説明

集合プリント配線基板

【課題】集合プリント配線基板の剛性を確保した上で、電子部品等を実装するときの熱により生じる集合プリント配線基板の変形を抑制することができる集合プリント配線基板を得る。
【解決手段】平面視(集合プリント配線基板50を板厚方向から見た矢視)において、第2金属層68のべたパターン102に設けられた切離部110と、第3金属層74のべたパターン104に設けられた切離部112とは、重ならないように配置されている。このため、この切離部110、112が、線膨張係数の違いで生じる変形量の差(応力)を吸収する。これにより、集合プリント配線基板50に生じる変形が抑制される。切離部110、112とは、重ならないように配置されているため、集合プリント配線基板50の全体の剛性が確保され、各工程間のハンドリング等で集合プリント配線基板50が変形するのが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合プリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の集合プリント配線基板には、最終製品として用いられる複数個のプリント配線基板と、これらのプリント配線基板と連結片で連結されてプリント配線基板を支持する捨て基板とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2009−283959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、集合プリント配線基板の剛性を確保した上で、電子部品等を実装するときの熱により生じる集合プリント配線基板の変形を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に集合プリント配線基板は、2層以上の金属層が絶縁層を介して積層され、前記金属層から形成された配線パターンを備える複数のプリント配線基板と、2層以上の前記金属層が前記絶縁層を介して積層され、前記複数のプリント配線基板と連結されて前記複数プリント配線基板を支持すると共に、前記金属層の少なくとも2層がべたパターンである支持基板と、前記各べたパターンに形成され、加熱又は冷却された場合に、前記金属層と前記絶縁層との間で生じる変形量の差を逃がす逃し部と、を備え、前記プリント配線基板の厚さ方向から透視して見たときに、異なる前記金属層の前記べたパターンに形成された前記逃し部は、重ならないように形成されることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る集合プリント配線基板は、請求項1に記載において、前記支持基板は、前記複数のプリント配線基板の外周を囲むように設けられることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る集合プリント配線基板は、1又は2に記載において、前記逃し部は、前記各べたパターンを切り離した切離部であることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る集合プリント配線基板は、1〜3の何れか1項に記載において、前記金属層は4層以上設けられ、前記支持基板に設けられた前記べたパターンのうち、前記絶縁層に挟まれた内層に設けられた前記べたパターンに前記逃し部が形成され、前記絶縁層に挟まれない外層に設けられた前記べたパターンに逃し部が形成されないことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る集合プリント配線基板は、1〜4の何れか1項に記載において、前記プリント配線基板には、複数個の発光素子が実装されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1の集合プリント配線基板によれば、金属層と絶縁層との間で生じる変形量の差を逃がす逃し部が、全てのべたパターンに逃し部を設けない場合と比して、集合プリント配線基板の剛性を確保した上で、電子部品等を実装するときの熱により生じる集合プリント配線基板の変形を抑制することができる。
【0011】
本発明の請求項2の集合プリント配線基板によれば、支持基板がプリント配線基板の外周を囲むように設けられていない場合と比して、集合プリント配線基板の剛性を効果的に確保することができる。
【0012】
本発明の請求項3の集合プリント配線基板よれば、逃し部が、べたパターンを切り離す切離部ではない場合と比して、容易に逃し部を形成することができる。
【0013】
本発明の請求項4の集合プリント配線基板によれば、絶縁層に挟まれた内層に設けられたべたパターンに逃し部が形成されていない場合と比して、集合プリント配線基板の剛性を確保した上で、電子部品等を実装するときの熱により生じる集合プリント配線基板の変形を効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明の請求項5の集合プリント配線基板によれば、全てのべたパターンに逃し部を設けない場合と比して、プリント配線基板に実装された光発光素子の出射方向が狙いの位置からズレるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)(B)(C)各層のべたパターンを示した拡大平面図(第1実施形態)
【図2】(A)(B)集合プリント配線基板の製造工程を示した断面図(第1実施形態)
【図3】集合プリント配線基板を示した断面図(第1実施形態)
【図4】集合プリント配線基板の内層を示した平面図(第1実施形態)
【図5】集合プリント配線基板の内層を示した平面図(第1実施形態)
【図6】集合プリント配線基板の内層を示した平面図(第1実施形態)
【図7】集合プリント配線基板の外層を示した平面図(第1実施形態)
【図8】集合プリント配線基板を示した平面図(第1実施形態)
【図9】集合プリント配線基板を示した斜視図(第1実施形態)
【図10】集合プリント配線基板から切り出されたプリント配線基板を用いたLPHを示した断面図(第1実施形態)
【図11】集合プリント配線基板から切り出されたプリント配線基板を用いたLPHを示した斜視図(第1実施形態)
【図12】集合プリント配線基板から切り出されたプリント配線基板を用いたLPHを示した平面図(第1実施形態)
【図13】集合プリント配線基板から切り出されたプリント配線基板を用いたLPHが搭載された画像形成装置の概略構成図(第1実施形態)
【図14】集合プリント配線基板のU溝を示した平面図(第2実施形態)
【図15】集合プリント配線基板を示した平面図(第5実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態の集合プリント配線基板50の一例について図1〜図13に従って説明する。
(画像形成装置)
先ず、集合プリント配線基板50に備えられたプリント配線基板52を用いたLEDプリントヘッド(LPH)20、及びこのLEDプリントヘッド(LPH)20を用いた画像形成装置10について説明する。
【0017】
図13に示されるように、画像形成装置10の装置本体10Aには、複数のローラ12に張架され、モータ(図示省略)の駆動により矢印A方向に搬送される中間転写体としての無端ベルト状の中間転写体ベルト14が設けられている。
【0018】
この画像形成装置10は、カラー画像の形成に対応しており、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応するトナー像を形成する画像形成ユニット28Y、28M、28C、28Kが、中間転写体ベルト14の長手方向に沿って配置され、装置本体10Aに脱着可能に支持されている。
【0019】
なお、各色毎に設けられた部材については、符号の末尾に各々の色を示すアルファベット(Y/M/C/K)を付与して示すが、特に色を区別せずに説明する場合は、この符号末尾のアルファベットを省略して説明する。
【0020】
画像形成ユニット28は、図示しないモータ及びギアからなる駆動手段によって時計方向へ回転する像保持体としての感光体ドラム16を備えている。そして、感光体ドラム16には、表面に黒色のトナー画像が形成される黒色用の黒色用感光体ドラム16Kと、表面にカラー用のトナー画像が形成されるカラー用感光体ドラム16Y、16M、16Cとが存在する。
【0021】
さらに、感光体ドラム16の周面には、感光体ドラム16の表面を所定の電位に一様に帯電させるための帯電ローラ18が配置されている。帯電ローラ18は、導電性のローラであり、その周面が感光体ドラム16の周面に接触し、かつ帯電ローラ18の軸線方向と感光体ドラム16の軸線方向とが平行となるように配置されている。
【0022】
また、感光体ドラム16の回転方向の帯電ローラ18よりも下流側の周面には、感光体ドラム16上に潜像を形成するための発光素子としてのLED(発光ダイオード)アレイを光源とした発光器としてのLEDプリントヘッド(LPH)20が感光体ドラム16の軸方向に延びている。なお、以後、LEDプリントヘッド20をLPH20と記載する。このLPH20は、画像データに応じて光ビームを感光体ドラム16に照射することにより、感光体ドラム16上に潜像を形成するようになっている。なお、LPH20及びLPH20を構成するプリント配線基板52(図10参照)については詳細を後述する。
【0023】
さらに、各感光体ドラム16の回転方向のLPH20よりも下流側の周面には、感光体ドラム16上に形成された潜像を所定色(イエロー/マゼンタ/シアン/ブラック)のトナーによって現像してトナー像を形成させる現像器22が配置されている。
【0024】
現像器22は、感光体ドラム16に近接して配置され、回転可能に設けられた円筒状の現像ローラ24を有している。現像ローラ24には、現像バイアスが印加され、現像器22内に装填されたトナーが周面に付着される。現像ローラ24の回転により、現像ローラ24に付着されたトナーが感光体ドラム16の表面に搬送され、トナーが感光体ドラム16に擦りつけられて、感光体ドラム16上に形成された潜像がドナー画像として現像される構成となっている。
【0025】
また、各感光体ドラム16の回転方向の現像器22よりも下流側の周面には、各感光体ドラム16上のトナー像を中間転写体ベルト14に転写する転写部材としての転写ローラ30が設けられている。転写ローラ30は、所定の電位に帯電されて反時計方向に回転して中間転写体ベルト14を所定の速度で搬送し、中間転写体ベルト14を感光体ドラム16に押し付けて順次対向させる。これにより、転写ローラ30が、感光体ドラム16上のトナー画像を中間転写体ベルト14上に転写させるようになっている。
【0026】
また、感光体ドラム16の周面の転写ローラ30よりも下流側には、感光体ドラム16上の転写残トナーやリトランスファートナー等の残留トナーを回収するクリーニングブレード26が配置されている。クリーニングブレード26は、一辺が感光体ドラム16と接触するように配設されており、中間転写体ベルト14に転写されずに感光体ドラム16上に残留したトナーや、転写時に感光体ドラム16上に付着してしまった他の色のトナー等を削ぎとって回収するようになっている。
【0027】
ここで、各画像形成ユニット28により形成された互いに異なる色のトナー像は、中間転写体ベルト14のベルト面上で、互いに重なり合うように転写される。これにより、中間転写体ベルト14上にカラーのトナー像が形成される。なお、本実施形態では、このようにして4色のトナー像が重ねて転写されたトナー像を最終トナー像と称する。
【0028】
4つの感光体ドラム16よりも中間転写体ベルト14の搬送方向下流側には、対向する2つのローラ34A、34Bを含んで構成される転写装置34が配設されている。このローラ34A、34Bの間に送り込まれ、画像形成装置10の底部に設けられた用紙トレイ36から取り出されて、ローラ34A、34Bの間に搬送されてきたシート部材Pに、中間転写体ベルト14上に形成された最終トナー像が転写されるようになっている。
【0029】
また、最終トナー像が転写されたシート部材Pの搬送経路には、加熱ローラ40Aと加圧ローラ40Bとを含んで構成される定着装置40が配設されている。定着装置40に搬送されたシート部材Pは、加熱ローラ40Aと加圧ローラ40Bとによって挟持搬送されることにより、シート部材P上のトナーが溶融すると共にシート部材Pに圧着されてシート部材Pに定着される。
【0030】
一方、中間転写体ベルト14の外周面において、転写装置34よりも中間転写体ベルト14の搬送方向下流側には、転写装置34によってシート部材Pに転写されずに中間転写体ベルト14上に残留したトナーを回収するクリーナ42が配設されている。クリーナ42には、中間転写体ベルト14に接するようにブレード44が備えられており、残留したトナーを擦り取ることによって回収する。
【0031】
上記構成による画像形成装置10では、次のようにして画像が形成される。
【0032】
まず、帯電ローラ18が、感光体ドラム16の表面を予定の帯電部電位で一様にマイナス帯電する。さらに、帯電された感光体ドラム16上の画像部分が予定の露光部電位になるようにLHP20で露光を行ない感光体ドラム16上に潜像が形成される。
【0033】
さらに、回転する感光体ドラム16上の潜像が現像器22に備えられた現像ローラ24を通過すると、静電気力によって現像剤Gのトナーが潜像へ付着し、潜像はトナー画像として可視化される。
【0034】
可視化された各色のトナー画像は、転写ローラ30の静電気力で中間転写体ベルト14へ順次転写され、中間転写体ベルト14上にカラーの最終トナー画像が形成される。
【0035】
転写装置34に設けられたローラ34A、34Bの間に送り込まれ、用紙トレイ36から取り出されて、同じくローラ34A、34Bの間に搬送されてきたシート部材Pにこの最終トナー像が転写される。
【0036】
さらに、シート部材Pへ転写されたトナー画像は定着装置40で定着され、シート部材Pは、装置外へ排出される。
(集合プリント配線基板およびプリント配線基板)
次に、LPH20、LPH20を構成するプリント配線基板52、及びプリント配線基板52の製造過程において用いられる集合プリント配線基板50について説明する。
【0037】
先ず、集合プリント配線基板50について説明する。図8に示されるように、集合プリント配線基板50には、9個の長尺状のプリント配線基板52と、この9個のプリント配線基板52を支持する支持基板94とが設けられている。
【0038】
詳細には、9個のプリント配線基板52は、5個のプリント配線基板52がプリント配線基板52の長手方向に直交する方向に並べられた第1グループ(図8に示す上側)と、4個のプリント配線基板52がプリント配線基板52の長手方向に直交する方向に並べられた第2グループ(図8に示す下側)とに分けられている。そして、支持基板94は、9個のプリント配線基板52の全体の外周に設けられる外周支持部94Aと、第1グループのプリント配線基板52と第2グループのプリント配線基板52との間に設けられた中間支持部94Bとを備えている。
【0039】
さらに、支持基板94とプリント配線基板52及び隣接するプリント配線基板52は、切断可能な複数個の連結片96で連結されている。
【0040】
このように、各プリント配線基板52を連結片96で支持基板94と連結させることで、9個のプリント配線基板52が、互いに所定の位置関係を保ちながら支持基板94に支持されるようになっている。
【0041】
また、図3に示されるように、集合プリント配線基板50は、銅箔等の金属箔から構成される第1金属層66と第2金属層68とが、ガラスエポキシ材(例えば、FR4等)から成形される板状の絶縁層70を介して積層される第1基板72と、銅箔等の金属箔から構成される第3金属層74と第4金属層76とが、ガラスエポキシ材から成形される板状の絶縁層78を介して積層される第2基板80と、第1基板72と第2基板80とを固定する絶縁性の接着層からなる絶縁層82とを備えている。
【0042】
詳細には、第2金属層68及び第3金属層74は、絶縁層70と絶縁層78とに挟まれた内層に設けられ、第1金属層66及び第4金属層76は、絶縁層70及び絶縁層78に挟まれない外層に設けられている。
【0043】
また、図7に示されるように、集合プリント配線基板50の一方の外層(第1金属層66)には、プリント配線基板52に設けられた第1金属層66に形成された配線パターン84と、支持基板94に設けられた第1金属層66に形成されたべたパターン98と、が備えられている。べたパターン98は、隙間なく銅箔等の金属箔が設けられ、配線パターン84より充分に太くされており、集合プリント配線基板50の剛性を向上させるようになっている。なお、集合プリント配線基板50の他方の外層(第4金属層76)についても、一方の外層と同様に、第4金属層76に配線パターン90及びべたパターン100が形成されている。
【0044】
また、図5に示されるように、集合プリント配線基板50の内層(第2金属層68)には、プリント配線基板52に設けられた第2金属層68に形成された配線パターン86と、支持基板94に設けられた第2金属層68に形成されたべたパターン102と、が備えられている。
【0045】
同様に、図6に示されるように、集合プリント配線基板50の内層(第3金属層68)には、プリント配線基板52に設けられた第3金属層74に形成された配線パターン88と、支持基板94に設けられた第3金属層74に形成されたべたパターン104と、が備えられている。
【0046】
また、図1(B)、図5に示されるように、第2金属層68から形成されたべたパターン102には、集合プリント配線基板50が加熱又は冷却された場合に、各金属層66、68、74および76と、絶縁層70、78および82との間で生じる変形量の差を逃がす逃し部の一例としての切離部110(スリット)が複数個設けられている。
【0047】
詳細には、切離部110は、支持基板94の外周支持部94Aに備えられたべたパターン102に複数個(本実施形態では一例として8個)設けられている。そして、切離部110は、集合プリント配線基板50の長手方向(図5に示す矢印B方向)に延びるべたパターンを切離すようになっている。
【0048】
さらに、図1(A)、図6に示されるように、第3金属層74から形成されたべたパターン104には、べたパターン102と同様に、集合プリント配線基板50が加熱又は冷却された場合に、各金属層66、68、74および76と、絶縁層70、78および82との間で生じる変形量の差を逃がす逃し部の一例としての切離部112(スリット)が複数個設けられている。
【0049】
詳細には、切離部112は、支持基板94の外周支持部94Aに備えられたべたパターン102に複数個(本実施形態では一例として8個)設けられている。そして、集合プリント配線基板50の長手方向(図6に示す矢印B方向)に延びるべたパターンを切離すようになっている。
【0050】
また、図1(C)、図4に示されるように、プリント配線基板52の厚さ方向から透視して見たとき(平面視)に、第2金属層68のべたパターン102に設けられた切離部110と、第3金属層74のべたパターン104に設けられた切離部112とは、重ならないように配置されている。
【0051】
一方、図8、図9に示されるように、集合プリント配線基板50に設けられたプリント配線基板52の一方の外層(第1金属層66又は第4金属層76)には、発光ダイオード(LED)62が千鳥状に実装され、プリント配線基板52の他方の外層(第4金属層76又は第1金属層66)には、電子部品64が実装されるようになっている(図10参照)。
【0052】
そして、この集合プリント配線基板50の連結片96を切断することで、9個のプリント配線基板52が集合プリント配線基板50から切り出されるようになっている。尚、連結片96は、切断を容易にするため、図3に示すように、絶縁層70、78および82から構成されている。
(LEDプリントヘッド)
次に、このプリント配線基板52を備えたLPH20について説明する。
【0053】
図10、図11、図12に示されるように、LPH20は、前述したプリント配線基板52と、一端部にプリント配線基板52が固定された筐体58と、プリント配線基板52と対向するように筐体58によって外周が支持されたレンズアレイ56とを備えている。
【0054】
そして、レンズアレイ56には、プリント配線基板52に千鳥状に実装された発光ダイオード62と対向するように、複数のロッドレンズ54が配置されている。
【0055】
この構成により、発光ダイオード62から出射された光は、ロッドレンズ54を通って感光体ドラム16(図13参照)に照射されるようになっている。
(集合プリント配線基板の製造方法)
次に、プリント配線基板52を備えた集合プリント配線基板50の製造方法について説明する。
【0056】
図2(A)に示されるように、絶縁層70の両面に銅箔等の金属箔からなる第1金属層66及び第2金属層68を形成させて第1基板72を作成し、さらに、絶縁層78の両面に銅箔等の金属箔からなる第3金属層74及び第4金属層76を形成させて第2基板80を作成する。
【0057】
また、既知のエッジング工法により、第1金属層66に配線パターン84及びべたパターン98を形成する(図7参照)。さらに、第2金属層68に配線パターン86及びべたパターン102を形成する(図5参照)。
【0058】
また、既知のエッジング工法により、第3金属層74に配線パターン88及びべたパターン104を形成する(図6参照)。さらに、第4金属層76に配線パターン90及びべたパターン100を形成する(図7参照)。
【0059】
次に、図2(B)に示されるように、プリプレグ(中間段階まで硬化させた樹脂)を用いて接着層からなる絶縁層82を形成し、第1基板72と第2基板80とを接着する。
【0060】
さらに、スルーホール及び取付孔(図示省略)を形成し、スルーホールにメッキを施すことで各層の配線パターン84、86、88および90を電気的に接続する。
【0061】
次に、短絡を防止するため、電子部品との接合に不要な部位の外層については、ソルダーレジスト層(図示省略)を形成する。
【0062】
次に、図7に示されるように、ルーター加工により、支持基板94とプリント配線基板52及びプリント配線基板52同士が連結片96で連結されるように、支持基板94及びプリント配線基板52の外形を形成する。以上により、集合プリント配線基板50(ベアボード)が形成される。
【0063】
次に、図9に示されるように、発光ダイオードアレイ62及び電子部品64(図10参照)を実装するためのチップオンボード(COB)アセンブリ工程にて、リフロー方式により集合プリント配線基板50を加熱することではんだペーストを溶融させ、発光ダイオード62及び電子部品64を配線パターン84、90上に実装する。なお、発光ダイオードアレイ62及び電子部品64を配線パターン84、90上に実装した後は、集合プリント配線基板50が冷却される。
【0064】
また、集合プリント配線基板50への発光ダイオードアレイ62および電子部品64の実装は、以下に示す方法であっても良い。すなわち、まず、集合プリント配線基板50の第4金属層76にクリーム半田を塗布し、当該クリーム半田の上に電子部品64を置いた後、リフロー等の加熱冷却工程で集合プリント配線基板50に電子部品64を実装する。次に、集合プリント配線基板50の第1金属層66に銀ペーストを塗布し、当該銀ペーストの上に発光ダイオードアレイ62を置いた後、キュア等の加熱冷却工程で集合プリント配線基板50に発光ダイオードアレイ62を実装する。ここで、実装とは、集合プリント配線基板を構成する個々のプリント配線基板に電子部品等が固定され、かつ、電気的に接続された状態をいう。
【0065】
以上説明した方法により集合プリント配線基板50に発光ダイオードアレイ62および電子部品64の実装した後、連結片96を切断することで、集合プリント配線基板50から夫々のプリント配線基板52が切り出される(生産される)。
(作用)
次に、集合プリント配線基板50及びプリント配線基板52の作用について説明する。
【0066】
前述したように、チップオンボード(COB)アセンブリ工程等の工程にて、集合プリント配線基板50が加熱されると、銅箔等の金属箔(金属層)の線膨張係数とエポキシ材等(絶縁層)の線膨張係数との違いから集合プリント配線基板50に変形が生じることが考えられる。
【0067】
しかし、図5、図6に示されるように、絶縁層70及び絶縁層78に挟まれた内層に配置されたべたパターン102及びべたパターン104には、べたパターン102及びべたパターン104を途中で切り離す切離部110及び切離部112が設けられている。このため、この切離部110、112が、線膨張係数の違いで生じる変形量の差(応力)を吸収する。つまり、集合プリント配線基板52が加熱された場合、金属層の方が絶縁層よりも伸びる量が多いが、金属層が多く伸びた分が切離部110及び切離部112が狭くなる(図5および図6の矢印B方向の幅が狭くなる)。これにより、集合プリント配線基板50に生じる変形が抑制される。
【0068】
また、チップオンボード(COB)アセンブリ等の工程にて、発光ダイオードアレイ62及び電子部品64が配線パターン84、90上に実装された後は、集合プリント配線基板50が冷却される。この冷却時に、線膨張係数の違いや水分吸収により集合プリント配線基板50に変形が生じることが考えられる。しかし、前述したように、切離部110、112が、変形量の差(応力)を吸収する。つまり、加熱された集合プリント配線基板52が冷却された場合、金属層の方が絶縁層よりも縮む量が多いが、金属層が多く縮んだ分が切離部110及び切離部112が広くなる(図5および図6の矢印B方向の幅が広くなる)。これにより、集合プリント配線基板50に生じる変形が抑制される。
【0069】
また、図1(C)、図4に示されるように、プリント配線基板52の厚さ方向から透視して見たとき(平面視)において、第2金属層68のべたパターン102に設けられた切離部110と、第3金属層74のべたパターン104に設けられた切離部112とは、重ならないように配置されている。このため、第2金属層68のべたパターン102に設けられた切離部110と、第3金属層74のべたパターン104に設けられた切離部112とが重なった場合に比して、部分的に集合プリント配線基板50の剛性が低下することが抑制されるため、集合プリント配線基板50の全体の剛性が確保され、各工程間のハンドリング等で集合プリント配線基板50が変形するのが抑制される。
【0070】
また、図7に示されるように、絶縁層70及び絶縁層78に挟まれない外層に設けられたべたパターン98及びべたパターン100には、べたパターン98及びべたパターン100を途中で切り離す切離部が設けられていない。つまり、絶縁層70及び絶縁層78に挟まれないことで、集合プリント配線基板50の変形を生じさせる応力の発生部位となりにくい外層に切離部を設けず、集合プリント配線基板50の変形を生じさせる応力の発生部位となりやすい内層に切離部110、112を設けることで、効果的に集合プリント配線基板50に生じる変形(そり、ねじれ等)が抑制される。
【0071】
また、外層に切離部を設けないことで、外層に切離部を設けた場合と比較すると、集合プリント配線基板50の搬送時の真空吸着時に、集合プリント配線基板50が変形するのが抑制される。
【0072】
また、変形が抑制された集合プリント配線基板50から切り出されたプリント配線基板52をLPH20に用いることで、プリント配線基板50に実装された発光ダイオード62から出射された光ビームは、感光体ドラム16上の狙いの位置に照射される。
【0073】
また、LPH20から出射される光ビームが、感光体ドラム16上の狙いの位置に照射されることで、画像形成装置10から出力される出力画像の品質が向上する。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態の集合プリント配線基板120の一例について図14に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0074】
図14に示されるように、べたパターン102および104には、べたパターン102および104を切り離す切離部110および112は設けられておらず、各金属層66、68、74、76と絶縁層70、78、82との間で生じる変形量の差を逃がす逃し部の一例としてのU溝122及びU溝124が切離部110および112が形成されていた位置に設けられている。
【0075】
詳細には、U溝122とU溝124とは、集合プリント配線基板120の長手方向(矢印B方向)にずれて配置され、長手方向と直交する方向において、U溝122の一部とU溝124の一部とが、重なるようになっている。
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態の集合プリント配線基板の一例について説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0076】
本第3実施形態は、第1実施形態において、外層である第1金属層66および第4金属層76にもそれぞれ複数の切離部200(8箇所)および201(8箇所)を設け、集合プリント配線基板50の厚さ方向から透視して見た場合に、異なる金属層の接離部110、112、200および201が互いに重ならないようにしたものである。
【0077】
尚、接離部200および201は図示を省略するが、形状、間隔等は、接離部110および112と略同じであり、長手方向(矢印B方向)の位置のみが異なるものである。
【0078】
かかる構成であっても、接離部110、112、200および201が集合プリント配線基板50の厚さ方向から透視して見た場合に重なっていないので、集合プリント配線基板50の剛性を保つことができる。また、各金属層66、68、74および76と、絶縁層70、78および82との間で生じる変形量の差を接離部110、112、200および201において逃がすことができるので、集合プリント配線基板50の変形(そり、ねじれ)が抑制される。
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態の集合プリント配線基板の一例について説明する。なお、第3実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0079】
本第4実施形態は、第3実施形態において、内層である第2金属層66および第3金属層76に設けられた切離部110(8箇所)および112(8箇所)を無くし、プリント配線基板50の厚さ方向から透視して見た場合に、異なる金属層の接離部200および201が互いに重ならないようにしたものである。
【0080】
かかる構成であっても、接離部200および201が集合プリント配線基板50の厚さ方向から透視して見た場合に重なっていないので、集合プリント配線基板50の剛性を保つことができる。また、各金属層66、68、74および76と、絶縁層70、78および82との間で生じる変形量の差を接離部200および201において逃がすことができるので、集合プリント配線基板50の変形(そり、ねじれ)が抑制される。
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態の集合プリント配線基板の一例について図15を用いて説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0081】
本第5実施形態は、第1実施形態において、支持基板94が中間支持部94Bのみからなるものである。
【0082】
かかる構成であっても、中間支持部94Bの2層以上の金属層に複数の接離部202を設け、厚さ方向から透視して見たときに異なる金属層の接離部202が重ならないようにすることにより、集合プリント配線基板の剛性を保ちつつ、各金属層66、68、74および76と、絶縁層70、78および82との間で生じる変形量の差を接離部において逃がすことができ、集合プリント配線基板の変形(そり、ねじれ)を抑制することができる。
【0083】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、金属層が4層から構成される集合プリント配線基板を例にとって説明したが、2層以上であれば4層に限定されることはない。
【0084】
また、上記第2実施形態では、U溝122、124を2個設けたが、特に2個に限定されることなく、1個であっても、3個以上であってもよい。
【0085】
また、上記第2実施形態では、溝形状をU字状としたが、とくにU字に限定されることなく、V字等であってもよい。
【0086】
また、上記第1実施形態では、特に言及しなかったが、集合プリント配線基板50の長手方向において、切離部110の配置位置が重ならないように配置することで、剛性を向上させてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、外層のべたパターン98及び100には逃し部を設けなかったが、特にこれに限定されることなく、外層のべたパターンに逃し部を設けてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、べたパターンについては、隙間なく銅箔が設けられると記載したが、集合プリント配線基板の剛性を確保する目的において、この目的を達成する範囲で、べたパターンの銅箔に隙間が設けられていてもよい。
【0089】
また、前記した実施形態では、プリント配線基板50同士を連結片を用いて連結し、かつプリント配線基板50と支持基板を連結片を用いて接続する集合プリント配線基板を示したが、連結片を用いた連結に限定するものではない。例えば、厚さ方向の両側からV溝を形成したVカット(実開昭63−11062号公報の図1を参照)を用いて連結したものであっても良い。この場合であっても、切断を容易にするために、プリント配線基板50同士、プリント配線基板50および支持基板の連結は絶縁層のみ(金属層では連結しない)であることが望ましい。
【符号の説明】
【0090】
50 集合プリント配線基板
52 プリント配線基板
62 発光ダイオード(光発光素子)
66 第1金属層
68 第2金属層
70 絶縁層
74 第3金属層
76 第4金属層
78 絶縁層
84 配線パターン
86 配線パターン
88 配線パターン
90 配線パターン
94 支持基板
96 連結片
98 べたパターン
100 べたパターン
102 べたパターン
104 べたパターン
110 切離部(逃し部)
112 切離部(逃し部)
120 集合プリント配線基板
122 U溝(逃し部)
124 U溝(逃し部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の金属層が絶縁層を介して積層され、前記金属層から形成された配線パターンを備える複数のプリント配線基板と、
2層以上の前記金属層が前記絶縁層を介して積層され、前記複数のプリント配線基板と連結されて前記複数プリント配線基板を支持すると共に、前記金属層の少なくとも2層がべたパターンである支持基板と、
前記各べたパターンに形成され、加熱又は冷却された場合に、前記金属層と前記絶縁層との間で生じる変形量の差を逃がす逃し部と、を備え、
前記プリント配線基板の厚さ方向から透視して見たときに、異なる前記金属層の前記べたパターンに形成された前記逃し部は、重ならないように形成される集合プリント配線基板。
【請求項2】
前記支持基板は、前記複数のプリント配線基板の外周を囲むように設けられる請求項1に記載の集合プリント配線基板。
【請求項3】
前記逃し部は、前記各べたパターンを切り離した切離部である請求項1又は2に記載の集合プリント配線基板。
【請求項4】
前記金属層は4層以上設けられ、
前記支持基板に設けられた前記べたパターンのうち、前記絶縁層に挟まれた内層に設けられた前記べたパターンに前記逃し部が形成され、前記絶縁層に挟まれない外層に設けられた前記べたパターンに逃し部が形成されない請求項1〜3の何れか1項に記載の集合プリント配線基板。
【請求項5】
前記プリント配線基板には、複数個の発光素子が実装されている請求項1〜4の何れか1項に記載の集合プリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−19151(P2012−19151A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156963(P2010−156963)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】