説明

電力変換装置

【課題】異常発生時に異常発生箇所を迅速に特定することができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換回路5は、スイッチング素子6を有する降圧チョッパ回路により直流電源11からの入力を受けて負荷装置2に電力を供給する。電力変換回路5は、スイッチング素子6のスイッチング時間に基づいて負荷装置2側の異常を検知する監視回路12を備える。この監視回路12は、スイッチング素子6のオン時間TONが所定の基準時間より短いとき、電力変換回路5と負荷装置2とを接続する電源ケーブル3の断線を検知し、オン時間TONが所定の基準時間より長いとき、負荷装置2側の短絡を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置等に内蔵され、インバータ装置の直流中間電圧から供給される直流電圧をチョッパ回路により直流電圧に変換して負荷装置に電力を供給する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、降圧チョッパ回路を用いた電力変換装置として、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、直流電源の入力直流電圧を、降圧チョッパ回路により当該入力直流電圧とは異なる所定の出力電圧に変換し、負荷へ供給するものである。ここでは、負荷への出力電圧を監視しつつ、その電圧が所定の定電圧となるように、降圧チョッパ回路を構成するスイッチング素子(トランジスタ)のオンオフ比を制御している。
【0003】
例えば、このような電力変換装置はインバータ装置等に内蔵され、インバータ装置の直流中間電圧から供給される直流電圧を所定の直流電圧に変換して負荷装置を動作させるが、このようなシステムでは、負荷装置から出力される信号をインバータ装置へ入力し、その信号をもとに、インバータ装置側で異常検出を行って警報を発するようにしている。これにより、例えば、インバータ装置と負荷装置との間の信号線に異常が発生した場合には、インバータ装置でこれを検知し警報を発することで、作業者は当該異常を認識して復旧作業を実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−130730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにインバータ装置への入力信号をもとに異常検出を行うと、インバータ装置と負荷装置との間の電源ケーブルが断線した場合などに、異常発生箇所を素早く特定することができない。
すなわち、電源ケーブルが断線すると、インバータ装置の出力部の電圧値が正常であるにもかかわらず、降圧チョッパ回路からの出力電圧が正常に供給されないことで負荷装置の動作が停止する。そのため、インバータ装置は、負荷装置から信号線を介して入力される入力信号の異常を検知する。
【0006】
すると、作業者は、最初にこの入力信号の異常原因となる箇所(信号線等)の異常調査を実施する。そして、これらが正常であると判断した後、その他の箇所の異常調査を実施する。したがって、電源ケーブルの異常を突き止めるまでに時間を浪費してしまい、装置の復旧に費やす時間が長くなってしまう。
そこで、本発明は、異常発生時に異常発生箇所を迅速に特定することができる電力変換装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る電力変換装置は、直流電源の入力直流電圧をスイッチングするスイッチング素子を有するチョッパ回路を備え、当該チョッパ回路により前記直流電源からの入力を受けて負荷装置に電力を供給する電力変換装置であって、前記スイッチング素子のスイッチング時間に基づいて、前記負荷装置側の異常を検知する監視回路を備えることを特徴としている。
【0008】
このように、チョッパ回路を構成するスイッチング素子のスイッチング時間を監視することで、負荷状況の監視が可能となる。そして、負荷状況が変化した場合には、その変化状況に応じて負荷装置側に異常が発生していることを検知することができると共に、異常発生箇所を特定することができる。
また、請求項2に係る電力変換装置は、請求項1に係る発明において、前記監視回路は、前記スイッチング素子を導通状態とするオン時間が所定の基準時間より短いとき、前記負荷装置に電力を供給する電源ケーブルの断線を検知することを特徴としている。
【0009】
スイッチング素子のオン時間が基準時間より短い場合には、負荷装置側の負荷が正常時と比較して小さくなったと判断することができる。したがって、この場合には、負荷装置に電力を供給するための電源ケーブルが断線していると判断する。このように、比較的簡易な構成で電源ケーブルの断線を素早く突き止めることができる。
さらに、請求項3に係る電力変換装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記監視回路は、前記スイッチング素子を導通状態とするオン時間が所定の基準時間より長いとき、前記負荷装置側の短絡を検知することを特徴としている。
【0010】
スイッチング素子のオン時間が基準時間より長い場合には、負荷装置側の負荷が正常時と比較して大きくなったと判断することができる。したがって、この場合には、負荷装置側が短絡して過負荷状態となっていると判断する。このように、比較的簡易な構成で負荷装置側の短絡を素早く突き止めることができる。
また、請求項4に係る電力変換装置は、請求項1〜3の何れかに係る発明において、前記スイッチング素子のスイッチング時間を制御する制御回路を備え、前記監視回路は、前記制御回路とは異なる独立した回路から構成し、当該制御回路の異常を検知可能であることを特徴としている。
【0011】
このように、監視回路を制御回路とは異なる独立した回路で構成するので、制御回路に異常が発生した場合にはこれを検知することができると共に、制御回路の異常を電源ケーブルの断線や負荷装置側の短絡であると誤判定してしまうのを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、負荷装置側に異常が発生した場合には、監視回路で当該異常を検知することができると共に、異常発生箇所の特定を迅速かつ適正に行うことができる。そのため、従来方式と比較して装置の復旧に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態における電力変換装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の電力変換回路5の具体的構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
(構成)
図1は、本発明の実施形態における電力変換装置を示す全体構成図である。
図中、符号1はインバータ装置、符号2は負荷装置である。
【0015】
インバータ装置1は、その内部に電力変換回路5を備え、この電力変換回路5と負荷装置2とは電源ケーブル3を介して接続されている。電力変換回路5は、インバータ装置1の直流中間回路等の直流電源からの入力直流電圧を降圧し、当該入力直流電圧より低い直流電圧を出力し、電源ケーブル3を介して負荷装置2に電力を供給する。
負荷装置2は、直流電圧で動作する装置であり、例えば、電動機に設けられるエンコーダやインバータ装置1の操作・設定を行う設定器等である。また、負荷装置2は、インバータ装置1と負荷装置2との間に接続された信号線4を介して、インバータ装置1へ信号を伝達する。
【0016】
インバータ装置1における信号線4の入力部には、信号線監視回路(不図示)が設けられている。そして、負荷装置2からインバータ装置1に伝達される伝達信号に異常が発生すると、この信号線監視回路によってこれを検知し、警報装置等を作動して当該異常を作業者に報知することが可能となっている。
【0017】
次に、電力変換回路5の具体的構成について説明する。
図2は、電力変換回路5の具体的構成を示す回路図である。
この図2に示すように、電力変換回路5は、スイッチング素子6と、還流ダイオード7と、リアクトル8と、コントロール回路9と、平滑コンデンサ10と、直流電源11と、監視回路12と、を有する。このスイッチング素子6、還流ダイオード7及びリアクトル8で、降圧チョッパ回路を構成している。
【0018】
スイッチング素子6としては、例えば、MOSFETを用いる。なお、スイッチング素子としては、MOSFETの他にIGBT等を用いることもできる。
そして、直流電源11の陽極側と負荷との間に、スイッチング素子6とリアクトル8とを直列に接続する。すなわち、スイッチング素子6のソース及びドレインを、直流電源11の陽極側ラインの入出力間に、ソースを入力側、ドレインを出力側として接続する。このとき、スイッチング素子6のゲートは、コントロール回路9に接続する。そして、スイッチング素子6のソースとリアクトル8とを接続する。
【0019】
また、負荷には、平滑コンデンサ10が並列に接続され、スイッチング素子6及びリアクトル8の接続点と直流電源11の陰極側ラインとの間には、還流ダイオード7が接続されている。ここで、還流ダイオード7は、直流電源11の陰極側ラインから陽極側ラインに向けて順方向となるように接続する。
スイッチング素子6は、コントロール回路9によってオン/オフ状態(導通状態/遮断状態)が制御される。スイッチング素子6のオン/オフ制御によりチョップされた入力直流電圧は、リアクトル8及び平滑コンデンサ10で平滑化され、定電圧となる出力直流電圧として出力される。
【0020】
また、還流ダイオード7は、スイッチング素子6がオフ状態であるときに、リアクトル8の電流を転流する。
すなわち、スイッチング素子6をオン状態とすると、還流ダイオード7の端子電圧がほぼ直流電源11の入力直流電圧まで上昇し、リアクトル8を介して負荷側に負荷電流を供給する。
【0021】
次いで、スイッチング素子6をオフ状態とすると、そのオフ状態である期間中、リアクトル8の蓄積エネルギーが負荷および還流ダイオード7を介して放電されて、負荷電流の供給を持続する。この際、A点の電圧は還流ダイオード7の電圧降下に相応して零より低い電圧値まで低下する。
また、B点の平均電圧及びその脈動幅は、コントロール回路9が予め設定される基準電圧に基づいてスイッチング素子6を時比率制御することにより、許容レベルに保持されると共に、平滑コンデンサ4の積分動作により安定化される。
【0022】
コントロール回路9は、例えば、誤差増幅器及びパルス幅変調(PWM)回路(何れも不図示)から構成する。誤差増幅器は、電力変換回路5の出力電圧と基準電圧との誤差信号(差電圧)を増幅して、PWM回路に出力する。そして、PWM回路では、誤差増幅器からの出力をパルス幅変調された波形に変換して、スイッチング素子6に出力する。これにより、スイッチング素子6のオン/オフ比率が制御される。
【0023】
すなわち、電力変換回路5の出力電圧を検出し、この電圧が直流電源11の入力直流電圧よりも低い任意の電圧値で一定になるようにスイッチング素子6のオン時間TONとオフ時間TOFFとを制御することにより、負荷が変動した場合であっても、安定した直流電圧を供給することができる。
また、監視回路12は、コントロール回路9とは異なる独立の回路により構成する。そして、監視回路12は、コントロール回路9からスイッチング素子6へ出力するPWM信号を入力し、スイッチング素子6のオン時間TONを監視することで、負荷装置2側(例えば、センサ、配線など)の異常を検知する。
【0024】
具体的には、上記オン時間TONが所定の基準時間より短い場合には、図1に示す電源ケーブル3の断線を検知する。一方、上記オン時間TONが所定の基準時間より長い場合には、過負荷あるいは短絡を検知する。ここで、上記基準時間は、例えば、断線や短絡等が発生していない正常時におけるオン時間TONを基準とし、そのオン時間TONに所定の許容範囲を設けた時間に設定する。
【0025】
(動作)
次に、本実施形態の動作について説明する。
電力変換回路5は、常時は、コントロール回路9で出力電圧を監視しつつ、この電圧が基準電圧となるようにスイッチング素子6のオン/オフを制御する。これにより、正常時には直流電源11の電圧より低い上記基準電圧が負荷に供給される。そして、電力変換回路5は、インバータ装置1の直流中間回路から得られる直流電圧を所定の直流電圧に変換し、これを負荷装置2に供給することで負荷装置2が動作する。
【0026】
この正常状態から、電力変換回路5と負荷装置2との間の電源ケーブル3に断線が生じたものとする。この場合、電力変換回路5の出力部の電圧値が正常であっても、負荷装置2の動作が止まってしまい、負荷が正常時と比較して急激に小さくなる。
そのため、コントロール回路9は、電源ケーブル3の断線に伴う負荷の低減に合わせて、スイッチング素子6のオン時間TONを上記断線が発生していない正常時と比較して短くするようなPWM信号を出力する。
【0027】
そして、スイッチング素子6のオン時間TONが上述した基準時間より短くなると、監視回路12で電源ケーブル3の断線を検知する。
一方、短絡が生じた場合には、負荷が正常時と比較して急激に大きくなるため、コントロール回路9は、スイッチング素子6のオン時間TONを長くするようなPWM信号を生成し出力する。そのため、スイッチング素子6のオン時間TONが上記基準時間より長くなったとき、監視回路12で短絡を検知することができる。
【0028】
ところで、電力変換回路5と負荷装置2との間の電源ケーブル3に断線が発生し、負荷装置2の動作が停止すると、信号線4を介して負荷装置2からインバータ装置1へ伝達する信号も停止する。
そのため、本実施形態の監視回路12を設けない従来方式では、電源ケーブル3に断線が発生している場合であっても、インバータ装置1の信号線監視回路で異常を検知することになる。したがって、作業者は、先ず負荷装置2からインバータ装置1への入力信号の異常原因となる信号線4や負荷装置2の異常調査を実施する。
このように、負荷装置2からインバータ装置1への入力信号をもとに異常検知を行う従来方式では、異常発生時における異常発生箇所の特定を迅速かつ適正に行うことができず、装置の復旧に費やす時間が長くなってしまう。
【0029】
これに対して、本実施形態では、降圧チョッパ回路のスイッチング素子6のスイッチング時間を監視する監視回路12を設ける。そして、この監視回路12で、スイッチング素子6のオン時間を監視することで、負荷装置2側の異常を検知する。さらにこのとき、スイッチング素子6のオン時間が基準時間より長いか短いかを判定することで、異常発生原因が電源ケーブル3の断線なのか負荷装置2側の短絡なのかを特定することができる。
したがって、上述した従来方式と比較して異常発生の原因を特定するまでの時間を短縮することができ、装置の復旧作業を迅速に行うことができる。
【0030】
(効果)
このように、上記実施形態では、降圧チョッパ回路を構成するスイッチング素子のスイッチング時間(オン時間)を監視することで、負荷状況を監視することができる。そのため、負荷状況が変化した場合には、その変化状況に応じて負荷側に異常が発生していることを検知することができると共に、異常発生箇所を特定することができる。このように、異常発生箇所を素早く特定することにより、装置の復旧に要する時間を短縮することができる。
【0031】
具体的には、スイッチング素子のオン時間が基準時間より短い場合には、電力変換回路と負荷装置とを接続する電源ケーブルの断線を検知することができる。また、スイッチング素子のオン時間が基準時間より長い場合には、負荷側の短絡を検知することができる。このように、比較的簡易な構成で、異常発生箇所の特定を迅速かつ適正に行うことができる。
さらに、上記オン時間を監視する監視回路を、スイッチング素子をオンオフ制御する制御回路(コントロール回路)とは異なる独立した回路で構成するので、制御回路に異常が発生した場合にはこれを検知することができる。そのため、制御回路の異常を電源ケーブルの断線異常や短絡異常であると誤判定してしまうのを防止することができる。
【0032】
(応用例)
なお、上記実施形態においては、降圧チョッパ回路を用いた電力変換装置に本発明を適用する場合について説明したが、昇圧チョッパ回路を用いた電力変換装置に本発明を適用することもできる。この場合にも、昇圧チョッパ回路を構成するスイッチング素子のスイッチング時間(オン時間)を監視することで、負荷状況を監視することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…インバータ装置、2…負荷装置、3…電源ケーブル、4…信号線、5…電力変換回路(電力変換装置)、6…スイッチング素子、7…還流ダイオード、8…リアクトル、9…コントロール回路(制御回路)、10…平滑コンデンサ、11…直流電源、12…監視回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の入力直流電圧をスイッチングするスイッチング素子を有するチョッパ回路を備え、当該チョッパ回路により前記直流電源からの入力を受けて負荷装置に電力を供給する電力変換装置であって、
前記スイッチング素子のスイッチング時間に基づいて、前記負荷装置側の異常を検知する監視回路を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記監視回路は、前記スイッチング素子を導通状態とするオン時間が所定の基準時間より短いとき、前記負荷装置に電力を供給する電源ケーブルの断線を検知することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記監視回路は、前記スイッチング素子を導通状態とするオン時間が所定の基準時間より長いとき、前記負荷装置側の短絡を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子のスイッチング時間を制御する制御回路を備え、
前記監視回路は、前記制御回路とは異なる独立した回路から構成し、当該制御回路の異常を検知可能であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−55681(P2011−55681A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204615(P2009−204615)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】