光変調器
【課題】光導波路から出射される光信号パルスに発生するチャーピングを抑制する。
【解決手段】高周波電気信号に基づいた所定の変調周波数の帯域内で、光変調器の光導波路19から出射される光信号パルスのチャーピングの大きさを表すαパラメータの符号が変調周波数変化に伴ってプラスからマイナスへ又はマイナスからプラスへ変化するように、中心導体20aにおける第1の光導波路19bに対向するとともに分極を反転していない領域21aに対向する第1の長さL1と、中心導体20aにおける第2の光導波路19aに対向するとともに分極を反転した領域21bに対向する第2の長さL2を設定する。
【解決手段】高周波電気信号に基づいた所定の変調周波数の帯域内で、光変調器の光導波路19から出射される光信号パルスのチャーピングの大きさを表すαパラメータの符号が変調周波数変化に伴ってプラスからマイナスへ又はマイナスからプラスへ変化するように、中心導体20aにおける第1の光導波路19bに対向するとともに分極を反転していない領域21aに対向する第1の長さL1と、中心導体20aにおける第2の光導波路19aに対向するとともに分極を反転した領域21bに対向する第2の長さL2を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路に入射した光を電気光学効果を利用して高周波電気信号で変調して光信号パルスとして出射する光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速、大容量の光通信システムが実用化されている。このような高速、大容量の光通信システムに組込むための高速、小型、かつ低価格の光変調器の開発が求められている。
【0003】
このような要望に応える光変調器として、リチウムナイオベート(LiNbO3)のように電界を印加することにより屈折率が変化する、いわゆる電気光学効果を有する基板(以下、LN基板と略す)に光導波路と進行波電極を形成した進行波電極型リチウムナイオベート光変調器(以下、LN光変調器と略す)がある。このLN光変調器は、その優れたチャーピング特性から2.5Gbit/s、10Gbit/sの大容量光通信システムに適用されている。最近はさらに40Gbit/sの超大容量光通信システムにも適用が検討されている。
【0004】
以下、従来、実用化され、又は提唱されてきたリチウムナイオベートの電気光学効果を利用した各LN光変調器の特徴を順番に説明していく。
【0005】
(第1従来例)
図4は、z−カットLN基板を用いて構成した第1従来例のLN光変調器の斜視図であり、図5は図4のA−A’線における断面図である。
【0006】
z−カットLN基板1上に光導波路3が形成されている。この光導波路3は、金属Tiを1050℃で約10時間熱拡散して形成した光導波路であり、マッハツェンダ干渉系(あるいは、マッハツェンダ光導波路)を構成している。したがって、光導波路3には、電気信号と光が相互作用する部(相互作用部と言う)における2本の光導波路3a、3b(あるいは、相互作用光導波路)、つまりマッハツェンダ光導波路の2本のアームが形成されている。
【0007】
この光導波路3の上面にSiO2バッファ層2が形成され、このSiO2バッファ層2の上面に進行波電極4が形成されている。進行波電極4としては、1つの中心導体4aと2つの接地導体4b、4cを有するコプレーナウェーブガイド(CPW)を用いることを想定する。
【0008】
光導波路3a、3bを導波する光が中心導体4aと接地導体4b、4cからなる進行波電極4を構成する金属(一般に、Auを用いる)から受ける吸収損を抑えるためと、進行波電極4を導波する電気信号のマイクロ波等価屈折率(あるいは、進行波電極のマイクロ波等価屈折率)nmを低減し光導波路3a、3bを導波する光の等価屈折率(あるいは、光導波路の等価屈折率)noに近づけるとともに、特性インピーダンスをなるべく50Ωに近づけるために、進行波電極4とz−カットLN基板1との間には、通常、400nm〜1μm程度の厚いSiO2バッファ層2を堆積する。
【0009】
図6に進行波電極の中心導体4aと接地導体4b、4c間に電界を印加した際における電気力線5の分布を示す。この図6から理解できるように、2つの光導波路3a、3bを横切る電気力線5の向きは互いに逆向きである。そのため、中心導体4aの下にある光導波路3bを伝搬する光の位相変化量をΔφ1、接地導体4bの下にある光導波路3aを伝搬する光の位相変化量をΔφ2とすると、Δφ1とΔφ2の符号は異なっている。
【0010】
マッハツェンダ光導波路では2本の光導波路3a、3bを伝搬する光の位相差Δφt(=|Δφ1|+|Δφ2|)をπとすることにより、合成された光のOFF状態を実現でき、この光変調器で光信号パルスを形成できる。
【0011】
ところが、この第1従来例のz-カットLN光変調器で形成した光信号パルスには数10Kmの長さの単一モード光ファイバー内を伝搬した際に、パルスの形が崩れる、いわゆるチャーピングが発生するという問題点がある。次にこれについて説明する。
【0012】
図6から理解できるように、中心導体4aの幅は接地導体4b、4cの幅より小さく、その幅はほぼ光導波路3bの幅と同じで6μm〜11μm程度である。したがって、中心導体4aの下にある光導波路3bを伝搬する光と電気力線5との相互作用の効率は高い。一方、接地導体4b、4cは幅が広いので中心導体4aから出た電気力線5は接地導体4b、4cに広く分布し、接地導体4b側の光導波路3aと電気力線5との相互作用の効率は低い。近似的に位相変化量は、|Δφ1|≒5|Δφ2|となる。
【0013】
そのため、この第1従来例のLN光変調器を用いて形成した光信号パルスにはチャーピングが生じる。ちなみに、チャーピングの度合いを表すアルファパラメータ(あるいは、αパラメータ)はこの光変調器から出力される光信号パルスが有する位相φと強度(パワー)Eとを用いて(1)式のように表現できる(非特許文献1)。
【0014】
α=[dφ/dt]/[(1/E)(dE/dt)] …(1)
このように、αパラメータは、出力される光信号パルスが有する位相変化量と強度変化量を用いて表現できる。
【0015】
さらに、具体的には、αパラメータは、(1)式を発展させた(2)式で表現できる。
【0016】
α=(Γ1―Γ2)/(Γ1+Γ2) …(2)
Γ1;電気信号(振幅)と光導波路1(3a)を伝搬する光(パワー)との1で規格化した重なり積分で示した効率
Γ2;電気信号(振幅)と光導波路2(3b)を伝搬する光(パワー)との1で規格化した重なり積分で示した効率
以上のように、図4、図5に示した第1従来例のLN光変調器で生成された光信号パルスにチャーピングが発生する原因は中心導体4a側の光導波路3bと接地導体4b側の光導波路3aに発生する位相変化量の絶対値が同じでないことに起因する。
【0017】
(第2従来例)
図7は、上述した第1従来例の問題点を解消するために提唱された第2従来例のLN光変調器の断面図である。なお、図5に示す第1従来例のLN光変調器と同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明を省略する。
【0018】
この第2従来例のLN光変調器においては、進行波電極として、2つの中心導体6a、6bと3つの接地導体7a、7b、7cが形成されている。すなわち、第1従来例に示したCPW電極が2つ使用されており、2電極型、あるいはプッシュプル型CPW進行波電極と呼ばれている。したがって、中心導体6a、6bと接地導体7a、7b、7cとの間に図7に示す電気力線8が生じる。
【0019】
この第2従来例においては、光導波路3a、3bは各々幅の等しい2つのCPW電極の中心導体6a、6bの直下にあるので、光導波路3a、3bを伝搬する光の位相変化量は絶対値が等しく符号が逆となり、原理的にチャーピングゼロを実現できるはずである。
【0020】
ところが、前述のように、光導波路3a、3bを伝搬する光の位相変化量は絶対値が等しく符号が正確に逆でなければならないため、この第2従来例のLN光変調器をチャーピングゼロ状態で動作させるためには、中心導体6a、6bには正確に正、負逆位相の電気信号を加える必要があり、極めて難しい問題を生じる。
【0021】
つまり、集積回路(Integrated Circuit :IC)の異なるポートから出る2つの逆位相の電気信号が、ICを出た後に中心導体6a、6bに加わる際の位相を正確に正、負逆位相とすることは、ICからの出力後、進行波電極の各中心導体6a、6bにおける各相互作用部までの電気的長さを完全に同じにするとともに、電気波形の立ち上がり、立下りの形状まで同じにすることを意味しており、実際には技術的に多大の手間と時間と困難性との課題がある。
【0022】
(第3従来例)
図8は上述した第2従来例の問題点を解消するために特許文献1にて提唱された第3従来例のLN光変調器の平面図であり、図9は図8のB−B’線における断面図である。なお、図5、図6に示す第1従来例のLN光変調器と同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明を省略する。
【0023】
この第3従来例のLN光変調器においては、光導波路9にはマッハツェンダ光導波路を構成する2本の光導波路9a、9bが形成されている。また、進行波電極として、2つの中心導体10a、10bと3つの接地導体11a、11b、11cが形成されている。さらに、z−カットLN基板1は分極を反転していない領域1aと分極を反転した領域1bとで構成されている。具体的には、z−カットLN基板1は2本の光導波路9a、9b相互間の中心付近を境界として、分極が反転されている。光導波路9a側が分極を反転していない領域1aに対応し、光導波路9b側が分極を反転した領域1bに対応する。中心導体10a、10bと接地導体11a、11b、11cとの間に図9に示す電気力線12が生じる。
【0024】
このような第3従来例のLN光変調器の動作原理を説明する。まず、光導波路9に入射した光は、マッハツェンダ光導波路を構成する2本の光導波路9a、9bを伝搬するように2分岐される。一方、中心導体10も2つの中心導体10a、10bに2分岐されているので、電気信号は図9に示すように、光導波路9a、9bに同方向に印加される。
【0025】
通常、z−カット光変調器は光導波路9を製作するための金属Tiの拡散状態から基板表面として−z面が使用される。従って、分極を反転していない領域1aでは−z面を、分極を反転した領域1bでは+z面を使用している。電気光学的には−z面と+z面に電界を印加すると、生じる屈折率変化は絶対値が等しく符号が逆である。
【0026】
この第3従来例では、z−カットLN基板1はマッハツェンダ光導波路の中心付近を境界として分極を反転しているので、図9に示す同方向の電気力線12によっても、光導波路9a、9bを伝搬する光の位相変化は符号が逆となる。したがって、光導波路9a、9bを伝搬する光の位相変化を絶対値が同じで符号が逆とすることにより、このLN光変調器から出力される光信号パルスのチャーピングを低減している。
【0027】
しかしながら、この第3従来例のLN光変調器においてもまだ次のような課題があった。
【0028】
一般に、LN光変調器は3インチから4インチの大きさのz−カットLN基板1上に製作するが、各LN光変調器は15μm〜30μm程度のギャップを有するマッハツェンダ光導波路9a、9bを有している。図8に示した第3従来例のLN光変調器を製作する工程のうち、光導波路を実際に製作する工程について考える。
【0029】
まず、マッハツェンダ光導波路9の2本の光導波路9a、9bのギャップの中心を境界として分極を反転する。この分極を反転する工程には、z−カットLN基板1における所望の位置の上面と下面全面に電極をパターニングした後、高電界を印加して分極ドメインを反転させた後、上下に形成した電極をエッチングはく離する。次に、分極を反転した境界が2本の光導波路9a、9bのギャップの中央に合うようにマッハツェンダ光導波路用のフォトレジストパターンを形成するとともに、金属Tiを蒸着・リフトオフする。最後に、形成された金属Tiパターンを熱拡散し、マッハツェンダ光導波路9を形成する。
【0030】
分極を反転していない領域1aと分極を反転した領域1bでは基板の物性が異なるため、光導波路9a、9bを形成するための金属Tiがz−カットLN基板1へ拡散する状態も異なってくる。その結果、光のスポットサイズや伝搬損失について、分極を反転していない領域1aと分極を反転した領域1bとでは異なる。
【0031】
分極を反転していない領域1aに形成した光導波路9aを伝搬する光のスポットサイズが分極を反転した領域1bに形成した光導波路9a、9bを伝搬する光のスポットサイズが異なるということは、中心導体10a、10bと接地導体11a、11bからなる進行波電極を伝搬する電気信号と2本の光導波路9a、9bを伝搬する光の相互作用の効率(一般には、前述したように、電気信号と光のパワーの重なり積分で表される)が2本の光導波路9a、9bとで異なることになる。
【0032】
図6に示す第1従来例のLN光変調器で説明したように、2本の光導波路9a、9bを伝搬する光の位相変化量の絶対値が異なると、LN光変調器から出射された光信号パルスがチャーピング特性を持つことになり、チャーピングを極めて小さくするという課題の充分な解決にはなってはいない。
【0033】
また、分極を反転していない領域1aと分極を反転した領域1bでは伝搬損失も異なるので、2本の光導波路9a、9bを伝搬する光のパワーに差が生じ、結果的にLN光変調器から出射された光信号パルスにおけるOFF時の消光比が劣化するという問題もあった。
【0034】
さらに最も大きな問題点は、図8から理解できるように、電気信号と光との相互作用部において中心導体10を2つの中心導体10a、10bに2分割する必要がある。ここで、中心導体10a、10bの部分において50Ω系とすると分割前は25Ω程度と低くなるし、分割部において50Ω系とすると、分割後の中心導体10a、10bの部分においては100Ω程度と高くなるというインピーダンス不整合という重大な問題を原理的に持っている。あるいはこの分岐部の寸法精度上及び材料特性上の出来・不出来が反射特性(S11特性)に大きく影響し、結果的にLN光変調器の製造時における歩留まりに大きな影響があるという難しい問題を抱えていた。
【0035】
(第4従来例)
図10は非特許文献2にて提唱された第4従来例のLN光変調器の平面図である。
【0036】
この第4従来例のLN光変調器においては、LN基板は、光の入射側から順番に、分極を反転していない領域15a、分極を反転している領域15b、および分極を反転していない領域15cに区分けされている。そして、マッハツェンダ光導波路13を構成する2本の光導波路13a、13bが、LN基板における分極を反転していない領域15aから分極を反転している領域15bを通過している。
【0037】
また、進行波電極として、1つの中心導体14aと2つの接地導体14b、14cとが形成されている。中心導体14aは、分極を反転していない領域15aでは長さL/2だけ光導波路13bの上方に、また分極を反転している領域15bにおいても長さL/2だけ光導波路13aの上方に位置している。なお、ここでは領域15cも分極を反転していない領域とした。
【0038】
この第4従来例の光変調器の特徴は、分極を反転していない領域15aにおける中心導体14aの長さと分極を反転している領域15bにおける中心導体14aの長さがL/2と互いに等しいことである。
【0039】
第4従来例においては、2本の光導波路13a、13bを伝搬する各々の光が分極を反転していない領域15aと分極を反転している領域15bを伝搬する距離を等しく(=L/2)することにより、このLN光変調器から出射される光信号パルスにおけるチャーピングを小さくできるという考え方である。
【0040】
さて、一般に、電気信号の周波数が高くなると金属が持つ導体損失のために、中心導体14a、接地導体14b、14cからなる進行波電極を伝搬する電気信号は伝搬とともに弱くなる。この電気信号の伝搬損失のために、分極を反転していない領域15aと分極を反転している領域15bの長さがたとえL/2と等しくても、電気信号の下流側に位置する分極を反転している領域15bにおいて進行波電極を伝搬する電気信号の強度は分極を反転していない領域15aよりも弱い。
【0041】
その結果、中心導体14aと接地導体14b、14cとの間に印加される電気信号の周波数が高くなると、2本の光導波路13a、13bを伝搬する光の位相差の絶対値は異なってしまう。
【0042】
図12に、LN光変調器の中心導体と接地導体間に印加される電気信号の周波数を変化させた場合における、前述した(1)式又は(2)式で求まるチャーピングの大きさを示すαパラメータの変化(αパラメータの周波数特性)を示す。
【0043】
第4従来例のLN光変調器においては、図12の破線特性で示したように、DC付近の低周波ではチャーピングゼロ(αパラメータがゼロ)をほぼ実現できるものの、高い周波数ではチャーピングが大きくなる。その結果、光変調器から出射された光信号パルスは大きなチャーピングが生じることが理解できる。
【0044】
(第5従来例)
図11は上述した第4従来例の問題点を解決するために同じく非特許文献2にて提唱された第5従来例のLN光変調器の平面図である。
【0045】
この第5従来例のLN光変調器においては、LN基板は、光の入射側から順番に、分極を反転していない領域18a、分極を反転している領域18b、および分極を反転していない領域18cに区分けされている。そして、マッハツェンダ光導波路16の2本の光導波路16a、16bの上にある中心導体17aの長さをL/4、L/2、L/4と分け、中心導体17a、接地導体17b、17cからなる進行波電極を伝搬する電気信号の強度が強い領域と電気信号が弱い領域に各々長さL/4だけ分極を反転していない領域を割り当て、電気信号の強度が中位の領域に長さL/2だけ分極を反転した領域を割り当てている。このようにして、光と電気信号の相互作用の絶対値をマッハツェンダ光導波路16の2本の光導波路16a、16bにおいてなるべく近くしている。
【0046】
その結果、この第5従来例のLN光変調器においては、図12の実線特性で示したように、チャーピング量を表すαパラメータを、破線特性で示した第4従来例のLN光変調器のαパラメータより大幅に低減させることができる。
【0047】
しかしながら、図12の実線特性からも理解できるように、この第5従来例のLN光変調器においても、中心導体と接地導体間に印加される電気信号の周波数の増加に伴って、αパラメータが大きくなっており、高速光変調を行うとLN光変調器から出力される光信号パルスにチャーピングが生じてしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2003−202530号公報
【非特許文献1】Nadege Courjal et al “Modeling and Optimization of Low Chirp LiNbO3 Mach-Zehnder Modulators With an Inverted Ferroelectric Domain Section “Journal of Lightwave Technology vol.22 No.5 May 2004
【非特許文献2】Masaki Sugiyama et al “Compact Zero-Chirp LiNbO3 Modulator for 10-Gb/s Small-Factor Transponder” 30th European Conference on Optical Communication Post Deadline Session 2.Th 4.2.3,2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0048】
以上のように、LN基板に対して分極反転を用いる従来例としては、分極を反転していない領域と反転した領域の境界がマッハツェンダ光導波路を構成する2本のアーム(光導波路)に平行となるように分極を反転した領域を形成する構成(第3従来例)と、その境界が2本のアーム(光導波路)に垂直になるように分極を反転した領域を形成する構成(第4従来例、第5従来例)とがある。
【0049】
前者の場合、すなわち光導波路を各々異なる分極のLN基板に形成する場合(第3従来例、図8、図9)には、2本のアーム(光導波路)を伝搬する光のスポットサイズが異なっているので、中心導体と接地導体間に印加される電気信号の周波数が0、すなわち、DC付近においてでさえもチャーピングを極めて小さくすることが難しく、また何よりも中心導体を2分岐せねばならずインピーダンスが不整となるという重大な問題を持っていた。
【0050】
一方、後者の構成において、分極を反転していない相互作用領域と分極を反転した相互作用領域の長さを等しくする場合(第4従来例、図10)には、DC付近においてチャーピングがゼロであっても周波数とともにチャーピングが大幅に大きくなる。また、分極を反転していない相互作用領域と分極を反転した相互作用領域の長さを従来の考え方に基づいて異ならしめるように設定する場合(第5従来例、図11)には、DC付近においてチャーピングがゼロであっても周波数が大きくなるとチャーピングが生じてしまうという問題があった。
【0051】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、進行波電極を1つの中心導体と2つの接地導体とで形成する簡単な構造を維持した状態で、たとえ中心導体と接地導体間に印加される高周波電気信号の周波数が変化したとしても、光導波路から出射される光信号パルスに発生するチャーピングの大きさを極力抑制できる光変調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0052】
上記課題を解消するために、本発明は、電気光学効果を有する材料からなるとともに、分極を反転しない領域と分極を反転する領域との2種類の領域で形成された基板と、基板の一面側に形成され、入射された光を分岐し合波するための第1、第2の分岐光導波路を備えた光導波路と、各分岐光導波路を伝搬する光と相互作用する高周波電気信号を伝搬させる中心導体及び接地導体からなる相互作用部とを具備し、中心導体は第1、第2の分岐光導波路に対してそれぞれ第1、第2の長さだけ対向し、基板における第1の長さに対向する部分と第2の長さに対向する部分とは互いに異なる方向に分極した領域で形成され、相互作用部の領域で各分岐光導波路を伝搬する光の位相を変調する光変調器に適応される。
【0053】
そして、高周波電気信号に基づいた所定の変調周波数の帯域内で、光導波路から出射される光信号パルスのチャーピングの大きさを表すアルファパラメータの符号が変調周波数変化に伴ってプラスからマイナスへ又はマイナスからプラスへ変化するように、第1、第2の長さを設定している。
【0054】
このように構成された光変調器においては、接地導体とで印加される高周波電気信号の進行波電極すなわち相互作用部を構成する中心導体は第1、第2の分岐光導波路に対して互いに異なる部分でそれぞれ第1、第2の長さだけ対向している。さらに、基板における第1の長さに対向する部分と第2の長さに対向する部分とは互いに異なる種類(分極非反転と分極反転との2種類)の領域で形成されている。
【0055】
そして、第1、第2の分岐光導波路を伝搬されている光の位相を相互作用部が正常に互いに異なる方向(異なる符号に)に変調する範囲である、中心導体における第1の光導波路に対向するとともに分極を反転していない領域に対向する第1の長さと、中心導体における第2の光導波路に対向するとともに分極を反転した領域に対向する第2の長さを調整して、使用周波数が含む変調帯域内においてチャーピング量を表すαパラメータの符号をプラスからマイナスへ、あるいはマイナスからプラスへ変更させている。
【0056】
したがって、この光変調器から出力される光信号パルスに生じるチャーピングが平均的に小さくなる。
【0057】
また、別の発明においては、上述した発明の光変調器において、高周波電気信号に基づいた所定の周波数帯域におけるアルファパラメータの周波数についての積分値がほぼゼロとなるように、第1、第2の長さを設定している。
【0058】
先の発明においてはαパラメータの符号がプラスからマイナスへ、あるいはマイナスからプラスへ変わり、ある1点の周波数においてαパラメータをゼロとしても、光パルスとして必要な周波数帯域内においてαパラメータが平均的にゼロとなっておらず、チャーピングが生じてしまう可能性もある。
【0059】
実際の光通信に使用されるNRZ、RZ、ソリトン等の光信号パルスは、単一の周波数でなく広い周波数帯域を含んでいる。したがって、光変調器により生成された光信号パルスのチャーピングを極めて小さくするためには、単一周波数だけではなく、光信号パルスが含む所定の周波数帯域内においてαパラメータを平均的にゼロとすることが重要である。
【0060】
そこで、上述したように、基板における互いに異なる種類(分極非反転と分極反転との2種類)の領域に対向する中央導体における第1、第2の長さを調整して、周波数帯域内におけるαパラメータの周波数についての積分値をほぼゼロにしている。したがって、実際の光通信システムにおいてチャーピングが極めて小さな光変調器を提供できる。
【0061】
また、別の発明においては、上述した発明の光変調器において、基板における分極を反転しない領域の数及び分極を反転した領域の少なくとも一方の数が複数個ある。
【発明の効果】
【0062】
本発明においては、第1、第2の光導波路に対向するととも基板における互い異なる種類(分極非反転と分極反転との2種類)の領域に対向する中央導体における第1、第2の長さを調整して、光信号パルスのチャーピングの大きさを表すアルファパラメータを変調周波数変化に伴ってプラスからマイナスへ又はマイナスからプラスへ変化させている。
【0063】
したがって、進行波電極を1つの中心導体と2つの接地導体とで形成する簡単な構造を維持した状態で、たとえ中心導体と接地導体間に印加される高周波電気信号の周波数が変化したとしても、光導波路から出射される光信号パルスに発生するチャーピングの大きさを極力抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明の各実施形態を図面を用いて説明する。
【0065】
(第1実施形態)
図1(a)は本発明の第1実施形態に係わる光変調器の概略構成を模式的に示す平面図であり、図1(b)は図1(a)の光変調器におけるC―C’線の断面図であり、図1(c)は図1(a)の光変調器におけるD―D’線の断面図である。
【0066】
z−カットLN基板21上に光導波路19が形成されている。この光導波路19は、金属Tiを1050℃で約10時間熱拡散して形成した光導波路であり、マッハツェンダ干渉系(あるいは、マッハツェンダ光導波路)を構成している。したがって、光導波路19は、この光変調器の左端の入射面に入射した光を導く導入用の光導波路19cと、光変調器の中央部分における分岐光導波路としての2本の光導波路19a、19bと、右端の出射面から光通信パルスを出射する出射用の光導波路19dとで構成されている。
【0067】
この光導波路19の上面に400nm〜1μm程度の厚みを有するSiO2バッファ層22が形成され、このSiO2バッファ層22の上面に進行波電極が形成されている。進行波電極としては、1つの中心導体20aと2つの接地導体20b、20cを有するコプレーナウェーブガイド(CPW)を採用している。この進行波電極における中心導体20aと接地導体20b、20cとの間に、変調信号としての高周波電気信号が印加される。
【0068】
中心導体20aは、第1の長さL1だけ第1の分岐光導波路としての光導波路19bの上方に位置し、さらに、第2の長さL2だけ第2の分岐光導波路としての光導波路19aの上方に位置している。一方の接地導体20bは中心導体20aに対して所定の間隔(ギャップ)を有して、中心導体20aの左側(入射面側)に位置し、他方の接地導体20cは中心導体20aに対して所定の間隔(ギャップ)を有して、中心導体20aの右側(出射面側)に位置している。
【0069】
z−カットLN基板21は、分極を反転していない領域(―z面領域)21aと、分極を反転している領域(+z面領域)21bとで構成されている。分極を反転していない領域21aと、分極を反転をしている領域21bとの境界は、図1(a)に点線で示すように、光導波路19a、19bに対して直角に、かつ、中心導体20aの第1の長さL1と第2の長さL2と接点を通過する。
【0070】
その結果、中心導体20aの第1の長さL1の部分は、第1の分岐光導波路としての光導波路19bとz−カットLN基板21における分極を反転していない領域21aに対向している。また、中心導体20aの第2の長さL2の部分は、第2の分岐光導波路としての光導波路19aとz−カットLN基板21における分極を反転をしている領域21bに対向している。
【0071】
このような構造の光変調器において、中心導体20aと接地導体21b、21cに変調信号としての高周波電気信号を印加した状態、具体的には中心導体20aの第1の長さL1側端からマイクロ波を入力した状態において、光をこの光変調器の左端の入射面から入射すると、光は導入用の光導波路19cを通過して、2本の光導波路19a、19bへ分岐される。分岐された各光は、この光導波路19a、19bを伝搬する過程で、中心導体20aと接地導体20b、20cとからなる相互作用部にて、高周波電気信号に応じて位相変調され、出射用の光導波路19dで波形合成されて、出射端から光信号パルスとして出力される。
【0072】
このような光変調機能を有する第1実施形態の光変調器において、高周波電気信号を中心導体20aと接地導体20b、20cに印加した状態において、中心導体20aと接地導体20b、20cとからなる進行波電極の高周波電気信号の周波数fにおけるマイクロ波伝搬損失をβm(f)とし、中心導体20aにおける、第1の長さL1の部分(光導波路19bに対向しかつ分極を反転していない領域21aに対向する部分)と、第2の長さL2の部分(光導波路19aに対向しかつ分極を反転している領域21bに対向する部分)とにおいて、電気信号と光導波路19a、19bを伝搬する光との相互作用の効率をそれぞれI1(f)、I2(f)と表す。光及び電気信号の伝搬方向を図1(a)に示すようにzとすると、各相互作用の効率I1(f)、I2(f)は周波数fに依存し、(3)、(4)式で記述できる。
【0073】
I1(f)=∫0L1 exp(−βm(f)・z)dz
=(1−exp(−βm(f)・L1))/βm(f) …(3)
I2(f)=∫L1L2 exp(−βm(f)・z)dz
=exp(−βm(f)・L1)・(1−exp(−βm(f)・L2))/βm(f)
…(4)
そこで、両者の相互作用の効率I1(f)、I2(f)が等しくなる(5)式の条件
I1(f)=I2(f) …(5)
を満たす中心導体20aにおける第1の長さL1と、第2の長さL2を設定することにより、任意に指定された周波数fにおいてチャーピングをゼロとできる。つまり、(5)式が成立する場合にはαパラメータがゼロとなる。
【0074】
(5)式を満たす第1の長さL1と第2の長さL2から、第1の長さL1の部分の相互作用の効率I1(f)、第2の長さL2の部分の相互作用の効率I2(f)を求め、さらに、前述した(2)式を用いて、高周波電気信号の各周波数fにおける示すαパラメータの周波数特性が求まる。
【0075】
図2(a)、図2(b)に求めたαパラメータの周波数特性を示す。図2(a)に、印加された高周波電気信号の周波数fの増加に伴ってαパラメータの符号がマイナス(−)からプラス(+)へ変化するαパラメータの周波数特性を示し、図2(b)に、高周波電気信号の周波数fの増加に伴ってαパラメータの符号がプラス(+)からマイナス(−)へ変化するαパラメータの周波数特性を示す。
【0076】
このように、印加された高周波電気信号の周波数fにおけるDC付近の低周波領域と高周波領域においてチャーピング量を表すαパラメータの符号が入れ替わるように、中心導体20aにおける分極を反転していない領域21aに対向する第1の長さL1と、中心導体20aにおける分極を反転した領域21bに対向する第2の長さL2を設定している。これを実現するためには、L1/L2=0.89であった。すなわち、中心導体20aにお第2の長さL2を第1の長さL1より若干長く設定すればよい。但し、この値は電極の構造により変わるので、第1の長さL1と第2の長さL2の比はこの限りではないことは言うまでもない。
【0077】
なお、注意すべきはαパラメータが常に正、あるいは常に負で、ある周波数でのみゼロとなる場合にも(5)式を満足することができるが、光変調器から出射する光信号パルスにとって重要なことは、必要な所定の周波数帯域内においてαパラメータを平均的にゼロとすることであり、特定の周波数のみでゼロになったとしても、このような光変調器を光通信システムに採用することはできない。
【0078】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態の光変調器を説明する。第2実施形態の光変調器は第1実施形態の光変調器の改良型である。つまり、第1実施形態の光変調器から出射した光信号パルスのチャーピングはかなり小さくなるものの、光通信システムで伝送される光信号パルスとして必要な所定の周波数帯域内においてαパラメータを平均的にゼロとすることがより強く求められる。
【0079】
第2実施形態の光変調器では、図3(a)、図3(b)に示すように、光信号パルスとして必要な所定の周波数帯域の最大周波数をfmaxとし、図3(a)に示すように、周波数fの増加に伴ってαパラメータの符号がマイナス(−)からプラス(+)からへ変化するαパラメータの周波数特性のうちの、DC近傍からαパラメータがゼロとなる周波数f0までのαパラメータをα1(f)とし、周波数f0から最大周波数fmaxまでのαパラメータをα2(f)とすると、
∫0f0α1(f)df=∫f0fmaxα2(f)df …(6)
となるように、中心導体20aにおける分極を反転していない領域21aに対向する第1の長さL1と、中心導体20aにおける分極を反転した領域21bに対向する第2の長さL2を設定する。このことは、図3(a)において面積S1と面積S2とを等しくすることに対応する。
【0080】
また、図3(b)に示すように、周波数fの増加に伴ってαパラメータの符号がプラス(+)からマイナス(−)へ変化するαパラメータの周波数特性のうちの、DC近傍からαパラメータがゼロとなる周波数f0までのαパラメータをα3(f)とし、周波数f0から最大周波数fmaxまでのαパラメータをα4(f)とすると、
∫0f0α3(f)df=∫f0fmaxα4(f)df …(7)
となるように、中心導体20aにおける分極を反転していない領域21aに対向する第1の長さL1と、中心導体20aにおける分極を反転した領域21bに対向する第2の長さL2を設定する。このことは、図3(b)において面積S3と面積S4とを等しくすることに対応する。
【0081】
これを実現するためには、L1/L2=0.7が好ましい値であった。但し、この値は電極の構造により変わるので、この限りではないことは言うまでもない。また、光信号パルスに含まれる最大周波数は光伝送方式によって異なるので、例として図示した実施形態の限りではない。
【0082】
なお、図2(a)、図2(b)に示す第1実施形態の光変調器においてαパラメータをゼロにする周波数と、図3(a)、図3(b)に示す第2実施形態の光変調器において(6)、(7)式を満たす周波数f0とは当然異なっている。
【0083】
ここで、本発明の第1実施形態において補足説明したαパラメータが常に正、あるいは常に負で、ある特定周波数においてのみゼロとなる場合には、(5)式は満たすものの、(6)、(7)式を満足することはない。この観点からも上述したαパラメータが常に正、あるいは常に負で、ある特定周波数においてのみゼロとなる場合は、光通信システムで伝送される光信号パルスとして必要な所定の周波数帯域内においてαパラメータを平均的にゼロとすることができない。
【0084】
さらに、電気信号をフーリエ変換した場合に、その電気信号が特定の周波数領域の成分を多く有する場合にはその周波数領域を表す重みW(f)を用いて、以下のように積分しても良い。
【0085】
∫0f0α1(f)W(f)df=∫f0fmaxα2(f)W(f)df
…(8)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。
【0086】
実施形態においては、z−カットLN基板21における分極反転をしていない領域21aを光の入射面側に配置し、分極反転をしている領域21bを光信号パルスの出射面側に配置したが、この逆の位置に配置してもよい。
【0087】
また、実施形態の光変調器においては、簡単のために図10に示した第4従来例の光変調器とほぼ同じ基本構造としたが、図11に示した第5従来例の光変調器に対しても、中心導体に対向する分極を反転した領域としない領域の長さを適切に設定することにより本発明の効果を実現できる。
【0088】
さらに、分極を反転した領域と分極を反転しない領域の繰り返しの数を多く増やしても、光信号パルスとして必要な所定の周波数帯域内においてαパラメータの符号を異ならしめる、あるいはその所定の周波数帯域内におけるαパラメータの周波数に対する積分値をほぼゼロとするという本発明の考えを用いることによりチャーピングを著しく小さくすることが可能となる。
【0089】
以上では、進行波電極を伝搬する電気信号と光導波路を伝搬する光が相互作用する相互作用部において、中心導体に対向する分極を反転した領域の長さと分極を反転しない領域の長さを異ならしめる構成について説明した。一方、中心導体の幅や中心導体と接地導体の間のギャップを広くしても進行波電極の伝搬損失を低減できるので、逆に、分極を反転した領域と分極を反転しない領域の長さを等しくするとともに、中心導体の幅や中心導体と接地導体のギャップの幅を光や電気信号の伝搬方向において異ならしめても良いし、これらの構成を組み合わせても良い。
【0090】
なお、通常は光導波路と上方で重なる中心導体の長さは、光導波路と上方で重なる接地導体の長さと等しいが、どちらか一方を他方よりも長くすることにより、光電気信号の相互作用領域の長さをより長く確保できるので、変調の効率をより高めることが可能となる。
【0091】
分岐光導波路の例としてマッハツェンダ光導波路を用いたが、方向性結合器などその他の分岐合波型の光導波路にも本発明を適用可能であることは言うまでもないし、考え方は3本以上の光導波路にも適用可能である。また光導波路の形成法としてはTi熱拡散法の他に、プロトン交換法など光導波路の各種形成法を適用できるし、バッファ層としてSiO2以外の各種材料も適用できる。
【0092】
電極構成としてはCPW電極を用いた構成について説明したが、非対称コプレーナストリップ(ACPS)あるいは対称コプレーナストリップ(CPS)など、その他の構成でも良い。
【0093】
また、相互作用部におけるz-カットLN基板の分極を反転した領域は1箇所として説明したがそれ以上とし、分極を反転しない領域と分極を反転させた領域を交互に組み合わせた構造でも良いことは言うまでもない。なお、分極は基板の表面のみについて反転してもよい。
【0094】
さらに、従来使用されている進行波電極を厚くする、あるいはバッファ層を厚くするなど電気信号と光の速度差を小さくする手法はそのまま本発明にも適用可能である。また電気信号の出力側を40Ωや50Ωなどの終端器で終端しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる光変調器の概略構成を示す平面図及び断面図
【図2】同第1実施形態に係わる光変調器から出射された光信号パルスのαパラメータの周波数特性を示す図
【図3】本発明の第2実施形態に係わる光変調器から出射された光信号パルスのαパラメータの周波数特性を示す図
【図4】第1従来例の光変調器の概略構成を示す斜視図
【図5】同第1従来例の光変調器の断面図
【図6】同第1従来例の光変調器の動作を示す電力線図
【図7】第2従来例の光変調器の動作を示す電力線図
【図8】第3従来例の光変調器の概略構成を示す平面図
【図9】同第3従来例の光変調器の動作を示す電力線図
【図10】第4従来例の光変調器の概略構成を示す平面図
【図11】第5従来例の光変調器の概略構成を示す平面図
【図12】第4、第5従来例の光変調器から出射された光信号パルスのαパラメータの周波数特性を示す図
【符号の説明】
【0096】
1,21…z−カットLN基板、1a,15a,15c,21a…分極を反転しない領域、1b,15b,21b…分極を反転する領域、2,22…SiO2バッファ層、3,9,13,16,19…マッハツェンダ光導波路、3a,3b,9a,9b,13a,13b,16a,16b,19a,19b…マッハツェンダ光導波路を構成する光導波路、4…進行波電極、4a,6a,6b,10a,10b,14a,17a,20a…中心導体、4b,4c,7a,7b,7c,11a,11b,11c,14b,14c,17b,17c,20b,20c…接地導体
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路に入射した光を電気光学効果を利用して高周波電気信号で変調して光信号パルスとして出射する光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速、大容量の光通信システムが実用化されている。このような高速、大容量の光通信システムに組込むための高速、小型、かつ低価格の光変調器の開発が求められている。
【0003】
このような要望に応える光変調器として、リチウムナイオベート(LiNbO3)のように電界を印加することにより屈折率が変化する、いわゆる電気光学効果を有する基板(以下、LN基板と略す)に光導波路と進行波電極を形成した進行波電極型リチウムナイオベート光変調器(以下、LN光変調器と略す)がある。このLN光変調器は、その優れたチャーピング特性から2.5Gbit/s、10Gbit/sの大容量光通信システムに適用されている。最近はさらに40Gbit/sの超大容量光通信システムにも適用が検討されている。
【0004】
以下、従来、実用化され、又は提唱されてきたリチウムナイオベートの電気光学効果を利用した各LN光変調器の特徴を順番に説明していく。
【0005】
(第1従来例)
図4は、z−カットLN基板を用いて構成した第1従来例のLN光変調器の斜視図であり、図5は図4のA−A’線における断面図である。
【0006】
z−カットLN基板1上に光導波路3が形成されている。この光導波路3は、金属Tiを1050℃で約10時間熱拡散して形成した光導波路であり、マッハツェンダ干渉系(あるいは、マッハツェンダ光導波路)を構成している。したがって、光導波路3には、電気信号と光が相互作用する部(相互作用部と言う)における2本の光導波路3a、3b(あるいは、相互作用光導波路)、つまりマッハツェンダ光導波路の2本のアームが形成されている。
【0007】
この光導波路3の上面にSiO2バッファ層2が形成され、このSiO2バッファ層2の上面に進行波電極4が形成されている。進行波電極4としては、1つの中心導体4aと2つの接地導体4b、4cを有するコプレーナウェーブガイド(CPW)を用いることを想定する。
【0008】
光導波路3a、3bを導波する光が中心導体4aと接地導体4b、4cからなる進行波電極4を構成する金属(一般に、Auを用いる)から受ける吸収損を抑えるためと、進行波電極4を導波する電気信号のマイクロ波等価屈折率(あるいは、進行波電極のマイクロ波等価屈折率)nmを低減し光導波路3a、3bを導波する光の等価屈折率(あるいは、光導波路の等価屈折率)noに近づけるとともに、特性インピーダンスをなるべく50Ωに近づけるために、進行波電極4とz−カットLN基板1との間には、通常、400nm〜1μm程度の厚いSiO2バッファ層2を堆積する。
【0009】
図6に進行波電極の中心導体4aと接地導体4b、4c間に電界を印加した際における電気力線5の分布を示す。この図6から理解できるように、2つの光導波路3a、3bを横切る電気力線5の向きは互いに逆向きである。そのため、中心導体4aの下にある光導波路3bを伝搬する光の位相変化量をΔφ1、接地導体4bの下にある光導波路3aを伝搬する光の位相変化量をΔφ2とすると、Δφ1とΔφ2の符号は異なっている。
【0010】
マッハツェンダ光導波路では2本の光導波路3a、3bを伝搬する光の位相差Δφt(=|Δφ1|+|Δφ2|)をπとすることにより、合成された光のOFF状態を実現でき、この光変調器で光信号パルスを形成できる。
【0011】
ところが、この第1従来例のz-カットLN光変調器で形成した光信号パルスには数10Kmの長さの単一モード光ファイバー内を伝搬した際に、パルスの形が崩れる、いわゆるチャーピングが発生するという問題点がある。次にこれについて説明する。
【0012】
図6から理解できるように、中心導体4aの幅は接地導体4b、4cの幅より小さく、その幅はほぼ光導波路3bの幅と同じで6μm〜11μm程度である。したがって、中心導体4aの下にある光導波路3bを伝搬する光と電気力線5との相互作用の効率は高い。一方、接地導体4b、4cは幅が広いので中心導体4aから出た電気力線5は接地導体4b、4cに広く分布し、接地導体4b側の光導波路3aと電気力線5との相互作用の効率は低い。近似的に位相変化量は、|Δφ1|≒5|Δφ2|となる。
【0013】
そのため、この第1従来例のLN光変調器を用いて形成した光信号パルスにはチャーピングが生じる。ちなみに、チャーピングの度合いを表すアルファパラメータ(あるいは、αパラメータ)はこの光変調器から出力される光信号パルスが有する位相φと強度(パワー)Eとを用いて(1)式のように表現できる(非特許文献1)。
【0014】
α=[dφ/dt]/[(1/E)(dE/dt)] …(1)
このように、αパラメータは、出力される光信号パルスが有する位相変化量と強度変化量を用いて表現できる。
【0015】
さらに、具体的には、αパラメータは、(1)式を発展させた(2)式で表現できる。
【0016】
α=(Γ1―Γ2)/(Γ1+Γ2) …(2)
Γ1;電気信号(振幅)と光導波路1(3a)を伝搬する光(パワー)との1で規格化した重なり積分で示した効率
Γ2;電気信号(振幅)と光導波路2(3b)を伝搬する光(パワー)との1で規格化した重なり積分で示した効率
以上のように、図4、図5に示した第1従来例のLN光変調器で生成された光信号パルスにチャーピングが発生する原因は中心導体4a側の光導波路3bと接地導体4b側の光導波路3aに発生する位相変化量の絶対値が同じでないことに起因する。
【0017】
(第2従来例)
図7は、上述した第1従来例の問題点を解消するために提唱された第2従来例のLN光変調器の断面図である。なお、図5に示す第1従来例のLN光変調器と同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明を省略する。
【0018】
この第2従来例のLN光変調器においては、進行波電極として、2つの中心導体6a、6bと3つの接地導体7a、7b、7cが形成されている。すなわち、第1従来例に示したCPW電極が2つ使用されており、2電極型、あるいはプッシュプル型CPW進行波電極と呼ばれている。したがって、中心導体6a、6bと接地導体7a、7b、7cとの間に図7に示す電気力線8が生じる。
【0019】
この第2従来例においては、光導波路3a、3bは各々幅の等しい2つのCPW電極の中心導体6a、6bの直下にあるので、光導波路3a、3bを伝搬する光の位相変化量は絶対値が等しく符号が逆となり、原理的にチャーピングゼロを実現できるはずである。
【0020】
ところが、前述のように、光導波路3a、3bを伝搬する光の位相変化量は絶対値が等しく符号が正確に逆でなければならないため、この第2従来例のLN光変調器をチャーピングゼロ状態で動作させるためには、中心導体6a、6bには正確に正、負逆位相の電気信号を加える必要があり、極めて難しい問題を生じる。
【0021】
つまり、集積回路(Integrated Circuit :IC)の異なるポートから出る2つの逆位相の電気信号が、ICを出た後に中心導体6a、6bに加わる際の位相を正確に正、負逆位相とすることは、ICからの出力後、進行波電極の各中心導体6a、6bにおける各相互作用部までの電気的長さを完全に同じにするとともに、電気波形の立ち上がり、立下りの形状まで同じにすることを意味しており、実際には技術的に多大の手間と時間と困難性との課題がある。
【0022】
(第3従来例)
図8は上述した第2従来例の問題点を解消するために特許文献1にて提唱された第3従来例のLN光変調器の平面図であり、図9は図8のB−B’線における断面図である。なお、図5、図6に示す第1従来例のLN光変調器と同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明を省略する。
【0023】
この第3従来例のLN光変調器においては、光導波路9にはマッハツェンダ光導波路を構成する2本の光導波路9a、9bが形成されている。また、進行波電極として、2つの中心導体10a、10bと3つの接地導体11a、11b、11cが形成されている。さらに、z−カットLN基板1は分極を反転していない領域1aと分極を反転した領域1bとで構成されている。具体的には、z−カットLN基板1は2本の光導波路9a、9b相互間の中心付近を境界として、分極が反転されている。光導波路9a側が分極を反転していない領域1aに対応し、光導波路9b側が分極を反転した領域1bに対応する。中心導体10a、10bと接地導体11a、11b、11cとの間に図9に示す電気力線12が生じる。
【0024】
このような第3従来例のLN光変調器の動作原理を説明する。まず、光導波路9に入射した光は、マッハツェンダ光導波路を構成する2本の光導波路9a、9bを伝搬するように2分岐される。一方、中心導体10も2つの中心導体10a、10bに2分岐されているので、電気信号は図9に示すように、光導波路9a、9bに同方向に印加される。
【0025】
通常、z−カット光変調器は光導波路9を製作するための金属Tiの拡散状態から基板表面として−z面が使用される。従って、分極を反転していない領域1aでは−z面を、分極を反転した領域1bでは+z面を使用している。電気光学的には−z面と+z面に電界を印加すると、生じる屈折率変化は絶対値が等しく符号が逆である。
【0026】
この第3従来例では、z−カットLN基板1はマッハツェンダ光導波路の中心付近を境界として分極を反転しているので、図9に示す同方向の電気力線12によっても、光導波路9a、9bを伝搬する光の位相変化は符号が逆となる。したがって、光導波路9a、9bを伝搬する光の位相変化を絶対値が同じで符号が逆とすることにより、このLN光変調器から出力される光信号パルスのチャーピングを低減している。
【0027】
しかしながら、この第3従来例のLN光変調器においてもまだ次のような課題があった。
【0028】
一般に、LN光変調器は3インチから4インチの大きさのz−カットLN基板1上に製作するが、各LN光変調器は15μm〜30μm程度のギャップを有するマッハツェンダ光導波路9a、9bを有している。図8に示した第3従来例のLN光変調器を製作する工程のうち、光導波路を実際に製作する工程について考える。
【0029】
まず、マッハツェンダ光導波路9の2本の光導波路9a、9bのギャップの中心を境界として分極を反転する。この分極を反転する工程には、z−カットLN基板1における所望の位置の上面と下面全面に電極をパターニングした後、高電界を印加して分極ドメインを反転させた後、上下に形成した電極をエッチングはく離する。次に、分極を反転した境界が2本の光導波路9a、9bのギャップの中央に合うようにマッハツェンダ光導波路用のフォトレジストパターンを形成するとともに、金属Tiを蒸着・リフトオフする。最後に、形成された金属Tiパターンを熱拡散し、マッハツェンダ光導波路9を形成する。
【0030】
分極を反転していない領域1aと分極を反転した領域1bでは基板の物性が異なるため、光導波路9a、9bを形成するための金属Tiがz−カットLN基板1へ拡散する状態も異なってくる。その結果、光のスポットサイズや伝搬損失について、分極を反転していない領域1aと分極を反転した領域1bとでは異なる。
【0031】
分極を反転していない領域1aに形成した光導波路9aを伝搬する光のスポットサイズが分極を反転した領域1bに形成した光導波路9a、9bを伝搬する光のスポットサイズが異なるということは、中心導体10a、10bと接地導体11a、11bからなる進行波電極を伝搬する電気信号と2本の光導波路9a、9bを伝搬する光の相互作用の効率(一般には、前述したように、電気信号と光のパワーの重なり積分で表される)が2本の光導波路9a、9bとで異なることになる。
【0032】
図6に示す第1従来例のLN光変調器で説明したように、2本の光導波路9a、9bを伝搬する光の位相変化量の絶対値が異なると、LN光変調器から出射された光信号パルスがチャーピング特性を持つことになり、チャーピングを極めて小さくするという課題の充分な解決にはなってはいない。
【0033】
また、分極を反転していない領域1aと分極を反転した領域1bでは伝搬損失も異なるので、2本の光導波路9a、9bを伝搬する光のパワーに差が生じ、結果的にLN光変調器から出射された光信号パルスにおけるOFF時の消光比が劣化するという問題もあった。
【0034】
さらに最も大きな問題点は、図8から理解できるように、電気信号と光との相互作用部において中心導体10を2つの中心導体10a、10bに2分割する必要がある。ここで、中心導体10a、10bの部分において50Ω系とすると分割前は25Ω程度と低くなるし、分割部において50Ω系とすると、分割後の中心導体10a、10bの部分においては100Ω程度と高くなるというインピーダンス不整合という重大な問題を原理的に持っている。あるいはこの分岐部の寸法精度上及び材料特性上の出来・不出来が反射特性(S11特性)に大きく影響し、結果的にLN光変調器の製造時における歩留まりに大きな影響があるという難しい問題を抱えていた。
【0035】
(第4従来例)
図10は非特許文献2にて提唱された第4従来例のLN光変調器の平面図である。
【0036】
この第4従来例のLN光変調器においては、LN基板は、光の入射側から順番に、分極を反転していない領域15a、分極を反転している領域15b、および分極を反転していない領域15cに区分けされている。そして、マッハツェンダ光導波路13を構成する2本の光導波路13a、13bが、LN基板における分極を反転していない領域15aから分極を反転している領域15bを通過している。
【0037】
また、進行波電極として、1つの中心導体14aと2つの接地導体14b、14cとが形成されている。中心導体14aは、分極を反転していない領域15aでは長さL/2だけ光導波路13bの上方に、また分極を反転している領域15bにおいても長さL/2だけ光導波路13aの上方に位置している。なお、ここでは領域15cも分極を反転していない領域とした。
【0038】
この第4従来例の光変調器の特徴は、分極を反転していない領域15aにおける中心導体14aの長さと分極を反転している領域15bにおける中心導体14aの長さがL/2と互いに等しいことである。
【0039】
第4従来例においては、2本の光導波路13a、13bを伝搬する各々の光が分極を反転していない領域15aと分極を反転している領域15bを伝搬する距離を等しく(=L/2)することにより、このLN光変調器から出射される光信号パルスにおけるチャーピングを小さくできるという考え方である。
【0040】
さて、一般に、電気信号の周波数が高くなると金属が持つ導体損失のために、中心導体14a、接地導体14b、14cからなる進行波電極を伝搬する電気信号は伝搬とともに弱くなる。この電気信号の伝搬損失のために、分極を反転していない領域15aと分極を反転している領域15bの長さがたとえL/2と等しくても、電気信号の下流側に位置する分極を反転している領域15bにおいて進行波電極を伝搬する電気信号の強度は分極を反転していない領域15aよりも弱い。
【0041】
その結果、中心導体14aと接地導体14b、14cとの間に印加される電気信号の周波数が高くなると、2本の光導波路13a、13bを伝搬する光の位相差の絶対値は異なってしまう。
【0042】
図12に、LN光変調器の中心導体と接地導体間に印加される電気信号の周波数を変化させた場合における、前述した(1)式又は(2)式で求まるチャーピングの大きさを示すαパラメータの変化(αパラメータの周波数特性)を示す。
【0043】
第4従来例のLN光変調器においては、図12の破線特性で示したように、DC付近の低周波ではチャーピングゼロ(αパラメータがゼロ)をほぼ実現できるものの、高い周波数ではチャーピングが大きくなる。その結果、光変調器から出射された光信号パルスは大きなチャーピングが生じることが理解できる。
【0044】
(第5従来例)
図11は上述した第4従来例の問題点を解決するために同じく非特許文献2にて提唱された第5従来例のLN光変調器の平面図である。
【0045】
この第5従来例のLN光変調器においては、LN基板は、光の入射側から順番に、分極を反転していない領域18a、分極を反転している領域18b、および分極を反転していない領域18cに区分けされている。そして、マッハツェンダ光導波路16の2本の光導波路16a、16bの上にある中心導体17aの長さをL/4、L/2、L/4と分け、中心導体17a、接地導体17b、17cからなる進行波電極を伝搬する電気信号の強度が強い領域と電気信号が弱い領域に各々長さL/4だけ分極を反転していない領域を割り当て、電気信号の強度が中位の領域に長さL/2だけ分極を反転した領域を割り当てている。このようにして、光と電気信号の相互作用の絶対値をマッハツェンダ光導波路16の2本の光導波路16a、16bにおいてなるべく近くしている。
【0046】
その結果、この第5従来例のLN光変調器においては、図12の実線特性で示したように、チャーピング量を表すαパラメータを、破線特性で示した第4従来例のLN光変調器のαパラメータより大幅に低減させることができる。
【0047】
しかしながら、図12の実線特性からも理解できるように、この第5従来例のLN光変調器においても、中心導体と接地導体間に印加される電気信号の周波数の増加に伴って、αパラメータが大きくなっており、高速光変調を行うとLN光変調器から出力される光信号パルスにチャーピングが生じてしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2003−202530号公報
【非特許文献1】Nadege Courjal et al “Modeling and Optimization of Low Chirp LiNbO3 Mach-Zehnder Modulators With an Inverted Ferroelectric Domain Section “Journal of Lightwave Technology vol.22 No.5 May 2004
【非特許文献2】Masaki Sugiyama et al “Compact Zero-Chirp LiNbO3 Modulator for 10-Gb/s Small-Factor Transponder” 30th European Conference on Optical Communication Post Deadline Session 2.Th 4.2.3,2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0048】
以上のように、LN基板に対して分極反転を用いる従来例としては、分極を反転していない領域と反転した領域の境界がマッハツェンダ光導波路を構成する2本のアーム(光導波路)に平行となるように分極を反転した領域を形成する構成(第3従来例)と、その境界が2本のアーム(光導波路)に垂直になるように分極を反転した領域を形成する構成(第4従来例、第5従来例)とがある。
【0049】
前者の場合、すなわち光導波路を各々異なる分極のLN基板に形成する場合(第3従来例、図8、図9)には、2本のアーム(光導波路)を伝搬する光のスポットサイズが異なっているので、中心導体と接地導体間に印加される電気信号の周波数が0、すなわち、DC付近においてでさえもチャーピングを極めて小さくすることが難しく、また何よりも中心導体を2分岐せねばならずインピーダンスが不整となるという重大な問題を持っていた。
【0050】
一方、後者の構成において、分極を反転していない相互作用領域と分極を反転した相互作用領域の長さを等しくする場合(第4従来例、図10)には、DC付近においてチャーピングがゼロであっても周波数とともにチャーピングが大幅に大きくなる。また、分極を反転していない相互作用領域と分極を反転した相互作用領域の長さを従来の考え方に基づいて異ならしめるように設定する場合(第5従来例、図11)には、DC付近においてチャーピングがゼロであっても周波数が大きくなるとチャーピングが生じてしまうという問題があった。
【0051】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、進行波電極を1つの中心導体と2つの接地導体とで形成する簡単な構造を維持した状態で、たとえ中心導体と接地導体間に印加される高周波電気信号の周波数が変化したとしても、光導波路から出射される光信号パルスに発生するチャーピングの大きさを極力抑制できる光変調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0052】
上記課題を解消するために、本発明は、電気光学効果を有する材料からなるとともに、分極を反転しない領域と分極を反転する領域との2種類の領域で形成された基板と、基板の一面側に形成され、入射された光を分岐し合波するための第1、第2の分岐光導波路を備えた光導波路と、各分岐光導波路を伝搬する光と相互作用する高周波電気信号を伝搬させる中心導体及び接地導体からなる相互作用部とを具備し、中心導体は第1、第2の分岐光導波路に対してそれぞれ第1、第2の長さだけ対向し、基板における第1の長さに対向する部分と第2の長さに対向する部分とは互いに異なる方向に分極した領域で形成され、相互作用部の領域で各分岐光導波路を伝搬する光の位相を変調する光変調器に適応される。
【0053】
そして、高周波電気信号に基づいた所定の変調周波数の帯域内で、光導波路から出射される光信号パルスのチャーピングの大きさを表すアルファパラメータの符号が変調周波数変化に伴ってプラスからマイナスへ又はマイナスからプラスへ変化するように、第1、第2の長さを設定している。
【0054】
このように構成された光変調器においては、接地導体とで印加される高周波電気信号の進行波電極すなわち相互作用部を構成する中心導体は第1、第2の分岐光導波路に対して互いに異なる部分でそれぞれ第1、第2の長さだけ対向している。さらに、基板における第1の長さに対向する部分と第2の長さに対向する部分とは互いに異なる種類(分極非反転と分極反転との2種類)の領域で形成されている。
【0055】
そして、第1、第2の分岐光導波路を伝搬されている光の位相を相互作用部が正常に互いに異なる方向(異なる符号に)に変調する範囲である、中心導体における第1の光導波路に対向するとともに分極を反転していない領域に対向する第1の長さと、中心導体における第2の光導波路に対向するとともに分極を反転した領域に対向する第2の長さを調整して、使用周波数が含む変調帯域内においてチャーピング量を表すαパラメータの符号をプラスからマイナスへ、あるいはマイナスからプラスへ変更させている。
【0056】
したがって、この光変調器から出力される光信号パルスに生じるチャーピングが平均的に小さくなる。
【0057】
また、別の発明においては、上述した発明の光変調器において、高周波電気信号に基づいた所定の周波数帯域におけるアルファパラメータの周波数についての積分値がほぼゼロとなるように、第1、第2の長さを設定している。
【0058】
先の発明においてはαパラメータの符号がプラスからマイナスへ、あるいはマイナスからプラスへ変わり、ある1点の周波数においてαパラメータをゼロとしても、光パルスとして必要な周波数帯域内においてαパラメータが平均的にゼロとなっておらず、チャーピングが生じてしまう可能性もある。
【0059】
実際の光通信に使用されるNRZ、RZ、ソリトン等の光信号パルスは、単一の周波数でなく広い周波数帯域を含んでいる。したがって、光変調器により生成された光信号パルスのチャーピングを極めて小さくするためには、単一周波数だけではなく、光信号パルスが含む所定の周波数帯域内においてαパラメータを平均的にゼロとすることが重要である。
【0060】
そこで、上述したように、基板における互いに異なる種類(分極非反転と分極反転との2種類)の領域に対向する中央導体における第1、第2の長さを調整して、周波数帯域内におけるαパラメータの周波数についての積分値をほぼゼロにしている。したがって、実際の光通信システムにおいてチャーピングが極めて小さな光変調器を提供できる。
【0061】
また、別の発明においては、上述した発明の光変調器において、基板における分極を反転しない領域の数及び分極を反転した領域の少なくとも一方の数が複数個ある。
【発明の効果】
【0062】
本発明においては、第1、第2の光導波路に対向するととも基板における互い異なる種類(分極非反転と分極反転との2種類)の領域に対向する中央導体における第1、第2の長さを調整して、光信号パルスのチャーピングの大きさを表すアルファパラメータを変調周波数変化に伴ってプラスからマイナスへ又はマイナスからプラスへ変化させている。
【0063】
したがって、進行波電極を1つの中心導体と2つの接地導体とで形成する簡単な構造を維持した状態で、たとえ中心導体と接地導体間に印加される高周波電気信号の周波数が変化したとしても、光導波路から出射される光信号パルスに発生するチャーピングの大きさを極力抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明の各実施形態を図面を用いて説明する。
【0065】
(第1実施形態)
図1(a)は本発明の第1実施形態に係わる光変調器の概略構成を模式的に示す平面図であり、図1(b)は図1(a)の光変調器におけるC―C’線の断面図であり、図1(c)は図1(a)の光変調器におけるD―D’線の断面図である。
【0066】
z−カットLN基板21上に光導波路19が形成されている。この光導波路19は、金属Tiを1050℃で約10時間熱拡散して形成した光導波路であり、マッハツェンダ干渉系(あるいは、マッハツェンダ光導波路)を構成している。したがって、光導波路19は、この光変調器の左端の入射面に入射した光を導く導入用の光導波路19cと、光変調器の中央部分における分岐光導波路としての2本の光導波路19a、19bと、右端の出射面から光通信パルスを出射する出射用の光導波路19dとで構成されている。
【0067】
この光導波路19の上面に400nm〜1μm程度の厚みを有するSiO2バッファ層22が形成され、このSiO2バッファ層22の上面に進行波電極が形成されている。進行波電極としては、1つの中心導体20aと2つの接地導体20b、20cを有するコプレーナウェーブガイド(CPW)を採用している。この進行波電極における中心導体20aと接地導体20b、20cとの間に、変調信号としての高周波電気信号が印加される。
【0068】
中心導体20aは、第1の長さL1だけ第1の分岐光導波路としての光導波路19bの上方に位置し、さらに、第2の長さL2だけ第2の分岐光導波路としての光導波路19aの上方に位置している。一方の接地導体20bは中心導体20aに対して所定の間隔(ギャップ)を有して、中心導体20aの左側(入射面側)に位置し、他方の接地導体20cは中心導体20aに対して所定の間隔(ギャップ)を有して、中心導体20aの右側(出射面側)に位置している。
【0069】
z−カットLN基板21は、分極を反転していない領域(―z面領域)21aと、分極を反転している領域(+z面領域)21bとで構成されている。分極を反転していない領域21aと、分極を反転をしている領域21bとの境界は、図1(a)に点線で示すように、光導波路19a、19bに対して直角に、かつ、中心導体20aの第1の長さL1と第2の長さL2と接点を通過する。
【0070】
その結果、中心導体20aの第1の長さL1の部分は、第1の分岐光導波路としての光導波路19bとz−カットLN基板21における分極を反転していない領域21aに対向している。また、中心導体20aの第2の長さL2の部分は、第2の分岐光導波路としての光導波路19aとz−カットLN基板21における分極を反転をしている領域21bに対向している。
【0071】
このような構造の光変調器において、中心導体20aと接地導体21b、21cに変調信号としての高周波電気信号を印加した状態、具体的には中心導体20aの第1の長さL1側端からマイクロ波を入力した状態において、光をこの光変調器の左端の入射面から入射すると、光は導入用の光導波路19cを通過して、2本の光導波路19a、19bへ分岐される。分岐された各光は、この光導波路19a、19bを伝搬する過程で、中心導体20aと接地導体20b、20cとからなる相互作用部にて、高周波電気信号に応じて位相変調され、出射用の光導波路19dで波形合成されて、出射端から光信号パルスとして出力される。
【0072】
このような光変調機能を有する第1実施形態の光変調器において、高周波電気信号を中心導体20aと接地導体20b、20cに印加した状態において、中心導体20aと接地導体20b、20cとからなる進行波電極の高周波電気信号の周波数fにおけるマイクロ波伝搬損失をβm(f)とし、中心導体20aにおける、第1の長さL1の部分(光導波路19bに対向しかつ分極を反転していない領域21aに対向する部分)と、第2の長さL2の部分(光導波路19aに対向しかつ分極を反転している領域21bに対向する部分)とにおいて、電気信号と光導波路19a、19bを伝搬する光との相互作用の効率をそれぞれI1(f)、I2(f)と表す。光及び電気信号の伝搬方向を図1(a)に示すようにzとすると、各相互作用の効率I1(f)、I2(f)は周波数fに依存し、(3)、(4)式で記述できる。
【0073】
I1(f)=∫0L1 exp(−βm(f)・z)dz
=(1−exp(−βm(f)・L1))/βm(f) …(3)
I2(f)=∫L1L2 exp(−βm(f)・z)dz
=exp(−βm(f)・L1)・(1−exp(−βm(f)・L2))/βm(f)
…(4)
そこで、両者の相互作用の効率I1(f)、I2(f)が等しくなる(5)式の条件
I1(f)=I2(f) …(5)
を満たす中心導体20aにおける第1の長さL1と、第2の長さL2を設定することにより、任意に指定された周波数fにおいてチャーピングをゼロとできる。つまり、(5)式が成立する場合にはαパラメータがゼロとなる。
【0074】
(5)式を満たす第1の長さL1と第2の長さL2から、第1の長さL1の部分の相互作用の効率I1(f)、第2の長さL2の部分の相互作用の効率I2(f)を求め、さらに、前述した(2)式を用いて、高周波電気信号の各周波数fにおける示すαパラメータの周波数特性が求まる。
【0075】
図2(a)、図2(b)に求めたαパラメータの周波数特性を示す。図2(a)に、印加された高周波電気信号の周波数fの増加に伴ってαパラメータの符号がマイナス(−)からプラス(+)へ変化するαパラメータの周波数特性を示し、図2(b)に、高周波電気信号の周波数fの増加に伴ってαパラメータの符号がプラス(+)からマイナス(−)へ変化するαパラメータの周波数特性を示す。
【0076】
このように、印加された高周波電気信号の周波数fにおけるDC付近の低周波領域と高周波領域においてチャーピング量を表すαパラメータの符号が入れ替わるように、中心導体20aにおける分極を反転していない領域21aに対向する第1の長さL1と、中心導体20aにおける分極を反転した領域21bに対向する第2の長さL2を設定している。これを実現するためには、L1/L2=0.89であった。すなわち、中心導体20aにお第2の長さL2を第1の長さL1より若干長く設定すればよい。但し、この値は電極の構造により変わるので、第1の長さL1と第2の長さL2の比はこの限りではないことは言うまでもない。
【0077】
なお、注意すべきはαパラメータが常に正、あるいは常に負で、ある周波数でのみゼロとなる場合にも(5)式を満足することができるが、光変調器から出射する光信号パルスにとって重要なことは、必要な所定の周波数帯域内においてαパラメータを平均的にゼロとすることであり、特定の周波数のみでゼロになったとしても、このような光変調器を光通信システムに採用することはできない。
【0078】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態の光変調器を説明する。第2実施形態の光変調器は第1実施形態の光変調器の改良型である。つまり、第1実施形態の光変調器から出射した光信号パルスのチャーピングはかなり小さくなるものの、光通信システムで伝送される光信号パルスとして必要な所定の周波数帯域内においてαパラメータを平均的にゼロとすることがより強く求められる。
【0079】
第2実施形態の光変調器では、図3(a)、図3(b)に示すように、光信号パルスとして必要な所定の周波数帯域の最大周波数をfmaxとし、図3(a)に示すように、周波数fの増加に伴ってαパラメータの符号がマイナス(−)からプラス(+)からへ変化するαパラメータの周波数特性のうちの、DC近傍からαパラメータがゼロとなる周波数f0までのαパラメータをα1(f)とし、周波数f0から最大周波数fmaxまでのαパラメータをα2(f)とすると、
∫0f0α1(f)df=∫f0fmaxα2(f)df …(6)
となるように、中心導体20aにおける分極を反転していない領域21aに対向する第1の長さL1と、中心導体20aにおける分極を反転した領域21bに対向する第2の長さL2を設定する。このことは、図3(a)において面積S1と面積S2とを等しくすることに対応する。
【0080】
また、図3(b)に示すように、周波数fの増加に伴ってαパラメータの符号がプラス(+)からマイナス(−)へ変化するαパラメータの周波数特性のうちの、DC近傍からαパラメータがゼロとなる周波数f0までのαパラメータをα3(f)とし、周波数f0から最大周波数fmaxまでのαパラメータをα4(f)とすると、
∫0f0α3(f)df=∫f0fmaxα4(f)df …(7)
となるように、中心導体20aにおける分極を反転していない領域21aに対向する第1の長さL1と、中心導体20aにおける分極を反転した領域21bに対向する第2の長さL2を設定する。このことは、図3(b)において面積S3と面積S4とを等しくすることに対応する。
【0081】
これを実現するためには、L1/L2=0.7が好ましい値であった。但し、この値は電極の構造により変わるので、この限りではないことは言うまでもない。また、光信号パルスに含まれる最大周波数は光伝送方式によって異なるので、例として図示した実施形態の限りではない。
【0082】
なお、図2(a)、図2(b)に示す第1実施形態の光変調器においてαパラメータをゼロにする周波数と、図3(a)、図3(b)に示す第2実施形態の光変調器において(6)、(7)式を満たす周波数f0とは当然異なっている。
【0083】
ここで、本発明の第1実施形態において補足説明したαパラメータが常に正、あるいは常に負で、ある特定周波数においてのみゼロとなる場合には、(5)式は満たすものの、(6)、(7)式を満足することはない。この観点からも上述したαパラメータが常に正、あるいは常に負で、ある特定周波数においてのみゼロとなる場合は、光通信システムで伝送される光信号パルスとして必要な所定の周波数帯域内においてαパラメータを平均的にゼロとすることができない。
【0084】
さらに、電気信号をフーリエ変換した場合に、その電気信号が特定の周波数領域の成分を多く有する場合にはその周波数領域を表す重みW(f)を用いて、以下のように積分しても良い。
【0085】
∫0f0α1(f)W(f)df=∫f0fmaxα2(f)W(f)df
…(8)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。
【0086】
実施形態においては、z−カットLN基板21における分極反転をしていない領域21aを光の入射面側に配置し、分極反転をしている領域21bを光信号パルスの出射面側に配置したが、この逆の位置に配置してもよい。
【0087】
また、実施形態の光変調器においては、簡単のために図10に示した第4従来例の光変調器とほぼ同じ基本構造としたが、図11に示した第5従来例の光変調器に対しても、中心導体に対向する分極を反転した領域としない領域の長さを適切に設定することにより本発明の効果を実現できる。
【0088】
さらに、分極を反転した領域と分極を反転しない領域の繰り返しの数を多く増やしても、光信号パルスとして必要な所定の周波数帯域内においてαパラメータの符号を異ならしめる、あるいはその所定の周波数帯域内におけるαパラメータの周波数に対する積分値をほぼゼロとするという本発明の考えを用いることによりチャーピングを著しく小さくすることが可能となる。
【0089】
以上では、進行波電極を伝搬する電気信号と光導波路を伝搬する光が相互作用する相互作用部において、中心導体に対向する分極を反転した領域の長さと分極を反転しない領域の長さを異ならしめる構成について説明した。一方、中心導体の幅や中心導体と接地導体の間のギャップを広くしても進行波電極の伝搬損失を低減できるので、逆に、分極を反転した領域と分極を反転しない領域の長さを等しくするとともに、中心導体の幅や中心導体と接地導体のギャップの幅を光や電気信号の伝搬方向において異ならしめても良いし、これらの構成を組み合わせても良い。
【0090】
なお、通常は光導波路と上方で重なる中心導体の長さは、光導波路と上方で重なる接地導体の長さと等しいが、どちらか一方を他方よりも長くすることにより、光電気信号の相互作用領域の長さをより長く確保できるので、変調の効率をより高めることが可能となる。
【0091】
分岐光導波路の例としてマッハツェンダ光導波路を用いたが、方向性結合器などその他の分岐合波型の光導波路にも本発明を適用可能であることは言うまでもないし、考え方は3本以上の光導波路にも適用可能である。また光導波路の形成法としてはTi熱拡散法の他に、プロトン交換法など光導波路の各種形成法を適用できるし、バッファ層としてSiO2以外の各種材料も適用できる。
【0092】
電極構成としてはCPW電極を用いた構成について説明したが、非対称コプレーナストリップ(ACPS)あるいは対称コプレーナストリップ(CPS)など、その他の構成でも良い。
【0093】
また、相互作用部におけるz-カットLN基板の分極を反転した領域は1箇所として説明したがそれ以上とし、分極を反転しない領域と分極を反転させた領域を交互に組み合わせた構造でも良いことは言うまでもない。なお、分極は基板の表面のみについて反転してもよい。
【0094】
さらに、従来使用されている進行波電極を厚くする、あるいはバッファ層を厚くするなど電気信号と光の速度差を小さくする手法はそのまま本発明にも適用可能である。また電気信号の出力側を40Ωや50Ωなどの終端器で終端しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる光変調器の概略構成を示す平面図及び断面図
【図2】同第1実施形態に係わる光変調器から出射された光信号パルスのαパラメータの周波数特性を示す図
【図3】本発明の第2実施形態に係わる光変調器から出射された光信号パルスのαパラメータの周波数特性を示す図
【図4】第1従来例の光変調器の概略構成を示す斜視図
【図5】同第1従来例の光変調器の断面図
【図6】同第1従来例の光変調器の動作を示す電力線図
【図7】第2従来例の光変調器の動作を示す電力線図
【図8】第3従来例の光変調器の概略構成を示す平面図
【図9】同第3従来例の光変調器の動作を示す電力線図
【図10】第4従来例の光変調器の概略構成を示す平面図
【図11】第5従来例の光変調器の概略構成を示す平面図
【図12】第4、第5従来例の光変調器から出射された光信号パルスのαパラメータの周波数特性を示す図
【符号の説明】
【0096】
1,21…z−カットLN基板、1a,15a,15c,21a…分極を反転しない領域、1b,15b,21b…分極を反転する領域、2,22…SiO2バッファ層、3,9,13,16,19…マッハツェンダ光導波路、3a,3b,9a,9b,13a,13b,16a,16b,19a,19b…マッハツェンダ光導波路を構成する光導波路、4…進行波電極、4a,6a,6b,10a,10b,14a,17a,20a…中心導体、4b,4c,7a,7b,7c,11a,11b,11c,14b,14c,17b,17c,20b,20c…接地導体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する材料からなるとともに、分極を反転しない領域と分極を反転する領域との2種類の領域で形成された基板と、
前記基板の一面側に形成され、入射された光を分岐し合波するための第1、第2の分岐光導波路を備えた光導波路と、
前記各分岐光導波路を伝搬する光と相互作用する高周波電気信号を伝搬させる中心導体及び接地導体からなる相互作用部とを具備し、
前記中心導体は前記第1、第2の分岐光導波路に対してそれぞれ第1、第2の長さだけ対向し、
前記基板における前記第1の長さに対向する部分と前記第2の長さに対向する部分とは互いに異なる方向に分極した領域で形成され、
前記相互作用部の領域で前記各分岐光導波路を伝搬する光の位相を変調する光変調器において、
前記高周波電気信号に基づいた所定の変調周波数の帯域内で、前記光導波路から出射される光信号パルスのチャーピングの大きさを表すアルファパラメータの符号が変調周波数変化に伴ってプラスからマイナスへ又はマイナスからプラスへ変化するように、前記第1、第2の長さを設定したことを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記高周波電気信号に基づいた所定の周波数帯域における前記アルファパラメータの周波数についての積分値がほぼゼロとなるように、前記第1、第2の長さを設定したことを特徴とする請求項1記載の光変調器。
【請求項3】
前記基板における前記分極を反転しない領域の数及び前記分極を反転した領域の少なくとも一方の数が複数個あることを特徴とする請求項1又は2記載の光変調器。
【請求項1】
電気光学効果を有する材料からなるとともに、分極を反転しない領域と分極を反転する領域との2種類の領域で形成された基板と、
前記基板の一面側に形成され、入射された光を分岐し合波するための第1、第2の分岐光導波路を備えた光導波路と、
前記各分岐光導波路を伝搬する光と相互作用する高周波電気信号を伝搬させる中心導体及び接地導体からなる相互作用部とを具備し、
前記中心導体は前記第1、第2の分岐光導波路に対してそれぞれ第1、第2の長さだけ対向し、
前記基板における前記第1の長さに対向する部分と前記第2の長さに対向する部分とは互いに異なる方向に分極した領域で形成され、
前記相互作用部の領域で前記各分岐光導波路を伝搬する光の位相を変調する光変調器において、
前記高周波電気信号に基づいた所定の変調周波数の帯域内で、前記光導波路から出射される光信号パルスのチャーピングの大きさを表すアルファパラメータの符号が変調周波数変化に伴ってプラスからマイナスへ又はマイナスからプラスへ変化するように、前記第1、第2の長さを設定したことを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記高周波電気信号に基づいた所定の周波数帯域における前記アルファパラメータの周波数についての積分値がほぼゼロとなるように、前記第1、第2の長さを設定したことを特徴とする請求項1記載の光変調器。
【請求項3】
前記基板における前記分極を反転しない領域の数及び前記分極を反転した領域の少なくとも一方の数が複数個あることを特徴とする請求項1又は2記載の光変調器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−220949(P2006−220949A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34697(P2005−34697)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]