説明

小型ディスプレイ上で大きな静止画像を視覚化する方法

本発明は、大きな静止画像を該大きな静止画像より小さい寸法を有するディスプレイ上で視覚化するよう処理する方法に係る。該方法は、大きな静止画像を、ディスプレイの寸法に対して実質的に同等である寸法を有する断面の一式に分割する段階、所定の走査オーダに従って大きな静止画像の断片を順位付けする段階、ビデオシーケンスを得るよう所定の走査オーダに従って予測ブロックベース圧縮を使用して断片の一式を暗号化する段階、及び、ディスプレイ上でビデオシーケンスを復号化し、表示する段階、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大きな静止画像を該大きな静止画像より小さい寸法を有するディスプレイ上で視覚化するよう処理する方法に係る。
【0002】
これは、減少された寸法を有するディスプレイを有する、携帯電話又は個人用携帯端末PDA等の携帯機器において使用され得る。
【背景技術】
【0003】
欧州特許第1162810号明細書(特許文献1)は、変換方法を開示する。該方法においては、動画像データ分布処理(distribution processing)は、静止画像を複数の断片へと分割し、複数の静止画像を作るよう各断片を拡張し、及び、拡張された静止画像から連続静止画像表示フォーマットにおけるデータを作るよう、使用される。静止画像を分割して作られた断片の連続表示によって、ユーザは、画像を縮小する必要なく小型画面上で全体画像を見ることができる。
【0004】
しかしながら、かかる処理は、サーバ側で行われる。該サーバは、前出の携帯電話のユーザのリクエストに従って携帯電話に静止画像の断片のシーケンスを送り、該リクエストは、カーソルを使用してインタラクティブになされる。言い換えると、ユーザは、ビデオシーケンス自体を受けず、そのリクエストに応じて静止画像の個別の断片を受ける。結果として、大きな静止画像は、携帯機器のディスプレイ上では非常に便利には見られ得ない。
【特許文献1】欧州特許第1162810号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ユーザにとってより便利である大きな静止画像の視覚化の方法を提案する、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達するよう、本発明に従った方法は、
・ 大きな静止画像を、ディスプレイの寸法に対して実質的に同等である寸法を有する断面の一式に分割する段階、
・ 所定の走査オーダに従って大きな静止画像の断片を順位付けする段階、及び、
・ ビデオシーケンスを得るよう所定の走査オーダに従って予測ブロックベース圧縮(predictive block−based compression)を使用して断片の一式を暗号化する段階、
を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に従った方法によって、大きな静止画像は、大きな静止画像から派生されたより小さな画像のシーケンスへと変換され得る。前出のより小さな画像は、大きな静止画像の断片に対応する。かかる変換方法により、ユーザは、所定の走査パターンに従って自動的に生成されたビデオシーケンスの形状において大きな静止画像を見ることができる。したがって、かかる変換方法は、大きな静止画像の視覚化を、先行技術の1つより更により便利に且つ更により魅力的にする。
【0008】
本発明の一実施例によれば、大きな静止画像の断片は互いに重畳し、分割及び順位付けの段階は、大きな静止画像の少なくとも一部分をカバーするよう適合された移動ショット(traveling shot)に基づく。かかる場合において、もたらされるビデオシーケンスは、暗号化される際、大きな静止画像の各断片間の本質的な高レベルの線形相関により、高い圧縮率をもたらす。更には、暗号化されたビデオシーケンスは、所望される画質に依存して暗号化された大きな静止画像より小さくあり得る。
【0009】
本発明の他の実施例によれば、本発明に従った変換方法は、大きな静止画像内で輪郭を検出する段階を更に有する。かかる場合においては、分割及び順位付け段階は、輪郭を検出する段階によって検出された輪郭の連続走査に基づく。
【0010】
更に本発明の他の実施例によれば、本発明に従った変換方法は、大きな静止画像の一部分をズームする段階を更に有する。
【0011】
本発明はまた、本発明に従った変換方法を実施する装置に係る。
【0012】
最後に本発明は、前出の変換方法を実施するプログラム命令を有するコンピュータプログラムプロダクトに係る。
【0013】
本発明のこれらの及び他の面は、以下に説明される実施例を参照して明らかに説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、これより、添付の図面を例として参照してより詳細に説明される。
【0015】
本発明は、大きな静止画像をビデオシーケンスに自動的に変換する方法及び装置に係る。
【0016】
前出の変換方法によって、ユーザは、大きな静止画像を断片で見ることができる。これは、例えば、小型画面上で高解像度の大きな画像を見るよう使用される。
【0017】
ビデオシーケンスは、以下の変換方法に従って得られる。以下の説明を実証するよう1024×768ピクセルを有する大きな静止画像を有し、該画像を128×128ピクセルの寸法を有する画面上に表示すると仮定する。大きな静止画像は、例えば、リモートサーバのメモリにおいて、又は該画面を有する携帯機器のメモリにおいて、格納される。前出の大きな静止画像は、JPEGフォーマット等の暗号化されたフォーマット、あるいは、暗号化されていない又は復号化されたフォーマットのいずれかに従って格納される。
【0018】
大きな静止画像がコード化されたフォーマットに従って格納される場合、本発明に従った変換方法は、復号化された大きな静止画像を得るよう、暗号化された大きな静止画像をその暗号化フォーマットに応じて復号化する段階を有する。
【0019】
次の段階では、変換方法は、復号化された大きな静止画像を同等の寸法の断片の一式へと分割する段階を有する。該断片は、画面の寸法、即ち本例では128×128と実質的に同等である寸法を有する。当業者にとっては、大きな静止画像の断片が画面と同一の寸法を有する必要はないが、前出の画面上に容易に表示され得るよう、即ち、更なるフォーマット変換工程なく、あるいは単純な変換工程を有して、前出の画面寸法に近い寸法を有するべきである、ことは明らかである。
【0020】
続いて、次の段階においては、変換方法は、所定の走査オーダに従って大きな静止画像の断片を順位付ける段階を有する。
【0021】
図1に図示される本発明の第1の実施例によれば、大きな静止画像(20)の断片(21)は連続的であり、図は48個の断片へと分割された大きな静止画像を有することを示す。この場合、大きな静止画像は、矢印(22)によって示される通り、左から右へ、続いて上から下へ、それらを右から左へ等に走査される。この実施例は、特に実施が容易なものである。
【0022】
図2中に図示された本発明の他の実施例によれば、大きな静止画像(20)の断片(23)は、互いに重畳し、図は、48個より多くに分割された大きな静止画像を示す。例えば、図2中に示される通り、大きな静止画像の断片に対応するグリッドが断片の幅の半分(即ち本例では64ピクセル)から水平方向(24)に、及び断片の高さ(即ち本例では128ピクセル)から垂直方向(25)にシフトされる場合、96個の断片が得られる。大きな静止画像は続いて、矢印24,25によって示される通り、左から右へ、その後上から下へ、それらを右から左へ等走査される。かかる実施例を有して、大きな静止画像は、移動ショットと同様に多少前進的(progressive)にカバーされ得る。シフトの値が得られるべき移動効果及び達成されるべきビデオシーケンスのメモリ寸法に依存して水平方向及び垂直方向のいずれにおいても調整され得ることは、当業者にとって明らかである。
【0023】
更に図3中に示される本発明の他の実施例によれば、本発明に従った変換方法は、図3中に示される通りサッカー選手等である少なくとも1つの対象の輪郭を検出する段階を有する。輪郭を検出する前出の段階は、例えば、グラディエントフィルタの使用又は当業者に対して既知である他の原理の使用に基づく。続いて分割段階は、断片の一式を有する少なくとも1つの対象をカバーし、前出の断片は、図3中に示される通り、重ね合わせられるか、連続している。続いて、順位付け段階は、特定の走査オーダ(1−15)を定義付け、例えば、矢印で示される通り、対象の中心に達するまで左から右及び上から下の輪郭を追う。最終段階では、ズームアウトが実行され、見る者は、より低い解像度でダウンサンプルされた(down−sampled)全体的な大きな静止画像を見るようにされる。該ダウンサンプルされた画像は、ビデオシーケンスの最終画像(16)を形成する。かかる実施例により、大きな静止画像の最も興味のある又は魅力のある範囲のみは、ビデオシーケンスの形状においてユーザに対して与えられる。
【0024】
大きな静止画像の断片が互いに重畳する場合、該断片は、前述された通り、所定の水平方向及び垂直方向のシフトに従ってシフトされる。シフトの値が必ずしも一定ではなく、大きな静止画像の内容に依存して可変であり得ることは、当業者にとっては明らかである。例えば、シフトは、画像の断片がサッカー選手の顔又はボールをカバーする際、非常に小さくなり得、この場合では移動ショットが遅くなる。反対に、断片がサッカー選手の体の他の部分をカバーする際は、シフトはより大きい。
【0025】
走査パターンが上述された例に対して制限されないことは、当業者に対して明らかである。例えば、大きな静止画像は、断片の一式によって全体的にカバーされる必要はなく、また、該大きな静止画像のカバー範囲は、大きな静止画像の最低限の部分に対してのみに制限されるわけではない。他の例として、大きな静止画像の複数の断片は、異なる空間分解能を有し得る。例えばそれは、完全なビデオシーケンス又はその一部分が大きな静止画像の前進的なズームイン又はズームアウトに対応する場合である。
【0026】
走査パターンが定義付けられると、本発明に従った変換方法は、ビデオシーケンスを得るよう前出の走査オーダに従って予測ブロックベース圧縮技術を使用して大きな静止画像の断片の一式を暗号化する段階を有する。該暗号化段階は、例えば、MPEG−2又は4標準、又はH.263又はH.264標準に基づく。
【0027】
復号化、分割、順位付け、(場合によっては輪郭検出)及び暗号化の段階は、もたらされるビデオシーケンスが該ビデオシーケンスを再生するよう適合された携帯機器に対して送られるリモートサーバによって、あるいは、前出の機器が十分なメモリ及び計算リソースを有する場合は直接携帯機器によってのいずれかで実行され得る。
【0028】
例えば、異なる段階がリモートサーバによって実行される場合、コンテンツのディストリビュータ(例えばオンラインマガジン)は、オリジナルの画像の他の又は追加的な特徴として、ビデオシーケンスの形状でそのウェブサイト上で高解像度の写真を利用可能にし得る。他の例としては、異なる段階が携帯機器によって実行される場合、ユーザは、大きな静止画像をビデオシーケンスへと変換し得、それを例えばMMS(マルチメディア・メッセージ・サービス)を使用して他のユーザに対して送り得る。
【0029】
したがって、本発明は、自動的な方法から成り立ち、該方法によってユーザは、大きな静止画像を選択し、上述された走査パターンのうちの1つ等の所定の走査パターンを選択し、ビデオシーケンスを生成することができる。
【0030】
前出のビデオシーケンスを再生するよう、携帯機器は、ビデオシーケンスをその暗号化フォーマットに応じて復号化する手段、及び、復号化されたビデオシーケンスをレンダリング及び表示する手段を有する。ユーザに対する結果は、非常に魅力的なビデオシーケンスであり、該シーケンスによって、大きな静止画像を携帯機器のディスプレイ上で非常に便利にみることができる。
【0031】
本発明に従った変換方法は、ハードウェア又はソフトウェア、あるいはその両方のアイテムの手段によって実行され得る。前出のハードウェア又はソフトウェアアイテムは、例えば有線の電子回路、あるいはプロセッサ等の適切にプログラムされた集積回路を用いることによる複数の手法において、夫々実行され得る。該集積回路は、ポータブルな機器において有され得る。集積回路は、一式の命令を有する。故に、たとえばポータブル機器のメモリにおいて有される該一式の命令は、集積回路に変換方法の異なる段階を実行させ得る。該一式の命令は、ディスク等のデータ担体を読み込むことによってメモリへとロードされ得る。サービスのプロバイダはまた、一式の命令をインターネット等の通信ネットワークを介して使用可能であるようにし得る。
【0032】
添付の請求項における全ての参照符号は、請求項を制限するものとして解釈されるべきではない。「有する」という動詞及びその活用の使用が請求項において定義付けられた段階又は要素の他の段階又は要素の存在を除外するものではないことは、明らかである。要素又は段階の単数形での記載は、かかる要素又は段階の複数の存在を除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に従った分割及び走査段階の実施の第1の実施例を図示する。
【図2】本発明に従った分割及び走査段階の実施の他の実施例を図示する。
【図3】本発明に従った分割及び捜査段階の実施の更に他の実施例を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大きな静止画像を前記大きな静止画像より小さい寸法を有するディスプレイ上で視覚化するよう処理する方法であって:
・ 前記大きな静止画像を、前記ディスプレイの寸法に対して実質的に同等である寸法を有する断面の一式に分割する段階と、
・ 所定の走査オーダに従って前記大きな静止画像の前記断片を順位付けする段階と、
・ ビデオシーケンスを得るよう前記所定の走査オーダに従って予測ブロックベース圧縮を使用して前記断片の一式を暗号化する段階と、
・ 前記ディスプレイ上で前記ビデオシーケンスを復号化し、表示する段階と、
を有する、
方法。
【請求項2】
前記大きな静止画像の前記断片は、互いに重畳し、
前記分割及び順位付け段階は、前記大きな静止画像の少なくとも一部分をカバーするよう適合された移動ショットに基づく、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記大きな静止画像内で輪郭を検出する段階を更に有する、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記分割及び順位付け段階は、輪郭を検出する前記段階によって検出された前記輪郭の連続する走査に基づく、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記大きな静止画像の一部分をズームする段階を更に有する、
請求項1記載の方法。
【請求項6】
大きな静止画像を前記大きな静止画像より小さい寸法を有するディスプレイ上で視覚化するよう処理する装置であって:
・ 前記ディスプレイと、
・ 前記大きな静止画像を、前記ディスプレイの寸法に対して実質的に同等である寸法を有する断面の一式に分割する手段と、
・ 所定の走査オーダに従って前記大きな静止画像の前記断片を順位付けする手段と、
ビデオシーケンスケンスを得るよう前記所定の走査オーダに従って予測ブロックベース圧縮を使用して前記断片の一式を暗号化するエンコーダと、
・ 前記ディスプレイ上で前記ビデオシーケンスを復号化し表示するデコーダと、
を有する、
装置。
【請求項7】
プログラム命令を有するコンピュータプログラムであって、
前記プログラム命令は、前記プログラムがプロセッサによって実行される際、請求項1記載の方法を実施する
コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−528024(P2007−528024A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553700(P2006−553700)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000337
【国際公開番号】WO2005/084005
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】