説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】 リーン運転及びリッチ運転の各終了時点におけるNOxの吸蔵量分布の均一化を図ることができる内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】 内燃機関の排気通路に介装されており、内部に複数の流路が並設され、且つ、各流路内の排気流れを直列方向に組み合わせるとともに、リーン運転時に排気中のNOxを吸蔵してリッチ運転時に吸蔵されたNOxを放出還元するNOx吸蔵触媒と、NOx吸蔵触媒に配設され、直列方向に組み合わされた各流路内の排気流れの方向を逆転可能に切り換える切換弁と、リッチ運転の終了時点を判別するリッチ運転判別手段と(S303)、リッチ運転の終了時点にて、直列方向に組み合わされた各流路内の排気流れの方向が逆転するように切換弁を作動させる切換弁制御手段とを具備する(S304)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に係り、詳しくは、NOx吸蔵触媒に吸蔵されたNOxをリッチスパイクによって放出還元させる内燃機関に好適な排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の排気浄化装置は、気筒内に対して行われる燃焼の改善のみでは対応困難な問題を解決する。この排気浄化装置としては、リーン運転時に排気中のNOxを吸蔵してリッチ運転時に吸蔵されたNOxを放出還元させるNOx吸蔵触媒が知られている。
そして、機関から排出された排気の流れ方向がこの触媒内で逆転可能な切換弁を備えた技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−28004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載の排気浄化装置では、リッチ運転の終了後から所定期間が経過するまでは排気の流れ方向を逆転させず、切換弁の作動を禁止している。燃料が触媒を介してそのまま外部に流出するのを防ぐためである。
しかしながら、リッチ運転の終了時点で排気の流れ方向を逆転させなければ、次のリーン運転時の下流側での吸蔵量はリッチ操作の度に増加し続ける。つまり、切り換えまでの期間が長くなると、リーン運転時に上流側で吸蔵され、続くリッチ運転で放出されたNOxは、下流側に再び吸蔵されてしまう。そして、この下流側には還元剤が供給され難いので、当該下流側の吸蔵量が増え続けるのである。その結果、リーン運転の終了時点におけるNOxの吸蔵量は当初には上流側だけに分布されていたのに対し、次回のリーン運転の終了時点からは上流側から下流側に亘って分布されることになり、均一化が困難になる。更に、リッチ運転の各終了時点における下流側のNOxの吸蔵量が大幅に増加し続けて早期に触媒の許容量を超えることになる。
【0004】
ここで、機関の要求負荷、回転速度や燃料の添加量から切り換えまでの期間を求めることも考えられるが、これでは、触媒内の状態が把握できず、切換弁の作動が却って上記吸蔵量分布の均一化を妨げるとの懸念がある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、リーン運転及びリッチ運転の各終了時点におけるNOxの吸蔵量分布の均一化を図ることができる内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するべく、請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に介装されており、内部に複数の流路が並設され、且つ、各流路内の排気流れを直列方向に組み合わせるとともに、リーン運転時に排気中のNOxを吸蔵してリッチ運転時に吸蔵されたNOxを放出還元するNOx吸蔵触媒と、NOx吸蔵触媒に配設され、直列方向に組み合わされた各流路内の排気流れの方向を逆転可能に切り換える切換弁と、リッチ運転の終了時点を判別するリッチ運転判別手段と、リッチ運転の終了時点にて、直列方向に組み合わされた各流路内の排気流れの方向が逆転するように切換弁を作動させる切換弁制御手段とを具備したことを特徴としている。
【0006】
また、請求項2記載の発明では、直列方向に組み合わされた各流路内の排気流れの両端箇所に対するNOxの吸蔵量を推定するNOx吸蔵量推定手段を更に具備し、切換弁制御手段は、NOx吸蔵量推定手段及びリッチ運転判別手段からの信号に基づいて各流路内の排気流れの方向を逆転させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
従って、請求項1記載の本発明の内燃機関の排気浄化装置によれば、リッチ運転判別手段がリッチ運転の終了時点を判別すると、切換弁制御手段が所定期間の経過を待たずに直ちに各流路内の排気流れの方向を逆転させるので、リーン運転及びリッチ運転の各終了時点においてNOxの吸蔵量分布の均一化が確実に図られる。
具体的には、リーン運転の終了時点、つまり、リッチ運転の開始時点では、常に、上流側でNOxの吸蔵量を可能な限り多くし、下流側の吸蔵量を少なくさせるとの分布が得られる。更に、リッチ運転の終了時点、つまり、リーン運転の開始時点では、常に、上流側でNOxの吸蔵量を可能な限り少なくし、下流側の吸蔵量をこの時点の上流側の吸蔵量よりは多くさせるとの分布が得られるのである。
【0008】
換言すれば、当該リーン運転の開始直前に各流路内の排気流れの方向を逆転させれば、このリーン運転では、先のリッチ運転の終了時点の下流側が上流側に切り換わって大量のNOxが常に受け入れ可能となり、その後のリッチ運転では、この上流側に常に高濃度の還元剤を供給することができる。また、上記リーン運転では、先のリッチ運転の終了時点の上流側が下流側に切り換わって吸蔵量を減らせることができ、その後のリッチ運転で上流側から放出還元されたNOxを再び吸蔵しても影響が小さくて済む。
【0009】
この結果、従来に比してNOxの効率の良い放出還元が可能となるし、しかも、NOxの浄化性能は長期間に亘って維持される。従って、リッチスパイクの頻度が少なくなり、燃費低減が図られる。
また、請求項2記載の発明によれば、リッチ運転の終了時点の他、排気流れの両端箇所に対するNOxの吸蔵量に基づいて各流路内の排気流れの方向を逆転させる。よって、NOx吸蔵触媒内の状態をも正確に把握した切り換えが可能となり、フェイルセーフとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面により本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明に係る排気浄化装置が適用されるディーゼル機関(以下、エンジンという)2を示す。同図に示されるように、エンジン2の各気筒4には燃料噴射装置を有した燃料供給系6が配設されている。この気筒4には、吸気弁8の開弁により燃焼室10に新気を導入させる吸気通路12と、排気弁14の開弁により燃焼室10からの排気を導出させる排気通路16とが接続されている。
【0011】
吸気通路12の上流側には過給機18が介装され、この吸気通路12の先端部には図示しないエアクリーナが接続されている。また、吸気通路12の適宜位置にはインタークーラ20が介装され、更に、この吸気通路12の流路面積を調節する給気スロットル22が配設されている。
一方、排気通路16の下流側の適宜位置には後述するNOx吸蔵触媒50が介装されている。このNOx吸蔵触媒50は、排気空燃比がストイキオよりも希薄(リーン)状態のときに排気中のNOxを吸蔵するのに対し、排気空燃比が過濃(リッチ)状態にて排気中に還元剤としての未燃燃料(HC)や一酸化炭素(CO)が存在するときに、吸蔵したNOxの放出還元を行う。なお、NOx吸蔵触媒50の機能については公知である。
【0012】
また、排気通路16からはEGR通路24が分岐して延び、EGR通路24の先端は吸気通路12に接続され、このEGR通路24には、EGRクーラ26や電子コントロールユニット(ECU)60に電気的に接続されたEGRバルブ28が設けられている。
エアクリーナからの新気は、過給機18を介して吸気通路12に入ってインタークーラ20に達し、給気スロットル22で調整された後、各気筒4の燃焼室10内に導かれる。そして、燃料供給系6から供給される燃料の燃焼により、クランク軸30及びフライホイール32を作動させる。燃焼が終了すると、排気は排気通路16に排出され、NOx吸蔵触媒50に導入される。
【0013】
本実施形態のNOx吸蔵触媒50は、排気通路16から導入された排気の流れの方向を逆転可能に構成されている。
具体的には、図2に示されるように、NOx吸蔵触媒50は円筒状の触媒本体500を備え、この触媒本体500の内部は3つの流路501,502,503が区画されている。より詳しくは、第1の流路501及び第3の流路503は触媒本体500の長手軸方向に沿って筒状に延び(同図(a))、これら流路501及び流路503は触媒本体500の外周縁に沿ってこの縁の内側に形成されており、触媒本体500の直径部分を境にして上側には流路501が(同図(b))、下側には流路503が(同図(c))それぞれ配設されている。
【0014】
第2の流路502は流路501及び流路503の内側に配設され、触媒本体500の長手軸方向に沿って筒状に延びており、これら流路501、流路502及び流路503は並設されている(同図(a))。また、これら流路501、流路502及び流路503は同じ断面積を有し、触媒も均等に有している。
触媒本体500の中心軸部分、つまり、流路502の中央部分には、上記長手軸方向に沿って筒状のロッド支持部504が配設されており、ロッド支持部504内にはロッド506が貫挿されている。このロッド506の両端部分は触媒本体500の両端面からそれぞれ突出し、ロッド506の一端側には係止部514を介して流入方向切換弁(切換弁)508が固定され、ロッド506の他端側にも係止部516を介して流入方向切換弁(切換弁)518が固定されている。更に、このロッド506の他端側は継手524を介して駆動軸526に連結され、駆動軸526はECU60からの指示信号に応じて回転される。つまり、ECU60からオン信号が出力されると、この駆動軸526の回転がロッド506に伝達され、各流入方向切換弁508,518もロッド506と同方向に回転される。
【0015】
この流入方向切換弁508は、同図(b)に示されるように、触媒本体500の直径を基準とした半円状の蓋部510と、流路502の直径を基準とした半円状の蓋部511とから構成され、蓋部510と蓋部511とは一体に形成されている。そして、流入方向切換弁508はロッド506の回転に応じて、流路502及び流路503(同図(b))、或いは流路501及び流路502のいずれかを覆う。また、蓋部510及び蓋部511と触媒本体500の一端面側との間には通路512が形成されている(同図(a))。
【0016】
これに対し、流入方向切換弁518もまた、同図(c)に示されるように、触媒本体500の直径を基準とした半円状の蓋部520と、流路502の直径を基準とした半円状の蓋部521とから構成され、蓋部520と蓋部521とが一体に形成されている。そして、流入方向切換弁518はロッド506の回転に応じて、流路501及び流路502(同図(c))、或いは流路502及び流路503のいずれかを覆う。また、蓋部520及び蓋部521と触媒本体500の他端面側との間にも通路522が形成されている(同図(a))。
【0017】
ところで、これら流入方向切換弁508と流入方向切換弁518とは逆位相の向きに配置されている。詳しくは、同図(a)に示されるように、流入方向切換弁508が流路502及び流路503(同図(b))を覆う位置では、流入方向切換弁518は流路501及び流路502(同図(c))を覆う位置に設けられている。この結果、流入方向切換弁508が流路502及び流路503の上流側を覆う場合には、流入方向切換弁518は流路501の下流側及び流路502を覆い、流路501が流路502よりも上流側に位置するとともに、この流路502が流路503よりも上流側に位置する。
【0018】
一方、流入方向切換弁508が流路501の上流側及び流路502を覆う場合には、流入方向切換弁518は流路502及び流路503の下流側を覆い、流路503が流路502よりも上流側に位置するとともに、この流路502が流路501よりも上流側に位置する。
再び図1に戻ると、本実施形態においては、NOx吸蔵触媒50の上流側の適宜位置に、HCをNOx吸蔵触媒50に直接供給する添加インジェクタ44が配設され、この添加インジェクタ44は燃料添加ライン46を介してポンプ48に接続されている。
【0019】
また、排気通路16においてNOx吸蔵触媒50の上流側の適宜位置には、出力電圧に基づきNOx濃度、すなわちNOx量を検出するNOxセンサ36や、排気通路16内の温度を検出する排気温度センサ38がそれぞれ配設されている。更に、NOx吸蔵触媒50の下流側の適宜位置には、NOx量を検出するNOxセンサ40や、NOx吸蔵触媒50の温度を検出する触媒温度センサ42がそれぞれ配設され、これら各センサ36、38、40、42はECU60に電気的に接続されている。
【0020】
そして、ECU60の入力側には、上述のNOxセンサ36、排気温度センサ38、NOxセンサ40、触媒温度センサ42の他、クランク角センサ34等のエンジン2の運転状態を検出する各種センサも電気的に接続されている。これに対してECU60の出力側には、上述の燃料供給系6、給気スロットル22、添加インジェクタ44及び駆動軸526を回転させるアクチュエータやポンプ48等が電気的に接続されている。
【0021】
また、ECU60には種々のマップが設けられており、例えば、NOx放出量マップ等のNOx吸蔵量推定に関する各種マップも設けられている。
ここで、上述したNOx吸蔵触媒50は酸化雰囲気にて排気中のNOxを吸蔵する一方、NOx吸蔵量の増加に伴う触媒の性能低下を抑制すべく、NOx吸蔵量が飽和に至る前にリッチ運転へ間欠的に切り換えるリッチスパイクを行ってNOx吸蔵触媒50の再生を図る。これにより排気の浄化が良好に行われる。
【0022】
具体的には、本実施形態のリッチスパイクは筒外リッチにて行われている。すなわち、各種センサ36、38、40、42等の信号に応じてリッチスパイクの指示がなされると、排気通路16に設けられた添加インジェクタ44を用い、ポンプ48から圧送されたHCを排気中に直接投入してリッチ運転の条件を作り、この条件が成立すればNOxの放出還元を行う。そして、このNOxの放出還元の終了後には流入方向切換弁508,518を作動させる。
【0023】
より詳しくは、ECU60はリッチ運転判別部(リッチ運転判別手段)62と、NOx吸蔵量推定部(NOx吸蔵量推定手段)64と、切換弁制御部(切換弁制御手段)66とを備えている。
このリッチ運転判別部62では、上述の各種センサ36、38、40、42等の信号に応じてリッチスパイクの指示の有無を判別するとともに、リッチ運転の終了時点を判別し、その結果はNOx吸蔵量推定部64に出力される。
【0024】
このNOx吸蔵量推定部64では、流路501及び流路503に対するNOxの吸蔵量を推定している。より具体的には、リーン運転時には、吸入空気量から求められた排気通路16の排気流量、NOxセンサ36,40からのNOx濃度に基づいてNOxの吸蔵量を演算する。これに対し、筒外リッチ中には、上記排気流量、排気温度センサ38からの排気温度及び触媒温度センサ42からの触媒温度に基づいてNOx放出量を上記マップで演算する。そして、上記演算されたNOx吸蔵量から上記演算されたNOx放出量を減算し、各流路501及び流路503の現在のNOx吸蔵量をそれぞれ推定している。その結果は切換弁制御部66に出力される。
【0025】
この切換弁制御部66では、リッチ運転の終了時点において、流路501或いは流路503のうち、推定されたNOx吸蔵量の多い方が最上流側となるように、駆動軸526を回転させて流入方向切換弁508,518を作動させる。
図3には、上記リッチ運転判別部62、NOx吸蔵量推定部64及び切換弁制御部66による排気流入方向の切り換え制御のフローチャートが示されており、以下、上記のように構成された排気浄化装置の本発明に係る作用について説明する。
【0026】
同図のステップS301ではリーン運転が実施され、NOx吸蔵量推定部64にてNOxの吸蔵量を演算してステップS302に進む。
このステップS302ではリーン運転が終了してリッチ運転が開始される。このリッチ運転はリッチ運転判別部62にて監視されている。また、NOx吸蔵量推定部64ではNOx放出量を演算し、各流路501及び流路503の現在のNOx吸蔵量をそれぞれ推定する。
【0027】
次いで、ステップS303では、リッチ運転判別部62にてリッチ運転が終了したか否かが判別される。そして、このリッチ運転が終了してリーン運転が開始されると判定された場合、すなわち、YESのときにはステップS304に進み、切換弁制御部66にて、流路501或いは流路503のうち推定されたNOx吸蔵量の多い方を上流側にする位置に切り換えられる。
【0028】
つまり、流入方向切換弁508,518が前回のリーン及びリッチ運転時に流路501を上流側にする位置であったときには、このリッチ運転の終了時点では流路501のNOxは殆ど放出還元されるが、下流側の流路503で再度吸蔵され得ることから、流路503のNOx吸蔵量が流路501のそれよりも多くなっている。よって、この場合には、切換弁制御部66にて流路503を上流側にする位置に反転させるのである。
【0029】
これにより、流入方向切換弁508が流路501の上流側及び流路502を覆うとともに、流入方向切換弁518が流路502及び流路503の下流側を覆う位置に作動されて一連のルーチンを抜ける。この場合には、流路503、流路502及び流路501内の排気流れはこの順序で直列方向に組み合わせられ、排気通路16からの排気は、最上流側として流路503に導入され、次いで、通路522を経て流路502に導入され、通路512を経て流路501に導入された後、外部に向かうことになる。
【0030】
これに対し、流入方向切換弁508,518が前回のリーン及びリッチ運転時に流路503を上流側にする位置であったときには、排気の流れの方向が上述とは逆転される。換言すれば、流入方向切換弁508が流路502及び流路503の上流側を覆うとともに、流入方向切換弁518が流路501の下流側及び流路502を覆う位置にそれぞれ作動されて一連のルーチンを抜ける。この場合には、流路501、流路502及び流路503内の排気流れはこの順序で直列方向に組み合わせられ、最上流側として流路501に導入され、通路522を経て流路502に導入される。次いで、通路512を経て流路503に導入された後、外部に向かうことになる。
【0031】
以上のように、本発明によれば、切換弁制御部66が一対のリーン・リッチ運転の終了毎に、所定期間の経過を待たずに直ちに流路501,502,503内の排気流れの方向を逆転させる。従って、リーン運転及びリッチ運転の各終了時点においてNOxの吸蔵量分布の均一化が確実に図られる。
より詳しくは、NOx吸蔵触媒の特性は、図4(a)に示されるように、リーン運転の終了時点、つまり、リッチ運転の開始時点におけるNOx吸蔵量をみると、入口側が多く、出口側では少なくなるとの右下がりの分布になる(図中、斜線で示す)。これは、NOxは入口側で吸蔵され易く、出口側に位置するに連れて吸蔵され難くなるからである。一方、図4(b)に示されるように、リッチ運転の終了時点、つまり、リーン運転の開始時点におけるNOx吸蔵量をみると、入口側では殆ど認められず、出口側が多くなるとの右上がりの分布になる(図中、斜線で示す)。これは、入口側には高濃度の還元剤が供給され易く、この入口側に吸蔵されたNOx(図中、点線で示す)は殆ど放出還元されるが、還元剤は出口側に位置するに連れて供給され難くなるので、この入口側から放出還元されたNOxの一部は出口側にて再び吸蔵されるからである。
【0032】
ここで、従来の如く切り換えまでの期間が長くなってリッチ運転の終了時点で排気の流れ方向が全く逆転されない場合には、次のリーン運転の終了時点では、入口側の他、出口側にも吸蔵されていることになり、上記右下がりの分布が得られ難くなる。更に、続くリッチ運転の終了時点では、入口側のNOxが放出還元されて上記右上がりの分布は得られるものの、出口側には非常に多く吸蔵され、触媒の許容量に達し易くなるのである。
【0033】
しかしながら、本発明によれば、リッチ運転の終了時点で流路501,502,503内の排気流れの方向を逆転させているので、リーン運転では、前回のリッチ運転の終了時点(同図(b))の出口側が上流側に設定され、この上流側で大量のNOxが受け入れ可能となる。しかも、前回のリッチ運転の終了時点(同図(b))の入口側が下流側に設定され、常に、下流側での吸蔵量を減らせることができる。つまり、上記右下がりの分布が必ず得られ、均一化が図られる。そして、続くリッチ運転では、常に、高濃度の還元剤をこの上流側で大量に吸蔵されたNOxに供給して放出還元することができ、上記右上がりの分布が得られて均一化が図られるとともに、この放出還元されたNOxの一部は前回のリッチ運転の終了時点(同図(b))の入口側に吸蔵されるので、その吸蔵量も触媒の許容量に達し難くなる。
【0034】
この結果、従来に比してNOxの効率の良い放出還元が可能となるし、更に、NOxの浄化性能は長期間に亘って維持される。従って、リッチスパイクの頻度が少なくなり、燃費低減が図られる。
また、切換弁制御部66が、リッチ運転の終了時点の他、流路501,503に対するNOxの吸蔵量に基づいて流路501,502,503内の排気流れの方向を逆転させると、NOx吸蔵触媒50内の状態をも正確に把握した切り換えが可能となり、フェイルセーフとなるし、リーン運転及びリッチ運転の各終了時点においてNOxの吸蔵量分布の均一化がより一層確実に図られる。
【0035】
更に、切換弁制御部66が流路501,502,503内の排気流れの方向を逆転させると、NOx吸蔵触媒内の温度分布の均一化も図られる。
具体的には、図5に示されるように、NOx吸蔵触媒内におけるリッチ運転中の温度分布は、このリッチ運転の開始直後では、入口側の温度(図中、実線で示す)が中央の温度(図中、一点鎖線で示す)や出口側の温度(図中、二点鎖線で示す)に比して常に高温になるとの特性があるが、本発明よれば、上述の排気流れ方向の切り換えによって、同一の流路がSパージ等で熱劣化し難くなる。これにより、NOx吸蔵触媒の耐久性の向上及び劣化後の性能維持にも寄与する。なお、この場合の切り換えのタイミングはリッチ操作の度に必ず行われなくても良い。
【0036】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、上記実施形態では、切換弁制御部66は、現在のNOx吸蔵量の推定値を考慮することなく、リッチ運転判別部62からのリッチ運転の終了時点の信号に基づき、直ちに駆動軸526を回転させて流入方向切換弁508,518を作動させても良い。この場合にも上記と同様に、リーン運転及びリッチ運転の各終了時点におけるNOxの吸蔵量分布の均一化が図られるという効果を奏する。
【0037】
また、上記実施形態では、NOx吸蔵触媒50が3つの流路501,502,503に区画されているが、必ずしもこの形態に限定されるものではない。つまり、任意の複数の流路に区画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置が適用されるエンジンシステム構成図である。
【図2】NOx吸蔵触媒の断面図である。
【図3】ECUが実行する排気流入方向の切り換え制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】触媒内のNOx吸蔵量分布を説明する図である。
【図5】触媒内の温度分布を説明する図である。
【符号の説明】
【0039】
2 内燃機関
16 排気通路
50 NOx吸蔵触媒
60 ECU(電子コントロールユニット)
62 リッチ運転判別部(リッチ運転判別手段)
64 NOx吸蔵量推定部(NOx吸蔵量推定手段)
66 切換弁制御部(切換弁制御手段)
501 第1の流路(流路)
502 第2の流路(流路)
503 第3の流路(流路)
508 流入方向切換弁(切換弁)
518 流入方向切換弁(切換弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に介装されており、内部に複数の流路が並設され、且つ、該各流路内の排気流れを直列方向に組み合わせるとともに、リーン運転時に排気中のNOxを吸蔵してリッチ運転時に該吸蔵されたNOxを放出還元するNOx吸蔵触媒と、
該NOx吸蔵触媒に配設され、前記直列方向に組み合わされた各流路内の排気流れの方向を逆転可能に切り換える切換弁と、
前記リッチ運転の終了時点を判別するリッチ運転判別手段と、
該リッチ運転の終了時点にて、前記直列方向に組み合わされた各流路内の排気流れの方向が逆転するように前記切換弁を作動させる切換弁制御手段と
を具備したことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記直列方向に組み合わされた各流路内の排気流れの両端箇所に対するNOxの吸蔵量を推定するNOx吸蔵量推定手段を更に具備し、
前記切換弁制御手段は、該NOx吸蔵量推定手段及び前記リッチ運転判別手段からの信号に基づいて前記各流路内の排気流れの方向を逆転させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−274910(P2006−274910A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94555(P2005−94555)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】