第一回転体510,520と第二回転体511,521との間にある二つの対向部512a,512b,522a,522bのうちの一方の対向部512a,522aの外周側が巻き掛けられ、第一回転体510,520に対する駆動ベルト512,522の巻き掛け量を半周以上にして二つの対向部512a,512b,522a,522bを平行又は略平行にするアイドラ(以下、第一アイドラという)515,525を備えている。
【0036】
そして、第一アーム駆動機構51及び第二アーム駆動機構52は、スクリューシャフト513,523が対向部512a,512b,522a,522bと平行又は略平行をなして一方の対向部512a,522aの外周面と対向するように配置されている。
【0037】
第一アーム駆動機構51及び第二アーム駆動機構52は、第一回転体510,520がアーム体500,501の端部に配置されるとともに、第一回転体510,520と第二回転体511,521との間にある駆動ベルト512,522における二つの対向部512a,512b,522a,522bのうちの他方の対向部512b,522bの外周面が巻き掛けられて第一回転体510,520に対する駆動ベルト512,522の巻き掛け量を多くする別のアイドラ(以下、第二アイドラという)516,526を備えている。
【0038】
これに伴い、駆動モータM1,M2は、スクリューシャフト513,523に対して出力軸が同心になるように連結され、アーム体500の両端部にある第一回転体510,520の中心間を結ぶ仮想線(図示しない)を基準にして反対側のアーム駆動機構51,52のスクリューシャフト513,523と対称的に配置されている。
【0039】
すなわち、本実施形態に係るマニピュレータ5は、異なるアーム駆動機構51,52の駆動モータM1,M2とスクリューシャフト513,523とが前記仮想線を基準にした対称的な領域に配置されている。従って、本実施形態において、第一アーム駆動機構51の駆動モータM1が、第二アーム駆動機構52が配置される第一アーム体500の他端側の領域において、第二アーム駆動機構52の駆動ベルト522を挟んで該第二アーム駆動機構52のスクリューシャフト523と対称的に配置され、第二アーム駆動機構52の駆動モータM2が、第一アーム駆動機構51が配置される第一アーム体500の一端側の領域において、第一アーム駆動機構51の駆動ベルト512を挟んで該第一アーム駆動機構51のスクリューシャフト513と対称的に配置されている。
【0040】
ここで第一アーム駆動機構51及び第二アーム駆動機構52のそれぞれについて具体的に説明すると、第一アーム駆動機構51は、図4に示す如く、第一回転体510の回転中心となる軸(以下、第一関節軸という)S1を備えている。第一関節軸S1は、第一アーム体500と基端側の部材である基台40(サブ基台43)とを相対回転可能に連結している。すなわち、第一アーム体500と基台40(サブ基台43)は第一関節軸S1を介して連結されている。
【0041】
ここで具体的に説明すると、第一関節軸S1は、第一アーム体500の長手方向と直交する他方向に延びている。そして、第一関節軸S1は、第一アーム体500内に配置された第一回転体510に連結されており、軸受(採番しない)を介して第一アーム体500に対して回転自在に軸支される一方、第一アーム体500から外方に突出して基台40(サブ基台43)に固定されている。すなわち、第一関節軸S1は、基端部が基台40(サブ基台43)に固定されて外方に延出しており、第一アーム体500の側壁部に対して回転自在に挿通された上で、第一アーム体500内にある先端部に第一アーム駆動機構51の第一回転体510が同心で連結されている。これにより、第一アーム駆動機構51は、駆動ベルト512,522の周回による第一回転体510の回転力を基台40(サブ基台43)に伝達し、アーム体500,501を第一関節軸S1周りで回転(傾動)させるようになっている。
【0042】
これに対し、第二アーム駆動機構52は、図5に示す如く、第一回転体520の回転中心となる軸(以下、第二関節軸S2という)を備えている。第二関節軸S2は、第一アーム体500と先端側の部材である第二アーム体501とを相対回転可能に連結している。
【0043】
具体的に説明すると、第二関節軸S2は、第一アーム体500の長手方向と直交する他方向に延びている。すなわち、第二関節軸S2は、第一関節軸S1と同方向に延びている。第二関節軸S2は、第一アーム体500内に配置された第一回転体520に同心で連結されており、第一アーム体500(後述する中心支持軸S2’)に対して回転自在に軸支される一方、第一アーム体500から外方に突出して先端側の第二アーム体501に固定されている。すなわち、第二間接軸S2は、基端部が第二アーム体501の側壁の外面に固定されて外方に延出しており、第一アーム体500の側壁に対して回転自在に挿通された上で、第一アーム体500内にある先端部に第二アーム駆動機構52の第一回転体520が同心で連結されている。
【0044】
本実施形態に係る第二関節軸S2は、中空軸で構成されており、第一アーム体500の内壁面に基端部の固定された中心支持軸S2’が同心で挿通され、軸受(採番しない)を介して中心支持軸S2’に回転自在に支持されている。なお、本実施形態において、第二関節軸S2に連結された第二アーム駆動機構52の第一回転体520についても、軸受(採番しない)を介して中心支持軸S2’に回転自在に支持されている。これにより、第二アーム駆動機構52は、駆動ベルト522の周回による第一回転体520の回転力を第二アーム体501の一端部に伝達し、第一アーム体500と第二アーム体501とを第二関節軸S2周りで相対的に回転(傾動)させるようになっている。
【0045】
本実施形態に係るアーム機構50は、折り畳んだ状態で、第一アーム体500と第二アーム体501とが重なった姿勢になるようになっている。すなわち、アーム機構50を構成する二つのアーム体500,501(第一アーム体500及び第二アーム体501)は、第一アーム体500の先端部(他端部)の側面に第二アーム体501の基端部(一端部)の側面が重なり合った状態で両アーム体500,501の一端部と他端部とが軸(第二関節軸S2)を介して連結されている。これにより、本実施形態に係るアーム機構50は、第二関節軸S2を中心にして第一アーム体500と第二アーム体501とを互いに傾動(回転)させることで、両アーム体500,501が横方向(傾動中心となる第二関節軸S2の延びる方向)で重なり合った配置になる様に構成されている。
【0046】
そして、本実施形態に係るアーム機構50は、両アーム体500,501が水平方向に延びた姿勢を基本姿勢に設定されている。これに伴い、第一アーム駆動機構51及び第二アーム駆動機構52は、アーム機構50が基本姿勢であるときのスライダ514,524の位置が原点として設定されている。従って、第一アーム駆動機構51及び第二アーム駆動機構52は、図3に示す如く、何れも原点にあるスライダ514,524を検知するセンサ(以下、原点センサという)Cを備えている。
【0047】
本実施形態に係るマニピュレータ5は、図5に示す如く、第二アーム体501の他端部に連結された作業ツール6を所定の姿勢に維持させるための姿勢調整手段53を備えている。かかる姿勢調整手段53は、第二アーム体501に内装されている。ここで姿勢調整手段53について具体的に説明すると、姿勢調整手段53は、第二アーム体501の両端部に配置された一対の回転体(以下、一方の回転体を第三回転体530といい、他方の回転体を第四回転体531という)530,531と、第二アーム体501の一端部に配置された第三回転体530と第二アーム体501の他端部に配置された第四回転体531とに掛け渡された無端環状のベルト(以下、従動ベルトという)532と、第四回転体531に対して同心で固定された太陽歯車533と、該第二アーム体501の他端部に設けられた軸(以下、第三関節軸という)S3周りで回転可能に設けられ、前記太陽歯車533と噛合した遊星歯車534とで構成されている。
【0048】
そして、第三回転体530は、第二アーム体501に対して回転自在に軸支される一方で、第一アーム体500に固定された前記中心支持軸S2’に固定されている。すなわち、前記中心支持軸S2’は、基端部が第一アーム体500の一方の側壁の内面に固定されて第一アーム体500の他方の側壁(反対側の側壁)から外方に突出して第二アーム体501内に挿入された上で、第二アーム体501内にある先端部に第三回転体530が固定されている。なお、中心支持軸S2’は、上述の如く、軸受を介して第二関節軸S2を支持している。換言すれば、中心支持軸S2’は、軸受を介して第三関節軸S2に支持されており、第三関節軸S2が連結された第二アーム体501に対して回転自在に設けられている。
【0049】
第四回転体531は、第二アーム体501の他端部内部に設けられた固定軸S4周りで回転自在に設けられている。かかる固定軸S4は、第二関節軸S2と平行をなすように設けられている。そして、太陽歯車533は、上述の如く、第四回転体531に対して同心で固定されているため、第四回転体531と同様に固定軸S4周りで回転自在になっている。そして、従動ベルト532には、駆動ベルト512,522と同様に歯付きベルトが採用されており、これに伴って、従動ベルト532が掛け渡される第三回転体530及び第四回転体531には歯付きプーリーが採用されている。
【0050】
そして、前記遊星歯車534は、作業ツール6の後述する連結ベース60aに対して回転自在に軸支される一方で、第二アーム体501に固定された第三関節軸S3を中心に回転自在に設けられている。第三関節軸S3は、太陽歯車533の回転中心となる固定軸S4よりも第二アーム体501の先端側に設けられている。かかる第三関節軸S3は、基端部が第二アーム体501の一方の側壁の内面に固定されて他方の側壁(反対側の側壁)から外方に延出しており、作業ツール6の連結ベース60aの側壁部に対して回転自在に挿通された上で連結ベース60a内で抜け止めされている。そして、遊星歯車534は、第三関節軸S3に軸受を介して回転自在に支持された上で作業ツール6の連結ベース60aの外壁面に対して固定されている。なお、本実施形態に係る遊星歯車534には、該遊星歯車534とともに第三関節軸S3の挿通された筒状軸部(採番しない)が同心で連設されており、該筒状軸部が連結ベース60aに固定されている。
【0051】
上記構成の姿勢調整手段53は、第一アーム体500及び第二アーム体501が相対的に回転したときに、第一アーム体500に固定された支持軸S2’に固定された第三回転体530に対する従動ベルト532の巻き掛け位置が変化する結果、第四回転体531に対して従動ベルト532が回転力を付与し、該第四回転体531に固定された太陽歯車533が回転する。これにより、遊星歯車534が太陽歯車533の回転に連動して回転し、該遊星歯車534の固定された作業ツール6が第三関節軸S3周りで回転する。なお、本実施形態に係る姿勢調整手段53は、第二アーム体501の回転に対応する従動ベルト532の移動(回転)量、太陽歯車533及び遊星歯車534のギア比を適宜設定することで、作業ツール6の姿勢を第二アーム体501の姿勢に連動させることができ、本実施形態においては、第一アーム体500の基端部と第二アーム体501の先端部とを結ぶ仮想線に対して作業ツール6の作業中心線(本実施形態においては作業ツール6として後述のロボットハンドが採用されているため被把持物の把持中心線)が直角になるように、第二アーム体501の姿勢に連動させて作業ツール6の姿勢を変更させように設定されている。
【0052】
本実施形態に係る作業ツール6は、被把持物を把持可能に構成されたロボットハンドが採用されている。
【0053】
かかるロボットハンド6は、図6に示す如く、被把持物が配置される被把持物配置予定位置A周りに等間隔又は略等間隔で配置された二つ以上の把持体61…と、各把持体61…を被把持物配置予定位置Aの中心に向けて移動させる第一駆動部62と、各把持体61…を被把持物配置予定位置A周りで回転させる第二駆動部63とを備える。
【0054】
本実施形態に係るロボットハンド6は、把持体61…を二つ備えている。そのため、各把持体61…は、互いに対向するように配置されている。本実施形態の救助用ロボット1は、上述の如く、災害地でドアを開放することを一つの目的としているため、正面視円形のドアノブを把持できるように各把持体61…は断面円弧状をなすように形成されている。そして、各把持体61…の外周面には、前記第一駆動部62の後述する回転レバー66及びリンク68を連結するための連結用リブ610が突設されている。各連結用リブ610は、片状に形成されており、把持体61…の湾曲方向と直交する方向(把持体61…の湾曲中心方向)に真っ直ぐに延びるように形成されている。
【0055】
前記第一駆動部62は、把持体61…の湾曲中心方向に延びるスライドシャフト64と、該スライドシャフト64を軸線方向に往復動させるためスライド手段65と、スライドシャフト64と直交する方向に延びる軸(以下、支持軸という)S5を中心に回転可能に設けられ、把持体61…とスライドシャフト64とを作動的に連結させる回転レバー66と、該回転レバー66をスライドシャフト64と直交する方向に延びる支持軸S5周りで回転可能に支持し、所定位置に位置した状態でスライドシャフト64の一端部周りで回転自在に設けられた支持体67とを備えている。
【0056】
前記スライドシャフト64は、ロボットハンド6の外装を構成するケーシング60bの外側に配置される一端部の外周に無端円環状の溝642が形成されている。具体的には、本実施形態に係るスライドシャフト64は、一端部に形成された大径部640と、該大径部640に連設され、該大径部640よりも小径な小径軸部641とを備えている。そして、本実施形態に係るスライドシャフト64は、小径軸部641における大径部640の連設された一端とは反対側の他端に対してスライド手段65の一構成となる雄ネジ体650が小径軸部641と同心をなすように連設されている。
【0057】
前記大径部640は、スライドシャフト64の軸線(軸心)方向から見て円形状に形成されており、外周に無端円環状の溝642が形成されている。かかる溝642は、回転レバー66の基端部(後述するローラ662)を収容可能に形成されている。本実施形態に係る小径軸部641は、段付軸状に形成されている。具体的には、本実施形態に係る第一駆動部62は、スライドシャフト64の小径軸部641に外嵌されたコイルバネ643と、スライドシャフト64の小径軸部641が挿通されたバネ受部材644とを備えている。そして、コイルバネ643は、一端が小径軸部641の段部645に一端が受けられる一方、該コイルバネ643の他端がバネ受部材644に受けられている。
【0058】
バネ受部材644は、スライドシャフト64との関係において、スライドシャフト64の他端側(大径部640のある一端側とは反対側)に移動不能である一方、スライドシャフト64の一端側に移動可能に設けられている。すなわち、バネ受部材644は、スライドシャフト64(小径軸部641)の外周に対して軸線方向に延びるように形成されたスリット646に挿入される位置決ピン647が取り付けられており、自然長の又は僅かに撓んだコイルバネ643を受けた状態で、位置決ピン647とスリット646の他端側にある端部内面とが干渉するようになっている。
【0059】
これにより、コイルバネ643によってバネ受部材644とスライドシャフト64とが互いに反対向きに付勢されたとしても、バネ受部材644とスライドシャフト64とが反対方向に移動することがないが、スライドシャフト64を他端側に移動させるような力(コイルバネ643を撓ませるような力)が作用したときに、スライドシャフト64の段部645がコイルバネ643を付勢しつつ(撓ませつつ)該スライドシャフト64が他端側に移動できるようになっている。
【0060】
そして、スライドシャフト64は、軸線方向に移動(スライド)可能となるように、ロボットハンド6の外装を構成するケーシング60b(又は、ケーシング60bに固定された支持部材)によって支持されている。
【0061】
そして、スライドシャフト64は、一端面(大径部640の端面)に開口した非貫通の孔(以下、非貫通孔という)648が軸線に沿って形成されている。すなわち、該スライドシャフト64は、後述する撮像素子(CCDカメラ)69及び光源70を内装するための非貫通孔648が一端側に形成されている。
【0062】
スライド手段65は、スライドシャフト64に連設される雄ネジ体650と、該雄ネジ体650に螺合された螺合部材651と、該螺合部材651を雄ネジ体650の軸線周りで回転させるスライド用駆動部652とを備えている。
【0063】
前記雄ネジ体650は、上述の如く、スライドシャフト64と同心をなすように該スライドシャフト64の小径軸部641の他端に連設されている。そして、前記螺合部材651は、雄ネジ体650周りで回転自在になるようにケーシング60b(又は、ケーシング60bに固定された支持部材)に対し、軸受(本実施形態においてはベアリング)を介して取り付けられている。すなわち、螺合部材651は一定位置で回転できるようにケーシング60bに対して直接的又は間接的に軸支されている。
【0064】
前記スライド用駆動部652は、駆動源としてのモータ(以下、第一駆動モータという)M3と、該第一駆動モータM3の回転を螺合部材651に伝達する伝達機構(以下、第一伝達機構という)653とを備えている。本実施形態において、第一駆動モータM3には、DCモータが採用されており、その出力軸がスライドシャフト64(雄ネジ体650)と平行又は略平行になるように配置されている。
【0065】
前記第一伝達機構653は、無端環状のベルトをモータの出力軸と螺合部材651(或いは、これに連設された軸)に掛け渡し、第一駆動モータM3の出力を螺合部材651に伝達するようにしてもよいが、本実施形態においては、第一伝達機構653として歯車機構が採用されている。これに伴い、第一駆動モータM3の出力軸及び螺合部材651に歯車が取り付けられており、これらの歯車が直接的又は中間歯車を介して間接的に噛合されている。これにより、第一駆動モータM3の出力が歯車機構(第一伝達機構653)を介して螺合部材651に伝達され、該螺合部材651が雄ネジ体650周りで回転することで、定位置で回転する螺合部材651に螺合された雄ネジ体650が軸線方向に移動するようになっている。
【0066】
前記回転レバー66は、支持体67(後述する大径環状部670)に対して前記支持軸S5を介して回転可能に設けられている。本実施形態に係る回転レバー66は、回転中心(支持軸S5)が大径部640の径方向外方に位置しており、その回転中心から大径部640側に延出する第一延出部660と、回転中心から前方に向けて延出する第二延出部661とを備えている。すなわち、回転レバー66は、第一延出部660及び第二延出部661が略直角をなすように連結されて側面視略L字状に形成され、第一延出部660及び第二延出部661の連結位置に回転中心が設定されている。
【0067】
本実施形態に係る回転レバー66は、回転中心となる軸(支持軸S5)と同方向に延びる軸(採番しない)を中心にして回転可能なローラ662が、第一延出部660の先端部に取り付けられている。すなわち、第一延出部660は、先端部に大径部640の外周に対する接線方向に延びる軸線周りで回転自在なローラ662が枢着されている。そして、前記ローラ662は、大径部640の外周に形成された無端環状の溝642内に配置されている。なお、ローラ662は、大径部640に形成された無端環状の溝642を画定する一対の対向面(スライドシャフト64の軸線方向に間隔をあけて対向する一対の対向面)に外周が接触又は略接触するように外径が設定されている。
【0068】
これに対し、第二延出部661の先端部は、該回転レバー66の回転中心となる支持軸S5と同方向に延びる軸(採番しない)を中心にして回転可能となるように把持体61…(連結用リブ610)に連結されている。
【0069】
前記支持体67は、段付き筒状に形成され、一端部をケーシング60bの外側に位置させる一方、他端側をケーシング60b内に位置させた状態で、内部にスライドシャフト64が挿通されている。具体的には、支持体67は、ケーシング60bの外側に配置され、スライドシャフト64の大径部640の外周を覆う大径環状部670と、該大径環状部670に対して同心で連設され、スライドシャフト64の小径軸部641の外周を覆う小径環状部671とを備えている。該支持体67は、小径環状部671が軸受(本実施形態においてはブッシュ)を介してケーシング60bに支持されており、所定位置でスライドシャフト64と同心で回転可能に設けられている。すなわち、支持体67は、挿通されたスライドシャフト64の軸線方向へ移動不能に設けられており、一定位置でスライドシャフト64と同心で回転可能に設けられている。
【0070】
該支持体67は、小径環状部671がスライドシャフト64を内挿させた状態でケーシング60bに挿通されている。前記大径環状部670には、回転レバー66及び後述する平行移動用のリンク68を介設するため凹部672が形成されている。すなわち、大径環状部670は、一端面から他端側に向けて延びる凹部672が各回転レバー66の配置に併せて形成されている。該凹部672は、支持体67の外側に向く面、外周面及び内周面が開放部を形成しており、回転レバー66の第一延出部660をスライドシャフト64の溝642に導入でき、且つ該第一延出部660の回転(移動)を許容できるように形成されている。そして、凹部672を画定すべく対向する一対の面には、回転レバー66を支持するための支持軸5及びリンク68を枢着するための軸の両端部が支持されている。
【0071】
そして、該支持体67は、大径環状部670がケーシング60bの外面側に配置されているのに対し、小径環状部671がケーシング60bに挿通されている。
【0072】
そして、本実施形態に係るロボットハンド6は、各把持体61…を被把持物の把持中心に向けて移動させるときに、把持体61…の姿勢を維持させる(概ね平行移動させる)べく、平行移動用のリンク68を備えている。かかるリンク68は、回転レバー66の第二延出部661に対して並列になるように配置されており、前記回転レバー66の回転中心となる支持軸S5と同方向に延びる軸(採番しない)を介して一端部が前記大径環状部670(支持部)に対して回転可能に連結される一方、前記回転レバー66の回転中心となる支持軸S5と同方向に延びる別の軸(採番しない)を介して他端部が把持体61…(連結用リブ610)に対して回転可能に連結されている。
【0073】
これにより、本実施形態に係るスライド手段65は、スライドシャフト64が軸線(軸心)方向に移動したときに、大径部640の無端環状の溝642内に配置されたローラ662がスライドシャフト64の移動方向(軸線方向)に移動する結果、回転レバー66が回転し、第二延出部661の先端部に連結された把持体61…が回転レバー66の回転に対応して移動するようになっている。また、本実施形態に係るスライド手段65は、リンク68を備えているため、回転レバー66の回転に伴って把持体61…が移動するとき、該把持体61…が一定の姿勢(内側に向く湾曲面が被把持物配置予定位置Aの中心側に向いた姿勢)で維持するようになっている。
【0074】
前記第二駆動部63は、駆動源としての第二駆動モータM4と、該第二駆動モータM4の出力を支持体67に伝達する伝達機構(以下、第二伝達機構という)630とを備えている。
【0075】
前記第二駆動モータM4には、DCモータが採用されており、スライドシャフト64に対して出力軸が平行になるように配置されている。これを前提に、本実施形態に係る第二伝達機構630は、第二駆動モータM4とスライドシャフト64との間に該スライドシャフト64と平行をなすように、一列に配置された二本の軸(以下、この二本の軸を第一連結軸631及び第二連結軸632という)631,632と、第一連結軸631と第二連結軸632とを作動的に連結したトルクガード633と、第二駆動モータM4の出力を第一連結軸631に伝達する第一伝達手段634と、第二連結軸632の回転を支持体67に伝達する第二伝達手段635とを備えている。
【0076】
前記第一伝達手段634及び第二伝達手段635は、何れも歯車機構で構成されている。具体的には、第一伝達機構653は、第二駆動モータM4の出力軸に連結された歯車と、該歯車に噛合するように第一連結軸631に連結された歯車とで構成されている。これに対し、第二伝達手段635は、第二連結軸632に連結された歯車と、該歯車に噛合するように支持体67(小径環状部671)に連結された歯車とで構成されている。第二伝達手段635の支持体67に連結された歯車は、スライドシャフト64を挿通するための孔を形成すべく、ドーナツ円板状に形成されており外周に歯が形成されている。
【0077】
これにより、本実施形態に係る第二駆動部63は、第二駆動モータM4の出力が第一連結軸631、第二連結軸632、及びトルクガード633を介して支持体67に伝達され、支持体67を回転方向性なくエンドレスで回転させることができるようになっている。また、該第二駆動部63は、トルクガード633を介して第二駆動モータM4の出力を支持体67に伝達するようになっているため、例えば、把持体61…による被把持物の把持が支持体67の回転を妨げるように場合、第二駆動モータM4が連続的に駆動(回転)しても第二駆動モータM4の負荷が大きくなることがなくその支持体67の回転状態(回転限界位置)で維持させることができるようになっている。
【0078】
そして、本実施形態に係るマニピュレータ5は、災害現場の状況や被把持物の位置の確認を行うべく、現状を撮影する(本実施形態においては動画で撮影)する撮像素子(CCDカメラ)69を備えている。本実施形態に係るマニピュレータ5は、スライドシャフト64の大径部640に形成された非貫通孔648内にCCDカメラ69が配置されている。そして、CCDカメラ69は、撮影中心がスライドシャフト64の軸心(軸線)と一致又は略一致するように配置されている。
【0079】
すなわち、CCDカメラ69は、把持体61…に被把持物を把持させるべく把持体61…間に設定された被把持物配置予定位置Aの中心と撮影中心(撮像中心)とが一致又は略一致するように非貫通孔648内に配置されている。そして、本実施形態において、災害現場で使用される救助用ロボット1を対象としているため、CCDカメラ69による撮影を確実に行えるように光源としてLED70がロボットハンド6に搭載されている。
【0080】
本実施形態において、光源70は、CCDカメラ69と同様、スライドシャフト64(大径部640)の非貫通孔648内に配置されている。なお、上述の如く、スライドシャフト64(大径部640)の非貫通孔648内にCCDカメラ69及び光源70(LED70)を配置するようにしているため、本実施形態のマニピュレータ5は、CCDカメラ69及び光源70を保護すべく、非貫通孔648の開口端部に透明な保護プレート71が配置されている。
【0081】
該ロボットハンド6は、アーム機構50(第二アーム体501)に連結される連結ベース60aを備えている。該連結ベース60aは、第一駆動部62、第二駆動部63、スライドシャフト64、及びスライド手段65が内装されるケーシング60bの外面に連結されている。
【0082】
本実施形態に係るロボットハンド6は、ケーシング60bが連結ベース60aに対して所定範囲で揺動可能に設けられている。すなわち、該ロボットハンド6は、把持体61…が被把持物を把持するに際し、被把持物に対する把持体61…の把持中心がずれて拗れが生じた場合、ケーシング60bが揺動して把持中心のずれを吸収できるようになっている。なお、ケーシング60bと連結ベース60aとを連結する連結構造が弾性を有するゴムダンパ(図示しない)を備えており、常態においてゴムダンパの弾性でケーシング60bが正規の姿勢を維持し、上述のような拗れが生じたときにゴムダンパが弾性変形してケーシング60bの揺動が許容されるようになっている。
【0083】
本実施形態に係る救助用ロボット1は、以上の構成からなり、次に、該救助用ロボット1の作動について説明する。
【0084】
本実施形態に係る救助用ロボット1は、遠隔操作(無線制御)によって動作するようになっており、通常の走行時(作業位置にまで走行するとき)は、図1に示す如く、アーム機構50を折り畳んだ状態(基本姿勢)にするようになっている。そして、本実施形態に係る救助用ロボット1は、第一アーム体500の基端部と第二アーム体501の先端部とを結ぶ仮想線に対してロボットハンド6の中心線(CCDカメラ69の撮影中心)が直角をなすようにロボットハンド6の姿勢が維持されるため、上述の如く、アーム機構50を折り畳んだ状態(基本姿勢にした状態)でCCDカメラ69の撮影面が走行台車2の前方に向くことになる。従って、作業者は、CCDカメラ69から送信(無線送信)される画像をモニタで確認しつつ救助用ロボット1を遠隔操作で走行させる。
【0085】
そして、作業者は、CCDカメラ69からの画像を基に、ロボットハンド6が被把持物を把持可能な配置になるようにアーム機構50を遠隔操作する。このとき、アーム体500,501に内装した第一アーム駆動機構51及び第二アーム駆動機構52は、基端側にある第一アーム体500及び先端側にある第二アーム体501を傾動させることになる。
【0086】
具体的には、図3に示す如く、第一アーム駆動機構51及び第二アーム駆動機構52は、駆動モータM1,M2がスクリューシャフト513,523を周方向の一方側に回転させ、これに伴ってスクリューシャフト513,523の軸線(軸心)方向に移動するスライダ514,524が駆動ベルト512,522を周方向に移動(回転)させる。その結果、駆動ベルト512,522が掛け渡された第一回転体510,520及び第二回転体511,521が回転し、第一回転体510,520の回転力が第一アーム体500に連結された部材501,40に対して伝達される。
【0087】
従って、第一アーム駆動機構51における第一回転体510は、他方向に延びる軸線(第一関節軸S1)周りの回転力を基台40(サブ基台43)に対して作用させ、第二アーム駆動機構52における第一回転体520は、他方向に延びる軸線(第二関節軸S2)周りの回転力を第二アーム体501に作用させる。これにより、図2(a)及び図2(b)に示す如く、第一アーム体500及び第二アーム体501が傾動し、折り畳まれていたアーム機構50が延びることになる。
【0088】
そして、把持体61…間(被把持物配置予定位置A)に被把持物が位置するように、アーム機構50の姿勢を変更させたり、走行台車2を走行させたりすることで、ロボットハンド6の配置を調整する。すなわち、CCDカメラ69からの画像の中心に被把持物の中心が位置するように、アーム機構50の姿勢等を変更させてロボットハンド6(ロボットハンド6)の配置を調整する。このとき、アーム機構50の傾動や走行台車2による走行だけではロボットハンド6(把持体61…)の配置が被把持物を把持するのに好ましい配置にならない場合、第二駆動部63によって把持体61…をスライドシャフト64周りで回転させれば、把持体61…の配置を好ましい状態にすることができる。
【0089】
そして、把持体61…間の被把持物配置予定位置Aに被把持物が到達した後、各把持体61…を被把持物側に移動させることで被把持物を把持する。具体的には、図6に示す如く、第一駆動部62の第一駆動モータM3の駆動で螺合部材651を雄ネジ体650周りの一方側に回転させ、該螺合部材651を螺合させた雄ネジ体650とともにスライドシャフト64を軸線方向の他端側に移動(スライド)させる。そうすると、大径部640の溝642に収容されたローラ662がスライドシャフト64の他端側に引かれる結果、回転レバー66が回転して把持体61…が被把持物側に移動することになる。
【0090】
そして、各把持体61…が被把持物に当接すると外観上把持できたように見えるが、被把持物に対して十分な把持力(当接力)を発揮させなければ、被把持物を持ち上げたり回転させたりすることができない場合があるため、本実施形態においては、把持体61…が被把持物に当接してから所定の把持力を発揮させるようにしている。
【0091】
具体的には、本実施形態に係るロボットハンド6は、スライドシャフト64の小径軸部641にコイルバネ643が外嵌され、該コイルバネ643の一端が小径軸部641の段部645に受けられる一方、該コイルバネ643の他端がバネ受部材644に受けられているため、スライドシャフト64が他端側に移動しようとするとき(軸に対して引き作用が生じるとき)、把持体61…が被把持物を把持するまでの間、引き作用に対してコイルバネ643が大きく弾性変形することなく対抗する結果、バネ受部材644がスライドシャフト64とともに他端側に移動する。
【0092】
そして、各把持体61…が被把持物に当接すると、スライドシャフト64に対する引き動作に対して抵抗が生じ、スライドシャフト64及びバネ受部材644が移動を停止することになるが、この状態では、把持体61…の移動(回転レバー66の回転)が阻害されただけで被把持物に対する把持力は発揮していない。すなわち、把持体61…が被把持物に当接した直後は、外観上把持体61…が被把持物を把持したように見えるが、単に把持体61…が被把持物に接触しているだけで被把持物に対する把持力(当接力)が十分に発揮していない状態である。
【0093】
そのため、本実施形態に係るマニピュレータ5は、把持体61…が被把持物に当接した状態であっても第一駆動モータM3が駆動し続けることで、コイルバネ643を収縮させつつスライドシャフト64を他端側に移動させ、コイルバネ643が所定量縮んだときに、スライドシャフト64の位置を検知するセンサ(採番しない)の検出結果を基に第一駆動モータM3の駆動を停止するようになっている。このようにすることで、コイルバネ643を縮ませた力の反力(コイルバネ643の弾性力)が回転レバー66を回転させようとするトルクとして作用し、把持体61…においては被把持物に対する把持力(当接力)として作用する結果、被把持物に対する把持が確実になる。
【0094】
そして、把持体61…による被把持物の把持(実際にはコイルバネ643の弾性力)でスライドシャフト64には軸線方向の一端側に向ける抵抗力(すなわち、把持体61…による把持が解除される方向の移動力)が作用することになるが、本実施形態に係るロボットハンド6は、雄ネジ体650と螺合部材651とが台形ネジによって螺合されているため、第一駆動モータM3の駆動を停止してその出力軸がフリーな状態になってもスライドシャフト64の移動が阻止される。その結果、把持体61…は、所定の把持力を発揮させつつ被把持物の把持を維持することになる。すなわち、本実施形態に係るロボットハンド6(マニピュレータ5)は、ブレーキ機構を設けなくても把持体61…で被把持物を把持させた状態が維持されることになる。
【0095】
これに対し、ロボットハンド6による被把持物の把持の解除や把持体61…の間隔を広げる場合には、第一駆動モータM3の駆動で螺合部材651を雄ネジ体650周りの他方向に回転させ、該螺合部材651の螺合させた雄ネジ体650とともにスライドシャフト64を軸線方向の一端側に移動(スライド)させる。
【0096】
本実施形態に係るロボットハンド6は、被把持物に対する把持力を発揮させるべく、把持体61…が被把持物を把持した状態でコイルバネ643が収縮しているため、上述の如く、螺合部材651を他方向に回転させると、スライドシャフト64が一方向に移動するのに伴いコイルバネ643が自然長又は僅かに撓んだ状態にまで戻った後、スライドシャフト64とともにバネ受部材644が一端側に移動することになる。そうすると、大径部640の溝642に収容されたローラ662が軸の一端側に押される結果、回転レバー66が回転して把持体61…が被把持物から離間することになり、把持体61…による被把持物の把持が解除される。
【0097】
従って、本実施形態に係る救助用ロボット1(マニピュレータ5)は、被把持物が異物である場合、ロボットハンド6で異物を把持した状態でアーム機構50を傾動させたり、走行台車2を走行させたりした後、把持体61…による被把持物の把持とその解除によって異物(被把持物)の移動や除去を行うことができる。
【0098】
そして、図2に示す如く、被把持物がドアノブNである場合、すなわち、閉ざされたドアDを開く場合においても、異物の移動や除去の場合と同様に、ロボットハンド6(把持体61…)をドアノブNの配置に対応させるように、CCDカメラ69の画像を基にしてアーム機構50を傾動させたり走行台車2で走行させたりした上で、ロボットハンド6でドアノブを把持する。ここまでの作動は、異物の移動や除去をするときと同じであるが、ドアDのロックを解除する場合(ドアノブを回転させる場合)、ロボットハンド6(把持体61…)でドアノブNを把持した状態で、把持体61…をスライドシャフト64周りで回転させることになる。
【0099】
具体的には、図6に示す如く、スライドシャフト64を移動させて把持体61…で被把持物を把持した状態で位置しつつ、第二駆動モータM4を駆動する。そうすると、第二駆動モータM4の回転が伝達機構(第一伝達手段634:歯車機構)を介して第一連結軸631、トルクガード633及び第二連結軸632に伝わり、第二連結軸632の回転が伝達機構(第二伝達手段635:歯車機構)を介して支持体67に伝達される。これにより、支持体67がスライドシャフト64周りで回転することになり、該支持体67に支持された回転レバー66及びリンク68についても支持体67と一体的になってスライドシャフト64(軸線)周りで回転することになる。
【0100】
本実施形態に係るマニピュレータ5は、大径部640に形成された無端環状の溝642に回転レバー66の端部(ローラ662)が収容されているため、上述の如く、支持体67がスライドシャフト64周りで回転すると、回転レバー66の端部(ローラ662)が無端環状の溝642内で周方向に移動することになる。従って、回転レバー66及びリンク68の先端部に取り付けられた各把持体61…もスライドシャフト64周りで回転することになる。
【0101】
そして、第二駆動モータM4を駆動し続けると支持体67、回転レバー66、及び把持体61…についてもスライドシャフト64周りで回転し続けようとすることになるが、本実施形態において、第一連結軸631と第二連結軸632とがトルクガード633を介して連結されているため、所定の負荷が作用すると、第二駆動モータM4が回転し続けても所定トルクだけが第二連結軸632に伝わることになる。
【0102】
従って、把持体61…の把持するドアノブNが回転限界まで回転したとしても、それ以上ドアノブNを回転させることがないため、ドアノブNを破損させてドアDを開放できなくなることはない。すなわち、ドアノブNの回転限度やロックの解除される回転範囲は、メーカーによって異なるため、把持体61…の回転範囲を一定範囲に設定すると、回転限界にあるドアノブNに過度なトルクがかかって該ドアノブNを破損させたり、ドアノブNの回転量が不足してロックが解除できなかったりすることがあるが、本実施形態に係るロボットハンド6は、把持体61…が無制限に回転でき、且つ把持体61…のトルク管理を行うようにしているため、如何なるメーカーのドアノブNであっても破損させることなく開放することができる。
【0103】
そして、本実施形態に係る救助用ロボット1は、ドアノブNを把持した把持体61…を回転させた上で、走行台車2をバックさせることでドアDを開けることができことも可能であるが、マニピュレータユニット3に吸引装置Vを設けたため、吸引装置VでドアDを吸引しつつ走行台車2をバックさせることでドアDを開けることができる。このようにロボットハンド6よりも低い位置にある吸引装置VでドアDを引くことで、上方に延びたアーム機構50に大きな曲げ作用が生じにくくなる結果、アーム機構50(アーム体500,501)をコンパクト化或いはスリム化しても破損しにくくなる。
【0104】
そして、ドアDを開放した後は、異物の把持を解除する場合と同様に、第一駆動モータM3の駆動で螺合部材651を軸線周りで他方側に回転させ、スライドシャフト64を一端側に移動させることで回転レバー66(ローラ662)が一端側に押され、把持体61…がドアノブNから離間し、該ドアノブNに対する把持が解除される。そして、本実施形態に係るマニピュレータ5は、把持体61…がスライドシャフト64周りで無制限に回転できる構成であるため、上述のようにドアノブNを回転させた状態から把持体61…をドアノブNから離間させたとしても、次の作業において把持体61…を原点復帰させるような動作を必要とせず、その状態から次ぎの対象(被把持物)を把持し、また回転させることもできる。
【0105】
そして、アーム機構50を畳む場合、各アーム体500,501が略水平になるように、アーム機構50を遠隔操作する。このとき、アーム体500,501に内装した二組のアーム駆動機構51,52は、基端側にある第一アーム体500及び先端側にある第二アーム体501を傾動させることになる。具体的には、各アーム駆動機構51,52は、駆動モータM1,M2がスクリューシャフト513,523を周方向の他方側に回転させ、これに伴ってスクリューシャフト513,523の軸線方向に移動するスライダ514,524が駆動ベルト512,522を周方向に移動(回転)させる。その結果、駆動ベルト512,522が掛け渡された第一回転体510,520及び第二回転体511,521が回転し、第一回転体510,520の回転力が第一アーム体500に連結された部材に対して伝達される。
【0106】
従って、第一アーム体500の一端側にあるアーム駆動機構51,52における第一回転体510,520は、他方向に延びる第一関節軸S1(軸線)周りの回転力を基台40(サブ基台43)に対して作用させ、アーム体500,501の他端側にあるアーム駆動機構51,52における第一回転体510,520は、他方向に延びる第二関節軸S2(軸線)周りの回転力を第二アーム体501に作用させる。これにより、二つのアーム体500,501がそれぞれ軸S1,S2周りで傾動することになり、スライダ514,524が原点位置に到達する(原点センサCがスライダ514,524を検知する)と駆動モータM1,M2の駆動が停止し、二つのアーム体500,501が傾動して重なった姿勢に戻ることになる。
【0107】
以上のように、上記構成のロボットハンド6によれば、被把持物が配置される被把持物配置予定位置周りに等間隔又は略等間隔で配置された二つの把持体61…と、各把持体61…を被把持物配置予定位置Aの中心に向けて移動させる第一駆動部62と、各把持体61…を被把持物配置予定位置A周りで回転させる第二駆動部63とを備え、第一駆動部62は、一方向に延びるスライドシャフト64と、駆動源としての第一駆動モータM3を有し、該第一駆動モータM3の出力でスライドシャフト64を軸線方向に往復動させるスライド手段65と、先端部に把持体61が連結された回転レバー66と、該回転レバー66をスライドシャフト64と直交する方向に延びる軸S5周りで回転可能に支持し、所定位置に位置した状態でスライドシャフト64の一端部である大径部640周りで回転自在に設けられた支持体67とを備え、第二駆動部63は、駆動源としての第二駆動モータM4と、該第二駆動モータM4の出力を支持体67に伝達し、該支持体67をスライドシャフト64周りで回転させる第二伝達機構630とを備え、スライドシャフト64は、支持体67に支持された回転レバー66の基端部を収容する無端円環状の溝642が一端部の外周に形成されているため、第一駆動部62(スライド手段65)の第一駆動モータM3の出力でスライドシャフト64をスライドさせることで、回転レバー66を支持軸S5周りで正逆転させて該回転レバー66の先端部に連結した把持体61を移動させることができる。従って、被把持物配置予定位置A(把持体61,61間)に被把持物を配置した上で、把持体61を移動させることで、把持体61…が被把持物を把持した状態と、被把持物の把持を解除した状態に切り替えることができる。
【0108】
また、上記構成のロボットハンドによれば、把持体61…が被把持物を把持した状態、或いは、被把持物の把持を解除した状態で、第二駆動部63の第二駆動モータM4を作動させると、第二伝達機構630を介して第二駆動モータM4の出力が支持体67に伝達され、支持体67がスライドシャフト64周りで回転しようとすると、支持体67に支持された回転レバー66の基端部がスライドシャフト64の一端部(大径部640)の無端環状の溝642内で周方向に移動することになり、支持体67とともに回転レバー66及び把持体61がスライドシャフト64周りで無制限に回転することができる。このように、上記構成のロボットハンド6は、第一駆動部62及び第二駆動部63の何れの駆動源(第一駆動モータM3、第二駆動モータM4)も回転する支持体67に固定されることなく定位置に配置されるため、電力を供給する電線(エネルギー供給ライン)が捩れることがなく、ロボットハンド6の故障原因となるロータリージョイント(接点)をエネルギー供給ライン状に設ける必要がない。
【0109】
そして、前記スライドシャフト64には一端面上で開放した孔である非貫通孔648が形成されるとともに該非貫通孔648に撮像素子であるCCDカメラ69が内装され、該CCDカメラ69は、撮影中心が被把持物配置予定位置Aの中央と一致又は略一致するように設けられているため、被把持物と把持体61との配置関係が明らかな映像を得ることができ、撮CCDカメラ69からの映像を基に容易に被把持物を把持することができる。また、被把持物を把持するときに被把持物の映像(CCDカメラ69からの映像)をモニタの中央に移すことができ、状況を容易に把握することができる。
【0110】
さらに、第一駆動部62は、スライドシャフト64の他端に連設された雄ネジ体650と、該雄ネジ体650に螺合された螺合部材651と、駆動源としての第一駆動モータM3と、該第一駆動モータM3の出力を螺合部材651に伝達して該螺合部材651を回転させる第一伝達機構653とを備えているため、第一駆動モータM3の出力で螺合部材651を正逆転させることで雄ネジ体650とともにスライドシャフト64を軸線方向の一端側及び他端側の何れにも移動させることができる。従って、雄ネジ体650に連結されたスライドシャフト64を軸線方向に移動させることができるため、上述の如く、把持体61を移動させて被把持物の把持と解除とを円滑に切り替えることができる。
【0111】
また、第二駆動部63の第二伝達機構630は、駆動源としての第二駆動モータM4の出力トルクを所定トルク以下で支持体67に伝達するトルクガード633を備えているため、被把持物を把持した上で把持体61を回転させようとしたときに、把持体61を必要以上に回転させることを防止することができる。
【0112】
これにより、例えば、ドアノブNを操作して閉ざされたドアDを開く場合、駆動源(モータ)が回転し続けても所定トルクだけが支持体67に伝わることになり、把持体61が把持したドアノブNが回転限界まで回転したとしても、それ以上ドアノブNを回転させて破損させてドアDを開放できなくなることはない。すなわち、ドアノブNの回転限度やロックの解除される回転範囲は、メーカーによって異なるため、把持体61の回転範囲を一定範囲に設定すると、回転限界にあるドアノブNに過度なトルクがかかって該ドアノブNを破損させたり、ドアノブNの回転量が不足してロックが解除できなかったりすることがあるが、上記構成によれば、把持体61が無制限に回転でき、且つ把持体61のトルク管理を行うようにしているため、如何なるメーカーのドアノブNであっても破損させることなく開放することができる。
【0113】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加え得ることは勿論である。
【0114】
上記実施形態において、ロボットハンド6を救助用ロボット1に採用した場合を一例に説明したが、ロボットハンド6は、救助用ロボット1に採用されるものに限定されるものではなく、例えば、製造分野に導入される産業用ロボットや、医療分野に導入される医療用ロボット等のマニピュレータ5に搭載されても勿論よい。
【0115】
上記実施形態において、把持体61を二つ設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、把持体61を三つ以上設け、これらを被把持物配置予定位置A周りで等間隔又は略等間隔に配置してもよい。この場合、回転レバー66も把持体61の配置に併せて等間隔又は略等間隔で配置されて支持体67に回転自在に支持されることは言うまでもない。
【0116】
上記実施形態において、撮像中心を被把持物配置予定位置Aの中心に一致又は略一致させるように撮像素子(CCDカメラ)69をスライドシャフト64の孔648に内装したが、これに限定されるものではなく、例えば、撮像素子69の撮像中心が被把持物配置予定位置Aの中心に対してずれた位置になるように撮像素子69を設けるようにしてもよい。すなわち、撮像素子69は、撮像中心が被把持物配置予定位置Aの中心からずれた位置になるようにスライドシャフト64の孔648に内装してもよいし、ロボットハンド6以外の構成に搭載してもよい。このようにロボットハンド6以外の構成に撮像素子69を搭載する場合、スライドシャフト64に孔648を設ける必要がないことは言うまでもない。但し、把持体61と被把持物との配置を明確に把握するには、上記実施形態と同様に、撮像素子69の撮像中心を被把持物配置予定位置Aの中心とを一致させるようにすることが好ましいことは言うまでもない。
【0117】
上記実施形態において、スライドシャフト64に撮像素子69を内装すべく、スライドシャフト64に孔として非貫通孔648を設けたが、撮像素子69を内装するための孔648は非貫通孔に限定されるものではなく、スライドシャフト64を貫通したものであってもよい。すなわち、スライドシャフト64を全長に亘って中空軸状に形成してもよい。
【0118】
上記実施形態において、アーム機構50を二つのアーム体500,501で構成し、先端側のアーム体(第二アーム体)501の先端部にロボットハンド6を連結するようにしたが、これに限定されるものではなく、ロボットハンド6は、アーム体500を一つ以上備えたアーム機構50の先端部に装着されればよい。
【0119】
また、上記実施形態において、第二駆動部63にトルクガード633を介装することで被把持物に対する回転力が大きくならないようにしたが、これに限定されるものではなく、第二駆動モータM4の電流値から負荷状態を認識し、支持体67を回転させる回転力(被把持物を回転させる回転力)が大きくなりすぎないようにしても勿論よい。
【0120】
上記実施形態において、第一駆動部62の駆動源M3及び第二駆動部63の駆動源M4としてDCモータを採用したが、これに限定されるものではなく、上述の如く、駆動源に回転を出力するものを採用する場合、駆動源はパルスモータやステッピングモータ等の各種電動モータであってもよいし、圧縮空気で駆動するエアモータであってもよい。また、上記実施形態において、駆動源M3の出力を螺合部材651に伝達して雄ネジ体650を軸線方向に移動させるように第一駆動部62を構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、第一駆動部62の駆動源M3(スライド手段65)として電動シリンダやエアシリンダ等のアクチュエータを採用し、これらのロッドをスライドシャフト64に対して同心になるように直接的又は間接的に連結するようにしてもよい。
【0121】
上記実施形態において、駆動源である第二駆動モータM4の出力を第二伝達機構630(第一連結軸631、第二連結軸632、トルクガード633)、第一伝達手段(歯車機構)634,第二伝達手段(歯車機構)635を介して支持体67に伝達するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、単一な歯車機構を介して駆動源からの出力(回転)を支持体67に伝達するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1…救助用ロボット、2…走行台車、3…マニピュレータユニット、4…ベース、5…マニピュレータ、6…作業ツール(ロボットハンド)、20…シャーシフレーム、21…走行装置(クローラ)、22…動輪、23…クローラベルト、40…基台、41…メイン基台、42…連結軸、43…サブ基台、50…アーム機構、51…第一アーム駆動機構(アーム駆動機構)、52…第二アーム駆動機構(アーム駆動機構)、53…姿勢調整手段、60a…連結ベース、60b…ケーシング、61…把持体、62…第一駆動部、63…第二駆動部、64…スライドシャフト、65…スライド手段、66…回転レバー、67…支持体、68…リンク、69…CCDカメラ、70…光源、71…保護プレート、500…第一アーム体(アーム体)、501…第二アーム体(アーム体)、510,520…第一回転体(回転体)、511,521…第二回転体(回転体)、512,522…駆動ベルト(無端環状体)、512a,512b,522a,522b…対向部、513,523…スクリューシャフト、514,524…スライダ、515,525…第一アイドラ(アイドラ)、516,526…第二アイドラ(アイドラ)、530…第三回転体(回転体)、531…第四回転体(回転体)、532…従動ベルト(ベルト)、533…太陽歯車、534…遊星歯車、610…連結用リブ、630…第二伝達機構、631…第一連結軸、632…第二連結軸、633…トルクガード、634…第一伝達手段(歯車機構)、635…第二伝達手段(歯車機構)、640…大径部、641…小径軸部、642…溝、643…コイルバネ、644…バネ受部材、645…段部、646…スリット、647…位置決ピン、648…非貫通孔、650…雄ネジ体、651…螺合部材、652…スライド用駆動部、653…第一伝達機構、660…第一延出部、661…第二延出部、662…ローラ、670…大径環状部、671…小径環状部、672…凹部、A…被把持物配置予定位置、M1,M2…駆動モータ、M3…第一駆動モータ、M4…第二駆動モータ、S1…第一関節軸(軸)、S2…第二関節軸(軸)、S2’…支持軸、S3…第三関節軸、S4…固定軸、S5…支持軸、V…吸引装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被把持物が配置される被把持物配置予定位置周りに等間隔又は略等間隔で配置された二つ以上の把持体と、各把持体を被把持物配置予定位置の中心に向けて移動させる第一駆動部と、各把持体を被把持物配置予定位置周りで回転させる第二駆動部とを備え、マニピュレータのアーム機構に装着されるロボットハンドであって、第一駆動部は、一方向に延びるスライドシャフトと、駆動源を有し、該駆動源の出力でスライドシャフトを軸線方向に往復動させるスライド手段と、先端部に把持体が連結された回転レバーと、該回転レバーをスライドシャフトと直交する方向に延びる軸線周りで回転可能に支持し、所定位置に位置した状態でスライドシャフトの一端部周りで回転自在に設けられた支持体とを備え、第二駆動部は、駆動源と、該駆動源の出力を支持体に伝達し、該支持体をスライドシャフト周りで回転させる伝達機構とを備え、スライドシャフトは、支持体に支持された回転レバーの基端部を収容する無端円環状の溝が一端部の外周に形成されていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記スライドシャフトには一端面上で開放した穴が形成されるとともに該穴に撮像素子が内装され、撮像素子は、撮影中心が被把持物配置予定位置の中央と一致又は略一致するように設けられている請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
第一駆動部は、スライドシャフトの他端に連設された雄ネジ体と、該雄ネジ体に螺合された螺合部材と、駆動源としてのモータと、該モータの出力を螺合部材に伝達して該螺合部材を回転させる伝達機構とを備えている請求項1又は2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
第二駆動部の伝達機構は、駆動源としてのモータの出力トルクを所定トルク以下で支持体に伝達するトルクガードを備えている請求項1乃至3の何れか1項に記載のロボットハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−156614(P2011−156614A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19153(P2010−19153)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(591056547)ビー・エル・オートテック株式会社 (20)
【Fターム(参考)】