説明

電池ホルダ

【課題】電池ターミナルに落下衝撃が加わっても、電池ターミナルを基板から脱落し難くすることができる。
【解決手段】基板11には、電子キー1の電源となる電池10の取り付け先として電池ターミナル14,15が実装されている。このうち、+側の電池ターミナル14は、根元部分においてはんだによって基板11に固着されている。電池ターミナル14の根元部分には、同部分を切り欠くことによって、バネ性を有する一対の衝撃吸収部19,19が形成されている。衝撃吸収部19は、衝撃発生時、電池10から電池ターミナル14にはんだ付け部16に向かう方向の衝撃荷重が加わっても、この衝撃荷重を吸収することにより、はんだ付け部16に至らないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を電気接触状態で保持する電池ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池を駆動源に動く電子キーには、図5に示すような電池ホルダ81が設けられている(特許文献1等参照)。この種の電池ホルダ81では、基板82の実装面上に、電池(ボタン電池)83を電気接触状態で保持する電池ターミナル84が実装されている。電池ターミナル84は、例えばはんだ等によって基板82に取り付け固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−240380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子キーを誤って手元から落下させてしまった場合、衝撃発生方向によっては、電池83から電池ターミナル84にかかる衝撃荷重Fkが、電池ターミナル84のはんだ付け部85に向かう方向に発生してしまうこともある。このように、衝撃荷重Fkの加重がはんだ付け部85に向かうと、はんだ付け部85の固着が剥がれ、電池ターミナル84が基板82から脱落する可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、電池ターミナルに落下衝撃が加わっても、電池ターミナルを基板から脱落し難くすることができる電池ホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、電池を電池ターミナルに取り付けて、当該電池が電気接続された状態でセットされる電池ホルダにおいて、前記電池ターミナルの取り付け先である基板には、当該電池ターミナルの取り付け部分となる固着部が設けられ、衝撃発生時において前記電池から前記固着部に加わる衝撃荷重を吸収可能な衝撃吸収部を、前記電池ターミナルに一体又は別体に設けたことを要旨とする。
【0007】
本発明の構成によれば、例えば電池ホルダに落下衝撃が加わった際、電池から電池ターミナルの固着部に向かって衝撃荷重が発生しても、この衝撃荷重が衝撃吸収部にて吸収される。このため、衝撃荷重が固着部に至り難くなるので、電池ターミナルの固着部が基板から剥がれ落ちてしまう可能性が低くなる。よって、電池から電池ターミナルに衝撃荷重が加わっても、電池ターミナルを基板から脱落し難くすることが可能となる。
【0008】
本発明では、前記衝撃吸収部は、導電性を有し、前記電池を前記電池ターミナルに電気接続可能な部材であることを要旨とする。この構成によれば、衝撃吸収部が電池の取り付けに影響を与えないので、電池の取り付け自由度が増す。
【0009】
本発明では、前記衝撃吸収部は、前記電池ターミナルの形状を変えることにより、前記電池ターミナルに一体形成されていることを要旨とする。この構成によれば、衝撃吸収部が電池ターミナルの一体部品となるので、部品点数の削減に効果が高い。
【0010】
本発明では、前記固着部は、はんだにより部材が固定されたはんだ付け部であることを要旨とする。この構成によれば、はんだは固着が容易である反面、脱落の可能性もあるが、衝撃吸収部にて脱落防止効果を確保するので、電池ターミナルの取り付け作業の簡易化と、電池ターミナルの脱落防止とを両立することが可能となる。
【0011】
本発明では、前記衝撃吸収部は、前記固着部から立設された薄肉の根元部と、当該根元部よりも幅広に形成されるとともに前記電池から加わる衝撃荷重を吸収する衝撃支持片とを備えたことを要旨とする。この構成によれば、簡素な構造で電池から電池ターミナルに加わる衝撃荷重を吸収することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電池ターミナルに落下衝撃が加わっても、電池ターミナルを基板から脱落し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態における電子キーの分解斜視図。
【図2】電池及び電池ターミナル部分の側面図。
【図3】電池から衝撃吸収部に衝撃荷重が加わったときの状態図。
【図4】別例の衝撃吸収部の形状を示す斜視図。
【図5】従来の電池ターミナルの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を電子キーに具体化した電池ホルダの一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示すように、車両用の電子キー1は、無線によりID信号を車両(図示略)に送信して、車両との間でキー照合を実行させるキーである。電子キー1には、電子キー1側からの通信をトリガにID照合を行うワイヤレスキーや、車両側からの通信をトリガにID照合を行うスマートキーなどがある。電子キー1と車両との間で無線によるID照合が成立すれば、車両ドアの施解錠やエンジン始動等が許可/実行される。
【0015】
電子キー1のハウジング2は、樹脂製の第1ハウジング3及び第2ハウジング4を組み付けて形成されている。本体側の第1ハウジング3には、キー溝が形成されたキープレート5が取り付け固定されている。
【0016】
ハウジング2の内部には、電子キー1を無線キーとして動作させるための電子部品ユニット6が収納されている。電子部品ユニット6のケース7は、例えば樹脂製であって、有底箱状を呈するケース本体8と、ケース本体8の開口を閉じる蓋部9とにより形成されている。本例のケース7は、電子キー1の電源となる電池10を収納する電池ホルダとして機能する。電池10は、例えばボタン電池が使用されている。
【0017】
ケース7の内部には、電子部品ユニット6の各種電装品を実装する基板11が収納されている。基板11の実装面には、電子キー1の通信動作を制御するIC(Integrated Circuit)12や、電子キー1の電源となる電池10を電気接続状態で保持する電池ターミナル13などが実装されている。電池ターミナル13は、電池10の+側に接続される+側電池ターミナル14と、電池10の−側に接続される−側電池ターミナル15とからなり、全体が金属により形成されて電池10との電気接点部分となる。これらターミナル14,15は、例えばはんだ等によって基板11に実装される。
【0018】
図1及び図2に示すように、+側電池ターミナル14は、根元において基板11へのはんだによる実装部分となる略板状のはんだ付け部16と、ボタン電池10を側面側から支持する一対の腕部17,17とが形成されている。本例の場合、一対の腕部17,17のうち、図1の紙面手前側を左側腕部17aとし、図1の紙面奥側を右側腕部17bとする。左側腕部17a及び右側腕部17bは、幅方向(図1のY軸方向)において左右対称に形成される。これら腕部17a,17bは、電池10を両側から押え込むことにより、電池10を電池ターミナル13に対して位置決めする。+側電池ターミナル14は、はんだ付け部16の裏面がはんだ面となって基板11に実装される。各々の腕部17a,17bの先端には、電池10を上から支持する支持片18がそれぞれ形成されている。なお、はんだ付け部16が固着部に相当する。
【0019】
図1〜図3に示すように、各々の腕部17a,17bの根元には、電池10から+側電池ターミナル14に対してはんだ付け部16の方向(図3の白抜き矢印方向)にかかる衝撃荷重Fを吸収する衝撃吸収部19,19がそれぞれ形成されている。一対の衝撃吸収部19,19は、+側電池ターミナル14において電池10からはんだ付け部16方向の衝撃荷重Fがかかる箇所に、上面視略T字の切欠部20を設けることにより、バネ性を有する部材、つまり弾性変形可能な部材として形成される。
【0020】
各々の衝撃吸収部19,19には、はんだ付け部16から上方に立設された薄肉の根元部21と、根元部21よりも幅方向(図3のY軸方向)において大きく形成されるとともに電池10から+側電池ターミナル14にかかるはんだ付け部16方向の衝撃荷重Fを受ける衝撃支持片22と、電池10を上から支持する位置決め片23とがそれぞれ設けられている。衝撃支持片22は、図1のY−Z平面方向に立設された広めの壁である。一対の衝撃吸収部19,19は、根元部21を支点に、基板11の平面方向(図1のX−Y平面方向)に沿って曲がり変形可能である。
【0021】
図1及び図2に示すように、−側電池ターミナル15には、板状の基部24と、一対の可撓部25,25とが形成されている。−側電池ターミナル15は基部24の裏面をはんだ付け部16として基板11に実装されている。電池10が電池ターミナル13にセットされたとき、−側電池ターミナル15は、可撓部25,25を撓ませた状態で電池10の−端子と接触する。このため、可撓部25,25が電池10を上方に押し上げる状態をとり、電池10の上面が支持片18及び位置決め片23に押し付けられ、電池10の位置決め状態が確保される。
【0022】
次に、本例の電池ターミナル13の作用を、図3を用いて説明する。
図3に示すように、電子キー1の落下時、電池10から+側電池ターミナル14に対してはんだ付け部16方向に衝撃荷重Fが加わった際、衝撃吸収部19,19が根元部21を支点に弾性変形する形状変化をとることにより、衝撃荷重Fを吸収する。このため、衝撃荷重Fがはんだ付け部16に直接至らないので、はんだ付け部16の固着を剥がすような荷重(応力)がはんだ付け部16に加わり難くなる。よって、衝撃荷重Fを要因とする+側電池ターミナル14の脱落を生じ難くすることが可能となる。
【0023】
以上により、本例の場合、+側電池ターミナル14において電池10からはんだ付け部16方向の衝撃荷重Fが加わる箇所を切り欠くことにより、衝撃荷重Fを弾性変形によって吸収可能な一対の衝撃吸収部19,19を設けた。このため、電子キー1の落下時に電池10からはんだ付け部16方向に+側電池ターミナル14に加わる衝撃荷重Fが、はんだ付け部16に直接至り難くなる。よって、電池ターミナル14における対落下衝撃性能を向上することが可能となる。
【0024】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)+側電池ターミナル14の根元付近に切り欠きを設けることにより、衝撃発生時に電池10からはんだ付け部16に向かう方向の衝撃荷重Fを吸収可能なバネ性の衝撃吸収部19を設けた。このため、衝撃発生時、電池10からはんだ付け部16に向かう方向に衝撃荷重Fが発生しても、これを衝撃吸収部19で吸収することが可能となる。よって、衝撃荷重Fがはんだ付け部16に至り難くなるので、はんだ付け部16が基板11から剥がれ難くなる。従って、衝撃発生時、+側電池ターミナル14を基板11から脱落し難くすることができる。
【0025】
(2)+側電池ターミナル14に切り欠きを設けて衝撃吸収部19を設けるので、衝撃吸収部19は導電性を有した電気接点として機能する部材にもなる。よって、衝撃吸収部19が電池10の取り付けに影響を与えないので、電池10の取り付け自由度が増すことになる。
【0026】
(3)+側電池ターミナル14に切り欠きを設けて衝撃吸収部19を設けるので、衝撃吸収部19が+側電池ターミナル14の一体部品として形成される。よって、部品点数の削減に効果が高くなる。
【0027】
(4)+側電池ターミナル14の基板11への固着にはんだを使用した場合、はんだは固着が容易である反面、脱落の可能性もある。そこで、本例においては、+側電池ターミナル14に形成した衝撃吸収部19にて+側電池ターミナル14の脱落防止効果を確保しているので、+側電池ターミナル14の取り付け作業の簡素化と、+側電池ターミナル14の脱落防止とを両立することができる。
【0028】
(5)衝撃吸収部19の形状を、薄肉の根元部21と、電池10の周面を支持する衝撃支持片22を有する形状とした。このため、電池10からはんだ付け部16に向かう方向に加わる衝撃吸収部19を、簡素な構造で、より効果的に吸収することができる。
【0029】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・衝撃吸収部19は、左右対称に一対設けられることに限定されない。図4に示すように、+側電池ターミナル14の根元に、横寄りの位置から切り込みを入れて、1つの大きな衝撃支持片22を有する形状としてもよい。
【0030】
・電池10から装置幅方向に+側電池ターミナル14に加わる衝撃荷重は、ケース7の内壁面で受けるようにしてもよい。
・衝撃吸収部19は、上側の位置決め片23を省略した形状でもよい。
【0031】
・衝撃吸収部19の形状は、実施形態に述べた構成に限らず、適宜変更可能である。
・衝撃吸収部19は、電池ターミナル14に一体形成されることに限定されず、例えば別体にて形成し、これを電池ターミナル14に取り付ける構造でもよい。
【0032】
・電池10は、ボタン電池に限定されず、他の種類に変更してもよい。
・電池ターミナル14,15の+と−を、実施形態の逆にしてもよい。
・電池ターミナル14,15は、実施形態で述べた形状のものに限定されず、適宜変更可能である。
【0033】
・電池ターミナル14,15の基板11への固着方法は、はんだに限定されず、例えば溶着など、他の方法に変更可能である。
・本例の電池ホルダは、電子キー1に適用されることに限定されず、他の装置や機器に応用可能である。
【符号の説明】
【0034】
10…電池(ボタン電池)、11…基板、13…電池ターミナル、14…+側電池ターミナル、15…−側電池ターミナル、16…固着部としてのはんだ付け部、19…衝撃吸収部、21…根元部、22…衝撃支持片、F…衝撃荷重。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を電池ターミナルに取り付けて、当該電池が電気接続された状態でセットされる電池ホルダにおいて、
前記電池ターミナルの取り付け先である基板には、当該電池ターミナルの取り付け部分となる固着部が設けられ、衝撃発生時において前記電池から前記固着部に加わる衝撃荷重を吸収可能な衝撃吸収部を、前記電池ターミナルに一体又は別体に設けた
ことを特徴とする電池ホルダ。
【請求項2】
前記衝撃吸収部は、導電性を有し、前記電池を前記電池ターミナルに電気接続可能な部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の電池ホルダ。
【請求項3】
前記衝撃吸収部は、前記電池ターミナルの形状を変えることにより、前記電池ターミナルに一体形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池ホルダ。
【請求項4】
前記固着部は、はんだにより部材が固定されたはんだ付け部である
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電池ホルダ。
【請求項5】
前記衝撃吸収部は、前記固着部から立設された薄肉の根元部と、当該根元部よりも幅広に形成されるとともに前記電池から加わる衝撃荷重を吸収する衝撃支持片とを備えた
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の電池ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−84384(P2013−84384A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222063(P2011−222063)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】