説明

太陽光発電システムおよびその起動方法

【課題】太陽光発電システムにおいて、起動判定を精度よく行い、頻繁な起動/待機の繰り返しを抑制すること。
【解決手段】太陽電池モジュールが発電した直流電圧を昇圧または降圧するコンバータの出力をコンデンサに蓄積し、当該蓄積されたコンデンサの出力をインバータにて交流電圧に変換して出力するように構成された太陽光発電システムにおいて、コンバータに入力された入力電圧とコンデンサに蓄積された電圧とに基づき推定された太陽電池モジュールの最大電力推定値を起動判定値と比較し、当該比較結果に基づいてパワーコンディショナの起動の可否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムおよび、太陽光発電システムの起動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムは、複数の太陽電池モジュールによって発電された直流電力をパワーコンディショナによって交流電力に変換するとともに、電力会社から供給される一般の商用電源と連系することで、余剰電力は系統側へ回生し、不足電力は系統側から供給されるようにした発電システムである。
【0003】
このような太陽光発電システムにおいては、その起動方法が問題となることがある。例えば、従来の太陽光発電システムの起動判定方法の一つとして、複数の太陽電池セルを接続して構成される太陽電池モジュールから出力される出力電圧の大きさを所定の電圧値と比較し、この出力電圧が所定の電圧値より大きいときは起動可と判断し、コンバータおよびインバータを動作させるとともに、出力リレーをオンして出力を開始するものがあった(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、上記手法とは異なる起動判定方法として、太陽電池モジュールの出力電圧を測定するとともに、太陽電池モジュールの出力端を短絡するためのリレーを設け、このリレーをオンさせて短絡したときの短絡電流を測定し、測定した出力電圧と短絡電流とから太陽電池モジュールの出力電力を推定して起動可否を判定するものがあった(例えば、特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開平2−156313号公報
【特許文献2】特公昭64−1480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示される起動判定方法には、以下に示す問題点があった。
(1)まず、太陽電池モジュールでは、出力電圧の立ち上がりは日射量とはあまり関係せず早く立ち上がるので、出力電圧が立ち上がった以降は、出力電圧の大きさが日射量には殆ど依存せず、出力電圧の変化が小さいという性質を有している。このため、特許文献1の起動判定方法のように太陽電池モジュールの出力電圧を単純に用いるような手法では、太陽光発電システムを本当に起動してよいか否かの判定を精度よく行うことが困難であった。
(2)また、従来の太陽光発電システムでは、上記のように起動判定を精度よく行うことが困難であるため、出力を開始しても発電電力が不足して待機状態になる頻度が高く、起動と待機を頻繁に繰り返すことになる。このため、待機状態となる度に出力リレーをオフすることが必要となり、リレーの開閉回数が多くなって、リレーの接点寿命が短くなるという問題点があった。
(3)なお、起動/待機の頻繁な繰り返しを回避するため、出力電圧の高い状態がある程度の時間継続したときに起動可とするような判定手法を採ることも考えられる。しかしながら、このような手法では、起動/待機の頻度を下げることはできても、運転効率の低下に繋がるので、好ましい手法とは言えなかった。
【0007】
また、上記特許文献2に示される起動判定方法では、太陽電池モジュールの出力端側に直流電力を開閉するリレーを設ける必要があるのとともに、太陽電池モジュールの入力側に入力電流を測定するための検出器を設ける必要があるので、部品点数が増加して製品のコストが増大し、製品自体のサイズも大きくなるという欠点があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、起動判定を精度よく行い、頻繁な起動/待機の繰り返しを抑制することが可能な太陽光発電システムおよびその起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる太陽光発電システムは、太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールが発電した直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナと、を備えた太陽光発電システムにおいて、前記パワーコンディショナは、前記太陽電池モジュールから出力される直流電圧を昇圧または降圧して出力するコンバータと、前記コンバータから出力された直流電圧を平滑化するコンデンサと、前記コンデンサに蓄積された直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータと、前記コンバータの入力端側の電圧をコンバータ入力電圧として検出する第1の電圧検出器と、前記コンデンサの両端電圧をコンデンサ電圧として検出する第2の電圧検出器と、前記コンバータ入力電圧および前記コンデンサ電圧を用いて推定された前記太陽電池モジュールの最大電力推定値に基づき、少なくとも前記インバータの起動を制御する起動判定部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる太陽光発電システムによれば、コンバータ入力電圧およびコンデンサ電圧を用いて推定された太陽電池モジュールの最大電力推定値に基づき、少なくともインバータの起動を制御するようにしているので、起動判定を精度よく行うことができ、頻繁な起動/待機の繰り返しを抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に添付図面参照して、本発明にかかる太陽光発電システムおよびその起動方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
(太陽光発電システムの構成)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる太陽光発電システムの構成図である。同図において、太陽光発電システム1は、直流電力の供給源である太陽電池モジュール2と、直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ3と、を備えて構成される。また、パワーコンディショナ3において、直流入力端である入力端14(14a,14b)には、太陽電池モジュール2が接続され、交流出力端である出力端16(16a,16b)には、50Hzあるいは60Hzの電力を供給する商用系統12が接続されている。なお、同図の構成では、商用系統12は、単相2線式の配電系統を接続する実施態様を示しているが、単相3線式の配電系統であっても構わない。この場合、商用系統の中性線は商用系統側で対地GNDに接地され、残り2線の電源ラインが、パワーコンディショナ3の出力端16に接続される。
【0013】
(パワーコンディショナの構成)
つぎに、パワーコンディショナ3の構成について説明する。図1において、パワーコンディショナ3は、コンバータ4、コンデンサ5、インバータ6、出力リレー7、第1の電圧検出部8、第2の電圧検出部9、および起動判定部10を備えている。
【0014】
(パワーコンディショナの接続構成および機能)
つぎに、パワーコンディショナ3の接続構成および機能について説明する。コンバータ4は、入力端がパワーコンディショナ3の入力端14に接続され、入力端14を通じて供給される太陽電池モジュール2の直流電圧を昇圧または降圧して出力する。コンデンサ5は、コンバータ4の出力端に接続され、コンバータ4から出力された直流電圧を平滑化する。インバータ6は、コンバータ4の出力端とコンデンサ5の出力端との接続端に接続され、コンデンサ5に蓄積された直流電圧を交流電圧に変換して出力する。出力リレー7は、インバータ6の出力端とパワーコンディショナ3の出力端16との間に挿入され、インバータ6の出力を商用系統12に伝達するか否かの切り換え動作を実行する。第1の電圧検出部8は、コンバータ4の入力端側の電圧を検出する。第2の電圧検出部9は、コンバータ4の出力端側の電圧、すなわちコンデンサ5の両端電圧を検出する。起動判定部10は、少なくとも第1の電圧検出部8および第2の電圧検出部9が検出した検出電圧に基づき、コンバータ4、インバータ6、および出力リレー7の少なくとも一つの構成部を制御する。
【0015】
(パワーコンディショナの動作)
つぎに、実施の形態1にかかるパワーコンディショナ3の動作について、図1および図2の各図面を参照して説明する。なお、図2は、起動判定部10の動作を示すフローチャートである。また、以下の動作は、起動判定部10の制御下で実行される。
【0016】
図2において、パワーコンディショナ3への入力電圧となる太陽電池モジュール2の出力電圧(以下「太陽電池出力電圧」という)が所定値(所定の電圧値)を超えているか否かの監視処理が実行される(ステップS101)。ここで、太陽電池出力電圧が所定値を超えていなければ(ステップS101,No)、ステップS101による監視が継続されるが、太陽電池出力電圧が所定値を超えていれば(ステップS101,Yes)、起動判定に必要な判定用データの値(初期値)が設定されるとともに(ステップS102)、コンバータ4が起動されて動作を開始する(ステップS103)。コンバータ4が起動された後は、コンデンサ5の充電完了に関する判定処理(ステップS104)と、起動用判定データの取得処理(ステップS105)とが、継続して実行される。なお、この段階では、インバータ6は起動されておらず、出力リレーもオンされていない。
【0017】
ここで、コンデンサ5の充電が完了していない場合には(ステップS104,No)、起動用判定データの取得処理(ステップS105)が継続して行われる他、コンバータ4の動作開始からの時間(太陽電池出力電圧が所定値を超えた時間でもよい:以下「監視時間」という)が計測され、この監視時間が所定時間を超えているか否かの判定処理が実行される(ステップS106)。監視時間が所定時間を超えていれば(ステップS106,Yes)、発電不足と判定され(ステップS107)、インバータ6は起動されず、出力リレー7もオフのままとなる。一方、監視時間が所定時間を超えていなければ(ステップS106,No)、ステップS104〜S106の処理が継続して実行される。
【0018】
他方、ステップS104〜S106の処理が継続して実行されているとき、コンデンサ5の充電が完了していると判定された場合には(ステップS104,Yes)、継続的に取得している起動判定用データに基づいてコンデンサ5の充電に要した電力を算出するとともに、算出した電力から太陽電池モジュール2の最大電力点の推定値(以下「最大電力推定値」という)を算出し(ステップS108)、最大電力推定値と所定値(所定の電力値)を超えているか否かの判定処理が実行される(ステップS109)。最大電力推定値が所定値を超えていなければ(ステップS109、No)、発電不足と判断し(ステップS110)、インバータ6を起動せず、出力リレー7もオンとしない。逆に、最大電力推定値が所定値を超えていれば(ステップS109、Yes)、起動OKと判断し(ステップS111)、インバータ6を起動し、出力リレー7をオンに制御して、商用系統12側にパワーコンディショナ3の電力を供給する。
【0019】
なお、上記のフローにおいて、発電不足と判定された場合には(ステップS107,S110)、所定時間待機した後に、上記フローが再度実行される。
【0020】
(実施の形態1の起動判定処理に関する補足説明)
図3は、太陽電池モジュールのV−P特性を示す図である。より詳細には、太陽電池出力電圧(Vs)と、太陽電池モジュールから取り出せる電力(Ps)との関係を示す図である。図3に示すように、太陽電池モジュールには、出力電力が最大となる点(同図の“白丸”で示す点:以下「最大電力点」という)が存在する。
【0021】
図3において、K1〜K4で示す波形は、例えば日射量によって変化する太陽電池モジュールのV−P特性を示しており、波形K1は日射量が最も大きいときのV−P特性を示し、波形K4は日射量が最も小さいときのV−P特性を示している。ここで、これらの波形の最大電圧点(Vs1〜Vs4)に着目すると、日射量の大小にあまり影響されず、その変動幅が小さいことが分かる。なお、これらの最大電圧点は、太陽電池モジュールに負荷が接続されていないときの電圧値に他ならない。つまり、太陽電池モジュールの出力電圧を用いた起動判定方法では、これらの最大電圧点を精度よく測定することが求められる。しかしながら、太陽電池モジュールのV−P特性は、日射量だけでなく気温や湿度などの環境条件によっても変化するため、判定閾値を設定する際のマージンが少なく、判定閾値の設定にはかなりのフィールドデータが必要となる。したがって、太陽電池モジュールの出力電圧値のみを用いる判定方法では、太陽光発電システムを起動してよいか否かの判定を精度よく行うことは困難となる。なお、このことは、背景技術の項でも説明したとおりである。
【0022】
一方、本実施の形態にかかる起動判定方法では、図2のフローに示したように、最大電力推定値を算出する処理を行っている(ステップS108)。この処理は、図3の“白丸”で示す最大電力点を推定していることと同義であり、起動判定の判定精度を高めることが可能となる。例えば、同図の破線で示すラインに起動判定の閾値である起動判定値を設けるようにすれば、波形K1〜K3で示されるV−P特性では起動可と判定することができ、波形K4で示されるV−P特性では起動不可と判定することができるので、真に必要なときのみ起動可と判定することができ、頻繁な起動/待機の繰り返しを抑制することが可能となる。
【0023】
以上説明したように、実施の形態1にかかる太陽光発電システムおよびその起動方法では、第1の電圧検出器によって検出されたコンバータ入力電圧および第2の電圧検出器によって検出されたコンデンサ電圧を用いて太陽電池モジュールの最大電力推定値を推定し、当該推定された最大電力推定値に基づいて、コンバータおよびインバータの起動を制御するようにしているので、コンバータ、インバータ、および出力リレーを含むパワーコンディショナの起動判定を精度よく行うことができ、頻繁な起動/待機の繰り返しを抑制することが可能となる。
【0024】
なお、本実施の形態で示した太陽光発電システムのように、インバータを停止して待機する毎に出力リレーを開放する構成のパワーコンディショナの場合には、頻繁な起動/待機の繰り返しが抑制されるので、リレー接点の寿命を長くすることが可能となる。
【0025】
また、本実施の形態では、太陽電池モジュールの最大電力推定値を直接的に推定するようにしているので、起動判定の閾値を好適な値に設定することが可能となる。
【0026】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2にかかる起動判定部10の動作を示すフローチャートである。なお、起動判定部10を含む太陽光発電システムの構成については、図1に示した実施の形態1の構成と同一または同等であり、構成、機能および動作に関する重複した説明は省略する。
【0027】
つぎに、図4のフローチャートと、図2のフローチャートフローとの間の対応関係について説明する。図4のステップS201、ステップS204、ステップS211、およびステップS216による各判定処理は、それぞれ図2のステップS101、ステップS104、ステップS106、およびステップS109の各判定処理に対応する。また、図4のステップS206〜S210までの処理は、図2のステップS105の起動判定用データ取得処理に対応し、図4のステップS213〜S215までの処理は、図2のステップS108の最大電力推定値算出処理に対応する。すなわち、図4のフローチャートは、図2のフローチャートによる処理の概念を、より具現化して示したものである。
【0028】
(パワーコンディショナの動作)
つぎに、実施の形態2にかかるパワーコンディショナ3の動作について、図4を参照して説明する。なお、図4のフローチャートにおける記号の意味は、以下のとおりである。
【0029】
Vs:今回計測時の太陽電池出力電圧
Vii:今回計測時のコンバータ出力電圧
Tvii:今回計測時の充電時間(タイマ値)
Vs1:コンバータ動作開始直前の太陽電池出力電圧
Vsb:前回計測時の太陽電池出力電圧(タイマカウント以前:コンバータ動作開始直前の太陽電池出力電圧)
Vii1:コンバータ動作開始直前のコンバータ出力電圧
Vii(n):n回目の計測時のコンバータ出力電圧
Pc(n):n回目の計算時の充電電力(コンバータ4に対する入力電力換算値)
dPc(n):n回目の計算時の充電電力差分
P:太陽電池電力
f(dP):太陽電池電力算出用近似曲線関数
Pmax:最大電力推定値
【0030】
図4において、Vsが所定値を超えているか否かの監視処理が実行され(ステップS201)、所定値を超えていなければ(ステップS201、No)、監視処理が継続され、所定値を超えていれば(ステップS201、Yes)、VsおよびViiの値をそれぞれVsb、Vii1として保存するとともに、Tviiをクリアする(ステップ202)。すなわち、ステップS202の処理では、計測した太陽電池出力電圧がコンバータ動作開始直前の太陽電池出力電圧としてVsbに保存され、計測したコンバータ出力電圧がコンバータ動作開始直前のコンバータ出力電圧としてVii1に保存されるとともに、タイマ値Tviiが初期値に設定される。次いで、コンバータ4が起動されてコンバータ動作が開始され(ステップS203)、コンデンサ5の充電完了に関する判定処理(ステップS204)が実行される(ステップS204)。コンデンサ5の充電が完了していない場合(ステップS204,No)、タイマ値がカウントされ(ステップS205)、さらに(Vsb−Vs)の値が所定値を超えたか否かが判定される(ステップS206)。
【0031】
ここで、(Vsb−Vs)の値が所定値を超えていれば(ステップS206,Yes)、ステップS207〜S209の処理フロー基づき、n(nは自然数)回目の充電電力Pc(n)として、(n−1)回目の計測時(前回の計測時)からn回目の計測時(今回の計測時)までの間に、コンデンサ5に充電された電圧の変化をコンバータ4に対する入力電力に換算した値として算出する。詳細には、計測したコンバータ出力電圧Viiをn回目の計測時のコンバータ出力電圧Vii(n)として保存するとともに(ステップS207)、タイマ値Tviiをn回目の計測時のタイマ値Tvii(n)として保存し(ステップS208)、n回目の計算時の充電電力Pc(n)を、次式に基づいて算出する(ステップS209)。
【0032】
Pc(n)=(1/2)*C*(Vii(n)^2-Vii(n-1)^2)/(Tvii(n)-Tvii(n-1)) …(1)
【0033】
ステップS209の処理に続いて、計測した(今回の)太陽電池出力電圧Vsが前回の太陽電池出力電圧Vsbとして保存され(ステップS210)、所定時間経過していなければ(ステップS211,No)、ステップS204の処理に戻り、所定時間経過していれば(ステップS211,Yes)、発電不足として、コンバータの動作を停止する(ステップS212)。また、上記ステップS206の処理で、(Vsb−Vs)の値が所定値を超えていなければ(ステップS206,No)、上述したステップS211の処理に移行する。なお、ステップS206の判定処理の意味については後述する。
【0034】
ステップS204の処理に戻り、コンデンサ5の充電が完了している場合には(ステップS204,Yes)、ステップS213〜S215の処理フロー基づき、最大電力推定値Pmaxを推定する。詳細には、近似曲線式である太陽電池電力算出用近似曲線関数f(dP)を取得し(ステップS214)、最大電力推定値Pmaxを推定する(ステップS215)。ステップS215の処理に続いて、最大電力推定値Pmaxと所定値とが比較され(ステップS216)、所定値を超えていれば(ステップS216、Yes)、起動OKと判定され(ステップS218)、商用系統12側にパワーコンディショナ3の電力が供給される。一方、最大電力推定値Pmaxが所定値を超えていなければ(ステップS216、No)、発電不足と判定され(ステップS217)、インバータ6は起動されず、また、万が一起動されていれば起動が停止される。
【0035】
なお、上記のフローにおいて、発電不足と判定された場合には(ステップS212,S216)、所定時間待機した後に、上記フローが再度実行される。
【0036】
(実施の形態2の起動判定処理に関する補足説明)
図5は、コンバータ動作時のV−P特性曲線上の動作点推移を示す図であり、図6は、コンバータ動作時のコンバータ出力電圧(Vii(n))、コンデンサ充電に使用された電力(充電電力Pc(n)に対応)、およびコンデンサ充電に使用された電力変化量(充電電力差分dPc(n)に対応)を示す図である。
【0037】
まず、コンバータ4が起動されると、コンデンサ5の充電が開始される。コンバータ4およびコンデンサ5は、太陽電池モジュール2の負荷となり、また、コンバータ4は、太陽電池モジュール2の出力電力が最大となるように入力電力の目標値を変化させて動作するので、太陽電池モジュール2の動作点は、図5に示すようにV−P特性曲線上で番号が増加する方向(Vsが減少する方向)に向かって移動する。したがって、(Vbs−Vs)の値は必ず正の値をとる。なお、この(Vbs−Vs)の値を所定値と比較する判定処理(ステップS206)を設けることにより、(Vbs−Vs)の値が所定値を超える毎に起動判定用データを取得し、コンデンサ5の充電に使用された電力を算出するようにしている。
【0038】
また、図5に示す例では、T(s)=6の段階で、V−P特性曲線上の最大電力点にほぼ到達したものと判定しているが、その到達点では、コンデンサ5に対する充電がほぼ完了した時点でもある。そのときのVii(n)は、例えば図6(a)に一例として示しているように、充電開始から充電完了までの間、ほぼ直線的に上昇するように変化している。充電電力Pc(n)は、例えば図6(b)に一例として示しているように、変化量が徐々に小さくなるような形で上昇するカーブを描くことになる。一方、充電電力Pc(n)の変化量の推移、すなわち充電電力差分dPc(n)は、図6(c)に示されるような変化となる。そして充電電力差分dPc(n)に対する充電電力Pc(n)は図6(d)に示されるようにおおよそ二次関数で近似できるような変化となるので、図6(d)の破線に示されるように太陽電池電力算出用近似曲線関数f(dP)が得られる。このようにして求められたf(dP)において、dP=0のときの充電電力が最大電力推定値Pmaxとして得られる。また、この最大電力推定値Pmaxを所定値と比較することにより、起動の可否を精度よく判定することが可能となる。
【0039】
なお、図5および図6に示す例では、T(s)=6の時点で太陽電池モジュール2の出力は最大電力点に到達しているが、最大電力点に到達するより前にコンデンサ5の充電が完了しても、充電完了となる過程での値からf(dp)を求め、dp=0となるときの電力から最大電力点を推定できることは言うまでも無い。
【0040】
以上説明したように、実施の形態2にかかる太陽光発電システムおよびその起動方法では、パワーコンディショナの起動判定に必要な最大電力推定値を、太陽電池モジュールを起動してからコンデンサの充電が完了するまでの充電期間にコンデンサの充電に要した電力をコンバータの入力電力に換算した電力値に基づいて直接的に推定するようにしているので、起動判定の閾値を余分なマージンをもたせることのない好適な値に設定することが可能となり、実施の形態1の効果に加え、より少ない日射量から安定して起動することができるという効果も得られる。
【0041】
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3にかかる起動判定部10の動作を示すフローチャートである。なお、起動判定部10を含む太陽光発電システムの構成については、図1に示した実施の形態1の構成と同一または同等であり、構成、機能および動作に関する重複した説明は省略する。
【0042】
つぎに、図7のフローチャートと、図2のフローチャートフローとの間の対応関係について説明する。図7のステップS301、ステップS304、ステップS306、およびステップS314による各判定処理は、それぞれ図2のステップS101、ステップS104、ステップS106、およびステップS109の各判定処理に対応する。また、図7のステップS305の処理は、図2のステップS105の起動判定用データ取得処理に対応し、図7のステップS308〜S313までの処理は、図2のステップS108の最大電力推定値算出処理に対応する。すなわち、図7のフローチャートは、図2のフローチャートによる処理の概念を、より具現化して示したものである。
【0043】
(パワーコンディショナの動作)
つぎに、実施の形態3にかかるパワーコンディショナ3の動作について、図7を参照して説明する。なお、図7のフローチャートにおける記号の意味は、以下のとおりである。
【0044】
Vs:太陽電池出力電圧
Vii:コンバータ出力電圧
Tvii:充電時間(タイマ値)
Vssum:Vsの積算値
Pc:充電に要した電力
Vsavg:Vsの充電期間平均値
Rate:VsavgのVs1に対する比率(電圧比)
Gain:最大電力点比率
Pmax:最大電力推定値
【0045】
図7において、Vsが所定値を超えているか否かの監視処理が実行され(ステップS301)、所定値を超えていなければ(ステップS301、No)、監視処理が継続され、所定値を超えていれば(ステップS301、Yes)、VsおよびViiの値をそれぞれVs1、Vii1として保存するとともに、TviiおよびVssumの値がそれぞれクリアされる(ステップ302)。次いで、コンバータ4が起動されてコンバータ動作が開始され(ステップS303)、コンデンサ5の充電完了に関する判定処理(ステップS204)が実行される(ステップS304)。コンデンサ5の充電が完了していない場合(ステップS304,No)、タイマ値がカウントされ、Vsの値も積算される(ステップS205)。さらに、コンバータ4の動作開始からの時間(監視時間)が所定時間を超えているか否かの判定処理が実行され(ステップS306)、監視時間が所定時間を超えていれば(ステップS306,Yes)、発電不足と判定され(ステップS307)、監視時間が所定時間を超えていなければ(ステップS306,No)、ステップS304〜S306の処理が継続して実行される。
【0046】
一方、ステップS304〜S306の処理が継続して実行されているとき、コンデンサ5の充電が完了していると判定された場合には(ステップS304,Yes)、コンバータ出力電圧ViiをVii2として保存するとともに、そのときのタイマ値をTviiとして保存する(ステップS308)。
【0047】
つぎに、ステップS309〜S313の処理によって、充電に要した電力(Pc)、Vsの充電期間平均値(Vsavg)、VsavgのVs1に対する比率(Rate)、最大電力点比率(Gain)、および最大電力推定値(Pmax)が算出される。より詳細には、図7のフローにも示すように、次式に基づいてPc(ステップS309)、Vsavg(ステップS310)、Rate(ステップS311)、Gain(ステップS312)、およびPmax(ステップS311)が算出される。
【0048】
Pc=(1/2)*C*(Vii2^2-Vii1^2)/Tvii …(2)
Vsavg=Vssum/積算回数 …(3)
Rate=Vsavg/Vs1 …(4)
Gain=f(Rate) …(5)
Pmax=Gain*Pc …(6)
【0049】
ステップS313の処理によって、最大電力推定値Pmaxが算出されると、算出された最大電力推定値Pmaxと所定値とが比較され(ステップS314)、所定値を超えていれば(ステップS314、Yes)、起動OKと判定され(ステップS316)、商用系統12側にパワーコンディショナ3の電力が供給される。一方、最大電力推定値Pmaxが所定値を超えていなければ(ステップS316、No)、発電不足と判定され(ステップS315)、インバータ6は起動されず、また、万が一起動されていれば起動が停止される。
【0050】
なお、上記のフローにおいて、発電不足と判定された場合には(ステップS307,S315)、所定時間待機した後に、上記フローが再度実行される。
【0051】
(実施の形態3の起動判定処理に関する補足説明)
図8は、コンバータ動作時の太陽電池出力電圧Vs(コンバータ4に対する入力電圧に等しい)およびコンバータ出力電圧Viiの時間的変化の一例を示す図である。Viiは、図8(b)に示されるように、充電開始から充電完了までの間、ほぼ直線的に上昇するように変化しているのに対し、太陽電池出力電圧Vsは、図8(a)に示されるように、充電の開始点(Vs1)から充電の完了点(Vs2)に向かって減少率が徐々に小さくなるようにして減少している。このため、Tviiの間を幾つかの区間に分けて精算し、積算した値と積算回数に基づく上述した(3)式を用いてVsの平均値を算出するようにしている。なお、平均値を求める手法としては、この手法に限定されるものではなく、他の手法を用いてもよい。例えば、図8(a)に示される波形を指数関数として仮定すれば、Vs1とVs2の値のみを用いて、平均値Vsavgを算出することが可能である。
【0052】
図9は、実施の形態3にかかる起動判定手法の要部を説明するための図である。詳細には、図9(a)は、図3にも示したように、太陽電池モジュールの典型的なV−P特性を示す図であり、図9(b)は、太陽電池モジュールの開放電圧に対する各動作電圧の比率と、各動作点における電力から最大電力点電圧を算出するための係数を示す図である。図9(b)において、r0は最大電力点におけるRateであり、r1は最大電力点から離れた電力点でのRateである(r1>r0の関係が成り立つ)。
【0053】
図7のステップS311,S312の処理では、VsavgおよびVs1に基づいてRateを算出し、算出したRateに基づいてGainを算出するようにしているが、この処理で算出されたRateが、例えばr1であった場合には、図9(b)に示すように、このr1対応する係数G1がGainとして選択され、このG1の値を用いて最大電力推定値Pmaxが推定される。
【0054】
したがって、コンデンサ5の充電が完了するまでの充電期間に、太陽電池モジュールの出力が最大電力点に到達しなくても、最大電力を推定することができる。
【0055】
なお、図9(b)に示されるようなRtaeに対応するGainのカーブは、太陽電池モジュールの特性に合わせて任意に設定することができる。なお、このとき設定されるGainは、テーブル値として準備してもよいし、線形近似式、あるいは二次曲線近似式などを用いても構わない。
【0056】
以上説明したように、実施の形態3にかかる太陽光発電システムおよびその起動方法では、パワーコンディショナの起動判定に必要な最大電力推定値を、太陽電池モジュールを起動してからコンデンサの充電が完了するまでの充電期間におけるコンデンサの充電に要した充電電力、および充電期間におけるコンバータ入力電圧の平均値をコンバータが動作を開始する直前の前記コンバータ入力電圧で除した電圧比に基づいて直接的に推定するようにしているので、起動判定の閾値を余分なマージンをもたせることのない好適な値に設定することが可能となり、実施の形態1の効果に加え、より少ない日射量から安定して起動することができるという効果も得られる。
【0057】
また、実施の形態3にかかる最大電力推定値の推定手法は、実施の形態2と比較して計算処理がより簡素化されるので、起動判定部の処理負担を軽減することができるという効果も得られる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明にかかる太陽光発電システムおよびその起動方法は、高精度な起動判定を行うことができる発明として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる太陽光発電システムの構成図である。
【図2】起動判定部の動作を示すフローチャートである。
【図3】太陽電池モジュールのV−P特性を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2にかかる起動判定部の動作を示すフローチャートである。
【図5】コンバータ動作時のV−P特性曲線上の動作点推移を示す図である。
【図6】コンバータ動作時のVii(n)、充電電力Pc(n)および充電電力差分dPcを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3にかかる起動判定部の動作を示すフローチャートである。
【図8】コンバータ動作時のVsおよびViiの時間的変化の一例を示す図である。
【図9】実施の形態3にかかる起動判定手法の要部を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
1 太陽光発電システム
2 太陽電池モジュール
3 パワーコンディショナ
4 コンバータ
5 コンデンサ
6 インバータ
7 出力リレー
8 第1の電圧検出部
9 第2の電圧検出部
10 起動判定部
12 商用系統
14 入力端
16 出力端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールと、前記太陽電池モジュールが発電した直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナと、を備えた太陽光発電システムにおいて、
前記パワーコンディショナは、
前記太陽電池モジュールから出力される直流電圧を昇圧または降圧して出力するコンバータと、
前記コンバータから出力された直流電圧を平滑化するコンデンサと、
前記コンデンサに蓄積された直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータと、
前記コンバータの入力端側の電圧をコンバータ入力電圧として検出する第1の電圧検出器と、
前記コンデンサの両端電圧をコンデンサ電圧として検出する第2の電圧検出器と、
前記コンバータ入力電圧および前記コンデンサ電圧を用いて推定された前記太陽電池モジュールの最大電力推定値に基づき、少なくとも前記インバータの起動を制御する起動判定部と、
を備えたことを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
前記最大電力推定値は、前記コンバータを起動してから前記コンデンサの充電が完了するまでの充電期間に前記コンデンサの充電に要した電力を前記コンバータの入力電力に換算した電力値に基づいて推定されることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
前記最大電力推定値は、
前記コンバータを起動してから前記コンデンサの充電が完了するまでの充電期間に前記コンデンサの充電に要した充電電力を前記コンバータの入力電力に換算した電力値と、
前記充電期間における前記コンバータ入力電圧の平均値と前記コンバータが動作を開始する直前の前記コンバータ入力電圧との比率で表される電圧比と、
に基づいて推定されることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
前記パワーコンディショナには、前記インバータの出力を外部に出力するか否かを切り替えるスイッチが設けられ、
前記起動判定部は、前記インバータの起動に合わせて前記スイッチを制御することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
太陽電池モジュールが発電した直流電圧を昇圧または降圧するコンバータの出力をコンデンサに蓄積し、当該蓄積されたコンデンサの出力をインバータにて交流電圧に変換して出力するように構成された太陽光発電システムの起動方法において、
前記コンバータに入力された入力電圧と、前記コンデンサに蓄積された電圧とに基づき、前記太陽電池モジュールの最大電力推定値を推定する第1ステップと、
前記最大電力推定値の大きさに基づき、システムの起動の可否を判定する第2ステップと、
を含むことを特徴とする太陽光発電システムの起動方法。
【請求項6】
前記第1ステップには、
前記コンバータの起動から前記コンデンサの充電完了までの期間における前記コンバータの出力電圧の変化に基づき、前記コンデンサの充電に要した充電電力を算出するステップと、
前記充電電力の変化率から前記最大電力推定値を表す近似曲線を算出するステップと、
前記近似曲線を用いて前記最大電力推定値を推定するステップと、
が含まれることを特徴とする請求項5に記載の太陽光発電システムの起動方法。
【請求項7】
前記第1ステップには、
前記コンバータの起動から前記コンデンサの充電完了までの期間における前記コンバータの出力電圧の変化に基づき、前記コンデンサの充電に要した充電電力を算出するステップと、
前記充電期間に前記コンバータに入力された入力電圧の平均値を算出するステップと、
前記平均値と前記コンバータが動作を開始する直前の入力電圧との比率で表される電圧比を算出するステップと、
前記電力率、前記平均値および前記電圧比に基づいて前記最大電力推定値を推定するステップと、
が含まれることを特徴とする請求項5に記載の太陽光発電システムの起動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−247184(P2009−247184A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93626(P2008−93626)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】