説明

炭化ケイ素焼結体及びその製造方法

【課題】プラズマ耐性を高めることが可能な炭化ケイ素焼結体及び炭化ケイ素焼結体の製造方法を提供する。
【解決手段】炭化ケイ素焼結体50の製造方法は、平均粒径が0.5μm以上1.5μm以下である炭化ケイ素粉10及び分散剤30をスラリー化する第1工程と、第1工程によって得られたスラリー40を焼結し、焼結体50を得る第2工程とからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ケイ素焼結体及び炭化ケイ素焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、強度、耐熱、及び耐熱衝撃性が必要とされる炉治具などに用いられる炭化ケイ素焼結体が知られている。このような炭化ケイ素焼結体は、平均粒径が約2μmの炭化ケイ素粉をエタノールなどに投入してスラリー化し、得られたスラリーを造粒及び焼結して製造される(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−171652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の炭化ケイ素焼結体は、比較的大きな気孔ができてしまい、プラズマ耐性が高くないことから、プラズマに晒される、エッチング装置のサセプタなどに用いることができない。また、炭化ケイ素粉の平均粒径を約1μm程度の小さな粒径とし、焼結体に形成される気孔を小さくしてプラズマ耐性を高めようとしても、炭化ケイ素粉の平均粒径が約1μm程度に小さくなると、炭化ケイ素分がエタノールなどの溶媒に浮いてしまいスラリー化することができない。
【0004】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、プラズマ耐性を高めることが可能な炭化ケイ素焼結体及び炭化ケイ素焼結体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の炭化ケイ素焼結体の製造方法は、平均粒径が0.5μm以上1.5μm以下である炭化ケイ素粉及び分散剤をスラリー化する第1工程と、前記第1工程によって得られたスラリーを焼結し、焼結体を得る第2工程と、を有することを要旨とする。
【0006】
この炭化ケイ素焼結体の製造方法によれば、平均粒径が0.5μm以上1.5μm以下である炭化ケイ素粉のみならず、分散剤を含めてスラリー化するため、分散剤を含めない場合のように炭化ケイ素粉が浮かび上がらず、スラリーを得ることができる。このため、小さい平均粒径による焼結体を得ることができ、気孔を小さくしてプラズマ耐性を高めることができる。
【0007】
また、本発明の炭化ケイ素焼結体の製造方法において、第1工程では、ポリビニルピロリドン又はポリエチレンイミンを分散剤として用いることが好ましい。
【0008】
また、本発明の炭化ケイ素焼結体は、平均粒径が0.5μm以上1.5μm以下である炭化ケイ素粉及び分散剤をスラリー化し、得られたスラリーを焼結して得られる。
【0009】
この炭化ケイ素焼結体によれば、平均粒径が0.5μm以上1.5μm以下である炭化ケイ素粉のみならず、分散剤を含めてスラリー化して得られるため、分散剤を含めない場合のように炭化ケイ素粉が浮かび上がらず、スラリーを得ることができる。このため、小さい平均粒径による焼結体を得ることができ、気孔を小さくしてプラズマ耐性を高めることができる。
【0010】
このような構成とすることにより、上記炭化ケイ素焼結体を、プラズマエッチング装置の電極保護材やチャンバ内の各種部材に用いることが可能となり、プラズマエッチング装置の耐久性を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の炭化ケイ素焼結体及び炭化ケイ素焼結体の製造方法によれば、プラズマ耐性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る炭化ケイ素焼結体およびその製造方法を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る炭化ケイ素焼結体の製造方法を示す工程図であり、図2は、比較例の炭化ケイ素焼結体の製造方法を示す工程図である。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係る炭化ケイ素焼結体の製造方法においては、まず、炭化ケイ素粉10、エタノール20及び分散剤30を用意する。炭化ケイ素粉10は、平均粒径が0.5μm以上1.5μm以下である。分散剤30は、ポリビニルピロリドン又はポリエチレンイミンである。なお、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone、略称PVP)はN-ビニル-2-ピロリドンの重合した高分子化合物である。また、ポリエチレンイミンは、水中下でポリカチオンとして存在し、あらゆるアニオン性物質を中和・吸着する性質を持つ。このような高カチオン性を利用して分散剤として用いることができる。
【0014】
そして、これら炭化ケイ素粉10及び分散剤30をエタノール20に投入し、スラリー化する。これにより、スラリー40を得る(第1工程)。そして、スラリー40を造粒して造粒粉を得た後に、造粒粉を温度2300℃、圧縮荷重400kgf/cm2の条件で焼結させる(第2工程)。これにより、本実施の形態に係る炭化ケイ素焼結体50を製造することができる。
【0015】
一方、図2に示すように、比較例に係る炭化ケイ素焼結体の製造方法において、製造者は、まず、炭化ケイ素粉110、エタノール120を用意する。比較例の炭化ケイ素粉110は、平均粒径が約2μmである。
【0016】
そして、これら炭化ケイ素粉110をエタノール120に投入し、スラリー化する。これにより、スラリー140を得る。そして、スラリー140を造粒して造粒粉を得た後に、造粒粉を温度2300℃、圧縮荷重400kgf/cm2の条件で焼結させる。比較例では、このようにして炭化ケイ素焼結体150を製造した。
【0017】
図3は、本実施の形態に係る炭化ケイ素焼結体の拡大図であり、図4は、比較例の炭化ケイ素焼結体の拡大図である。図3に示すように、本実施の形態に係る炭化ケイ素焼結体50は、炭化ケイ素粉10の平均粒径が小さいため、組織51が小さく、気孔52も微細となる。これにより、本実施の形態に係る炭化ケイ素焼結体50はプラズマ耐性が強くなっている。
【0018】
例えば、炭化ケイ素粉10の粒径を1μmとし、ポリビニルピロリドンを分散剤30として用い、分散剤30を3重量%だけ添加した炭化ケイ素焼結体50は、プラズマ条件を、ガス流量CF4/O2=100/100sccm、出力500W、圧力50Paとした場合、プラズマによる損耗量が100〜200μg/cm2となる。このように、本実施の形態では、小さい粒径の炭化ケイ素粉10によって作製された焼結体50を得ることで、気孔52を小さくし、プラズマ耐性を高めることができる。
【0019】
一方、図4に示すように、比較例に係る炭化ケイ素焼結体150は、組織151が大きく、気孔152も大きくなってしまう。これにより、炭化ケイ素焼結体150のプラズマに晒される表面積は大きくなり、炭化ケイ素焼結体150のプラズマ耐性は弱くなってしまう。
【0020】
例えば、炭化ケイ素粉110の粒径を2μmとし、炭化ケイ素焼結体150は、プラズマ条件を、ガス流量CF4/O2=100/100sccm、出力500W、圧力50Paとした場合、プラズマによる損耗量が250〜500μg/cm2となる。このように、従来では、大きい粒径の炭化ケイ素粉110によって作製された焼結体150を得てしまうこととなり、気孔152が大きくなって、プラズマ耐性が低くなってしまう。
【0021】
ここで、分散剤30を投入せずに、炭化ケイ素粉の平均粒径を小さくした場合を例に説明する。図5は、炭化ケイ素焼結体の他の製造方法を示す工程図である。図5に示すように、まず、炭化ケイ素粉210、及びエタノール220を用意する。炭化ケイ素粉210は、平均粒径が1μmである。
【0022】
そして、このように平均粒径が小さい炭化ケイ素粉210をエタノール220に投入したとする。この場合、分散剤が投入されていないため、平均粒径が小さい炭化ケイ素粉210の一部が浮いてしまい、スラリーを製造することができない。このため、単純に平均粒径を小さくしただけでは、気孔を小さくしてプラズマ耐性を高めることができない。
【0023】
なお、本実施の形態に係る炭化ケイ素焼結体50はプラズマエッチング装置の電極保護用として用いられることが望ましい。これにより、プラズマ耐性が高い焼結体50を用いたプラズマエッチング装置を提供することができるからである。
【0024】
このようにして、本実施の形態に係る炭化ケイ素焼結体50及びその製造方法によれば、平均粒径が0.5μm以上1.5μm以下である炭化ケイ素粉10のみならず、分散剤30を含めてスラリー化するため、分散剤30を含めない場合のように炭化ケイ素粉10が浮かばず。スラリー40を得ることができる。このため、小さい平均粒径による焼結体50を得ることができ、焼結体の気孔52を小さくしてプラズマ耐性を高めることができる。
【0025】
また、上記炭化ケイ素焼結体50をプラズマエッチング装置の電極保護用として用いるため、プラズマ耐性が高い焼結体50を用いたプラズマエッチング装置を提供することができる。
【0026】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、上記実施の形態では、ポリビニルピロリドン又はポリエチレンイミンを分散剤30の一例として挙げたが、これに限らず、他のものであってもよい。
【0027】
また、上記実施の形態では、造粒粉を温度2300℃、圧縮荷重400kgf/cm2の条件で焼結させたが、これに限らず、他の条件で焼結を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る炭化ケイ素焼結体の製造方法を示す工程図である。
【図2】比較例の炭化ケイ素焼結体の製造方法を示す工程図である。
【図3】本実施の形態に係る炭化ケイ素焼結体の拡大図である。
【図4】比較例の炭化ケイ素焼結体の拡大図である。
【図5】炭化ケイ素焼結体の他の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0029】
10…炭化ケイ素粉、20…エタノール、30…分散剤、40…スラリー、50…炭化ケイ素焼結体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.5μm以上1.5μm以下である炭化ケイ素粉及び分散剤をスラリー化する第1工程と、
前記第1工程によって得られたスラリーを焼結し、焼結体を得る第2工程と、
を有することを特徴とする炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程では、ポリビニルピロリドン又はポリエチレンイミンを分散剤として用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素焼結体の製造方法。
【請求項3】
平均粒径が0.5μm以上1.5μm以下である炭化ケイ素粉及び分散剤をスラリー化し、得られたスラリーを焼結して得られる
ことを特徴とする炭化ケイ素焼結体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−126753(P2009−126753A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304557(P2007−304557)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】