説明

緩衝器

【課題】減衰力特性を一層詳細に制御可能な緩衝器の提供。
【解決手段】シリンダ10内をロッド側室12とボトム側室13とに区画するピストン11と、ピストン11に一端が連結されると共に他端がシリンダ10の外部に延出されたピストンロッド130と、ピストンロッド130の一端側に設けられたハウジング85と、ハウジング85内に摺動自在に挿入されたフリーピストン87と、ロッド側室12とハウジング85内の圧力室145とを連通するロッド通路146と、ロッド側室12とボトム側室13とを連通する通路60a,60bに設けられた減衰バルブ62a,62bとからなり、フリーピストン87に、ロッド通路146の圧力室側開口94の開口面積をフリーピストン87の移動に応じて調整するシャッタ部材107を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器には、振動状態に応じて減衰力特性が可変となる緩衝器がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−19642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、減衰力特性を一層詳細に制御することが求められている。
【0005】
したがって、本発明は、減衰力特性を一層詳細に制御可能な緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、シリンダ内をロッド側室とボトム側室とに区画するピストンと、前記ピストンに一端が連結されると共に他端が前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、前記ピストンロッドの一端側に設けられたハウジングと、前記ハウジング内に摺動自在に挿入されたフリーピストンと、前記ロッド側室と前記ハウジング内の前記フリーピストンによって画成された圧力室とを連通するロッド通路と、前記ロッド側室とボトム側室とを連通する通路に設けられた減衰バルブとからなる緩衝器において、前記フリーピストンに、前記ロッド通路の圧力室側開口の開口面積を前記フリーピストンの移動に応じて調整するシャッタ部材を設けた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、減衰力特性を一層詳細に制御可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る第1実施形態の緩衝器を示す断面図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態の緩衝器のフリーピストンのハウジングに対する位置と可変オリフィスの通路面積との関係を示す特性線図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態の緩衝器等のストローク位置と減衰力との関係を示す特性線図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態の緩衝器等のピストン速度と減衰力との関係を示す特性線図である。
【図6】本発明に係る第1実施形態の緩衝器の油圧回路図である。
【図7】本発明に係る第2実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
【図8】本発明に係る第2実施形態の緩衝器のフリーピストンのハウジングに対する位置と可変オリフィスの通路面積との関係を示す特性線図である。
【図9】本発明に係る第3実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
【図10】本発明に係る第3実施形態の緩衝器のフリーピストンのハウジングに対する位置と可変オリフィスの通路面積との関係を示す特性線図である。
【図11】本発明に係る第3実施形態の緩衝器のピストン速度一定での周波数と減衰力との関係を示す特性線図である。
【図12】本発明に係る第4実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下で説明の実施の形態は、上述の発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄に記載した内容に止まること無くその他にもいろいろな課題を解決し、効果を呈している。以下の実施の形態が解決する課題の主なものを、上述の欄に記載した内容をも含め、次に列挙する。
〔特性改善〕
振動状態に応じて減衰力特性(ピストン速度に対する減衰力)を変更する際に、より滑らかに変更する等の特性設定が求められている。これは、小さな減衰力が発生する特性と、大きな減衰力が発生する特性の切り替わりが唐突に起こると、実際に発生する減衰力も唐突に切り替わるので、車両の乗り心地が悪化し、さらには減衰力の切り替わりが車両の操舵中に発生すると、車両の挙動が不安定となり、運転者が操舵に対して違和感を招く恐れがあるためである。そのため、先に示した特許文献1に示すようにより滑らかに変更する特性設定が検討されているが、さらなる特性改善が望まれている。
〔大型化の抑制〕
先に示した特許文献1に示されるように、シリンダ内の2室を仕切り、減衰力を発生する機構を有するピストンに加え、ピストンの一端側に設けられ、ハウジング内を上下動するフリーピストンを備えることにより、振動周波数の広い領域に対応した減衰力特性が得られるように改善が図られたシリンダ装置は種々開発されている。これらのシリンダ装置に共通する課題として、フリーピストンが上下動する領域が必要であるため、軸方向に長くなるということがあげられる。シリンダ装置が大型化すると、車体への取付け自由度が低下するため、シリンダ装置の軸方向長の増加は、大きな課題である。また、フリーピストンが上下動する領域を確保し、シリンダ装置の軸方向長を従来どおりとすると、ピストンのストローク範囲が短くなり、乗り心地、操縦安定性に影響が出るという課題がある。さらには、外部から減衰力を調整する機構を付けるとその分の大型化がさせられないため、周波数感応部の小型化は、強い要求がある。
〔部品数の低減〕
先に示した特許文献1に示されるように、ピストンに加え、ハウジングやフリーピストンなどの構成部品が備えられるため、部品数は増えることになる。部品数が増えると、生産性、耐久性、信頼性などに影響がでるため、所望の特性、つまり振動周波数の広い領域に対応した減衰力特性が得られるような特性を出しつつ、部品数の低減が望まれている。
以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。以下の説明では理解を助けるために、図の下側を一方側とし、逆に図の上側を他方側として定義する。
【0011】
第1実施形態の緩衝器は、図1に示すように、いわゆるモノチューブ式の油圧緩衝器で、作動流体としての油液が封入される有底円筒状のシリンダ10を有している。シリンダ10内には、ピストン11が摺動可能に嵌装され、このピストン11により、シリンダ10内が開口側の上室(ロッド側室)12および底側の下室(ボトム側室)13の2室に区画されている。ピストン11は、ピストン本体14と、その外周面に装着される円環状の摺動部材15とによって構成されている。
【0012】
ピストン11は、そのピストン本体14が、ピストンロッド本体16の一端部に連結されており、ピストンロッド本体16の他端側は、シリンダ10の開口側に装着されたロッドガイド17およびオイルシール18等に挿通されてシリンダ10の外部へ延出されている。シリンダ10の開口側は内側に加締められており、これによりオイルシール18およびロッドガイド17を係止している。
【0013】
ピストンロッド本体16は、シリンダ10内への挿入先端側に、ピストン本体14が取り付けられる取付軸部20が形成されており、他の部分が取付軸部20よりも大径の主軸部21となっている。取付軸部20には、主軸部21とは反対側の外周側にオネジ19が形成されている。主軸部21の取付軸部20近傍の位置には、係止溝22が形成されており、この係止溝22には、主軸部21よりも径方向外側に広がるリテーナ23の内周部が加締められて固定されている。
【0014】
リテーナ23のピストン11とは反対には円環状のバネ受25が配置されており、バネ受25のリテーナ23とは反対にコイルスプリングからなるリバウンドスプリング26が配置されている。また、リバウンドスプリング26のバネ受25とは反対には円環状のバネ受27が配置されており、このバネ受27のリバウンドスプリング26とは反対に円環状の弾性材料からなる緩衝体28が設けられている。なお、バネ受25、リバウンドスプリング26、バネ受27および緩衝体28は、ピストンロッド本体16に対して軸方向に移動可能に設けられている。
【0015】
ここで、ピストンロッド本体16がシリンダ10から突出する方向に移動すると、ピストンロッド本体16に固定されたリテーナ23とともにバネ受25、リバウンドスプリング26、バネ受27および緩衝体28がロッドガイド17側に移動することになり、所定位置で緩衝体28がロッドガイド17に当接する。さらにピストンロッド本体16が突出方向に移動すると、緩衝体28およびバネ受27が、シリンダ10に対して停止状態となり、その結果、移動するリテーナ23とバネ受27とが近接する。これにより、バネ受27とバネ受25とがこれらの間のリバウンドスプリング26を縮長させることになる。このようにして、シリンダ10内に設けられたリバウンドスプリング26が、ピストンロッド本体16に弾性的に作用してピストンロッド本体16の伸び切りを抑制することになる。なお、このようにリバウンドスプリング26がピストンロッド本体16の伸び切りの抵抗となることで、車両旋回時の内周側の車輪の浮き上がりを抑制して車体のロール量を抑えることになる。
【0016】
ピストン11よりもシリンダ10の底部側には、下室13を画成するための区画体33がシリンダ10内を摺動可能に設けられている。シリンダ10内の上室12および下室13内には、油液が封入されており、区画体33により下室13と画成された室34には高圧(20〜30気圧程度)のガスが封入されている。
【0017】
上述の緩衝器の例えば一方側は車体により支持され、上記緩衝器の他方側に車輪側が固定される。具体的には、ピストンロッド本体16にて車体側に連結され、シリンダ10のピストンロッド本体16の突出側とは反対側の底部に取り付けられた取付アイ36にて車輪側に連結される。その際に、シリンダ10のピストンロッド本体16の突出側に固定されたバネ受37には車体との間に図示略の懸架スプリングが介装される。また、上記とは逆に緩衝器の他方側が車体により支持され緩衝器の一方側に車輪側が固定されるようにしても良い。
【0018】
車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ10とピストンロッド本体16との位置が相対的に変化するが、上記変化はピストン11に形成された流路の流体抵抗により抑制される。以下で詳述するごとくピストン11に形成された流路の流体抵抗は振動の速度や振幅により異なるように作られており、振動を抑制することにより、乗り心地が改善される。上記シリンダ10とピストンロッド本体16との間には、車輪が発生する振動の他に、車両の走行に伴って車体に発生する慣性力や遠心力も作用する。例えばハンドル操作により走行方向が変化することにより車体に遠心力が発生し、この遠心力に基づく力が上記シリンダ10とピストンロッド本体16との間に作用する。以下で説明するとおり、本実施形態の緩衝器は車両の走行に伴って車体に発生する力に基づく振動に対して良好な特性を有しており、車両走行における高い安定性が得られる。
【0019】
図2に示すように、バネ受25は、略円筒形状の円筒状部40と、円筒状部40の軸方向一端側から径方向外方に突出する円環状のフランジ部41とを有している。また、円筒状部40の内周面には軸方向に伸びる溝43が周方向に間隔をあけて複数形成されている。バネ受25は、フランジ部41をリテーナ23側に配置しており、円筒状部40の内周側にピストンロッド本体16の主軸部21が挿入される。これにより、バネ受25は、ピストンロッド本体16の主軸部21に摺動可能に支持される。また、バネ受25は、フランジ部41および円筒状部40においてリテーナ23に当接する一方、リバウンドスプリング26の一端部をフランジ部41のリテーナ23とは反対側に当接させる。
【0020】
バネ受25は、図1に示すように、テーパ状の筒状部52と、筒状部52の大径側から径方向外方に突出する円環状のフランジ部53とを有している。バネ受27は、フランジ部53をリバウンドスプリング26とは反対側にして、筒状部52の内側にピストンロッド本体16の主軸部21が挿入される。これにより、バネ受27は、ピストンロッド本体16の主軸部21に摺動可能に支持される。バネ受27は、リバウンドスプリング26の他端部をフランジ部53に当接させる。
【0021】
図2に示すように、ピストン本体14には、上室12と下室13とを連通させ、ピストン11の上室12側への移動、つまり伸び行程において上室12から下室13に向けて油液が流れ出す複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路60aと、ピストン11の下室13側への移動、つまり縮み行程において下室13から上室12に向けて油液が流れ出す複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路60bとが設けられている。これらのうち半数を構成する通路60aは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路60bを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン11の軸方向一側(図2の上側)が径方向外側に軸方向他側(図2の下側)が径方向内側に開口している。
【0022】
そして、これら半数の通路60aに、減衰力を発生する減衰バルブ62aが設けられている。減衰バルブ62aは、ピストン11の軸線方向の下室13側に配置されている。通路60aは、ピストンロッド本体16がシリンダ10外に伸び出る伸び側にピストン11が移動するときに油液が通過する伸び側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰バルブ62aは、伸び側の通路60aの油液の流動を規制して減衰力を発生させる伸び側の減衰バルブとなっている。
【0023】
また、残りの半数を構成する通路60bは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路60aを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン11の軸線方向他側(図2の下側)が径方向外側に軸線方向一側(図2の上側)が径方向内側に開口している。
【0024】
そして、これら残り半数の通路60bに、減衰力を発生する減衰バルブ62bが設けられている。減衰バルブ62bは、ピストン11の軸線方向の上室12側に配置されている。通路60bは、ピストンロッド本体16がシリンダ10内に入る縮み側にピストン11が移動するときに油液が通過する縮み側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰バルブ62bは、縮み側の通路60bの油液の流動を規制して減衰力を発生させる縮み側の減衰バルブとなっている。
【0025】
ピストンロッド本体16には、その一端側の取付軸部20のピストン11よりもさらに端側に減衰力可変機構65が取り付けられている。
【0026】
ピストン本体14は、略円板形状をなしており、その中央には、軸方向に貫通して、上記したピストンロッド本体16の取付軸部20を挿通させるための挿通穴68が形成されている。
【0027】
ピストン本体14の軸方向の下室13側の端部には、伸び側の通路60aの一端開口位置に、減衰バルブ62aを構成するシート部71aが、円環状に形成されている。ピストン本体14の軸方向の上室12側の端部には、縮み側の通路60bの一端の開口位置に、減衰バルブ62bを構成するシート部71bが、円環状に形成されている。
【0028】
ピストン本体14において、シート部71aの挿通穴68とは反対側は、シート部71aよりも軸線方向高さが低い環状の段差部72bとなっており、この段差部72bの位置に縮み側の通路60bの他端が開口している。また、同様に、ピストン本体14において、シート部71bの挿通穴68とは反対側は、シート部71bよりも軸線方向高さが低い環状の段差部72aとなっており、この段差部72aの位置に伸び側の通路60aの他端が開口している。
【0029】
減衰バルブ62aは、上記したシート部71aと、シート部71aの全体に同時に着座可能な環状のディスク75aとからなっており、ディスクバルブとなっている。ディスク75aは複数枚の環状の単体ディスクが重ね合わせられることで構成されている。ディスク75aのピストン本体14とは反対側には、ディスク75aよりも小径の環状のバルブ規制部材77aが配置されている。
【0030】
減衰バルブ62aには、シート部71aとディスク75aとの間に、これらが当接状態にあっても通路60aを下室13に連通させる固定オリフィス78aが、シート部71aに形成された溝あるいはディスク75aに形成された開口によって形成されている。ディスク75aは、シート部71aから離座することで通路60aを開放する。バルブ規制部材77aはディスク75aの開方向への規定以上の変形を規制する。減衰バルブ62aは、通路60aに設けられ、ピストン11の摺動によって通路60aに生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。
【0031】
同様に、減衰バルブ62bは、上記したシート部71bと、シート部71bの全体に同時に着座可能な環状のディスク75bとからなっており、ディスクバルブとなっている。ディスク75bも複数枚の環状の単体ディスクが重ね合わせられることで構成されている。ディスク75bのピストン本体14とは反対側には、ディスク75bよりも小径の環状のバルブ規制部材77bが配置されている。バルブ規制部材77bは、ピストンロッド本体16の主軸部21の取付軸部20側の端部の軸段部80に当接している。
【0032】
減衰バルブ62bには、シート部71bとディスク75bとの間に、これらが当接状態にあっても通路60bを上室12に連通させる固定オリフィス78bが、シート部71bに形成された溝あるいはディスク75bに形成された開口によって形成されている。ディスク75bは、シート部71bから離座することで通路60bを開放する。バルブ規制部材77bはディスク75bの開方向への規定以上の変形を規制する。減衰バルブ62bは、通路60bに設けられ、ピストン11の摺動によって通路60bに生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。
【0033】
第1実施形態では、減衰バルブ62a,62bが内周クランプのディスクバルブである例を示したが、これに限らず、減衰力を発生する機構であればよく、例えば、ディスクバルブをコイルバネで付勢するリフトタイプのバルブとしてもよく、また、ポペット弁であってもよい。
【0034】
ピストンロッド本体16の取付軸部20の先端のオネジ19には、周波数(振動状態)により外部から制御されることなく減衰力を可変とする周波数感応部である減衰力可変機構65が螺合されている。減衰力可変機構65は、ピストンロッド本体16の一端側のオネジ19に螺合されるメネジ81が形成された蓋部材82と、この蓋部材82にその一端開口側が閉塞されるように取り付けられる略円筒状のハウジング本体83とからなるハウジング85と、このハウジング85内に摺動自在に挿入されるフリーピストン87と、フリーピストン87とハウジング85の蓋部材82との間に介装されてフリーピストン87がハウジング85に対し軸方向の蓋部材82側へ移動したときに圧縮変形する縮み側の弾性体であるOリング88と、フリーピストン87とハウジング85のハウジング本体83との間に介装されてフリーピストン87がハウジング85に対し上記とは反対側へ移動したときに圧縮変形する伸び側の弾性体であるOリング89とで構成されている。なお、図2においては便宜上自然状態のOリング88,89を図示している。特にOリング89は、シールとしても機能するので、取り付けられた状態で常時、変形(断面非円形)しているように配置されることが望ましい。上記したOリング88はフリーピストン87が一方向へ移動したときに圧縮変形してフリーピストン87の変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素となっており、Oリング89はフリーピストン87が他方向へ移動したときに圧縮変形してフリーピストン87の変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素となっている。
【0035】
蓋部材82は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状の蓋内筒部91と、この蓋内筒部91の軸方向の端部から径方向外側に延出する円板状の蓋基板部92と、蓋基板部92の外周側から蓋内筒部91と同方向に延出する蓋外筒部93と、蓋内筒部91の先端側を覆うとともに通路開口部(圧力室側開口)94が径方向の中央に形成された蓋先板部95を有している。
【0036】
蓋内筒部91の内周部には、上記したメネジ81が形成されている。蓋外筒部93の内周面は、蓋基板部92側から順に、円筒面部96および曲面部97を有している。円筒面部96は一定径をなしており、円筒面部96に繋がる曲面部97は、円筒面部96から離れるほど大径の円環状となっている。曲面部97は蓋部材82の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。蓋外筒部93の外周面には、オネジ98が形成されている。通路開口部94は、蓋先板部95の蓋基板部92側の一定径の小径穴94Aと、蓋先板部95の蓋基板部92とは反対側にあって小径穴94Aに連続し蓋基板部92から離れるほど大径となるテーパ状のテーパ穴94Bとからなっている。
【0037】
ハウジング本体83は、切削加工を主体として形成されるもので、軸方向一側に径方向内方に突出する内側環状突起100が形成された略円筒状をなしている。ハウジング本体83の内周面には、軸方向一側から順に、小径円筒面部101、曲面部102、大径円筒面部103およびメネジ104が形成されている。小径円筒面部101は一定径をなしており、小径円筒面部101に繋がる曲面部102は、小径円筒面部101から離れるほど大径の円環状となっており、曲面部102に繋がる大径円筒面部103は、小径円筒面部101より大径の一定径をなしている。曲面部102はハウジング本体83の中心軸線を含む断面が円弧状をなしており、小径円筒面部101と曲面部102とが、内側環状突起100に形成されている。なお、ハウジング本体83を円筒状と記述しているが、内周面は断面円形となることが望ましいが、外周面は、多角形等断面非円形であってもよい。
【0038】
このようなハウジング本体83のメネジ104に、蓋部材82のオネジ98が螺合されることでこれらが一体化されてハウジング85となる。蓋部材82の蓋外筒部93はハウジング85において大径円筒面部103よりも径方向内側に突出する内側環状突起を構成しており、この部分に曲面部97がハウジング本体83の内側環状突起100の曲面部102と軸方向に対向するように配置されている。
【0039】
フリーピストン87は、フリーピストン本体106とシャッタ部材107とからなっている。フリーピストン本体106は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状のピストン筒部108と、このピストン筒部108の軸方向の一側を閉塞するピストン閉板部109とを有しており、ピストン筒部108には径方向外方に突出する円環状の外側環状突起110が軸方向の中央に形成されている。
【0040】
ピストン筒部108の外周面には、軸方向のピストン閉板部109側から順に、小径円筒面部113、曲面部114、大径円筒面部115、曲面部116および小径円筒面部117が形成されている。曲面部114、大径円筒面部115および曲面部116は、外側環状突起110に形成されている。
【0041】
小径円筒面部113は一定径となっており、この小径円筒面部113に繋がる曲面部114は小径円筒面部113から離れるほど大径の円環状となっている。曲面部114に繋がる大径円筒面部115は、小径円筒面部113より大径の一定径をなしている。曲面部114はフリーピストン本体106の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。
【0042】
大径円筒面部115に繋がる曲面部116は、大径円筒面部115から離れるほど小径の円環状をなしている。曲面部116に小径円筒面部117が繋がっており、この小径円筒面部117は、小径円筒面部113と同径の一定径となっている。曲面部116はフリーピストン本体106の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。外側環状突起110はその軸線方向の中央位置を通る平面に対して対称形状をなしている。フリーピストン本体106は、外側環状突起110の軸方向の中央位置に、外側環状突起110を径方向に貫通する通路穴118がフリーピストン本体106の周方向に間隔をあけて複数箇所形成されている。ピストン閉板部109の径方向の中央には、軸方向に貫通する取付穴119が形成されている。
【0043】
シャッタ部材107は、シャッタ部材本体121とナット部材122とスペーサ123とからなっている。シャッタ部材本体121は頭部125と頭部125よりも小径のネジ軸部126とを有している。頭部125は、その外周側に、ネジ軸部126側にあってネジ軸部126よりも大径の一定径の円筒面部127と、円筒面部127のネジ軸部126とは反対側にあって円筒面部127に連続し円筒面部127から軸方向に離れるほど小径となるテーパ状のテーパ面部128とが形成されている。スペーサ123は、複数枚の単板からなっている。このスペーサ123の枚数を変えることで、容易にチューニングすることができる。
【0044】
シャッタ部材本体121は、ネジ軸部126の頭部125側にスペーサ123が配置された状態で、フリーピストン本体106のピストン閉板部109の取付穴119に、軸方向の外側環状突起110側からネジ軸部126を挿通させている。この状態でピストン閉板部109から突出するネジ軸部126にナット部材122が螺合されている。これにより、ナット部材122と頭部125とでスペーサ123とピストン閉板部109とを挟持することになり、その結果、シャッタ部材107がピストン閉板部109に固定される。頭部125のテーパ面部128の角度は、ハウジング85の通路開口部94のテーパ穴94Bの角度と同等になっている。また、頭部125の円筒面部127の外径は、通路開口部94の小径穴94Aよりも大径でありテーパ穴94Bの最大径と同等になっている。
【0045】
フリーピストン87は、シャッタ部材107の頭部125をハウジング85の通路開口部94に対向させるようにして、ハウジング85内に配置されることになり、この状態で、大径円筒面部115においてハウジング本体83の大径円筒面部103に摺動可能に嵌挿されることになる。また、フリーピストン87は、一方の小径円筒面部113がハウジング本体83の小径円筒面部101に、他方の小径円筒面部117が蓋部材82の蓋外筒部93の円筒面部96に、それぞれ摺動可能に嵌挿されている。ハウジング85内に配置された状態で、ハウジング本体83の曲面部102とフリーピストン87の曲面部114とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになる。よって、ハウジング本体83の曲面部102と、フリーピストン87の曲面部114とがフリーピストン87の移動方向で対向する。加えて、蓋部材82の蓋外筒部93の曲面部97とフリーピストン87の曲面部116とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになる。よって、蓋部材82の曲面部97と、フリーピストン87の曲面部116とがフリーピストン87の移動方向で対向する。
【0046】
そして、フリーピストン87の小径円筒面部113および曲面部114と、ハウジング本体83の曲面部102および大径円筒面部103との間に、言い換えれば、フリーピストン87の外側環状突起110とハウジング85の一方の内側環状突起100との間に、Oリング89(図2において自然状態を図示)が配置されている。このOリング89は、自然状態にあるとき、中心軸線を含む断面が円形状をなし、内径がフリーピストン87の小径円筒面部113よりも小径で、外径がハウジング本体83の大径円筒面部103よりも大径となっている。つまり、Oリング89は、フリーピストン87およびハウジング85の両方に対してこれらの径方向に締め代をもって嵌合される。
【0047】
また、ハウジング85の大径円筒面部103および曲面部97と、フリーピストン87の曲面部116および小径円筒面部117との間に、言い換えれば、フリーピストン87の外側環状突起110とハウジングの他方の内側環状突起である蓋外筒部93との間に、Oリング88(図2において自然状態を図示)が配置されている。このOリング88は、自然状態にあるとき、中心軸線を含む断面が円形状をなしており、内径がフリーピストン87の小径円筒面部117よりも小径で、外径がハウジング85の大径円筒面部103よりも大径となっている。つまり、Oリング88も、フリーピストン87およびハウジング85の両方に対してこれらの径方向に締め代をもって嵌合される。
【0048】
両方のOリング88,89は、同じ大きさのものであり、フリーピストン87をハウジング85に対して所定の中立位置に保持するとともにフリーピストン87のハウジング85に対する軸方向の上室12側および下室13側の両側への軸方向移動を許容する。
【0049】
フリーピストン87においては、Oリング88が小径円筒面部117、曲面部116に接触することになり、これらのうち曲面部116は、フリーピストン87の移動方向に対し傾斜している。また、ハウジング85においては、Oリング88がハウジング85の大径円筒面部103および曲面部97に接触することになり、これらのうち曲面部97は、フリーピストン87の移動方向に対し傾斜している。
【0050】
言い換えれば、フリーピストン87の外周部に外側環状突起110を設け、この外側環状突起110の軸方向両面は、曲面部114と曲面部116とを構成し、ハウジング85の内周における、外側環状突起110の両側の位置に、曲面部102を有する内側環状突起100と、曲面部97を有する内側環状突起を構成する蓋外筒部93とを設け、外側環状突起110と、内側環状突起100および内側環状突起を構成する蓋外筒部93との間にそれぞれOリング89およびOリング88を設けている。
【0051】
そして、フリーピストン87の小径円筒面部113、曲面部114において、Oリング89に接触している部分であるフリーピストン接触面と、ハウジング85の大径円筒面部103および曲面部102において、Oリング89に接触している部分であるハウジング接触面とが、フリーピストン87の移動によってOリング89に接触している部分のOリングの中心を通る最短距離が変化し、最短距離となる部分を結ぶ線分の向きが変化する。言い換えれば、フリーピストン87のフリーピストン接触面と、ハウジング85のハウジング接触面と、それぞれのうちOリング89が接触している部分の最短距離を結ぶ線分の向きが変化するように小径円筒面部113および曲面部114と大径円筒面部103および曲面部102との形状が設定されている。具体的に、フリーピストン87がハウジング85に対して軸方向の上室12側(図2の上側)に位置するとき、フリーピストン接触面とハウジング接触面と、それぞれのうちOリング89が接触している部分の最短距離は大径円筒面部103と小径円筒面部113との半径差である(大径円筒面部103と小径円筒面部113との半径差よりもOリング89の外径と内径の半径差の方が大であるため、Oリング89がその差分潰れ、その部分、つまり最短距離の線分は傾斜角0となる)。一方フリーピストン87がハウジング85に対して軸方向の下室13側(図2の下側)に移動すると、Oリング89との接触部分は曲面部114と曲面部102となり、最もOリング89が潰される位置、つまり最短距離の線分の傾斜角が斜めになる。
【0052】
同様に、フリーピストン87の小径円筒面部117および曲面部116において、Oリング88に接触している部分であるフリーピストン接触面と、ハウジング85の大径円筒面部103および曲面部97において、Oリング88に接触している部分であるハウジング接触面とが、フリーピストン87の移動によってOリング88に接触している部分の最短距離が変化し、最短距離となる部分を結ぶ線分の向きが変化する。言い換えれば、フリーピストン87のフリーピストン接触面と、ハウジング85のハウジング接触面と、それぞれのうちOリング88が接触している部分の最短距離を結ぶ線分の向きが変化するように小径円筒面部117および曲面部116と、大径円筒面部103および曲面部97との形状が設定されている。具体的に、フリーピストン87がハウジング85に対して軸方向の下室13側(図2の下側)に位置するとき、フリーピストン接触面とハウジング接触面と、それぞれのうちOリング88が接触している部分の最短距離は大径円筒面部103と小径円筒面部117との半径差である(大径円筒面部103と小径円筒面部117との半径差よりもOリング88の外径と内径の半径差の方が大であるため、Oリング88がその差分潰れ、その部分、つまり最短距離の線分は傾斜角0となる)。一方フリーピストン87がハウジング85に対して軸方向の上室12側(図2の上側)に移動すると、Oリング88との接触部分は曲面部97と曲面部116となり、最もOリング88が潰される位置、つまり最短距離の線分の傾斜角が斜めになる。
【0053】
なお、減衰力可変機構65は、例えばハウジング本体83内に曲面部102の位置までOリング89を挿入し、これらハウジング本体83およびOリング89の内側にフリーピストン87を嵌合し、ハウジング本体83とフリーピストン87との間に曲面部116の位置までOリング88を挿入して、蓋部材82をハウジング本体83に螺合させることにより、組み立てられることになる。そして、このように予め組み立てられた減衰力可変機構65がピストンロッド本体16の取付軸部20のオネジ19にメネジ81を螺合させて取り付けられることになり、その際に、ハウジング85の蓋基板部92がバルブ規制部材77aに当接することになる。減衰力可変機構65の外径つまりハウジング85の外径は、シリンダ10の内径よりも流路抵抗とならない程度に小さく設定されている。
【0054】
なお、ピストンロッド本体16と、蓋部材82のピストンロッド本体16に螺合される蓋内筒部91およびピストンロッド本体16の延長上の蓋先板部95とが、ピストン11に一端が連結されると共に他端がシリンダ10の外部に延出され、さらに一端側にハウジング85が設けられるピストンロッド130を構成することになり、蓋内筒部91および蓋先板部95は、ピストンロッド130およびハウジング85の両方を構成する。よって、蓋部材82の蓋先板部95に形成された通路開口部94は、このピストンロッド130のシリンダ内端側の端面に位置する。
【0055】
ピストンロッド130のピストンロッド本体16には、主軸部21の、リテーナ23に当接するバネ受25から所定距離離間する位置に、径方向に沿う通路穴140が形成されており、この通路穴140に連通し取付軸部20側の先端部に開口する、通路穴140より大径の通路穴141が軸方向に沿って形成されている。通路穴140,141と、ピストンロッド本体16、蓋内筒部91および蓋先板部95とで囲まれた室142と、通路開口部94とが、ピストンロッド130に設けられるロッド通路146を構成している。ロッド通路146は、上室12をハウジング85内に形成された圧力室145に連通させる。よって、ピストンロッド130の端面に位置する通路開口部94はロッド通路146の圧力室145側の端部開口を構成している。圧力室145は、ハウジング85とOリング88,89とフリーピストン87とによって画成されている。
【0056】
そして、第1実施形態において、フリーピストン87の中心にあるシャッタ部材107は、ハウジング85の中心にある通路開口部94と中心軸を一致させている。シャッタ部材107は、フリーピストン87がハウジング85内で図2に示すように中立位置にあるとき、ピストンロッド130の端面に位置する通路開口部94内に頭部125を一部進入させた状態で、通路開口部94から離間している。
【0057】
この中立位置から、フリーピストン87がハウジング85内で摺動し、蓋部材82側に移動すると、フリーピストン87のシャッタ部材107が、頭部125のテーパ面部128を通路開口部94のテーパ穴94Bの内周面に近接させる。これにより、ロッド通路146を狭める。また、この状態からフリーピストン87が蓋部材82とは反対側に移動すると、フリーピストン87の移動に応じた距離だけ頭部125のテーパ面部128を通路開口部94のテーパ穴94Bの内周面から離間させる。シャッタ部材107は、通路開口部94から所定距離以上離間すると、通路開口部94を小径穴94Aの通路面積で開口させる。このように、シャッタ部材107は、フリーピストン87のハウジング85に対する位置によって通路開口部94の通路面積を調整することになる。
【0058】
言い換えれば、シャッタ部材107および通路開口部94は、ロッド通路146の通路面積を可変とする可変オリフィス148を構成している。この可変オリフィス148は、フリーピストン87のハウジング85に対する位置を横軸に、通路面積(オリフィス面積)を縦軸にとると、図3に示す特性となっている。つまり、可変オリフィス148は、フリーピストン87のハウジング85に対する可動範囲Aのうち、フリーピストン87がピストンロッド130から所定値以上離れ、シャッタ部材107を通路開口部94から所定値以上離す一端領域a1〜a2では、ロッド通路146の通路面積を最大の一定値とする。そして、フリーピストン87の中立位置a3を含む、他側領域a2〜a4では、フリーピストン87がピストンロッド130に近接し、シャッタ部材107を通路開口部94に近接させるほど、比例的にロッド通路146の通路面積を小さくするように変化させる。図2に示すこの可変オリフィス148は、フリーピストン87のハウジング85に対する変位が大きくなる、緩衝器への低周波振動の入力時の縮み行程から伸び行程への反転前後で通路面積を可変とすることになる。
【0059】
以上を言い換えれば、フリーピストン87には、ロッド通路146の通路開口部94の開口面積をフリーピストン87の移動に応じて調整するシャッタ部材107が設けられている。また、シャッタ部材107は、フリーピストン87から突出し、通路開口部94に進入可能な形状となっている。
【0060】
フリーピストン87の外側環状突起110の軸方向の中央位置には、上記したように、外側環状突起110を径方向に貫通する通路穴118が複数形成されている。これにより、圧力室145は、通路穴118を介して、ハウジング85とOリング88とOリング89とフリーピストン87とで囲まれた室150に常時連通する。言い換えれば、通路穴118は、一方のOリング88と他方のOリング89との間の室150に圧力室145から油液を導く。なお、通路穴118は、フリーピストン87の外側環状突起110の位置に形成されていることから、フリーピストン87のハウジング85に対する移動範囲の全域において、一方のOリング88および他方のOリング89のいずれにも接触することはない。
【0061】
通路穴140,141、室142および通路開口部94で形成される上記したロッド通路146は、上室12および下室13のうちの一方である上室12に連通されて、ピストン11の上室12側への移動によりシリンダ10内の上室12から油液を圧力室145に流す。そして、可変オリフィス148は、圧力室145と直列に設けられている。フリーピストン87とハウジング85との間に設けられ、フリーピストン87の摺動方向両側に配置されたOリング88,89は、このフリーピストン87の変位に対し抵抗力を発生する。つまり、Oリング88は、フリーピストン87がハウジング85に対し一方の上室12側へ移動すると弾性力を発生することになり、Oリング89は、フリーピストン87がハウジング85に対し他方の下室13側へ移動すると弾性力を発生する。
【0062】
ここで、ピストンロッド130が伸び側に移動する伸び行程では、上室12から通路60aを介して下室13に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、上室12から通路60aに導入された油液が、基本的に、シート部71aとシート部71aに当接するディスク75aとの間に形成された常時開口の固定オリフィス78aを介して下室13に流れ、その際オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、上室12から通路60aに導入された油液が、基本的にディスク75aを開きながらディスク75aとシート部71aとの間を通って下室13に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
【0063】
ピストンロッド130が縮み側に移動する縮み行程では、下室13から通路60bを介して上室12に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、下室13から通路60bに導入された油液が、基本的に、シート部71bとシート部71bに当接するディスク75bとの間に形成された常時開口の固定オリフィス78bを介して上室12に流れ、その際オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、下室13から通路60bに導入された油液が、基本的にディスク75bを開きながらディスク75bとシート部71bとの間を通って上室12に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
【0064】
ここで、ピストン速度が遅いとき、つまり微低速域(例えば0.05m/s)の周波数が比較的高い領域(例えば7Hz以上)は、例えば路面の細かな表面の凹凸から生じる振動であり、このような状況では減衰力を下げるのが好ましい。また、同じくピストン速度が遅いときであっても、上記とは逆に周波数が比較的低い領域(例えば2Hz以下)は、いわゆる車体のロールによるぐらつき等の振動であり、このような状況では減衰力を上げるのが好ましい。
【0065】
これに対応して、上記した減衰力可変機構65が、ピストン速度が同じように遅い場合でも、周波数に応じて減衰力を可変とする。つまり、ピストン速度が遅い時、ピストン11の往復動の周波数が高くなると、その伸び行程では、上室12の圧力が高くなって、ピストンロッド130の通路穴140,141、室142および通路開口部94で形成されるロッド通路146を介して減衰力可変機構65の圧力室145に上室12から油液を導入させながら、フリーピストン87が軸方向の下室13側にあるOリング89の付勢力に抗してハウジング85に対して軸方向の下室13側に移動する。このようにフリーピストン87が軸方向の下室13側に移動することにより、可変オリフィス148の通路面積に応じて圧力室145に上室12から油液を導入することになり、上室12から通路60aに導入され減衰バルブ62aを通過して下室13に流れる油液の流量が減ることになる。これにより、減衰力が下がる。このように、フリーピストン87は、ピストン11の移動により圧力室145の容積を可変にする。
【0066】
続く縮み行程では、下室13の圧力が高くなるため、可変オリフィス148の通路面積に応じて、ロッド通路146を介して圧力室145から上室12に油液を排出させながら、それまで軸方向の下室13側に移動していたフリーピストン87が軸方向の上室12側にあるOリング88の付勢力に抗してハウジング85に対して軸方向の上室12側に移動する。このようにフリーピストン87が軸方向の上室12側に移動することにより、下室13の容積を拡大することになり、下室13から通路60bに導入され減衰バルブ62bを通過して上室12に流れる油液の流量が減ることになる。これにより、減衰力が下がる。
【0067】
ピストン11の周波数が高い領域では、フリーピストン87の移動の周波数も追従して高くなり、その結果、上記した伸び行程の都度、上室12から圧力室145に油液が流れ、縮み行程の都度、下室13の容積がフリーピストン87の移動の分拡大することになって、上記のように、減衰力が下がった状態に維持されることになる。
【0068】
他方で、ピストン速度が遅い時、ピストン11の周波数が低くなると、フリーピストン87の移動の周波数も追従して低くなるため、伸び行程の初期に、上室12から圧力室145に油液が流れるものの、その後はフリーピストン87がOリング89を圧縮してハウジング85に対して軸方向の下室13側で停止し、上室12から圧力室145に油液が流れなくなるため、上室12から通路60aに導入され減衰バルブ62aを通過して下室13に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。
【0069】
続く縮み行程でも、その初期に、下室13の容積がハウジング85に対するフリーピストン87の移動の分拡大することになるものの、その後はフリーピストン87がOリング88を圧縮してハウジング85に対し軸方向の上室12側で停止し、下室13の容積に影響しなくなるため、下室13から通路60bに導入され減衰バルブ62bを通過して上室12に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。
【0070】
そして、本実施形態においては、上記したように、フリーピストン87に中立位置へ戻すように付勢力を与える部品としてゴム材料からなるOリング88,89を用いており、フリーピストン87の中立位置では、フリーピストン87とハウジング85との間にあるOリング88が、ハウジング本体83の大径円筒面部103と、フリーピストン87の小径円筒面部117との間に、Oリング89が、ハウジング本体83の大径円筒面部103と、フリーピストン87の小径円筒面部113との間に位置する。
【0071】
この中立位置から例えば伸び行程でフリーピストン87がハウジング85に対して軸方向の下室13側に移動すると、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の小径円筒面部113とがOリング89を、相互間で転動つまり内径側と外径側とが逆方向に移動するように回転させてハウジング85に対して軸方向の下室13側に移動させることになり、その後、ハウジング85の曲面部102の軸方向の上室12側と、フリーピストン87の曲面部114の軸方向の下室13側とが、Oリング89を転動させながらフリーピストン87の軸方向および径方向に圧縮し、続いてハウジング85の曲面部102の軸方向の下室13側と、フリーピストン87の曲面部114の軸方向の上室12とが、Oリング89をフリーピストン87の軸方向および径方向に圧縮する。なお、この中立位置から伸び行程でフリーピストン87がハウジング85に対して軸方向の下室13側に移動すると、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の小径円筒面部117とがOリング88を、相互間で転動させてハウジング85に対して軸方向の下室13側に移動させることになる。
【0072】
このとき、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の小径円筒面部113との間でOリング89を転動させる領域と、ハウジング85の曲面部102とフリーピストン87の曲面部114との間でOリング89を転動させる領域とが、フリーピストン87の移動領域のうち下流側端部から離間した位置において、Oリング89が転動する転動領域であり、下流側端部から離間した位置において、Oリング89がフリーピストン87の移動方向にハウジング85とフリーピストン87と双方に接触した状態で移動する移動領域となっている。この移動とは、Oリング89の少なくともフリーピストン移動方向下流端位置(図2における下端位置)が移動することを言う。
【0073】
また、ハウジング85の曲面部102とフリーピストン87の曲面部114との間でOリング89を圧縮する領域が、フリーピストン87の移動領域のうち下流側端部側において、Oリング89をフリーピストン87の移動方向に弾性変形させる移動方向変形領域となっている。この移動方向変形領域における弾性変形とは、Oリング89のフリーピストン移動方向上流端位置(図2における上端位置)が移動し、下流端位置が移動しない変形のことである。ここでは、転動領域および移動領域が、移動方向変形領域の一部とラップしている。
【0074】
続く縮み行程でフリーピストン87がハウジング85に対して軸方向の上室12側に移動すると、ハウジング85の曲面部102の軸方向の下室13側と、フリーピストン87の曲面部114の軸方向の上室12とが、Oリング89の圧縮を解除し、続いて、ハウジング85の曲面部102の軸方向の上室12側と、フリーピストン87の曲面部114の軸方向の下室13側とが、Oリング89を転動させながら圧縮をさらに解除することになり、続いて、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の小径円筒面部113とがOリング89を、相互間で転動させながらハウジング85に対して軸方向の上室12側に移動させることになる。なお、このとき、Oリング88についても、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の小径円筒面部117とが、相互間で転動させてハウジング85に対して軸方向の上室12側に移動させることになる。そして、その後、ハウジング85の曲面部97の軸方向の下室13側と、フリーピストン87の曲面部116の軸方向の上室12側とが、Oリング88を転動させながらフリーピストン87の軸方向および径方向に圧縮し、続いてハウジング85の曲面部97の軸方向の上室12側と、フリーピストン87の曲面部116の軸方向の下室13側とが、Oリング88をフリーピストン87の軸方向および径方向に圧縮する。
【0075】
このとき、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の小径円筒面部117との間でOリング88を転動させる領域と、ハウジング85の曲面部97とフリーピストン87の曲面部116との間でOリング88を転動させる領域とが、フリーピストン87の移動領域のうち上流側端部から離間した位置において、Oリング88が転動する転動領域であり、上流側端部から離間した位置において、Oリング88がフリーピストン87の移動方向にハウジング85とフリーピストン87と双方に接触した状態で移動する移動領域となっている。この移動とは、Oリング88の少なくともフリーピストン移動方向上流端位置(図2における上端位置)が移動することを言う。
【0076】
また、ハウジング85の曲面部97とフリーピストン87の曲面部116との間でOリング88を圧縮する領域が、フリーピストン87の移動領域のうち下流側端部側において、Oリング88をフリーピストン87の移動方向に弾性変形させる移動方向変形領域となっている。この移動方向変形領域における弾性変形とは、Oリング88のフリーピストン移動方向下流端位置(図2における下端位置)が移動し、上流端位置が移動しない変形のことである。ここでは、転動領域および移動領域が、移動方向変形領域の一部とラップしている。
【0077】
上記に続く伸び行程では、ハウジング85の曲面部97の上室12側とフリーピストン87の曲面部116の下室13側とがOリング88の圧縮を解除し、続いて、ハウジング85の曲面部97の下室13側とフリーピストン87の曲面部116の上室12側とがOリング88を転動させながら圧縮をさらに解除することになり、続いて、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の小径円筒面部117とがOリング88を、相互間で転動させてハウジング85に対して軸方向の下室13側に移動させることになる。このとき、Oリング89についても、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の小径円筒面部113とが、相互間で転動させてハウジング85に対して軸方向の下室13側に移動させることになる。そして、フリーピストン87が中立位置を通過すると、Oリング88,89を上記と同様に、動作させる。
【0078】
以上により、Oリング88,89は、移動方向変形領域において移動方向につぶされる。
【0079】
ここで、ゴム材料からなるOリング88,89によるフリーピストン87の変位に対する荷重の特性は、非線形の特性となる。つまり、フリーピストン87の中立位置の前後の所定範囲では線形に近い特性となり、この範囲を超えると、変位に対して滑らかに荷重の増加率が増大するようになる。上記のように、ピストン11の作動周波数が高い領域では、ピストン11の振幅も小さいため、フリーピストン87の変位も小さくなり、中立位置前後の線形の特性範囲で動作することになる。これにより、フリーピストン87は動きやすくなり、ピストン11の振動に追従して振動して減衰バルブ62a,62bの発生する減衰力の低減に寄与する。
【0080】
他方で、ピストン11の作動周波数が低い領域では、ピストン11の振幅が大きくなるため、フリーピストン87の変位が大きくなり、非線形の特性範囲で動作することになる。これにより、フリーピストン87は徐々に滑らかに、動き難くなり、減衰バルブ62a,62bの発生する減衰力を低減し難くなる。
【0081】
第1実施形態においては、減衰力可変機構65に、上記したように、フリーピストン87のハウジング85に対する変位が大きくなる、緩衝器への低周波振動の入力時の縮み行程から伸び行程への反転前後で通路面積を可変とする可変オリフィス148が設けられている。このため、図4および図5に実線で示すように、破線で示す可変オリフィス148が設けられていない場合と比べて、図4に示す縮み行程から伸び行程への反転初期において減衰力が高い状態を維持できるようになっており、図5に示すピストン速度が低い領域での減衰力を高めることができるようになっている。
【0082】
つまり、可変オリフィス148は、フリーピストン87がピストンロッド130側に移動する縮み行程の終期に、シャッタ部材107のテーパ面部128を通路開口部94のテーパ穴94Bの内周面に近接させてロッド通路146を狭めることになる。このため、続く伸び行程の初期においては、シャッタ部材107がロッド通路146を狭めた状態となっており、その後、伸び行程の進行にしたがってテーパ穴94Bの内周面から離れ、ロッド通路146を徐々に最大通路面積まで開くことになる。その結果、伸び行程の初期において、上記のようにロッド通路146が狭められていることから、上室12から圧力室145への油液の流れが抑制されることになり、フリーピストン87のハウジング85に対する移動に遅れを生じることになる。
【0083】
よって、行程反転後の伸び行程の初期においては、相対的に、上室12から通路60aに導入され減衰バルブ62aを通過して下室13に流れる油液の流量が、増えることになる。よって、緩衝器のストロークと減衰力との関係を示すリサージュ波形は、図4に実線で示すようになり、図4に破線で示す可変オリフィス148を設けない場合と比べて、減衰力が上がる。そして、伸び行程がさらに進行すると、可変オリフィス148はロッド通路146を最大の通路面積とすることになり、減衰力可変機構65は、可変オリフィス148を設けない状態と同様に作動する。
【0084】
以上の構成の第1実施形態の油圧回路図は図6に示すようになっている。つまり、上室12および下室13の間に並列に、伸び側の減衰バルブ62a、縮み側の減衰バルブ62bおよび減衰力可変機構65が設けられており、減衰力可変機構65の上室12側に、減衰力可変機構65のフリーピストン87で制御される可変オリフィス148が設けられている。
【0085】
上記した特許文献1に記載のものでは、ピストンの移動によりシリンダ内の一方の室から作動流体がピストンロッド内を通って流れ出す通路を形成し、この通路を上流側と下流側とに画成するフリーピストンを設けて、減衰力を可変としている。
【0086】
これに対し、以上に述べた第1実施形態によれば、シリンダ11内の上室12と減衰力可変機構65のハウジング85内のフリーピストン87によって画成された圧力室145とを連通するロッド通路146を形成し、フリーピストン87によって圧力室145の容量を可変とすることで減衰力を可変とし、その上で、フリーピストン87に、ロッド通路146の通路開口部94の開口面積をフリーピストン87の移動に応じて調整するシャッタ部材107を設けている。このため、減衰力特性を一層詳細に制御可能となる。つまり、減衰力可変機構65による制御に加えて、縮み行程から伸び行程への行程反転時にロッド通路146の通路開口部94の開口面積をシャッタ部材107によって狭めることで、行程反転後のフリーピストン87のハウジング85に対する変位を遅らせることができるため、伸び行程への反転初期の減衰力を高めることができる。したがって、シャッタ部材107を設けない場合に生じる、減衰力の行程反転初期の立ち上がり悪化に起因したハンドリングの応答性の悪化を防止し、縮み行程から伸び行程への行程反転時の応答性を高めることができ、ハンドリングの応答性向上と、操縦安定性向上とを図ることができる。
【0087】
また、ロッド通路146の通路開口部94は、ピストンロッド130の端面に開口し、シャッタ部材107は、フリーピストン87から突出して通路開口部94に進入可能な形状であるため、簡素かつコンパクトな構造で、ロッド通路146の通路面積を調整可能となる。
【0088】
また、フリーピストン87の変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素として、Oリング88,89を備える構成としたため、ピストン11の作動周波数に感応して減衰力を変化させる場合に円滑に変化させることができる。
【0089】
また、フリーピストン87の小径円筒面部113および曲面部114において、Oリング89に接触している部分であるフリーピストン接触面と、ハウジング85の大径円筒面部103および曲面部102において、Oリング89に接触している部分であるハウジング接触面とが、フリーピストン87の移動によってOリング89に接触している部分のOリングの中心を通る最短距離が変化し、最短距離となる部分を結ぶ線分の向きが変化することになり、フリーピストン87の小径円筒面部117および曲面部116において、Oリング88に接触している部分であるフリーピストン接触面と、ハウジング85の大径円筒面部103および曲面部97において、Oリング88に接触している部分であるハウジング接触面とが、フリーピストン87の移動によってOリング88に接触している部分の最短距離が変化し、最短距離となる部分を結ぶ線分の向きが変化するため、周波数に感応して減衰力を変化させる場合に円滑に変化させることができる。
【0090】
フリーピストン87が一方向へ移動したときに圧縮変形するOリング88と、フリーピストン87が他方向へ移動したときに圧縮変形するOリング89とを有するため、伸び行程および縮み行程の両方で減衰力を円滑に変化させることができる。これにより、減衰力が周波数の変化、ピストン速度の変化等においても円滑に変化するので、減衰力の変化による乗り心地の違和感がなく、さらには、姿勢変化についても徐々に減衰力が大きくなり、運転者に違和感なく姿勢変化を抑えることが出来き、乗り心地、操縦安定性共に、特許文献1にあるようなものと比較し、より高いレベルの車両を提供することが可能となる。
【0091】
なお、第1実施形態において、可変オリフィス148の通路開口部をハウジング85の蓋内筒部91に径方向に貫通するように形成し、シャッタ部材をフリーピストン87のピストン閉板部109から立ち上がって通路開口部を開閉する円筒状に形成しても良い。
【0092】
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図7および図8に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0093】
第2実施形態においては、図7に示すように、第1実施形態に対し部分的変更を行った可変オリフィス148が用いられている。
【0094】
第2実施形態の可変オリフィス148の通路開口部94は、第1実施形態と同様のテーパ穴94Bと、テーパ穴94Bの蓋基板部92側にあって一定径の小径穴94Cと、小径穴94Cの蓋基板部92側にあって蓋基板部92側ほど大径となるテーパ状のテーパ穴94Dとによって形成されている。
【0095】
また、シャッタ部材本体121の頭部125が、第1実施形態と同様の円筒面部127およびテーパ面部128に加えて、テーパ面部128の円筒面部127とは反対側に連続する、円筒面部127よりも小径の一定径の小径円筒面部161と、小径円筒面部161のテーパ面部128とは反対側に連続する、小径円筒面部161から離れるほど大径となるテーパ状のテーパ面部162と、テーパ面部162の小径円筒面部161とは反対側に連続する、小径円筒面部161よりも大径かつ円筒面部127よりも小径の一定径の面部163とを有している。
【0096】
以上の構成の第2実施形態では、フリーピストン87がハウジング85内で図7に示すように中立位置にあるとき、ピストンロッド130の通路開口部94内にシャッタ部材107を進入させている。具体的には、小径穴94Cと小径円筒面部161との軸方向位置を合わせ、テーパ穴94Bの内周面にテーパ面部128を、テーパ穴94Dの内周面にテーパ面部162をそれぞれ対向させている。そして、この中立位置から、フリーピストン87がハウジング85内で蓋部材82側に移動すると、シャッタ部材107が、テーパ面部162を通路開口部94のテーパ穴94Dの内周面から離間させるとともに、テーパ面部128をテーパ穴94Bの内周面に近接させる。これにより、ロッド通路146を狭める。また、中立位置からフリーピストン87が蓋部材82とは反対側に移動すると、シャッタ部材107が、テーパ面部128を通路開口部94のテーパ穴94Bの内周面から離間させるとともに、テーパ面部162をテーパ穴94Dの内周面に近接させる。これにより、ロッド通路146を狭める。
【0097】
第2実施形態の可変オリフィス148は、フリーピストン87のハウジング85に対する位置を横軸に、通路面積(オリフィス面積)を縦軸にとると、図8に示す特性を示す。つまり、第2実施形態の可変オリフィス148は、フリーピストン87のハウジング85に対する可動範囲Aのうち、フリーピストン87の中立位置a3を含む中間領域a12〜a13では、ロッド通路146の通路面積を最大の一定値とし、フリーピストン87がピストンロッド130から所定値以上離れる一端領域a1〜a12では、ロッド通路146の通路面積を、フリーピストン87がピストンロッド130から離れるほど、比例的に小さくなるように変化させる。また、フリーピストン87がピストンロッド130に所定値以上近接する他端領域a13〜a4では、ロッド通路146の通路面積を、フリーピストン87がピストンロッド130に近接するほど、比例的に小さくなるように変化させる。
【0098】
よって、第2実施形態の可変オリフィス148は、フリーピストン87のハウジング85に対する変位が大きくなる、緩衝器への低周波振動の入力時の、縮み行程から伸び行程への反転前後と、伸び行程から縮み行程への反転前後とで通路面積を可変とする。
【0099】
つまり、第2実施形態の可変オリフィス148は、第1実施形態と同様、フリーピストン87がピストンロッド130側に移動する縮み行程の終期に、シャッタ部材107のテーパ面部128を通路開口部94のテーパ穴94Bの内周面に近接させてロッド通路146を狭めることになる。このため、続く伸び行程の初期において、シャッタ部材107がロッド通路146を狭めた状態となっており、その結果、フリーピストン87のハウジング85に対する移動が遅れることになる。
【0100】
よって、行程反転後の伸び行程の初期においては、ロッド通路146を流れる油液の流量が抑制され、相対的に、上室12から通路60aに導入され減衰バルブ62aを通過して下室13に流れる油液の流量が、増えることになる。よって、可変オリフィス148を設けない場合と比べて、減衰力が上がる。
【0101】
また、第2実施形態の可変オリフィス148は、フリーピストン87がピストンロッド130とは反対側に移動する伸び行程の終期に、シャッタ部材107のテーパ面部162を通路開口部94のテーパ穴94Dの内周面に近接させてロッド通路146を狭めることになる。このため、続く縮み行程の初期において、シャッタ部材107がロッド通路146を狭めた状態となっており、その結果、フリーピストン87のハウジング85に対する移動が遅れることになる。
【0102】
よって、行程反転後の縮み行程の初期においては、ロッド通路146を流れる油液の流量が抑制され、相対的に、下室13から通路60bに導入され減衰バルブ62bを通過して上室12に流れる油液の流量が、増えることになる。よって、可変オリフィス148を設けない場合と比べて、減衰力が上がる。
【0103】
以上に述べた第2実施形態によれば、縮み行程から伸び行程への行程反転時に加えて、伸び行程から縮み行程への行程反転時にも、ロッド通路146の通路開口部94の開口面積をシャッタ部材107によって狭めることで、行程反転後のフリーピストン87のハウジング85に対する変位を遅らせることができるため、縮み行程への反転初期の減衰力をも高めることができる。これにより、縮み行程から伸び行程への行程反転時および伸び行程から縮み行程への行程反転時の双方の応答性を高めることができ、ハンドリングの応答性向上と、操縦安定性向上とを図ることができる。
【0104】
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図9〜図11に基づいて第2実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第2実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0105】
第3実施形態においては、図9に示すように、第2実施形態に対し部分的変更を行った可変オリフィス148が用いられている。第3実施形態の可変オリフィス148の通路開口部94は、第2実施形態と同様のテーパ穴94Bと小径穴94Cとテーパ穴94Dとによって形成されている。
【0106】
また、シャッタ部材本体121が、ナット部材122とでスペーサ123およびピストン閉板部109を挟持するフランジ部170と、フランジ部170のネジ軸部126とは反対側の軸部171とを有しており、軸部171は、中間位置から径方向外側に突出する円環状の大径部172を有している。つまり、軸部171は、フランジ部170側から順に、フランジ部170よりも小径の一定径の円筒面部173と、円筒面部173から離れるほど大径となるテーパ状のテーパ面部174と、円筒面部173よりも大径の一定径の大径円筒面部175と、大径円筒面部175から離れるほど小径となるテーパ状のテーパ面部176と、円筒面部173と同径の一定径の円筒面部177とを有している。
【0107】
以上の構成の第3実施形態では、フリーピストン87がハウジング85内で図9に示すように中立位置にあるとき、ピストンロッド130の通路開口部94内にシャッタ部材107を進入させている。具体的には、大径部172と小径穴94Cとの軸方向位置を合わせている。よって、ロッド通路146の通路面積を最小としている。そして、この中立位置から、フリーピストン87がハウジング85内でピストンロッド130側に移動すると、シャッタ部材107が、大径部172を通路開口部94の小径穴94Cからテーパ穴94D側に離間させる。これにより、ロッド通路146を広げる。また、中立位置から、フリーピストン87がピストンロッド130とは反対側に移動すると、シャッタ部材107が、大径部172を通路開口部94の小径穴94Cからテーパ穴94B側に離間させる。これにより、ロッド通路146を広げる。
【0108】
第3実施形態の可変オリフィス148は、フリーピストン87のハウジング85に対する位置を横軸に、通路面積(オリフィス面積)を縦軸にとると、図10に示す特性を示す。つまり、第3実施形態の可変オリフィス148は、フリーピストン87のハウジング85に対する可動範囲Aのうち、フリーピストン87の中立位置a3を含む中間領域a22〜a23では、ロッド通路146の通路面積を最小の一定値とし、フリーピストン87がピストンロッド130から所定値以上離れる一端領域a1〜a21および他端領域a24〜a4では、ロッド通路146の通路面積を最大の一定値とする。また、一端領域a1〜a21と中間領域a22〜a23との間の一側領域a21〜a22では、ロッド通路146の通路面積を、フリーピストン87がピストンロッド130から離れるほど、比例的に大きくなるように変化させる。また、他端領域a24〜a4と中間領域a22〜a23との間の他側領域a23〜a24では、ロッド通路146の通路面積を、フリーピストン87がピストンロッド130に近接するほど、比例的に大きくなるように変化させる。
【0109】
このような第3実施形態の可変オリフィス148は、伸び行程から縮み行程への行程反転時および縮み行程から伸び行程への行程反転時に、フリーピストン87が中立位置を通過するときに、ロッド通路146の通路面積が狭まり、プリーピストン87の移動速度が遅くなるため、結果的には、第2実施形態と同様に、伸び側および縮み側の初期の減衰力を上げることができる。これにより、縮み行程から伸び行程への行程反転時および伸び行程から縮み行程への行程反転時の双方の応答性を高めることができ、ハンドリングの応答性向上と、操縦安定性向上とを図ることができる。
【0110】
加えて、中立位置でのロッド通路146の通路面積が小さいことから、プリーピストン87の変位が小さく常に中立位置付近に留まっている高周波数領域において、ロッド通路146の通路面積が小さい場合と同様に減衰力を上げることができる。つまり、ピストン11の速度が一定の状態で、図11に示すように、周波数が低い領域0〜f1(例えば2Hz以下)での減衰力を高い一定値とし、この領域よりも周波数が高い領域f1〜f2での減衰力を周波数が高くなるほど比例的に小さくなるようにし、この領域よりも周波数が高い領域f2〜f3(例えば5〜10Hz)での減衰力を最も低い一定とし、この領域よりも周波数が高い領域f3〜f4での減衰力を周波数が高くなるほど比例的に大きくなるようにし、この領域よりも周波数が高い領域f4〜f5(例えば13〜15Hz)での減衰力を領域0〜f1よりも低く領域f2〜f3よりも高い一定とするように、減衰力を可変とする。なお、領域f4〜f5の破線部分は可変オリフィス148がない場合の減衰力を示している。
【0111】
以上に述べた第3実施形態によれば、低周波数帯では減衰力を高くしてフワフワ感発生を抑制するとともに操縦安定性を向上し、中間周波帯では減衰力を低くしてヒョコヒョコ感発生を抑制し、バネ下共振付近の高周波数帯では適度な減衰力を発生させてバネ下制振性を向上することができる。したがって、より高次元での乗り心地改善と、操縦安定性向上との両立を図ることができる。
【0112】
「第4実施形態」
次に、第4実施形態を主に図12に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0113】
第4実施形態においては、第1実施形態とは異なる減衰力可変機構180が用いられている。減衰力可変機構180は、第1実施形態の減衰力可変機構65と同様、周波数(振動状態)により外部から制御されることなく減衰力を可変とする周波数感応部である。
【0114】
減衰力可変機構180は、ピストンロッド本体16のオネジ19に螺合されるメネジ181が形成された蓋部材182と、この蓋部材182にその一端開口側が閉塞されるように取り付けられる略円筒状のハウジング本体183とからなるハウジング184と、このハウジング184内に摺動可能に嵌挿されるフリーピストン185と、フリーピストン185とハウジング184の蓋部材182との間に介装されてフリーピストン185がハウジング184に対し軸方向の蓋部材182側へ移動したときに圧縮変形する縮み側の弾性体である金属製のコイルばね186と、フリーピストン185とハウジング184のハウジング本体183との間に介装されてフリーピストン185がハウジング184に対し上記とは反対側へ移動したときに圧縮変形する伸び側の弾性体である金属製のコイルばね187と、フリーピストン185に保持されてハウジング184との隙間をシールするシールリング188とを有している。コイルばね186はフリーピストン185が一方向へ移動したときに圧縮変形してフリーピストン185の変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素となっており、コイルばね187はフリーピストン185が他方向へ移動したときに圧縮変形してフリーピストン185の変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素となっている。
【0115】
蓋部材182は、切削加工を主体として形成されるもので、メネジ181が形成された略円筒状の蓋円筒状部191と、この蓋円筒状部191の軸方向の一端部から径方向外側に延出する円板状の蓋フランジ部192と、蓋円筒状部191の軸方向の他端部から径方向内側に延出する板状の蓋先板部193とを有している。蓋先板部193の中央には、通路開口部(圧力室側開口)194が形成されている。通路開口部194は、蓋フランジ部192とは反対側にあって蓋フランジ部192側ほど小径となるテーパ穴194Aと、テーパ穴194Aの蓋フランジ部192側に連続する一定径の小径穴194Bと、小径穴194Bの蓋フランジ部192側に連続し、蓋フランジ部192側ほど大径となるテーパ穴194Cとを有している。
【0116】
蓋部材182は、メネジ181においてピストンロッド本体16のオネジ19に螺合されることになり、蓋フランジ部192においてバルブ規制部材77aに当接する。第1実施形態と同様、蓋円筒状部191および蓋先板部193とピストンロッド本体16とでピストンロッド130が構成されており、通路開口部194は、このピストンロッド130のシリンダ内端側の端面に位置する。ピストンロッド本体16、蓋内筒部191および蓋先板部193とで囲まれた室195と、通路開口部194とが、ピストンロッド130に設けられて上室12に連通するロッド通路146の一部を構成している。
【0117】
ハウジング本体183は、切削加工を主体として形成されるもので、円筒状部196の軸方向一側に内フランジ部197が形成された形状をなしている。このハウジング本体183の内フランジ部197とは反対側に、蓋部材182の蓋フランジ部192が嵌合されることになり、この状態でハウジング本体183が加締められることで、ハウジング本体183と蓋部材182とが一体化されてハウジング184を構成する。
【0118】
フリーピストン185は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状のピストン筒部201と、このピストン筒部201の軸方向の一側を閉塞するピストン閉板部202とを有している。ピストン筒部201には、軸方向のピストン閉板部202とは反対側の外周面に、シールリング188を保持するシール溝203が形成されている。ピストン閉板部202には、径方向の中央に、取付穴204が軸方向に貫通して形成されている。
【0119】
フリーピストン185の取付穴204には、シャッタ部材206が取り付けられている。シャッタ部材206は、取付穴204に嵌合状態で加締められる加締め軸部207と、ピストン閉板部202に当接するフランジ部208と、フランジ部208の加締め軸部207とは反対側の軸部209とを有している。軸部209は、一定径の円筒面部210と、円筒面部210のフランジ部208とは反対側にあって円筒面部210に連続し円筒面部210から軸方向に離れるほど小径となるテーパ状のテーパ面部211とを有している。
【0120】
フリーピストン185は、ハウジング184内に配置された状態で、ハウジング本体183の円筒状部196内に摺動可能に嵌挿されることになる。フリーピストン185のピストン筒部201の内側において、ピストン閉板部202と蓋フランジ部192との間にコイルばね186が、ピストン閉板部202と内フランジ部197との間にコイルばね187が、それぞれ配置されている。コイルばね186,187の付勢力によってフリーピストン185は、図12に示すようにハウジング184内の所定の中立位置に位置することになり、このとき、シャッタ部材206の軸部209が通路開口部194に進入する。
【0121】
フリーピストン185とハウジング本体183の円筒状部196と蓋部材182とシールリング188とで囲まれてロッド通路146に連通する部分が、上室12に連通可能な圧力室215となっている。
【0122】
第4実施形態の減衰力可変機構180においては、例えば伸び行程では、軸方向の上室12側のコイルばね186を伸ばし軸方向の下室13側のコイルばね187を縮めながらフリーピストン185がハウジング184に対して軸方向の下室13側に移動して、圧力室215にロッド通路146を介して上室12側の油液を導入する。
【0123】
また、縮み行程では、圧力室215から、軸方向の下室13側のコイルばね187を伸ばし軸方向の上室12側のコイルばね186を縮めながらフリーピストン185がハウジング184に対して軸方向の上室12側に移動して、圧力室215の油液をロッド通路146を介して上室12側に排出する。
【0124】
そして、中立位置から、フリーピストン185がハウジング184内で摺動し、蓋部材182側に移動すると、フリーピストン185のシャッタ部材206が、軸部209の円筒面部210を通路開口部194の小径穴194B内に位置させる。これにより、ロッド通路146を狭める。また、この状態からフリーピストン185が蓋部材182とは反対側に移動すると、通路開口部194の小径穴194Bから軸部209を引き抜き、フリーピストン185の移動に応じた距離だけ軸部209のテーパ面部211を通路開口部194のテーパ穴194Aの内周面から離間させる。シャッタ部材206は、通路開口部194から所定距離以上離間すると、通路開口部194を小径穴194Bの通路面積で開口させる。このように、シャッタ部材206も、フリーピストン185のハウジング184に対する位置によって通路開口部194の通路面積を調整することになる。
【0125】
言い換えれば、シャッタ部材206および通路開口部194も、ロッド通路146の通路面積を可変とする可変オリフィス216を構成している。この可変オリフィス216も、第1実施形態と同様に、フリーピストン185のハウジング184に対する変位が大きくなる、緩衝器への低周波振動の入力時の縮み行程から伸び行程への反転前後で通路面積を可変とすることになる。
【0126】
以上の第4実施形態によれば、コイルばね186,187によってフリーピストン185の変位に対し抵抗力を発生するため、耐久性を向上できる。
【0127】
以上に述べた実施形態によれば、作動流体が封入されたシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内をロッド側室とボトム側室とに区画するピストンと、前記ピストンに一端が連結されると共に他端が前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、前記ピストンロッドの一端側に設けられたハウジングと、前記ハウジング内に摺動自在に挿入されたフリーピストンと、前記ロッド側室と前記ハウジング内の前記フリーピストンによって画成された圧力室とを連通するロッド通路と、前記ロッド側室とボトム側室とを連通する通路に設けられた減衰バルブとからなる緩衝器において、前記フリーピストンには、前記ロッド通路の圧力室側開口の開口面積を前記フリーピストンの移動に応じて調整するシャッタ部材が設けられている構成とした。このため、減衰力特性を一層詳細に制御可能となる。
【0128】
また、前記ロッド通路の前記圧力室側開口は、前記ピストンロッドの端面に開口し、前記シャッタ部材は、前記フリーピストンから突出し、前記圧力室側開口に進入可能な形状である構成とした。したがって、簡素かつコンパクトな構造で、ロッド通路の通路面積を調整可能となる。
【0129】
また、前記フリーピストンの変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素を備える構成とした。したがって、ピストンの作動周波数に感応して減衰力を変化させる場合に円滑に変化させることができる。
【0130】
また、前記抵抗要素がばねである構成としたことにより、耐久性を向上させることができる。
【0131】
また、前記抵抗要素は、前記フリーピストンと前記ハウジングとの間に設けられた1つまたは複数の弾性体からなり、前記フリーピストンの前記弾性体が接触するフリーピストン接触面、または、前記ハウジングの前記弾性体が接触する前記ハウジング接触面の少なくとも一方の面が、前記フリーピストンの移動方向に対し傾斜する面を有しており、前記フリーピストンの移動によって前記フリーピストン接触面と前記ハウジング接触面との最短距離が変化する構成とした。したがって、周波数に感応して減衰力を変化させる場合に円滑に変化させることができる。
【0132】
また、前記弾性体は、前記フリーピストンが一方向へ移動したときに圧縮変形する一の弾性体と、前記フリーピストンが他方向へ移動したときに圧縮変形する他の弾性体とを有する構成とした。これにより、伸び行程および縮み行程の両方で減衰力を円滑に変化させることができる。
【0133】
上記各実施の形態は、モノチューブ式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、シリンダの外周に外筒を設け、外筒とシリンダの間にリザーバを設けた複筒式油圧緩衝器に用いてもよく、あらゆる緩衝器に用いることができる。また、複筒式油圧緩衝器の場合、シリンダのボトムに下室とリザーバとを連通するボトムバルブを設け、このボトムバルブに上記ハウジングを設けることで、ボトムバルブに本発明を適用することも可能である。また、シリンダの外部にシリンダ内と連通する油通路を設け、この油通路に減衰力発生機構を設ける場合は、上記ハウジングをシリンダ外部に設けることになる。
【0134】
なお、上記実施の形態では、油圧緩衝器を例に示したが、流体として水や空気を用いることもできる。
さらに、上記各実施形態では、抵抗要素である弾性体としてOリングを2個の例を示したが、必要に応じて同様の技術思想で、1個または3個以上としてもよい。
また、上記各実施形態では、抵抗要素である弾性体としてゴム(樹脂)製のリングを用いた例を示したが、ゴム製の球を周方向に間隔をもって複数も設けてもよく、また、本発明に用いることのできる弾性体は、一の軸方向に弾性を有するもではなく、複数の軸方向に対して弾性を有するものであれば、ゴムでなくともよい。例えば、金属製のばねとすれば、耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0135】
10 シリンダ
11 ピストン
12 上室(ロッド側室)
13 下室(ボトム側室)
60a,60b 通路
62a,62b 減衰バルブ
85,184 ハウジング
87,185 フリーピストン
88,89 Oリング(抵抗要素,弾性体)
94,194 通路開口部(圧力室側開口)
97,102,114,116 曲面部(傾斜する面)
107,206 シャッタ部材
130 ピストンロッド
145,215 圧力室
146 ロッド通路
186,187 コイルばね(抵抗要素,弾性体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されたシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内をロッド側室とボトム側室とに区画するピストンと、
前記ピストンに一端が連結されると共に他端が前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの一端側に設けられたハウジングと、
前記ハウジング内に摺動自在に挿入されたフリーピストンと、
前記ロッド側室と前記ハウジング内の前記フリーピストンによって画成された圧力室とを連通するロッド通路と、
前記ロッド側室とボトム側室とを連通する通路に設けられた減衰バルブとからなる緩衝器において、
前記フリーピストンには、前記ロッド通路の圧力室側開口の開口面積を前記フリーピストンの移動に応じて調整するシャッタ部材が設けられていることを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記ロッド通路の前記圧力室側開口は、前記ピストンロッドの端面に開口し、前記シャッタ部材は、前記フリーピストンから突出し、前記圧力室側開口に進入可能な形状であることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記フリーピストンの変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記抵抗要素はばねであることを特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記抵抗要素は、
前記フリーピストンと前記ハウジングとの間に設けられた1つまたは複数の弾性体からなり、
前記フリーピストンの前記弾性体が接触するフリーピストン接触面、または、前記ハウジングの前記弾性体が接触する前記ハウジング接触面の少なくとも一方の面が、前記フリーピストンの移動方向に対し傾斜する面を有しており、前記フリーピストンの移動によって前記フリーピストン接触面と前記ハウジング接触面との最短距離が変化することを特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記弾性体は、前記フリーピストンが一方向へ移動したときに圧縮変形する一の弾性体と、前記フリーピストンが他方向へ移動したときに圧縮変形する他の弾性体とを有することを特徴とする請求項5に記載の緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−50198(P2013−50198A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189781(P2011−189781)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】