説明

車両用ディスクブレーキ

【課題】摩擦パッドの組み付け性の向上と摩擦パッドのパッドガイド溝からの脱落防止を図る。
【解決手段】パッドリテーナ10のリテーナ部10aは、内側片10gと、外側片10hと、これらを繋ぐ奥側片10iとを備えている。外側片10hに、外側片10hの反ディスクロータ側から延設された細長片をディスク半径方向外側に折曲すると共に先端部をディスクロータ方向へ向けて円弧状に折曲し、摩擦パッド6の耳片6bのパッドガイド溝3dへの挿入を許容する方向に弾性変形可能で、且つ、6b耳片がパッドガイド溝3dに挿入された状態で、先端10nが耳片6bの反ディスクロータ側面6dに当接する脱落防止片6dを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や自動二輪等の車両に用いられる車両用ディスクブレーキに係り、詳しくは、キャリパ支持腕のパッドガイド溝で、摩擦パッドの裏板耳片を支承するパッドリテーナの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、摩擦パッドの裏板の両側部にそれぞれ突設している耳片を、一対のキャリパ支持腕に対向形成されたパッドガイド溝に支承させて、摩擦パッドをディスク軸方向へ移動可能に支持するディスクブレーキでは、一般に、パッドガイド溝と耳片との間に金属製の薄板で形成したパッドリテーナを介装している。このパッドリテーナには、前記パッドガイド溝のディスク半径方向内側面に当接する内側片と、該内側片に連続して形成され、摩擦パッドの耳片をディスク半径方向外側に付勢すると共に、前記耳片を反ディスクロータ方向に付勢するパッド戻し部とを備えたものがあり、このパッド戻し部は、内側片の反ディスクロータ側に延設した細長片の基部を、ディスク半径方向外側からディスクロータ方向へ円弧状に屈曲させて弾性ループ部を形成すると共に、該弾性ループ部からディスクロータ方向へ延出した前記細長片の先端部をディスク半径方向外側に向けて傾斜させて形成されていた。そして、摩擦パッドをキャリパ支持腕に仮組みしたときに、パッド戻し部によって、耳片が反ディスクロータ側の脱落方向に押圧されても、弾性ループ部が耳片の反ディスクロータ側に当接することにより、摩擦パッドがキャリパブラケットから脱落することを防止していた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3934063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のものでは、弾性ループ部がパッドガイド溝の反ディスクロータ側で且つディスク半径方向外側に突出して設けられることから、摩擦パッドを組み付ける際に、弾性ループ部を避けて耳片を組み付けなくてはならず、組み付け性が良くなかった。
【0005】
そこで本発明は、摩擦パッドの組み付け性の向上を図ると共に、摩擦パッドがパッドガイド溝から脱落することを確実に防止することのできる車両用ディスクブレーキを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキは、車体に固設されるキャリパブラケットに、ディスクロータの外縁をディスク軸方向に跨ぐ一対のキャリパ支持腕を延設し、該キャリパ支持腕に、ディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面と当該両側面を結ぶ対向面とを有するコ字状のパッドガイド溝を対向して設け、前記ディスクロータを挟んで配置される摩擦パッドの裏板両側部に耳片をそれぞれ突設し、該耳片を前記パッドガイド溝にパッドリテーナを介して支承し、前記パッドリテーナは、前記ディスクロータ両側のパッドガイド溝に敷設される一対のリテーナ部と、前記ディスクロータの外縁を跨いで、前記一対のリテーナ部を繋ぐ連結片と、前記摩擦パッドを反ディスクロータ方向に付勢するパッド戻し部とを備えた車両用ディスクブレーキにおいて、前記リテーナ部は、前記ディスク半径方向内側面に当接する内側片と、前記ディスク半径方向外側面に敷設される外側片と、該外側片と内側片とを繋いで前記対向面に敷設される奥側片とを有し、前記外側片には、該外側片の反ディスクロータ側から延設された細長片をディスク半径方向外側に折曲すると共に先端部をディスクロータ方向へ向けて円弧状に折曲し、前記耳片の前記パッドガイド溝への挿入を許容する方向に弾性変形可能で、且つ、前記耳片が前記パッドガイド溝に挿入された状態で、先端が前記耳片の反ディスクロータ側面に当接する脱落防止片を形成したことを特徴としている。
【0007】
さらに、前記内側片は、先端側をディスク半径方向外側に向けて漸次傾斜して形成することもでき、また、前記パッド戻し部は、前記奥側片の反ディスクロータ側から延設された細長片をディスクロータ側に曲げ戻して弾性部を形成し、細長片の先端側をさらにディスクロータ方向へ延出し、先端部を反奥側片方向に向けて傾斜させると共に、延出方向に沿って湾曲状に反り返らせて形成することもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用ディスクブレーキによれば、摩擦パッドを組み付ける際に、パッドガイド溝の反ディスクロータ側から、脱落防止片を弾性変形させながら耳片をパッドガイド溝に簡単に挿入させることができる。さらに、耳片をパッドガイド溝に挿入すると、脱落防止片が初期の状態に復帰し、脱落防止片の先端が耳片の反ディスクロータ側面に当接することから、仮組み状態の摩擦パッドの脱落を防止でき、組み付け性の向上を図ることができる。また、脱落防止片は、パッドリテーナの外側片の反ディスクロータ側から延設された細長片をディスク半径方向外側に折曲すると共に先端部をディスクロータ方向へ向けて円弧状に折曲するだけの簡単な構造であることから、コストが嵩む虞がない。
【0009】
さらに、パッドリテーナの内側片の先端側をディスク半径方向外側に向けて傾斜させることにより、摩擦パッドをディスク半径方向外側に付勢することができ、パッドリテーナによって制動時に摩擦パッドがガタつくことも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図5のI-I断面図である。
【図2】本発明の一形態例を示す車両用ディスクブレーキの要部拡大断面図である。
【図3】同じくパッドリテーナの斜視図である。
【図4】同じく車両用ディスクブレーキの一部断面平面図である。
【図5】図4のV-V断面図である。
【図6】摩擦パッドの組み付け状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図6は本発明の車両用ディスクブレーキの一形態例を示す図で、矢印Aは車両前進時に前輪と一体に回転するディスクロータの回転方向であり、以下で述べるディスク回出側及びディスク回入側とは車両前進時におけるものとする。
【0012】
この車両用ディスクブレーキ1は、車輪と一体に回転するディスクロータ2と該ディスクロータ2の一側部で車体に固設されるキャリパブラケット3と、該キャリパブラケット3のキャリパ支持腕3a,3aに、一対のスライドピン4,4を介してディスク軸方向へ移動可能に支持されるキャリパボディ5と、該キャリパボディ5の作用部5aと反作用部5bとの内側で、ディスクロータ2を挟んで対向配置される一対の摩擦パッド6,6とからなっている。
【0013】
キャリパボディ5は、ディスクロータ2の両側に配設される上述の作用部5a及び反作用部5bと、これらをディスクロータ2の外縁を跨いで連結するブリッジ部5cとからなっていて、作用部5aには、ディスクロータ2側を開口したシリンダ孔7が設けられている。シリンダ孔7には、有底円筒状のピストン8が収容され、ピストン8は、シリンダ孔底部の液圧室9に供給される圧液によって、シリンダ孔7をディスクロータ方向へ移動するようになっている。また、作用部5aの側部には、車体取付け腕5d,5dが突設されており、各車体取付け腕5dの先端には、それぞれ上述のスライドピン4が、取付けボルトにて突設されている。
【0014】
キャリパ支持腕3a,3aは、キャリパブラケット3の両側部から、ブリッジ部5cの両側を挟みながらディスクロータ2の外縁をディスク軸方向に跨ぎ、更にディスクロータ2の他側部で、反作用部5bの側壁に沿ってディスク中心方向へ延びる形状となっている。キャリパ支持腕3a,3aの先端部は、タイロッド3bにて連結されていて、制動トルクのかかる両支持腕3a,3aの剛性力を高めている。
【0015】
各キャリパ支持腕3aには、上述のスライドピン4を収容するガイド孔3cが穿設され、また双方のキャリパ支持腕3a,3aには、ディスクロータ2のそれぞれの側部で互いに向き合う4つのパッドガイド溝3dが設けられている。各パッドガイド溝3dは、ディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fと両側面3e,3fを結ぶ対向面3gとを有する略コ字状に形成され、対向面3gは、ディスク半径方向外側をキャリパブラケット外方に向けて凹ませた段付き形状であって、外側面3hが内側面3iよりもキャリパブラケット外方に配設されている。パッドガイド溝3d,3dのディスク半径方向外側には、前記ディスク半径方向外側面3eと平行方向の取付面3kを有するパッドリテーナ取付部3m,3mがそれぞれ設けられている。各摩擦パッド6は、裏板6aの両側部にそれぞれ突出した耳片6b,6bを、ディスク回入側と回出側のパッドガイド溝3d,3dに、それぞれパッドリテーナ10を介して支承される。
【0016】
上記パッドリテーナ10は、ディスク回入側又はディスク回出側で、ディスクロータ両側のパッドガイド溝3d,3dに装着される一対のリテーナ部10a,10aと、リテーナ部10a,10aの反ディスクロータ側に設けられた弾性ループ部10b,10b(本発明の弾性部)を介してディスクロータ側に延出したパッド戻し部10c,10cと、リテーナ部10a,10aの反ディスクロータ側に突出する脱落防止片10d,10dと、キャリパ支持腕3aのパッドリテーナ取付部3m,3mの取付面3kに当接する取付片10e,10eと、ディスクロータ2の外縁を跨いで、取付片10e,10eの上部を繋ぐ連結片10fとからなっている。
【0017】
各リテーナ部10aは、摩擦パッド6の耳片6bを挟んでディスク半径方向の内外に向き合う内側片10g及び外側片10hと、これら両片10g,10hをパッドガイド溝3d,3dの奥部で繋ぐ奥側片10iとからなっている。奥側片10iは、ディスク半径方向内側に、パッドガイド溝3dの内側面3iに沿って敷設される溝開口側片10kが、ディスク半径方向外側に、パッドガイド溝奥側に屈曲され、外側面3hに沿って敷設される溝奥側片10mがそれぞれ形成されている。また、各内側片10gは、先端側がディスク半径方向外側に向けて漸次傾斜して形成され、摩擦パッド6をディスク半径方向外側に押圧するパッド弾発部となっている。
【0018】
各弾性ループ部10bは、溝奥側片10mから反ディスクロータ側に延出した細長片を、ディスクロータ側に円弧状に曲げ戻して形成され、パッド戻し部10cは、弾性ループ部10bの曲げ戻し端から、さらにディスクロータ方向へ延出させた前記細長片の先端部を反奥側片10m方向に向けて傾斜させると共に、延出方向に沿って湾曲状に反り返らせて形成されている。このパッド戻し部10cは、摩擦パッド6の耳片6bが、ライニング6cの新品時からフル摩耗するまでを移動する距離に足りる長さを有している。
【0019】
各脱落防止片10dは、外側片10hから反ディスクロータ側に延設した細長片をディスク半径方向外側に折曲すると共に先端部をディスクロータ方向へ向けて円弧状に折曲し、摩擦パッド6の耳片6bをパッドガイド溝3dに挿入する際にはディスク半径方向外側に弾性的に変形可能で、且つ、耳片6bを挿入後の状態で、先端10nが耳片6bの反ディスクロータ側面6dに当接して摩擦パッド6の脱落を防止する脱落防止部10pが形成されている。
【0020】
各外側片10hは、先端部をパッドリテーナ取付部3mの先端面に沿って曲げ戻し、パッドリテーナ取付部3mのディスク半径方向外側面方向へ延出させて前記取付片10eを弾性変形可能に形成し、外側に向かって弾性変形した状態の取付片10eと外側片10hとでパッドリテーナ取付部3mを挟持するようにしている。また、各内側片10gの反ディスクロータ側には、差込みガイド片10qがそれぞれ外開きに設けられており、摩擦パッド6の耳片6bを容易に差し込めるようにしている。
【0021】
このように形成されたパッドリテーナ10は、取付片10e,10eと外側片10h,10hとでパッドリテーナ取付部3mを挟持してキャリパ支持腕3aに取り付けられ、各リテーナ部10aの内側片10gと外側片10hとが、各パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとにそれぞれ当接させて敷設され、奧側片10iの溝開口側片10kが対向面3gの内側面3iに、溝奥側片10mが外側面3hにそれぞれ敷設される。この取り付けにより、各弾性ループ部10bがキャリパ支持腕3aの反ディスクロータ側にそれぞれ配設されると共に、各パッド戻し部10cが、弾性ループ部10bよりディスクロータ方向に、漸次パッドガイド溝3dの反ディスクロータ側に向けて湾曲しながら傾斜してそれぞれ配設される。さらに、各脱落防止片10dの脱落防止部10pが、先端10nをディスク半径方向内側に向けた状態で、キャリパ支持腕3aの反ディスクロータ側にそれぞれ配設される。
【0022】
各摩擦パッド6は、図6に示されるようにして、裏板6aの耳片6b,6bがディスク回入・回出側のパッドガイド溝3d,3dに差し込まれる。各耳片6bは、まず図6(a)に示されるように、ディスク半径方向内側面6gをパッドリテーナ10の内側片10gに当接させ、ディスク半径方向外側を反ディスクロータ側に傾けた状態で、ディスクロータ側面6eを脱落防止部10pに当接させる。この状態から図6(b)に示すように、ディスクロータ側面6eで脱落防止片10dを変形させながら耳片6bをディスクロータ側に押圧してディスクロータ2と平行な状態にし、図6(c)に示すように、さらに脱落防止片10dを変形させながら耳片6bをパッドガイド溝内に挿入していく。耳片6bが脱落防止部10pを通過し、パッドガイド溝3dの所定の位置まで挿入されると、図6(d)に示されるように、脱落防止部10pの先端10nが耳片6bの反ディスクロータ側面6dに当接し、パッド戻し部10cの付勢力によって耳片6bが反ディスクロータ側に付勢されても、耳片6bが仮組み位置から反ディスクロータ側に移動することを規制し、仮組み状態の摩擦パッド6がパッドガイド溝3dから脱落することを防止できる。
【0023】
一方、耳片6bを上述のようにパッドガイド溝3dに挿入した後の状態では、耳片6bのディスク回転方向外側面6fがパッド戻し部10cと当接し、該パッド戻し部10cを溝奥側片10m側へ押圧した状態となり、また、耳片6bのディスク回転方向外側面6fと溝奥側片10mとの間には空間部Eが形成される。さらに、耳片6bのディスク半径方向内側面6gが内側片10gをパッドガイド溝3dのディスク半径方向内側面3f側へ押圧した状態となる。
【0024】
本形態例は上述のように形成されており、運転者の制動操作によって、昇圧した作動液が液圧室9に供給されると、ピストン8がシリンダ孔7を前進して、作用部5a側の摩擦パッド6を、矢印A方向に回転するディスクロータ2の一側面に押圧する。次にこの反力によって、キャリパボディ5がスライドピン4,4に案内されながら、作用部5a方向へ移動し、反力爪5eが反作用部5b側の摩擦パッド6を、ディスクロータ2の他側面へ押圧する。
【0025】
このとき、各摩擦パッド6の耳片6b,6bは、ディスク半径方向外側面6hがリテーナ部10a,10aの外側片10h,10hに案内され、耳片6b,6bのディスク半径方向内側面6gが、内側片10g,10gをディスク半径方向内側面3f側に押し付けながら、パッドガイド溝3d,3d内を円滑に移動する。内側片10g,10gは、耳片6b,6bによって、ディスク半径方向内側面3f側に押し付けられながらも、内側片10g,10gの弾発力によって、耳片6b,6bのディスク半径方向外側面6hを前記パッドガイド溝3d,3dのディスク半径方向外側面3e,3e側に押圧する。
【0026】
これにより、耳片6b,6bのディスク半径方向外側面6h,6hがパッドガイド溝3d,3dのディスク半径方向外側面3e,3eに常時押し付けられるため、制動時に耳片6b,6bがパッドガイド溝3d,3d内でガタつくことがなく、ガタつきによる各摩擦パッド6の打音を抑え、ブレーキ鳴きを有効に抑制することができる。
【0027】
一方、上述の制動操作を解除して、ピストン8と反力爪5eとが制動開始前の位置へ後退すると、弾性ループ部10b,10bとパッド戻し部10c,10cが、初期の形状に復帰しようとするため、パッド戻し部10c,10cに当接している耳片6b,6bを反ディスクロータ側へ押圧し、各摩擦パッド6をディスクロータ2の側面から強制的に離間させる。これにより、各摩擦パッド6の引き摺りを防止し、ディスクロータ2の摩耗により発生するジャダの抑制や、ブレーキ鳴きの抑制を有効に図ることができる。
【0028】
また、摩擦パッド6のライニング6cが摩耗してくると、摩擦パッド6は、徐々にディスクロータ2側へ進出し、耳片6b,6bが、パッド戻し部10c,10cの先端側に当接するため、弾性ループ部10b,10bからの弾発力は低下するものの、パッド戻し部10c,10cが、延出方向に沿って湾曲状に反り返らせて形成されていることから、この低下した弾発力を補うことができ、ライニング6cの摩耗状態に関わらず、摩擦パッド6を確実にディスクロータ2の側面から離間させ、摩擦パッドのガタつきを抑えることができる。
【0029】
さらに、脱落防止片10dの脱落防止部10pが耳片6b,6bの反ディスクロータ側に配置されていることにより、パッド戻し部10c,10cによって、耳片6b,6bが反ディスクロータ側へ押圧されても、脱落防止部10pの先端10nが耳片6b,6bの反ディスクロータ側面6dに当接し、耳片6b,6bがパッドガイド溝3d,3dから脱落することを防止できる。
【0030】
また、耳片6bのディスク回転方向外側面6fと溝奥側片10mとの間には空間部Eが形成されることにより、パッド戻し部10c,10cが作動するための空間が確保され、パッド戻し部10c,10cを良好に作動させることができる。さらに、この構造により、制動時に各耳片6bのディスク半径方向外側は、パッドガイド溝3dの対向面3gと当接せず、各耳片6bのディスク半径方向内側のみがパッドガイド溝3dの対向面3gと当接して制動トルクを伝達することから、特に、負荷の小さいブレーキ操作を行う際に、ディスク回入側の摩擦パッドの浮き上がりを抑制することができ、ブレーキ鳴きの発生を抑制することができる。
【0031】
なお、本発明は上述の各形態例に限るものではなく、連結片や取付片の形状や、差し込みガイド片の形状及び形成箇所は任意である。さらに、パッドガイド溝の対向面を段付き形状にして、パッド戻し部が作動できる空間部を設けるものに限らず、パッドガイド溝の対向面を平面状に形成すると共に、パッドリテーナの奥側片も対向面に沿った平面状に形成し、耳片を段付き形状にして空間部を設けることもできる。
【符号の説明】
【0032】
1…車両用ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパブラケット、3a…キャリパ支持腕、3b…タイロッド、3c…ガイド孔、3d…パッドガイド溝、3e…ディスク半径方向外側面、3f…ディスク半径方向内側面、3g…対向面、3h…外側面、3i…内側面、3k…取付面、3m…パッドリテーナ取付部、4…スライドピン、5…キャリパボディ、5a…作用部、5b…反作用部、5c…ブリッジ部、5d…車体取付け腕、5e…反力爪、6…摩擦パッド、6a…裏板、6b…耳片、6c…ライニング、6d…反ディスクロータ側面、6e…ディスクロータ側面、6f…ディスク回転方向外側面、6g…ディスク半径方向内側面、6h…ディスク半径方向外側面、7…シリンダ孔、8…ピストン、9…液圧室、10…パッドリテーナ、10a…リテーナ部、10b…弾性ループ部、10c…パッド戻し部、10d…脱落防止片、10e…取付片、10f…連結片、10g…内側片、10h…外側片、10i…奥側片、10k…溝開口側片、10m…溝奥側片、10n…先端、10p…脱落防止部、10q…差込みガイド片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固設されるキャリパブラケットに、ディスクロータの外縁をディスク軸方向に跨ぐ一対のキャリパ支持腕を延設し、該キャリパ支持腕に、ディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面と当該両側面を結ぶ対向面とを有するコ字状のパッドガイド溝を対向して設け、前記ディスクロータを挟んで配置される摩擦パッドの裏板両側部に耳片をそれぞれ突設し、該耳片を前記パッドガイド溝にパッドリテーナを介して支承し、前記パッドリテーナは、前記ディスクロータ両側のパッドガイド溝に敷設される一対のリテーナ部と、前記ディスクロータの外縁を跨いで、前記一対のリテーナ部を繋ぐ連結片と、前記摩擦パッドを反ディスクロータ方向に付勢するパッド戻し部とを備えた車両用ディスクブレーキにおいて、前記リテーナ部は、前記ディスク半径方向内側面に当接する内側片と、前記ディスク半径方向外側面に敷設される外側片と、該外側片と内側片とを繋いで前記対向面に敷設される奥側片とを有し、前記外側片には、該外側片の反ディスクロータ側から延設された細長片をディスク半径方向外側に折曲すると共に先端部をディスクロータ方向へ向けて円弧状に折曲し、前記耳片の前記パッドガイド溝への挿入を許容する方向に弾性変形可能で、且つ、前記耳片が前記パッドガイド溝に挿入された状態で、先端が前記耳片の反ディスクロータ側面に当接する脱落防止片を形成したことを特徴とする車両用ディスクブレーキ。
【請求項2】
前記内側片は、先端側がディスク半径方向外側に向けて漸次傾斜して形成されることを特徴とする請求項1記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項3】
前記パッド戻し部は、前記奥側片の反ディスクロータ側から延設された細長片をディスクロータ側に曲げ戻して弾性部を形成し、細長片の先端側をさらにディスクロータ方向へ延出し、先端部を反奥側片方向に向けて傾斜させると共に、延出方向に沿って湾曲状に反り返らせて形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−236615(P2010−236615A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85458(P2009−85458)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】