説明

把持装置

【課題】変形し易く強度が弱い段ボール箱のようなワークの変形を最小、確実に保持し、ワーク寸法に応じて確実にワークを把持することのできる把持装置を提供。
【解決手段】把持装置1は、ロボットのアーム先端22に取り付けられた水平角枠2と、短辺側から垂下し把持平面4を有する固定把持部3と、他方側に移動部5と、移動部から垂下する把持平面7を有する移動把持部6と、移動部に設けられた検出移動部9と、検出移動部を付勢するスプリング12と、検出移動部から垂下する接触平面11を有する検出板10と、検出板の接触平面と把持部の把持平面との差が所定量以下になった時に信号を出力する検出器13と、を設け、さらに、移動及び固定把持部の下部に互いに相手側方向に延出する爪3e,6eを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール等の箱をロボットにより、ばらし、搬送、積み上げ等するためのロボットのアーム先端に取り付ける把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を搬送するロボット先端に取り付けられる把持装置は対向して垂下する板状、棒状等の一対の把持部の間隔を拡縮させることにより物品を把持したり開放したりしている。物品が段ボール箱等の場合には、例えば、特許文献1のものでは、長方形状の水平角枠の一方に固定平板を垂下させ、他方に固定平板側に進退する可動平板を設けて、固定平板と可動平板との開度を調整し、段ボール箱の対峙する両側面を狭持して搬送する。さらに、各平板の下端には、爪を進退又は回転自在に設けて、段ボール箱の底部を保持できるようにされている。しかしながら、段ボール箱は強度が弱いので、あまり強い押圧力で把持すると、変形する虞がある。そこで、特許文献2では、平板でなく、略L字状のハンドを用い、段ボール箱の対峙する両角隅部で狭持することにより、段ボール箱への押圧力の影響を減じ、確実な把持をおこなうようにしている。
【0003】
しかし、段ボール箱には種々の寸法があり、また、強度も大きくない。そのため、それに合わせて把持部の開度や押圧力を制御する必要がある。そこで、例えば寸法データを予め制御装置に記録させて、把持前の把持部の開度寸法や把持後の寸法は予め制御側に記憶させておく。また、段ボール箱の押圧力や幅寸法を測定又は検出することが考えられる。そこで、特許文献3においては、テレビのブラウン管の場合であるが、把持部にゴムパットの弾性体を取付、さらに、リミットスイッチや金属センサを取り付ける。そして、ブラウン管の把持することにより、ゴムパッドが変形して、リミットスイッチや金属センサが働くのを検出して、把持完了信号としている。また、特許文献4においては、固定側の把持部にスプリングとリミットスイッチを設け、ベルトコンベアを流れてくる種々のワークを稼働側把持部で押圧して、固定側の把持部とで狭持する。稼働側把持部の押圧力により徐々に固定側のスプリングが変形し、所定圧力になるとリミットスイッチが働き、所定の押圧力、位置でワークが狭持される。また、特許文献5においては、把持部先端の爪の傾動によりリミットスイッチが働くようにされている。これにより、ワーク高さより若干低い高さに爪が来るようにして、水平方向に移動させワークに爪があたった位置を検出し、ワークの位置を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−15026号公報
【特許文献2】特開平7−290393号公報
【特許文献3】特開平11−221788号公報
【特許文献4】実開平3−62787号公報
【特許文献5】実公平7−48585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2のものは、段ボール箱検出、寸法の測定等については言及されていない。また、変形がし易く、強度も弱い段ボール箱では、特許文献3のものでは、ウレタンやゴム等の弾性体より段ボール箱側が弱いので、段ボール箱側が変形してしまい検出が困難である。また、金属検知装置等は使用できない。また、特許文献4のものは、種々のワーク幅にあわせて把持することができるが、スプリングによる押圧力で保持するので把持力が不足する。また、振動等によって把持力がばらついてしまう。さらに、段ボール箱のような大きなものでは確実に把持することは困難である。また、特許文献5のものは、ワークの幅又は長さ寸法を測定するものではない。
【0006】
本発明の課題は、前述したかかる問題点に鑑みて、段ボール箱のような、変形しやすく、強度が弱い箱状のワークの変形を最小にするとともに、確実に保持し、さらには、ワーク寸法に応じて確実にワークを把持することのできる把持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、ロボットのアーム先端に取り付けられる取付部と、前記取付部で支持された長方形状の水平角枠と、前記水平角枠の一方の短辺側から垂下し把持平面を有する固定把持部と、前記水平角枠の他方側に設けられ前記固定把持部方向に進退可能にされた移動部と、前記移動部から垂下する把持平面を有する移動把持部と、前記移動把持部に設けられた中央縦穴部と、前記移動部に設けられ前記固定把持部方向に進退可能に支持された検出移動部と、前記移動部に設けられ前記検出移動部を前記固定把持部方向に付勢するスプリングと、前記中央縦穴部に出入り可能に前記検出移動部から垂下する前記把持平面の半分以上の長さの接触平面を有する検出板と、前記検出板の接触平面と前記移動把持部の把持平面との差が所定量以下になった時に信号を出力する検出器と、を備えており、前記移動把持部の把持平面及び前記検出板の接触平面が前記固定把持部の把持平面と対向して配置され、前記移動把持部及び前記固定把持部の下部に互いに相手側方向に延出する爪が設けられた把持装置を提供することにより前述した課題を解決した。
【0008】
即ち、対向する把持平面と爪をもつ固定把持部と移動把持部とで、ワークを狭持するようにしているので、従来と同様に確実にワークを保持できる。本発明においては、特に、ワークの把持にあたっては、ワーク把持幅即ち固定把持部と移動把持部との距離は、移動把持部の中央縦穴部に出入りする検出板の接触平面と移動把持部の把持平面との差が所定量以下になった時に信号を出力する検出器により設定できるようにしたので、種々のワークのデータを予め設定することなく、把持するだけで所定の把持長さに設定できる。さらに、箱を押すのではなく、箱の幅で、あるいは、箱より数mm小さめ等で設定できるので、過大な力で箱を押すことがない。また、位置で保持するので、押圧力の変化がなく、振動による把持力のバラツキがない。また、検出板は、反移動把持部方向にスプリングで付勢され、移動把持部の移動と共に移動し、充分な長さの接触平面がまず箱に当接し、箱に押されて検出板が移動把持部側に押させるので、一部変形している段ボール箱であっても把持長さを検出しやすい。なお、スプリング力を強くすることにより、変形した段ボール箱面であってもある程度修正して把持できる。
【発明の効果】
【0009】
以上述べたように本発明においては、従来と同様に確実にワークを保持でき、固定把持部と移動把持部によるワークの把持長さを、種々のワーク長さに応じて自動的に設定でき、把持するだけで適切な幅で把持し、過大な力で箱を押すことがなく、段ボール箱等の変形しやすく、強度が弱いワークを変形させることなく、確実に把持するものとなった。また、押圧力の変化がなくバラツキもすくないので、誤落下も減少する。さらに、前もってデータを与えることなく把持するワーク寸法に応じて確実にワークを把持できるものとなった。また、検出板に把持平面の半分以上の検出平面を設けたので、変形している段ボール箱であっても把持長さを検出しやすいので、ワークの誤把持、誤落下も減少する。さらには、把持長さの調整は検出器と移動把持部に対する検出板との位置調整のみでよいので、調整も簡単である。検出板のストロークも大きくとれるので、多種のワークにも適用でき、さらには、爪を大きくでき、落下防止も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態を示す把持装置の正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す把持装置の使用状態を示す正面説明図でり、(a)は段ボール箱を把持する前の状態、(b)は固定把持部を段ボール箱の先端に接触させた状態、(c)は移動把持部を移動させている状態、(d)は把持を検出した状態、(e)は把持を完了し上方へ移動した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態を示す把持装置の正面図、図2は図1のA−A線矢視図、図3はB−B線矢視図である。図1に示すように、本発明の把持装置1は、長方形状の水平角枠2の中央側上方に設けられた取付部27を介して、一部を示すロボットのアーム21の先端22に取り付けられている。取付部27は水平角枠2の水平状態を保持しながらロボットの動作範囲を広くできるようにロボットアーム先端取付面22とは傾けて取り付けられている。水平角枠2の一方の短辺側2aから固定把持部3が垂下している。固定把持部3は距離をおいて、水平角枠より垂下する2本のアルミニウム製の角材3a,3bと両角材を、ほぼ中央部及び下方部を横方向で固定する横板3c、3dからなる。固定把持部3の最下端には水平方向先端が内側(図1でみて左側)に向くように爪3eが設けられている。両角材3a,3b、横板3c,3dの垂直方向の内側面(図1で視て左方向)は全て平面とされ、かつ、全体でもほぼ同一平面となるようにされ固定把持部3の把持平面4を形成する。
【0012】
水平角枠2の他方側2bに移動部5が設けられている。移動部5はリニアガイド23により水平角枠2の長手方向に移動可能にされ、サーボモータ25とボールネジ26により駆動され、固定把持部方向に進退(図1で視て左右方向に移動)可能にされている。移動部5の一方の端部(図で視て左側)から移動把持部6が垂下している。移動把持部6は距離をおいて、移動部より垂下する2本のアルミニウム製の移動側角材6a,6bと両角材の最下端を横方向で固定する横板6dからなる。移動側最下端に水平方向先端が内側(図1でみて右側)に向くように爪6eが設けられている。移動側両角材6a,6b、横板6dの内側面(図1で視て右方向)は全て平面とされ、かつ、全体でもほぼ同一平面となるようにされ移動把持部の把持平面7を形成する。移動側両角材6a,6b間は中央縦穴部8を形成する。固定把持部3、移動把持部6の爪3e,6eの高さは同じであり、互いに相手側方向に延出している。角材把持面4,7には、ゴム、ヤスリ状、あるいは合成樹脂等の滑り止め材4a,7aが貼られている。
【0013】
移動部5のほぼ中央に検出移動部9が設けられている。検出移動部9はリニアガイド24により移動部5の長手方向に移動可能にされ、固定把持部方向に進退(図1で視て左右方向に移動)可能にされている。検出移動部9のリニアガイドの両端に図示しないストッパが設けられ、検出移動部が移動部5から脱落するのを防止し、検出移動部の固定把持部方向への移動を制限する。検出移動部9から検出板10が垂下している。検出板10は断面中空四角形であり、検出板の内側面(図1で視て右方向)が接触平面11とされている。検出板10は中央縦穴部8に出入り可能にされ固定側又は移動側把持平面4,7の半分以上の長さである。移動把持部6の把持平面7及び検出板10の接触平面11が固定把持部の把持平面4とは対向して配置されている。
【0014】
検出板10の上部固定把持部側にスプリング取付部10aが設けられている。移動部5には移動部から固定把持部側に向けて略S字を横にした形状で延びるスプリング固定部5aが設けられている。スプリング取付部10aとスプリング固定部9a間にスプリング12が係止されている。スプリング12により、検出移動部9及び検出移動部に取り付けられた検出板10を固定把持部方向に付勢している。
【0015】
移動把持部6の上部反固定把持部側に検出器としてリミットスイッチ13が設けられている。リミットスイッチのドック13aは検出板10の反固定把持部側面10bと接触可能にされており、検出板と接触することにより信号を出力できるようにされている。検出板の接触平面11と移動把持部の把持平面7との差が所定量以下になった時に信号が出力できるように接触位置が調整できるようにされている。ここでは、検出板の接触平面11と移動把持部の把持平面7と位置が一致した位置で信号が出力できるように設定されている。
【0016】
かかる本把持装置の使用方法について説明する。図4は本発明の実施の形態を示す把持装置1の使用状態を示す正面説明図であり、段ボール箱31を把持する場合についての説明図である。なお、前述したと同様な部分については説明の一部又は全部を省略する。図4(a)において、段ボール箱31は図示しない投入口からローラコンベア32に運ばれて、ストッパ33に段ボール箱先端31aが接触した状態で停止する。この位置でローラコンベア32のころ34は、幅方向中央が小径34aとされており、段ボール箱の長手方向中央の底面31dと隙間35が設けてある。隙間35の幅及び高さは爪3e,6eの幅及び高さより大きくされており、段ボール箱の底31dへ爪を挿入可能にされている。なおストッパ33は爪3eと干渉しないように、切り欠きが設けられている
【0017】
段ボール箱先端31aの位置及び隙間35は、一定なので、予めロボットの制御装置に記憶させることができる。従って、図示しないロボットは把持装置1の固定把持部3と移動把持部6とを開いた状態で把持装置の固定把持部の位置が段ボール箱先端31aより爪の分を加味しながら、爪3e,6eが底部31dの高さより下にくるまで下降させる。。
【0018】
次に、図4(b)に示すように、固定把持部3を段ボール箱先端31a側に段ボール箱先端位置より僅か奥側に移動し、段ボール箱の先端と固定把持部の把持面4とを接触させる。次に把持装置1の移動部5(検出移動部9、移動把持部6、検出板10等)を固定把持部4側へ移動させる。移動に伴い、図4(c)に示すように、まず検出板10の接触面11が段ボール箱の後端31bに接触する。さらに、移動部5(移動把持部6)が段ボール箱に向かって移動するが、検出板10は段ボールの後端31bの接触位置に保持される。このとき、検出板10はスプリング12の付勢力で段ボールの後端31bを押圧している。
【0019】
さらに、移動部5(移動把持部6)が移動し、図4(d)に示すように、段ボール箱の後端31bに移動把持部6の把持面7が接触する。同時に検出板の接触面11と移動把持部の把持面7とが一致するので、リミットスイッチ13が働き信号が出力され移動部5が停止する。これにより、移動把持部6と固定把持部3との把持面4,7間の長さを段ボール箱31の長さと同じ、あるいは、僅かに短くして(モータの停止を僅かに遅らせる、あるいは信号より所定位置で停止するように制御する等する)、段ボール箱を狭持することができる。
【0020】
これにより段ボール箱31は確実に把持されたので、図4(e)に示すように、ロボットを動作させ次の行程に段ボール箱を搬送することができる。なお、段ボール箱底部31dと爪3e,6eとの間は僅かに隙間があるが、滑り止め4a,7aに保持されているか、または、滑り止めを滑っても底部の爪3e,6eで落下を防止できるので、確実に段ボール箱31を搬送することができる。
【0021】
なお、当然であるが、移動把持部6、固定把持部3、検出板10の高さは、把持される段ボール箱31と干渉しない高さにされる。また、ここでは、一例をあげたが、この方法は例示であって、種々の応用、使用が可能であることはいうまでもない。例えば、スプリング12をある程度、強くしておけば、固定側で段ボール箱の先端を押さなくても、スプリングにより段ボール箱の先端と固定把持部把持面とを接触させることもできる。また、段ボール箱の位置を機械的に固定したが、視覚装置等を用いて、段ボール箱の位置を検出するようにしてもよい。また、移動把持部の移動量を測定して、予め入力したデータと比較して、段ボール箱の種類の判定、形状の確認、変形の記録、把持力(位置)調整等に利用することも可能である。また、コンベア、ストッパ等種々の形態が可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 把持装置
2 水平角枠
2a 一方の短辺
2b 他方の短辺
3 固定把持部
3e 爪
4 固定把持部の把持平面
5 移動部
6 移動把持部
6e 爪
7 移動把持部の把持平面
8 中央縦穴部
9 検出移動部
10 検出板
11 検出板接触平面
12 スプリング
13 検出器(リミットスイッチ)
22 アーム先端
27 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのアーム先端に取り付けられる取付部と、前記取付部で支持された長方形状の水平角枠と、前記水平角枠の一方の短辺側から垂下し把持平面を有する固定把持部と、前記水平角枠の他方側に設けられ前記固定把持部方向に進退可能にされた移動部と、前記移動部から垂下する把持平面を有する移動把持部と、前記移動把持部に設けられた中央縦穴部と、前記移動部に設けられ前記固定把持部方向に進退可能に支持された検出移動部と、前記移動部に設けられ前記検出移動部を前記固定把持部方向に付勢するスプリングと、前記中央縦穴部に出入り可能に前記検出移動部から垂下する前記把持平面の半分以上の長さの接触平面を有する検出板と、前記検出板の接触平面と前記移動把持部の把持平面との差が所定量以下になった時に信号を出力する検出器と、を備えており、前記移動把持部の把持平面及び前記検出板の接触平面が前記固定把持部の把持平面と対向して配置され、前記移動把持部及び前記固定把持部の下部に互いに相手側方向に延出する爪が設けられていることを特徴とする把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−51081(P2011−51081A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204591(P2009−204591)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【出願人】(592209803)株式会社中野 (4)
【Fターム(参考)】