説明

踏抜き防止板を有する射出成形靴およびその製造方法。

【目的】 本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたもので、射出成形により製造される靴であって、踏抜き防止板を靴底上面部位に有しているにもかかわらず、踏抜き防止板が強固に固定されている射出成形靴、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【構成】 複数のモールドを組み合わせることで形成した空隙に流動性のある合成樹脂材料が充填されたのち、合成樹脂材料の固化により靴底を含む部分が形成される射出成形靴において、踏抜き防止板1が、靴底と、連通構造を有するインナー材2との間に配設されており、踏抜き防止板の周りに、靴底と一体の浸透固化部2bが形成されており、当該浸透固化部は合成樹脂材料がインナー材に浸透し固化した部分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏抜防止板を取り付けた射出成形靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工事現場や地震等の災害地で踏抜き防止板付きの安全靴が使用されている。安全靴は、ステンレス板、厚紙板、プラスチック板などの硬質の踏抜き防止板を靴底の上面に固定するか、靴底に埋設させることで、釘、ガラスなどから足を保護するものである。
【特許文献1】実公昭42−11253号公報
【特許文献2】実公昭37−20753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このような安全靴は、踏抜き防止板を取り付けた靴底を別途作製し、これを甲皮に接合すれば製造することができるが、踏抜き防止板を靴底に取り付ける工程、甲皮とこの靴底とを接合する工程とが必要であり製造コストがかさみがちであった。
【0004】
製造コストを抑えるには、甲皮と靴底とを接合する工程を別途に必要としない射出成形法(ダイレクトソーリング法)が有効と考えられる。しかし、合成樹脂材料で形成される靴底と踏抜き防止板との十分な接合力が得難いため、靴底上面部位に踏抜き防止板を配設すると踏抜き防止板が靴内へ脱落してしまう問題がある。その対策として靴底形成空間にインサート保持部材などで踏抜き防止板を浮かすようにして固持し、ここに合成樹脂材料を射出により充填して靴底内に踏抜き防止板を靴底内に埋設させることが考えられるが、踏抜き防止板自体の存在により合成樹脂材料の流れが乱されて、合成樹脂材料の未充填による欠損部が発生する問題がある。また、合成樹脂材料の流れによる圧力で踏抜き防止板が動いてしまう問題もある。
【0005】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたもので、射出成形により製造される靴であって、踏抜き防止板を靴底上面部位に有しているにもかかわらず、踏抜き防止板が強固に固定されている射出成形靴、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の踏抜き防止板を有する射出成形靴は、複数のモールドが組み合わされて形成された空隙に流動性のある合成樹脂材料が充填されたのち、合成樹脂材料の固化により靴底を含む部分が形成される射出成形靴において、
踏抜き防止板が、靴底と、連通構造を有するインナー材との間に配設されており、
踏抜き防止板の周りに、靴底と一体の浸透固化部が形成されており、当該浸透固化部は合成樹脂材料がインナー材に浸透し固化した部分であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の踏抜き防止板を有する射出成形靴は、好ましくは、浸透固化部から立ち上がって靴内へ突出しかつ踏抜き防止板の上面側に廻り込んだ突出固化部が、踏抜き防止板の周縁に沿って形成されている構成である。
【0008】
本発明の踏抜き防止板を有する射出成形靴の製造方法は、踏抜き防止板が金属系材料で作られており、
踏抜き防止板の少なくとも上面にホットメルト系接着剤を配し、
足型モールドの足裏に対応する面を覆うようにインナー材を配するとともに、そのインナー材の下面に、ホットメルト系接着剤を配した踏抜き防止板を配し、
踏抜き防止板を配したインナー材とこれらを囲む他モールドとの間に形成された空隙に、熱せられた合成樹脂材料を充填することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の踏抜き防止板を有する射出成形靴の製造方法は、足型モールドには踏抜き防止板の配設位置に対応した凹部が設けられており、当該凹部は踏抜き防止板で部分的に塞がれるような凹部であり、
足型モールドの足裏に対応する面を覆うようにインナー材を配するとともに、そのインナー材の下面に踏抜き防止板を配し、
踏抜き防止板を配したインナー材とこれらを囲む他モールドとの間に形成された空隙に、合成樹脂材料を充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の踏抜き防止板を有する射出成形靴は、踏抜き防止板のすぐ上のインナー材が、踏抜き防止板の周りに位置する部分では浸透固化部となっており、踏抜き防止板に対して蓋のように作用するので、踏抜き防止板が強固に靴に固定されるという効果を奏す。そして、踏抜き防止板のすぐ上のインナー材が、踏抜き防止板の上に位置する部分では合成樹脂材料の浸透し固化していない部分となっているため、連通構造がなす空隙により、地面から伝わってくる冷気や熱気の足への伝達量を低下させるという効果を奏す。
【0011】
また、本発明の踏抜き防止板を有する射出成形靴は、突出固化部が踏抜き防止板に対して留め具のように作用するので、踏抜き防止板がより強固に靴に固定されるという効果を奏す。
【0012】
本発明の踏抜き防止板を有する射出成形靴の製造方法は、金属系材料で作られた踏抜き防止板の少なくとも上面にホットメルト系接着剤を配したので、合成樹脂材料の熱が踏抜き防止板を伝わってこの接着剤に伝達され、この熱により接着剤が接着性を発現して踏抜き防止板とインナー材とを接合する。その際、踏抜き防止板が金属系材料で作られているので踏抜き防止板の上面に配された接着剤に熱が伝達しやすいという効果を奏す。また、インナー材が踏抜き防止板に接合することにより、インナー材の踏抜き防止板に対する蓋のような作用が高められる。
【0013】
また、本発明の踏抜き防止板を有する射出成形靴の製造方法は、踏抜き防止板で部分的に塞がれるような凹部を足型モールドに設けたので、突出固化部を良好に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の踏抜き防止板を有する射出成形靴を図面に基づいて説明する。本発明の実施形態の射出成形靴を図1、図3、図5に示す。図1は長靴10、図3は長靴11、図5は短靴12のそれぞれ足長方向の断面図である。
【0015】
(実施形態1)長靴10を図1、図2に基づいて説明する。踏抜き防止板1は、靴底より硬い合成樹脂板、アルミ板、スチール板、ステンレス板などが用いられる。踏抜き防止板1は、靴底とインナー材との間に挟まれているとともに、靴内底面50に収まる大きさ、形状であり、かつ踏抜き防止板1の周りに底面50の周縁部がはみ出るように配設されている。また、踏抜き防止板1は、接着剤を介してインナー材に接合されるものであるが、ホットメルト系接着剤を用い、熱せられた合成樹脂材料の熱を利用して両者を接合するようにすると製造上効率的であり、このとき熱を効率よく接着剤に伝達させ、しかも薄くても強度が高いという点で、熱伝導率10(W/m・K)以上の金属系材料が好適に用いられる。具体的には、0.3〜0.5mmのステンレス板が好適に用いられる。踏抜き防止板1は足裏全体を保護できるような大きさ、形状であることが好ましい。
【0016】
インナー材2は、足裏側に面し、少なくとも靴内底面50を覆うように設けられたもので、連通構造を有することで流動性のある合成樹脂材料が浸透ないし透過し得るものである。インナー材2を構成する素材は、織布、編布、不織布などの布帛の単層材、布帛/布帛、布帛/連通構造のポリウレタンフォーム/布帛、布帛/綿などのウエブ/布帛など積層材が用いられ、好ましくは下層に布帛が配置された素材である。布帛は、気孔容積率40〜97%(JISL―1096)、厚さ0.3mm以上、単位面積あたりの質量60〜300g/mのものが、流動化した合成樹脂材料が浸透ないし透過しやすく、また地面からの冷気や熱気を阻むなどの理由で好適に用いられる。布帛は起毛布やダブルラッセル布に代表される表裏面の地組織を連結糸で連結した立体網状布なども好適に用いられる。長靴10においては、インナー材2は、布帛の単層材が用いられて縫製などで靴下のような形状とされている。
【0017】
靴底3は、流動性のある合成樹脂材料がモールドに射出されたのち固化することで形成されたものである。長靴10においては、甲皮4は、靴底3の形成と同時に形成されて靴底3と一体となっている。
【0018】
合成樹脂材料は、塩化ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、合成ゴム(SBRやNBR)、2液反応型ポリウレタンなどの合成樹脂に、必要に応じて増量剤、軟化剤、硬化剤、安定剤を添加したものが用いられる。また、これらの合成樹脂材料は、熱せられて流動性を帯びる熱可塑性樹脂を使用したものが好ましく、中でも可塑剤を添加して適度な硬度に調製された塩化ビニル系樹脂材料が好ましい。
【0019】
符号2bの部分は、インナー材2に合成樹脂材料が浸透して形成された浸透固化部である。浸透固化部2bは、少なくとも靴内底面50の範囲で、踏抜き防止板1の周りに位置するインナー材2に合成樹脂材料が浸透して靴底3と一体に形成された部分である。浸透固化部2bは、踏抜き防止板1の上側でかつ当該踏抜き防止板の周りに形成されて踏抜き防止板1に当接している。このとき、浸透固化部2bの縁部が踏抜き防止板1に重なって重なりしろが形成されたものであると、踏抜き防止板1がいっそう強く靴に固定される。浸透固化部2bは、インナー材の厚さ方向すべてにわたって形成されている必要はないが、浸透固化部の厚さは0.3mm以上であることが好ましい。
【0020】
符号2aの部分は、合成樹脂材料がインナー材2に浸透し固化していない部分、あるいは合成樹脂材料が多少浸透し固化していてもインナー材の性状がほぼ保たれている部分である。したがって、インナー材のこの部分は、たとえばインナー材が布帛で構成された場合には、繊維同士間ないし糸同士間に微細な空隙が存在するので、地面から伝わってくる冷気や熱気の足への伝達量を低下させる部分となる。
【0021】
(実施形態2)長靴11を図3、図4に基づいて説明する。長靴11は、突出固化部5を有している以外は長靴10と同じである。突出固化部5は、インナー材を透過して靴内へ突出した合成樹脂材料が固化してなるものである。突出固化部5は、浸透固化部2bの上面より靴内へ向けて突出した部分であり、踏抜き防止板1の周縁に沿って形成されて、かつ踏抜き防止板の上面側に廻り込んでいる。突出固化部5は、図6に示すように踏抜き防止板1の周縁に沿って並んだ複数個で構成されることが好ましいが、踏抜き防止板1の周縁に沿って連続した輪(不図示)のように構成されてもよいし、図7に示すように踏抜き防止板5の上面側に深く廻り込んでその上面側を平面視ネット状に覆った構成でもよい。突出固化部5が踏抜き防止板1の上面側をネット状に覆った構成であれば、靴に踏抜き防止板をより強固に固定するとともに、ネット状の突出固化部により新たな空隙が形成されるので、より地面からの冷気や熱気を阻むことができる。
突出固化部5のインナー材上面からの高さは3〜10mmとすることが好ましい。
【0022】
(実施形態3)短靴11を図5に基づいて説明する。短靴11においても、踏抜き防止板1、インナー材の素材などは長靴10、長靴11と同じものが用いられる。また、突出固化部5は長靴11のものと同じように形成されている。短靴12の長靴11との主な相違点は、インナー材40が靴内底面50にほぼ一致する大きさ、形状である点、甲皮41が靴底3とは異なる別素材で形成されている点である。短靴12においては、甲皮41の下縁とインナー材40の周縁とが縫着されたものが靴下のような形状となっている。
【0023】
次に、本発明の踏抜き防止板を有する射出成形靴の製造方法について説明する。
【0024】
(実施形態1の製造方法)長靴10の製造方法を図8に基づいて説明する。
まず、足型モールド21に、布帛を縫製により靴下のような形状にしたインナー材2を被せる。そして、インナー材2の足裏に対応する部位に、足裏全体を保護できるような大きさ、形状の踏抜き防止板1を両面テープなどで仮止めにより配置する。仮止めは、踏抜き防止板1が金属製であれば、足型モールドに磁石を設けて磁力の利用によって行うことができる。踏抜き防止板1には足型モールドの足裏の凹凸形状に合うように凹凸を付与しておいてもよい。
【0025】
踏抜き防止板1の少なくとも上面には、ホットメルト系接着剤(不図示)を配する。ホットメルト系接着剤を用いる理由は、常温で接着性が無いため取り扱いやすく、合成樹脂材料の熱で接着性を発現し、合成樹脂材料の充填時の圧力で圧着され、モールドから靴を脱型するときにはすでに接着力を発現しているからである。ホットメルト接着剤を踏抜き防止板1の上面に配する方法としては、ホットメルト系フィルムを用いこれを踏抜き防止板1に熱融着などで貼着する方法もあるが、溶液型あるいは水分散型のホットメルト系接着剤を踏抜き防止板1に塗着する方法が簡便である。
【0026】
この際、踏抜き防止板1の下面にも同様に、ホットメルト系接着剤を配しておいて、踏抜き防止板1と靴底3との接合力が高まるようにしておくことが好ましい。
【0027】
そして、足型モールド21、側モールド22、底モールド23を組み合わせて空隙25を形成する。射出成形機(不図示)を用いて熱せられて流動性を帯びた合成樹脂材料を、底モールド23の底面の射出口24から、インナー2および踏抜き防止板1を装着したモールド装置20の空隙25に加圧して完全に充填する。
【0028】
この際、インナー材2の踏抜き防止板1の周りに位置する部分には、合成樹脂材料が浸透するので浸透固化部2bが靴底3と一体に形成される。しかし、インナー材2の踏抜き防止板1の上に位置する部分には、踏抜き防止板1にさえぎられて合成樹脂材料があまり浸透しないので浸透固化部は形成されない。また、合成樹脂材料の充填時、合成樹脂材料の熱が踏抜き防止板1を伝わってホットメルト系接着剤に伝達され、この接着剤を介し踏抜き防止板1にインナー材2が接合される。なお、合成樹脂材料を底モールド23の底面の射出口24から注入することにより、合成樹脂材料の流れにより踏抜き防止板1にかかる圧力は足型モールドへ向くので、踏抜き防止板1は足型モールドに押さえつけられることになり位置ズレが起こり難い。
そして、合成樹脂材料の固化後、成形品をモールド装置20から取り出すことで長靴10を得る。
【0029】
(実施形態2の製造方法)長靴11の製造方法を図9に基づいて説明する。
長靴11の製造方法は、長靴10の製造方法においてモールド装置が異なるだけで基本的には同じである。ただし、踏抜き防止板1とインナー材2との接合が、上記のホットメルト系接着剤方式で接合することが好ましいがそれに限定されない点、および合成樹脂材料の充填により足型モールド27の凹部29に合成樹脂材料が充填されて突出固化部5が形成される点で、長靴10の製造方法とは異なる。具体的には、インナー材2および踏抜き防止板1を装着したモールド装置26の空隙28に熱せられて流動性を帯びた合成樹脂材料を加圧して完全に充填することで、合成樹脂材料をインナー材2に浸透かつ透過させて凹部29に充填し、浸透固化部2bから靴内へ立ち上がって突出した突出固化部5を形成する。
【0030】
モールド装置26は、足型モールド27の底面に踏抜き防止板1の配設する位置に対応した凹部29が設けられている点のみがモールド装置20と異なる。凹部29は、踏抜き防止板の周縁に沿って並ぶ複数個のくぼみで構成することが好ましいが、踏抜き防止板の周縁に沿う連続した輪状の溝で構成してもよい。そして、これらの凹部29は、図11に示すように踏抜き防止板1で部分的に塞がれるようにされる。また、凹部29は、平面視ネット状に広がった溝で構成してもよい。
【0031】
(実施形態3の製造方法)短靴12の製造方法も、長靴10の製造方法と大差はないので主に異なる部分を取り上げて、図10に基づいて簡単に説明する。
まず、甲皮41とインナー材40を縫着して靴下のような形状にする。このものを足型モールド31に被せる。そして、インナー材2の足裏に対応する部位に、両面にホットメルト接着剤を塗着した踏抜き防止板1を両面テープなどで仮止めする。
【0032】
そして、足型モールド31、側モールド32、底モールド33を組み合わせて空隙34を形成する。射出成形機(不図示)を用いて熱せられて流動性を帯びた合成樹脂材料を、底モールド33の底面の射出口24から、インナー材および踏抜き防止板1を装着したモールド装置30の空隙34に加圧して完全に充填して、合成樹脂材料をインナー材2に浸透かつ透過させて凹部29に充填し、靴底部3および浸透固化部2bと一体の突出固化部5を形成する。そして、合成樹脂材料の固化後、成形品をモールド装置30から取り出すことで短靴12を得る。
【実施例】
【0033】
(実施例1)まず長靴10を例に説明する。実施例1では、モールド装置20を用い、踏抜き防止板1として、足裏全体を保護できるような大きさ、形状の0.4mm厚のステンレス板を用い、インナー材2として、0.7mm厚、200g/m、気孔容積率72%の編布を用いた。
まず、インナー材2を足型モールド21に被せ、両面に40g/mの水分散型ホットメルト系接着剤を塗着した踏抜き防止板1の真ん中付近に両面テープを貼着し、この両面テープを介して踏抜き防止板1をインナー材2の足裏に対応する部位に仮止めした。
【0034】
そして、この足型モールド21に、側モールド22、底モールド23を組み合わせて空隙25を形成し、ポリ塩化ビニル(重合度1300)およびジオクチルフタレートを主成分とする合成樹脂材料を190℃に熱して流動性を帯びさせ射出口24よりこの空隙25に充填した。その後、自然冷却により合成樹脂材料を固化させて、実施例の長靴10を得た。
【0035】
この長靴10には、踏抜き防止板1の周りの部分にかつ当該踏抜き防止板に接してその上方側に位置する0.7mm厚の浸透固化部2bが形成されている。また、図2に示す符号2aの部分は、ホットメルト系接着剤を介して踏抜き防止板1に接合している。
【0036】
(実施例2)次に長靴11を例に説明する。実施例2では、足型モールド27に踏抜き防止板の配設位置に対応した凹部29が設けられているモールド装置26を用い、踏抜き防止板1およびインナー材2として実施例1と同様品を用いた。なお、凹部29は、踏抜き防止板で部分的に塞がれるようにされており、かつ踏抜き防止板の周縁に沿って並ぶ20個のくぼみと、その内18個のくぼみ間に連結する平面視ネット状の溝で構成されている。
まず、インナー材2を足型モールド27に被せ、両面に水分散型ホットメルト系接着剤を塗着した踏抜き防止板1の真ん中付近に両面テープを貼着し、この両面テープを介して踏抜き防止板1をインナー材2の足裏に対応する部位に仮止めした。
【0037】
そして、この足型モールド27に、側モールド22、底モールド23を組み合わせて空隙28を形成し、ポリ塩化ビニル(重合度1300)およびジオクチルフタレートを主成分とする合成樹脂材料を190℃に熱して流動性を帯びさせ射出口24よりこの空隙28に充填した。その後、自然冷却により合成樹脂材料を固化させて、実施例の長靴11を得た。
【0038】
この長靴11には、踏抜き防止板1の周縁に沿いかつ当該踏抜き防止板1に接してその上方側に位置する0.7mm厚の浸透固化部2bが形成されている。さらに浸透固化部から靴内へ立ち上がって突出した突出固化部5が、図6に示すように踏抜き防止板の上側をネット状に覆うように形成されている。また、図4に示す符号2aの部分は、ホットメルト系接着剤を介して踏抜き防止板1に接合している。突出固化部5のインナー材の上面からの高さは5mmである。
【0039】
本実施例の長靴11、12用い、60kgの体重の者が歩行による釘踏みの試験を100回行ったが、ステンレス板からなる踏抜き防止板1は強固に靴に固定されており靴内へ脱落することがなかった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】踏抜き防止板を有する射出成形靴が長靴10である場合の足長方向の断面図。
【図2】図1の踵部分拡大断面図。
【図3】踏抜き防止板を有する射出成形靴が長靴11である場合の足長方向の断面図。
【図4】図3の踵部分拡大断面図。
【図5】踏抜き防止板を有する射出成形靴が短靴12である場合の足長方向の断面図。
【図6】踏抜き防止板、突出固化部および靴内底面の平面視位置関係の説明図。
【図7】踏抜き防止板、突出固化部および靴内底面の平面視位置関係の説明図。
【図8】長靴10用のモールド装置の足巾方向の断面図。
【図9】長靴11用のモールド装置の足巾方向の断面図。
【図10】短靴12用のモールド装置の足巾方向の断面図。
【図11】踏抜き防止板と足型モールドに設けた凹部との位置関係の説明図。
【符号の説明】
【0041】
1 踏抜き防止板
2 インナー材
2b 浸透固化部
3 靴底
4 甲皮
5 突出固化部
10 踏抜き防止板を有する射出成形靴(長靴)
11 踏抜き防止板を有する射出成形靴(長靴)
20 モールド装置
21 足型モールド
23 底モールド
25 空隙
26 モールド装置
27 足型モールド
28 空隙
29 凹部
30 モールド装置
31 足型モールド
34 空隙
40 インナー材
41 甲皮
50 靴内底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモールドが組み合わされて形成された空隙に流動性のある合成樹脂材料が充填されたのち、合成樹脂材料の固化により靴底を含む部分が形成される射出成形靴において、
踏抜き防止板が、靴底と、連通構造を有するインナー材との間に配設されており、
踏抜き防止板の周りに、靴底と一体の浸透固化部が形成されており、当該浸透固化部は合成樹脂材料がインナー材に浸透し固化した部分であることを特徴とする射出成形靴。
【請求項2】
浸透固化部から立ち上がって靴内へ突出しかつ踏抜き防止板の上面側に廻り込んだ突出固化部が、踏抜き防止板の周縁に沿って形成されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形靴。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の射出成形靴を製造する方法であって、
踏抜き防止板が金属系材料で作られており、
踏抜き防止板の少なくとも上面にホットメルト系接着剤を配し、
足型モールドの足裏に対応する面を覆うようにインナー材を配するとともに、そのインナー材の下面に前記踏抜き防止板を配し、
踏抜き防止板を配したインナー材とこれらを囲む他モールドとの間に形成された空隙に、熱せられた合成樹脂材料を充填することを特徴とする射出成形靴の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の射出成形靴を製造する方法であって、
足型モールドには踏抜き防止板の配設位置に対応した凹部が設けられており、当該凹部は踏抜き防止板で部分的に塞がれるような凹部であり、
足型モールドの足裏に対応する面を覆うようにインナー材を配するとともに、そのインナー材の下面に踏抜き防止板を配し、
踏抜き防止板を配したインナー材とこれらを囲む他モールドとの間に形成された空隙に、合成樹脂材料を充填することを特徴とする射出成形靴の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−38465(P2007−38465A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223587(P2005−223587)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】