説明

水平多関節ロボット

【課題】水平多関節ロボットにおいて、高温基板搬送時の熱影響によるアームの姿勢変化を最小限に抑え、高精度な搬送を維持できるようにする。
【解決手段】ベルト111の張力を調整可能なテンション調整機構を有する水平多関節ロボットにおいて、テンション調整機構が、ベルト111に接触して張力を与えるアイドラ131と、アイドラ131を支持するとともにアームに対して第1支点119で回転可能に設けられたリンク118と、アームに対して第2支点117で回転可能に設けられ、リンク118の一部に接触するローラと、を備え、アームの温度上昇に伴って第1支点119と第2支点117とが離れると、リンク118がローラ117に接触しながら第1支点119で回転して張力を軽減するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体および液晶の製造装置に使用され、ウェハ、液晶ガラス基板などの高温の基板をハンドに搭載して搬送する水平多関節のロボットにおいて、特にベルトとプーリによる動力伝達によってアームが動作するもので、基板や装置内機器からの輻射熱によるアームの変形や姿勢変化を極力小さくして基板を高精度に搬送できる構成に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶の製造装置(以下、単に製造装置と記載する)において、半導体ウェハや液晶といった基板を搬送する際、一般的に水平多関節形の搬送ロボットが使用されている。水平多関節形のロボットは、互いに水平面において回転可能に連結された複数のアームと、これらアームを回転駆動させる駆動部と、最先端のアームに連結され、基板を搭載可能なハンドと、から構成され、駆動部によってアームを回転させることによってハンドを旋回・伸縮動作させ、ハンド上の基板を所望の位置へと搬送する。ハンドやアームを回転させるための駆動部からの回転力は、アーム内に収容されたベルトとプーリとによって伝達される。ところがプーリに巻装されたベルトにはある程度の適切な張力(テンション)が必要であり、この張力が適切でないと、基板の搬送精度を低下させたり、基板搬送ロボットの故障を引き起こしたりする。そこで、ベルトの張力を適切に調整するために、様々なテンション調整機構が開発されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特に特許文献1の図3で示されるテンション調整機構は、一般的に広く使用されているので、このテンション調整機構について図5にて説明する。図5は従来の水平多関節ロボットの構成を示している。(a)が上面図、(b)がその側面図を示している。
図5において、駆動部1はケーシング状に形成された駆動部で、複数のアームを回転駆動させる部分である。駆動部1の内部には図示しない回転型モータが配置されていて、各アームを回転駆動する。第1アーム100は基端が駆動部1の上面で水平面において回転可能に支持されたアームである。第1アーム100の先端上面には第2アーム200の基端が水平面において回転可能に支持されている。第2アーム200の先端上面には第3アーム300が水平面において回転可能に支持されている。そして、第3アーム300には基板500を搭載可能なハンド400が固定されている。ハンド400は第3アーム300の回転中心に対して180°対称な位置に同様な形状の2つのハンド(第1ハンド400aと第2ハンド400b)から構成されていて、その2つのハンドそれぞれで基板500を搭載可能になっている。
【0004】
図6(a)は、図5における第1アーム100の内部構成を示す上面図である。ここでは第1アーム100を示すものとして説明するが、第2アーム200も同様な内部構成を有している。図のように第1アーム100の筐体はケーシング状に形成されている(第1アームケース101)。その内部に駆動力伝達のための伝達機構が収容されている。伝達機構はベルトとプーリによるものや、ギヤによるものが知られている。ここではベルトとプーリによるものを示している。第1アームケース101の上面には、伝達機構から発生する粉塵の飛散を抑えたり、伝達機構そのものを保護したりするため、伝達機構を覆うように薄板状のカバーが設けられている(第1アームカバー114)。第1アームカバー114は、第1アームケース101の上面を隙間無く覆うように薄板状に形成されている。
【0005】
図6(b)はベルト24に適切な張力を与えるためのテンション調整機構の側面の断面図である。ベルト24の表面或いは裏面に当接するのがテンションプーリ23である。ベルト24は第1プーリ21と第2プーリ22とに巻装されていて、第1プーリ21の回転力を第2プーリ22に伝達する。テンションプーリ23は支柱軸43にベアリングなどで回転可能に支持されている。支柱軸43は固定ベース41に固定されている。固定ベース41は第1アームケース101の内部にネジ等によって固定されるが、このとき、固定ベース41に形成されている長孔によって固定ベース41の第1アームケース101に対する位置が調整され、テンションプーリ23のベルト24への押し付け量が調整されて、ベルト24が所定の張力となるように固定される。
【0006】
以上で説明したアームの構成と伝達機構により、水平多関節ロボットは、第1アーム100を所定量回動させ、第2アーム200もその所定量だけ第1アーム100の先端上で回動させ、第3アーム300もその所定量だけ第2アーム200の先端上で回動させて、第3アーム300を第1アーム100の回転中心から放射状の方向で伸縮させる。また、第1アーム100、第2アーム200、を同方向に同時に回転させることによって各アームの相対的な姿勢を維持させながら、第1アーム100の回転中心にて第3アーム300及び基板500を旋回させる。つまり、これら伸縮動作と旋回動作とによってハンド400上の基板500を所望の位置へと搬送する。
【特許文献1】特開2002−266962号公報(図1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、昨今の製造装置では、製造過程において基板を数百度(500〜600℃)に加熱する処理が行われることがあり、水平多関節ロボットがこのような高温基板を搬送することが多くなってきている。特に基板温度を数百度に上昇させる工程は、減圧状態にした真空チャンバ内で施されることが多いため、水平多関節ロボットは真空チャンバ内に設置されて高温基板を搬送することになる。基板を直接搭載するハンド400は、他の部品に比して単純な平板状の形であるため、セラミックスなどで形成可能であり、高温基板が直接搭載されてもハンド400自身は温度上さほど問題はなく、また、熱伝導率も比較的低いため、第1アーム100、第2アーム200へ基板の熱を急激に伝達させることもない。一方、第1アーム100、第2アーム200の筐体(ケース)を形成する母材は、内部に伝達機構などを収納するため、複雑な形状を余儀なくされており、そのためアルミニウム(またはアルミニウム合金)が主に使用されており、熱によって変形しやすいものとなっている。
【0008】
このような状況で高温基板を搬送する際に、第1アーム100や第2アーム200が高温基板や基板を加熱する設備(ヒータ等)からの輻射熱によって急激に膨張しようとするが、内部の伝達機構であるベルトは第1アーム100や第2アーム200の筐体のように急激に温度はあがらず、筐体の熱膨張を拘束することになる。筐体とベルトの温度上昇カーブの差、また熱膨張量の差によりアームが変形するだけでなく、ベルト張力も上昇してしまう問題が発生するようになってきた。
水平多関節ロボットは、上述した伸縮動作の過程で基板500を加熱するヒータ600に第2アームが接近する。すなわち、例えば図1のような停止姿勢を形成することが多く発生し、ハンド400に搭載された高温の基板500が、第2アーム200の上面と非常に近接した状態となる姿勢を形成する。このような姿勢においては、特に第2アーム200の上面が高温基板の輻射熱を強く受け、第2アーム200先端部、第3アーム300、及びハンド400がヒータ600からの輻射熱を受ける。その結果、第2アーム200は急激に加熱されることになり熱膨張する。
そして、その状態からアームは縮小する姿勢(図示せず)になり、第1アーム100の上に第2アーム200が重なる姿勢となる。このとき、第1アーム100は第2アーム200からの輻射熱を受ける。
これらの姿勢において各アームケースは加熱され膨張しようとするが、伝達機構であるベルトの温度はまだアームケースより低く膨張量も少ないため、膨張しようとするアームケースがベルトにより拘束されることになり、アームケースが変形し、アーム姿勢が大きく乱れる。この結果、基板の搬送精度は悪化し、さらにアームケース内のベルトの張力が使用可能範囲上限もしくは超えるまで上昇し、ベルト寿命が短くなる。
アームケースとベルトの熱膨張差によるアームケースの変形やベルト張力上昇を抑えるには、アームケースの材質をハンドに用いたセラミックスのように比較的熱膨張係数の小さな材質にすることも考えられるが、セラミックスは高価であり、割れやすい(脆い)特性を有している。特に、メンテナンスにおいて頻繁に開閉されるアームのカバーにセラミックスのような脆い材質を使うと、作業時において割れやすいという問題が発生する。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、高温基板、ヒータの輻射熱を受けてもアームを極力変形させることなく、常温基板を搬送している場合に近いアーム姿勢を維持しながら、ベルト張力の上昇も抑え、高精度な基板搬送を実現することができる水平多関節ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、第1プーリの回転力をベルトによって第2プーリに伝達して回動するアームを備え、前記ベルトの張力を調整可能なテンション調整機構を有する水平多関節ロボットにおいて、前記テンション調整機構が、前記ベルトに接触して前記ベルトに張力を与えるアイドラと、前記アイドラを支持するとともに前記アームに対して第1支点で回転可能に設けられたリンクと、前記アームに対して第2支点で回転可能に設けられ、前記リンクの一部に接触するローラと、を備え、前記アームの温度上昇に伴って前記第1支点と前記第2支点とが離れると、前記リンクが前記ローラに接触しながら前記第1支点で回転して前記張力を軽減することを特徴とする水平多関節ロボットとするものである。
請求項2に記載の発明は、前記アイドラが、ベースを介して前記リンクに支持され、前記ローラが前記ベースに接触するよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の水平多関節ロボットとするものである。
請求項3に記載の発明は、前記第1支点が前記ベルトの内側であって前記第1プーリの近傍に配置され、前記第2支点が前記ベルトの内側であって前記第2プーリの近傍に配置され、前記リンクが前記第1及び第2プーリの回転軸を結ぶ直線上に配置されるよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の水平多関節ロボットとするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の水平多関節ロボットを備えたことを特徴とする半導体製造装置とするものである。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明によると、高温基板やヒータからの輻射熱によりアームケースの急激な熱膨張が発生しても、アーム内部の伝達機構のベルト張力変化を極力抑えることができる。従って、アームの姿勢変化を極力抑えることができ、高精度で基板搬送を行える水平多関節ロボットを構成することができる。
特に請求項2に記載の発明によると、アイドラがベースを介してリンクに支持されているので、ベースのリンクに対する固定位置を調整することで、様々な環境温度に対して簡単に張力の調節ができるようになる。
特に請求項3に記載の発明によると、第1支点と第2支点の距離を長く確保できるので、温度上昇に伴う第1支点と第2支点の間の距離の変化が顕著に発生し、これを張力の調整に反映できる。また、アーム先端となる第1あるいは第2プーリの近傍に第1あるいは第2支点を設置すると、温度上昇に伴うアームケースの初期伸びを張力調整に反映できる。
特に請求項4に記載の発明によると、製造過程において基板を高温に加熱する処理を有する製造装置であっても、アームが故障することなく、また、搬送精度が低下することがない製造装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の水平多関節ロボットの上面図を示している。また図4は、図1のアーム部の側断面図を示している。
図1および図4において、100は駆動部1により回転する第1アーム100である。第1アーム100はケース状に形成された第1アームケース101と、その内部に収容されている第1ベルト111、第1プーリ112、第2プーリ113と、そして第1アームカバー114とから構成されている。第1アームケース101の基端側下面が駆動部1の第1駆動軸1aと接続されていて、第1駆動軸1aの回転によって第1アームケース101は回転する。第1アームケース101の基端側内部において第1プーリ112が第2駆動軸1bと接続されていて、第1プーリ112は第2駆動軸1bの回転によって回転する。第1アームケース101の先端側内部には第2プーリ113が第1アームケース101に対して回転可能に設けられている。第2プーリ113と第1プーリ112との間には第1ベルト111が巻装されていて、第2駆動軸1bの回転力が伝達されている。これら第1プーリ112、第1ベルト111、第2プーリ113を覆うように第1アームカバー114が第1アームケース101に対して固定されている。
第2アーム200はケース状に形成された第2アームケース201と、その内部に収容されている第3プーリ212、第2ベルト211、第4プーリ213と、そして第2アームカバー214とから構成されている。第2アームケース201の基端側下面が第2プーリ113と接続されていて、第2プーリ113の回転に伴って第2アームケース201が回転する。第2アームケース201の基端側内部には、第3プーリ212が第1アームケース101から立設された固定シャフトに固定されている。第2アームケース201の先端側内部には第4プーリ213が第2アームケース201に対して回転可能に設けられている。第3プーリ212と第4プーリ213との間には第2ベルト211が巻装されている。これら第3プーリ212、第2ベルト211、第4プーリ213を覆うように第2アームカバー214が第2アームケース201に対して固定されている。
第4プーリ213の上部には第3アーム300が固定されていて、第3アーム300にはハンド400が固定されている。ハンド400は従来技術で説明したような第1ハンド400aと第2ハンド400bとから構成されているものが固定されている。
そして、図1および図4では図示しないが、第1ベルト111と第2ベルト211のそれぞれに張力を与えるテンション調整機構が設けられている。本発明では、アームケースの熱膨張によるベルト張力の上昇を抑制するようなテンション調整機構が設置されている。
【0013】
以下、特にテンション調整機構について、第1アームのテンション調整機構を例にして説明する。図2は本発明の水平多関節ロボットの第1アームケース101内の上面図を示している。図2のように、第1アームのテンション調整機構として、第1アームケース101内の底面に設けた支柱119を中心に回転自在に取り付けられたリンク118に、アイドラ131が組みつけられた可動アイドラ115と、固定アイドラ116とが設けられ、ベルトの張力を調整している。固定アイドラ116は、従来技術として説明したアイドラと同等の構成である。なお、第1アームケース101内部では、第1ベルト111の張力調整用として、可動アイドラ115、固定アイドラ116がそれぞれ1個ずつ設置されているが、可動アイドラ115が1個のみ、あるいは可動アイドラ115が複数で設置されることもある。
【0014】
次に、可動アイドラ115の構成について図3および図7を使って説明する。図3は図2における可動アイドラ115の要部拡大図であり、図7はその斜視図である。
支柱119は第2プーリ113の近くに立設されて、軸受120の内周部を支持している。軸受120の外周部はホルダ130によって保持されている。ホルダ130には板状のリンク118の一端が固定用ボルト穴124を介して固定ボルト121によって固定されている。よって、リンク118は第1アームケース101に対して回転自在になっている。リンク118は第1アームケース101の延在する方向、つまり第1プーリ112の回転軸と第2プーリ113の回転軸とを結ぶ線の方向に延在するよう配置されている。固定用ボルト穴124は長穴形状となっていて、リンク118を第1プーリ112の回転軸と第2プーリ113の回転軸とを結ぶ方向に若干量その位置を調整可能にしている。
リンク118は、一体成形例えば板金加工で構成しても良いし、数部品に分割し形状を単純化し構成しても良い。また、リンク118への第1アームケース101からの輻射熱の影響が少なくなるように、アームケース内部の底面から距離をとることにより本発明の効果はより発揮される。また、リンク118の材質はアームケース材質と同じでも良いが、アームケースより熱膨張率が小さい材質、例えばアームケースは一般的にアルミニウムが使用されるため、リンク118材質には、ステンレス、セラミックス、チタン等のように熱膨張率が小さい材質を使用しても良い。
リンク118の他端には、ベルト111の内周面に当接するアイドラ131を回転可能に支持するベース132の一端が固定されている。アイドラ131はベアリングなどでベース132の他端に対して回転可能に支持されている。ベース132はリンク118と同様に板状に形成されていて、第1プーリ112の回転軸と第2プーリ113の回転軸とを結ぶ線をほぼ横切る方向に延在するよう設けられる。ただし、ベース132は、第1プーリ112の回転軸と第2プーリ113の回転軸とを結ぶ線の方向と垂直に交わる方向に対して、図3で示すような角度αがつけられてリンク118に固定されている。
ベース132の近傍には、ローラ117が設けられている。ローラ117は第1アームケース101から立設した支柱によって回転可能に支持されていて、ローラ117の外周がベース132の側面である接触面122と接触している。つまり、ローラ117は接触面122と接触することによって、ベルト111からの抗力に対向してリンク118の回転位置を保持している。
【0015】
以上で構成された本発明のテンション調整機構によって、ベルト111の初期張力設定は次のように実施する。まず、固定アイドラ116をアームケース101内に固定する。次に、固定ボルト121を緩めた状態でアイドラ131にてベルト111を張り、かつベース112の接触面122がローラ117と接触した状態となるようにして固定ボルト121を締付け固定する。このとき、アイドラ131はベルト111から抗力を受け、支柱119を回転中心として図の時計回りに回転しようとするが、角度αの状態となっている接触面122とローラ117との接触による抗力とつりあってベルト111を所望の張力で維持している。角度αは、アームケース101の膨張量とリンク118の膨張量、及び温度変化時のベルト張力上昇傾向から適度な角度αを算出する。本実施例ではリンク118にベース132を介してアイドラ131を支持しているので、ベース132をリンク118に対して所望の角度αをつけて固定することが可能である。この場合、使用環境温度が異なる場合にもこの角度αを変化させることで対応することができる。しかし、使用環境温度が一定で、予めわかっている場合などは、リンク118自体に予め角度αの接触面122を設けていても良い。
【0016】
ここで、水平多関節ロボットの使用中にアームケースが高温状態になると、第1プーリ112の回転軸と第2プーリ113の回転軸とが離れるようにアームケースが熱膨張を始める。このとき同時に、熱膨張により支柱119(第1の支点)とローラ117(第2の支点)の軸間が離れる方向に変化する。その際、接触面122とローラ117との接触点123が離れようとするが、リンク118はベルト111の張力により図3中a方向へ押されているため、傾斜面である接触面122をローラ117が転がりながら、アームケース膨張量に見合ったところまでリンク118が回転移動する。従って、ベルト111は、その初期張力から増大することがない。
【0017】
なお、支柱119の位置が第2プーリ113の近くに立設されているのは、この部分、つまりアームの先端が最初に熱膨張しやすいことを利用するためである。つまり、アームの先端は、高温のヒータ600に接近するとともに、高温の基板500からの熱伝導が伝わりやすい位置であるため、アームケースにおいて最も早く熱膨張が起こりやすい。従って、支柱119を第2プーリ113の近くに立設することによって、熱膨張の初期段階から支柱119とローラ117の軸間が離れるようにしてベルト111の過度な張力を軽減している。
また、熱膨張による支柱119とローラ117の軸間が離れる効果を有効に利用するために、支柱119とローラ117の軸間はできるだけ長く確保したほうが望ましい。軸間距離が長ければ熱膨張による軸間距離の増大が顕著に現れるからである。本発明ではリンク118をベルト111の内周に配置し、かつ第1プーリ112の回転軸と第2プーリ113の回転軸とを結ぶ線上の近傍に配置してリンク118の長さを確保し、支柱119とローラ117の軸間が顕著に離れるようにしてベルト111の過度な張力を軽減している。
【0018】
このように本発明では、輻射熱の影響を特に受けるアームケース内にアームケースの熱膨張に併せて可動するアイドラを設けることにより、輻射熱で高温になったアームケースが膨張しても可動アイドラが移動することでベルトの張力が上昇するのを防ぎ、これによりアームの変形を極力抑えることができる。従って、アーム変形によるアーム姿勢変化を最小限に抑えることが可能で、高精度な搬送を実現できる。
本発明では特に輻射熱の影響を受けるアームケース101内の膨張量が大きい部分に支柱119を設置し、膨張量に併せて位置が変化する可動アイドラ115を設けることにより、熱膨張によるベルト張力の上昇、アームの変形、姿勢変化を抑制し、アームケースを熱膨張係数が小さなセラミックスやチタン等の高価な材質を使用しなくても安価なアルミニウム(またはアルミニウム合金)で構成することができる。
【0019】
なお、上記の伝達機構の形態、アームの数、適用箇所は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。例えばアームの数については、上記第2アームと上記第3アームとの間に第2アームと同様なアームをさらに備えたもので、その追加したアーム内にベルトのテンション調整機構が必要な場合には適用してもよい。
また、例えば可動アイドラの適用箇所は、搬送ロボットのアームケース内全てに適用しても良いし、限定的に一部で適用しても良い。また、アームケース内に複数の可動アイドラを適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の水平多関節ロボットを示す上面図
【図2】本発明の水平多関節ロボットの第1アーム内部を示す上面図
【図3】本発明の可動アイドラを示す上面図
【図4】本発明の水平多関節ロボットのアーム部分の側断面図
【図5】従来の水平多関節ロボットを示す図
【図6】従来の水平多関節ロボットのアーム内部を示す図
【図7】本発明の可動アイドラを示す斜視図
【符号の説明】
【0021】
1 駆動部
1a 第1駆動軸
1b 第2駆動軸

100 第1アーム
101 第1アームケース
111 第1ベルト
112 第1プーリ
113 第2プーリ
114 第1アームカバー
115 可動アイドラ
116 固定アイドラ
117 ローラ
118 リンク
119 支柱
120 軸受
121 固定ボルト
122 接触面
123 接触点
124 固定用ボルト穴

130 ホルダ
131 アイドラ
132 ベース

200 第2アーム
201 第2アームケース
211 第2ベルト
212 第3プーリ
213 第4プーリ
214 第2アームカバー

300 第3アーム

400 ハンド
400a 第1ハンド
400b 第2ハンド

500 基板

600 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プーリの回転力をベルトによって第2プーリに伝達して回動するアームを備え、前記ベルトの張力を調整可能なテンション調整機構を有する水平多関節ロボットにおいて、
前記テンション調整機構が、
前記ベルトに接触して前記ベルトに張力を与えるアイドラと、
前記アイドラを支持するとともに前記アームに対して第1支点で回転可能に設けられたリンクと、
前記アームに対して第2支点で回転可能に設けられ、前記リンクの一部に接触するローラと、を備え、
前記アームの温度上昇に伴って前記第1支点と前記第2支点とが離れると、前記リンクが前記ローラに接触しながら前記第1支点で回転して前記張力を軽減することを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項2】
前記アイドラが、ベースを介して前記リンクに支持され、前記ローラが前記ベースに接触するよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の水平多関節ロボット。
【請求項3】
前記第1支点が前記ベルトの内側であって前記第1プーリの近傍に配置され、
前記第2支点が前記ベルトの内側であって前記第2プーリの近傍に配置され、
前記リンクが前記第1及び第2プーリの回転軸を結ぶ直線上に配置されるよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の水平多関節ロボット。
【請求項4】
請求項1記載の水平多関節ロボットを備えたことを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−69569(P2010−69569A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239550(P2008−239550)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】