説明

RFIDリーダアンテナ及び物品情報及びロケーション情報読み取り機能付きフォークリフト車

【課題】本発明は、複数のRFIDタグから同時に識別情報を受信するためのRFIDリーダアンテナを提供することを目的とする。
【解決手段】本RFIDリーダアンテナは、互いにアンテナ面(10、20)の方向を異ならせて違うRFIDタグが検出されるように配置された少なくとも二つのループアンテナ(1、2)を有し、上記少なくとも二つのループアンテナを、これらのループアンテナに電流(I、I´)を流した場合に一方のループアンテナに発生する磁束B(又はB´)が他方のループアンテナの磁束B´(又はB)を打ち消さない配置関係となるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency-IDentification)方式により複数個のRFIDタグの情報を同時に読み取るRFIDリーダに関し、特に、異なる位置に配置された二つ以上のRFIDタグを同時に読み取るためのRFIDリーダアンテナ、更に、そのRFIDリーダアンテナが構成された物品情報及びロケーション情報読み取り機能付きフォークリフト車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の在庫管理にRFID(Radio Frequency-IDentification)方式を利用したシステム(RFIDシステム)が数多く採用されている。
このRFIDシステムは、RFIDタグ(ICタグとも呼ばれる)とRFIDリーダ(RFIDタグの情報の読み取りや、必要に応じてRFIDタグへの情報の書き込みが自在な装置)を備え、RFIDタグのメモリに記憶されている識別情報を電波方式又は電磁誘導方式によりRFIDリーダで読み取らせる(必要に応じてメモリの情報を書き換える)ように構成されている。
【0003】
上記電磁誘導方式のRFIDタグは制御回路やメモリや整流回路や送受信回路などを備えたICチップとループアンテナで構成されており、一方のRFIDリーダはPCなどの上位装置との接続が可能な制御回路とループアンテナとで構成されている。そして、そのRFIDリーダのループアンテナに電流を流し、所定のコマンドを送信することにより、そのループアンテナの検出エリア内に配置されているRFIDタグのループアンテナ内の磁力線数を変化させて誘導起電力を発生させ、その内部メモリに記憶されている識別情報をRFIDリーダに送信させる。
【0004】
同一検出エリア内に複数のRFIDタグが存在する場合には、同時にこれらの内の複数のRFIDタグから識別情報が送信されることとなり、RFIDリーダで識別情報の検出エラーを引き起こす可能性が高くなる。このため、RFIDシステムには、同一検出エリア内に複数のRFIDタグが存在しているときにそれらの複数のRFIDタグを同時に読取る機能として「アンチ・コリジョン機能」が一般的に搭載されている。
【0005】
このアンチ・コリジョン機能は、RFIDリーダからの返信要求に対してランダムな時間遅延を入れたり、RFIDリーダからのコマンドで返信できるRFIDタグの順番を制御するなどの方法により、各RFIDタグから送信された識別情報の衝突を防止する。例えば、13.56MHz帯のRFIDシステムなどで一般的に利用されているALOHA方式のアンチ・コリジョン機能がある。この方式では、ある条件下で取得した識別情報が同時に複数個存在した場合、それを識別情報の衝突として検知し、その条件を順次変えて行くことで一つの識別情報に絞り、一つに絞られた識別情報のRFIDタグからの送信を停止させて他の識別情報を受信していくことで、各RFIDタグの識別情報を受信する。
【0006】
このようなRFIDシステムを物品の管理に適用した例として、倉庫内の物品のロケーション管理を行なっているものがある。本ロケーション管理システムでは、パレットの積み降ろしを行う載置エリアの床に予め埋め込まれた物品タグと位置タグとから、フォークリフト車によりパレットを積み降ろす際にそのフォークリフト車に搭載されている読取装置でそれらの情報を読み取らせ、これらの情報を比較情報としてロケーション管理装置と無線交信し、倉庫内の物品のロケーションを管理する。この例では、フォークリフト車のリフト機構の下端に読み取り方向を下に向けて上記物品タグ及び上記位置タグの個別の読取装置を構成し、各読取装置でそれぞれに対向する各タグを読み取らせるようにしている(特許文献1)。
【0007】
なお、フォークリフト車でタグ情報を読み取る構成としては、その他に、フォークリフトトラック車体前方に立設したマストを上下動するリフトブラケットの下面下方に1本のループコイルアンテナを固定し、パレットに固定されたパレット用IDタグ及びロケーション用IDタグを各タグに一致する周波数に順次切り替えてそれぞれを読み取る構成の開示もある(特許文献2)。
【0008】
また、その他、ICカードの読み取り面の角度に影響されることなくリーダライタでそのICカードの読み取りを行うに適したリーダライタアンテナの構成として、そのアンテナのコイル面を複数にし、各コイル面を他のコイル面と交差させて配置させたものがある。この配置では各コイル面間の空間内に異なる向きの磁束が形成されるため、ICカードの読み取り面がその空間内で違う向きに配置されても、そのICカードの読み取りが可能になる(特許文献3)。
【特許文献1】特開2000-255714号公報(段落「0025」、「0029」、「0031」、図2)
【特許文献2】実開平5-49796号公報(段落「0004」、「0005」、図2、図5)
【特許文献3】特開2000-172795号公報(段落「0017」、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、昨今では倉庫内の物品のロケーション管理にRFIDシステムが利用されている。物品のロケーション管理では、パレットを積み降ろすエリア単位から更に詳細な物品のロケーション情報が要求されることも多く、そのような場合は、パレットを収納する各棚の位置に棚の識別情報を記憶させた棚タグを配置するようにしてロケーションを管理するのが有効である。よって、この場合のロケーション管理用のタグとしては、パレットに積んだ物品を識別するためのパレットタグと、そのパレットの位置を示す上記棚タグの2種類の利用が考えられる。
【0010】
よって、倉庫内の物品のロケーションを管理する好適な方法としては、パレットが配置される棚上の各位置に棚タグを取り付け、更に物品を置くパレットにパレットタグを取り付け、そして、フォークリフト車でパレットを積み降ろしする際に各タグ情報を読み取って物品のロケーションを管理するのが有効である。
【0011】
しかし、一般には、棚とこの棚上のパレットの相互配置の関係やこのパレットを積み降ろすフォークリフト車のフォークリフト機構の設計からして、各RFIDタグの取り付け位置やフォークリフト車のRFIDリーダアンテナの取り付け位置は必ずしも望ましい位置とはならない。特にこの場合、一つのRFIDリーダアンテナの検出エリア内に棚タグとパレットタグの1組のタグを収めることが必要となるが、そのような配置は非常に困難である。特に、各タグの送受信方向を揃えて配置することが困難となる。
【0012】
そこで、本発明は、上述の問題を鑑みてなされた発明であって、複数のRFIDタグから同時(識別情報の同じ読み取り期間内)に識別情報を受信するためのRFIDリーダアンテナ、及び、そのRFIDリーダアンテナを装着した物品情報及びロケーション情報読み取り機能付きフォークリフト車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するために以下のように構成する。
本発明のRFID(Radio Frequency-IDentification)リーダアンテナの態様の一つは、互いにアンテナ面の方向を異ならせて違うRFIDタグ(異なる識別情報をもったRFIDタグ)が検出されるように配置された少なくとも二つのループアンテナを有し、上記少なくとも二つのループアンテナを、これらのループアンテナに電流を流した場合に一方のループアンテナに発生する磁束が他方のループアンテナの磁束を打ち消さない配置関係となるように構成する。
【0014】
例えば、上記少なくとも二つのループアンテナを、矩形形状とし、各ループアンテナの内のそれぞれの一辺を平行に隣接させて配置し、上記平行に隣接した各辺を流れる電流の向きが全て同一方向となるように直列に(または並列に)連結する、ように構成する。
【0015】
このように構成することにより、それぞれの検出エリア内に違うRFIDタグを収めることが可能となり、各RFIDタグの送受信方向が互いに異なる場合であっても、各アンテナ面が互いに角度をなしているため、そのRFIDリーダアンテナからそれぞれのタグ情報を読み込み、RFIDリーダで同時検出できるようになる。
【0016】
特に、上記二つのループアンテナによるRFIDタグの検出エリアをそれぞれのアンテナ面の成す角度が大きい側とした場合、一つのアンテナ面による検出エリアよりもRFIDタグを検出できるエリアが拡大し、その拡大したエリアでは、拡大前のエリアにおけるRFIDタグの向きとは異なる向きのRFIDタグの検出が可能となる。
【0017】
本発明のRFIDリーダアンテナが構成された物品情報及びロケーション情報読み取り機能付きフォークリフト車の態様の一つは、上述した何れかのRFIDリーダアンテナを備えるように構成する。
【0018】
この場合、上記RFIDリーダアンテナを、リフトブラケットの下段のフィンガーバーに上記各アンテナ面を前方及び前方の斜め下方に向けて構成させても良い。
このように構成することにより、例えば互いに異なる向きで近距離に配置された少なくとも二つのRFIDタグをフォークリフト操作によりその二つのループアンテナによって形成される検出エリア内に同時に収めることが可能となり、更に当該アンテナからそれらのRFIDタグを読み込むことでRFIDリーダにおけるRFIDタグの同時検出が可能となる。
【0019】
特に、上記二つのループアンテナによるRFIDタグの検出エリアをそれぞれのアンテナ面の成す角度が大きい側とした場合、RFIDタグの一つを棚の上面に配置し、RFIDタグの他の一つをパレットの前面に配置したとしても、それらを検出エリア内に同時に収め、同時に読み取らせる事が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、それぞれのRFIDタグの向きが異なる場合であっても複数のRFIDタグから同時(識別情報の同じ読み取り期間内)に識別情報の受信が行えるようになる。
また、一つのRFIDリーダアンテナの検出エリアを拡大する事が可能になる。
【0021】
また、倉庫内の物品のロケーション管理においては、物品情報を管理するパレットタグに加えて、棚単位で物品のロケーションを管理するための棚タグをパレットの置かれた各棚に配置させても、フォークリフトでパレットを積み降ろしする際にこれらの二つのRFIDタグを読み取ることが可能となり、結果として、棚単位のロケーション管理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のRFID(Radio Frequency-IDentification)リーダアンテナの説明図である。
【0023】
本RFIDリーダアンテナは、少なくとも二つのループアンテナを備え、それぞれのアンテナ面(ループアンテナを含む平面内の、そのループアンテナで囲まれた面)の向きが互いに異なる配置で構成される。更に、上記各ループアンテナが近接して配置される場合はループアンテナを流れる電流によりそれぞれのループアンテナに発生する磁束が相互に影響し合うので、一方のループアンテナに発生する磁束が他方のループアンテナの磁束を打ち消さない配置とする。
【0024】
同図(a)及び(b)には、上記RFIDリーダアンテナを二つのループアンテナで構成する場合の、各ループアンテナの配置構成例が示されている。同図(a)はその斜視図であり、同図(b)は同図(a)の矢印A方向から作図した側面図である。なお、同図の例では、二つのループアンテナを巻き数が1回の矩形形状のループアンテナで示している。
【0025】
同図の第一のループアンテナ1と第二のループアンテナ2は、それぞれ、4辺のうちの一辺を互いに突き合わせ、それぞれのアンテナ面10、20が互いに角度θ(0°<θ≦180°)をなすように配置させる。そして、上記互いに突き合わせた辺は近接しているため、発生した磁束B、B´を互いに弱めあわないように上記突き合わせた各辺に同じ向きの電流I、I´が流れる配置構成にする。
【0026】
このような配置構成下では、上記突き合わせた辺の近傍に発生する磁束B(または磁束B´)は一方のアンテナ面を貫通する磁束B´(または磁束B)を強めることができる。
そして、本形態では、各アンテナ面の背面(アンテナ面のなす角度が180°よりも大きい値をとる方向の面)側をRFIDリーダアンテナの検出エリアとして使用する。同図(b)にその検出エリアの範囲を明示的に示したが、その図から明らかなように一つのループアンテナでは検出できないエリアへの検出エリアの拡大を別のループアンテナを組み合わせる事で実現できる。同図の例では、第二のループアンテナを組み合わせる事で第一のループアンテナでは検出できない検出エリア2を検出エリアとして含めるようにしている。
【0027】
また、アンテナ面の向きが互いに異なるため、拡大した検出エリア内におけるRFIDタグとの通信が最適な方向は、拡大前の検出エリア内でRFIDタグとの通信が最適な方向とは異なる。よって、各検出エリア内には、それぞれ異なる向きに違うRFIDタグ(異なる識別情報をもつRFIDタグ)を配置できる。
(実施例1)
以下では、上記形態のRFIDリーダアンテナの構成例及びその適用例を示す。
【0028】
図2は、そのRFIDリーダアンテナの一構成例である。なお、同図は、その内部構成が分かるように表面の一部(同図の破線部)を部分透過図で示したものである。
本例のRFIDリーダアンテナ3は、同図内の部分透視された箇所に一部分を覗かせるループアンテナ30を保護部材(例えばプラスティックケースなど)31で覆ってなる第一のRFIDリーダアンテナ3-1と、この第一のRFIDリーダアンテナ3-1と同様のつくりの第二のRFIDリーダアンテナ3-2と、更に、これら二つのRFIDリーダアンテナ3-1、3-2を互いに角度をつけて配置する支持部材32(同図では各RFIDリーダアンテナの背後に隠れるため太い破線で示している)とで構成されている。各RFIDリーダアンテナ3-1、3-2は、それぞれ巻き数が2回で同一矩形形状のループアンテナであり、互いに一辺を平行に隣接させて支持部材32へ組み付けられる。これらを組み付けた時の互いのなす角度は任意に設定できるが、本例では、同図においてそれぞれ手前の面の各法線方向のなす角度が0°から90°の範囲に収まるように支持部材32を屈曲させている。なおこの支持部材32としては、その組み付けの角度を維持できる又は段階的に調節できるような機構を備え、電磁場に影響を与えないものが使用される。
【0029】
第一及び第二のRFIDリーダアンテナ3-1、3-2からは、それぞれ、不図示のリーダと配線接続するための二つの接続部30-1、30-2が保護部材31から外部に引き出されており、上記アンテナと上記リーダとの不図示の接続線と共にこれまた不図示の屈曲自在な保護部材で覆われている。
【0030】
図3は、図2の第一及び第二のRFIDリーダアンテナ3-1、3-2に構成されている各ループアンテナ30の相互配置と、リーダと接続部30-1、30-2との配線接続パターンを示した図である。なお、同図では互いのアンテナ面を水平にした状態の構成が示されているが、実際は図2に各保護部材の面方向を変えて構成するため、これに従って各アンテナ面の向きも変えられる。
【0031】
同図に示される各ループアンテナ30は、それぞれ、巻き数が2回の同一矩形形状のループアンテナであり、それぞれのループアンテナ30をリーダ4に直列に接続する場合の配線図を図3(a)に示し、リーダ4に並列に接続する場合の配線図を図3(b)に示している。
【0032】
各図共にそれぞれのループアンテナを一辺を平行に隣接させて配置させている。この関係は図2に示すように各保護部材の面方向を変えても変わらない。各図に示される配線方法により接続部30-1、30-2とリーダ4とを接続線33で接続し、電流を流すと、上記の互いに隣接する各辺には同一方向に電流が流れる。同図には一例として同図右から左へ電流Iが流れる様子を矢印で示した。この配置により、ループアンテナの周囲(特にアンテナ面の内側の領域)における磁束が強められ、一つのループアンテナのアンテナ面及びその近傍だけでなくもう一方のループアンテナのアンテナ面及びその近傍もRFIDタグの検出エリアとして利用できる。
【0033】
よって、RFIDリーダアンテナをこのように構成し、各ループアンテナのアンテナ面の方向を適宜変更することにより、一つのループアンテナでは検出できないエリアへの検出エリアの拡大が可能となり、更にこれらの検出エリアに渡って検出できる検出タグの向きの範囲が広がる。
【0034】
次に、上記RFIDリーダアンテナ3をフォークリフト車に装着して物品のロケーション管理を行なう場合の、RFIDタグの配置例及びフォークリフト車へのRFIDリーダアンテナ3の装着例を示す。
【0035】
図4は、倉庫内にある物品のロケーションの様子を示した図で、図5は、その物品を積み下ろしするフォークリフト車の外観斜視図である。
図4において、床面5と2段の棚で構成される収納棚6とフォークリフトで積み降ろしするパレットに載置された物品7との位置関係を明確にしているが、物品7を載せたパレット8は、その収納棚6の一段目では床面5に直接置かれ、2段目(又は3段目)では棚60-1(又は60-2)上に置かれる。
【0036】
このパレット8には、フォークリフト車の1対のフォークを差し込むための差込口80が構成されている。フォークリフト車は、収納棚6から物品7を取り出すとき、その物品7の正面の位置で1対のフォークを前に突き出し、パレット8の差込口80にその一対のフォークを挿入してパレット8を支持し、一対のフォークを後退させてそのパレット8ごと物品7の取り出しを行う。パレット8に一対のフォークを挿入する際には、一対のフォークが構成されるフォークリフト部とパレット8の前面81とが近接する。更に、1段目のパレット8の取り出し時は床面5、2段面(または3段目)のパレットの取り出し時は棚の前面61-1(または61-2)とが近接する。
【0037】
そこで、本例では、その床5にパレット8の載置位置ごとに床タグ50を埋め込み、2段目及び3段目の棚の前面にパレット8の載置位置ごとに棚タグ62を取り付け、更に、パレット前面81にパレットタグ82を取り付け、フォークリフト車のフォークリフト部が近接するときにフォークリフト車で上記各タグ50、62、82を読み取らせるようにする。
【0038】
上記各タグ50、62、82は、それぞれ互いに異なる識別情報をもつ電磁誘導方式のRFIDタグで構成したものであり、そのメモリ内には、それぞれ、パレットタグ82には物品7の情報(物品情報)、棚タグ62には棚6の位置を示す情報(ロケーション情報)、床タグ50には床の位置を示す情報(ロケーション情報)などが記憶されている。
【0039】
なお、本例では、パレットタグ82と棚タグ62とはアンテナ面が同じ向きになるように取り付け、床タグ50はそれらとアンテナ面が異なる向き(直交する向き)で埋め込む。
図5に一例として示したフォークリフト車9は、その前部にフォークリフト部90を備えている。このフォークリフト部90は、特に詳しくは説明しないが、フォーク900の前後移動及び昇降動作を可能とする機構を備えている。車体91には入力装置や表示装置なども構成され、各部は制御装置によって制御される。本例では、RFIDリーダはその制御装置の近傍に固定され、RFIDリーダアンテナは屈曲自在の接続線を介してフォークリフト部90の可動部分に取り付けられる。RFIDリーダは制御装置の制御の下で、例えばフォークリフト部90を駆動する所定期間にRFIDリーダアンテナに電流を流し、コマンドを送信し、その検出エリア内にある全てのRFIDタグの情報を取得する。このように本例のフォークリフト9には、RFIDタグの各種情報を読み取る機能(物品情報及びロケーション情報読み取り機能)が付いている。ここではアンチ・コリジョン機能を使用することで複数のRFIDタグの情報を衝突なく取得するようにする。このように取得された情報は、その都度、遠隔地にある管理センターに無線送信し、その送信情報を下にその管理センターで物品のロケーション管理を行なわせる。なお、上述の無線によるロケーション管理方法の思想は、例えば特開2000-255714号公報などの特許文献に記載されているため、詳しくはそちらを参照されたい。
【0040】
図6は、フォークリフト車9に対するRFIDリーダアンテナ3の装着例である。
同図では、RFIDリーダアンテナ3の装着位置及び装着姿勢を見やすいようにフォークリフト車9のフォークリフト部90の一部を拡大して示している。同図(a)をその正面図、同図(b)を同図(a)の一点鎖線C-C´の位置における矢印向きの断面図とし、各図に、そのフォークリフト部90のフォーク900、フィンガーバー910(910-1、910-2)、及びリフトブラケット920を模式的に示した。なお、RFIDリーダアンテナ3はリーダとの接続線を省略して示している。
【0041】
同図に示されるように、本構成の場合、RFIDリーダアンテナ3をリフトブラケット920の下段のフィンガーバー910-1の中央位置に装着する。この位置では、フォーク表面(物品を搭載した際に当接する面)900-1からRFIDリーダアンテナ3の厚み以上窪んでおり、フォーク900をパレット8に挿入した際にパレットタグ82や棚タグ62又は床タグ50と最も接近するので、RFIDリーダアンテナ3の装着位置として最適である。
【0042】
RFIDリーダアンテナ3の装着時の姿勢は、第一のRFIDリーダアンテナ3-1のアンテナ面が前方(フォーク900の挿入方向)を向き、第二のRFIDリーダアンテナ3-2のアンテナ面が前方よりも下向きになるようにする。より具体的には、第一のRFIDリーダアンテナ3-1の取り付け角度は、フォーク900をパレット8に挿入した際にパレット8のパレットタグ82を的確に読み取れる角度とし、第二のRFIDリーダアンテナ3-2の取り付け角度は、フォーク900をパレット8に挿入した際に棚タグ62及び床タグ50を的確に読み取れる角度とする。なお、このとき、第二のRFIDリーダアンテナ3-2がフォーク900の下面から突出しないように最適な位置に配置する。この装着は、下段のフィンガーバー910-1にRFIDリーダアンテナ3の支持部材32を固定する不図示の固定部材を介するなどして装着する。
【0043】
図7は、パレット8にフォーク900を挿入したときの各RFIDタグ50、62、82とRFIDリーダアンテナ3の位置関係を示した図である。同図はパレット8にフォーク900を挿入した時の状態図であり、下段のフィンガーバー910-1の中央位置でフォーク900の挿入方向に縦に切り裂いたときの断面図である。同図(a)は2段目(または3段目)の棚60-1(または60-2)のパレット8にフォーク900を挿入したときの棚タグ62との位置関係を示し、同図(b)は1段目のパレット8にフォーク900を挿入したときの床タグ50との位置関係を示している。
【0044】
各図に断面図で示されるように、パレット8にフォーク900が挿入されると、RFIDリーダアンテナに構成される第一のRFIDリーダアンテナ3-1のアンテナ面方向にパレットタグ82がアンテナ面を向かい合わせて配置される。また、棚タグ62及び床タグ50は、RFIDリーダアンテナに構成される第二のRFIDリーダアンテナ3-2のアンテナ面の方向にアンテナ面とやや角度をなして配置される。このようなRFIDリーダアンテナ3と各RFIDタグ50、62、82の配置関係及び互いのアンテナ面の角度関係では、RFIDリーダアンテナ3の検出エリアは同図に破線で示されるような範囲となり、パレットタグ82と棚タグ62又はパレットタグ82と床タグ50の同時検出が可能となる。
【0045】
以上では、RFIDリーダのアンテナのみをフォークリフト車のフォークリフト部に装着する例を示した。しかし、これに限らず、例えばRFIDリーダをフォークリフト部に装着するなどしてもよい。
【0046】
また、RFIDタグを検出することにより物品のロケーションを管理する方法としては、パレットタグに物品情報、棚タグ及び床タグにロケーション情報を記憶させ、本RFIDリーダアンテナから読み取ったそれらの情報を用いて例えば遠隔地にあるコンピュータ上でロケーション管理を行なうようにしても良いし、或いは、各タグに識別情報のみを記憶させ、物品情報とロケーション情報は上記コンピュータに上記識別情報と紐付けしてもたせておき、本RFIDリーダアンテナからはそれらの識別情報のみを読み取らせるようにして、そのコンピュータでロケーション管理を行なうようにしても良い。
【0047】
このように本実施形態では、それぞれのRFIDタグの向きが異なる場合であっても複数のRFIDタグから同時(識別情報の同じ読み取り期間内)に識別情報の受信が行えるようになる。また、一つのRFIDリーダアンテナの検出エリアを拡大する事が可能になる。
【0048】
倉庫内の物品のロケーション管理においては、物品情報を管理するパレットタグに加えて、棚単位で物品のロケーションを管理するための棚タグをパレットの置かれた各棚に配置させても、フォークリフトでパレットを積み降ろしする際にこれらの二つのRFIDタグを読み取ることが可能となり、結果として、棚単位のロケーション管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のRFIDリーダアンテナの説明図である。
【図2】RFIDリーダアンテナの一構成例である。
【図3】ループアンテナ30の相互配置と、リーダとの配線接続パターンを示した図である。
【図4】倉庫内にある物品のロケーションの様子を示した図である。
【図5】物品の積み降ろしをするフォークリフト車の一例である。
【図6】フォークリフト車9に対するRFIDリーダアンテナ3の装着例である。
【図7】各RFIDタグ50、62、82とRFIDリーダアンテナ3の位置関係を示した図である。
【符号の説明】
【0050】
1 第一のループアンテナ
2 第二のループアンテナ
B、B´ 磁束
I、I´ 電流
10、20 アンテナ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにアンテナ面の向きを異ならせて違うRFIDタグが検出されるように配置された少なくとも二つのループアンテナを有し、
前記少なくとも二つのループアンテナは、一方のループアンテナに発生する磁束が他方のループアンテナの磁束を打ち消さない配置関係で構成されている、
ことを特徴とするRFIDリーダアンテナ。
【請求項2】
前記少なくとも二つのループアンテナは、
矩形形状であり、
各ループアンテナの内のそれぞれの一辺を平行に隣接させて配置されており、
前記平行に隣接した各辺を流れる電流の向きが全て同一方向となるように直列又は並列に連結されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダアンテナ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のRFIDリーダアンテナが構成された物品情報及びロケーション情報読み取り機能付きフォークリフト車。
【請求項4】
前記RFIDリーダアンテナは、
リフトブラケットの下段のフィンガーバーに前記各アンテナ面を前方及び前方の斜め下方に向けて構成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のRFIDリーダアンテナが構成された物品情報及びロケーション情報読み取り機能付きフォークリフト車。



【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2007−336185(P2007−336185A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164893(P2006−164893)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】