説明

パルスファイバレーザ装置、及び、画像表示装置、加工装置

【課題】ファイバレーザ装置の入力電流により励起用のレーザ光源を駆動したときにファイバレーザ装置から出てくる光パルスを積極的に利用してピーク値が数十Wの光パルス列を発生し、低コストで簡単な構成のパルスファイバレーザ装置を実現する。
【解決手段】本発明のパルスファイバレーザ装置10は、励起光(図示せず)を出射する励起用のレーザ光源11と、レーザ活性物質を含み励起光を入射するファイバ12と、ファイバ12を挟んで光学的に接続されている1組のファイバグレーティング13と、を備えたファイバレーザ14であって、レーザ光源11を駆動する入力電流15をファイバレーザ14からの光パルス16aが出射されると同時に遮断することにより出力光16が出射されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高出力のピーク値をもつ光パルスを発生することができる光電変換効率の高いパルスファイバレーザ装置及びそれを用いた画像表示装置、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
単色性が強くW級の高出力が出力できる可視光レーザ光源は、色再現範囲の広い高輝度画像表示装置を実現する光源として期待されている。このような要求に応えて、赤色、緑色及び青色の3原色のうち、赤色又は青色の高出力光源は半導体レーザで実現されつつある。しかしながら、緑色の高出力レーザ光源は半導体レーザとして構成できる最適な材料の構成が難しく、半導体レーザ素子だけで実現しようとすることが困難である。そのため、固体レーザ媒質からの基本波を、波長変換素子により高調波に波長変換して緑色の高出力レーザ光源を実現する構成が注目され量産化に向けた開発が進められている。
【0003】
一方、1μm帯の波長の高出力光パルスを発生するレーザ光源は、レーザ加工機などに用いられ、Nd:YAGレーザ、Nd:YVO4レーザなどの固体レーザ光源が主に用いられている。
【0004】
ところで、このような緑色の高出力レーザ光源やレーザ加工機などの高出力レーザ光源を実現するためには、高出力ピーク値をもつ光パルスをパルス列として発生することができる光電変換効率の高いパルスファイバレーザ装置が必要とされている。このような光パルスによりレーザ加工機の機械加工が精度よく実現され、このような光パルスを基本波として用いることにより高い変換効率で波長変換が行われる緑色の高出力レーザ光源を実現することができる。
【0005】
このような例として、過飽和特性を有するファイバブラッググレーティング(以下、「FBG」とする)を用いた2つの反射体間で、希土類をレーザ活性物質として添加したファイバにおいて発生した自然放出光を増幅しつつ共振させるモード同期により出力端から超短パルスレーザ光を発生させている(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、同様のファイバとこれを挟む1組のFBGとで構成されるファイバレーザ装置において励起用のレーザ光源の入力パターンを最適化して矩形状の光パルスの先頭にサージパルスを伴わないようにして安定な矩形状の光パルスを生成することが提案されている(例えば、特許文献2)。このような構成とすることにより、不安定なサージパルスがないディスプレイや各種の分析などの用途に最適な安定な矩形状の光パルスを得ることができるとしている。
【0007】
また、ファイバレーザ発振器とファイバレーザ増幅器とを直列に接続して一定出力の高出力Qスイッチパルス列を発生するファイバレーザ装置において、発信器と増幅器との励起開始のタイミングを工夫することにより、光パルスが発生する最初の段階から過渡応答の影響を避けた安定な一定出力の光パルス列が得られるとしている(例えば、特許文献3)。このことにより、ファイバレーザ装置が動作を開始した最初の時点から無駄なく高出力のパルス光を高効率に出力することができるとしている。
【特許文献1】特開2005−174993号公報
【特許文献2】特開2007−142380号公報
【特許文献3】特開2007−35696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記で説明した従来技術においては、モード同期やQスイッチを利用して光パルスを発生するため、装置が高価となり、かつ装置における入力の電力に対する出力光への変換効率が十分でないという課題があった。また、サージパルスのない矩形の光パルスを利用する場合には、ピーク出力が低く、SHGを利用した緑色の高出力レーザ光源においては、基本波から高調波への十分な波長変換効率が得られないことが課題となっていた。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、ファイバレーザ装置の入力電流により励起用のレーザ光源を駆動したときにファイバレーザ装置から出てくる光パルスを積極的に利用してピーク値が100Wクラスの光パルス列を発生し、低コストで簡単な構成のパルスファイバレーザ装置を実現し提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明のパルスファイバレーザ装置は、励起光を出射する励起用のレーザ光源と、レーザ活性物質を含み上記励起光を入射するファイバと、上記ファイバを挟んで光学的に接続されている1組の反射部と、を備えたファイバレーザであって、上記レーザ光源を駆動する入力電流を上記ファイバレーザからの光パルスが出射されると同時に遮断することにより出力光が出射されている構成からなる。
【0011】
また、本発明の画像表示装置は、複数のレーザ光源と、空間変調素子と、レーザ光源から出射する光を空間変調素子に導く光学系と、を備え、レーザ光源は、少なくとも赤色、緑色及び青色をそれぞれ出射する光源を用いた構成からなり、レーザ光源のうち、少なくとも緑色の光源が上記記載のパルスファイバレーザ装置を用いた構成としてもよい。
【0012】
また、本発明の画像表示装置は、複数のレーザ光源と、レーザ光源を走査する走査部と、レーザ光源から出射する光を走査部に導く光学系と、を備え、レーザ光源は、少なくとも赤色、緑色及び青色をそれぞれ出射する光源を用いた構成からなり、レーザ光源のうち、少なくとも緑色の光源は上記記載のパルスファイバレーザ装置を用いた構成としてもよい。
【0013】
また、本発明の加工装置は、上記パルスファイバレーザ装置と、そこから出射するパルスレーザ光を加工対象に導く光学系と、を備えた構成としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のパルスファイバレーザ装置は、レーザ光源を駆動する入力電流をファイバレーザからの光パルスが出射されると同時に遮断することにより出力光が出射されている。このような構成とすることにより、高出力ピーク値をもつ光パルスをパルス列として発生することができる光電変換効率の高いパルスファイバレーザ装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態にかかるパルスファイバレーザ装置及びそれを用いた画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。なお、図面で同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合もある。
【0016】
(実施の形態1)
図1に本発明の実施の形態1にかかるパルスファイバレーザ装置10の概略構成図を示す。
【0017】
図1に示すように本発明のパルスファイバレーザ装置10は、励起光(図示せず)を出射する励起用のレーザ光源11と、レーザ活性物質を含み励起光を入射するファイバ12と、ファイバ12を挟んで光学的に接続されている1組のファイバグレーティング13と、を備えたファイバレーザ14であって、レーザ光源11を駆動する入力電流15をファイバレーザ14からの光パルス16aが出射されると同時に遮断することにより出力光16が出射されている。
【0018】
パルスファイバレーザ装置10は、光パルス16aの光出力を検出する検出部17による検出信号17aにより制御部18を介して入力電流15を遮断するようにしている。すなわち、検出信号17aが制御部18により受信されると、この検出信号17aの内容に対応して、後述するように制御部18は、電源19からレーザ光源11に供給される入力電流15を遮断することになる。なお、図1に示すように検出部17は、1組のファイバグレーティング13のうち出力側のファイバグレーティング13bの出力端部の近傍に配置された構成としている。出力光16はハーフミラー16bにより、その一部が分岐されて検出部17に取り込まれている。検出部17、レーザ光源11及び電源19は配線18aにより制御部18に接続されて制御されている。
【0019】
このような構成とすることにより、高出力ピーク値をもつ光パルス16aをパルス列として発生することができる光電変換効率の高いパルスファイバレーザ装置10を簡単な構成により実現することができる。
【0020】
また、パルスファイバレーザ装置10は、ファイバレーザ14からの出力光16を基本波として、基本波を高調波に変換する波長変換素子20とをさらに備え、波長変換素子20からの高調波光21を出力する構成としている。
【0021】
このような構成とすることにより、さらに変換効率の高い高調波光の光パルス21aを基本単位としたパルス列として発生することができる。
【0022】
図2は、図1に示すパルスファイバレーザ装置10から出力光の光パルス16aが出射されるときのフローチャートを示す。図1及び図2を用いて本発明のパルスファイバレーザ装置10の具体的な動作について説明する。
【0023】
ステップS1はレーザ光源11が電源19により駆動されてレーザ光源11に入力電流15が注入され、レーザ光源11から出射されるレーザ光(図示せず)が励起光としてファイバレーザ14を励起するステップである。ここで、励起用のレーザ光源11としては、例えば発振波長975nmのシングルエミッターレーザダイオードを3個使用しており、レーザ光源11の最大出力は8Wである。
【0024】
ステップS2は励起光によりファイバレーザ14のレーザ活性物質を励起するステップである。ここで、ファイバレーザ14はファイバ12のコア部分に、例えば希土類の元素としてYb(イッテルビウム)をドープしてレーザ活性物質としたファイバ長10mのものであり、このファイバ12を挟んでレーザ共振器のミラーに相当する1組のファイバグレーティング13を備えている。
【0025】
1組のファイバグレーティング13のうち、入射側のファイバグレーティング13aのコア部分には、例えばゲルマニウムが添加されて紫外光に対する感度を向上させてグレーティングが形成しやすいようにしている。また、ファイバグレーティング13aは、例えばレーザ共振器のミラーとしては中心波長1064nm、反射スペクトル半値幅1nm、反射率98%という特性を持つように形成されている。
【0026】
一方、出射側のファイバグレーティング13bのコア部分には、例えばゲルマニウムが同様に添加されており、ミラーとしては中心波長1064nm、反射スペクトル半値幅0.05nm、反射率10%又は15%という特性を持つように形成されている。このような1組のファイバグレーレーティング13から波長変換素子20への基本波を発生させる場合には、波長変換素子20内における高調波への波長変換効率を考慮すると反射スペクトル幅は0.01nm以上、0.06nm以下であることが望ましい。なお、この範囲内でファイバレーザ14が安定にパルス発振していることを確認している。
【0027】
ステップS3は、このように構成されたファイバレーザ14から光パルス16aが出射されるステップである。励起光によりファイバレーザ14のレーザ活性物質が基本波を発振する波長に相当するエネルギー準位に励起されて反転分布が生じる。そして誘導放出が生じて基本波は1組のファイバグレーティング13をレーザ共振器のミラーとしてファイバ12の中を増幅されながら往復し、出射側のファイバグレーティング13bから光パルス16aを出射することとなる。
【0028】
ステップS4は光パルス16aの一部を検知してレーザ光源11に供給される入力電流15を遮断するステップである。すなわち、ファイバレーザ14から出射される出力光16、ここでは光パルス16aの一部をハーフミラー16bにより分岐して検出部17により検出する。この検出部17の検出信号17aは配線18aを介して制御部18に伝達されることにより、制御部18はレーザ光源11を駆動する電源19を遮断して入力電流15を遮断する。そうすると、レーザ光源11からファイバレーザ14に入射する励起光が遮断されるのでファイバレーザ14からの出力光が遮断される。
【0029】
ステップS5は上述のステップS1からS4までのステップを繰返すことにより、光パルス16aが単一の光パルスではなく光パルス列が出射されていることを示すステップである。このようにして、所定の周期の連続した光パルス列を出射することができる。
【0030】
ところで、出力光16の光パルス16aのほとんどはハーフミラー16bを通過して波長変換素子20に基本波として入射する。ここで、波長変換素子20は、例えば周期的に分極反転構造を有するMgO:LiNbO3(酸化マグネシウムを添加したニオブ酸リチウム)、KTP(リン酸チタニルカリウム)又はMgO:LiTaO3(マグネシウムを添加したタンタル酸リチウム)などを用いている。
【0031】
このような波長変換素子20を用いて基本波としての光パルス16aは高調波光21としての光パルス21aに波長変換される。この場合に波長変換素子20は2次の非線形光学効果により波長変換を行うので基本波の光パルス16aの発振波長のスペクトル幅が狭いほど、ピークパワーが大きいほど変換効率が向上することになり、結果としてファイバレーザ14は低消費電力で動作することになる。なお、本実施の形態では基本波はピークパワーが200W、発振波長が1064nmの光パルス16aを用いて、高調波としてピークパワーが120W、発振波長が532nmの緑色の光パルス21aが得られている。
【0032】
図3はレーザ光源11に矩形のパルス電流を入力電流15として供給したときにファイバレーザ14からの出力光16の光出力の過渡応答特性を示す図である。時間軸に対する入力電流15及び光出力の変化を示している。
【0033】
図3に示すように矩形の入力電流15によりレーザ光源11を駆動して励起光をファイバレーザ14に入射するとT1時間後に、光出力は光パルス16aの第1ピークP1が発生する。さらに入力電流15を注入し続けるとT2時間後に第2ピークP2が発生し、以下過渡応答のピークが発生したのちに光出力は、矩形の入力電流15の電流値Isに対応した光出力の定常値Psを示すことになる。
【0034】
本発明のパルスファイバレーザ装置10は、図3の光パルス16aの第1ピークP1が発生したことを検出部17により検知して入力電流15を遮断するので、光出力として第1ピークP1のみの単一のピークをもつ光パルス16aを出射することができる。
【0035】
第2ピーク以降は第1ピークに比べて、ピーク出力が低いため、レーザ加工装置として用いる場合、加工性能を低下させる。また、波長変換素子を用いて波長変換する場合も、高い波長変換効率が得られない。このため、入力電流15を第1ピークP1発生から第2ピークP2発生までの間に、遮断することが望ましい。入力電流源の時定数などの制約により、完全に遮断できない場合は、第2ピークP2発生時の入力電流量を、少なくとも第1ピークP1発生時の入力電流量の60%以下とすることが望ましい。これによって安定したパルス発振が可能となる。更に、望ましくはT2時間後の入力電流量を、第1ピークP1発生時の入力電流量の20%以下とすることで、第2のピークP2の発生を防ぎ、ピーク出力が高い第1ピークP1のみを発生させることが可能となる。
【0036】
また、入力電流15を遮断して所定の時間が経過したのちに入力電流15を再び導通してレーザ光源11がさらに駆動されることにより、出力光16として複数の光パルス16aが繰り返し出射されているように動作させることもできる。このような構成とすることにより、高出力ピーク値をもつ光パルス16aをパルス列として継続して発生させることもできる。
【0037】
図5(a)から(d)は入力電流15のパルス幅又は入力の電荷量を変化させたときの光出力の変化を示す図である。入力電流15は10Aの矩形のパルス電流を励起用のレーザ光源11に印加している。また、ファイバレーザ14のファイバ長は、例えば10mであり、ファイバのコア径は9μmのものを使用している。
【0038】
図5(a)は、電荷量55μC(パルス幅5.5μs)の入力電流15のパルスでレーザ光源11を駆動してファイバレーザ14を動作させた場合を示す図である。ファイバレーザ14は十分な励起光が入力されていないので基本波の光がレーザ発振に至らず自然放出光がわずかに観察されている。
【0039】
図5(b)は、電荷量65μC(パルス幅6.5μs)の入力電流15のパルスでレーザ光源11を駆動してファイバレーザ14を動作させた場合を示す図である。ファイバレーザ14はレーザ発振に至り、第1のピークP1をもつ単一の光パルス16aが観察されている。
【0040】
図5(c)は、電荷量75μC(パルス幅7.5μs)の入力電流15のパルスでレーザ光源11を駆動してファイバレーザ14を動作させた場合を示す図である。図5(b)に比べてさらに大きい第1のピークP1をもつ単一のパルス15aが観察されている。
【0041】
図5(d)は、電荷量85μC(パルス幅8.5μs)の入力電流15のパルスでレーザ光源11を駆動してファイバレーザ14を動作させた場合を示す図である。第1のピークP1に加えて第2のピークP2を伴う光パルス16aが観察されている。光パルス16aは、2ndパルスを伴うようになってしまう。
【0042】
ファイバ長や励起用レーザ光源の出力などにもよるが、第1ピークP1発生までの間に入力された電荷量の1.10倍以上の電荷量を入力すると、第2ピークP2が発生してしまう。このため、第1ピークP1発生後の入力電流15の電荷量が、第1ピークP1発生までの電荷量の20%以下となるように、入力電流15を遮断することが望ましい。入力電流源の時定数が大きく、入力電流15の波形がテールを引く場合も同様に、第1ピークP1発生後の入力電流15の電荷量が、第1ピークP1発生前の電荷量の20%以下となるように入力電流15を減少させることが望ましい。
【0043】
また、第1ピークP1のピーク出力は第1ピークP1発生時の入力電流量に比例するため、最も望ましくは、時定数が小さく、時間応答性に優れた入力電流源を用いて、第1ピークP1発生から第2ピークP2発生の間に入力電流15を遮断することが望ましい。
【0044】
図5に示す上述の場合には、図5(c)に示す入力電流15の条件で単一のピーク値の高い光パルス16aが得られることになる。また、入力電流15を矩形のパルス列にすると光パルス16aも光パルス列が得られることとなる。
【0045】
図4は矩形の入力電流15の1パルスごとの電荷量に対する波長変換効率を示す図である。ここで、第1のピークP1のみが発生する電荷量で入力電流15の電荷量は正規化している。縦軸は、このときの波長変換効率を1として正規化している。図4に示すように、第1のピークP1のみが発生する電荷量以上に電荷量が増加するにしたがって、光パルスが一つの周期の間に、第1のピーク(P1)のみをもつ光パルスから、複数のピークをもつ光パルスに変化するので波長変換効率は顕著に減少する。また、電荷量が、第1のピークP1のみが発生するために必要な電荷量に満たない場合も、変換効率は低下する。
【0046】
したがって、図5に示すようにパルスファイバレーザ装置10の構成に対応して、入力電流15は、所定のパルス幅、所定の電流値及び所定の周期を有する複数のパルス電流からなり、パルス幅、電流値及び周期のうちの少なくともいずれかを変化させる。そうすると、上述のように所定の周期の間に光パルス16aが第1のピーク(P1)だけ所定の範囲の光出力値で出射されることを予め設定して出力光を出射しているように設定することができる。すなわち、入力電流15のパルス幅、電流値及び周期を所定の条件の範囲で変化させてピーク値の高い第1のピーク(P1)のみが発生する条件を制御部で把握し、この条件の下にパルスファイバレーザ装置10を動作させることもできる。
【0047】
このような構成とすることにより、光パルス16aは2ndパルス(P2)以降を付随しない単一の高出力ピーク値をもつ光パルスを基本単位としたパルス列として発生することができる。さらに、光パルス16aのピーク値を用途に応じて最適な値に設定することもできる。
【0048】
図6は矩形の入力電流15のパルス幅及び電流値を所定の値に設定して単一の光パルス16aを発生させている例について示した図である。
【0049】
図6において図1で示したパルスファイバレーザ装置10の検出部17により光パルス16aの出力ピーク値PLを検出したのち、光パルス16aの出力値が出力ピーク値PLの95%から5%までの範囲の値に低下したことを検出したときに入力電流15を遮断することが好ましい。このような構成とすることにより、光パルス16aは2ndパルスを付随しない単一の高出力ピーク値をもつ光パルスを発生することができ、図6に示す光パルス16aを基本単位としたパルス列として発生することもできる。
【0050】
また、光パルス16aの出力値が出力ピーク値PLの95%から5%までの範囲の値に低下したことを検出することにより、入力電流15を遮断するタイミングや設定が容易になり、パルスファイバレーザ装置10の動作を簡潔にすることができる。
【0051】
図7は、所定の周期の複数のパルス電圧からなる入力電圧をレーザ光源11に印加することによりファイバレーザ14を駆動して光出力を得ていることを示す図で、(a)は入力電圧が正の直流電圧でバイアスされている場合を示す図、(b)は入力電圧が負の直流電圧でバイアスされている場合を示す図である。
【0052】
図7(a)において周期3μs、パルス幅300nsの入力電圧のパルス列によりレーザ光源11は駆動されている。この入力電圧により、光出力は半値幅が50nsの光パルス16aがパルス列として出力されている。
【0053】
図7(b)は図7(a)と同じ周期3μs、パルス幅300nsのパルス電圧に負の直流電圧を重畳して印加して、光パルス16aがパルス列として出力されていることを示している。図7(b)では一定の負の直流電圧を印加しているが、レーザ光源11に入力電流15を印加したのちに入力電流15を遮断すると同時にレーザ光源11に0.1V以上、0.5V以下の逆方向電圧(負の直流電圧)を印加してもよい。こうすることにより、光出力の半値幅を40ns以下に狭めることが可能となり、狭パルス化が可能となる。また、狭パルス化した分だけ、高いピーク出力が得られるため、パルスファイバレーザ装置で生成したレーザ光を基本波として波長変換させた場合の変換効率効率を高めることが可能となる。
【0054】
また、ここでは周期を3μsとしたが、周期は5μs以上としてもよい。これにより、更に、狭パルス化、高ピーク化が可能となり、レーザマーキングなどに応用が可能となるため望ましい。
【0055】
また、同様に周期を11μs以上としても良い。これにより、狭パルス化、高ピーク化に加えて、パルス出力の安定性が改善し、高い出力安定性が求められる画像表示装置に用いることが可能となるため望ましい。
【0056】
また、図示しないが、ファイバグレーティング13a、13bの代わりに、ミラーなどの反射手段をもちいる構成としてもよい。また、ファイバ出射端面は、特に反射防止膜などを形成することが無ければ、3%程度フレネル反射するため、ファイバグレーティングの代わりとすることも可能である。
【0057】
ファイバグレーティングを用いることで、高効率なパルスファイバレーザ装置を実現することができるが、ミラーや出射端のフレネル反射を利用することで、より安価なパルスファイバレーザ装置を実現することが可能となる。
【0058】
このような構成とすることにより、ファイバレーザ14を励起する励起光を瞬時に停止することができる。したがって、光パルス16aは確実に2ndパルスを付随しない単一の高出力ピーク値をもつ光パルスを基本単位としたパルス列として発生することができる。さらに入力電流15の大きさ、波形及び周期などを適切に設定することにより、パルス幅が狭い光パルス16aをパルス列として発生することもでき、光パルス16aパルス幅が狭いことからさらに波長変換効率の高いパルスファイバレーザ装置10を実現することができる。
【0059】
本発明では、波長変換素子20を備えた構成のパルスファイバレーザ装置10について示したが、波長変換素子20を備えない構成のパルスファイバレーザ装置であっても、簡単な構成で高ピーク光パルス生成が可能なレーザ光源となる。
【0060】
(実施の形態2)
図8に本発明の実施の形態2にかかるパルスファイバレーザ装置30の概略構成図を示す。
【0061】
図8に示すように本発明のパルスファイバレーザ装置30は、励起光(図示せず)を出射する励起用のレーザ光源11と、レーザ活性物質を含み励起光を入射するファイバ12と、ファイバ12を挟んで光学的に接続されている1組のファイバグレーティング13と、を備えたファイバレーザ14であって、レーザ光源11を駆動する入力電流15をファイバレーザ14からの光パルス16aが出射されると同時に遮断することにより出力光16が出射されている。この構成は実施の形態1に示したパルスファイバレーザ装置10と同じ構成である。
【0062】
しかしながら、パルスファイバレーザ装置30は、実施の形態1に示されたパルスファイバレーザ装置10と異なり、検出部17の他に検出部31が、ファイバ12の途中に光学的に接続された分岐ファイバ32の近傍に配置されている。このような構成にすることにより、分岐ファイバ32の一部からファイバレーザ14の基本波の一部を取り出して検出部31で検出し、検出信号17aを制御部18により受信することにより、入力電流15などを制御している。なお、検出部31は分岐ファイバ32の一部に組み込んで配置してもよい。
【0063】
このような構成とすることにより、ピーク値を含む光パルス16aの発生を的確に把握することができるので、さらに簡単な装置の構成で単一の高出力ピーク値をもつ光パルス16aをパルス列として発生することができる。
【0064】
さらに、実施の形態1と異なり、レーザ光源11は複数のレーザ光源11a、11b、11cにより構成され、複数のレーザ光源11a、11b、11cはそれぞれ結合ファイバ11dによりその一端が結合され、他端はコンバイナ33により1組のファイバグレーティング13のうち入力側のファイバグレーティング13aの入力端部に結合されている。
【0065】
このような構成とすることにより、励起光の光出力を所定の大きさに高めることができるので、さらに高出力の光パルス16aを基本単位としたパルス列として発生することができる。
【0066】
また、実施の形態1と異なり、ファイバ12は出力端側に偏波面選択部34をさらに備えた構成としている。このような構成とすることにより、光パルス16aはさらに偏光面の揃った光パルスを基本単位としたパルス列として発生することができる。そうすると、波長変換素子20において波長変換を行う際に変換効率を高めることができるだけでなく、偏光面の揃った高調波光を出力することができるので、液晶表示装置などの光源として最適である。
【0067】
ところで、パルスファイバレーザ装置10、30からの出力光16及び高調波光21として、さらにピーク値の大きい光パルス16a、21aを得ることは入力電流15の波形を工夫することにより実現することができる。
【0068】
図9(a)は入力電流15のパルス電流の波形を示す図、図9(b)は、このパルス電流により駆動された励起光により励起されたファイバレーザ14からの出力光16の光パルス16aを示す図である。
【0069】
図9(a)に示すようにパルス電流は時間的に電流値が9sから電流値(9a+9b)に単調に増加する三角波である。パルス電流は直流電流として電流値9bの量だけバイアスされている。このように、パルス電流を遮断する直前に電流値を最大にすることにより図9(b)に示す光パルス16aは2ndパルスを付随しない単一の高出力ピーク値9cをもつ光パルスを出力することができ、図9(b)に示す光パルスを基本単位としたパルス列として発生することができる。なお、電流パルスは電流値が単調に増加する矩形波であってもよい。
【0070】
図10は図9(a)に示すパルス発振時の励起用レーザ光源11の駆動電流(9b+9a)に対する光パルスのピーク出力9cの関係について示す図である。パルス電流は最大10Aまでの電流値まで駆動することができ、直流電流として0.1Aをバイアスしている場合のグラフが10a、その4倍の0.4Aをバイアスしている場合のグラフが10bで示されている。図10に示すように、いずれも駆動電流値にほぼ比例してパルスピーク出力が増加し、直流電流が小さい方が大きいパルスピーク値が得られていることが観察されている。
【0071】
また、パルス電流の立ち下がり時間が、立ち上がり時間より長い構成としてもよい。図11(a)及び(b)は、このような入力電流15の波形例を示す図である。このように立下り時間を立ち上がり時間より長くし、さらに図11(a)よりも図11(b)のように立ち下がり時間を緩やかにして駆動することにより、パルスピーク値が低下することなく所定のパルスピーク値を出力することができる。
【0072】
このような構成とすることにより、光パルス16aは2ndパルスを付随しない単一の高出力ピーク値をもつ光パルスを基本単位としたパルス列として発生することができる。
【0073】
(実施の形態3)
図12に本発明の実施の形態3にかかるパルスファイバレーザ装置40の概略構成図を示す。図12に示すようにパルスファイバレーザ装置40は、実施の形態1及び2で示したパルスファイバ装置10、30と異なり、波長変換素子41を挟んで1組の凹面ミラー42(42a、42b)をさらに備え、基本波は1組の凹面ミラー42(42a、42b)の間に配置された波長変換素子41の異なった経路43を複数回通過している構成としている。ファイバレーザ14の構成は実施の形態1及び2とほぼ同じである。
【0074】
このような構成とすることにより、波長変換素子41の全体で複数回異なった経路で波長変換が行われるので、局所的に波長変換が行われて温度上昇が生じることなどがなく、安定に効率よく基本波44を高調波光45に変換することができる。さらに、ファイバレーザ14から出力された基本波44はレンズ46などの光学系により波長変換素子41の中央付近で集光されるようにしているので波長変換素子41での変換効率はさらに向上することができる。ここで、1組の凹面ミラー42を用いているのは、波長変換素子41を通過する経路43のそれぞれで基本波44がビームウェスト位置を有するようにするためである。以上の構成とすることにより、さらに高調波光45の光パルスを基本単位とした高出力のパルス列として発生することができる。
【0075】
また、図12に示すように高調波光45を検出する高調波検出部47をさらに備え、高調波検出部47による検出信号により入力電流15を遮断する構成としている。すなわち、高調波光45の一部は、出力側の凹面ミラー42aの近傍に配置されたハーフミラー47aにより反射されて高調波検出部47により検出される。この検出信号により高調波光45の出力やパルス光としてのピーク値の検出などを行うことができ、制御部18は検出信号を元にパルスファイバレーザ装置40の全体を制御している。
【0076】
したがって、このような構成とすることにより、さらに高効率で2ndパルスを付随しない単一の高出力ピーク値をもつ光パルスを基本単位としたパルス列として出力光48を発生することができる。
【0077】
(実施の形態4)
図13に本発明の実施の形態4にかかる、上記で説明した実施の形態1から3において示したパルスファイバレーザ装置を緑色の光源として適用した画像表示装置の構成の一例について示す概略構成図である。光源には赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のレーザ光源101a、101b、101cを用いた。赤色レーザ光源(R光源)101aには波長640nmのAlGaInP/GaAs系材料からなる半導体レーザ装置を、青色レーザ光源(B光源)101cには波長450nmのGaN系材料からなる半導体レーザ装置を用いている。また、緑色レーザ光源(G光源)101bには実施の形態1から3において示したうちのいずれかの波長532nmのレーザ光を出射する波長変換装置を用いている。
【0078】
図13に示すように、本実施の形態の画像表示装置110は、複数のレーザ光源101a、101b、101cと、このレーザ光源101a、101b、101cを走査する走査部102と、を備えている。そして、レーザ光源101a、101b、101cは、少なくとも赤色(R光)、緑色(G光)及び青色(B光)をそれぞれ出射する光源を用いた構成からなり、これらのレーザ光源101a、101b、101cのうちG光源101bは上記で説明した実施の形態1から3で示したパルスファイバレーザ装置からなるG光源を用いた構成となっている。
【0079】
次に本実施の形態の画像表示装置110の光学的な構成について説明する。画像表示装置110のR、G、B各光源101a、101b、101cより出射されたレーザビームは、集光レンズ109a、109b、109cにより集光されたのち、走査部102を構成する反射型2次元ビーム走査手段102a、102b、102cにより拡散板103a、103b、103c上を走査される。画像データはR、G、Bそれぞれのデータに分割されており、その信号をフィールドレンズ104a、104b、104cで絞って空間変調素子105a、105b、105cに入力したのち、ダイクロイックプリズム106で合波することによりカラー画像を形成する。このように合波した画像は投射レンズ107によりスクリーン108に投影される。ただし、G光源101bから空間光変調素子105bに入射する光路中には、空間変調素子105bでのG光のスポットサイズをR光やB光と同じにするための凹レンズ109が挿入されている。また、G光源101bは、実施の形態1から3で示したG光源に集光レンズ(図示せず)などの光学部品を付加して、出力光のマルチビームが集光されることにより反射型2次元ビーム走査手段102bで走査しやすいようにしている。
【0080】
このように本実施の形態の画像表示装置110において、G光源101bは実施の形態1から3で示したG光源を用いている。
【0081】
すなわち、画像表示装置110は、スクリーン108と、複数のレーザ光源101a、101b、101cと、レーザ光源101a、101b、101cを走査する走査部102とを備え、レーザ光源101a、101b、101cは、少なくとも赤色、緑色及び青色をそれぞれ出射する光源を用いた構成からなり、レーザ光源101a、101b、101cのうち、少なくとも緑色の光源(G光源)101bが実施の形態1から3のいずれかのパルスファイバレーザ装置10、30、40を用いている。
【0082】
このような構成とすることにより、単一の高出力ピーク値をもつ光電変換効率の高いパルスファイバレーザ装置を用いているので、高輝度で色再現性に優れ、簡単な構成で低消費電力の安定した画像表示装置を実現することができる。
【0083】
また、画像表示装置110の緑色の光源であるパルスファイバレーザ装置から1フレームの画像を表示するために出射される光パルス数は、1フレームの直前の1フレームの画像を表示するために出射された光パルス数の平均出力から決められてAPC制御がされている構成としてもよい。
【0084】
このような構成とすることにより、さらに低消費電力で安定に動作する画像表示装置を実現することができる。
【0085】
(実施の形態5)
図14は本発明の実施の形態5にかかる、実施の形態1から3で示したG光源を含むバックライト照明装置を用いた画像表示装置の構成の一例について示す概略構成図である。このような画像表示装置の例として液晶表示装置120の模式的な構成図を示す。
【0086】
図14に示すように液晶表示装置120は、液晶表示パネル121と、液晶表示パネル121を背面側から照明するバックライト照明装置111と、を備えて構成されている。そして、バックライト照明装置111の光源は、複数のレーザ光源112を含んで構成され、このレーザ光源112は少なくとも赤色、緑色及び青色をそれぞれ出射する光源を用いた構成からなる。すなわち、R光源112a、G光源112b及びB光源112cは、それぞれ赤色、緑色及び青色のレーザ光を出射する。このレーザ光源112のうち、G光源112bが本発明の実施の形態1から3で示したパルスファイバレーザ装置からなるG光源を用いて構成される。
【0087】
ここでは、R光源112aには波長640nmのAlGaInP/GaAs系材料からなる半導体レーザ装置を、青色レーザ光源(B光源)112cには波長450nmのGaN系材料からなる半導体レーザ装置を用いている。また、緑色レーザ光源(G光源)112bには実施の形態1から3において示したうちのいずれかの波長変換装置を適用した波長532nmの緑色レーザ光源を用いている。
【0088】
次に本実施の形態の液晶表示装置120の模式的な構成について説明する。本実施の形態における液晶表示装置120は、バックライト照明装置111と、このバックライト照明装置111から出射されるR光、G光及びB光のレーザ光を利用して画像表示を行う偏光板122及び液晶板123から構成される液晶表示パネル121とからなる。すなわち、図14に示すように本実施の形態のバックライト照明装置111は、レーザ光源112、レーザ光源112からのR光、G光及びB光のレーザ光をまとめて導光部114を介して導光板115に導く光ファイバ113及び導入したR光、G光及びB光のレーザ光で均一に満たされて主面(図示せず)からレーザ光を出射する導光板115から構成されている。なお、G光源112bは、実施の形態1から3で示したG光源に集光レンズ(図示せず)などの光学部品を付加して、出力光のマルチビームが光ファイバ113に集光されて導光板115に導かれるようにしている。
【0089】
したがって、単一の高出力ピーク値をもつ光電変換効率の高いパルスファイバレーザ装置を用いて構成しているので、高輝度で色再現性に優れ、簡単な構成で低消費電力の安定した画像表示装置を実現することができる。
【0090】
また、ここでは、レーザ光源を用いた画像表示装置として、透過型の液晶パネルを空間変調素子として用いた液晶表示装置について示したが、DMDミラーや反射型LCOSを空間変調素子に用いたプロジェクタなどの画像表示装置であっても同様の効果を発現することは言うまでもない。
【0091】
(実施の形態6)
図15は、本発明の実施の形態6にかかるレーザ加工装置の構成の一例について示す概略構成図である。ここで、レーザ加工装置は実施の形態1又は、2において示したレーザ光源を適用した。
【0092】
図15に示すように、レーザ加工装置2201は、レーザ光源2202、スキャンミラー2203、ステージ2204で構成されていて、加工対象2205を加工する。
【0093】
実施の形態1又は2のいずれかに示したレーザ光源2202を用い、レーザ光源2202から出射したレーザ光をスキャンミラー2203で反射させて加工対象2205に照射することで、加工対象2205上のレーザ照射位置をY軸方向に移動させる。同時に、加工対象2205を載せたステージ2204をX軸方向に移動させることで、加工対象2205上のレーザ照射位置はX軸方向に移動する。このような構成で、例えば、任意のレーザ照射位置でレーザ光源2202をパルス発振させることで、加工対象2205表面上に任意のパターンのマーキングを施すことが可能となる。
【0094】
また、加工対象2205を水槽内に設置し、同様に加工対象2205表面上に向けてレーザをパルス照射することで、レーザピーニングなどに応用することも可能となる。
【0095】
本発明のレーザ光源は安定したビーム品質が高いレーザ光を生成することが可能であり、レーザマーキングやレーザピーニングなど、レーザ加工装置に用いる光源として望ましい。
【0096】
また、レーザピーニングには、波長変換光として441nmから592nmの波長の光を生成するレーザ光源を用いることが望ましく、これにより、水がレーザ光を吸収することで蒸発することを防ぎ、加工対象2205照射面での高いレーザピーニング効果を発現することが可能となる。
【0097】
本実施の形態では、スキャンミラーを用いたレーザ走査型の加工装置について述べた。ただし、これは、レーザ光源を用いた加工装置の一例であり、例えば、レーザ光源にて生成したレーザ光をファイバに入射させて、ファイバの反対面(出射端)を向けた任意の照射面にレーザ光を照射する構成の加工装置としてもよい。このような構成とすることにより、手術用のレーザ加工装置を実現することが可能となる。
【0098】
また、本明細書にて、実施の形態1から6に示した構成は一例であって、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更を変えることができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のパルスファイバレーザ装置は、高出力ピーク値をもつ光パルスをパルス列として発生することができる光電変換効率の高いパルスファイバレーザ装置を低コストで簡単な構成により実現することができる。また、本発明のパルスファイバレーザ装置を用いた加工装置を低コストで簡単な構成により実現することができる。
【0100】
更に、本発明の画像表示装置は、高出力ピーク値をもつ光電変換効率の高いパルスファイバレーザ装置を用いて構成しているので、高輝度で色再現性に優れ、簡単な構成で低消費電力の安定した画像表示装置を実現することができ、大型ディスプレイ装置や高輝度ディスプレイ装置などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるパルスファイバレーザ装置の概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1にかかるパルスファイバレーザ装置から出力光のパルスが出射されるときのフローチャート
【図3】レーザ光源に矩形のパルス電流を入力電流として供給したときにファイバレーザからの出力光の光出力の過渡応答特性を示す図
【図4】図3に示す矩形の入力電流のパルス幅に対する波長変換効率を示す図
【図5】(a)から(d)は入力電流のパルス幅又は入力の電荷量を変化させたときの光出力の変化を示す図
【図6】矩形の入力電流のパルス幅及び電流値を所定の値に設定して単一の光パルスを発生させている例について示した図
【図7】所定の周期の複数のパルス電圧からなる入力電圧をレーザ光源に印加することによりファイバレーザを駆動して光出力を得ていることを示す図で、(a)は入力電圧が正の直流電圧でバイアスされている場合を示す図、(b)は入力電圧が負の直流電圧でバイアスされている場合を示す図
【図8】本発明の実施の形態2にかかるパルスファイバレーザ装置の概略構成図
【図9】(a)は入力電流のパルス電流の波形を示す図、(b)は、このパルス電流により駆動された励起光により励起されたファイバレーザからの出力光の光パルスを示す図
【図10】図9(a)に示すパルス発振時の励起用のレーザ光源の駆動電流に対する光パルスのピーク出力の関係について示す図
【図11】(a)及び(b)は、入力電流の波形例を示す図
【図12】本発明の実施の形態3にかかるパルスファイバレーザ装置の概略構成図
【図13】本発明の実施の形態4にかかる画像表示装置の構成の一例について示す概略構成図
【図14】本発明の実施の形態5にかかる画像表示装置の構成の一例について示す概略構成図
【図15】本発明の実施の形態6にかかる加工装置の構成の一例について示す概略構成図
【符号の説明】
【0102】
10,30,40 パルスファイバレーザ装置
11,11a,11b,11c,112 レーザ光源
11d 結合ファイバ
12 ファイバ
13 1組のファイバグレーティング
13a 入射側のファイバグレーティング
13b 出射側のファイバグレーティング
14 ファイバレーザ
15 入力電流
16,48 出力光
16a,21a 光パルス
16b,47a ハーフミラー
17,31 検出部
17a 検出信号
18 制御部
18a 配線
19 電源
20,41 波長変換素子
21,45 高調波光
32 分岐ファイバ
33 コンバイナ
42(42a,42b) 凹面ミラー
43 経路
44 基本波
46 レンズ
47 高調波検出部
101a,112a R光源(レーザ光源)
101b,112b G光源(レーザ光源)
101c,112c B光源(レーザ光源)
102 走査部
102a,102b,102c 反射型2次元ビーム走査手段
103a,103b,103c 拡散板
104a,104b,104c フィールドレンズ
105a,105b,105c 空間変調素子
106 ダイクロイックプリズム
107 投射レンズ
108 スクリーン
109 凹レンズ
109a,109b,109c 集光レンズ
110 画像表示装置
111 バックライト照明装置
113 光ファイバ
114 導光部
115 導光板
120 液晶表示装置(画像表示装置)
121 液晶表示パネル
122 偏光板
123 液晶板
2201 レーザ加工装置
2202 レーザ光源
2203 スキャンミラー
2204 ステージ
2205 加工対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を出射する励起用のレーザ光源と、
レーザ活性物質を含み前記励起光を入射するファイバと、
前記ファイバを挟んで光学的に接続されている1組の反射部と、
を備えたファイバレーザであって、
前記ファイバレーザを駆動する入力電流を、前記ファイバレーザから光パルスが出射されると同時に遮断することを特徴とするパルスファイバレーザ装置。
【請求項2】
前記入力電流を遮断する所定の時間が経過したのちに前記入力電流を再び導通して前記レーザ光源がさらに駆動されることにより、前記出力光として複数の光パルスが繰り返し出射されていることを特徴とする請求項1に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項3】
前記光パルスの光出力を検出する検出部をさらに備え、前記検出部による検出信号により前記入力電流を遮断することを特徴とする請求項1又は2に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記ファイバの途中に付加され光学的に接続された分岐ファイバの一部又は前記分岐ファイバの近傍に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記1組の反射部のうちの出力側の反射部の近傍に配置されたことを特徴とする請求項3に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項6】
前記1組の反射部のうち少なくとも一方がファイバグレーティングであることを特徴とする請求項1に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項7】
前記検出部により前記光パルスの出力ピーク値を検出したのち前記光パルスの出力値が前記出力ピーク値の95%から5%までの範囲の値に低下したことを検出したときに前記入力電流を遮断することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項8】
前記入力電流は、所定のパルス幅、所定の電流値及び所定の周期を有する複数のパルス電流からなり、前記パルス幅、前記電流値及び前記周期のうちの少なくともいずれかを変化させて前記所定の周期の間に前記光パルスが1つだけ所定の範囲の光出力値で出射されることを予め設定して前記出力光を出射していることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項9】
前記パルス電流は、電流値が一定又は単調に増加する矩形波もしくは三角波であることを特徴とする請求項8に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項10】
前記パルス電流の立ち下がり時間が、立ち上がり時間より長いことを特徴とする請求項9に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項11】
前記入力電流を遮断すると同時に前記レーザ光源に0.1V以上、0.5V以下の逆方向電圧を印加することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項12】
前記レーザ光源は複数のレーザ光源により構成され、前記複数のレーザ光源はそれぞれ結合ファイバによりその一端が結合され、他端はコンバイナにより前記1組の反射部のうちの入力側の反射部の入力端部に結合されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項13】
前記ファイバは、出力端側に偏波面選択部をさらに備えたことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項14】
前記ファイバレーザからの前記出力光を基本波として、前記基本波を高調波に変換する波長変換素子とをさらに備え、前記波長変換素子からの高調波光を出力することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項15】
前記波長変換素子を挟んで1組の凹面ミラーをさらに備え、前記基本波は前記1組の凹面ミラーの間に配置された前記波長変換素子の異なった経路を複数回通過していることを特徴とする請求項14に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項16】
前記高調波光を検出する高調波検出部をさらに備え、前記高調波検出部による検出信号により前記入力電流を遮断することを特徴とする請求項14又は15に記載のパルスファイバレーザ装置。
【請求項17】
少なくとも
複数のレーザ光源と、
空間変調素子と、
前記レーザ光源から出射する光を前記空間変調素子に導く光学系と、を備え、
前記レーザ光源は、少なくとも赤色、緑色及び青色をそれぞれ出射し、
前記レーザ光源のうち、少なくとも緑色の光源が請求項1から16のいずれか1項に記載のパルスファイバレーザ装置を用いたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項18】
少なくとも
複数のレーザ光源と、
前記レーザ光源を走査する走査部と、
前記レーザ光源から出射する光を前記走査部に導く光学系と、を備え、
前前記レーザ光源は、少なくとも赤色、緑色及び青色をそれぞれ出射し、
前記レーザ光源のうち、少なくとも緑色の光源が請求項1から16のいずれか1項に記載のパルスファイバレーザ装置を用いたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項19】
前記緑色の光源から1フレームの画像を表示するために出射される光パルス数は、前記1フレームの直前の1フレームの画像を表示するために出射された光パルス数の平均出力から決められてAPC制御がされていることを特徴とする請求項17又は18に記載の画像表示装置。
【請求項20】
少なくとも
レーザ光源と、
前記レーザ光源から出射するレーザ光を加工対象に導く光学系と、を備え、
前記レーザ光源が、請求項1から16のいずれか1項に記載のパルスファイバレーザ装置であることを特徴とする加工装置。
【請求項21】
前記レーザ光源から生成するレーザ光の波長が441nmから592nmであることを特徴とする請求項20記載の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−134736(P2011−134736A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290534(P2008−290534)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】