説明

多関節型アーム装置及びステージ装置並びに露光装置

【課題】生産性の低下や露光処理等への悪影響を抑制する。
【解決手段】一対の接続部材AM11、AM12を所定の軸周りに回転自在に接続する関節部JT12を有する。関節部は、一対の接続部材を非接触で、所定の軸周り方向に相対的に回転自在、且つ所定の軸と直交する方向への相対移動を拘束するベアリング装置BR12を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節型アーム装置及びステージ装置並びに露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体デバイスの製造工程の1つであるリソグラフィ工程においては、マスク又はレチクル(以下、レチクルと称する)に形成された回路パターンをレジスト(感光剤)が塗布されたウエハ又はガラスプレート等の感光基板上に転写する種々の露光装置が用いられている。
例えば、半導体デバイス用の露光装置としては、近年における集積回路の高集積化に伴うパターンの最小線幅(デバイスルール)の微細化に応じて、レチクルのパターンを投影光学系を用いてウエハ上に縮小転写する縮小投影露光装置が主として用いられている。
【0003】
上記の露光装置においては、ウエハ上のあるショット領域に対する露光の後、他のショット領域に対して順次露光を繰り返すものであるから、ウエハステージ(ステッパの場合)、あるいはレチクルステージおよびウエハステージ(スキャニング・ステッパの場合)の移動によって生じる振動等が原因となり、投影光学系とウエハ等との相対位置誤差を生じさせ、ウエハ上で設計値と異なる位置にパターンが転写されたり、その位置誤差に振動成分を含む場合には像ボケ(パターン線幅の増大)を招く可能性がある。
【0004】
通常、上記のステージには、ステージ内部に配置されたモーター等の駆動手段に電力を供給するためのケーブル、モーターを冷却する冷却液配管、ステージを所定の温度に保つための冷却液配管、基板載置面に設けられた真空吸着孔を真空排気するためのバキューム配管等、各種の用力を供給するための用力供給部材(以下、これらのケーブルや配管を総称してケーブル類という)が接続されているため、ステージの移動に伴って引張力を与えたり、その反力で微振動を発生させたりして、上述のパターン転写精度を低下させる可能性がある。
【0005】
そこで、特許文献1には、基板ステージに接続されるケーブル類を中継するロボットアームを用い、基板ステージとロボットアームとの相対的な位置を一定に保つように制御することにより、基板ステージにケーブル類が及ぼす力や振動の影響を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−223527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
ロボットアームの摺動部、例えばアーム部を接続する関節部には、給油等のメンテナンスを所定期間毎に行う必要があり、その間の稼働が停止することから生産性が低下するという問題が生じる。
また、摺動部の摺動により生じた塵埃がパーティクルとなって、露光処理に悪影響を及ぼす可能性もある。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、生産性の低下や露光処理等への悪影響を抑制できる多関節型アーム装置及びステージ装置並びに露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明は、実施の形態を示す図1ないし図13に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明の多関節型アーム装置は、一対の接続部材(SL1とAM11、AM11とAM12、AM12と25)を所定の軸(C1〜C3)周りに回転自在に接続する関節部(JT11〜JT13)を有する多関節型アーム装置(RB1)であって、前記関節部は、前記一対の接続部材を非接触で、前記所定の軸周り方向に相対的に回転自在、且つ前記所定の軸と直交する方向への相対移動を拘束するベアリング装置(BR11〜BR13)を有するものである。
【0010】
従って、本発明の多関節型アーム装置では、一対の接続部材を接続する関節部において、一対の接続部材の所定の軸周りの相対的な回転、及び所定の軸と直交する方向への相対移動の拘束がベアリング装置により非接触で行われるため、摺動部に対するメンテナンス処理が不要になる。そのため、本発明では、メンテナンス処理等に伴う生産性の低下を抑制できるとともに、塵埃の発生を抑制できることから、多関節型アーム装置を用いた処理に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0011】
また、本発明のステージ装置は、先に記載の多関節型アーム装置(RB1)と、前記接続部材に接続された移動体(WST1)とを備えるものである。
従って、本発明のステージ装置では、移動体の移動に伴って接続部材が移動する場合でも、生産性の低下を及び塵埃の発生を抑制できる。
【0012】
そして、本発明の露光装置は、先に記載のステージ装置を備えるものである。
従って、本発明の露光装置では、生産性の低下を招くことなく効率よく露光処理を実施できるとともに、塵埃の発生に起因する悪影響を排除でき高精度の露光処理を実施することができる。
なお、本発明をわかりやすく説明するために、一実施例を示す図面の符号に対応付けて説明したが、本発明が実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、生産性の低下や露光処理等への悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】ウエハステージWSTの構成を示す平面図である。
【図3】ウエハステージWSTに設けられるステージユニットWST1の平面図である。
【図4】図3中のA−A線に沿った断面矢視図である。
【図5】コア部材22の拡大図である。
【図6】図4中のB−B線に沿った断面矢視図である。
【図7】図4中のC−C線に沿った断面矢視図である。
【図8】ロボットアームRB1を長さ方向に沿って断面した図である。
【図9】スライダーSL1をY方向に沿って断面した図である。
【図10】ウエハステージWSTの動作を説明するための平面図である。
【図11】第2実施形態に係る露光装置の概略構成を示す図である。
【図12】マイクロデバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図13】図12におけるステップS13の詳細工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の多関節型アーム装置及びステージ装置並びに露光装置の実施の形態を、図1ないし図13を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態による露光装置の概略構成を示す図である。図1に示す露光装置10は、半導体素子を製造するための露光装置であり、レチクル(マスク)Rとウエハ(基板)Wとを同期移動させつつ、レチクルRに形成されたパターンを逐次ウエハW上に転写するステップ・アンド・スキャン方式の縮小投影型の露光装置である。
【0017】
尚、以下の説明においては、必要であれば図中にXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。このXYZ直交座標系は、X軸及びZ軸が紙面に対して平行となるよう設定され、Y軸が紙面に対して垂直となる方向に設定されている。図中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。また、露光時におけるウエハW及びレチクルRの同期移動方向(走査方向)はY方向に設定されているものとする。
【0018】
図1に示す通り、露光装置10は、照明光学系ILSと、マスクとしてのレチクルRを保持するレチクルステージRSTと、投影光学系PLと、基板としてのウエハWをXY平面内でX方向及びY方向の2次元方向に移動させるステージユニットWST1,WST2を備えるステージ装置としてのウエハステージWSTと、これらを制御する主制御装置MCSとを含んで構成される。尚、図示を省略しているが、ウエハステージWSTには、ステージユニットWST1,WST2に加えて、露光装置10の性能を測定する各種測定機器が設けられたステージユニットを設けてもよい。
【0019】
照明光学系ILSは、不図示の光源ユニット(例えば、超高圧ハロゲンランプ又はエキシマレーザ等のレーザ光源)から射出された露光光の整形及び照度分布の均一化を行ってレチクルR上の矩形(又は円弧状)の照明領域IARに均一な照度で照射する。レチクルステージRSTは、不図示のレチクルベース上にステージ可動部11を設けた構成であり、露光時にはステージ可動部11がレチクルベース上を所定の走査速度で所定の走査方向に沿って移動する。
【0020】
また、ステージ可動部11の上面にはレチクルRが、例えば真空吸着により保持される。このステージ可動部11のレチクルRの下方には、露光光通過穴(図示省略)が形成されている。このステージ可動部11の端部には反射鏡12が配置されており、この反射鏡12の位置をレーザ干渉計13が測定することにより、ステージ可動部11の位置が検出される。レーザ干渉計13の検出結果はステージ制御系SCSへ出力される。ステージ制御系SCSは、レーザ干渉計13の検出結果と、ステージ可動部11の移動位置に基づく主制御装置MCSからの制御信号に基づいて、ステージ可動部11を駆動する。尚、図1においては図示を省略しているが、レチクルステージRSTの上方にはレチクルRに形成されたマーク(レチクルマーク)とウエハステージWSTの基準位置を定める基準部材に形成された基準マークとを同時に観察してこれらの相対的な位置関係を測定するレチクルアライメントセンサが設けられている。
【0021】
投影光学系PLは、例えば縮小倍率がα(αは、例えば4又は5)である縮小光学系であり、レチクルステージRSTの下方に配置され、その光軸AXの方向がZ軸方向に設定されている。ここではテレセントリックな光学配置となるように、光軸AX方向に沿って所定間隔で配置された複数枚のレンズエレメントから成る屈折光学系が使用されている。尚、レンズエレメントは、光源ユニットから射出される光の波長に応じて適切なものが選択される。上記照明光学系ILSによりレチクルRの照明領域IARが照明されると、レチクルRの照明領域IAR内のパターンの縮小像(部分倒立像)が、ウエハW上の照明領域IARに共役な露光領域IAに形成される。
【0022】
図2は、ウエハステージWSTの構成を示す平面図である。図1及び図2に示すように、ウエハステージWSTは、ベース部材14と、このベース部材14の上面の上方に数μm程度のクリアランスを介して後述するエアスライダによって浮上支持されたステージユニットWST1〜WST2と、これらのステージユニットWST1、WST2の各々をXY面内で2次元方向に駆動する駆動装置15と、ステージユニットWST1〜WST2に接続されるケーブル類(用力供給部材)を中継する多関節型のロボットアーム(多関節型アーム装置)RB1、RB2とを備えて構成されている。ステージユニットWST1、WST2はウエハWを保持・搬送するために設けられている。
ステージユニットWST1、WST2の各々に設けられた駆動装置15を個別に駆動することで、ステージユニットWST1、WST2の各々を個別にXY面内の任意の方向に移動させることができる。
【0023】
図2に示す例において、ベース部材14の−Y側端部の位置がウエハWのローディングポジションであり、露光処理を終えたウエハWをアンロードする場合、及び未露光処理のウエハWをロードする場合にステージユニットWST1,WST2の何れか一方がこの位置に配置される。また、図2に示す例において、投影光学系PLが配置されている位置が露光ポジションであり、露光処理を行うウエハWを保持しているステージユニットWST1,WST2の何れか一方が露光時にこの位置に配置される。上述の通り、ステージユニットWST1,WST2は、個別にXY面内の任意の方向に移動することができるため、ローディングポジションと露光ポジションとを交互に入れ替わることができる。また、ローディングポジションにおいてウエハのフォーカシング情報を検出しておくように構成しても良い。
【0024】
ここで、駆動装置15は、図1に示すように、ベース部材14の上部に設けられた(埋め込まれた)固定部16と、ステージユニットWST1、WST2の底部(ベース対向面側)に固定され、固定部16上の移動面16aに沿って移動する移動部17とを含んで構成される平面モータを備えている。また、移動部17、ベース部材14、及び駆動装置15によって平面モータ装置が構成されている。尚、以下の説明においては、上記の駆動装置15を、便宜上、平面モータ装置15と呼ぶものとする。
【0025】
ウエハWは、例えば真空吸着によってステージユニットWST1、WST2上に固定されている。また、ステージユニットWST1、WST2の側面はレーザ干渉計18(図1参照)からのレーザビームを反射する反射面とされており、外部に配置されたレーザ干渉計18により、ステージユニットWST1、WST2のXY面内での位置が例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。
【0026】
なお、図1では、代表的にレーザ干渉計18を図示しているが、実際にはステージユニットWST1、WST2のY方向の位置を検出するレーザ干渉計、及びX方向の位置を検出するレーザ干渉計から構成されている。
【0027】
ステージユニットWST1、WST2の位置情報(又は速度情報)はステージ制御系SCS及びこれを介して主制御装置MCSに送られる。ステージ制御系SCSでは主制御装置MCSからの指示に応じてステージユニットWST1、WST2の各々の位置情報(又は速度情報)に基づいて平面モータ装置15を介してステージユニットWST1、WST2のXY面内の移動をそれぞれ制御する。
【0028】
ここで、ウエハステージWSTの構成について説明する。図3はウエハステージWSTに設けられるステージユニットWST1の上面図であり、図4は図3中のA−A線に沿った断面矢視図である。尚、図3及び図4においては図1及び図2に示した部材と同一の部材については同一の符号を付してある。また、ステージユニットWST1とステージユニットWST2とは同一構成であるため、ここではステージユニットWST1を代表して説明する。
【0029】
図3及び図4に示す通り、ステージユニットWST1の一部をなす第1ステージ25は、ベース部材14の上部に設けられた固定部16上において、固定部16と所定の間隔(数μm程度)をもって浮上支持される。ウエハステージWSTの一部をなす固定部16は、周囲にコイル21が巻回されており、XY面内において所定のピッチで配列されたコア部材22を備える。このコア部材22は、例えばSS400相当の低炭素鋼、ステンレス等の磁性体により形成されており、頭部22aと支柱部22bとからなる。頭部22aはXY面内における断面形状が矩形形状であり、支柱部22bのXY面内における断面形状は円形形状である。頭部22aと支柱部22bは一体化されており、支柱部22bの周囲にコイル21が巻回されている。
【0030】
図5は、コア部材22の拡大図である。図5に示す通り、コイル21は断熱材Tiを介してコア部材22の支柱部22bの周囲に巻回されている。これは、コイル21に電流を流したときに発生する熱がコア部材22に伝わることにより生ずるステージユニットWST1、WST2の位置決め誤差を防止するためである。尚、断熱材Tiとしては、断熱性及び耐熱性に優れた樹脂を用いることができる。
【0031】
コア部材22は、頭部22aの先端部が略一面に含まれるようにベース部材14上に配列されている。このとき、コア部材22は、支柱部22bがベース部材14と磁気的に接続される。コア部材22の頭部22aの間には、非磁性体からなるセパレータ23が設けられている。このセパレータ23は、例えばSUS、セラミックスから形成されており、隣接するコア部材22の間で磁気回路が形成されないようにするためのものである。
【0032】
セパレータ23の上部の高さ位置は、コア部材22の頭部22aの先端部の高さ位置と同一になるように設定されているため、固定部16の上面(移動面)はほぼ平坦面になる。また、セパレータ23はコア部材22の頭部22aの間に設けられており、ベース部材14とコア部材22の頭部22a及びセパレータ23によって上下方向が挟まれた空間が形成されることになる。この空間に冷媒を導入することで、コイル21を冷却することが可能になる。
【0033】
固定部16の上面にはガイド部材24が設けられている。このガイド部材24は、ステージユニットWST1、WST2をXY面内で移動させる案内板の役割を果たすものであり非磁性体から形成されている。このガイド部材24は、例えばアルミナ(Al)を平坦面な固定部16の上面に溶射し、高圧ガスで金属の表面に吹き付けて形成される。
【0034】
固定部16に設けられるコイル21には、U相、V相、及びW相からなる三相交流が供給される。XY面内で配列されたコイル21の各々に各相の電流を所定の順序で所定のタイミングで印加することにより、ステージユニットWST1、WST2を所望の方向に所望の速度で移動させることができる。図6は、図4中のB−B線に沿った断面矢視図である。図6に示す通り、断面形状が矩形形状であるコア部材22の頭部22aがXY面内でマトリックス状に配列されており、頭部22aの間にセパレータ23が設けられている。
図6においては、各コア部材22に巻回されたコイル21に印加される三相交流の各相を、コア部材22の頭部22aに対応付けて図示している。図6を参照すると、U相、V相、及びW相の各相がXY面内で規則的に配列されていることが分かる。
【0035】
ウエハステージWSTの一部をなす移動部17は、第1ステージ25、永久磁石26、エアパッド27、第2ステージ28、水平駆動機構29、及び垂直駆動機構30を含んで構成される。第1ステージ25の底面には永久磁石26とエアパッド27とが規則的に配列されている。永久磁石27としては、ネオジウム・鉄・コバルト磁石、アルミニウム・ニッケル・コバルト(アルニコ)磁石、フェライト磁石、サマリウム・コバルト磁石、又はネオジム・鉄・ボロン磁石等の希土類磁石を用いることが可能である。
【0036】
図7は、図4中のC−C線に沿った断面矢視図である。図7に示す通り、永久磁石26は隣接するものが互いに異なる極となるようXY面内に所定の間隔で配列されている。かかる配列によって、X方向及びY方向の両方向に交番磁界が形成される。また、永久磁石26間には真空予圧型のエアパッド27が設けられている。このエアパッド27は、ガイド部材24に向かってエア(空気)を吹き付けることにより、固定部16に対して移動部17を、例えば数ミクロン程度のクリアランスを介して浮上支持(非接触支持)させる。
【0037】
第2ステージ28は、垂直駆動機構30により第1ステージ25上に支持されている。
ここで、垂直駆動機構30は、例えばボイスコイルモータ(VCM)等を含む支持機構30a,30b,30c(図3参照)を備えており、これらの支持機構30a,30b,30cによって第2ステージ28の異なる3点を支持している。支持機構30a,30b,30cはZ方向に伸縮自在に構成されており、これら支持機構30a,30b,30cを同一の伸縮量で駆動することにより、第2ステージ28をZ方向に移動させることができ、支持機構30a,30b,30cを独立して駆動し、又は異なる互いに伸縮量で駆動することにより、第2ステージ28のX軸の周りの回転、及びY軸の周りの回転を制御することができる。
【0038】
水平駆動機構29は、例えばボイスコイルモータ(VCM)等を含む駆動機構29a,29b,29c(図3参照)を備えており、これらの駆動機構29a,29b,29cによって第2ステージ28のXY面内における位置及びZ軸回りの回転を制御する。具体的には、駆動機構29a,29bを同一の伸縮量で駆動することにより第2ステージ28のY方向の位置を可変することができ、駆動機構29cを駆動することにより第2ステージ28のX方向の位置を可変することができ、駆動機構29a,29bを互いに異なる伸縮量で駆動することにより第2ステージ28のZ軸回りの回転を可変することができる。つまり、上述した平面モータ17によって駆動される第1ステージ25が粗動ステージであり、水平駆動機構29によって駆動される第2ステージ28が微動ステージであるということができる。尚、水平駆動機構29及び垂直駆動機構30は、ステージ制御系SCSの制御の下で第2ステージ28のXY面内における位置及びZ方向の位置を調整する。
【0039】
図1に戻り、本実施形態の露光装置10は、図4に示したエアパッド27に対して加圧エアを供給するための空気ポンプ40を備える。空気ポンプ40とステージユニットWST1,WST2とはチューブ41、42を介してそれぞれ接続されており、空気ポンプ40からのエアは、チューブ41を介してステージユニットWST1に供給されるとともに、チューブ42を介してステージユニットWST2に供給される。また、図4に示したコイル21を冷却するための冷却装置43が設けられている、この冷却装置43は、冷媒供給管44と冷媒排出管45とによりベース部材14に接続されている。冷却装置43からの冷媒は冷媒供給管44を介してベース部材14(固定部16内のコイル21が設けられている部位)に供給され、ベース部材14を介した冷媒は冷媒排出管45を介して冷却装置43に回収される。例えば、図4においては、上下をガイド部材24とベース14とに挟まれ、内部にコイル21、コア部材22、及びセパレータ23が配置された空間に水等の冷媒を供給するように構成することができる。
【0040】
尚、図1においては図示を省略しているが、露光装置10にはウエハWに形成されたアライメントマークの位置情報を計測するためのオフ・アクシス型のウエハアライメントセンサが投影光学系PLの側方に設けられ、又は投影光学系PLを介してウエハWに形成されたアライメントマークの位置情報を計測するTTL(スルー・ザ・レンズ)型のアライメントセンサが設けられている。また、ウエハWに対して斜め方向からスリット状の検出光を照射し、その反射光を測定してウエハWのZ方向の位置及び姿勢(X軸及びY軸回りの回転)を検出し、この検出結果に基づいてウエハWのZ方向の位置及び姿勢を補正してウエハWの表面を投影光学系PLの像面に合わせ込むオートフォーカス機構及びオートレベリング機構が設けられている。
【0041】
続いて、ロボットアームRB1、RB2について説明するが、ロボットアームRB1、RB2は同様の構成を有しているため、以下ではロボットアームRB1について代表的に説明する。
【0042】
図8は、ロボットアームRB1を長さ方向に沿って断面した図である。
ロボットアームRB1は、図2に示すように、ベース部材14の−X側の端縁に沿ってY方向に移動自在なスライダー(接続部材)SL1、スライダーSL1と対をなして関節部JT11を介してZ軸周りに回転自在に接続されるアーム部(接続部材)AM11、一端側がアーム部AM11に関節部JT12を介してZ軸周りに回転自在に接続されるアーム部AM12を備えている。アーム部AM12の他端側は、関節部JT13を介して第1ステージ(接続部材)25に接続されている。アーム部AM11は、例えばステンレス等によって、長さ方向の中央部が+Z側に膨出して湾曲する筒体で形成されている。アーム部AM11の内部には、収容空間71が形成される。同様に、アーム部AM12は、例えばステンレス等によって、長さ方向の中央部が−Z側に膨出して湾曲する筒体で形成されている。アーム部AM12の内部には、収容空間72が形成される。
【0043】
スライダーSL1は、Y軸方向に延びる直方体形状の筺体60を有しており、不図示の駆動装置により、図8及び図9に示すように、ベース部材14との間に微小隙間をもってY方向に移動する。ベース部材14のスライダーSL1の移動経路には、Y方向の略中央に位置してZ方向に貫通する導入口CH1が設けられている。図8及び図9に示すように、この導入口CH1からは、上述したケーブル類CB1が導入される。ケーブル類CB1としては、例えば、ステージユニットWST1に設けられたモータ(VCM等のアクチュエータ)に対して温度調整用冷媒を供給・排出する配管、エアベアリングに用いられるエアを供給する配管(例えば、上述したチューブ41、42)、ウエハWを負圧吸引するための負圧(真空)を供給する配管、各種のセンサへ電力を供給する配線、各種制御信号・検出信号を供給するためのシステム配線等が種々の駆動機器、制御機器に対して配設される。
【0044】
なお、温度調整用冷媒を供給・排出するケーブル類CB1としては、ポリウレタンチューブやフッ素樹脂チューブ、金属製チューブ等を用いることができるが、フッ素樹脂チューブは可撓性が低く、金属製チューブは耐久性が低いことから本実施形態ではポリウレタンチューブが用いられる。
【0045】
また、スライダーSL1は、図9に示すように、導入口CH1が常に内部空間に臨むように、筺体60の大きさ及び移動範囲が設定されており、ケーブル類CB1はこの内部空間に余長をもって収容される。
【0046】
関節部JT11は、スライダーSL1とアーム部AM11とをZ軸と平行な回転軸C1周りに相対的に回転自在に接続するものであって、スライダーSL1とアーム部AM11とを非接触で回転軸C1周りに相対的に回転自在、且つXY平面に沿う方向への相対移動を拘束するベアリング装置BR11を有している。ベアリング装置BR11は、スライダーSL1の+Z側端部に設けられる支持部51、支持部51の−Z側に間隔をあけて対向配置される支持部61と、支持部51、61のZ方向の相対位置を調整する磁気ガイド70とを有している。
【0047】
支持部51は、中央に開口部51aを有するリング状に形成されており、開口部51a周囲の支持部61と対向する面には、回転軸C1周りに延在するリング状の永久磁石(発磁体)52、53が設けられている。永久磁石52、53は、同心状に間隔をあけて配置されており、図9(b)の部分詳細図に示すように、支持部61と対向する側の極性が互いに逆となっている。
【0048】
支持部61は、中央に開口部61aを有するリング状の磁性体で形成されており、開口部61a周囲の支持部51と対向する面には、回転軸C1周りに延在するリング状の永久磁石(発磁体)62、63が設けられている。永久磁石62、63は、同心状に間隔をあけて配置されており、図9(b)に示すように、支持部51(永久磁石52、53)と対向する側の極性が互いに逆で、且つ、対向する永久磁石62、63の極性とは逆の極性となっている。また、支持部61の+Z側の面の外周部には、支持部51との間の隙間量を規定するリング状の規定部材64が設けられている。
さらに、支持部61の+Z側の面には、収容空間71と開口部61aとを連通させるように、開口部61aの周囲を囲んでアーム部AM11の一端が接続されている。
【0049】
磁気ガイド70は、支持部61に対する磁力により支持部61の位置を調整することにより、永久磁石52、53と永久磁石62、63との間の隙間量、及び規定部材64と支持部51との間の隙間量を調整するものであり、筺体60から内部空間に突出する壁部60aに回転軸C1周りに間隔をあけて複数(例えば等間隔で3つ)配置されている。そして、複数の磁気ガイド70により同一量で支持部61の位置を制御することにより、支持部61のZ方向の位置を調整することができ、また複数の磁気ガイド70による支持部61に対する調整量を異ならせることにより、支持部61のレベリング(姿勢)を調整することができる。
【0050】
関節部JT12は、アーム部AM11とアーム部AM12とをZ軸と平行な回転軸C2周りに相対的に回転自在に接続するものであって、アーム部AM11とアーム部AM12とを非接触で回転軸C2周りに相対的に回転自在、且つXY平面に沿う方向への相対移動を拘束するベアリング装置BR12を有している。
【0051】
ベアリング装置BR12は、アーム部AM11の他端側に接続される支持部51、支持部51の−Z側に間隔をあけて対向配置され、アーム部AM12の一端側が接続される支持部61と、支持部51、61のZ方向の相対位置を調整する磁気ガイド70とを有しており、ベアリング装置BR11とほぼ同様の構成であるため、以下ではベアリング装置BR11と異なる構成についてのみ説明する。
【0052】
ベアリング装置BR12における支持部51の+Z側の面には、収容空間71と開口部51aとを連通させるように、開口部51aの周囲を囲んでアーム部AM11の他端が接続されている。また、ベアリング装置BR12における支持部61の−Z側の面には、収容空間72と開口部61aとを連通させるように、開口部61aの周囲を囲んでアーム部AM12の一端が接続されている。ベアリング装置BR12における磁気ガイド70は、支持部51に吊持された支持部60bに支持されている。
【0053】
関節部JT13は、アーム部AM12と第1ステージ25とをZ軸と平行な回転軸C3周りに相対的に回転自在に接続するものであって、アーム部AM12と第1ステージ25とを非接触で回転軸C3周りに相対的に回転自在、且つXY平面に沿う方向への相対移動を拘束するベアリング装置BR13を有している。
【0054】
ベアリング装置BR13は、第1ステージ25に設けられる支持部51と、支持部51の−Z側に間隔をあけて対向配置され、アーム部AM12の他端側に接続される支持部61と、支持部51、61のZ方向の相対位置を調整する磁気ガイド70とを有しており、ベアリング装置BR11、BR12とほぼ同様の構成であるため、以下ではベアリング装置BR11、BR12と異なる構成についてのみ説明する。
【0055】
ベアリング装置BR13における支持部51は開口部51aを有し、この開口部51aを介してケーブル類CB1は第1ステージ25に接続される。また、ベアリング装置BR13における支持部61の−Z側の面には、収容空間72と開口部61aとを連通させるように、開口部61aの周囲を囲んでアーム部AM12の他端が接続されている。
【0056】
上記のロボットアームRB1においては、導入口CH1、筺体60の内部空間、ベアリング装置BR11における支持部61の開口部61a、アーム部AM11の収容空間71、ベアリング装置BR12における支持部51の開口部51a、支持部61の開口部61a、アーム部AM12の収容空間72、ベアリング装置BR13における支持部61の開口部61a、支持部51の開口部51aが順次連通し、導入口CH1から導入されるケーブル類CB1を引き回して第1ステージ25に接続するための引き回し空間(連通空間)HM1を形成する。
また、本実施形態では、引き回し空間HM1を負圧吸引する吸引装置73が設けられている。
【0057】
次に、ロボットアームRB1における関節部JT11〜JT13の動作について説明する。ここでは、代表的に関節部JT11の動作について説明する。
図9(b)に示すように、関節部JT11においては、支持部51に設けられた永久磁石52、53と、支持部61に設けられた永久磁石62、63とは対向する磁石同士の極性が互いに逆となっているため、互いに接近する方向の磁着力が作用する一方で、磁気ガイド70により互いに離間する方向の磁力が作用することによって、これらの磁力の差に応じた隙間量で離間して非接触状態が保持される。
【0058】
また、支持部51に設けられた永久磁石52と、支持部61に設けられた永久磁石63、及び支持部51に設けられた永久磁石53と、支持部61に設けられた永久磁石62とが対向する側の磁極が同極で互いに反発することから、これらの永久磁石が対向する位置に支持部51、61を相対移動させるXY平面に沿う方向の力が外部から加わった場合でも、上記永久磁石が反発する力により相対移動が阻止される。また、これら永久磁石52、53と永久磁石62、63との相対位置関係が維持されることから、支持部51と支持部61とは回転軸C1周りには移動可能となる。
【0059】
従って、支持部51と支持部61とは、ベアリング装置BRによって回転軸C1周りに移動自在、且つXY平面に沿う方向への相対移動を非接触で拘束される。
換言すると、関節部JT11においては、スライダーSL1とアーム部AM11とが回転軸C1周りに回転自在、且つXY平面に沿う方向に相対移動が拘束された状態で非接触で接続される。また、関節部JT12においては、アーム部AM11とアーム部AM12とが回転軸C2周りに回転自在、且つXY平面に沿う方向に相対移動が拘束された状態で非接触で接続される。また、関節部JT13においては、アーム部AM12と第1ステージ25とが回転軸C3周りに回転自在、且つXY平面に沿う方向に相対移動が拘束された状態で非接触で接続される。
【0060】
一方、上記構成のステージユニットWST1、WST2を移動させる場合には、三相交流で駆動する公知のリニアモータと同様の駆動方法を用いることができる。つまり、ステージユニットWST1、WST2がX方向に移動可能に構成されたリニアモータとY方向に移動可能に構成されたリニアモータからなると考え、ステージユニットWST1、WST2をX方向に移動させる場合には、X方向に配列された各コイル21に対してX方向に移動可能に構成されたリニアモータと同様の三相交流を印加し、ステージユニットWST1、WST2をY方向に移動させる場合には、Y方向に配列された各コイル21に対してY方向に移動可能に構成されたリニアモータと同様の三相交流を印加すれば良い。
【0061】
また、走査時には、露光領域IAにレチクルRの一部のパターン像が投影され、投影光学系PLに対して、レチクルRが−X方向(又は+X方向)に速度Vで移動するのに同期して、ウエハWが+X方向(又は−X方向)に速度β・V(βは投影倍率)で移動する。1つのショット領域に対する露光処理が終了すると、主制御装置MCSはステージユニットWST1をステッピング移動させて次のショット領域を走査開始位置に移動させ、以下同様にステップ・アンド・スキャン方式で各ショット領域に対する露光処理が順次行われる。
【0062】
ここで、上記ステージユニットWST1がベース部材14上(固定部16上)で、例えば図2に示す位置から図10に示す位置に移動した際には、ステージユニットWST1のY方向の位置に応じてスライダーSL1がY方向に移動するとともに、関節部JT11においてアーム部AM11がスライダーSL1に対して回転軸C1周りに相対的に非接触で回転し、関節部JT12においてアーム部AM12がアーム部AM11に対して回転軸C2周りに相対的に非接触で回転し、関節部JT13においてアーム部AM11がステージユニットWST1に対して回転軸C3周りに相対的に非接触で回転することにより、ケーブル類CB1をステージユニットWST1に相対位置を維持した状態で追従させることができる。
【0063】
また、ロボットアームRB1におけるケーブル類CB1の引き回し空間HM1は、吸引装置73により負圧吸引されているため、例えば温度調整用冷媒を供給・排出するケーブル類CB1から水分が漏出した場合でも速やかに吸引・排出されることになる。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態では、ロボットアームRB1における関節部JT11〜JT13が、回転軸C1〜C3周り方向に回転自在、且つXY平面方向への相対移動を拘束した状態で一対の部材を非接触で接続するため、給油等のメンテナンスを行う必要がなくなり生産性の低下を防止することができるとともに、摺動で生じる塵埃に起因する露光不良の発生も防止することができる。
【0065】
また、本実施形態では、ケーブル類CB1が収容された引き回し空間HM1を負圧吸引しているため、例えばケーブル類CB1を流動する冷媒に含まれる水分等が引き回し空間をHM1から飛散して露光処理に悪影響を及ぼすことを抑制できる。そのため、本実施形態では、水分等の発生を考慮して硬くて可撓性に劣るフッ素樹脂チューブを用いることでステージユニットWST1に張力等の悪影響が及ぶことを防止できるとともに、金属製チューブを用いることで交換頻度が多くなり生産性が低下することを抑制できる。
【0066】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態について説明する。
図11は、第2実施形態に係る露光装置EXを示す概略構成図である。本実施形態においては、露光装置EXが、極端紫外(EUV:Extreme Ultra-Violet)光で基板Pを露光するEUV露光装置である場合を例にして説明する。極端紫外光は、例えば波長5〜50nm程度の軟X線領域の電磁波である。以下の説明において、極端紫外光を適宜、EUV光、と称する。一例として、本実施形態では、波長13.5nmのEUV光を露光光ELとして用いる。
【0067】
まず、本実施形態に係る露光装置EXの概略について説明する。図11において、露光装置EXは、パターンが形成されたマスクMを保持しながら移動可能なマスクステージ101と、基板Pを保持しながら移動可能な基板ステージ102と、露光光ELを発生する光源装置103と、光源装置103からの露光光ELでマスクMを照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板Pに投影する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置104とを備えている。基板Pは、半導体ウエハ等の基材の表面に感光材(レジスト)等の膜が形成されたものを含む。マスクMは、基板Pに投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。
【0068】
本実施形態において、マスクMは、EUV光を反射可能な多層膜を有する反射型マスクである。露光装置EXは、多層膜でパターンが形成されたマスクMの表面(反射面)を露光光EL(EUV光)で照明し、そのマスクMで反射した露光光ELで感光性を有する基板Pを露光する。
【0069】
本実施形態の露光装置EXは、露光光ELが進行する第1空間105を所定状態の環境に設定可能なチャンバ装置106を備えている。チャンバ装置106は、露光光ELが進行する第1空間105を形成する第1部材107と、第1空間105の環境を調整する第1調整装置108とを備える。
本実施形態において、第1調整装置108は、真空システムを含み、第1空間105を真空状態に調整する。制御装置104は、第1調整装置108を用いて、露光光ELが進行する第1空間105をほぼ真空状態に調整する。一例として、本実施形態においては、第1空間5の圧力は、1×10−4〔Pa〕程度の減圧雰囲気に調整される。
【0070】
光源装置103から射出された露光光ELは、第1空間105を進行する。本実施形態においては、第1空間105に、照明光学系ILの少なくとも一部、及び投影光学系PLが配置される。光源装置103から射出された露光光ELは、第1空間105に配置されている照明光学系IL及び投影光学系PLを通る。また、本実施形態においては、第1空間105に基板ステージ102が配置される。
なお、本実施の形態での説明では、光源装置3からマスクMを照明するまでのEUV光を照明光、マスクMで反射して基板Pに投影されるまでのEUV光を露光光ELとして説明するが、説明の都合上名称を使い分けたものであり、両者を露光光ELとして扱ってもよい。
【0071】
第1部材107は、第1開口109と、第1開口109の周囲に設けられた第1面111とを有する。第1開口109は、第1空間105を進行した露光光ELが入射可能な位置に形成されている。本実施形態においては、第1開口109は、照明光学系ILから射出された露光光ELが入射可能な位置に形成されている。
【0072】
マスクステージ101は、第1開口109を覆うように配置される。マスクステージ101は、第1面111と対向する第2面112を有し、第1面111にガイドされつつ第1開口109との間で相対運動が可能である。本実施形態において、第1部材107の第1面111とマスクステージ101の第2面112との間にガスシール機構110が形成される。本実施形態においては、第1面111と第2面112との間に所定のギャップG1が形成される。ギャップG1は、所定量(例えば0.1〜1μm程度)に調整されており、ギャップG1を介して第1空間105の内側にガスが流入することが抑制されている。本実施形態においては、第1開口109がマスクステージ101によって覆われ、第1部材107の第1面111とマスクステージ101の第2面112との間にガスシール機構110が形成されることによって、第1空間105は、ほぼ密閉された状態となる。これにより、チャンバ装置106は、第1空間105を所定状態(真空状態)に制御可能である。
【0073】
マスクステージ101は、第1開口109を介して、マスクMが第1空間105に配置されるように、そのマスクMを保持する。本実施形態においては、マスクステージ101は、第1空間105の+Z側に配置され、マスクMの反射面が−Z側(第1空間105側)を向くように、マスクMを保持する。また、本実施形態においては、マスクステージ101は、マスクMの反射面とXY平面とがほぼ平行となるように、マスクMを保持する。照明光学系ILから射出された露光光ELは、マスクステージ101に保持されているマスクMの反射面に照射される。
【0074】
マスクステージ101についてさらに詳述すると、マスクステージ101は、第1開口109より大きく、第2面112が形成されて、第1面111および第1開口に対して移動可能に構成された第1ステージ113と、第1開口109より小さく、マスクMを保持しながら第1ステージ113に対して移動可能に構成された第2ステージ114とを含む。第1ステージ113は、第1開口109を覆うように配置され、その第1ステージ113の第2面112と第1空間形成部材107の第1面111との間にガスシール機構110が形成される。第1ステージ113は、第1面111にガイドされつつ、第1面111および第1開口109に対して移動可能である。第2ステージ114は、第1ステージ113の−Z側(第1空間5側)に配置されている。第2ステージ114に保持されたマスクMは、第1開口109を介して第1空間105に配置される。第2ステージ114は、マスクMを保持した状態で、第1ステージ113に対して移動可能である。このような構成により、マスクMを移動させるための粗動ステージとして第1ステージ113を機能させ、マスクMを移動させるための微動ステージとして第2ステージを機能させることができる。なお、第1ステージ113、第2ステージ114は、図示されていないが、各ステージをそれぞれ移動させる駆動装置を有している。
【0075】
また、チャンバ装置106は、第1部材107の外面との間で、マスクステージ101を収容する第2空間115を形成する第2部材116と、第2空間115の環境を調整する第2調整装置117とを備えている。本実施形態において、第1空間105及び第2空間115の外側は、大気空間であり、第1空間105及び第2空間115の外側の空間の圧力は、大気圧である。第2調整装置117は、第2空間115を、第1空間105の圧力よりも高く、大気圧よりも低い圧力に調整する。一例として、本実施形態においては、第2空間115の圧力は、1×10−1〔Pa〕程度に調整される。
【0076】
以上のような構成により、マスクステージ101の少なくとも一部は第2空間115に配置され、マスクステージ101に保持されたマスクMは、第1空間105に配置される。
【0077】
露光装置EXは、マスクMと基板Pとを所定の走査方向に同期移動しつつ、マスクMのパターンの像を基板Pに投影する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)である。本実施形態においては、マスクMの走査方向(同期移動方向)をY軸方向とし、基板Pの走査方向(同期移動方向)もY軸方向とする。露光装置EXは、基板Pのショット領域を投影光学系PLの投影領域に対してY軸方向に移動するとともに、その基板Pのショット領域のY軸方向への移動と同期して、照明光学系ILの照明領域に対してマスクMのパターン形成領域をY軸方向に移動しつつ、マスクMを露光光ELで照明し、そのマスクMからの露光光ELを基板Pに照射して、その基板Pを露光する。
【0078】
マスクステージ101の第1ステージ113は、基板P上の1つのショット領域の走査露光中に、マスクMのパターン形成領域全体が照明光学系ILの照明領域を通過するように、Y軸方向(走査方向)に、比較的大きなストロークを有している。第1ステージ113がY軸方向に移動することによって、第1ステージ113に支持されている第2ステージ114も、第1ステージ113とともにY軸方向に移動する。したがって、第1ステージ113がY軸方向に移動することによって、第2ステージ114に保持されているマスクMも、第1ステージ113とともにY軸方向に移動する。第2ステージ114は、第1ステージ113に対して、微かに移動可能であり、第1ステージ113のストロークよりも小さなストロークで移動するようになっている。また、第2ステージ114が第1ステージ113に対してX方向にも小さなストロークで移動できるようにしてもよい。
【0079】
また、第1空間形成部材107の第1面111と第1ステージ113の第2面112との間にガスシール機構110が形成されており、第1空間形成部材107に対して第1ステージ113を移動した場合においても、第1空間105の内側にガスが流入することが抑制される。また、本実施形態においては、第1面111と第2面112とのギャップG1を調整するギャップ調整機構が設けられており、第1空間形成部材107に対して第1ステージ113を移動している状態においても、第1面111と第2面112とのギャップG1は所定量に維持される。
これにより、第1空間形成部材107に対して第1ステージ113を移動した場合においても、第1空間105の内側にガスが流入することが抑制される。
【0080】
第1空間形成部材107は、第1面111が形成されたガイド部材118と、ガイド部材118の少なくとも一部と対向するチャンバ部材119とを含む。ガイド部材118は、マスクステージ101の移動をガイドする。マスクステージ101(第1ステージ113)は、前述のように、ガイド部材118の第1面111にガイドされつつ、第1開口109に対して移動する。
【0081】
チャンバ装置106は、第1空間形成部材107と第1調整装置108の他に、ガイド部材118とチャンバ部材119とを接続するベローズ部材120を有する。べローズ部材120は、可撓性を有し、弾性変形可能である。本実施形態において、ベローズ部材120はステンレス製である。ステンレスは、脱ガス(アウトガス)が少ない。そのため、ベローズ部材120が第1空間105に与える影響を抑制することができる。なお、ベローズ部材20を用いたのは一例であり、脱ガス等の影響が少なければ、ステンレス以外の材料を用いることも可能である。
【0082】
第1空間形成部材107は、第1の開口109、第1面111を有する共に、ガイド部材118、チャンバ部材119を含むように構成される。そして、ガイド部材118、チャンバ部材119、ベローズ部材120、マスクステージ101(主に第1ステージ113)、及びステージ装置STに設けられたチャンバ部材SC(収容体の一部、詳細は後述)によって、ほぼ密閉された第1空間105が形成される。チャンバ部材119は、ガイド部材118の下面118Bと対向する上面119Aを有し、ベローズ部材120は、ガイド部材118の下面118Bとチャンバ部材119の上面119Aとを接続するように配置されている。
【0083】
本実施形態において、露光装置EXは、ベース部材121と、ベース部材121上に第1防振システム122を介して支持された第1支持部材123とを備えている。チャンバ部材119は、第1支持部材123に支持されている。また、ベース部材121上には、第1フレーム部材124が配置されている。第1フレーム部材124は、支柱部125と、支柱部125の上端に接続された支持部126とを含む。支持部126上には、ガイド部材118の下面を支持する第2支持部材127が接続されている。チャンバ部材119と第2支持部材127とは離れている。また、チャンバ部材119と第1フレーム部材124とは離れており、チャンバ部材119と第1フレーム部材124との間に、ベローズ部材等の可撓性(弾性)を有するシール機構が配置される。チャンバ部材119は、第2支持部材127に支持されたガイド部材118の下面118Bと対向する上面119Aを有する。ベローズ部材120は、ガイド部材118の下面118Bとチャンバ部材119の上面119Aとを接続するように配置されている。
【0084】
光源装置103は、例えばキセノン(Xe)等のターゲット材料にレーザー光を照射して、そのターゲット材料をプラズマ化し、EUV光を発生させるレーザ生成プラズマ光源装置、所謂LPP(Laser Produced Plasma)方式の光源装置である。なお、光源装置103としては、所定ガス中で放電を発生させて、その所定ガスをプラズマ化し、EUV光を発生させる放電生成プラズマ光源装置、所謂DPP(Discharge Produced Plasma)方式の光源装置であってもよい。光源装置3で発生したEUV光(照明光)は、波長選択フィルタ(不図示)を介して、照明光学系ILに入射する。ここで、波長選択フィルタは、光源装置103が供給する光から、所定波長(たとえば13.4nm)のEUV光だけを選択的に透過させ、他の波長の光の透過を遮る特性を有する。波長選択フィルタを透過したEUV光は、照明光学系ILを介して、転写すべきパターンが形成された反射型のマスク(レチクル)Mを照明する。
【0085】
照明光学系ILは、光源装置103からの露光光ELでマスクMを照明する。照明光学系ILは、複数の光学素子を含み、マスクM上の所定の照明領域を均一な照度分布の露光光ELで照明する。照明光学系ILの光学素子は、EUV光を反射可能な多層膜を備えた多層膜反射鏡を含む。光学素子の多層膜は、例えばMo/Si多層膜を含む。
【0086】
マスクステージ101の第1ステージ113は、マスクMを保持した状態で、X軸、Y軸、及びθZ方向の3つの方向に移動可能である。マスクステージ101の第2ステージ114は、マスクM保持した状態で、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。本実施形態においては、マスクステージ101(マスクM)の位置情報を計測可能なレーザ干渉計(不図示)、及びマスクMの反射面の面位置情報を検出可能なフォーカス・レベリング検出システム(不図示)が設けられており、制御装置4は、レーザ干渉計の計測結果及びフォーカス・レベリング検出システムの検出結果に基づいて、マスクステージ101に保持されているマスクMの位置を制御する。
【0087】
マスクステージ101の第1ステージ113及び第2ステージ114は、金属製である。一例として、本実施形態の第1ステージ113及び第2ステージ114は、脱ガス(アウトガス)が少ないステンレス製である。
【0088】
図11に戻り、投影光学系PLは、複数の光学素子を含み、マスクMのパターンの像を所定の投影倍率で基板Pに投影する。投影光学系PLの光学素子は、EUV光を反射可能な多層膜を備えた多層膜反射鏡を含む。光学素子の多層膜は、例えばMo/Si多層膜を含む。
投影光学系PLの複数の光学素子は、鏡筒128に保持されている。鏡筒128は、フランジ129を有する。フランジ129には、第2フレーム部材130の下端が接続されている。第2フレーム部材130の上端は、防振システム131を介して、第1フレーム部材124の支持部126と接続されている。鏡筒128(フランジ129)は、第2フレーム部材130に吊り下げられている。
【0089】
基板ステージ102として、本実施形態では、図1乃至図10で示した上記第1実施形態のウエハステージWSTが設けられている。なお、図11では、ステージユニットWST2は図示されておらず、ステージユニットWST1のみ図示している。
【0090】
次に、上述の構成を有する露光装置EXの動作の一例について説明する。
第1空間105は、第1調整装置108によって、真空状態に調整される。また、第2空間115が、第2調整装置117によって、第1空間105の圧力とほぼ同じか、または第1空間105の圧力より高く、かつ大気圧よりも低い圧力に調整される。あるいは、第2空間115が第1空間105よりも低い圧力に設定されるようにしてもよい。第1面111と第2面112とのギャップG1は、ギャップ調整機構135によって所定量に調整されており、第1面111と第2面112との間に形成されたガスシール機構110によって、第1空間105の内側にガスが流入することが抑制されている。これにより、第1空間105の真空状態、環境が維持される。
【0091】
マスクMがマスクステージ101に保持されるとともに、基板Pが基板ステージ102に保持された後、制御装置104は、基板Pの露光処理を開始する。マスクMを照明光で照明するために、制御装置104は、光源装置103の発光動作を開始する。
【0092】
光源装置103の発光動作により光源装置103から射出されたEUV光は、照明光学系ILに入射する。照明光学系ILに入射したEUV光は、その照明光学系ILを進行した後、第1開口109に供給される。第1開口109に供給されたEUV光は、照明光として、第1開口109を介してマスクステージ101に保持されているマスクMに入射する。つまり、マスクステージ101に保持されているマスクMは、光源装置103より射出され、照明光学系ILを介した照明光(EUV光)で照明される。マスクMの反射面に照射され、その反射面で反射した照明光は、マスクMのパターンの像の情報を含む露光光ELとして第1空間105に配置されている投影光学系PLに入射する。投影光学系PLに入射した露光光ELは、その投影光学系PLを進行した後、基板ステージ102に保持されている基板Pに照射される。
【0093】
制御装置104は、マスクMのY軸方向への移動と同期して、平面モータ装置15の駆動により基板PをY軸方向に走査移動しつつ、マスクMを露光光ELで照明する。これにより、基板Pは露光光ELで露光され、マスクMのパターンの像が基板Pに投影される。そして、制御装置104は、平面モータ装置15の駆動による基板PのX軸方向へのステップ移動と、上記基板PのY軸方向への走査移動とを繰り返すことにより、基板PにマスクMのパターンを露光する。
【0094】
また、上記ステージユニットWST1(WST2)の移動に際しては、多関節型ロボットアームRB1(RB2)がケーブル類CB1(CB2)を非接触で追従させるため、ケーブル類CB1の張力や振動がステージユニットWST1に悪影響を及ぼして露光精度を低下させることを防止しつつ、給油等のメンテナンスを行う必要がなくなり生産性の低下を防止することができる。
【0095】
また、本実施形態では、第1空間105の真空状態、環境が維持された状態であっても、ケーブル類CB1が図8及び図9に示す規定部材64で規定された隙間量の差動排気部を有する引き回し空間HM1に収容されており、この引き回し空間HM1が吸引装置73によって負圧吸引されているため、ケーブル類CB1から生じたアウトガスが露光装置構成機器に付着して露光精度を低下させることをより効果的に抑制できる。そのため、本実施形態では、ケーブル類CB1から生じるアウトガスを考慮して可撓性が低く引き回す際に大きな半径を要する材質のものを用いる必要がなくなり、可撓性が高く柔軟性に富む用力供給部材を用いることにより、装置の小型化を実現することも可能になる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0097】
例えば、上記実施形態では、関節部JT11〜JT13、JT21〜JT23におけるZ方向の位置決めを磁気ガイドにより行う構成としたが、これに限定されるものではなく、例えばZ方向に対向配置された永久磁石52、53、62、63を用いることによりXY平面に沿う方向に相対移動を拘束した場合と同様に、XY平面に沿う方向に永久磁石を対向配置してZ方向の相対移動を拘束することで位置決めする構成としてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、ウエハステージWST、基板ステージ102に本発明を適用した場合について説明したが、レチクルステージRST、マスクステージ101にも適用することができ、更にはレチクルステージRST、マスクステージ101とウエハステージWST、基板ステージ102の両ステージに適用することも可能である。
また、露光装置以外でも本発明を使用することができる。例えば、精度が要求される工作機械のステージ装置などで用力を用いる際にも本発明は有効である。本発明の技術思想及び技術的範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0099】
露光装置10としては、レチクルRとウエハWとを同期移動してレチクルRのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、レチクルRとウエハWとを静止した状態でレチクルRのパターンを一括露光し、ウエハWを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。また、本発明はウエハW上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写するステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0100】
また、上記実施形態の基板としては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0101】
また、本発明の露光装置は、半導体素子の製造に用いられてデバイスパターンを半導体基板上へ転写する露光装置、液晶表示素子の製造に用いられて回路パターンをガラスプレート上へ転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられてデバイスパターンをセラミックウエハ上へ転写する露光装置、及びCCD等の撮像素子の製造に用いられる露光装置等にも適用することができる。
【0102】
また、本発明は、投影光学系と基板との間に局所的に液体を満たし、該液体を介して基板を露光する、所謂液浸露光装置にも適用可能である。液浸露光装置については、国際公開第99/49504号パンフレットに開示されている。さらに、本発明は、特開平6−124873号公報、特開平10−303114号公報、米国特許第5,825,043号などに開示されているような露光対象の基板の表面全体が液体中に浸かっている状態で露光を行う液浸露光装置にも適用可能である。
【0103】
また、上記実施形態では、ステージユニットが複数(2基)設けられる構成を例示したが、これに限定されるものではなく、単数で設けられる構成であってもよい。
また、ステージユニットが複数設けられるのではなく、特開平11−135400号公報や特開2000−164504号公報に開示されているように、基板を保持する基板ステージと基準マークが形成された基準部材や各種の光電センサを搭載して、露光に関する情報を計測する計測ステージとをそれぞれ備えた露光装置にも本発明を適用することができる。
【0104】
露光装置10としては、マスクとしてのレチクルRと、基板としてのウエハWとを同期移動してマスクのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクと基板とを静止した状態でマスクのパターンを一括露光し、基板を順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンと基板とをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像を基板上に転写した後、第2パターンと基板とをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねて基板上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0105】
以上のように、本願実施形態の露光装置10は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0106】
次に、本発明の実施形態による露光装置及び露光方法をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法の実施形態について説明する。図12は、マイクロデバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートを示す図である。
まず、ステップS10(設計ステップ)において、マイクロデバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS11(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レチクル)を製作する。一方、ステップS12(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
次に、ステップS13(ウエハ処理ステップ)において、ステップS10〜ステップS12で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS14(デバイス組立ステップ)において、ステップS13で処理されたウエハを用いてデバイス組立を行う。このステップS14には、ダイシング工程、ボンティング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。最後に、ステップS15(検査ステップ)において、ステップS14で作製されたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にマイクロデバイスが完成し、これが出荷される。
【0107】
図13は、半導体デバイスの場合におけるステップS13の詳細工程の一例を示す図である。
ステップS21(酸化ステップ)おいては、ウエハの表面を酸化させる。ステップS22(CVDステップ)においては、ウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップS23(電極形成ステップ)においては、ウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップS24(イオン打込みステップ)においては、ウエハにイオンを打ち込む。以上のステップS21〜ステップS24のそれぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS25(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップS26(露光ステップ)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置)及び露光方法によってマスクの回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップS27(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップS28(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS29(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【0108】
また、液晶表示素子又は半導体素子等のマイクロデバイスだけではなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置等で使用されるレチクル又はマスクを製造するために、マザーレチクルからガラス基板やシリコンウエハ等ヘパターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。ここで、DUV(深紫外)やVUV(真空紫外)光等を用いる露光装置では、一般的に透過型レチクルが用いられ、レチクル基板としては石英ガラス、フッ素がドープされた石英ガラス、蛍石、フッ化マグネシウム、又は水晶等が用いられる。また、プロキシミティ方式のX線露光装置や電子線露光装置等では、透過型マスク(ステンシルマスク、メンブレンマスク)が用いられ、マスク基板としてはシリコンウエハ等が用いられる。なお、このような露光装置は、WO99/34255号、WO99/50712号、WO99/66370号、特開平11−194479号、特開2000−12453号、特開2000−29202号等に開示されている。
【符号の説明】
【0109】
10…露光装置、 25…第1ステージ(接続部材)、 52、53、62、63…永久磁石(発磁体)、 71、72…収容空間、 AM11〜AM13、AM21〜AM23…アーム部(接続部材)、 BR11〜BR13…ベアリング装置、 EX…露光装置、 HM1…引き回し空間(連通空間)、 JT11〜JT13、JT21〜JT23…関節部、 RB1、RB2…多関節型ロボットアーム(多関節型アーム装置)、 SL1、SL2…スライダー(接続部材)、 WST1、WST2…ステージユニット(移動体)、 WST…ウエハステージ(ステージ装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の接続部材を所定の軸周りに回転自在に接続する関節部を有する多関節型アーム装置であって、
前記関節部は、前記一対の接続部材を非接触で、前記所定の軸周り方向に相対的に回転自在、且つ前記所定の軸と直交する方向への相対移動を拘束するベアリング装置を有する多関節型アーム装置。
【請求項2】
前記ベアリング装置は、前記所定の軸周りにリング状に形成され一対の接続部材のそれぞれに前記所定の軸方向に隙間をあけて対向配置された一対の発磁体と、
前記一対の発磁体の隙間量を電磁力により調整する調整装置とを有する請求項1記載の多関節型アーム装置。
【請求項3】
前記一対の接続部材は、内部に収容空間を形成するカバー部をそれぞれ有し、
前記関節部は、前記一対の接続部材における前記収容空間を連通させる連通空間を有する請求項1または2記載の多関節型アーム装置。
【請求項4】
前記収容空間の内部を負圧吸引する吸引装置を有する請求項3記載の多関節型アーム装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の多関節型アーム装置と、
前記接続部材に接続された移動体とを備えるステージ装置。
【請求項6】
前記移動体を移動面に沿って駆動する平面モータ装置を有する請求項5記載のステージ装置。
【請求項7】
前記移動体にコイル体が設けられる請求項6記載のステージ装置。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか一項に記載のステージ装置を備える露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−108983(P2011−108983A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264795(P2009−264795)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】