説明

施肥装置付き乗用型苗植機

【課題】全体として簡潔な構成の施肥装置付き奇数条植え乗用型苗植機を得ることを課題とする。
【解決手段】乗用型走行車体1に昇降リンク機構23を介して昇降自在に奇数条植え苗植装置25を装着し、施肥装置40の肥料繰出装置42から繰出された肥料を作溝器44まで案内する施肥パイプ43a・43b・43c・43d・43e・43f・43gを設けた施肥装置付き乗用型苗植機において、苗植装置25の植付伝動ケース29の左右中央部前側に昇降リンク機構23後端部に苗植装置25を装着する空間部を有する連結ブラケット74を設け、該連結ブラケット74の空間部に左右中央の苗植付け具31に対応する作溝器44に肥料を案内する施肥パイプ43dを貫通して配置した施肥装置付き乗用型苗植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用型走行車体に田植装置等の各種苗植え作業装置と施肥装置とを装着した施肥装置付き乗用型苗植機に関するものであり、詳しくは、奇数条植え田植装置等の各種苗植え作業装置を装着した形態において、簡潔な構成とした施肥装置付き乗用型苗植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、苗植装置の植付伝動ケースの前部をコ字状に形成し、施肥パイプがその空間部分を通して作溝器に連結された施肥装置付き乗用型田植機がある。
【特許文献1】特開平4−108302号公報(図1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
併し乍ら、上記のように苗植装置の植付伝動ケースの前部をコ字状に形成して施肥パイプをその空間部分に配置した構成では、植付伝動ケースが大型化し、また、全体として簡潔な構成にすることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の従来技術のもつ課題を解決すべく、請求項1記載の発明は、乗用型走行車体1に昇降リンク機構23を介して昇降自在に奇数条植え苗植装置25を装着し、施肥装置40の肥料繰出装置42から繰出された肥料を作溝器44まで案内する施肥パイプ43a・43b・43c・43d・43e・43f・43gを設けた施肥装置付き乗用型苗植機において、苗植装置25の植付伝動ケース29の左右中央部前側に昇降リンク機構23後端部に苗植装置25を装着する空間部を有する連結ブラケット74を設け、該連結ブラケット74の空間部に左右中央の苗植付け具31に対応する作溝器44に肥料を案内する施肥パイプ43dを貫通して配置した施肥装置付き乗用型苗植機としたものである。
【0005】
従って、連結ブラケット74の空間部に左右中央の苗植付け具31に対応する作溝器44に肥料を案内する施肥パイプ43dを貫通して配置したので、奇数条植え施肥装置付き乗用型苗植機が合理的で簡潔な機体構成となり、然も、中央の施肥パイプ43dが連結ブラケット74によりが囲われた状態となっているので、中央の施肥パイプ43dは他部材や圃場の物に接当することが防止されて、損傷することが少なくなり、良好な施肥及び田植作業が長期に亘り行える。
【0006】
請求項2記載の発明は、苗植装置25の植付伝動ケース29は並列して配置され後部に苗植付け具31が装着された4つの縦伝動ケース72と該4つの縦伝動ケース72を連結する3つの左連結筒体73a・中央連結筒体73b・右連結筒体73cで構成すると共に、該植付伝動ケース29の左右中央部に位置する2つの縦伝動ケース72と該左右中央部に位置する2つの縦伝動ケース72を連結する中央連結筒体73bとの連結部に連結ブラケット74の基部を挟んで一体に固定した請求項1記載の施肥装置付き乗用型苗植機としたものである。
【0007】
従って、請求項1記載の発明の作用に加えて、植付伝動ケース29の左右中央部に位置する2つの縦伝動ケース72と該左右中央部に位置する2つの縦伝動ケース72を連結する中央連結筒体73bとの連結部に連結ブラケット74の基部を挟んで一体に固定したので、連結ブラケット74の取付け構成が簡潔になると共に、連結ブラケット74の強度が増し、軽量で小型の乗用型苗植機を構成できる。
【0008】
請求項3記載の発明は、連結ブラケット74は平面視でコ字状に形成され、該連結ブラケット74と中央連結筒体73bとで形成された空間部に左右中央の苗植付け具31に対応する作溝器44に肥料を案内する施肥パイプ43dを貫通して配置した請求項2記載の施肥装置付き乗用型苗植機としたものである。
【0009】
従って、請求項2記載の発明の作用に加えて、連結ブラケット74を平面視でコ字状の簡潔な構成に形成しても、強度のある連結部を構成できて、更に、軽量で小型の乗用型苗植機を構成できる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、奇数条植え施肥装置付き乗用型苗植機が合理的で簡潔な機体構成となり、然も、中央の施肥パイプ43dが連結ブラケット74によりが囲われた状態となっているので、中央の施肥パイプ43dは他部材や圃場の物に接当することが防止されて、損傷することが少なくなり、良好な施肥及び田植作業が長期に亘り行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
乗用型走行車体1に昇降リンク機構23を介して昇降自在に7条植え苗植装置25を装着し、施肥装置40の肥料繰出装置42から繰出された肥料を7つの作溝器44まで各々案内する7つの施肥パイプ43a・43b・43c・43d・43e・43f・43gを設けた施肥装置付き乗用型苗植機において、苗植装置25の植付伝動ケース29は並列して配置され後部に苗植付け具31が装着された4つの縦伝動ケース72と該4つの縦伝動ケース72を連結する3つの左連結筒体73a・中央連結筒体73b・右連結筒体73cで構成すると共に、該植付伝動ケース29の左右中央部に位置する2つの縦伝動ケース72と該左右中央部に位置する2つの縦伝動ケース72を連結する中央連結筒体73bとの連結部に平面視でコ字状に形成された連結ブラケット74の基部を挟んで一体に固定して設け、該連結ブラケット74と中央連結筒体73bとで形成された空間部に左右中央の苗植付け具31に対応する作溝器44に肥料を案内する中央施肥パイプ43dを貫通して配置した施肥装置付き乗用型苗植機。
【実施例1】
【0012】
この発明の一実施例として、乗用型苗植機の一種である7条植え乗用型田植機を図面に基づき詳細に説明する。1は乗用型走行車体であって、左右フレーム2・2と該左右フレーム2・2の後部を連結する横フレーム3とで構成される機体の後部上面にエンジン4を搭載し、左右フレーム2・2の前部には走行ミッションケース5を固設している。そして、この走行ミッションケース5には、エンジン4の回転駆動力が変速されるHST変速装置と前輪デフ装置と後輪デフ装置とが内蔵されているおり、HST変速装置は、変速レバー6にて、後進と中立と前進(圃場内で植付け作業をする植付速・路上等で早く移動する為の移動速)とに変速操作される。
【0013】
7・7は左右フロントアクスルケースであって、前記走行ミッションケース5の前輪デフ装置より左右駆動軸を介して動力が伝動されるように構成されている。9・9は操向自在の左右駆動前輪であって、左右フロントアクスルケース7・7の下部に嵌合され操縦ハンドル10にて回動される操向ケース11・11に軸架されており、操縦ハンドル10を回すと左右操向ケース11・11が縦軸回りに回動し左右駆動前輪9・9が向きを変えるように構成されている。
【0014】
15・15は左右後輪駆動ケースであって連結枠で一体に連結されており、該連結枠が横フレーム3にロリング軸にてロリング自在に設けられており、その左右両側部に軸架された左右駆動後輪18・18が上下揺動できるように構成されている。19・19は、走行ミッションケース5の後輪デフ装置から左右後輪駆動ケース15・15に動力を伝える伝動軸である。
【0015】
そして、後輪駆動ケース15内部の伝動機構中には左右駆動後輪18・18に対する左右サイドクラッチと左右サイドブレーキとが内蔵されており、機体旋回の為に操縦ハンドル10を所定量以上に操向操作すると旋回内側のサイドクラッチが切れ且つサイドブレーキが利くように連携構成されていて、小回りの旋回操作が操縦ハンドル10を操向操作するだけで容易に行える。
【0016】
21はFRPにて成型された車体カバ−であって、エンジン4の周囲を覆うエンジンカバ−部21aと、前記エンジン4の前方及び左右側方に設けられたステップ21bと、ハンドルポストカバー21cと、エンジン4の後方に設けられた後輪フェンダーを兼ねたステップ21dとにより構成されており、左右フレーム2・2上に固定されている。22は操縦座席で、前記車体カバー21のエンジンカバ−部21a上面に設置固定されている。
【0017】
23は上部リンク23aと下部リンク23bとにより構成される昇降リンク機構であって、上部リンク23aと下部リンク23bの基端部は左右フレーム2・2の後部に固着された支持フレーム24に各々枢着され、後端部は後述の苗植装置25に設けたローリング軸26を回動自在に支持して苗植装置25をローリング自在に装着した縦枠27に枢着されている。
【0018】
28は油圧シリンダーであって、シリンダーの基部が左右フレーム2・2に枢着され、そのピストンの後端が上部リンク23aと一体の揺動アーム23cに枢着されている。
苗植装置25は、前記縦枠27にローリング軸26にてローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース29と、該植付伝動ケース29に設けられた左右支持部材29a・29aに支持されて機体左右方向に往復動する苗載台30と、植付伝動ケース29の後端部に装着され前記苗載台30の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植え付ける7つの苗植付け具31…と、植付伝動ケース29の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンターフロート32・左右サイドフロート33・33等にて構成されている。左右サイドフロート33・33は、各々左右駆動後輪18・18の後方に配置されており、該左右駆動後輪18・18にて掻き乱された圃場を整地すると共に苗植付け具31にて苗が植付けられる圃場の前方を整地すべく設けられている。そして、苗載台30は、7つの苗載置部が左右方向に並列して設けられている。34は苗検出センサであって、苗載台30の7つの苗載置部の各々に設けられており、苗載置部の苗が減少した場合に検出して、警報ランプを点滅させて7つの苗載置部のどれが苗減少しているかを操縦者に報知する構成となっている。
【0019】
また、走行車体1の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
40は施肥装置であって、前記支持フレーム24の上端部に固着されており、施肥タンク41…と、該各施肥タンク41…の下部に装着され施肥タンク41内の粒状肥料を一定量づつ繰り出す7つの肥料繰出装置42…と、該各々の肥料繰出装置42にて繰り出された肥料をそれぞれ案内する透明の7つの施肥パイプ43a・43b・43c・43d・43e・43f・43gと、センターフロート32・左右サイドフロート33・33に固着され苗植付け位置側方の圃場に施肥溝を掘り各施肥パイプ43a…にて案内された粒状肥料を該施肥溝内に落下案内する7つの作溝器44…とにより構成されている。尚、45は肥料繰出装置42…を駆動する駆動機構であって、左右フレーム2・2上に固設の施肥駆動ケ−ス46により回転動力が伝達される。そして、施肥駆動ケ−ス46には走行ミッションケース5より駆動軸47にて動力が伝達されるように構成されている。
【0020】
そして、梅雨時期に田植作業をすることが多いので、粒状肥料は雨に濡れて湿った状態になることが多い。粒状肥料が湿った状態であると、施肥タンク41内や肥料繰出装置42…内や施肥パイプ43…内で詰まって施肥作業が行えないような事態が発生する要因となっていた。そこで、施肥タンク41内面には、吸湿材をコーティングしており、湿った粒状肥料の水分を吸湿して、粒状肥料を乾いた状態にさせて、肥料詰まりを防止し、適切な施肥作業が行えるようになっている。尚、水分を多量に吸湿した吸湿材は、晴天の日に、施肥タンク41の蓋を開けた状態にしておくと、水分を放出して吸湿性が復帰する。
【0021】
48は両端にユニバーサルジョイントを有するPTO伝動軸であって、施肥駆動ケース46の動力を苗植装置25の植付伝動ケース29に伝達すべく設けている。49は圃場に対する苗植装置25の位置を検出するセンサーとしてのセンターフロートセンサーであって、センターフロート32前部の上下位置を検出するポテンショメータにより構成され、センターフロート32の前部上面とリンク50により連携されている。そして、センターフロートセンサー49のセンターフロート32前部の上下位置検出に基づいて、制御装置51の昇降制御手段によりソレノイド油圧バルブ52を制御して油圧シリンダー28にて苗植装置25の上下位置を制御するように構成されている。尚、センターフロート32の前部はバネ50aにより下方に向けて付勢されている。
【0022】
即ち、センターフロート32が泥面に接地した状態でその前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられた時には油圧ポンプ53にて走行ミッションケ−ス5内から汲み出された圧油を油圧シリンダー28に送り込んでピストンを突出させ昇降リンク機構23を上動させて苗植装置25を所定位置まで上昇せしめ、また、センターフロート32の前部が適正範囲以上に下がった時には油圧シリンダー28内の圧油を走行ミッションケ−ス5内に戻して昇降リンク機構23を下動させて苗植装置25を所定位置まで下降せしめ、そして、センターフロート32の前部が適正範囲にあるとき(苗植装置25が適正な所定位置にある時)には油圧シリンダー28内の圧油の出入りを止めて苗植装置25を一定位置に保持せしめるべく設けられている。
【0023】
54は車体カバ−21より突出して操縦座席22の右側方に設けられた昇降レバーであって、該昇降レバー54を操作することにより、制御装置51のPTOクラッチ作動手段にて走行ミッションケ−ス5から後方に向けて設けられた駆動軸47を駆動回転する動力を断接するPTOクラッチを作動させて施肥装置40及び苗植装置25への動力を入切り操作できるように構成されていると共に、制御装置51の昇降制御手段にてソレノイド油圧バルブ52を作動させて手動にて苗植装置25を上下動できるように構成されている。
【0024】
即ち、昇降レバー54を前方に倒して「自動位置」にすると、PTOクラッチが入り施肥装置40及び苗植装置25が駆動され且つソレノイド油圧バルブ52がセンターフロート32の上下動にて切換えられる自動制御状態となる。逆に、昇降レバー54を後方に引いて「上昇位置」にすると、PTOクラッチが切れ施肥装置40及び苗植装置25の作動が停止し且つソレノイド油圧バルブ52が強制的に苗植装置25を上昇する側に切換えられ、苗植装置25が上昇される。そして、昇降レバー54をその操作ストロークの中間位置の「固定位置」にすると、PTOクラッチが切れ施肥装置40及び苗植装置25の作動が停止し且つソレノイド油圧バルブ52が油圧シリンダー28内の圧油の出入りを止めて苗植装置25を一定位置に保持せしめる位置に切換えられ、苗植装置25が昇降レバー54を「固定位置」に操作したときの位置に保持され苗植装置25は上昇も下降もしない。また、昇降レバー54を「下げ位置」にすると、PTOクラッチが切れ施肥装置40及び苗植装置25の作動が停止し且つソレノイド油圧バルブ52がセンターフロート32の上下動にて切換えられる自動制御状態となる。
【0025】
55は操縦ハンドル10の下方に配置されたフィンガーレバーであって、該フィンガーレバー55を上下方向に操作するとポテンショメータにより構成されるフィンガーレバースイッチ56が作動されて、制御装置51のPTOクラッチ作動手段により、走行ミッションケ−ス5内に設けられた駆動軸47を駆動回転する動力を断接するPTOクラッチを操作して施肥装置40及び苗植装置25への動力を入切り操作できるように構成されていると共に、制御装置51の昇降制御手段により、ソレノイド油圧バルブ52を操作して手動にて苗植装置25を上下動できるように構成されている。
【0026】
即ち、フィンガーレバー55を「上」に操作すると、PTOクラッチが切れ施肥装置40及び苗植装置25の作動が停止し且つソレノイド油圧バルブ52が強制的に苗植装置25を上昇する側に切換えられる。そして、フィンガーレバー55を「上」に操作した後に、フィンガーレバー55を「下」に1回操作すると、ソレノイド油圧バルブ52がセンターフロート32の上下動にて切換えられる自動制御状態となり、苗植装置25が上昇された状態であればセンターフロート32が接地して適正姿勢になるまで苗植装置25は下降する。更にもう一回、フィンガーレバー55を「下」に操作すると、ソレノイド油圧バルブ52がセンターフロート32の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、PTOクラッチが入り施肥装置40及び苗植装置25が駆動される。以降、フィンガーレバー55を「下」に操作する度に、ソレノイド油圧バルブ52がセンターフロート32の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、PTOクラッチが入りと切りに交互に切り換えられる。
【0027】
57は制御装置51の昇降制御手段の昇降制御感度を設定する感度設定器であり、前記センターフロート32の上下動の量をセンターフロートセンサー49で検出し、その検出情報によって油圧シリンダー28のソレノイド油圧バルブ52を切換え操作する昇降制御手段の昇降制御を行う上でのセンターフロートセンサー49の基準位置を調節することで、昇降制御の感度を調節する一般的なものである。
【0028】
即ち、仮に感度設定器57を標準の「5」の位置から鈍感側「7」に操作すると、センターフロートセンサー49の基準位置が「5」位置から少し上がった「7」位置に変更される。すると、センターフロート32の姿勢が標準の「5」のときの姿勢よりも上向きになって接地面積が減少し、かつ、バネ50aがより圧縮されて基準位置での付勢力が増すので、田面の起伏に追従し難い状態となり、昇降制御感度が鈍感側に調節される。逆に、感度設定器57を標準の「5」の位置から敏感側「3」に操作すると、センターフロートセンサー49の基準位置が「5」位置から少し下がった「3」位置に変更される。すると、センターフロート32の姿勢が下向きになって接地面積が増加し、かつ、バネ50aの付勢力が減るので、田面の起伏に追従し易い状態となり、昇降制御感度が敏感側に調節される。
【0029】
次に、ローリング制御機構59について説明する。60は縦枠27の上部に溶接固定された支持板27aにボルトにて固設された電動モータであって、該電動モータ60の回転駆動軸61の先端に小径の駆動歯車61aが正逆回転駆動されるように装着されている。そして、電動モータ60は、機体背面視で縦枠27の右側に偏った位置に配置して固定されており、電動モータ60のメンテナンス(電動モータ60が機体に取付けられたままでの修理や点検)が容易に機体右側方位置から行えて、その作業性が良い。また、電動モータ60を機体から取外したり組み付けたりする作業も、機体右側方から容易に行えてその作業効率が良い。
【0030】
一方、支持板27aには大径の従動歯車61bが回動軸61cにて回動自在に枢支され、電動モータ60の回転駆動軸61の先端に設けれた駆動歯車61aに噛合っており、従動歯車61bは電動モータ60の回転駆動を減速して回転する構成となっている。そして、従動歯車61bにローリング駆動ピン61dの基端部が溶接固定されており、その先端部は、支持板27aに枢支軸61eにて回動自在に設けられた回動アーム62の長孔62aに嵌合している。
【0031】
そして、回動アーム62の揺動先端部には、左右引張バネ63・63の一端が係合し、左右引張バネ63・63の他端は前記苗植装置25の植付伝動ケース29に設けられた左右支持部材29a・29aに係合している。よって、電動モータ60の回転駆動軸61の正逆転によって、回動アーム62がイ−ロ方向に揺動し、バネ63・63を介して苗植装置25を乗用型走行車体1に対してローリング作動できるようにしてある。
【0032】
64は植付伝動ケース29の上部の機体左右方向中央位置に設けられた水平センサーであって、苗植装置25の水平に対する左右傾斜を電気信号の変動として検出し、機体正面視で水平時に3Vの電圧を出力し、右傾斜するほど出力電圧は5Vまで大きくなり、逆に、左傾斜するほど出力電圧は0Vまで小さくなる。そして、制御装置51のローリング制御手段にてこの水平センサー64の出力電圧に応じて電動モータ60を正逆転制御して苗植装置25を水平に制御するようになっている。
【0033】
65は回動アーム62が左右中央位置で停止するために従動歯車61bの位置を検出する為のセンサーであって、従動歯車61bと同一軸心に装着された検出作動体66の凸部66a(従動歯車61bの最大径部61b’と同じ円弧形状となっている)によりON作動して、回動アーム62が左右中央位置であることを検出できるようになっている。そして、検出作動体66は従動歯車61bに対して回動軸61c回りに回動調節できるようになっており、即ち、従動歯車61bに設けた円弧状の長孔61b”に螺子67を貫通して、該螺子67を検出作動体66に締め付けて、従動歯車61bと検出作動体66とが一体回転するように構成されている。従って、螺子67を緩めて従動歯車61bに対して検出作動体66の位置を回転調節することにより、センサー65が回動アーム62が左右中央位置であることを正確に検出できるようにできる。尚、このセンサー65が回動アーム62が左右中央位置であることの検出は、ローリング制御を停止する等の各種制御に用いている。
【0034】
68は回動アーム62が左右最大揺動位置で停止するために従動歯車61bの位置を検出する為のセンサーであって、その検出接当子が従動歯車61bの外周に形成された凹部68aに接当しており、回動アーム62が左右最大揺動位置まで揺動した時に凹部68aの最終端である凸部になる部位によりON作動して、回動アーム62が左右最大揺動位置であることを検出できるようになっている。尚、このセンサー68が回動アーム62が左右最大揺動位置であることを検出した時には、それ以上に左右方向にローリング制御されることが停止される。
【0035】
ところが、乗用型田植機においては、苗植装置25の苗載台30が左右に往復移動して苗植付け作業が行なわれる為に、苗載台30が中央部に位置する時と右端に位置する時と左端に位置する時とでは、苗植装置25の重心が左右に大きく変動する為に、ローリング制御機構による制御が適正に行ない難い不都合があるので、支持板27aの先端部には、補正用左右引張バネ69・69の一端が係合し、補正用左右引張バネ69・69の他端は前記苗植装置25の苗載台30に係合している。よって、苗載台30が左端付近及び右端付近に移動しているときは苗載台30の重みで、苗植装置25の苗載台30が移動している側が下がりぎみになろうとするが、苗載台30が移動して下がりぎみになろうとする側を引き上げる方向に補正用左右引張バネ69・69が作用して、苗載台30の左右移動によるローリング制御の不安定さを解消できて、ローリング制御が適正に行なえ、良好な苗植付け作業ができる。
【0036】
上記の実施例では、苗植装置25側に水平センサー64を設けた例を示したが、乗用型走行車体1側に水平センサー64を設けて、乗用型走行車体1の傾斜を検出して、苗植装置25が左右水平状態になるように従来一般的に行われている同様の制御手段にて制御しても良い。また、上記の実施例では、ローリング制御機構59は昇降リンク機構23側に設けた例を示したが、逆に、同様のローリング制御機構59を作業装置25側に設けても良い。
【0037】
尚、70はセンターマスコットであって、機体の前端部に設けられており、次工程の機体の中心位置を示す線を圃場面に引く一般的な左右線引きマーカ71・71にて前工程で引かれた線に操縦者が合わせて直進する為の一般的なものである。
【0038】
ここで、苗植装置25の植付伝動ケース29の構成を詳細に説明する。
72…はアルミ鋳物にて型形成された縦伝動ケースであって、4つ並列配置されている。そして、一番左の縦伝動ケース72と左から2番目の縦伝動ケース72と左から4番目の縦伝動ケース72の後端部には、左右側に苗植付け具31・31が装着され、左から3番目の縦伝動ケース72の後端部には、その右側のみ苗植付け具31が装着されている。
【0039】
73aはアルミ鋳物にて型成形された左連結筒体であって、一番左の縦伝動ケース72と左から2番目の縦伝動ケース72との間に配置されて、ボルトによりその両端部が各縦伝動ケース72・72に固着されている。
【0040】
73bはアルミ鋳物にて型成形された中央連結筒体であって、左から2番目の縦伝動ケース72と左から3番目の縦伝動ケース72との間に配置され、且つ、中央連結筒体73bと各各縦伝動ケース72・72との間に平面視コ字状の連結ブラケット74の左右基部を挟んで、ボルトにより各縦伝動ケース72・72に固着されている。そして、平面視コ字状の連結ブラケット74の前端には、昇降リンク機構23の縦枠27に回動自在に支持されるローリング軸26の基部が固着されている。
【0041】
75はアルミ鋳物にて型成形された入力伝動ケースであって、左から3番目の縦伝動ケース72の前部右側面にボルトにより固着されており、前記PTO伝動軸48の後端部のユニバーサルジョイントを介して動力が伝達される入力軸76を前方に向けて突出して設けている。
【0042】
73cはアルミ鋳物にて型成形された右連結筒体であって、入力伝動ケース75と左から4番目の縦伝動ケース72との間に配置されて、ボルトによりその両端部が入力伝動ケース75の右側面と縦伝動ケース72に固着されている。
【0043】
そして、PTO伝動軸48から入力軸76に伝動された動力は、入力伝動ケース75内の歯車伝動機構77を介して苗載台30を左右方向に往復動させる螺旋溝を有する横移動機構78に伝動されると共に、植付伝動ケース29内の伝動機構を介して各苗植付け具31…に伝動される。
【0044】
一方、施肥装置40の7つの施肥パイプ43a・43b・43c・43d・43e・43f・43g下部の配置構成は次のようになっている。即ち、一番左側の施肥パイプ43aは、一番左の縦伝動ケース72の左側前方を通って作溝器44に連結し、左から2番目の施肥パイプ43bと左から3番目の施肥パイプ43cは、左連結筒体73aの前方を通って作溝器44に連結し、左から4番目の施肥パイプ43dは、中央連結筒体73bと平面視コ字状の連結ブラケット74の空間部内を通って作溝器44に連結し、左から5番目の施肥パイプ43eは、左から3番目の縦伝動ケース72と入力伝動ケース75の前方を通って作溝器44に連結し、左から6番目の施肥パイプ43fは、右連結筒体73cの前方を通って作溝器44に連結し、左から7番目(一番右側)の施肥パイプ43gは、左から4番目(一番右側)の縦伝動ケース72の右側前方を通って作溝器44に連結している。従って、各施肥パイプ43a…は、植付伝動ケース29の前方で簡潔な構成配置となっており、特に、奇数条植えである為に、機体左右中央に位置する苗植付け具31に対応する中央の施肥パイプ43dは、中央連結筒体73bと平面視コ字状の連結ブラケット74の空間部内を通って配置されているので、その構成が合理的で簡潔であるばかりでなく、中央連結筒体73bと連結ブラケット74により中央の施肥パイプ43dの下部が囲われた状態となっているので、中央の施肥パイプ43dの下部は他部材や圃場の物に接当することが防止されて、損傷することが少なくなり、良好な施肥及び田植作業が長期に亘り行える。
【0045】
次に、水平センサー64の出力を用いて、苗植付け具31…が作動した時に発生する機体の固有振動を検出して、苗植付け具31…が作動しているか否かを判断する制御について説明する。
【0046】
図8は、水平センサー64の出力値を示すグラフであるが、苗植装置25の左右傾斜は、2.5Hz以下の周波数域で出力値として現れ、実際のローリング制御はこの2.5Hz以下の周波数域の出力値で行うようにしている。一方、苗植付け具31…が作動している時には、8.5Hz付近で出力値Aが現れるので、この8.5Hz付近の出力値Aを検出することにより、苗植付け具31…が作動しているか否かを判断することができる。
【0047】
即ち、水平センサー64の出力値から制御装置51の周波数分析フィルター手段にて、8Hz〜9Hzまでの周波数域の出力値のみを取り出す。すると、苗植付け具31…が作動していない時は出力が殆どないが、苗植付け具31…が作動している時は出力がでる。
【0048】
そこで、図9に示すように、この実施例では、操縦ハンドル10の操向角度をステアリングセンサにて検出して制御装置51に入力すると、直進判断手段にて操縦ハンドル10の操向角度が左右に90度以下である場合には、直進操作状態と判断する。そして、圃場内での直進操作状態では、苗植付け具31…を作動させて苗植付け中であるから、上記制御装置51の周波数分析フィルター手段にて8Hz〜9Hzまでの周波数域の出力値のみを検出して、その出力値をみて、出力があれば苗植付け具31…が作動していると判断し、出力がなければ苗植付け具31…が作動していないと判断する。そして、苗植付け具31…が作動していないと判断した場合には、警報ブザーや警報ランプ等の報知手段にて操縦者に苗植付け具31…が作動していないことを知らせる。
【0049】
従って、田植作業時に操縦者が誤操作や誤設定で苗植付け具31…を作動させるのを忘れた場合や機械の故障等で苗植付け具31…が作動しない場合に、直ちに警報が発せられて、操縦者は苗植付け具31…が作動していないことに気づき、操縦者は直ぐに対処して、苗植付け具31…が作動していないことによる連続欠株の発生を防止できて、作業効率の良い田植作業が行える。
【0050】
最後に、左右線引きマーカ71・71の作動構成について説明する。
線引きマーカー71の基部には断面コ字状の回動部80が設けてあり、この回動部80が植付伝動ケース29の左右両側に突出して設けたマーカー支持フレーム81の先端部に枢支ピン82にて回動自在に枢着され、バネ83にて線引きマーカー71が作用位置となるロ方向に下動するよう付勢されている。そして、回動部80に基端が固着されたパイプ84の先端部には、下端に線引きマーカー体71aが設けられた杆体85の上端が装着されている。
【0051】
そして、線引きマーカー71の回動部80に一端側が連結された操作ワイヤ86・86の他端側は、そのインナーワイヤー86aがリンク機構9を昇降駆動する油圧シリンダー28のピストン部28aに連結され、アウター86bが油圧シリンダー28のシリンダ部28bに連結されている。よって、田植作業中に枕地で旋回走行するときに苗植装置25を水田面から高く上昇させるが、このとき油圧シリンダー28のピストン部28aがシリンダ部28bから突出作動して、操作ワイヤ86・86のインナーワイヤー86aが引かれる。これにより、横倒しになって線引き作用姿勢にある線引きマーカー71は引き上げられて起立し非線引き作用姿勢に切り替わる。
【0052】
一方、左右一対の操作ワイヤ86・86には、油圧シリンダー28のピストン部28aがシリンダ部28b内に引っ込み作動しても前記ワイヤー86・86のインナーワイヤー86a・86aが引き戻されないようにロックするロック機構Lが設けられている。枕地での旋回が終了して苗植装置25を下降させたとき、ロック機構Lにより、操作ワイヤ86・86がロックされていれば、線引きマーカー71は線引き作用姿勢に移動しない。また、ロック機構Lにより、操作ワイヤ86・86が非ロック状態であれば、線引きマーカー71はバネ83の付勢により横倒しの線引き作用姿勢に移動する。但し、ロック機構Lは、油圧シリンダー28のピストン部28aが突出作動してインナーワイヤー86aを油圧シリンダ側に引っ張る動作に対してはロック作用しない。そして、このロック機構Lは、左右両方のインナーワイヤー86aをロックするように操作できるし、苗植装置25の上昇操作の度に左右一方のみ交互に自動的に切替可能にロックするようにも操作できる。また、左右両方のインナーワイヤー86a・86aをロックしないようにも操作できる。よって、前記操作により、左右両方の線引きマーカー71・71を引き上げて左右の線引きマーカーを非線引き作用姿勢にすることができる。従って、前記操作により、左右一方の線引きマーカー71を自動的に切替えて左右一方の線引きマーカーを線引き作用姿勢にすることができるし、左右両方の線引きマーカー71・71を同時に線引き作用姿勢にすることもできる。
【0053】
ロック機構Lは油圧シリンダー28のシリンダ部28b上に回動自在に枢支された鉤状の左右フック機構88・88にて構成されており、各々がインナーワイヤー86a・86a末端部に連結したスライダーピン87・87の段差部87’・87’に係合してインナーワイヤ86a・86aの線引きマーカー側への移動を阻止する。このフック機構88は、スライダーピン87の段差部87’に係合するフック部材88aと該フック部材88aにトルクスプリング88bにてストッパー部材88cがフック部材88aの内側面に接当するように付勢するように同軸にて枢支された作動体88dとにより構成され、シリンダ部28b上に設けた電動モータ89にて正逆回転する駆動カム90にてロック状態と非ロック状態とに切換えられる構成となっている。
【0054】
即ち、畦際での旋回操作で苗植装置25を上動させる操作一回ごとに電動モータ89が交互に正逆回転して駆動カム90が交互に正逆回転し、左右フック機構88・88の係合が交互に外れて、苗植装置25を下動させる毎に左右線引きマーカ71・71が左右交互に作用状態に切り替わるように構成されている。
【0055】
尚、駆動カム90による左右フック機構88・88の係合を解除する構成と作用を更に詳述する。例えば、電動モータ89により駆動カム90がイ方向に正回転すると、左線引きマーカ71のスライダーピン87の段差部87’に係合している左フック機構88の左作動体88dを回動させる。すると、左作動体88dは内側向けて回動するが、その時、左作動体88dのストッパー部材88cが左フック部材88aの内側面に接当しているので、左フック部材88aを係合が外れる方向に回動させて、左線引きマーカ71は自由に下動できる状態となり、苗植装置25を下動させた時に左線引きマーカ71が作用状態に切り替わる。その時、駆動カム90は右作動体88dを外側向けて回動させるが、右作動体88dのストッパー部材88cは右フック部材88aの内側面から離れる方向に回動するので、右フック部材88aは回動しないで係合状態のままであり、右線引きマーカ71は上動状態で保持されたままである。逆に、電動モータ89により駆動カム90がロ方向に逆回転すると、同様にして、右フック部材88aを係合が外れる方向に回動させて、右線引きマーカ71は自由に下動できる状態となり、苗植装置25を下動させた時に右線引きマーカ71が作用状態に切り替わる。その時、左フック部材88aは回動しないで係合状態のままであり、左線引きマーカ71は上動状態で保持されたままである。
【0056】
また、操縦者の近傍に左右線引きマーカ71・71の両方を線引き作用状態とできる両出しスイッチを設けて、この両出しスイッチを押すと、電動モータ89が正回転及び逆回転して、左右フック機構88・88の係合を共に解除して、苗植装置25を下動させた時に左右線引きマーカ71・71の両方を線引き作用状態とする。この左右線引きマーカ71・71の両方を線引き作用状態とするのは、畦際に1工程分(7条植え分)の枕地を取って田植作業を行う時に便利である。
【0057】
更に、操縦者の近傍に左右線引きマーカ71・71を自動的に左右交互に線引き作用状態になるモード(ON)と両方とも線引き作用状態にならないモード(OFF)とに切換えるメインスイッチを設けて、このメインスイッチをOFFにして、電動モータ89が正回転及び逆回転しないようにして、左右フック機構88・88の係合を維持する状態にすると、苗植装置25を下動させた時に左右線引きマーカ71・71は両方とも線引き作用状態にならない。この左右線引きマーカ71・71の両方が線引き作用状態にならないようにするのは、畦際の枕地植えを行う時に便利である。
【0058】
このように電動モータ89と機械的ロック機構Lで左右線引きマーカ71・71の左右作動を自動で切換える構成にすると、従来のように左右ソレノイドを用いて電気的に制御する構成に比べて、簡潔で安価な構成となり、販売価格の安い乗用型田植機を提供できて田植機の普及に寄与できる。
【実施例2】
【0059】
実施例1において、制御装置51のローリング制御手段にて水平センサー64の出力電圧に応じて電動モータ60を正逆転制御して苗植装置25を水平に制御する例を示したが、電動モータ60を正逆転制御して作動させる時に、パルス制御して電動モータ60をパルス作動させる制御とすれば、電動モータ60に連続通電して作動させる場合よりも正確なローリング制御が行える。一方、苗載台30に載置された苗は苗植付け作業が進むにつれて減少し、苗植装置25の重量が変動する。そして、苗植装置25の重量が変動すれば、電動モータ60の作動によるローリング制御の状態が苗量によってばらついてしまい適正に行えなくなる場合がある。そこで、電動モータ60をパルス制御する際のパルスオンタイムを苗載台30に載置された苗が所定量以上の場合と減少して少なくなった場合とで変更してやれば、苗植装置25の重量に応じた適正なローリング制御が行える。
【0060】
即ち、苗載台30の苗検出センサ34が苗減少を検出しない場合には、通常のパルスオンタイムにて電動モータ60を作動させ、苗検出センサ34が苗減少を検出した場合には、通常よりも短いパルスオンタイムにて電動モータ60を作動させると、苗植装置25の重量に応じた適正なローリング制御が行えて、良好な田植作業ができる。
【実施例3】
【0061】
実施例1において、制御装置51のローリング制御手段にて水平センサー64の出力電圧に応じて電動モータ60を正逆転制御して苗植装置25を水平に制御する例を示したが、田植作業時の苗載台30の左右往復移動により、苗植装置25の左右重量バランスは周期的に変動するので、この苗載台30の左右往復移動を勘案して前以てローリング補正制御してやると、ローリング制御が良好に安定して行える。
【0062】
即ち、苗載台30の左右往復移動量を検出するストロークセンサを設けて、該ストロークセンサの検出値を制御装置51に入力して苗載台30の左右位置を判断し、その位置に応じてローリング制御手段にて規程値だけ電動モータ60を作動させてローリング補正する。そして、ローリング補正後に水平センサー64の出力値Bにて苗植装置25が水平に補正されているかどうかを判断して、補正量が大きい場合には前記規定値を小さくしてローリング補正量が小さくなるように変更し、逆に、補正量が小さい場合には前記規定値を大きくしてローリング補正量が大きくなるように変更する。具体的に説明すると、例えば、苗載台30が中央位置から右側に距離Aだけ移動した位置にある場合は、その距離Aに対して決められた規定値だけ苗植装置25の右側が上がる方向に電動モータ60を作動させる。そして、ローリング補正後に水平センサー64の出力値Bにて苗植装置25が水平に補正されているかどうかを判断して、右側が上がり過ぎている場合には前記規定値を小さくしてローリング補正量が小さくなるように変更し、逆に、まだ右側が水平に対して下がっている場合には前記規定値を大きくしてローリング補正量が大きくなるように変更する。
【0063】
このように、ローリング補正すると、苗載台30に載置された苗量が変化しても、常に適正量だけ苗載台30の左右往復移動に対して前以てローリング補正制御できて、ローリング制御が良好に安定して行える。
【実施例4】
【0064】
苗植付け具31…が適正に作動していないことを検出する他の例を説明する。
苗植付け具31…は、縦伝動ケース72の後端部に装着され、駆動力にてその回転ケース31aが回転し、回転ケース31aの両端に装着した苗植え具31b・31bの植付け爪31c・31cが苗載台30に載置された苗から1株分づつ苗を取り出して圃場に植付ける。その際、植付け爪31cの下側には苗押出し体31dが上下動する構成で装着されていて、植付け爪31cが苗載台30に載置された苗から1株分苗を取り出す直前は上動した位置にあり、苗を取り出して圃場に苗を植付ける時に下動して苗を泥面中に押し込んで植付ける構成となっている。
【0065】
そこで、図12に示すように、植付け爪31cが苗載台30に載置された苗から1株分苗を取り出す直前の苗押出し体31dが上動した位置にあるタイミングの位置に7つの苗植付け具31…の外側から貫通して赤外線が通るように赤外線センサS1を配置すると共に、その植付け爪31cが苗載台30に載置された苗から1株分苗を取り出す直前の苗押出し体31dが上動した位置にあるタイミング毎に赤外線を発して検出するように構成する。
【0066】
すると、7つの苗植付け具31…が同位相で適正に作動し、且つ、苗押出し体31dが適正に上動した位置にあれば、赤外線センサS1は何も検出しないので、その時は7つの苗植付け具31…が適正に作動していると制御装置51で判断する。
【0067】
逆に、7つの苗植付け具31…が何らかの要因で不規則に作動して回転位相が異なった場合や苗押出し体31dが石を噛み込んだりして下動したままであったりした場合には、赤外線センサS1の赤外線は遮断されて異常を検出する。その時は、警報ブザーを鳴らしたり警報ランプを点灯させて操縦者に異常を報知する。操縦者は、該異常の報知により、苗植付け具31…が適正に作動していないことを認識して、即座に、田植作業を中止して異常部を点検し、正常状態にしてから再び田植作業を再開することができるので、連続欠株の発生や苗の植付け姿勢の乱れ等が未然に防止できて、効率よく良好な田植作業が行える。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、上記実施例の施肥装置付き乗用型田植機以外に、乗用型野菜移植機や乗用型イ草移植機等の色々な施肥装置付き乗用型苗植機に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。(実施例1)
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。(実施例1)
【図3】植付装置の正面図である。(実施例1)
【図4】制御系のブロック回路図である。(実施例1)
【図5】ローリング作動機構部の拡大背面図である。(実施例1)
【図6】ローリング作動機構部の拡大側面図である。(実施例1)
【図7】要部の説明用平面図である。(実施例1)
【図8】水平センサーの出力値を示すグラフである。(実施例1)
【図9】苗植付け具の作動を報知するフローチャート図である。(実施例1)
【図10】ローリング制御のフローチャート図である。(実施例2)
【図11】ローリング制御のフローチャート図である。(実施例3)
【図12】苗植付け具を側方から見た作用説明図である。(実施例4)
【図13】左右線引きマーカの作動説明用図である。(実施例1)
【図14】左右線引きマーカの作動説明用拡大図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0070】
1 乗用型走行車体
23 昇降リンク機構
25 奇数条植え(7条植え)苗植装置
29 植付伝動ケース
31 苗植付け具
40 施肥装置
42 肥料繰出装置
43a 施肥パイプ
43b 施肥パイプ
43c 施肥パイプ
43d 施肥パイプ
43e 施肥パイプ
43f 施肥パイプ
43g 施肥パイプ
44 作溝器
72 縦伝動ケース
73a 左連結筒体
73b 中央連結筒体
73c 右連結筒体
74 連結ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用型走行車体1に昇降リンク機構23を介して昇降自在に奇数条植え苗植装置25を装着し、施肥装置40の肥料繰出装置42から繰出された肥料を作溝器44まで案内する施肥パイプ43a・43b・43c・43d・43e・43f・43gを設けた施肥装置付き乗用型苗植機において、苗植装置25の植付伝動ケース29の左右中央部前側に昇降リンク機構23後端部に苗植装置25を装着する空間部を有する連結ブラケット74を設け、該連結ブラケット74の空間部に左右中央の苗植付け具31に対応する作溝器44に肥料を案内する施肥パイプ43dを貫通して配置したことを特徴とする施肥装置付き乗用型苗植機。
【請求項2】
苗植装置25の植付伝動ケース29は並列して配置され後部に苗植付け具31が装着された4つの縦伝動ケース72と該4つの縦伝動ケース72を連結する3つの左連結筒体73a・中央連結筒体73b・右連結筒体73cで構成すると共に、該植付伝動ケース29の左右中央部に位置する2つの縦伝動ケース72と該左右中央部に位置する2つの縦伝動ケース72を連結する中央連結筒体73bとの連結部に連結ブラケット74の基部を挟んで一体に固定したことを特徴とする請求項1記載の施肥装置付き乗用型苗植機。
【請求項3】
連結ブラケット74は平面視でコ字状に形成され、該連結ブラケット74と中央連結筒体73bとで形成された空間部に左右中央の苗植付け具31に対応する作溝器44に肥料を案内する施肥パイプ43dを貫通して配置したことを特徴とする請求項2記載の施肥装置付き乗用型苗植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−67817(P2006−67817A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252017(P2004−252017)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】