説明

作業車輌の警報装置

【課題】 給油中に燃料タンクから燃料がオーバーフローするのを確実に防止すると共に、キースイッチの切忘れを防止することができるようにした作業車輌の警報装置を提供する。
【解決手段】 エンジンと、燃料タンクと、主電源を入切するキースイッチと、燃料タンク内の燃料の残量を検出する残量検出手段と、エンジンの回転状態を検出する回転検出手段と、満タン警報制御手段とを備え、前記満タン警報制御手段は、キースイッチがオンでかつエンジンが停止状態にある場合で、前記残量検出手段が燃料タンク内の燃料が満量であることを検出することにより満タン警報出力し、また、前記満タン警報制御手段は、キースイッチをオンした状態で、残量検出手段が前記燃料タンク内の燃料が一度、所定値以下を検出しなければ、満タン警報出力を行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設作業用の油圧ショベル等の作業車輌や、農作業用のトラクタやコンバイン等の作業車輌の警報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の農作業用の作業車輌は、燃料タンク内の燃料(軽油)が少なくなった場合、運転者の手作業により圃場で燃料を補給することが行われている。燃料タンク内は暗く見えにくいため、燃料の補給状態を目視することができず、燃料タンクが満タンになったのに気付かず燃料をオーバーフローさせてしまうことがあった。
【0003】
このような不具合を解決するため、例えば、エンジンが回転している状態で、残量検出手段で検出される燃料タンク内の燃料の増加状態に基づいて、前記燃料タンクへ燃料が補給中であるか否かを判別し、前記残量検出手段で検出された残量の値が満量検出値を越える時間が、設定時間以上継続したとき、燃料タンク内の燃料が満量になったことを警報するようにした作業車の警報装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3474086号公報(第4ページ、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、残量検出手段を構成する液面検知センサは、作業車輌の走行による揺れや傾斜に敏感に反応しないように、検出感度が鈍く設定されている。このため、前記従来技術のように、満量検出値を越える時間が設定時間以上継続したときに警報したのでは、燃料のオーバーフローを防止できないことがある。
【0006】
前記の事情に鑑み、本発明は、給油中に燃料タンクから燃料がオーバーフローするのを確実に防止すると共に、キースイッチの切忘れを防止することができるようにした作業車輌の警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の本発明は、エンジン(15)と、燃料タンク(20)と、主電源を入切するキースイッチ(33)と、前記燃料タンク(20)内の燃料の残量を検出する残量検出手段(23)と、前記エンジン(15)の回転状態を検出する回転検出手段(43)と、を備えてなる作業車輌において、
前記キースイッチ(33)がオンでかつ前記エンジン(15)が停止状態にある場合で、前記残量検出手段(23)が前記燃料タンク(20)内の燃料が満量であることを検出することにより、満タン警報出力する満タン警報制御手段を備え、
前記満タン警報制御手段は、前記キースイッチ(33)をオンした状態で、前記残量検出手段(23)が前記燃料タンク(20)内の燃料が一度、所定値以下を検出しなければ、満タン警報出力を行わない、
ことを特徴とする作業車輌の警報装置にある。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、前記作業車輌は、前記キースイッチ(33)がオンでかつ前記エンジン(15)が停止状態にある場合で、該状態が所定時間継続したことを切忘れタイマにより検出することにより、切忘れ警報出力するキー切忘れ警報手段を備え、
前記キー切忘れ警報制御手段による切忘れ警報出力は、前記満タン警報制御手段による警報出力の停止より優先させる、
ことを特徴とする請求項1記載の作業車輌の警報装置にある。
【0009】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によると、キースイッチがオンでかつエンジンが停止した状態で作動する満タン警報制御手段により、燃料タンクが満量になると満タン警報出力するので、燃料の残量検出手段を見ながら燃料タンクへの燃料を補給する場合、残量検出手段は検出遅れがあるため、燃料タンク内は暗くて見えにくいことも相俟って、燃料タンクが満量になったことに気付かずに燃料がオーバーフローすることがあるが、キースイッチのオン状態で燃料タンクの燃料が所定値以下を検出した状態で、その後燃料タンクの燃料が増加して満量に達したことを検出することにより、満タン状態を素早くかつ確実に検出することができ、燃料補給時の燃料のオーバーフローを防止することができる。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、キースイッチの切忘れを、スイッチ切忘れ警報制御手段により防止することができるので、キースイッチの切忘れによる放電及び盗難等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1乃至図9は、本発明の実施の形態を示すもので、図1は、トラクタの正面図、図2は、図1の右側面図、図3は、トラクタの燃料タンクとエンジンの配置を示す右側面図、図4は、運転席に配置された操作パネルの正面図、図5は、制御装置を示すブロック線図、図6は、制御手順を示すプログラムフローチャート、図7は、満タン警報制御手順を示すプログラムフローチャート、図8は、キー切忘れ警報制御手順を示すプログラムフローチャート、図9は、警報出力制御手順を示すプログラムフローチャートである。
【0014】
図1乃至図3は、作業車輌の一例としてクローラ型のトラクタを示すものである。同図において、トラクタ11は、左右一対のクローラ走行装置12、12に支持された機体13の前方に搭載されたエンジン15と、前記機体13の後方に搭載された運転室16を備えている。なお、前記エンジン15は、前記機体13に配置されたボンネット17により覆われている。
【0015】
前記機体13上の前記運転室16の左側後部には、トランスミッションに配置されたHST等(図示せず)に供給する作動油を貯留する作動油タンク18が設置され、前記運転席16の右側後部には、前記エンジン15に供給する燃料を貯留する燃料タンク20が配置されている。前記燃料タンク20の上部には、給油口21が形成され、該給油口21には、こし網22が配置されている。また、前記燃料タンク20の内部には、レベルゲージ23が配置されている。
【0016】
前記トラクタ11の運転室16には、図4に示すように、操作パネル31が配置されている。前記操作パネル31には、各種のスイッチ類や表示部材と共に、燃料計32やキースイッチ33が配置され、該キースイッチ33にキー34が挿入される。なお、前記キースイッチ33は、差込んだキーの回転角度により、主電源の投入と、前記エンジン15の始動を選択することができるようになっている。
【0017】
前記トラクタ11の制御装置40は、図5に示すように、マイクロコンピュータで構成された制御部41を有し、該制御部41を核として、警報装置を構成する満タン警報制御手段及びキー切忘れ警報制御手段が構成される。
【0018】
前記制御部41の入力側には、リフトアームの位置(角度)を検出するリフトアーム角センサ42、前記エンジン15の回転を検出するピックアップ43、リフトアームの上昇又は下降を指示する3点リンクリモコンスイッチ45、リフトアームの上昇又は下降を指示するクイックアップレバー46、ポジションレバーの位置を検出するポジションコントロールレバーポテンショメータ47、前記制御部41の出力に関係なくコントロールバルブを作動させリフトアームを上昇又は下降させるリフトアーム手動スイッチ48、バックアップ機能をオン・オフするバックアップ切替スイッチ50、クイックアップレバー操作時のリフトアームの上昇位置を指示する上げ高さボリューム51等の他、前記レベルゲージ23及び燃料計32が接続されている。
【0019】
前記制御部41の出力側には、リフトアームを上下するリフトアーム比例制御バルブ55、警報音を発生するブザー56、シャトルレバーを後退に操作したときリフトアームを上昇させるバックアップスイッチ57、バックアップ状態を表示するバックアップランプ58等が接続されている。
【0020】
前記構成においては、前記レベルゲージ23が前記燃料タンク20内の燃料の残量を検出する残量検出手段を構成し、前記ピックアップ43が前記エンジン15の回転状態を検出する回転検出手段を構成し、前記レベルゲージ23、前記制御部41及び前記ブザー56が前記満タン警報制御手段及び前記キー切忘れ警報制御手段を構成している。
【0021】
前記の構成で、前記トラクタ11の制御手順を、図6乃至図9に示すプログラムフローチャートに基づいて説明する。トラクタ11全体は、図6に示すように制御される。前記キースイッチ33にキー34を挿入(図4参照)して、主電源投入(又はエンジン始動)位置まで回転させることにより、制御部41に電流が供給され制御が開始される。
【0022】
満タン警報制御を行う場合、燃料の給油を行うことを設定する(図6のステップS1、以下、単にステップS○という)。なお、キー切忘れ警報制御は、常にセットしておくことにより、給油以外の操作時においてもキーの切忘れをなくし、バッテリーの無駄な放電や盗難を防止することができる。
【0023】
前記ステップS1で給油が設定された場合には、満タン警報制御のサブルーチンを実行する(ステップS2)。前記ステップS1で給油が設定されたか否かにかかわらず、キー切忘れ警報制御のサブルーチンを実行する(ステップS3)。前記ステップS2又は前記ステップS3から警報出力の指示が出力された場合、警報出力制御のサブルーチンを実行する(ステップS4)。
【0024】
前記ステップS2、ステップS3及びステップS4の後、例えば、深さ制御のサブルーチン(ステップS5)、傾き制御のサブルーチン(ステップS6)、その他トラクタ11の運転制御に必要な各種のサブルーチン(ステップS7)を実行する。なお、実行するサブルーチンの順序は適宜設定することができる。
【0025】
図7は、前記満タン警報制御のサブルーチン(前記図6のステップS2)を示すものである。エンジン15が回転しているか否かを判定する(図7のステップSA1、以下単にステップSA○という)。エンジン15が回転している状態であれば、作業運転時と判定して前記ステップS3(図6参照)へ移行する。エンジン15が停止している状態であれば、現在の燃料レベルが予め設定された設定値Pより低くなっているか否かを判定する(ステップSA2)。
【0026】
前記ステップSA2で燃料のレベルが前記設定値Pより低くなっていた場合、燃料フラグをセットし(ステップSA3)、満タンフラグをリセットする(ステップSA4)。さらに、燃料フラグを判定し、燃料フラグがセットされているか否かを判定する(ステップSA5)。前記ステップSA5で燃料フラグがセットされている場合、満タンフラグがセットされているか否かを判定する(ステップSA6)。前記ステップSA6で満タンフラグがセットされている場合、満タン警報フラグをセット(ステップSA7)して前記ステップS3(図6参照)のキー切忘れ警報制御のサブルーチンへ移行する。
【0027】
前記ステップSA2で、燃料のレベルが前記設定値Pより高い場合、燃料のレベルが予め設定されたFullレベルから所定量(α)少ない(Full−α)レベルより低くなっているか否かを判定する(ステップSA8)。前記ステップSA8で、燃料のレベルが(Full−α)レベルより低い場合には、満タンフラグを判定する(ステップSA9)。そして、前記ステップSA9で満タンフラグがセットされていた場合、前記ステップSA4へ移行する。
【0028】
前記ステップSA8で、燃料のレベルが(Full−α)レベルより高い場合、前記ステップSA9で、満タンフラグがリセットされていた場合、燃料のレベルがFullレベルより大きいか否かを判定する(ステップSA10)。前記ステップSA10で燃料のレベルがFullレベルより高い場合には、満タンフラグがセットされているか否かを判定(ステップSA11)し、満タンフラグがリセットされていた場合には、満タンフラグをセットする(ステップSA12)。
【0029】
前記ステップSA10で、燃料のレベルがFullレベルより高い場合、前記ステップSA11で、満タンフラグがセットされていた場合、前記ステップSA12で、満タンフラグをセットした場合、前記ステップSA5へ移行する。前記ステップSA5で、燃料フラグがリセットされていた場合、前記ステップSA6で、満タンフラグがリセットされていた場合、満タン警報フラグをリセット(ステップSA13)して前記ステップS3(図6参照)のキー切忘れ警報制御のサブルーチンへ移行する。
【0030】
前記のように、給油された燃料のレベルが予め設定されているFullレベルを越えた時、満タン警報フラグをセットして満タン警報を発生させるようにしたので、給油時における燃料のオーバーフローを確実に防止することができる。
【0031】
図8は、前記キー切忘れ警報制御のサブルーチン(前記図6のステップS3)を示すものである。エンジン15が回転しているか否かを判定する(図8のステップSB1、以下、単にステップSB○という)。エンジン15が回転している状態であれば、作業運転時と判定して前記ステップS4(図6参照)へ移行する。エンジン15が停止している状態であれば、新たに検出した燃料のレベルが、前回検出した燃料のレベルEに予め設定された単位時間当たりの給油量αを加えた(E+α)レベルより高くなっているか否かを判定する(ステップSB2)。新たに検知した燃料のレベルが(E+α)レベルより高い場合には、新たに検出された燃料のレベルを新たな燃料のレベルEと設定(ステップSB3)し、切忘れタイマーをセットする(ステップSB4)。
【0032】
前記ステップSB2で、新たに検出した燃料のレベルが(E+α)レベルより高くない場合、前記ステップSB4で、切忘れタイマーをセットした後、切忘れタイマーにセットされた時間が経過したか否かを判定する(ステップSB5)。前記ステップSB6で、切忘れタイマーにセットされた時間が経過していれば、切忘れ警報フラグをセットする(ステップSB6)。
【0033】
前記ステップSB1で、エンジンが回転している場合、前記ステップSB5で切忘れタイマーにセットされた時間が経過していない場合、前記ステップSB6で切忘れ警報フラグをセットした場合、前記ステップS4(図6参照)の警報出力制御のサブルーチンへ移行する。
【0034】
前記のように、給油により前記燃料タンク20内の燃料が増加し続けている間は、切忘れタイマーがリセットされ続けるため、給油途中で切忘れ警報フラグがセットされることはない。また、給油が終了して一定時間経過すると切忘れ警報フラグがセットされる。
【0035】
図9は、前記警報出力制御のサブルーチン(前記図6のステップS4)を示すものである。まず、満タン警報フラグがセットされているか否かを判定する(図9のステップSC1、以下、単にステップSC○という)。前記ステップSC1で、満タン警報フラグがセットされている場合には、前記ブザー56を介して満タン警報(例えば、ブザー56の断続吹鳴)を出力する(ステップSC2)。
【0036】
前記ステップSC1で、満タン警報フラグがリセットされていた場合、切忘れ警報フラグがセットされているか否かを判定する(ステップSC3)。前記ステップSC3で切忘れ警報フラグがセットされていた場合には、前記ブザー56を介して切忘れ警報(例えば、ブザー56の連続吹鳴)を出力する(ステップSC4)。前記ステップSC3で、切忘れ警報フラグがリセットされている場合には、警報出力を停止する(ステップSC5)。
【0037】
前記ステップSC2で、満タン警報を出力した場合、前記ステップSC4で、切忘れ警報を出力した場合、あるいは前記ステップSC5で、警報出力を停止している場合、図6のステップS5へ移行する。このとき、トラクタ11は給油中であり他の作業は行っていないため、制御はステップS2へ移行し前記の制御を繰返すことになる。
【0038】
前述のように、給油時における満タン警報制御と、キースイッチの切忘れ警報制御とを同時に行うことができるので、燃料タンク20からの燃料のオーバーフローを確実に防止することができ、しかも、キーの切忘れによる不必要な放電を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】トラクタの正面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】トラクタの燃料タンクとエンジンの配置を示す右側面図である。
【図4】運転席に配置された操作パネルの正面図である。
【図5】制御装置を示すブロック線図である。
【図6】制御手順を示すプログラムフローチャートである。
【図7】満タン警報制御手順を示すプログラムフローチャートである。
【図8】キー切忘れ警報制御手順を示すプログラムフローチャートである。
【図9】警報出力制御手順を示すプログラムフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
11 作業車輌(トラクタ)
15 エンジン
20 燃料タンク
23 残量検出手段(レベルゲージ)
33 キースイッチ
41 制御部
43 回転検出手段(ピックアップ)
56 ブザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、燃料タンクと、主電源を入切するキースイッチと、前記燃料タンク内の燃料の残量を検出する残量検出手段と、前記エンジンの回転状態を検出する回転検出手段と、を備えてなる作業車輌において、
前記キースイッチがオンでかつ前記エンジンが停止状態にある場合で、前記残量検出手段が前記燃料タンク内の燃料が満量であることを検出することにより、満タン警報出力する満タン警報制御手段を備え、
前記満タン警報制御手段は、前記キースイッチをオンした状態で、前記残量検出手段が前記燃料タンク内の燃料が一度、所定値以下を検出しなければ、満タン警報出力を行わない、
ことを特徴とする作業車輌の警報装置。
【請求項2】
前記作業車輌は、前記キースイッチがオンでかつ前記エンジンが停止状態にある場合で、該状態が所定時間継続したことを切忘れタイマにより検出することにより、切忘れ警報出力するキー切忘れ警報手段を備え、
前記キー切忘れ警報制御手段による切忘れ警報出力は、前記満タン警報制御手段による警報出力の停止より優先させる、
ことを特徴とする請求項1記載の作業車輌の警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−131880(P2011−131880A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2174(P2011−2174)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【分割の表示】特願2005−272778(P2005−272778)の分割
【原出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】