説明

回転型振動波駆動装置

【課題】接触部材の局所的な摩耗を低減し、長期の駆動による性能劣化を低減することが可能となる回転型振動波駆動装置を提供する。
【解決手段】電気−機械エネルギー変換素子と、前記電気−機械エネルギー変換素子に固定され、前記電気−機械エネルギー変換素子に電圧を印加することにより振動する振動体と、前記振動体に接触し、前記振動により摩擦駆動する移動体と、を有する回転型振動波駆動装置であって、
前記移動体は、該移動体の本体部から延出した支持部と、前記支持部から延出し前記振動体に摩擦接触する接触部と、を備え、前記支持部と前記接触部とが、前記移動体の回転軸方向に夫々弾性変形可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転型振動波駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、振動波モータに適用される振動波駆動装置は、振動波が形成される振動体と、振動体に加圧接触する移動体とを有し、振動体と移動体とを振動波により摩擦駆動させることにより駆動力を得る。
そのため、振動体と移動体の間に配置される接触部は、振動体の振動に倣って変形しながら、振動体に対し接触と離間を繰り返して駆動力を取り出している。
【0003】
この種の振動波モータの従来例を図9(a)に示す(特許文献1参照)。
図9(a)において、振動体122は円環状をしており、振動体122の上部には複数の突起122bが全周にわたって設けられている。
振動体122に対して移動体123は、不図示の加圧部材によって加圧接触されている。移動体123は、弾性部材で形成されたリング状の本体部123a、本体部123aより延出したフランジ部123b、フランジ部123bの端部から延出し、かつ振動体122に摩擦接触する摩擦面を有する接触部123cから構成されている。
圧電セラミックス121は、振動体122の底面に接着剤にて接着され、モータ駆動時に不図示の駆動回路により位相差を有する交流電圧が印加され、進行性振動波を発生させる。進行性振動波の進行方向がθ方向正の向き(図9(a)の矢印参照)の場合、摩擦により駆動される移動体123の移動方向は、θ方向負の向きとなっている。
移動体123のようにフランジ部を有する構成にすることで、移動体の回転軸を中心とした円筒座標系での径方向と鉛直方向からなる平面で見た時の、振動体122に発生する振動の軌跡方向と、移動体123における接触部の変位方向とが略一致する。振動の軌跡方向と変位方向が略一致すると、摩擦面での径方向の滑りが低減し、効率の低下を防止することができる。
【0004】
また、他の従来例における振動波モータの移動体の構成を図9(c)に示す(特許文献2参照)。
図9(c)において、移動体133には、振動体と接触する所定のばね剛性をもつ複数の接触部133cが同心円状に設けられている。
接触部133cが複数設けられているため、接触面積が増加し、接触部の面圧が低下するので、接触部133cの摩耗が低減し、振動波モータの耐久性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−224882号公報
【特許文献2】特開2002−315364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記図9(a)に示す従来例の振動波モータの接触部は、所定の接触幅を持つ片持ち梁断面となっている。
移動体123の接触部123cは図9(b)に示すように、振動体122と接触する。
その際、接触部123cの摩擦面は、摩擦面の外径側のエッジ部付近でのみ振動体122と強い圧力で接触し、摩擦面全体が均一に接触しない。
そのため、振動波モータの耐久性を向上させるために、単に接触部123cを広くして接触面積を増加させ、摩擦面にかかる面圧を低減しようとしても、摩擦面の外径側のエッジ部付近でのみ接触するため、接触面積は増加せず、面圧は低減しない。
また、接触部123cの外径側のエッジ部付近で摩耗が進み、接触部123cの摩擦面全体が接触するようになっても、接触部123cの幅を広くすると、摩擦面の中で振動体122の振動の軌跡方向と接触部123cの変位方向とが一致しない部分が増える。
そのため、効率の低下や鳴きの発生、摩耗の原因となり、振動体に強い圧力で接触する接触部123cの外径側のエッジ部においても、安定した摩耗となるように、振動体に対する全体の加圧力を低減することが必要となる。
加圧力に対して出力トルクはほぼ比例すると考えてよいため、振動波モータの出力トルクを制限することになっている。
【0007】
他方、上記図9(c)に示した従来例の振動波モータの接触部133cは、接触部が複数設けられているため接触面積を増加でき、振動波モータの耐久性を向上させることができる。
さらに、それぞれの接触部の変位方向は、振動体の振動の軌跡方向と一致させることが可能となり、摩擦面での径方向のすべりを低減することができる。
しかしながら、各々の接触部123cは、上記図9(a)に示した従来例の振動波モータと同様に片持ち梁断面となっており、図9(b)に示したような振動体と接触部133cの接触状態によって局所的な摩耗が生じ、振動波モータの性能を劣化させてしまう恐れがある。
上述したように、従来の振動波モータの接触部の構造では、接触部の局所的な摩耗により耐久性を低下させてしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、接触部材の局所的な摩耗を低減し、長期の駆動による性能劣化を低減することが可能となる回転型振動波駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、つぎのように構成した回転型振動波駆動装置を提供するものである。
本発明の回転型振動波駆動装置は、電気−機械エネルギー変換素子と、前記電気−機械エネルギー変換素子に固定され、前記電気−機械エネルギー変換素子に電圧を印加することにより振動する振動体と、前記振動体に接触し、前記振動により摩擦駆動する移動体と、
を有する回転型振動波駆動装置であって、前記移動体は、該移動体の本体部から延出した支持部と、前記支持部から延出し前記振動体に摩擦接触する接触部と、を備え、前記支持部と前記接触部とが、前記移動体の回転軸方向に夫々弾性変形可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、接触部材の局所的な摩耗を低減し、長期の駆動による性能劣化を低減することが可能となる回転型振動波駆動装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る振動波駆動装置の構成を説明する断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態の図1に示す移動体の一部を拡大した断面図。
【図3】図3は本発明の第1の実施形態の図1における振動体と移動体の接触する様子を示す図。
【図4】図4(a)、(b)は比較例として該移動体の支持部もしくは接触部のみが弾性変形可能な場合を説明する図である。
【図5】図5(a)は第1の実施形態に係る振動波駆動装置の第1の変形例に係る移動体の一部を拡大した断面図。図5(b)はその第2の変形例に係る移動体の一部を拡大した断面図。図5(c)(d)はその第1の実施形態に係る振動波駆動装置の第3、第4の変形例に係る移動体の一部を拡大した断面図。
【図6】図6(a)は本発明の第2の実施形態に係る振動波駆動装置の移動体の一部を拡大した断面図。図6(b)はその第1の変形例に係る移動体の一部を拡大した断面図である。
【図7】図7(a)は本発明の第3の実施形態に係る振動波駆動装置の移動体の一部を拡大した断面図。図7(b)は本発明の第4の実施形態に係る振動波駆動装置の移動体の一部を拡大した断面図。図7(c)は第4の実施形態の第1の変形例に係る移動体の一部を拡大した断面図。
【図8】図8(a)は本発明の第5の実施形態に係る振動波駆動装置の移動体の一部を拡大した断面図。図8(b)はその移動体の一部を拡大した断面図の第1の変形例に係る移動体の一部を拡大した断面図である。
【図9】図9(a)は従来例における振動波駆動装置の斜視図。図9(b)はその振動体と移動体の接触する様子を示す図。図9(c)は他の従来例における振動波駆動装置の移動体の一部を拡大した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1に示す本実施形態の回転型振動波駆動装置は、円環状に形成されており、圧電素子1、振動体2、移動体3を備えている。
圧電素子1は、電気量を機械量に変換する電気−機械エネルギー変換素子であり、振動体2と結合されている。
振動体2は、金属製の弾性部材であり、基部2a、突起2b、及び基部2aから延出し、振動体2を固定するためのフランジ部2cから構成されている。
突起2bは、基部2aの外径側に沿って、振動体2の中心軸に対して同心円状に配置されている。突起2bの移動体3側の面が移動体3との接触面となっている。
【0013】
移動体3は、弾性部材で形成された円環状の本体部3a、支持部3b、及び該支持部3bの端部から外径側に延出して振動体2の突起2bに摩擦接触する摩擦面を有する接触部3cから構成されている。
この移動体3は、不図示の加圧手段による加圧力により、振動体2と加圧接触するように構成されており、振動体2との摩擦によって摩擦駆動される。
振動波駆動装置においては、移動体3からの駆動力を、出力軸等を介して振動波駆動装置外部の装置に伝達することで、該装置を駆動する。
【0014】
図1の一部拡大断面を示す図2において、支持部3bは、第1の支持部3dと第2の支持部3eから構成されている。
第1の支持部3dは、本体部3aから振動体2の接触面と平行に延出されている。第2の支持部3eは、第1の支持部3dの端部から鉛直に延出している。接触部3cは、第2の支持部3eの端部から振動体2の接触面と平行に延出されている。
支持部3b及び接触部3cは、ばね性を有する厚みで形成されており、それぞれが片持ち梁断面構造を有する。
そのため、支持部3b及び接触部3cは、移動体3の回転軸方向にそれぞれ弾性変形可能となっている。また、径方向にもそれぞれ弾性変形が可能である。支持部3bは本体部3aから内径側に延出しており、接触部3cは支持部端部から外径側に延出している。
さらに、接触部3cの摩擦面の回転軸方向及び径方向の変位が周方向で一様になるように、支持部3b及び接触部3cの厚みは周方向で均一に形成されている。本発明において径方向とは回転軸方向と垂直な方向を示す。
【0015】
振動体と移動体とが接触する様子を示す図3において、振動体2に接合された圧電素子1(図3では不図示)に駆動電圧を印加し、公知の技術により、振動体2及び圧電素子1からなる振動子に進行性の振動波を生じさせる。振動体2に発生する振動の振幅は、内径側よりも外径側の方が大きくなっている。
振動体2の突起2bの上面は、図中の矢印で示した方向に振動し、接触部3cを介して移動体3を駆動する。
移動体3の支持部3b及び接触部3cはそれぞれ弾性変形可能となっており、図3に示すように、接触部3cの変位は内径側よりも外径側が大きくなっている。これにより、振動体2の接触面の傾斜と接触部3cの摩擦面の傾斜は、平行を保ったまま接触を繰り返す。
そのため、接触部3cの摩擦面は全面にわたって振動体2との接触が可能となる。
これにより、接触部3cの摩擦面の接触面圧を一様にすることができ、従来構造では課題となっていた局所的な摩耗を低減することが可能となる。
【0016】
さらに、従来構造では、接触部を広くすると、摩擦面の中で振動体の振動の軌跡方向と接触部の変位方向とが一致しない部分が増え、径方向の滑りが増加し、性能劣化の原因となっていた。
これに対し、本実施形態では、図3に示すように、振動体2の振動の軌跡方向に対して、移動体3の接触部3cの摩擦面の変位方向は、摩擦面の全領域で略一致する。
これにより、接触部3cを広くして接触面積を増加させることで、効率の低下や鳴きが生じる等の性能の劣化を回避しつつ、振動波駆動装置の耐久性を向上させることができるようになる。
【0017】
ここで、本実施形態において、移動体3の支持部3b及び接触部3cがそれぞれ弾性変形可能となるように形成された効果について説明する。
そのための比較例として、図4(a)、(b)に移動体の支持部もしくは接触部のみが弾性変形可能な場合を示す。
図4(a)に示すように、支持部3bが弾性変形し、接触部3cが弾性変形しない場合、従来構造と同様に、振動体2の接触面の傾斜と接触部3cの摩擦面の傾斜は一致しない。したがって、接触部3cの摩擦面の外径側のエッジ部付近でのみ振動体2と強い圧力で接触し、摩擦面全体が均一に接触しないこととなる。
そのため、強い圧力で接触している外径側のエッジ部付近で局所的な摩耗が生じ、振動波駆動装置の性能を劣化させてしまう恐れがある。
【0018】
反対に、図4(b)に示すように、接触部3cが弾性変形し、支持部3bが弾性変形しない場合、振動体2の接触面の傾斜と接触部3cの摩擦面の傾斜が略平行となり、接触部3cの摩擦面は全面にわたって振動体2との接触が可能となる。しかし、接触部3cの摩擦面の変位方向は、振動体2の振動の軌跡方向と一致せず、径方向で滑りが発生している。
そのため、鳴きの発生やトルクの低下、効率の低下等の性能の劣化が生じてしまう。
【0019】
本実施形態では、支持部3bおよび接触部3cがそれぞれ弾性変形可能であるため、接触部3cの摩擦面は、図4(a)、(b)の支持部3bおよび接触部3cの変形を組み合わせた変形となる。
つまり、支持部3bの変形によって形成される接触部3cの摩擦面の傾斜を、接触部3cの変形によって変化させ、振動体2の接触面の傾斜と接触部3cの摩擦面の傾斜を略平行にすることができる。
また、振動体2の振動の軌跡方向と移動体3の接触部3cの摩擦面の変位方向を、摩擦面の全領域で略一致させることが可能となる。
【0020】
これらにより、接触部3cの摩擦面は全面にわたって振動体2と接触することが可能となり、接触部3cの局所的な摩耗を低減し、長期の駆動による性能劣化を低減することができる。
なお、本実施形態において、支持部3bは第1の支持部3d、第2の支持部3eから構成され、第1の支持部3dは本体部3aから振動体2の接触面に平行に延出し、第2の支持部3eは第1の支持部3dから鉛直に延出している。
しかし、本発明は、これらの構成に限定されるものではない。
例えば、図5(a)に示すように、第1の支持部13dが本体部13aから内径側に向かって傾斜して延出してもよい。
【0021】
また、図5(b)に示すように、第2の支持部23eが第1の支持部23dから内径側に向かって傾斜して延出してもよい。また、反対に、図5(c)に示すように、第2の支持部33eが第1の支持部33dから外径側に向かって傾斜して延出してもよい。
さらに、図5(d)に示すように、支持部43bは1つの支持部で構成され、本体部から支持部43bが内径側に向かって傾斜して延出し、支持部43bから接触部43cが延出してもよい。
【0022】
図5(a)乃至図5(d)に示すように支持部を傾斜させることにより、支持部の重量を減じることができる。これにより、移動体の支持部および接触部の固有振動数が高まり、振動体の振動に対する追従性の向上が可能となる。
なお、図5(a)乃至図5(d)において、符号13a乃至13e、及び符号23a乃至23e、及び符号33a乃至33e、及び符号43a乃至43cは、図2の符号3a乃至3eに対応している。
【0023】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、上述した第1の実施形態に対して、支持部や接触部、本体部を図6(a)に示す構造とした点において相違する。
本実施形態のその他の要素(圧電素子1、振動体2)は、上述した第1の実施形態の対応するものと同一なので、説明を省略する。
なお、本実施形態の図6(a)に示す構成は、図2、図5(a)乃至図5(d)に対応している。
図6(a)において、支持部53bおよび接触部53cは板金プレス加工により一体的に形成されている。
支持部53bおよび接触部53cはステンレス鋼板からなり、耐久性を高めるための硬化処理として焼入れ、焼戻し処理をした。
本体部53aは円環状に形成されており、本体部53aと支持部53bは、接着剤による接着や、はんだ付け等の金属ろう付け、レーザーや電気抵抗熱などによる溶接等の方法で接合している。
支持部53b及び接触部53cは、ばね性を有する厚みで形成されており、支持部53b及び接触部53cは、移動体53の回転軸方向にそれぞれ弾性変形可能となっている。また、径方向にもそれぞれ弾性変形可能である。支持部53b及び接触53cは、振動体2との接触時に接触部53cに生じる変位が、内径側よりも外径側が大きくなるように形成されている。
そのため、振動体2の接触面の傾斜と接触部53cの摩擦面の傾斜は、平行を保ったまま接触を繰り返すことができ、接触部53cの摩擦面は全面にわたって振動体2との接触が可能となる。
これにより、接触部53cの摩擦面の接触面圧を一様にすることができ、局所的な摩耗を低減することが可能となる。
【0024】
さらに、振動体2の振動の軌跡方向に対して、接触部53cの摩擦面の変位方向は、摩擦面の全領域で略一致する。
これにより、接触部53cを広くして接触面積を増加させることで、効率の低下や鳴きが生じる等の性能の劣化を回避しつつ、振動波駆動装置の耐久性を向上させることができるようになる。
また、支持部53b及び接触部53cをプレス加工で一体的に形成し、本体部53aもプレス加工や焼結、ダイカスト等で形成することができるため、従来の切削に比べて大幅なコスト低下や製作時間の短縮を図ることができる。
さらに、板金プレス加工に用いる素材の板厚精度は極めて高いため、支持部53b及び接触部53cの弾性のバラツキを少なくすることができ、振動体2と安定した接触が可能となる。
【0025】
図6(b)に示す本実施形態における第1の変形例の構成は、図2、図5(a)乃至図5(d)、図6(a)に対応している。
図6(b)に示すように、支持部63bの外径側の端部から取付け部63fが鉛直に延出しており、支持部63b及び取付け部63fはそれぞれ本体部63aと接合されている。支持部63bの端部から取付け部63fが延出して形成されていることにより、一体的に形成されている支持部63b、接触部63c及び取付け部63fを焼入れ、焼戻しした際の変形を抑えることができる。
これにより、接触部63cの摩擦面の平面度を精度よく仕上げるための研磨加工の時間を短縮することができる。
なお、本実施形態において、耐摩耗性を向上させるための表面処理として、焼入れ、焼戻し処理を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、窒化処理や溶射等で接触部の摩擦面を硬化してもよい。
【0026】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態は、上述した第1の実施形態に対して、支持部や接触部、本体部を図7(a)に示す構造とした点において相違する。
本実施形態のその他の要素(圧電素子1、振動体2)は、上述した第1の実施形態の対応するものと同一なので、説明を省略する。
なお、図7(a)に示す本実施形態における構成は、図2、図5(a)乃至図5(d)、図6(a)、図6(b)に対応している。
図7(a)において、接触部73cは第2の支持部73eから外径側へ延出するとともに、接触部73cの内径側の端部は、第2の支持部73eよりも内径側に突出している。
接触部73cの内径側への突出している長さは、第2の支持部73eから外径側へ延出している長さに比べ十分に小さい。
そのため、第1及び第2の実施形態と同様に、接触部73cの摩擦面は全面にわたって振動体2との接触が可能となる。
また、振動体2の振動の軌跡方向に対して、接触部73cの摩擦面の変位方向は、摩擦面の全領域で略一致する。
【0027】
次に、本実施形態において、第2の支持部73eが接触部73cの端部よりも外径側に形成されている効果について説明する。
振動波駆動装置の耐久性を向上させるために、接触部73cを広げると、それに伴って、接触部73cの摩擦面の変位方向を調整するため、第2の支持部73eの径方向の幅も広げる必要がある。
しかし、第2の支持部73eの幅を広げると、重量が増し、支持部73bおよび接触部73cの固有振動数が低下し、振動体2の振動に対する追従性が低下する恐れがある。
そのため、本実施形態では、第2の支持部73eの接触部73cとの連結部の外径側の位置は維持したまま、第2の支持部73eの内径側を減肉した。
これにより、支持部の重量を減じることができ、固有振動数が高まり、振動体の振動に対する追従性の向上が可能となる。
【0028】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態は、上述した第1の実施形態に対して、支持部や接触部、本体部を図7(b)に示す構造とした点において相違する。
本実施形態のその他の要素(圧電素子1、振動体2)は、上述した第1の実施形態の対応するものと同一なので、説明を省略する。
なお、本実施形態の図7(b)に示す構成は、図2、図5(a)乃至図5(d)、図6(a)、図6(b)、図7(a)に対応している。
図7(b)において、支持部83bと接触部83cは別部材となっており、支持部83bと接触部83cは、接着剤による接着や、はんだ付け等の金属ろう付け、レーザーや電気抵抗熱などによる溶接等の方法で接合している。
そのため、支持部83b及び接触部83cが一体的に形成されている場合に比べ、加工が容易になる。
また、従来は加工性が金属等と比べて劣るため、使用するのが困難だった、アルミナや炭化珪素等、高い摩擦力を得ながら耐摩耗性も高い材料で、接触部83cを作ることができるようになる。
また、フッ素樹脂粉末(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)を主材として、添加剤としてカーボンファイバ、ポリイミド、二硫化モリブデンを用いて、焼成し作製した樹脂でも接触部83cを作ることができる。
これにより、振動波モータの発生トルクの向上と耐久性の向上を図ることができる。
【0029】
また、接触部83cの摩擦面には2つの突起83gが形成され、振動体2と接触する。そのため、支持部83bと接触部83cの接合によって接触部83cの接合箇所が変形しても、振動体2とは突起83gのみが接触するため、変形の影響を少なくし、安定した接触を維持することができる。
また、振動体2との接触を良好にするため、接触部83cの摩擦面の平面度を研磨等で精度よく仕上げる必要がある。
本実施形態によれば、接触部83cの摩擦面の突起83gのみを研磨すればよいため、加工時間の短縮が可能となる。
なお、本実施形態において、接触部83cは支持部83bよりも内径側に突出しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図7(c)に示すように、接触部93cの端部と支持部93bが接合され、1つの突起93gを形成してもよい。
また、本実施形態において、突起83gは接触部83cの摩擦面に一体的に形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、接触部83cとは別部材にし、接触部83cと突起83gを接合して形成してもよい。
【0030】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態は、上述した第1の実施形態に対して、移動体を複数備え、こらの移動体における各々の前記接触部が同心軸上に設けられる構造とした点において相違する。
本実施形態のその他の要素(圧電素子1、振動体2)は、上述した第1の実施形態の対応するものと同一なので、説明を省略する。
本実施形態の構成を示す図8(a)において、振動体102に対して移動体103は2つ設けられている。それぞれの移動体103の支持部103b及び接触部103cは、振動体102と摩擦面全体で接触し、振動体102の振動の軌跡方向と摩擦面の全領域の変位方向が略一致するように形成されている。
【0031】
このように、移動体103を2つ設けることにより、それぞれの移動体103は振動体2の振動に対する追従性を維持したまま、接触部103cの摩擦面の面圧を高めることなく、摩擦力を大きくすることができるようになる。
これにより、振動波駆動装置の発生トルクを向上させることができる。
また、トルクを維持したままであるならば、面圧を低減することができ、耐久性を向上させることができる。
なお、本実施形態において、1つの本体103aに1つの支持部103b及び接触部103cを設けたが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図8(b)に示すように、1つの本体113aに対して複数の支持部113b及び接触部113cを設けてもよい。
【0032】
以上に説明したように、本発明の上記各実施形態の構成によれば、移動体の支持部と接触部が夫々弾性変形することにより、移動体の接触部の摩擦面全体で振動体と接触可能となる。
これにより、接触部材の局所的な摩耗を低減し、長期の駆動による性能劣化を低減することができる。
また、移動体の摩擦面の全領域における変位方向が、振動体の振動方向に略一致するため、摩擦面の径方向のすべりを低減することができる。
【符号の説明】
【0033】
1:圧電素子
2:振動体
3:移動体
3a:本体
3b:支持部
3c:接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気−機械エネルギー変換素子と、
前記電気−機械エネルギー変換素子に固定され、前記電気−機械エネルギー変換素子に電圧を印加することにより振動する振動体と、
前記振動体に接触し、前記振動により摩擦駆動する移動体と、
を有する回転型振動波駆動装置であって、
前記移動体は、該移動体の本体部から延出した支持部と、前記支持部から延出し前記振動体に摩擦接触する接触部と、を備え、
前記支持部と前記接触部とが、前記移動体の回転軸方向に夫々弾性変形可能に構成されていることを特徴とする回転型振動波駆動装置。
【請求項2】
電気−機械エネルギー変換素子と、
前記電気−機械エネルギー変換素子に固定され、前記電気−機械エネルギー変換素子に電圧を印加することにより振動する振動体と、
前記振動体に接触し、前記振動により摩擦駆動する移動体と、
を有する回転型振動波駆動装置であって、
前記移動体は、該移動体の本体部から内径側に延出した支持部と、前記支持部の端部から外径側に延出し前記振動体に摩擦接触する接触部と、を備えることを特徴とする回転型振動波駆動装置。
【請求項3】
前記支持部と前記接触部とが、周方向に均一な厚みで形成されていることを特徴とする請求項2に記載の回転型振動波駆動装置。
【請求項4】
前記接触部は、該接触部の変位が内径側よりも外径側が大きいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回転型振動波駆動装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記本体部から延出する第1の支持部と、前記第1の支持部の端部から延出する第2の支持部とを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回転型振動波駆動装置。
【請求項6】
前記支持部および前記接触部は、プレス加工により形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の回転型振動波駆動装置。
【請求項7】
前記接触部の内径側の端部は、前記支持部よりも内径側に突出していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の回転型振動波駆動装置。
【請求項8】
前記接触部は、前記支持部とは別部材で形成され、該支持部に結合されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の回転型振動波駆動装置。
【請求項9】
前記摩擦面は、少なくとも1つの突起を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の回転型振動波駆動装置。
【請求項10】
前記突起は、前記接触部と別部材で形成され、該接触部に結合されていることを特徴とする請求項9に記載の回転型振動波駆動装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の回転型振動波駆動装置における支持部及び接触部を、少なくとも2つ備え、各々の前記接触部が同心軸上に設けられていることを特徴とする回転型振動波駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−263769(P2010−263769A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23124(P2010−23124)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】