説明

通信装置

【課題】 より小型にしても、ダイバーシティ受信の効果を十分に得ることができるようにする。
【解決手段】 通信装置の本体に内蔵されているアンテナとは別に、アンテナ111は、通信装置の本体に対して同軸ケーブル136を介して電気的に機械的に接続されている。本体のアンテナが設けられる基板とは別に、アンテナ111が配置される基板140を設け、さらに、基板140のグランドに接続した地板151を設けて、本体のアンテナのイメージ電流の流れるグランドと、アンテナ112のイメージ電流の流れるグランドとを個々に設けるようにする。本発明は、無線LAN方式で通信する通信装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信装置に関し、特に、無線で通信できるようにした通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型の情報端末装置やAV(Audio Visual)機器は、ハードウェア技術とソフトウェア技術の進歩や高速無線通信網の整備等に伴い、急速に、高機能化すると共に、小型軽量化している。そしてまた、無線周波数の有効利用により、携帯型の情報端末装置による移動通信において、データ伝送およびサービスの多様化が図られている。特に、携帯電話機を代表とする移動通信端末装置の需要は急速に増大している。
【0003】
最近の移動通信端末装置において、より良い品質で通信できるように、ダイバーシティ受信の技術が採用される。ダイバーシティ受信により、マルチパスフェージングなどによる受信レベルの低下が回避される。
【0004】
ダイバーシティ受信を行なう場合、移動通信端末装置には、2つのアンテナが設けられる。一般的に、一方のアンテナは、移動通信端末装置の筐体から引き出し可能な送受信用のホイップアンテナとされ、他方のアンテナは、移動通信端末装置の筐体内部に収納される受信専用の内蔵アンテナとされる。
【0005】
図1は、従来の、2つのアンテナを設けた移動通信端末装置1を示す図である。従来の移動通信端末装置1には、ロッドアンテナまたはホイップアンテナであるアンテナ2および筐体内部に収納される内蔵アンテナ3が設けられる。
【0006】
図1Aで示されるように、アンテナ2および内蔵アンテナ3は、共に、画像または文字を表示する表示部に設けられたり、図1Bで示されるように、アンテナ2が、表示部に設けられ、内蔵アンテナ3が、主基板を格納する本体に設けられる。また、図1Cおよび図1Dで示されるように、アンテナ2および内蔵アンテナ3は、共に、本体の一方の側面に設けられたり、アンテナ2が本体の一方の側面に設けられ、内蔵アンテナ3が本体の他方の側面に設けられる。
【0007】
図2で示されるように、ホイップアンテナであるアンテナ2は、必要に応じて、移動通信端末装置1の筐体から引き出される。
【0008】
図3は、筐体の内部に内蔵された内蔵アンテナ3の概要を説明する図である。内蔵アンテナ3のアンテナ素子11は、グランドではない非グランド領域12に配置される。非グランド領域12は、実装部品が配置される基板であるグランド領域13とは別に、アンテナ素子11を配置するために設けられる。アンテナ素子11には、電波を放射する場合に電力が供給され、受信した電波に応じた電力を出力するための給電点14が設けられる。
【0009】
図4は、内蔵アンテナ3の構成を説明する図である。図4Aで示されるように、内蔵アンテナ3のアンテナ素子31は、非グランド領域32に配置される。給電点33は、非グランド領域32およびグランド領域34の境界に設けられる。アンテナ素子31乃至グランド領域34は、プリント基板35上に設けられる。
【0010】
または、図4Bで示されるように、内蔵アンテナ3のアンテナ素子の放射素子51は、積層部品52に導電体のパターンとして設けられる。給電点33は、積層部品52およびプリント基板35の境界に設けられる。プリント基板35には、グランド領域34が設けられると共に、部品53が配置される。
【0011】
このように、2つのアンテナが独立に変動するフェージング波を受信し、移動通信端末装置は、受信感度(包絡線)レベルの大きい電波を選択し、受信する。このようにすることで、1つのフェージング波を受信する場合に比較して、通信の品質の劣化をより少なくすることができる。
【0012】
従来、マイクが配設された電話機本体の一端側にスピーカを有する受話部を支軸を介して回動可能に取り付け、受話部を電話機本体上に折り畳んだ格納位置と電話機本体よりも外側に展開された使用位置とに切り替え可能とした携帯無線電話機もある(例えば、特許文献1参照)。この携帯無線電話機には、弾性体をループ状にして、この内部にアンテナ素子を埋設してなるハンドストラップが電話機本体の他端側に設けられている。
【0013】
さらに、携帯無線機の金属筐体の側面に、内蔵アンテナである片側短絡型マイクロストリップアンテナである内蔵アンテナを、その短絡面が外部アンテナの主偏波と平行になるように設置するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0014】
【特許文献1】特開平6−85730号公報
【0015】
【特許文献2】特開平6−338816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、移動通信端末装置は、近年、より一層小型になり、ホイップアンテナと内蔵アンテナとの距離を離すことが困難である。ホイップアンテナと内蔵アンテナとの距離が近づくと、ホイップアンテナおよび内蔵アンテナの独立性を確保することができず、ダイバーシティ受信の効果を十分に得ることができない。
【0017】
また、例え、ホイップアンテナおよび内蔵アンテナのそれぞれのアンテナ素子自体を離して配置したとしても、ホイップアンテナおよび内蔵アンテナのそれぞれのアンテナ(イメージ)電流が流れるグランド領域を1つの基板として共通とすると、やはり、ホイップアンテナおよび内蔵アンテナの独立性を確保することができず、ダイバーシティ受信の効果を十分に得ることができない。
【0018】
さらに、移動通信端末装置1がより一層小型になるにつれて、移動通信端末装置1の携帯性は良くなるが、図5で示されるように、移動通信端末装置1の筐体が把持された手によって覆われてしまうと、人体の影響によって、アンテナ2および内蔵アンテナ3の放射効率(利得)が低下してしまい、安定して無線で通信することができなくなってしまう。
【0019】
本発明はこのような状況を鑑みてなされたものであり、より小型にしても、ダイバーシティ受信の効果を十分に得ることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の通信装置は、筐体に設けられている第1のアンテナと、所定の長さの同軸ケーブルを介して筐体に接続されている第2のアンテナと、筐体内の基板とは別に、第2のアンテナのアンテナ素子に対して設けられた地板とを備えることを特徴とする。
【0021】
第1のアンテナにおける平均放射利得の大きい偏波面と第2のアンテナにおける平均放射利得の大きい偏波面とが異なるようにすることができる。
【0022】
第1のアンテナは、筐体が把持された状態において、水平偏波の電波の受信または送信に適した特性を有し、第2のアンテナは、筐体から垂れ下がった状態において、垂直偏波の電波の受信または送信に適した特性を有するようにすることができる。
【0023】
第1のアンテナにおける、平均放射利得に対して放射利得の低い方向と、第2のアンテナにおける、平均放射利得に対して放射利得の低い方向とが異なるようにすることができる。
【0024】
第1のアンテナと第2のアンテナとを切り替える切り替え手段をさらに設けることができる。
【0025】
切り替え手段は、第1のアンテナで受信された電波の強度および第2のアンテナで受信された電波の強度を基に、第1のアンテナと第2のアンテナとを切り替えるようにすることができる。
【0026】
第2のアンテナは、筐体からの距離が無線の電波の波長の4分の1以上となるように筐体に接続することができる。
【0027】
第1のアンテナまたは第2のアンテナのアンテナ素子は、第1の方向に進行しながら、第1の方向に交わるように蛇行する形状とされる部分と、第1の方向に交差する第2の方向に進行しながら、第2の方向に交わるように蛇行する形状とされる部分とからなるアンテナ導体を含むようにすることができる。
【0028】
第1のアンテナまたは第2のアンテナのアンテナ素子は、第1の軸の方向に進行しながら、第1の軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分と、第1の軸に交差する第2の軸の方向に進行しながら、第2の軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分とからなるアンテナ導体を含むようにすることができる。
【0029】
第1のアンテナまたは第2のアンテナのアンテナ素子は、所定の方向に進行しながら、方向に交差するように蛇行する形状とされる部分と、所定の軸の方向に進行しながら、軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分とからなるアンテナ導体を含むようにすることができる。
【0030】
第1のアンテナまたは第2のアンテナのアンテナ素子は、4以上の比誘電率の不導体でアンテナ導体を被覆するように形成することができる。
【0031】
第1のアンテナまたは第2のアンテナのアンテナ素子は、強誘電体フィラーを含有する不導体でアンテナ導体を被覆するように形成することができる。
【0032】
本発明の通信装置においては、第1のアンテナが筐体に設けられ、第2のアンテナが所定の長さの同軸ケーブルを介して筐体に接続され、地板が筐体内の基板とは別に第2のアンテナのアンテナ素子に対して設けられる。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明によれば、無線により通信することができる。
【0034】
また、本発明によれば、より小型にしても、ダイバーシティ受信の効果を十分に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、請求項に記載の構成要件と、発明の実施の形態における具体例との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、請求項に記載されている発明をサポートする具体例が、発明の実施の形態に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の実施の形態中には記載されているが、構成要件に対応するものとして、ここには記載されていない具体例があったとしても、そのことは、その具体例が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、具体例が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その具体例が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0036】
さらに、この記載は、発明の実施の形態に記載されている具体例に対応する発明が、請求項に全て記載されていることを意味するものではない。換言すれば、この記載は、発明の実施の形態に記載されている具体例に対応する発明であって、この出願の請求項には記載されていない発明の存在、すなわち、将来、分割出願されたり、補正により追加される発明の存在を否定するものではない。
【0037】
請求項1に記載の通信装置は、筐体に設けられている第1のアンテナ(例えば、図6のアンテナ112)と、所定の長さの同軸ケーブルを介して筐体に接続されている第2のアンテナ(例えば、図6のアンテナ111)と、筐体内の基板とは別に、第2のアンテナのアンテナ素子に対して設けられた地板(例えば、図8の地板151)とを備えることを特徴とする。
【0038】
第1のアンテナと第2のアンテナとを切り替える切り替え手段(例えば、図15のダイバーシティ用スイッチ301)をさらに設けることができる。
【0039】
第1のアンテナまたは第2のアンテナのアンテナ素子(例えば、図14Bのアンテナ素子139)は、第1の方向に進行しながら、第1の方向に交わるように蛇行する形状とされる部分(例えば、図14Bのミアンダパターン212)と、第1の方向に交差する第2の方向に進行しながら、第2の方向に交わるように蛇行する形状とされる部分(例えば、図14Bのミアンダパターン253)とからなるアンテナ導体(例えば、図14Bのアンテナ導体202)を含むようにすることができる。
【0040】
第1のアンテナまたは第2のアンテナのアンテナ素子(例えば、図14Dのアンテナ素子139)は、第1の軸の方向に進行しながら、第1の軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分(例えば、図14Dのヘリカルパターン211−1)と、第1の軸に交差する第2の軸の方向に進行しながら、第2の軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分(例えば、図14Dのヘリカルパターン211−2)とからなるアンテナ導体(例えば、図14Dのアンテナ導体202)を含むようにすることができる。
【0041】
第1のアンテナまたは第2のアンテナのアンテナ素子(例えば、図13のアンテナ素子139)は、所定の方向に進行しながら、方向に交差するように蛇行する形状とされる部分(例えば、図13のミアンダパターン212−1)と、所定の軸の方向に進行しながら、軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分(例えば、図13のヘリカルパターン211)とからなるアンテナ導体(例えば、図13のアンテナ導体202)を含むようにすることができる。
【0042】
図6は、本発明の一実施の形態の通信装置101を示す図である。通信装置101は、無線により他の装置と通信する。例えば、本発明の通信装置101は、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.11a、IEEE802.11b、またはIEEE802.11gなどの規格に準拠する無線LAN方式で通信する。
【0043】
通信装置101には、アンテナ111およびアンテナ112が設けられている。アンテナ111は、通信装置101の本体に対して接続ケーブル113を介して電気的に機械的に接続されている。接続ケーブル113は、柔軟に形成されているので、アンテナ111は、通信装置101から垂れ下がった状態で保持されることになる。
【0044】
通信装置101の本体が把持された場合であっても、アンテナ111は、通信装置101の本体に対して接続ケーブル113を介して接続されているので、手で覆われることがなく、使用者の人体の影響を受けずに、アンテナ111は、電波を放射し、電波を受信することができる。その結果、アンテナ111の放射利得の低下を防止することができる。
【0045】
また、アンテナ111には、リング114が設けられている。リング114をつまむか、またはリング114にさらに紐を結び、この紐をつまむことにより、通信装置101をつり下げることができる。
【0046】
アンテナ112は、通信装置101の本体に内蔵されている。
【0047】
通信装置101は、アンテナ111とアンテナ112とを切り替えて、他の装置と通信する。
【0048】
図7は、通信装置101の本体およびアンテナ111の構成の一例を示す図である。通信装置101の筐体131の内部には、基板132および無線通信モジュール133が設けられている。基板132には、各種の部品が電気的に接続されるように配置されている。例えば、基板132には、アンテナ112が配置されている。
【0049】
無線通信モジュール133は、他の装置に送信しようとするデータを変調して、変調の結果得られた信号をアンテナ111またはアンテナ112に供給することにより、アンテナ111またはアンテナ112に電波を放射させる。また、無線通信モジュール133は、他の装置から放射された電波を受信したアンテナ111またはアンテナ112から供給された信号を取得し、取得した信号を復号する。
【0050】
無線通信モジュール133は、アンテナ111に電波を放射させる場合、コネクタ134およびコネクタ135を介して、同軸ケーブル136に信号を伝送させる。無線通信モジュール133は、他の装置から送信されてきた信号を受信する場合、コネクタ134およびコネクタ135を介して、同軸ケーブル136を介して伝送されてきた信号を取得する。コネクタ134は、基板132に設けられ、コネクタ135と接続する。コネクタ135は、同軸ケーブル136の一端に設けられる。
【0051】
このように、同軸ケーブル136の一端は、コネクタ135に固定され、コネクタ134、コネクタ13、および基板132を介して、無線通信モジュール133に電気的に接続される。
【0052】
通信装置101の筐体131およびアンテナ111から露出している、同軸ケーブル136の部分は、同軸ケーブル136を保護するための外装体137により被覆される。外装体137は、シリコーンゴムなどの柔軟かつ引っ張り強度の高い(所定の弾性と所定の機械的強度を有する)素材からなり、筐体131とアンテナ111との間にかかる力を受け止めて、同軸ケーブル136の破断や切断などの損傷を防止する。
【0053】
同軸ケーブル136および外装体137が柔軟に形成されているので、通信装置101の筐体131が把持された場合、アンテナ111は、筐体131から垂れ下がった状態になる。
【0054】
アンテナ111の筐体138の内部には、アンテナ素子139および基板140が設けられている。アンテナ素子139は、基板140に配置されている。
【0055】
同軸ケーブル136の他の一端は、後述するように基板140に接続され、基板140を介して、アンテナ素子139に接続されている。
【0056】
アンテナ素子139は、同軸ケーブル136および基板140を介して、無線通信モジュール133から供給された信号を基に、電波を放射する。また、アンテナ素子139は、受信した電波に対応する信号を、同軸ケーブル136および基板140を介して、無線通信モジュール133に供給する。
【0057】
このように、筐体131とアンテナ111とは、同軸ケーブル136により電気的に接続され、同軸ケーブル136の長さに対応する距離で離間されている。ダイバーシティ受信の効果を十分に得るためには、2つのアンテナの距離を、無線の電波の波長λの4分の1乃至2分の1以上とするのが好ましいと言われており、同軸ケーブル136の長さは、例えば、無線の電波の波長λの4分の1以上とされる。また、同軸ケーブル136の長さを、無線の電波の波長λの2分の1以上とするようにしてもよい。
【0058】
図8は、アンテナ111の構成の一例を示す図である。アンテナ111の筐体138の内部に設けられている基板140の一端には、アンテナ素子139が設けられ、基板140の他の一端には地板151が設けられている。
【0059】
地板151は、導体からなり、基板140のグランドに接続されている。例えば、地板151は、鉄、銅、アルミニウム、チタニウム、またはマグネシウムなどの金属からなる。例えば、地板151は、基板140の両面を挟むように略コの字型に形成される。
【0060】
アンテナ111とアンテナ112との距離を離しても、アンテナ(イメージ)電流の流れるグランドを共通としてしまうと、アンテナ111およびアンテナ112の独立性を確保できなくなり、その結果、ダイバーシティ受信の効果を十分に得ることができない。
【0061】
そこで、アンテナ112が設けられる基板132とは別に、アンテナ111が配置される基板140を設け、さらに、基板140のグランドに接続した地板151を設けることによって、アンテナ111のアンテナ(イメージ)電流の流れるグランドと、アンテナ112のアンテナ(イメージ)電流の流れるグランドとを個々に設けるようにする。
【0062】
同軸ケーブル136のアンテナ111側の一端は、コネクタ152に接続されている。より詳細には、同軸ケーブル136の芯線は、コネクタ152を介して、アンテナ素子139の後述する給電点に接続され、同軸ケーブル136のシールド線は、コネクタ152を介して、基板140のグランドに接続される。
【0063】
図9は、アンテナ111の理想的な実装状態の一例を示す図である。理想的な状態にあるアンテナ111における、アンテナ素子139は、マイクロストリップライン171を介して給電点172に接続される。アンテナ素子139乃至給電点172の長さは、無線通信のキャリアとしての電波の波長λの4分の1の長さと等価なアンテナ線路長とされる。給電点172を対称の中心として、アンテナ素子139乃至給電点172に対して点対称の位置に、無線通信のキャリアとしての電波の波長λの4分の1の長さの路線長のグランドレベルの地板151が配置される。地板151は、アンテナ素子139乃至給電点172と対称の電気的イメージを作る。
【0064】
アンテナ線路長を確保できなかったり、地板151の路線長を確保できなかったりすると、アンテナ111の理想的な状態から大きく外れてしまい無線通信性能が低下してしまう。
【0065】
アンテナ素子139のアンテナ線路長が短い場合、または地板151の長さが短くなると、いわゆるマッチングずれ(共振周波数のずれ)が生じ、図10Aで示されるように、無線通信のキャリアの周波数におけるVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)が大きくなる。これに対して、アンテナ素子139の状態が、図9で示されるアンテナ111の理想的な状態により近い状態になると、図10Bで示されるように、無線通信のキャリアの周波数におけるVSWR(電圧定在波比)は、より1に近づく。
【0066】
また、ある程度以上の放射利得を確保したアンテナを実現するためには、素子を小型化するにしても限界があり、一般に、(アンテナの体積)/((帯域)×(放射利得)×(効率))はほぼ定数値となるという経験則が知られている。
【0067】
図11および図12は、地板151の形状の例を説明する図である。例えば、図11Aで示されるように、地板151には、電波の波長λと比較される地板151の長さLの方向に対して、垂直方向に、地板151の幅未満の長さのスリット181が設けられる。地板151にスリット181を設けることにより、地板151に地板151にリアクタンス成分が装荷されることになる。
【0068】
また、例えば、図11Bで示されるように、地板151には、所定の方向に進行しながら、その方向に交差するように蛇行する形状とされる部分であるメアンダライン182が設けられる。より具体的には、地板151には、電波の波長λと比較される地板151の長さLの方向に対して、垂直方向である、地板151の幅の方向に進行しながら、幅の方向に交差するように蛇行する形状とされるメアンダライン182が設けられる。地板151にメアンダライン182が設けられることにより、地板151にリアクタンス成分が装荷されることになる。
【0069】
図12は、基板140および地板151の断面を示す図である。
【0070】
さらに、例えば、図12Aで示されるように、地板151は、両面基板である基板140の両面を挟むように略コの字型に形成される。この場合、例えば、基板140の一方の面側の地板151の部分は、基板140の他方の面側の地板151の部分の長さに比較して長く形成される。例えば、より短い長さとされる地板151の部分側の基板140の面に、アンテナ素子139が設けられ、給電点172が設けられる。
【0071】
地板151が、基板140の両面を挟むように略コの字型に形成されることにより、地板151にリアクタンス成分が装荷されることになる。
【0072】
さらにまた、例えば、図12Bで示されるように、地板151は、多層基板である基板140の一方の面を覆うように形成される。そして、地板151は、基板140の一端から所定の距離だけ離れた位置で、基板140の一方の面から基板140の層を横切るように延びて、さらに、基板140の層を横切った位置から、板140の一方の面を覆う部分と接しないように基板140の一端まで延びる。そして、基板140の一端に達した地板151は、基板140の一端を覆うように、地板151に覆われている面と対向する面側に延び、さらに、地板151に覆われている面と対向する面を覆うように延びる。
【0073】
このように、地板151は、多層基板である基板140の層に応じて折り曲げられるように形成されるので、地板151にリアクタンス成分が装荷されることになる。
【0074】
地板151にリアクタンス成分を装荷することにより、地板151の路線長が等価的に補われ、地板151の路線長を確保したまま、地板151をより小さくすることができる。その結果、アンテナ111(の基板140)をより小さくすることができる。また、無線通信のキャリアの周波数におけるVSWRを1により近づけ、共振周波数のずれを修正し、VSWRが2以下である周波数帯域をより広くする(広帯域化する)ことができる。
【0075】
このように、アンテナ111(の基板140)をより小さくすることができると、アンテナ111の筐体138をより自由にデザインすることができるようになる。
【0076】
次に、図13乃至図14を参照して、アンテナ素子139の構成を説明する。
【0077】
図13は、アンテナ素子139の内部の構造の一例を示す図である。アンテナ素子139は、不導体の形成材201により形成される。すなわち、アンテナ素子139の外形は、形成材201により形成される。例えば、形成材201は、ガラスエポキシまたはポリフェニレンサルファイドなどの熱可塑性または熱硬化性の不導体の樹脂とすることができる。アンテナ導体202は、アンテナ線路であり、金属などの導体で構成される。アンテナ導体202は、形成材201に被覆され、アンテナ導体202は、給電点172に接続される。
【0078】
例えば、形成材201としてのガラスエポキシ基板に、アンテナ導体202を形成し、スルーホールを介して、ガラスエポキシ基板を積層することにより、アンテナ導体202の立体的な構造が形成される。
【0079】
アンテナ導体202を被覆し、アンテナ素子139を形成する形成材201に、比誘電率εrが4以上である高誘電体樹脂材料を用いることで、表面実装型アンテナとして、波長短縮効果が得られ、アンテナ素子139をより小型にすることができる。波長λと実効比誘電率εとの関係は、式(1)で表される。
λ=c/f/sqrt(ε) (1)
ここで、sqrt(ε)は、εの平方根を示す。εは、実効比誘電率である(自由空間の場合、ε=1)。実効比誘電率εは、基本的には比誘電率εrに等しいが、媒質との接し方や透磁率等の影響を受ける。fは、周波数を示す。cは、光速(≒3×108m/s)である。
【0080】
例えば、比誘電率εrが約4であるガラスエポキシ基板を形成材201として採用することができる。また、例えば、比誘電率εrが約10であるセラミックープラスチック複合材料を形成材201として採用することができる。さらにまた、熱可塑性樹脂の低誘導損失材料であるポリフェニレンサルファイドを形成材201として採用することができる。なお、エポキシは、熱硬化性樹脂である。
【0081】
さらに加えて、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、SrTiO3、またはMgTiO3などの強誘電体フィラーを形成材201に含有させることで、形成材201の比誘電率εrを大きくし、波長短縮効果によりアンテナ素子139をより一層小型化することができる。
【0082】
一方、誘電損失tanδが大きいと放射利得が低下してしまう。すなわち、より低いVSWRで、無線通信モジュール133からアンテナ素子139に効率良く電力が伝達されたとしても、誘電損失tanδが大きいと誘電体内部(形成材201)で熱として電力が損失されてしまい、電磁波として放射される電力が少なくなる。
【0083】
例えば、500MHzにおいて、所定の量の強誘電体フィラーを含有する場合のポリフェニレンサルファイドの誘電損失tanδは、約0.001乃至0.004である。強誘電体フィラーの含有量が変化しても、誘電損失tanδは、ほとんど変化せず、より多い量の強誘電体フィラーを含有する場合のポリフェニレンサルファイドの誘電損失tanδは、約0.001乃至0.004である。
【0084】
これに対して、例えば、500MHzにおいて、所定の量の強誘電体フィラーを含有する場合のエポキシの誘電損失tanδは、約0.016乃至0.021である。また、500MHzにおいて、より多い量の強誘電体フィラーを含有する場合のエポキシの誘電損失tanδは、約0.011乃至0.019である。
【0085】
形成材201の材料として、ポリフェニレンサルファイドとエポキシとを比較すると、放射利得を優先すると、誘電損失tanδがより小さいポリフェニレンサルファイドが好ましく、波長短縮効果、すなわち、アンテナ素子139の大きさを優先するとエポキシが好ましいと言える。
【0086】
なお、強誘電体フィラーは、機械的強度および形成するときの流動性などを考慮して、複数の種類を調合したうえで含有させる。
【0087】
アンテナ導体202は、ヘリカルパターン211、ミアンダパターン212−1、ミアンダパターン212−2、および容量結合点213で構成される。ヘリカルパターン211の一端は、給電点172に接続される。ヘリカルパターン211は、アンテナ素子139が基板140に配置された場合の基板140の面にほぼ垂直な軸を中心とした螺旋形状に形成される。すなわち、ヘリカルパターン211は、給電点172から回転しながら上方に向かう螺旋を形成する。
【0088】
ヘリカルパターン211の他の一端は、ミアンダパターン212−1の一端に接続される。
【0089】
ミアンダパターン212−1は、アンテナ素子139が基板140に配置された場合の基板140の面にほぼ平行な面で蛇行する形状に形成される。すなわち、例えば、ミアンダパターン212−1は、アンテナ素子139の長手方向に進行しながら、アンテナ素子139の長手方向に直交するように蛇行する形状とされる。ミアンダパターン212−1の他の一端は、容量結合点213を介してミアンダパターン212−1の一端に接続される。
【0090】
ミアンダパターン212−2は、ミアンダパターン212−1が蛇行する面と同じ面でで蛇行する形状に形成される。すなわち、ミアンダパターン212−1は、アンテナ素子139が基板140に配置された場合の基板140の面にほぼ平行な面において、アンテナ素子139の長手方向に進行しながら、アンテナ素子139の長手方向に直交するように蛇行する形状とされる。
【0091】
容量結合点213は、ミアンダパターン212−1とミアンダパターン212−2とを所定の距離で切断するように形成される。すなわち、ミアンダパターン212−1とミアンダパターン212−2とを所定の距離で切断することにより、所定の容量で、ミアンダパターン212−1とミアンダパターン212−2とが接続されることになる。容量結合点213によって、リアクタンス成分がアンテナ素子139に装荷されることにより、アンテナ導体202の路線長が等価的に補われ、アンテナ素子139をより小型化でき、また、VSWRの特性を向上させ、共振周波数のずれを修正し、送信または受信できる周波数の帯域をより広くすることができる。
【0092】
これにより、アンテナ素子139の周辺の実装部品な筐体の影響などにより、共振周波数がずれた場合であっても、アンテナ導体202の線路パターンを修正するだけで、周波数特性を改善することができる。容量結合点213を設けることで、専用の共振回路をアンテナ素子139の外部に設ける必要がなくなる。
【0093】
ミアンダパターン212−1の他の一端は、接地点214において、基板140のグランドに接続される。
【0094】
なお、ヘリカルパターン211、ミアンダパターン212−1、およびミアンダパターン212−2は、直線を直角に接続するように形成しても、曲線で形成するようにしてもよい。
【0095】
以下、ミアンダパターン212−1およびミアンダパターン212−2を個々に区別する必要がないとき、単に、ミアンダパターン212と称する。
【0096】
図14は、アンテナ素子139の内部の構造の他の例を示す図である。図14において、図13と同様の部分には同一の符号を付してあり、その説明は省略する。
【0097】
図14Aに示す例において、アンテナ導体202には、スタブ231が設けられている。スタブ231の一端は、給電点172から立ち上がったアンテナ導体202に接続されている。スタブ231の他の一端は、接地点232において、基板140のグランドに接続される。スタブ231を設けることにより、アンテナ素子139の容量性リアクタンスを打ち消すことができる。
【0098】
アンテナ導体202には、ミアンダパターン212が形成される。
【0099】
固定端子233は、基板140に半田付けされる端子であり、固定端子233が基板140に半田付けされることにより、アンテナ素子139は、基板140に固定される。
【0100】
なお、図14B乃至図14Dにおいて、図14Aと同様の部分には同一の符号を付してあり、その説明は省略する。
【0101】
図14Bに示す例において、アンテナ素子139の給電点172は、インピーダンスを整合したマイクロスプリットライン251により接続されている。固定端子233が、固定用ランド252−1に半田付けされることにより、アンテナ素子139が固定される。アンテナ導体202には、ミアンダパターン212およびミアンダパターン253が形成される。ミアンダパターン253は、直線をほぼ60度の角度で接続するように形成される。アンテナ導体202の一端は、給電点172に接続され、アンテナ導体202の他の一端は、開放端子254とされ、固定用ランド252−2に半田付けされる。開放端子254は、グランドなどに接続されず、開放される。
【0102】
図14Bに示す例においては、ミアンダパターン212の進行する方向と、ミアンダパターン253の進行する方向とが直交し、すなわち、ミアンダパターン212の蛇行する方向と、ミアンダパターン253の蛇行する方向とが直交し、共振周波数を下げることができる。
【0103】
図14Cに示す例において、アンテナ素子139のアンテナ導体202には、進行する方向とが直交する2つの蛇行するパターンからなるミアンダパターン212が形成され、さらに、容量付加部271が形成される。容量付加部271は、アンテナ導体202の幅が広くなるように形成される。容量付加部271は、容量性の負荷なので、アンテナ導体202の先端側に容量性のインピーダンスが装荷されることになる。これにより、アンテナ導体202上の電流分布が変化し、インピーダンス変換の自由度が増す。
【0104】
図14Dは、ヘリカルパターン211−1およびヘリカルパターン211−2が設けられたアンテナ素子139の例を示す図である。ヘリカルパターン211−1は、アンテナ素子139が基板140に配置された場合の基板140の面上の軸の方向に進行しながら、軸のまわりを回転する螺旋形状に形成される。ヘリカルパターン211−2は、アンテナ素子139が基板140に配置された場合の基板140の面上の軸であって、ヘリカルパターン211−1の軸と直交する軸の方向に進行しながら、直交する軸のまわりを回転する螺旋形状に形成される。例えば、ヘリカルパターン211−1は、図14Dの矢印Aで示される方向の軸を中心とした螺旋形状に形成され、ヘリカルパターン211−2は、矢印Aで示される方向と直交する、図14Dの矢印Bで示される方向の軸を中心とした螺旋形状に形成される。
【0105】
アンテナ導体202に、ヘリカルパターン211−1およびヘリカルパターン211−2を設けることにより、インピーダンスを調整することが容易になる。
【0106】
このように、異なる方向に進行する複数のミアンダパターン212を設けるか、または異なる方向の軸を中心とした螺旋形状のヘリカルパターン211を設けることにより、帯域幅が広がり、アンテナ素子139をより小さくすることができる。また、放射特性が、無指向性により近い指向性となり、通信装置101が持ち運ばれ、移動した場合であっても、通信装置101の向きを調整することなく、送受信が確実に行なえるようになる。
【0107】
以上のように、アンテナ素子139に、第1の方向に進行しながら、第1の方向に交わるように蛇行する形状とされる部分であるミアンダパターン212と、第1の方向に交差する第2の方向に進行しながら、第2の方向に交わるように蛇行する形状とされる部分であるミアンダパターン253とからなるアンテナ導体202を設けることによって、無指向性により近い指向性を得ることができるようになる。
【0108】
また、アンテナ素子139に、第1の軸の方向に進行しながら、第1の軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分であるヘリカルパターン211−1と、第1の軸に交差する第2の軸の方向に進行しながら、第2の軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分であるヘリカルパターン211−2とからなるアンテナ導体202を設けることによって、無指向性により近い指向性を得ることができるようになる。
【0109】
さらに、アンテナ素子139に、所定の方向に進行しながら、その方向に交差するように蛇行する形状とされる部分であるミアンダパターン212と、所定の軸の方向に進行しながら、軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分であるヘリカルパターン211とからなるアンテナ導体202を設けることによって、無指向性により近い指向性を得ることができるようになる。
【0110】
基板140の面上の軸の方向に進行しながら、軸のまわりを回転する螺旋形状に形成されるヘリカルパターン211が設けられたアンテナ素子139からなるアンテナ111は、基板140の面に平行な電界の電波の受信または送信に適した特性を得ることができる。基板140の面と平行する方向に進行しながら、この方向に交わるように蛇行する形状とされるミアンダパターン212またはミアンダパターン253が設けられたアンテナ素子139からなるアンテナ111は、基板140の面に平行な電界の電波の受信または送信に適した特性を得ることができる。
【0111】
従って、この場合、通信装置101から垂れ下がった状態で保持されるアンテナ111の特性は、大地に垂直な電界をもつ電波である垂直偏波の電波の受信または送信に適したものとなる。
【0112】
このように、アンテナ111は、筐体131から垂れ下がった状態において、垂直偏波の電波の受信または送信に適した特性を有し、接続ケーブル113を介して筐体131に接続されている。
【0113】
また、アンテナ112のアンテナ素子は、アンテナ素子139と同様に構成されるので、その説明は省略する。
【0114】
アンテナ112のアンテナ素子には、通信装置101が使用され、筐体131が使用者に把持される状態に応じたパターンが設けられる。
【0115】
例えば、アンテナ112のアンテナ素子に、筐体131が把持された状態において、大地とほぼ平行の軸の方向に進行しながら、軸のまわりを回転する螺旋形状に形成されるヘリカルパターンが設けられるので、アンテナ112は、大地に水平な電界をもつ電波である水平偏波の電波の受信または送信に適した特性を得ることができる。または、アンテナ112のアンテナ素子に、筐体131が把持された状態において、大地とほぼ平行する方向に進行しながら、この方向に交わるように蛇行する形状とされるミアンダパターンが設けられるので、アンテナ112は、大地に水平な電界をもつ電波である水平偏波の電波の受信または送信に適した特性を得ることができる。
【0116】
すなわち、アンテナ111における平均放射利得の大きい偏波面とアンテナ112における平均放射利得の大きい偏波面とが異なるように、アンテナ111およびアンテナ112が構成される。
【0117】
このように、アンテナ111は、筐体131が把持された状態において、水平偏波の電波の受信または送信に適した特性を有し、筐体131に設けられている。
【0118】
なお、アンテナ111における、平均放射利得に対して放射利得の低い方向が、アンテナ112における、平均放射利得に対して放射利得の低い方向に対して異なる方向となるように、アンテナ111およびアンテナ112を構成するようにしてもよい。すなわち、アンテナ111およびアンテナ112の優先偏波面が同一であっても、アンテナ111の放射利得が低い方向(例えば、放射利得のヌル点)とアンテナ112の放射利得が低い方向(例えば、放射利得のヌル点)とが異なる方向とされる(例えば、アンテナ111の放射利得のヌル点の方向と、アンテナ112の放射利得のヌル点の方向とが一致しないようにする)。これにより、一方のアンテナで電波を受信できない場合であっても、他方のアンテナで確実にその電波を受信できるようになる。
【0119】
図15は、通信装置101の機能の構成を示すブロック図である。ダイバーシティ用スイッチ301は、通信装置101の筐体131に内蔵されているアンテナ112と筐体131の外部に設けられ同軸ケーブル136を介して接続されているアンテナ111とを切り替える。例えば、ダイバーシティ用スイッチ301は、受信部303の制御の基に、アンテナ112とアンテナ111とを切り替える。
【0120】
アンテナ112は、筐体131が把持された状態において、水平偏波の電波の受信または送信に適した特性を有し、アンテナ111は、筐体131から垂れ下がった状態において、垂直偏波の電波の受信または送信に適した特性を有するので、ダイバーシティ用スイッチ301は、アンテナ112とアンテナ111とを切り替えて、水平偏波の電波または垂直偏波の電波を受信させるかまたは送信させる。
【0121】
電波を受信する場合、ダイバーシティ用スイッチ301は、アンテナ112またはアンテナ111から供給された、受信した電波に対応した信号をアンテナスイッチ302に供給する。
【0122】
例えば、受信部303は、アンテナ112において受信した電波に対応する信号の強度(レベル)とアンテナ111において受信した電波に対応する信号の強度(レベル)とを比較し、強度の大きい(レベルの高い)信号を供給させるように、ダイバーシティ用スイッチ301を切り替えさせる。すなわち、ダイバーシティ用スイッチ301は、アンテナ111から供給される信号およびアンテナ112から供給される信号のうち、より強度の大きい(レベルの高い)信号をアンテナスイッチ302に供給するように、アンテナ112とアンテナ111とを切り替える。
【0123】
電波を放射する場合、ダイバーシティ用スイッチ301は、アンテナスイッチ302を介して供給された、電波を放射させるための信号をアンテナ111に供給する。
【0124】
なお、電波を放射する場合、ダイバーシティ用スイッチ301は、アンテナスイッチ302を介して供給された、電波を放射させるための信号をアンテナ112またはアンテナ111に供給するようにしてもよい。
【0125】
また、例えば、ダイバーシティ用スイッチ301に代えて、アンテナ111からの信号とアンテナ112からの信号とを混合(合成)する混合器、並びにアンテナ111およびアンテナ112に信号を分波する分波器を設けるようにしてもよい。
【0126】
混合器を設けた場合、電波を受信するとき、アンテナ112は、筐体131が把持された状態において、水平偏波の電波の受信に適した特性を有し、アンテナ111は、筐体131から垂れ下がった状態において、垂直偏波の電波の受信に適した特性を有するので、混合器は、水平偏波の電波に対応する信号と垂直偏波の電波に対応する信号とを混合し、混合された信号がアンテナスイッチ302に供給される。また、分波器を設けた場合、電波を放射するとき、分波器は、アンテナスイッチ302から供給された信号を分波して、アンテナ112およびアンテナ111に信号を供給するので、アンテナ112は、筐体131が把持された状態において、水平偏波の電波をより強く送信(放射)し、アンテナ111は、筐体131から垂れ下がった状態において、垂直偏波の電波のより強く受信(放射)する。
【0127】
アンテナスイッチ302は、電波を受信する場合、ダイバーシティ用スイッチ301から供給された信号を受信部303に供給し、電波を放射する場合、送信部308から供給された信号をダイバーシティ用スイッチ301に供給する。
【0128】
受信部303は、周波数シンセサイザ304から供給されたローカル信号を基に、ダイバーシティ用スイッチ301およびアンテナスイッチ302を介して、アンテナ111またはアンテナ112から供給された、受信した電波に対応した信号を復調して、復調の結果得られた受信信号をベースバンド信号処理部305に供給する。
【0129】
周波数シンセサイザ304は、アンテナ112またはアンテナ111において受信された電波に対応する信号である高周波信号の周波数を、中間周波数信号の周波数(中間周波数)に周波数変換するため、または、変調して得られた中間周波数信号の周波数を、アンテナ112またはアンテナ111において電波として放射させるための信号である高周波信号の周波数に変換するためのローカル信号を、受信部303および送信部308に供給する。
【0130】
より詳細には、受信部303は、高周波増幅器311、受信ミキサ312、IF(Intermediate Frequency)増幅器313、および復調器314を含む。高周波増幅器311は、ダイバーシティ用スイッチ301およびアンテナスイッチ302を介して供給された、アンテナ112またはアンテナ111において受信された電波に対応する信号である高周波信号を所定の増幅率で増幅する。高周波増幅器311は、増幅した高周波信号を受信ミキサ312に供給する。
【0131】
受信ミキサ312は、高周波増幅器311から供給された増幅された高周波信号と、周波数シンセサイザ304から供給されたローカル信号とをミキシングすることにより、中間周波数の中間周波数信号を生成する。受信ミキサ312は、中間周波数信号をIF増幅器313に供給する。IF増幅器313は、受信ミキサ312から供給された中間周波数信号を所定の増幅率で増幅し、増幅した中間周波数信号を復調器314に供給する。
【0132】
復調器314は、IF増幅器313から供給された、所定の変調方式で変調されている中間周波数信号を対応する方式で復調し、復調の結果得られた受信信号をベースバンド信号処理部305に供給する。復調器314は、所定の方式で符号化されている受信信号をベースバンド信号処理部305に供給することになる。
【0133】
ベースバンド信号処理部305は、受信部303から供給された受信信号を復号し、復号により得られたデータを出力部306に供給する。
【0134】
出力部306は、ディスプレイまたはスピーカなどからなり、ベースバンド信号処理部305から供給されたデータに応じて、画像を表示したり、または音声を出力したりする。
【0135】
入力部307は、マイクまたは入力キー(スイッチ)などからなり、使用者の操作に応じたデータまたは信号をベースバンド信号処理部305に供給する。
【0136】
ベースバンド信号処理部305は、入力部307から供給されたデータまたは信号を符号化し、符号化により得られた送信信号を送信部308に供給する。
【0137】
ベースバンド信号処理部305は、受信信号処理回路321および送信信号処理回路322を含む。受信信号処理回路321は、受信部303から供給された、所定の方式で符号化されている受信信号を復号することによって、データを生成する。受信信号処理回路321は、復号によって得られたデータを出力部306に供給する。
【0138】
送信信号処理回路322は、入力部307から供給された、使用者の操作に応じたデータまたは信号を所定の方式で符号化することによって、送信信号を生成する。送信信号処理回路322は、符号化により得られた送信信号を送信部308に供給する。
【0139】
送信部308は、周波数シンセサイザ304から供給されたローカル信号を基に、ベースバンド信号処理部305から供給された送信信号を変調して、変調の結果得られた信号を、ダイバーシティ用スイッチ301およびアンテナスイッチ302を介して、アンテナ111またはアンテナ112に供給する。
【0140】
送信部308は、変調器331、送信ミキサ332、および送信電力増幅器333を含む。変調器331は、ベースバンド信号処理部305から供給された送信信号を、所定の変調方式で変調し、変調の結果得られた中間周波数の信号を送信ミキサ332に供給する。送信ミキサ332は、変調器331から供給された中間周波数の信号と、周波数シンセサイザ304から供給されたローカル信号とをミキシングすることにより、高周波信号を生成して、生成した高周波信号を送信電力増幅器333に供給する。
【0141】
送信電力増幅器333は、増幅率を可変制御して、利得が一定レベルまで上がるように、送信ミキサ332から供給された高周波信号を電力増幅して、電力増幅された高周波信号を、ダイバーシティ用スイッチ301およびアンテナスイッチ302を介して、アンテナ112またはアンテナ111に供給する。
【0142】
図16および図17で示されるように、アンテナ111に接続されるリング114に、いわゆる携帯ストラップ351を結ぶことができる。このようにすると、携帯ストラップ351を持って、通信装置101を持ち運ぶことができるようになる。携帯ストラップ351を首にかければ、両手を自由にして、通信装置101を用いることができる。
【0143】
さらに、図18に示されるように、通信装置101の本体に内蔵されているアンテナ112に代えて、ロッドアンテナ171を通信装置101の本体に設けるようにしてもよい。ロッドアンテナ171は、固定式であっても、引き伸ばしできるアンテナであってもよい。
【0144】
例えば、引き伸ばしできるアンテナとしてロッドアンテナ171を設けるようにした場合、通信装置101が若干大きくなり、デザイン上制約が生じることになる。しかしながら、内蔵されるアンテナ112の受信感度に比較して、ロッドアンテナ171の受信感度は高いので、より安定して通信ができる。
【0145】
ロッドアンテナ171が手で覆われてしまった場合または使用者の頭部に近づいた場合には、ロッドアンテナ171の放射利得が低下するので、アンテナ111に切り替えて受信することで、より安定して通信ができる。
【0146】
さらに加えて、同軸ケーブル136の長さをより長くすることにより、ダイバーシティ受信の効果を得ることができるようになる。
【0147】
このように、本発明によれば、より小型にしても、ダイバーシティ受信の効果を十分に得ることができる。また、ケーブルを介してアンテナが接続されているので、人体の影響による放射利得の低下を抑制することができる。
【0148】
その結果、本発明によれば、より小型にしても、伝送されるデータの欠落がより少なくなるなど、より安定して通信することができるようになる。
【0149】
以上のように、アンテナ素子を設けるようにした場合には、無線により通信することができる。また、第1のアンテナを筐体に設け、第2のアンテナを所定の長さの同軸ケーブルを介して筐体に接続し、地板を筐体内の基板とは別に第2のアンテナのアンテナ素子に対して設けるようにした場合には、より小型にしても、ダイバーシティ受信の効果を十分に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】従来の、2つのアンテナを設けた移動通信端末装置を示す図である。
【図2】ホイップアンテナを説明する図である。
【図3】筐体の内部に内蔵された内蔵アンテナの概要を説明する図である。
【図4】内蔵アンテナの構成を説明する図である。
【図5】小型の移動通信端末装置における人体の影響を説明する図である。
【図6】本発明の一実施の形態の通信装置を示す図である。
【図7】通信装置の本体およびアンテナの構成の一例を示す図である。
【図8】アンテナの構成の一例を示す図である。
【図9】アンテナの理想的な実装状態の一例を示す図である。
【図10】アンテナの理想的な状態およびアンテナの理想的な状態から外れた状態の周波数に対するVSWRを説明する図である。
【図11】地板の形状の例を説明する図である。
【図12】地板の形状の例を説明する図である。
【図13】アンテナ素子の内部の構造の一例を示す図である。
【図14】アンテナ素子の内部の構造の一例を示す図である。
【図15】通信装置の機能の構成を示すブロック図である。
【図16】通信装置を示す図である。
【図17】通信装置を示す図である。
【図18】通信装置を示す図である。
【符号の説明】
【0151】
101 通信装置, 111 アンテナ, 112 アンテナ, 113 接続ケーブル, 131 筐体, 132 基板, 136 同軸ケーブル, 138 筐体, 139 アンテナ素子, 140 基板, 151 地板, 172 給電点, 201 形成材, 202 アンテナ導体, 211,211−1,211−2 ヘリカルパターン, 212−1,212−2,212 ミアンダパターン, 213 容量結合点, 214 接地点, 231 スタブ, 271 容量付加部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に設けられている第1のアンテナと、
所定の長さの同軸ケーブルを介して前記筐体に接続されている第2のアンテナと、
前記筐体内の基板とは別に、前記第2のアンテナのアンテナ素子に対して設けられた地板と
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第1のアンテナにおける平均放射利得の大きい偏波面と前記第2のアンテナにおける平均放射利得の大きい偏波面とが異なる
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1のアンテナは、前記筐体が把持された状態において、水平偏波の電波の受信または送信に適した特性を有し、
前記第2のアンテナは、前記筐体から垂れ下がった状態において、垂直偏波の電波の受信または送信に適した特性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1のアンテナにおける、平均放射利得に対して放射利得の低い方向と、前記第2のアンテナにおける、平均放射利得に対して放射利得の低い方向とが異なる
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替える切り替え手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記切り替え手段は、前記第1のアンテナで受信された電波の強度および前記第2のアンテナで受信された電波の強度を基に、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替える
ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第2のアンテナは、前記筐体からの距離が無線の電波の波長の4分の1以上となるように前記筐体に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記第1のアンテナまたは前記第2のアンテナのアンテナ素子は、第1の方向に進行しながら、前記第1の方向に交わるように蛇行する形状とされる部分と、前記第1の方向に交差する第2の方向に進行しながら、前記第2の方向に交わるように蛇行する形状とされる部分とからなるアンテナ導体を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項9】
前記第1のアンテナまたは前記第2のアンテナのアンテナ素子は、第1の軸の方向に進行しながら、前記第1の軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分と、前記第1の軸に交差する第2の軸の方向に進行しながら、前記第2の軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分とからなるアンテナ導体を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項10】
前記第1のアンテナまたは前記第2のアンテナのアンテナ素子は、所定の方向に進行しながら、前記方向に交差するように蛇行する形状とされる部分と、所定の軸の方向に進行しながら、前記軸のまわりを回転する螺旋形状とされる部分とからなるアンテナ導体を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項11】
前記第1のアンテナまたは前記第2のアンテナのアンテナ素子は、4以上の比誘電率の不導体でアンテナ導体を被覆するように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項12】
前記第1のアンテナまたは前記第2のアンテナのアンテナ素子は、強誘電体フィラーを含有する不導体でアンテナ導体を被覆するように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−287527(P2006−287527A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103680(P2005−103680)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】