説明

研磨装置及び研磨方法

【課題】シリコンウエハ等の被加工物に対して研磨残りが発生するのを防止すること。
【解決手段】研磨装置は、その表面に研磨パッドが装着された定盤と、上記の研磨パッドに対向する側の面に吸着面21Sを有するヘッド20を備える。さらにヘッド20は、真空吸着用の第1系統及び第2系統の各流路31(25)、32(26)と、各流路からそれぞれ吸着面21Sまで通じる複数の吸着孔33,34とを有する。さらに研磨装置は、第1系統及び第2系統の各流路31(25)、32(26)を選択的に切り替えて有効にする流路切替手段40,41,42を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハ等の平板状の被加工物に対してその表面をCMP(化学機械研磨)して平坦化を行うのに有用な研磨装置及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMP装置は、例えば、シリコンウエハの表面に形成された導体膜(例えば、銅めっき膜)をCMPにより平坦化して配線を形成する際に使用される。一例としてのCMPは、その表面に研磨パッドが装着された回転駆動される定盤(プラテン)に、ウエハを保持したヘッドを研磨パッドに対して押し当てることで、ウエハの表面を研磨する。
【0003】
ウエハを保持するための一つの手段として真空吸着が用いられている。これを実現するため、ヘッドの吸着面には複数の吸着孔が設けられており、各吸着孔は、真空系流路を介して真空ポンプに接続されている。
【0004】
比較的厚いウエハを研磨するときは、ヘッド本体の下面に装着されたバッキングパッドにウエハを「水貼り」することでヘッドに保持できるので、真空吸着を行わずに研磨を行うことができる。この場合、研磨の途中でウエハが飛び出すのを防止するために、ヘッド本体の下面の周縁部に取り付けられたリテーナが使用される。
【0005】
これに対し、比較的薄いウエハを研磨するときは、研磨の途中でリテーナにウエハのエッジ(周縁部)が当たってチッピングやウエハ割れ等の危険性がある。このため、リテーナを使用することができず、上記の真空吸着によってウエハをヘッドに吸着保持しながら研磨を行う必要がある。
【0006】
かかるCMPに関連する技術の一例は、下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−262756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように現状のCMP装置を使用して比較的薄いウエハを研磨(CMP)するときは、ヘッドの吸着面(複数の吸着孔が設けられている)にウエハを吸着させて研磨を行う必要がある。
【0009】
吸着を維持しながら研磨を行うと、例えば図6(b)に示すように、吸着孔付近のウエハの部分が吸着力に起因して凹む。このため、その吸着した箇所に研磨パッドの面が十分に当たらず、その箇所だけ満足に研磨することができないため、当該箇所に研磨残り(例えば、研磨の対象材料が銅配線であれば、銅の残渣)が発生する。つまり、ウエハの表面全体に亘って平坦化された均一な研磨加工を施すことができない。
【0010】
以上に鑑み、シリコンウエハ等の被加工物に対して研磨残りが発生するのを防止することができる研磨装置及び研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一観点によれば、その表面に研磨パッドが装着された定盤と、前記研磨パッドに対向する側の面に吸着面を有し、真空吸着用の第1系統及び第2系統の各流路を備えるとともに、前記各流路からそれぞれ前記吸着面まで通じる複数の吸着孔を有したヘッドと、前記第1系統及び第2系統の各流路を選択的に切り替えて有効にする流路切替手段とを備えたことを特徴とする研磨装置が提供される。
【0012】
他の観点によれば、上記の一観点に係る研磨装置を用いて平板状の被加工物の表面を研磨する方法であって、前記第1系統の流路を有効にして、該第1系統の流路に連通された複数の吸着孔を介して前記ヘッドの吸着面に前記被加工物を吸着保持し、この状態で、回転駆動される前記定盤上の前記研磨パッドに対して前記被加工物の表面を押し当てて研磨を行う第1工程と、前記第2系統の流路を有効にして、該第2系統の流路に連通された複数の吸着孔を介して前記ヘッドの吸着面に前記被加工物を吸着保持し、この状態で、回転駆動される前記定盤上の前記研磨パッドに対して前記被加工物の表面を押し当てて研磨を行う第2工程と、を含むことを特徴とする研磨方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
上記の一観点に係る研磨装置によれば、ヘッドの吸着面に設けられる複数の吸着孔を第1系統と第2系統の各流路に分けて配置し、各系統の流路を選択的に切り替えて有効にしている。これにより、第1系統で研磨を行ったときに当該吸着孔付近に研磨残りの部分が発生しても、次に第2系統で研磨を行ったときに、その研磨残りの部分を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係るCMP装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】図1のCMP装置に使用されるヘッドの断面構造をこれに係合する構成部材と共に示す図である。
【図3】図2においてヘッドをA−A線に沿って見たときの平面図である。
【図4】図1のCMP装置を使用して比較的薄いウエハを研磨する場合の方法の一例を示す工程図である。
【図5】図4に示す研磨処理を補足説明するための図である。
【図6】現状技術のCMP装置を使用して比較的薄いウエハを研磨した場合の問題点の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先ず、実施形態について説明する前に、その実施形態の理解を容易にするための予備的事項について、図6を参照しながら説明する。
【0016】
図6において(a)は現状技術のCMP装置に使用されるヘッドの断面構造の一例を示したものであり、(b)はこのヘッドを使用して比較的薄いウエハを吸着及び研磨した状態を模式的に示している。
【0017】
図6(a)に示すようにヘッド60は、ヘッド本体61、ケーシング62、軸部63等を備えている。ヘッド本体61の内部には、真空吸着の際の減圧排気経路となるチャンバ71が設けられている。さらに、真空吸着用のチャンバ71からヘッド本体61の下面まで貫通するように複数の吸着孔72が形成されている。また、ヘッド本体61の下面にはバッキングパッド64が装着されており、このバッキングパッド64には、ヘッド本体61に設けた複数の吸着孔72にそれぞれ対応する位置に、複数の吸着孔73が形成されている。研磨対象物であるウエハ1a(図6(b)参照)は、バッキングパッド64に形成された吸着孔73を介してヘッド本体61の下面に吸着されて保持される。
【0018】
ケーシング62の底部は開口されており、この開口部にヘッド本体61が保持されている。ヘッド本体61は、この開口部を気密に閉塞する。このケーシング62の上部の中央部に、軸部63が固定されている。
【0019】
この軸部63の内部には、真空吸着用のチューブ65と、エア導入用のチューブ66が設けられている。真空吸着用のチューブ65の一端は、軸部63内を貫通しケーシング62内を通してヘッド本体61内のチャンバ71に結合されており、これと反対側の他端は、ヘッド外部の真空ポンプに結合されている。
【0020】
エア導入用のチューブ66の一端は、軸部63内を貫通してケーシング62の上部の内壁面に開放されており、これと反対側の他端は、ヘッド外部のコンプレッサ(図示せず)に結合されている。このコンプレッサからエア導入用のチューブ66を介してケーシング62内に空気(エア)を充填することで、この空気圧によりヘッド本体61に適当な荷重をかけることができる。この荷重により、ヘッド本体61(バッキングパッド64)の下面に吸着保持されるウエハ1a(図6(b))は、回転駆動される定盤上に貼り付けられた研磨パッド(図示せず)に対して押し当てられ、その表面が研磨される。
【0021】
かかる構造を有したヘッド60(を備えたCMP装置)を用いて比較的薄いウエハの吸着を維持しながらCMPを行うと、吸着孔73付近のウエハ1aの部分(図6(b)において矢印Pで示す箇所)が吸着力に起因して凹む。このため、その吸着した箇所に研磨パッドの面が十分に当たらず、その箇所だけ満足にCMPすることができない。その結果、図6(b)に示すように吸着孔73付近の箇所に研磨残りRSが発生する。つまり、ウエハの表面全体に亘って平坦化された均一な研磨加工を施すことができない。
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0023】
図1は一実施形態に係るCMP(化学機械研磨)装置の全体構成を概略的に示したものである。また、図2はこのCMP装置に使用されるヘッドの断面構造をこれに係合する構成部材と共に示したものであり、図3は図2においてヘッドをA−A線に沿って平面的に見たときの構成を模式的に示している。
【0024】
先ず図1を参照すると、本実施形態のCMP装置50において、不織布等からなる研磨パッド10は、定盤11の平坦な表面に装着され、この定盤11は駆動軸12の上端に固定されて回転駆動される。定盤11上の研磨パッド10の上方には、研磨の対象物である平板状の被加工物(本実施形態では、比較的薄いウエハ1)を吸着保持するためのヘッド20が配置されている。このヘッド20の詳細については、後で説明する。
【0025】
ウエハ1は、バッキングパッド24(図2参照)を介してヘッド20の下面に吸着されて保持される。さらに、定盤11の上方には、研磨パッド10上に研磨剤(例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等)を供給するための研磨剤供給ノズル45、研磨パッド10の目詰まりを取り除くために使用されるドレッサ46等が配置されている。
【0026】
ウエハ1の表面の研磨は、定盤11を回転させる(必要に応じてヘッド20も回転させる)と共に、研磨剤供給ノズル45から研磨パッド10上に研磨剤を供給し、この状態で、ウエハ1の表面を研磨パッド10に対して押し当てることによって行われる。
【0027】
次に、ヘッド20の構成について説明する。
【0028】
図2に示すようにヘッド20は、ヘッド本体21、ケーシング22、軸部23等を備えている。ヘッド本体21は、2つの部材(基部21aと蓋部21b)が結合されてなり、その内部(基部21aと蓋部21bの結合部分)に、真空吸着の際の減圧排気経路となる2系統の流路31及び32が設けられている。便宜上、流路31の系統を「A系統」、流路32の系統を「B系統」と呼ぶことにする。
【0029】
ヘッド本体21を構成する基部21aの上面側には、図2、図3に示すように、2つの独立した溝が同心円状に形成されている。これらの溝によって、蓋部21bの下面との間に、A系統の流路31とB系統の流路32が同心円状に形成されている。基部21aに所要の2つの独立した溝を形成した後、この基部21aに蓋部21bを結合することによってヘッド本体21が構成される。
【0030】
さらに、真空吸着用の各流路31,32からヘッド本体21の下面(吸着面21S)まで貫通するように、A系統の流路31、B系統の流路32にそれぞれ対応させて複数の吸着孔33,34が形成されている。各流路31,32にそれぞれの一端が連通された各吸着孔33,34の他端は、ヘッド本体21の下面(吸着面21S)に開放されている。
【0031】
真空吸着用の各流路31,32は、図2に示すように同一平面上に形成されており、互いに独立して所要のパターン形状(図3の例では同心円状)に形成されている。各流路31,32は、各々のパターンがヘッド本体21の吸着面21Sの全体に亘って分布するように形成されている(図3)。好適には、各流路31,32にそれぞれ連通された複数の吸着孔33,34が当該流路上でほぼ等間隔に配置されるように、各々のパターンが形成されている。
【0032】
なお、図3に示す各流路31,32のパターン形状はあくまで一例であり、図示のパターン形状に限定されないことはもちろんである。
【0033】
また、各吸着孔33,34は、断面視したときに(図2参照)、各流路31,32に連通する側の直径と比べて吸着面21S側の直径の方が小さくなるように段差状に形成されている。各吸着孔33,34の各流路31,32に連通する側の部分(大径部分33a,34a)の直径を大きくしている理由は、その直径が小さいと目詰まりを起こして十分な減圧排気を行えない(真空吸着に支障をきたす)可能性があるからである。一方、各吸着孔33,34の吸着面21Sに通じる側の部分(小径部分33b,34b)の直径を小さくしている理由は、その直径が大きいと吸着力が強すぎてその部分でのウエハ(研磨対象物)の凹みが増大するからである。
【0034】
さらに、ヘッド本体21の下面にはバッキングパッド24が装着されており、このバッキングパッド24には、ヘッド本体21に設けられた複数の吸着孔33,34にそれぞれ対応する位置に、複数の吸着孔35,36が形成されている。研磨対象物であるウエハ1(図2参照)は、バッキングパッド24に形成された吸着孔35,36を介してヘッド本体21の下面(吸着面21S)に吸着されて保持される。
【0035】
ヘッド20の一部を構成するケーシング22は、その底部が開口されており、この開口部にヘッド本体21が保持されている。ヘッド本体21は、この開口部を気密に閉塞する。このケーシング22の上部の中央部に、軸部23が固定されている。
【0036】
この軸部23の内部には、2系統(A系統、B系統)の真空吸着用のチューブ25及び26と、エア導入用のチューブ27が設けられている。真空吸着用の各チューブ25,26の一端は、軸部23内を貫通しケーシング22内を通してヘッド本体21内の対応する流路31,32に結合されており、これと反対側の他端は、それぞれ個別の流路開閉弁41,42を介して、真空ポンプ40に結合されている。なお、43はウエハ脱離用の弁であり、真空ポンプ40と流路開閉弁41,42との間に介在している。この弁43は、ウエハ1に対して所望の研磨を終了した後、ヘッド20による吸着保持を解除する際に使用される。
【0037】
エア導入用のチューブ27の一端は、軸部23内を貫通してケーシング22の上部の内壁面に開放されており、これと反対側の他端は、ヘッド外部のコンプレッサ(図示せず)に結合されている。このコンプレッサからエア導入用のチューブ27を介してケーシング22内に空気(エア)を充填することで、この空気圧によりヘッド本体21に適当な荷重をかけることができる。この荷重により、ヘッド本体21(バッキングパッド24)の下面に吸着保持されるウエハ1(図1)は、回転駆動される定盤11上に装着された研磨パッド10に対して押し当てられ、その表面が研磨される。
【0038】
なお、ヘッド本体21の材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)が好適に用いられる。バッキングパッド24の材料としては、例えば、ポリウレタン(弾性体であり、機械的特性、耐候性、特に耐摩耗性に優れている)が好適に用いられる。また、ケーシング22及び軸部23の材料としては、プラスチック材が用いられる。
【0039】
また、図2には示していないが、ヘッド本体21の下面の周縁部に沿ってリテーナがリング状に装着されている。このリテーナは、前述したように比較的厚いウエハを研磨する際にウエハが飛び出すのを防止するのに使用される。本実施形態のように比較的薄いウエハ1を研磨する際には、このリテーナは、研磨パッド10が当たらない位置に適宜退避させている。
【0040】
次に、本実施形態のCMP装置50(図1〜図3)を使用して比較的薄いウエハを研磨する場合の方法について、その一例を示す図4とともに、図5も併せて参照しながら説明する。
【0041】
先ず、研磨する対象物である比較的薄いウエハ1(例えば、200μm以下)を用意する。本実施形態では、その一例として図5(a)、(b)に例示するように、デュアルダマシン法によりシリコンウエハ上に銅(Cu)配線パターンを形成する場合を例にとって説明する。
【0042】
デュアルダマシン法によるCu配線形成では、シリコンウエハ上に所要の配線2を形成し、この配線2を覆って絶縁膜3を形成後、この絶縁膜3をエッチングして、下層の配線2と接続するためのコンタクトホール溝4及び配線溝5を形成する。次いで、全面にバリヤメタル層6(例えば、TiN)を形成後、CVD法、めっき法等により、溝4,5内に銅(Cu)7を埋め込む。その後、不要な部分のCu7及びバリヤメタル層6の部分をCMPにより除去しながら平坦化して配線7aを形成する。
【0043】
このCMPの方法について、図4を参照しながら説明する。
【0044】
先ず(図4(a)参照)、ウエハ脱離用の弁43(図2)と共に流路開閉弁42を閉じた状態で、流路開閉弁41を開き、真空ポンプ40を起動させる。これにより、A系統の吸着孔33(35)に連通する流路31からチューブ25を介して流路内の空気が減圧排気される。その結果、図4(a)に示すように、吸着孔35付近のウエハ1の部分がその吸着力に起因して凹む。
【0045】
この状態で(図4(b)参照)、回転駆動される定盤11(図1)上の研磨パッド10に押し当ててウエハ1の研磨(CMP)を行うと、その吸着した箇所(矢印P1で示す箇所)に研磨パッド10の面が十分に当たらないため、その箇所だけ満足に研磨することができない。その結果、図4(b)に示すように吸着孔35付近のウエハ1の箇所に研磨残りRSが発生する。図5(c)は、このときの研磨残りRSの状態をイメージ的に示したものである。
【0046】
次に(図4(c)参照)、真空ポンプ40は起動させた状態で、今度は流路開閉弁42の方を開き、流路開閉弁41を閉じる。これにより、B系統の吸着孔34(36)に連通する流路32からチューブ26を介して流路内の空気が減圧排気される。その結果、図4(c)に示すように、吸着孔36付近のウエハ1の部分(図4(b)において矢印P2で示す箇所)がその吸着力に起因して凹み、それまで凹んでいた吸着孔35付近のウエハ1の部分が相対的に突出した状態となる。つまり、研磨残りRSが発生している部分が突出した状態となる。
【0047】
この状態で(図4(d)参照)、上記と同様に研磨パッド10に押し当ててウエハ1の研磨(CMP)を行うと、その突出している研磨残りRSの部分に研磨パッド10の面が確実に当たるため、その研磨残りRSの部分が研磨される。その結果、図4(d)に示すように吸着孔35付近のウエハ1の箇所に発生していた研磨残りRSの部分がきれいに除去される。
【0048】
このようにして研磨残りRSの部分が除去された後、真空吸着を停止させると、その表面全体に亘って研磨残りの無い、均一に平坦化されたウエハ1が得られる(図4(e)参照)。真空吸着の停止は、真空ポンプ40を停止させ、流路開閉弁41,42をともに開くことによって行われる。この状態で、さらにウエハ脱離用の弁43を開くと、ウエハ1はヘッド20による吸着保持から解放される。
【0049】
図4に示したCMPの方法では、説明の簡単化のため、A系統、B系統についてそれぞれ1回ずつ吸着及び研磨処理を行うようにしているが、実際の切替の態様では、A系統とB系統を交互に複数回ずつ切り替えてCMPを行うようにしている。例えば、銅(Cu)に対する研磨率を1μm/分とし、配線溝5(図5参照)上に銅(Cu)膜7を5μm程度形成した場合、A系統とB系統についてそれぞれ吸着及び研磨処理を交互に5回繰り返すことにより、研磨残りの無い均一な研磨加工を施すことができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係るCMP装置50及びこれを用いた研磨方法によれば、ヘッド20(ヘッド本体21)の吸着面21Sに設けられる複数の吸着孔33(35)、34(36)を2系統(A系統とB系統)の真空吸着用の流路31(25)、32(26)に分けて配列し(図3)、真空ポンプ40と流路開閉弁41,42により、A系統、B系統の各流路31(25),32(26)を選択的に切り替えて有効にしている。
【0051】
これにより、図4に例示したようにA系統で研磨(CMP)を行ったときに吸着孔35付近のウエハ1の箇所に研磨残りRSの部分が発生しても、次にB系統で研磨(CMP)を行ったときに、その研磨残りRSの部分を除去することができる。好適には、A系統とB系統を交互に複数回ずつ切り替えてCMPを行うことで、ウエハ1の表面全体に亘って研磨残りの無い均一な研磨加工を施すことが可能となる。
【0052】
上述した実施形態では、研磨の対象物(ウエハ1)を吸着するための複数の吸着孔33(35)、34(36)を2系統に分けて配列し、各系統の流路31、32を切り替えながらCMPを行う場合を例にとって説明したが、必ずしも2系統である必要はない。必要に応じて3系統以上に分けてCMPを行うことも可能である。
【0053】
また、上述した実施形態では、2系統の流路31、32を切り替えながらCMPを行うに際し各流路31、32を完全に切り替えてウエハ1の吸着を行うようにしたが、必ずしもこの実施態様に限定されない。例えば、2系統の流路31、32に対しそれぞれの吸引の強弱を切り替えて吸着を行うようにしてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、ダマシン法により形成した配線溝内の銅(Cu)をCMPする場合(図4、図5)を例にとって説明したが、CMPの対象材料がメタルに限定されないことはもちろんである。上記のダマシン法と同様に、基材に溝等の開口部を形成し、この開口部に基材とは異なる材料を埋め込んだ構造を有した基板であれば、例えば、シリコン酸化膜、ポリシリコン膜、シリコン窒化膜等の絶縁性材料に対しても同様にCMPを施して平坦化を図ることが可能である。
【0055】
また、上述した実施形態では、被加工物としてシリコンウエハ1(シリコン板)を研磨する場合を例にとって説明したが、これ以外にも、ガラス板、セラミック板、樹脂板など各種材質の板を研磨対象として適宜選択することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…ウエハ(平板状の被加工物)、10…研磨パッド、11…定盤(プラテン)、20…ヘッド、21…ヘッド本体、22…ケーシング、23…軸部、24…バッキングパッド、25,26…真空吸着用のチューブ、27…エア導入用のチューブ、31,32…真空吸着用の流路(減圧排気経路)、33〜36…吸着孔、40…真空ポンプ、41,42…流路開閉弁、43…ウエハ脱離用の弁、45…研磨剤供給ノズル、46…ドレッサ、50…研磨(CMP)装置、RS…研磨残り。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面に研磨パッドが装着された定盤と、
前記研磨パッドに対向する側の面に吸着面を有し、真空吸着用の第1系統及び第2系統の各流路を備えるとともに、前記各流路からそれぞれ前記吸着面まで通じる複数の吸着孔を有したヘッドと、
前記第1系統及び第2系統の各流路を選択的に切り替えて有効にする流路切替手段とを備えたことを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記ヘッドにおいて前記第1系統及び第2系統の各流路にそれぞれ連通された複数の吸着孔は、前記吸着面の全体に亘って分布するよう配列されていることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記ヘッドにおいて前記第1系統及び第2系統の各流路にそれぞれ連通された複数の吸着孔は、同心円状に配列されていることを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記流路切替手段は、前記第1系統及び第2系統の各流路にそれぞれ介在された流路開閉弁と、該流路開閉弁を介して各流路に結合された真空ポンプとを含むことを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の研磨装置を用いて平板状の被加工物の表面を研磨する方法であって、
前記第1系統の流路を有効にして、該第1系統の流路に連通された複数の吸着孔を介して前記ヘッドの吸着面に前記被加工物を吸着保持し、この状態で、回転駆動される前記定盤上の前記研磨パッドに対して前記被加工物の表面を押し当てて研磨を行う第1工程と、
前記第2系統の流路を有効にして、該第2系統の流路に連通された複数の吸着孔を介して前記ヘッドの吸着面に前記被加工物を吸着保持し、この状態で、回転駆動される前記定盤上の前記研磨パッドに対して前記被加工物の表面を押し当てて研磨を行う第2工程と、
を含むことを特徴とする研磨方法。
【請求項6】
前記第1工程と前記第2工程とを交互に複数回ずつ実施することを特徴とする請求項5に記載の研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−240135(P2012−240135A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110155(P2011−110155)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】