説明

電子キー

【課題】電子キーにおいて、電池切れを抑制することにある。
【解決手段】振動発電装置38によって発電された電力が蓄電装置39に蓄えられ、蓄えられた電力は、第2の電力源として車両2との通信等に利用される。ここで、振動発電装置38は、電子キー3に加わる振動によって発電する。そのため、例えば、ユーザが電子キー3を携帯して歩行している際に電子キー3に加わる振動により、発電を行い、その発電電力を蓄電することができる。また、例えば、電子キー3を振ることで発電を行い、その発電電力を蓄電することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子キー(携帯機)と車両側との無線通信を通じて車両ドアの解錠許可、エンジン始動許可等を行う電子キーシステムが知られている。
例えば、特許文献1に示される電子キーシステムにおいては、車両は車内外に通信エリアを形成し、通信エリアに存在する電子キーとの間でIDコードを含む無線信号の送受信を通じて通信を行う。車両にて無線信号に含まれるIDコードの照合が成立したときには、例えば、車両ドアが解錠可能状態に切り替えられる。
【0003】
また、特許文献2に示される電子キーシステムにおいては、電子キーに設けられる施解錠スイッチの操作を通じて、車両にIDコードを含む無線信号が送信される。車両は、当該無線信号に含まれるIDコードの妥当性を確認したとき、車両ドアの施錠状態が切り替えられる。
【0004】
上記両電子キーシステムにおける電子キーには、動作電源として電池が設けられている。この電子キーは、電池の電力に基づき無線信号送信等の各種動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−118886号公報
【特許文献2】特開平7−54525
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1及び2に記載の電子キーは電池で動作するところ、電池切れのおそれがある。電池が切れた場合、電子キーは車両との通信が行えず、車両ドアの解錠等が不能となる。この場合には、例えば、電子キーの電池を交換したり、電子キーに内蔵される緊急用のメカニカルキーを使用したりするなどの所定の作業が必要となり、ユーザにとって煩わしい。このような問題は、車両用の電子キーに限らず、例えば、住宅用の電子キーにおいても生じる。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池切れを抑制することができる電子キーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、通信対象との間で無線通信を行う電子キーにおいて、前記電子キーの第1の電力源である電池と、前記電子キーに加わる振動により発電する振動発電装置と、前記振動発電装置が発電した電力を蓄えるとともに、その蓄えられた電力が前記電子キーの第2の電力源となる蓄電装置と、を備えたことをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、振動発電装置によって発電された電力が蓄電装置に蓄えられ、蓄えられた電力は、第2の電力源として通信対象との通信等に利用される。ここで、振動発電装置は、電子キーに加わる振動によって発電する。そのため、例えば、ユーザが電子キーを携帯して歩行している際に電子キーに加わる振動により、発電を行い、その発電電力を蓄電することができる。また、例えば、電子キーを振ることで発電を行い、その発電電力を蓄電することができる。
【0010】
このように、第2の電力源である蓄電装置の電力が通信等に利用されることで、第1の電力源である電池の電力の消費を低減することができ、電子キーの電池切れを抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーにおいて、前記振動発電装置は給電されることで振動し、前記電池の電圧及び前記蓄電装置の電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段の検出した前記両電圧が前記電池及び前記蓄電装置の残容量が不足するとされる電圧を基準に設定されるしきい値以下である旨判断したとき、前記振動発電装置に前記電池及び前記蓄電装置の何れかの電力を供給することで同振動発電装置を振動させる制御装置と、を備えたことをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、電池及び前記蓄電装置の電圧がしきい値以下となったとき、前記振動発電装置に電力が供給されることで、振動発電装置を振動させる。従って、発電手段である振動発電装置を利用して、ユーザに電池及び蓄電装置の残容量の減少を振動発電装置の振動を通じて認識させることができる。残容量の減少を認識したユーザは、電子キーを振って発電させたり、電池を新品に交換したりすることで、電子キーの電池切れを回避することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電子キーにおいて、前記振動発電装置は、電線が巻き回されてなるコイルと、前記電子キーに加わる振動により前記コイルに対して相対移動可能に挿通され、強磁性体からなるコアと、を備えるとともに、前記蓄電装置及び前記電池からの電力を変換して前記コイルに供給する電力供給装置を備えたことをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、振動発電装置はコイルとコアとを備える。発電させたいときには、電子キーが振られるため、コイルの内部で強磁性体であるコアが移動する。従って、コア内部の磁場が変化し、電磁誘導によりコアに起電力が発生する。この起電力が発電電力となる。
【0015】
また、振動させたいときには、電力供給装置を通じて変換された電力が振動発電装置に供給される。これにより、通電時においてコイルの極性はN極及びS極間で変化する。従って、コアは磁力によりコイルに引きつけられたり、遠ざけられたりする。これにより、通電時においては、コイル内をコアは周期的に移動し、振動が発生する。このように、コイルとコアとからなる振動発電装置は、例えば圧電素子等に比べて大きい振動を発生させることができる。よって、ユーザにより確実に振動を通じて蓄電装置及び電池の残容量の減少を認識させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子キーにおいて、電池切れを抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における電子キーシステムの構成図。
【図2】本実施形態における振動発電装置の斜視図。
【図3】本実施形態における振動発電装置の取り付け方向を示す電子キーの斜視図。
【図4】本実施形態における(a)〜(c)はコアの振動態様を示した断面図。
【図5】本実施形態における電圧低下通知プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を電子キーシステムに具体化した一実施形態について図1〜図5を参照しつつ説明する。
図1に示すように、車両用の電子キーシステム1においては、ユーザが所持する電子キー3と、車両2との間での単方向通信が可能である。
【0019】
<電子キー>
電子キー3は、電子キー制御部31と、送信部33と、解錠スイッチ34と、施錠スイッチ35と、電池ユニット36と、振動発電装置38と、蓄電装置39と、インバータ41と、遮断回路40と、メカニカルキー45とを備えている。
【0020】
図1に示すように、解錠スイッチ34及び施錠スイッチ35は、操作されるとその旨を示す操作信号を電子キー制御部31へ出力する。電子キー制御部31は、IDコード及び電圧低下通知プログラム等が記憶されるメモリ31aと、電子キー3が放置される期間Tを計測するタイマ31bとを備える。電子キー制御部31は、解錠スイッチ34が操作された旨の操作信号を受けると、車両2に対してドアの解錠を要求する旨のIDコードを含む解錠要求信号を生成する。そして、電子キー制御部31は、この解錠要求信号を送信部33に出力する。また、電子キー制御部31は、施錠スイッチ35が操作された旨の操作信号を受けると、車両2に対してドアの施錠を要求する旨のIDコードを含む施錠要求信号を生成する。そして、電子キー制御部31は、この施錠要求信号を送信部33に出力する。
【0021】
送信部33は、電子キー制御部31から入力された解錠要求信号又は施錠要求信号を所定周波数帯の電波に変調する。なお、所定周波数帯は、例えば、UHF(Ultra High Frequency)帯である。送信部33は、送信アンテナ33aを通じて、変調された解錠要求信号又は施錠要求信号を車両2側に送信する。
【0022】
電池ユニット36は、電池の放電量を制御するコンバータを備える。電池ユニット36は、電子キー制御部31からの指令信号Sbに基づき電子キー制御部31及び送信部33等の給電対象に自身の電力を供給する。
【0023】
振動発電装置38は、振動エネルギ及び電気エネルギ間でエネルギ変換が可能である。すなわち、振動発電装置38は、自身に振動が加わると発電し、自身に電力が供給されると振動する。振動発電装置38に振動が加わる状況としては、ユーザが意図して電子キー3を振る場合だけでなく、電子キー3を携帯して歩行等しているときに意図せず電子キー3に振動が加わる場合もある。なお、振動発電装置38の発電電力及び振動発電装置38に供給される電力は、何れも交流電力である。振動発電装置38の具体的構成については後で詳述する。
【0024】
蓄電装置39は、例えばコンデンサ及び二次電池等の蓄電手段と、コンバータ等の充放電制御手段を備える。蓄電装置39は、振動発電装置38の発電電力を蓄電する。振動発電装置38及び蓄電装置39間には遮断回路40と、インバータ41とが接続されている。インバータ41は、振動発電装置38からの交流電力を直流電力に変換するとともに、蓄電装置39からの直流電力を交流電力に変換する。これにより、振動発電装置38の発電電力を蓄電装置39に蓄電したり、蓄電装置39の電力に基づき振動発電装置38を振動させたりすることが可能となる。遮断回路40は、電子キー制御部31からの指令信号Ssに基づき、振動発電装置38及び蓄電装置39間を導通状態及び非導通状態間で切り替える。
【0025】
また、蓄電装置39は、電子キー制御部31からの指令信号Scに基づき、振動発電装置38側に放電したり、振動発電装置38からの電力を蓄電したりする。すなわち、電子キー制御部31は指令信号Sc,Sbを通じて、電池ユニット36及び蓄電装置39の何れの電力を使用するかを制御することができる。本例では、電子キー制御部31は、優先して蓄電装置39に蓄えられる電力を使用する。ここで、蓄電装置39は、電池ユニット36と異なり振動発電装置38の発電に伴い蓄電可能である。蓄電装置39の電力が優先的に使用されることで、蓄電装置39が満蓄電状態となり、電子キー3に発電可能な振動が加わっているのにも関わらず、蓄電されないという状況の発生が抑制される。これにより、より効率よく電力を活用でき、電子キー3の電池切れを抑制できる。
【0026】
また、電子キー制御部31は電圧検出制御回路37を備える。電圧検出制御回路37は、電池ユニット36の電圧Vb及び蓄電装置39の電圧Vcを検出する。ここで、電圧Vb,Vcは、電池ユニット36及び蓄電装置39の残容量に応じた値となる。すなわち、電圧Vb,Vcが高いほど残容量は多い。よって、電圧検出制御回路37は、自身が検出した電圧Vb,Vcに基づき、残容量を認識可能である。
【0027】
また、電圧検出制御回路37は、蓄電装置39の電圧Vcを認識し、蓄電装置39が満蓄電状態である旨判断した場合には、遮断回路40を通じて振動発電装置38及び蓄電装置39間を非導通状態とする。つまり、満蓄電状態でない場合には、遮断回路40は振動発電装置38及び蓄電装置39間を導通状態とする。これにより、蓄電装置39の過蓄電が防止される。
【0028】
さらに、図1に示すように、電子キー3は非常用にメカニカルキー45を収納している。例えば、電子キー3において、施錠要求信号及び解錠要求信号が送信困難なほどに電池ユニット36及び蓄電装置39の残容量が減少した場合にメカニカルキー45が使用される。メカニカルキー45は、電子キー3から取り出されると、車両2の図示しない鍵穴に差し込まれて、手動で回動操作される。これにより、車両ドアの施解錠が可能となる。
【0029】
<車両>
図1に示すように、車両2は、受信部21と、車載制御部23と、ドアロック装置27とを備えている。受信部21は、受信アンテナ21aを通じて、電子キー3から送信される所定周波数(UHF帯)の電波である解錠要求信号又は施錠要求信号を受信する。受信部21は、受信アンテナ21aにより受信された解錠要求信号又は施錠要求信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号を車載制御部23に出力する。
【0030】
車載制御部23は、不揮発性のメモリ23aを備えるとともに、そのメモリ23aには、車両2に適合する電子キー3のIDコードと同一のIDコードが記憶されている。車載制御部23は、受信部21から入力された受信信号が解錠要求信号である旨認識すると、同解錠要求信号に含まれるIDコードとメモリ23aに記憶されるIDコードとの照合を行う。車載制御部23は、IDコードの照合が成立した場合、ドアロック装置27を通じて、車両ドアを解錠する。施錠も解錠と同様に、車載制御部23は、施錠要求信号に含まれるIDコードと、メモリ23aに記憶されるIDコードとの照合が成立したとき、ドアロック装置27を通じて、車両ドアを施錠する。
【0031】
次に、振動発電装置38の具体的構成について図2〜図4(a)〜(c)を参照しつつ説明する。
図2に示すように、振動発電装置38は、電線が巻き回されてなるコイル50と、同コイル50に挿通される棒状の磁石(強磁性体)でなるコア51とを備える。コア51は、両端部にN極及びS極を持ち、自身の周辺に磁場を形成する。従って、コア51によりコイル50の内部に磁場が形成される。また、コア51は、固定されるコイル50の内部を軸方向に沿って、コイル50に対して相対移動可能に設けられている。コア51の軸方向への移動は、図4(a)に示すように、コイル50の軸方向の両側方に設けられる規制壁52a,52bにより規制される。これにより、コア51がコイル50から抜け出すことが防止される。
【0032】
電子キー3に振動が加わることで、コア51がコイル50の内部をピストン運動(往復直線運動)する。これにより、コイル50の内部の磁場が変化し、電磁誘導によりコイル50の両端間に起電力が発生する。当該起電力が発電電力となり、蓄電装置39に蓄電される。磁界の変化と電流の向きには一定の関係があるところ、コア51の変位方向が反対になる毎にコイル50に生じる電流の向きも反対になる。よって、発電電力(起電力)は交流電力となる。
【0033】
電子キー3が如何なる方向に振られた場合であっても、発電が可能な位置にコア51及びコイル50は設置される。具体的には、図3に示すように、電子キー3は、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸に沿って位置しているとする。図3の左上に示すように、各軸が交わる点を座標(0,0,0)とすると、この原点を基準として各軸方向に1をとったときの位置は座標(1,1,1)で表される。座標(0,0,0)と座標(1,1,1)とを結ぶ線分に沿う方向が、コイル50及びコア51の軸方向となるようにコイル50及びコア51を設置する。この方向に、コイル50及びコア51を設置することで、電子キー3がX軸、Y軸及びZ軸の何れの方向に振られたとしても、コア軸方向に沿って外力が加わってコイル50の内部でコア51が移動する。よって、発電が可能となる。
【0034】
逆に、コイル50にインバータ41からの交流電流が供給されることで、コア51がコイル50の内部においてピストン運動する。このピストン運動により電子キー3を振動させることができる。
【0035】
具体的には、コイル50に交流電流が流されることで、同コイル50はN極及びS極を有する磁石となる。ここで、コイル50が磁石として形成する極性は、電流の向きに応じて変わる。また、コイル50が形成する磁場の強さは、同コイル50に供給される電流の大きさに応じて変化する。よって、コイル50には交流電流が供給されるところ、時間経過とともにコイル50が形成する磁場の強さ、及び極性が変化する。
【0036】
例えば、図4(a)に示すように、コア51のN極側の端部が規制壁52aに接した状態において、コイル50の左側がS極であって、右側がN極である場合、コア51のN極とコイル50のS極、コア51のS極とコイル50のN極が互いに引き付けあい、コア51は右側へ移動する。
【0037】
次に、図4(b)に示すように、コア51がコイル50の内部を右側に移動したとき、コイル50の極性が変わる。コイル50の左側がN極となり、右側がS極となる。これにより、コア51のN極とコイル50のN極、コア51のS極とコイル50のS極が互いに反発しあって、図4(c)に示すように、さらにコア51は右側に移動し、規制壁52bに当接する。
【0038】
そして、コア51が規制壁52bに当接した状態で、コイル50の左側がS極となり、右側がN極となった場合、コア51のN極とコイル50のS極、コア51のS極とコイル50のN極が互いに引き付けあい、コア51は左側に移動する。このように、コイル50の磁極が変わることで、同コイル50内をコア51はピストン運動する。このピストン運動に伴い電子キー3は振動する。この振動は、ユーザにより触覚及び聴覚を通じて認識される。このように、振動発電装置38をコイル50及びコア51で構成することで、ユーザが認識容易に電子キー3を大きく振動させることができる。具体的には、コア51はコイル50内で移動するため、例えば圧電素子が生成する振動に比べて大きな振動を得ることができる。
【0039】
次に、電子キー制御部31が実行する電圧低下通知プログラムの処理手順について、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。
まず、解錠スイッチ34又は施錠スイッチ35からの操作信号の有無を通じてスイッチ操作の有無が判断される(S101)。解錠スイッチ34又は施錠スイッチ35の操作がある旨判断された場合(S101でYES)には、タイマ31bを通じて期間Tの計測が開始される(S102)。以降のステップS103〜S106においては、蓄電装置39及び電池ユニット36の残容量がチェックされ、これらの残容量が少ない場合、その旨が電子キー3の振動を通じてユーザに通知される。具体的には、電圧検出制御回路37を通じて電圧Vb,Vcが認識される(S103)。そして、電池ユニット36の電圧Vbがしきい値Vth1以下であるか否かが判断される(S104)。しきい値Vth1は、振動発電装置38を振動させる電力及び数回だけ施錠要求信号及び解錠要求信号を送信できる電力を維持しつつも、電池ユニット36の残容量が少なくなったときの電圧Vbを基準に設定される。電池ユニット36の電圧Vbがしきい値Vth1を超える場合(S104でNO)、電池ユニット36の残容量は十分であるとして、プログラムの処理が終了される。
【0040】
電池ユニット36の電圧Vbがしきい値Vth1以下の場合(S104でYES)、蓄電装置39の電圧Vcがしきい値Vth2以下となるか否かが判断される(S105)。しきい値Vth2は、振動発電装置38を振動させる電力並びに数回だけ施錠要求信号及び解錠要求信号を送信できる電力を維持しつつも、蓄電装置39の残容量が少なくなったときの電圧Vcを基準に設定される。すなわち、両しきい値Vth1,Vth2は、近い将来、要求信号送信に係る動作に必要とされる電力の確保が困難となるおそれがあるときの電圧Vb,Vcを基準に設定される。蓄電装置39の電圧Vcがしきい値Vth2を超える場合(S105でNO)、蓄電装置39の残容量は十分であるとして、プログラムの処理が終了される。
【0041】
また、蓄電装置39の電圧Vcがしきい値Vth2以下の場合(S105でYES)、振動発電装置38を所定時間に亘って振動させる(S106)。具体的には、指令信号Sc,Sbを通じて蓄電装置39又は電池ユニット36の電力を振動発電装置38に供給する。この場合も、蓄電装置39の電力が優先して使用される。プログラムの処理が終了される。
【0042】
以上により、電池ユニット36及び蓄電装置39の残容量が少ない状態において、ユーザにより解錠スイッチ34又は施錠スイッチ35が操作されたときには、ユーザに残容量が少ない旨を電子キー3の振動を通じて認識させることができる。
【0043】
一方、解錠スイッチ34又は施錠スイッチ35の操作がない旨判断された場合(S101でNO)、期間TがステップS102における計測開始から一定期間T1を経過したか否かが判断される(S107)。期間Tが一定期間T1を経過していない場合(S107でNO)、プログラムの処理が終了される。そして、次回のプログラムにおいて、解錠スイッチ34又は施錠スイッチ35の操作がない旨判断された場合(S101でNO)、再び、一定期間T1を経過したか否かが判断される(S107)。期間Tが一定期間T1を経過した場合(S107でYES)、タイマ31bを通じて計測されていた期間Tがリセットされる(S108)。そして、上記同様にステップS103〜S105の処理により蓄電装置39及び電池ユニット36の残容量がチェックされ、これらの残容量が少ない場合には、ステップS106の処理により電子キー3の振動を通じて残容量が少ない旨がユーザに通知される。このように、解錠スイッチ34又は施錠スイッチ35が操作されたとき、並びに一定期間T1経過時に電池切れの有無がチェックされる。ここで、一定期間T1は任意に設定可能である。
【0044】
なお、その後も蓄電装置39及び電池ユニット36の残容量に改善がみられない場合、正確には電圧Vb,Vcがしきい値Vth1,Vth2以下の状況で、スイッチ操作がされたとき又は一定時間T1を経過したときには、次回のプログラムの実行時においても振動により残容量が少ない旨をユーザに通知する。
【0045】
また、電子キー3が長期間に亘って操作されない場合、例えば、家に保管されている場合であっても、一定期間に電池ユニット36及び蓄電装置39の残容量がチェックされ、電池ユニット36及び蓄電装置39の残容量が少ない場合には、その旨を電子キー3の振動を通じてユーザに通知する。ユーザはこの振動を、触覚により認識するだけでなく、振動によって生じる振動音を聴覚により認識することができる。
【0046】
ユーザは、電子キー3の振動を通じて、電池ユニット36及び蓄電装置39の残容量の減少を知ることができ、例えば、電子キー3を振って蓄電したり、電池ユニット36の電池交換をしたりするなどの事前の処置を行うことができる。これにより、電子キー3の電池ユニット36及び蓄電装置39の残容量がなくなって、無線通信を通じた車両ドアの解錠等が行えない事態を抑制できる。
【0047】
また、振動発電装置38は発電機能及び通知機能を併せ持っている。このため、電子キー3の大型化を抑制しつつ、発電及び通知することの両面から電子キー3の電池切れを抑制できる。
【0048】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)振動発電装置38によって発電された電力が蓄電装置39に蓄えられ、蓄えられた電力は、車両2との通信等に利用される。ここで、振動発電装置38は、電子キー3に加わる振動によって発電する。そのため、例えば、ユーザが電子キー3を携帯して歩行している際に電子キー3に加わる振動により、発電を行い、その発電電力を蓄電することができる。また、例えば、ユーザが意図的に電子キー3を振ることで発電を行い、その発電電力を蓄電することができる。
【0049】
このように、第2の電力源である蓄電装置39の電力が通信等に利用されることで、第1の電力源である電池ユニット36の電力の消費を低減することができ、電子キー3の電池切れを抑制することができる。
【0050】
(2)電池ユニット36及び蓄電装置39の電圧Vb,Vcがしきい値Vth1,Vth2以下となったとき、振動発電装置38に電力が供給されることで、振動発電装置38を振動させる。従って、発電手段である振動発電装置38を利用して、ユーザに電池ユニット36及び蓄電装置39の残容量の減少を振動発電装置38の振動を通じて認識させることができる。残容量の減少を認識したユーザは、電子キー3を振って発電させたり、電池を新品に交換したりすることで、電子キー3の電池切れを回避することができる。
【0051】
(3)振動発電装置38はコイル50とコア51とを備える。発電させたいときには、電子キー3が振られるため、コイル50の内部で強磁性体であるコア51が移動する。従って、コア51内部の磁場が変化し、電磁誘導によりコア51に起電力が発生する。この起電力が発電電力となる。
【0052】
また、振動させたいときには、インバータ41を通じて変換された交流電力が振動発電装置38に供給される。これにより、通電時においてコイル50の極性はN極及びS極間で変化する。従って、コア51は磁力によりコイル50に引きつけられたり、遠ざけられたりする。これにより、通電時においては、コイル50内をコア51は周期的に移動し、振動が発生する。このように、コイル50とコア51とを備える振動発電装置38は、例えば圧電素子等に比べて大きい振動を発生させることができる。よって、ユーザにより確実に振動を通じて蓄電装置39及び電池ユニット36の残容量の減少を認識させることができる。
【0053】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、固定されるコイル50に対してコア51が振動していた。しかし、コア51を固定して設けてコイル50を振動させてもよい。
【0054】
・上記実施形態においては、振動発電装置38は、コイル50及びコア51で構成されていた。しかし、振動発電装置38は、振動エネルギ及び電気エネルギ間の双方向でエネルギ変換可能であれば、コイル50及びコア51に限定されない。例えば、振動発電装置38は圧電素子を利用した構成であってもよい。
【0055】
・上記実施形態においては、電力供給装置として、直流交流変換装置であるインバータを使用したが、インバータに限らず、例えば、直流電圧変換装置であるF/V(frequency/voltage)コンバータを使用してもよい。
【0056】
・上記実施形態においては、図5に示すように、解錠スイッチ34又は施錠スイッチ35の操作があった場合(S102でYES)に電池ユニット36及び蓄電装置39の残容量がチェックされていた(S104〜)。しかし、ステップS102の処理手順を省略してもよい。この場合、一定期間T1毎に残容量のチェックがされる。
【0057】
・上記実施形態においては、電子キー3の振動を通じて、ユーザに電池ユニット36及び蓄電装置39の残容量が少ない旨を通知していた。しかし、通知手段はこれに限らず、例えば、発光ダイオード等の点灯手段を備え、同点灯手段の点灯を通じてユーザに通知してもよい。この場合には、振動発電装置38は発電にのみ利用される。さらに、電子キー3を振動させるとともに点灯させて、ユーザに通知してもよい。
【0058】
・上記実施形態においては、電子キー3から車両2に施錠要求信号及び解錠要求信号が送信されることで、車両ドアの施解錠が可能となる、いわゆるワイヤレスキーシステムと呼ばれる電子キーシステム1が採用されていた。しかし、車両2から車両周辺に送信される要求信号に応じて電子キー3が応答信号を返信することで、ユーザが電子キー3の操作をすることなく車両ドアの施解錠等が可能となる、いわゆるキー操作フリーシステムを採用してもよい。本システムにおいては、操作フリーであるため解錠スイッチ34及び施錠スイッチ35が省略される。また、車両2には要求信号を送信する送信部を新たに設け、電子キー3には同要求信号を受信する受信部を新たに設ける。本システムにおいては、図5のフローチャートに示すステップS102において、電子キー3が車両2からの要求信号を受信したか否かが判断される。要求信号を受信した旨判断される場合にはステップS104の処理に移行し、要求信号を受信しない旨判断される場合にはステップS103の処理に移行する。本システムにおいても、上記実施形態と同様に、電子キー3の電池切れが抑制される。なお、キー操作フリーシステムとワイヤレスキーシステムとを組み合わせたシステムを採用してもよい。
【0059】
・上記実施形態においては、電子キー3を車両用の電子キーシステム1に適用したが、車両用に限らず、例えば、住宅用の電子キーシステムに適用してもよい。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
【0060】
(イ)請求項2に記載の電子キーにおいて、前記通信対象は車両であり、スイッチ操作されることで前記車両のドア錠の施解錠を要求する旨の無線信号が送信される施解錠スイッチを備え、前記制御装置は前記施解錠スイッチが操作された旨認識したとき、前記電圧検出手段の検出した前記両電圧がしきい値以下であるか否か判断する電子キー。
【0061】
同構成によれば、施解錠スイッチの操作時に蓄電装置及び電池の電圧、すなわち蓄電装置及び電池の残容量が判断され、残容量が不足している場合には、電子キーを振動させる。このように、施解錠スイッチの操作時に電子キーを振動させることで、ユーザにより確実に残容量の減少を認識させることができる。
【0062】
(ロ)請求項2又は上記項(イ)に記載の電子キーにおいて、前記通信対象は車両であり、スイッチ操作されることで前記車両のドア錠の施解錠を要求する旨の無線信号が送信される施解錠スイッチを備え、前記制御装置は、一定期間に亘って前記施解錠スイッチが操作されていない旨判断したとき、前記電圧検出手段の検出した前記両電圧がしきい値以下であるか否か判断する電子キー。
【0063】
同構成によれば、施解錠スイッチの操作が一定期間に亘ってない場合、蓄電装置及び電池の残容量が判断され、残容量が不足している場合には、電子キーを振動させる。これにより、例えば、電子キーを外から視認不能な収納スペースにしまい込んだ場合であれ、電子キーが振動することで、ユーザは残容量が少ない電子キーの存在を認識することができる。
【0064】
(ハ)請求項1〜3、上記項(イ)、(ロ)のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、前記電池より優先して前記蓄電装置に蓄えられる電力が使用される電子キー。
同構成によれば、電池より優先して蓄電装置に蓄えられる電力が使用される。よって、例えば、蓄電装置が満蓄電状態となり、電子キーに発電可能な振動が加わっているのにも関わらず、蓄電されないという状況の発生が抑制される。これにより、より効率よく電力を活用でき、電子キーの電池切れを抑制できる。
【0065】
(ニ)請求項2、3又は上記項(イ)〜(ハ)のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、前記振動発電装置から前記蓄電装置への電力供給を遮断する遮断回路を備え、前記制御装置は、前記電圧検出手段の検出結果に基づき、前記蓄電装置の電圧が十分である旨判断したとき、前記遮断回路を通じて前記振動発電装置から前記蓄電装置への電力供給を遮断する電子キー。
【0066】
同構成によれば、蓄電装置の電圧が十分である旨判断されたとき、例えば、蓄電装置が満蓄電状態のとき、遮断回路を通じて振動発電装置から蓄電装置への電力供給が遮断される。これにより、蓄電装置への過蓄電が防止できる。
【符号の説明】
【0067】
1…電子キーシステム、2…車両(通信対象)、3…電子キー、31…電子キー制御部(制御装置)、34…解錠スイッチ、35…施錠スイッチ、36…電池ユニット、37…電圧検出制御回路(電圧検出手段、制御装置)、38…振動発電装置、39…蓄電装置、40…遮断回路、41…インバータ(電力供給装置)、50…コイル、51…コア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信対象との間で無線通信を行う電子キーにおいて、
前記電子キーの第1の電力源である電池と、
前記電子キーに加わる振動により発電する振動発電装置と、
前記振動発電装置が発電した電力を蓄えるとともに、その蓄えられた電力が前記電子キーの第2の電力源となる蓄電装置と、を備えた電子キー。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーにおいて、
前記振動発電装置は給電されることで振動し、
前記電池の電圧及び前記蓄電装置の電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段の検出した前記両電圧が前記電池及び前記蓄電装置の残容量が不足するとされる電圧を基準に設定されるしきい値以下である旨判断したとき、前記振動発電装置に前記電池及び前記蓄電装置の何れかの電力を供給することで同振動発電装置を振動させる制御装置と、を備えた電子キー。
【請求項3】
請求項2に記載の電子キーにおいて、
前記振動発電装置は、電線が巻き回されてなるコイルと、前記電子キーに加わる振動により前記コイルに対して相対移動可能に挿通され、強磁性体からなるコアと、を備えるとともに、前記蓄電装置及び前記電池からの電力を前記コイルに供給する電力供給装置を備えた電子キー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−132772(P2011−132772A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294645(P2009−294645)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】