説明

ポリッシング装置及び方法

【課題】半導体ウエハの周縁部における研磨量の過不足を防止し、より平坦度の高い研磨を行うことができ、また半導体ウエハの周縁部の研磨量を意図的に増減することができるポリッシング装置及び方法を提供する。
【解決手段】ポリッシング対象物を保持するトップリング1を回転させる際の軸中心となるトップリングシャフト8の周囲に別個に設けられ、ポリッシング対象物を研磨する際、トップリングシャフト8とは一緒に回転しないよう構成された部材21を備え、トップリング1の周囲に上下動自在に配置されたガイドリング3に押圧力を与えるための流体圧を調節する第2のレギュレータR2からガイドリング押え20を介してガイドリング3へ行われる押圧力の伝達が、トップリングシャフト8の周囲に別個に設けられた部材21を介して行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウエハ等のポリッシング対象物を平坦且つ鏡面状に研磨するポリッシング装置及び方法に係り、特にポリッシング対象物の周縁部の研磨量を制御する機構を具備したポリッシング装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化が進むにつれて回路の配線が微細化し、配線間距離もより狭くなりつつある。特に線幅が0.5μm以下の光リソグラフィの場合、許容される焦点深度が浅くなるためステッパーの結像面の平坦度を必要とする。そこで、半導体ウエハの表面を平坦化することが必要となるが、この平坦化法の1手段としてポリッシング装置により研磨することが行われている。
【0003】
従来、この種のポリッシング装置は、ターンテーブルとトップリングとを有し、トップリングが一定の圧力をターンテーブルに与え、ターンテーブルとトップリングとの間にポリッシング対象物を介在させて、砥液を供給しつつ該ポリッシング対象物の表面を平坦且つ鏡面に研磨している。
【0004】
上述したポリッシング装置において、トップリングの半導体ウエハ保持面に弾性を有する、例えばポリウレタン等の弾性マットを貼り、トップリングからポリッシング対象物に印加する押圧力を均一にしようとする試みがなされている。これは押圧力を均一化することで半導体ウエハが局部的に研磨されることを緩和し、ポリッシング対象物の平坦度を向上させることを目的としている。
【0005】
図9は従来のポリッシング装置の主要部を示す図である。ポリッシング装置は、上面に研磨布42を貼った回転するターンテーブル41と、回転および押圧可能にポリッシング対象物である半導体ウエハ43を保持するトップリング45と、研磨布42に砥液Qを供給する砥液供給ノズル48を備えている。トップリング45はトップリングシャフト49に連結されており、またトップリング45はその下面にポリウレタン等の弾性マット47を備えており、弾性マットに接触させて半導体ウエハ43を保持する。さらにトップリング45は、研磨中に半導体ウエハ43がトップリング45の下面から外れないようにするため、円筒状のガイドリング46を外周縁部に備えている。ここで、ガイドリング46はトップリング45に対して固定されており、その下端面はトップリング45の保持面から突出するように形成され、ポリッシング対象物である半導体ウエハ43が保持面内に保持され、研磨中に研磨布42との摩擦力によってトップリング外へ飛び出さないようになっている。
【0006】
半導体ウエハ43をトップリング45の下面の弾性マット47の下部に保持し、ターンテーブル41上の研磨布42に半導体ウエハ43をトップリング45によって押圧するとともに、ターンテーブル41およびトップリング45を回転させて研磨布42と半導体ウエハ43を相対運動させて研磨する。このとき、砥液供給ノズル48から研磨布42上に砥液Qを供給する。砥液は、例えばアルカリ溶液に微粒子からなる砥粒を懸濁したものを用い、アルカリによる化学的研磨作用と、砥粒による機械的研磨作用との複合作用によって半導体ウエハを研磨する。
【0007】
図10は研磨時の半導体ウエハと研磨布と弾性マットの状態を示す拡大断面図である。図10に示すように、ポリッシング対象物である半導体ウエハ43の周縁は、研磨布42との接触/非接触の境界であると同時に、弾性マット47との接触/非接触との境界になっている。このため、これらの境界であるポリッシング対象物の周縁において、ポリッシング対象物に加わる研磨圧力が不均一になり、ポリッシング対象物の周縁のみが多く研磨され、いわゆる「縁だれ」を起こしてしまうという問題点があった。
【0008】
図11は半導体ウエハ上に酸化膜(SiO2)等の被膜が形成された6インチ半導体ウエハについて有限要素法(finite element method)で求めた半径方向位置と研磨圧力との関係及び半径方向位置と膜厚との関係を示すグラフである。図中、白丸は有限要素法で求めた研磨圧力(gf/cm2)の計算値を示し、黒丸は研磨後の膜厚(オングストローム)の測定値を示す。計算で求められた研磨圧力は半導体ウエハの周縁部(70〜74mm)で不均一であり、これに応じて膜厚は半導体ウエハの周縁部(70〜73.5mm)で不均一になっている。そして、膜厚の実測値から明らかなように半導体ウエハの周縁部が過研磨になって縁だれが生じているのがわかる。
【0009】
従来、上述した半導体ウエハの縁だれを防止するため、ガイドリングをリング状の重りによって構成し、ガイドリングをトップリングに対して上下動可能とし、ガイドリングの重量によって研磨布を押圧する構造を採用したものがある(例えば、特許文献1参照)。また、トップリングとガイドリングとの間にバネを介装し、バネ力によってガイドリングを研磨布に押圧する構造を採用したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭55−157473号公報
【特許文献2】特公昭58−10193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した従来のガイドリングの重量によって研磨布を押圧する構造のものにおいては、ポリッシング対象物や研磨条件に応じて、トップリングがポリッシング対象物である半導体ウエハを研磨布に押圧する押圧力を変更しても、ガイドリングが研磨布を押圧する押圧力は常に一定であり変更することができないため、トップリングの押圧力に比べてガイドリングの研磨布に対する押圧力が低すぎたり高すぎたりする場合があり、半導体ウエハの周縁部のみが多く研磨されたり、逆に研磨量が少なかったりするという問題点があった。
【0012】
また、上述したバネ力によってガイドリングを研磨布に押圧する構造のものにおいては、使用するバネによって押圧力が決定されてしまい、上述と同様に、ポリッシング対象物や研磨条件に応じて、トップリングがポリッシング対象物である半導体ウエハを研磨布に押圧する押圧力を変更しても、ガイドリングが研磨布を押圧する押圧力は変更することができないため、トップリングの押圧力に比べてガイドリングの研磨布に対する押圧力が低すぎたり高すぎたりする場合があり、半導体ウエハの周縁部のみが多く研磨されたり、逆に研磨量が少なかったりするという問題点があった。
【0013】
本発明は上述の事情に鑑みなされたもので、ポリッシング対象物や研磨条件に応じてガイドリングが研磨布に最適な押圧力を与えるようにすることによりポリッシング対象物の周縁部における研磨量の過不足を防止し、より平坦度の高い研磨を行うことができるポリッシング装置及び方法を提供することを目的とする。
【0014】
また本発明は、半導体ウエハ等のポリッシング対象物によってはポリッシング対象物の周縁部で内部側より研磨量を多く又は逆に少なくしたいという要請があるため、この要請にも答えることができるようにポリッシング対象物の周縁部の研磨量を意図的に増減することができるポリッシング装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するため、本発明のポリッシング装置の第1の態様は、上面に研磨布を貼ったテーブルと、ポリッシング対象物を保持するトップリングと、前記ポリッシング対象物に押圧力を与えるための流体圧を調節する第1のレギュレータと、前記トップリングの周囲に上下動自在に配置されたガイドリングと、前記ガイドリングに押圧力を与えるための流体圧を調節する第2のレギュレータと、前記トップリングを回転させる際の軸中心となるトップリングシャフトと、該ガイドリングを保持するガイドリング押えと、前記トップリングシャフトの周囲に別個に設けられ、ポリッシング対象物を研磨する際、前記トップリングシャフトとは一緒に回転しないよう構成された部材を備え、前記第2のレギュレータからガイドリング押えを介してガイドリングへ行われる押圧力の伝達が、前記トップリングシャフトの周囲に別個に設けられた部材を介して行われることを特徴とするものである。
【0016】
本発明のポリッシング装置の第2の態様は、上面に研磨布を貼ったテーブルと、ポリッシング対象物を保持するトップリングと、弾性を有し前記ポリッシング対象物の上面と接して該ポリッシング対象物を均一に押圧する弾性体と、前記ポリッシング対象物に押圧力を与えるための流体圧を調節するための第1の流体圧調節機構と、前記トップリングの周囲に上下動自在に配置される前記研磨布を押圧するためのガイドリングと、前記ガイドリングに押圧力を与えるための流体圧を調節するための第2の流体圧調節機構と、前記ガイドリングに押圧力を与えるために該ガイドリングと前記第2の流体圧調節機構との間に設けられたガイドリング押えとを有することを特徴とするものである。
本発明の一態様は、前記第1の流体圧調節機構及び第2の流体圧調節機構に接続される流体源を有することを特徴とする。
【0017】
本発明のポリッシング装置の第3の態様は、上面に研磨布を貼ったテーブルと、酸化膜を有するポリッシング対象物を保持するトップリングと、前記ポリッシング対象物に押圧力F1を与えるための第1の流体圧を調整する第1のレギュレータと、前記トップリングの周囲に上下動自在に配置されて前記研磨布を押圧するガイドリングと、前記ガイドリングに押圧力F2を与えるための第2の流体圧を調整する第2のレギュレータを備え、前記ポリッシング対象物を研磨する際、前記第1の流体圧と前記第2の流体圧は、前記ポリッシング対象物への押圧力F1よりも前記ガイドリングへの押圧力F2を小さくして、前記ポリッシング対象物の周縁部の研磨量を該ポリッシング対象物の内部側より少なくして該ポリッシング対象物の周縁部の酸化膜を厚く残すように前記第1のレギュレータと前記第2のレギュレータにより調整されることを特徴とするものである。
【0018】
本発明のポリッシング方法の第1の態様は、上面に研磨布を貼ったテーブルとトップリングとの間にポリッシング対象物を介在させて押圧し、研磨するポリッシング方法であって、前記トップリングに前記ポリッシング対象物を保持したまま該トップリングをトップリングシャフトの軸中心に回転させ、調節された第1の流体圧を第1の押圧機構に供給してポリッシング対象物を前記研磨布に対して押圧し、前記第1の流体圧と独立に調整された第2の流体圧を第2の押圧機構に供給し、該第2の押圧機構と前記ガイドリングとの間に設けられたガイドリング押えを介して、ガイドリングを前記研磨布に対して押圧することを特徴とするものである。
【0019】
本発明のポリッシング方法の第2の態様は、上下動自在に配置されたガイドリングの内側に配置され、ポリッシング対象物の上面と接して該ポリッシング対象物を均一に押圧する、弾性を有する弾性マットを有し、ガイドリング押えを介して前記ガイドリングを前記研磨布に対して押圧する押圧手段とは独立に、研磨布に対して押圧する押圧手段によって下方に押圧されるようにされたトップリングを用いてポリッシング対象物をポリッシングする方法において、前記ポリッシング対象物を研磨する際、前記ポリッシング対象物への押圧力F1よりもガイドリングへの押圧力F2を小さくして、前記ポリッシング対象物の周縁部の研磨量を該ポリッシング対象物の内部側より少なくして該ポリッシング対象物の周縁部の酸化膜を厚く残すようにしたことを特徴とするものである。
【0020】
本発明のポリッシング装置の好ましい態様は、テーブルとトップリングとの間にポリッシング対象物を介在させて押圧することによって該ポリッシング対象物を研磨するポリッシング装置において、前記ポリッシング対象物を保持するガイドリングをトップリングの周囲にトップリングに対して上下動自在に配置し、前記ガイドリングを押圧する押圧手段が前記トップリングを支持するトップリングヘッドに固定されており、前記押圧手段による押圧力が可変である。
【0021】
本発明のポリッシング装置の好ましい態様は、テーブルとトップリングとの間にポリッシング対象物を介在させて押圧することによって該ポリッシング対象物を研磨するポリッシング装置において、前記ポリッシング対象物を保持するガイドリングをトップリングの周囲に上下動可能且つトップリングと一体に回転可能に配置し、前記ガイドリングを押圧する押圧手段は、ベアリングを保持したベアリング押えを介して前記ガイドリングを押圧する。
本発明の一態様は、前記押圧手段はトップリングを支持するトップリングヘッドに固定されている。
【0022】
本発明のポリッシング装置の好ましい態様は、上面に研磨布を貼ったターンテーブルとトップリングとを有し、前記ターンテーブルとトップリングとの間にポリッシング対象物を介在させて所定の力で押圧することによって該ポリッシング対象物を研磨し、平坦且つ鏡面化するポリッシング装置において、前記ポリッシング対象物を前記トップリングの下端面内に保持するガイドリングをトップリングの周囲に上下動自在に配置し、前記ガイドリングを研磨布に対して押圧する押圧手段を設け、該押圧手段の押圧力を可変にした。
【0023】
また本発明のポリッシング方法の好ましい態様は、上面に研磨布を貼ったターンテーブルとトップリングとを有し、前記ターンテーブルとトップリングとの間にポリッシング対象物を介在させて所定の力で押圧することによって該ポリッシング対象物を研磨し、平坦且つ鏡面化するポリッシング方法において、前記トップリングの周囲にガイドリングを上下動自在に配置し、ポリッシング対象物が接触する研磨布の周囲を、ガイドリングによりトップリングの押圧力に基づいて決定された押圧力で押圧しながら研磨する。
【0024】
図1は本発明の基本概念を示す図である。図1において、符号1はトップリングであり、トップリング1の下面には弾性マット2が貼着されている。またトップリング1の外周部にはガイドリング3が配置されている。このガイドリング3はトップリング1に対して上下動自在になっている。
【0025】
上述の構成において、トップリング1がポリッシング対象物である半導体ウエハ4をターンテーブル5上の研磨布6に押圧する押圧力F1(単位面積当たりの圧力,gf/cm2)を可変とし、またガイドリング3が研磨布6を押圧する押圧力F2(単位面積当たりの圧力,gf/cm2)を可変としている。そして、押圧力F1と押圧力F2とは、それぞれ独立して押圧力を変更できるようになっている。したがって、ガイドリング3が研磨布6を押圧する押圧力F2をトップリング1が半導体ウエハ4を研磨布6に押圧する押圧力F1に応じて変更することができる。
【0026】
この場合、理論的には、トップリング1が半導体ウエハ4を研磨布6に押圧する押圧力F1とガイドリング3が研磨布6を押圧する押圧力F2とを等しくすれば、ポリッシング対象物である半導体ウエハ4の中心部から周縁部、さらには半導体ウエハ4の外側にあるガイドリング3の外周部までの研磨圧力の分布が連続かつ均一になる。そのため、ポリッシング対象物である半導体ウエハ4の周縁部における研磨量の過不足を防止することができる。
【0027】
図2はトップリング1が半導体ウエハ4を研磨布6に押圧する押圧力F1とガイドリング3が研磨布6を押圧する押圧力F2との関係を変えた場合の模式図であり、図2(a)はF1>F2の場合を示し、図2(b)はF1≒F2の場合を示し、図2(c)はF1<F2の場合を示す。
図2(a),(b),(c)に示されるように、ガイドリング3に押圧力F2を加えた場合、研磨布6が圧縮され、半導体ウエハ4の周縁部に対する研磨布6の接触状態が変化していく。このため、F1とF2との関係を変更することにより半導体ウエハ4の研磨圧力の分布を内部側と周縁部とで種々に変えることができる。
【0028】
図2から明らかなように、F1>F2の場合には半導体ウエハ4の周縁部の研磨圧力が内部より高くなり、半導体ウエハ4の周縁部の研磨量を内部の研磨量より多くすることができる。
1≒F2の場合には半導体ウエハ4の中心部から周縁部、さらにはガイドリングの外周部までの研磨圧力の分布が連続かつ均一になり、半導体ウエハ4は中心部から周縁部まで均一な研磨量が得られる。
1<F2の場合には半導体ウエハ4の周縁部の研磨圧力が内部より低くなり、半導体ウエハ4の周縁部の研磨量を内部の研磨量より少なくすることができる。
【0029】
図3は本発明の基本概念に基づいて半導体ウエハを研磨した場合の実験結果を示すグラフである。半導体ウエハは8インチのものを使用し、トップリングによる半導体ウエハに加わる押圧力(研磨圧力)は400gf/cm2で一定であり、ガイドリングの押圧力は600〜200gf/cm2まで変更したものである。図3(a)はガイドリングの押圧力を600gf/cm2、図3(b)は同押圧力を500gf/cm2、図3(c)は同押圧力を400gf/cm2、図3(d)は同押圧力を300gf/cm2、図3(e)は同押圧力を200gf/cm2としたものである。各図において横軸は半導体ウエハの中心からの距離(mm)、縦軸は研磨量(オングストローム)を示す。
【0030】
図3から明らかなように、ガイドリングの押圧力を変えることによって、半導体ウエハの半径方向位置の研磨量が影響を受けていることがわかる。即ち、ガイドリングの押圧力が200〜300gf/cm2の場合(図3(d),図3(e))には、半導体ウエハの周縁部で縁だれが生じており、同押圧力が400〜500gf/cm2の場合(図3(b),図3(c))には半導体ウエハの周縁部の縁だれが少なく、さらに同押圧力が600gf/cm2の場合(図3(a))には半導体ウエハの周縁部で研磨不足が生じている。
【0031】
以上のように、実験結果からガイドリングの押圧力をトップリングの押圧力とは独立に変更することにより、ポリッシング対象物の周縁部における研磨量の過不足を調整できることが裏付けられた。理論的にはガイドリングの押圧力はトップリングの押圧力と等しい場合がポリッシング対象物の周縁部の研磨結果は良くなるはずであるが、ポリッシング対象物や研磨条件によって一概には云いきれないため、本発明においてはポリッシング対象物や研磨条件によって、ガイドリングの押圧力をトップリングの押圧力に基づいて最適な値に選択する。
【0032】
また半導体ウエハ等のポリッシング対象物によっては、ポリッシング対象物の周縁部を内部側より意図的に研磨量を多く又は逆に少なくしたいという要請があるため、この要請に対してもガイドリングの押圧力をトップリングの押圧力に基づいて最適な値に選択することによりポリッシング対象物の周縁部の研磨量を意図的に増減することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明のポリッシング装置及び方法によれば、ポリッシングに際してポリッシング対象物の周縁部における押圧力分布が不均一になることを防止して研磨圧力をポリッシング対象物の全面に亘って均一にし、ポリッシング対象物の周縁部の研磨量が過不足となることを防止することができる。従って、ポリッシング対象物の全面を平坦かつ鏡面に研磨することができる。そして、半導体製造工程等に用いてより質の高いポリッシングを行うことができ、また半導体ウエハの周縁部まで製品に供することができるため、半導体ウエハの歩留りの向上に寄与するものである。
【0034】
また本発明によれば、半導体ウエハ等のポリッシング対象物によってはポリッシング対象物の周縁部で内部側より意図的に研磨量を多く又は逆に少なくしたいという要請があるため、この要請にも答えることができるようにポリッシング対象物の周縁部の研磨量を意図的に増減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の基本概念を説明する説明図である。
【図2】トップリングの押圧力とガイドリングの押圧力の関係を変更した場合の挙動を説明する説明図である。
【図3】本発明の基本概念に基づいて半導体ウエハを研磨した場合の実験結果を示すグラフである。
【図4】本発明に係るポリッシング装置の第1実施例の全体構成を示す断面図である。
【図5】本発明に係るポリッシング装置の第1実施例の要部構成を示す断面図である。
【図6】本発明に係るポリッシング装置の第2実施例の要部構成を示す断面図である。
【図7】本発明に係るポリッシング装置の第3実施例の要部構成を示す断面図である。
【図8】ポリッシング対象物の周縁部を内部側より意図的に研磨量を少なくする場合の例を示す説明図である。
【図9】従来のポリッシング装置の概略構造を示す断面図である。
【図10】従来のポリッシング装置における半導体ウエハと研磨布と弾性マットとの状態を示す拡大断面図である。
【図11】半導体ウエハの半径方向位置と研磨圧力との関係及び半径方向位置と膜厚との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係るポリッシング装置の一実施例を図4及び図5を参照して説明する。図4はポリッシング装置の全体構成を示す断面図であり、図5はポリッシング装置の要部構成を示す断面図である。
図4および図5において、符号1はトップリングであり、トップリング1の下面には弾性マット2が貼着されている。またトップリング1の外周部にはガイドリング3が配置されている。またトップリング1の下方には、上面に研磨布6を貼ったターンテーブル5が設置されている。
【0037】
前記トップリング1はボール7を介してトップリングシャフト8に接続されており、このトップリングシャフト8はトップリングヘッド9に固定されたトップリング用エアシリンダ10に連結されており、このトップリング用エアシリンダ10によってトップリングシャフト8は上下動し、トップリング1の下端面に保持された半導体ウエハ4をターンテーブル5に押圧するようになっている。
【0038】
また、トップリングシャフト8はキー(図示せず)を介して回転筒11に連結されており、この回転筒11はその外周部にタイミングプーリ12を有している。そして、タイミングプーリ12は、タイミングベルト13を介して、トップリングヘッド9に固定されたトップリング用モータ14に設けられたタイミングプーリ15に接続されている。したがって、トップリング用モータ14を回転駆動することによってタイミングプーリ15、タイミングベルト13およびタイミングプーリ12を介して回転筒11及びトップリングシャフト8が一体に回転し、トップリング1が回転する。トップリングヘッド9は、フレーム(図示せず)に固定支持されたトップリングヘッドシャフト16によって支持されている。
【0039】
一方、ガイドリング3はキー18を介してトップリング1に連結されており、ガイドリング3はトップリング1に対して上下動自在であるとともにトップリング1と一体に回転可能になっている。そして、ガイドリング3はベアリング19を保持したガイドリング押え20およびシャフト21を介してガイドリング用エアシリンダ22に連結されている。ガイドリング用エアシリンダ22はトップリングヘッド9に固定されている。ガイドリング用エアシリンダ22は円周上に複数個(本実施例では3個)配設されている。
【0040】
トップリング用エアシリンダ10及びガイドリング用エアシリンダ22は、それぞれレギュレータR1,R2を介して圧縮空気源24に接続されている。そして、レギュレータR1によってトップリング用エアシリンダ10へ供給する空気圧を調整することによりトップリング1が半導体ウエハ4を研磨布6に押圧する押圧力を調整することができ、レギュレータR2によってガイドリング用エアシリンダ22へ供給する空気圧を調整することによりガイドリング3が研磨布6を押圧する押圧力を調整することができる。
【0041】
また、ターンテーブル5の上方には砥液供給ノズル25が設置されており、砥液供給ノズル25によってターンテーブル5上の研磨布6上に研磨砥液Qが供給されるようになっている。
【0042】
上記構成のポリッシング装置において、トップリング1の下面に半導体ウエハ4を保持させ、トップリング用エアシリンダ10を作動させてトップリング1をターンテーブル5に向かって押圧し、回転しているターンテーブル5の上面の研磨布6に半導体ウエハ4を押圧する。一方、砥液供給ノズル25から研磨砥液Qを流すことにより、研磨布6に研磨砥液Qが保持されており、半導体ウエハ4の研磨される面(下面)と研磨布6の間に研磨砥液Qが存在した状態でポリッシングが行われる。
【0043】
トップリング用エアシリンダ10によるトップリング1の押圧力に応じてガイドリング用エアシリンダ22によるガイドリング3の研磨布6への押圧力を適宜調整して半導体ウエハ4の研磨を行う。研磨中にレギュレータR1によってトップリング1が半導体ウエハ4をターンテーブル5上の研磨布6に押圧する押圧力F1を変更でき、レギュレータR2によってガイドリング3が研磨布6を押圧する押圧力F2 を変更できる(図1参照)。したがって、研磨中に、ガイドリング3が研磨布6を押圧する押圧力F2を、トップリング1が半導体ウエハ4を研磨布6に押圧する押圧力F1に応じて変更することができる。この押圧力F1に対する押圧力F2を適宜調整することにより、半導体ウエハ4の中心部から周縁部、さらには半導体ウエハ4の外側にあるガイドリング3の外周部までの研磨圧力の分布が連続かつ均一になる。そのため、半導体ウエハ4の周縁部における研磨量の過不足を防止することができる。
【0044】
また半導体ウエハ4の周縁部で内部側より意図的に研磨量を多くし又は逆に少なくしたい場合には、ガイドリングリングの押圧力F2をトップリングの押圧力F1に基づいて最適な値に選択することにより、半導体ウエハ4の周縁部の研磨量を意図的に増減できる。
【0045】
図6は本発明のポリッシング装置の第2実施例を示す図である。
本実施例においては、トップリング1の外周部にあるガイドリング3はガイドリング押え26により保持されており、ガイドリング押え26は複数のローラ27により押圧されるようになっている。ローラ27はシャフト28を介してトップリングヘッド9に固定されたガイドリング用エアシリンダ22に連結されている。ガイドリング3がトップリング1に対して上下動自在でトップリング1とともに回転できることは、図4及び図5に示す実施例と同様である。
【0046】
本実施例においては、トップリング1の回転中にローラ27はガイドリング押え26と摺接して自身の軸心回わりに回転し、ガイドリング3はローラ27によってガイドリング押え26を介して下方に押圧される。その結果、ガイドリング3は研磨布6を所定の押圧力で押圧する。その他の構成は図4および図5に示す実施例と同様である。また作用効果も図4および図5に示す実施例と同様である。
上述のように、第1実施例及び第2実施例においては、トップリングシャフト8の周囲に別個に設けられ、トップリングシャフト8と一緒に回転することはしない部材21及び28を介してガイドリング押圧力が伝達されるので、研磨中すなわちトップリングが回転中であっても、ガイドリング押圧力を変更することが可能である。
【0047】
図7は本発明のポリッシング装置の第3実施例を示す図である。
本実施例においては、トップリング1の外周部にあるガイドリング3は、トップリング1に固定されたガイドリング用エアシリンダ31に連結されている。ガイドリング用エアシリンダ31はトップリングシャフト8内の連通路8a、ロータリージョイント32、レギュレータR2を介して圧縮空気源24に接続されている。
【0048】
またトップリング用エアシリンダ10は図4の実施例と同様にレギュレータR1を介して圧縮空気源24に接続されている。またレギュレータR1,R2は演算器33に接続されている。
【0049】
本実施例においても、半導体ウエハ4はトップリング用エアシリンダ10によるトップリング1の押圧力によって研磨布6に押圧されて研磨される。またガイドリング3はガイドリング用エアシリンダ31によって研磨布6に押圧される。ガイドリング3を研磨布6に押圧すると、ガイドリング3は反力を受けて、トップリング1の押圧力に影響を与えることになる。そのため、本実施例においては、トップリング1の押圧力とガイドリング3の押圧力の設定値を演算器33に入力し、演算器33によってトップリング用エアシリンダ10およびガイドリング用エアシリンダ31に与える空気圧を演算し、レギュレータR1,R2を調整して、所定の空気圧のエアをトップリング用エアシリンダ10およびガイドリング用エアシリンダ31にそれぞれ供給する。これによってトップリング1の押圧力とガイドリング3の押圧力としてそれぞれ所望の値が得られるようになっている。即ち、トップリング1の押圧力とガイドリング3の押圧力は、研磨中にそれぞれ影響を受けることなく独立に変更可能になっている。その他の構成は図4および図5に示す実施例と同様である。また作用効果も図4および図5に示す実施例と同様である。この第3実施例においても、ロータリージョイントを介して圧縮空気を供給しているので、研磨中すなわちトップリングが回転中であっても、ガイドリング押圧力を変更することができる。
【0050】
図8はポリッシング対象物の周縁部を内部側より意図的に研磨量を少なくする場合の例を示す説明図である。
図8に示す例では、半導体デバイスは、シリコンからなる基材40と、基材40上の酸化膜41と、酸化膜41上の金属膜42と、金属膜42上の酸化膜43とから構成されている。図8(a)は研磨前の状態を示し、図8(b)は研磨後の状態を示す。研磨後には、半導体デバイスの周縁部で金属膜42が露出している。研磨後に薬液洗浄すると、図8(c)に示すように金属膜42が薬液によって侵される。金属膜42を薬液に侵されないようにするためには、図8(d)に示すように周縁部の研磨量を内部側より少なくして周縁部の酸化膜43を厚く残すことが好ましい。このような要請に本発明は好適である。
【0051】
なお、以上の実施例はポリッシング対象物として半導体ウエハを用いた例について説明したが、ポリッシング対象物としてはガラス製品、液晶板、或いはセラミック製品等にも適用可能であるのは勿論である。またトップリング1およびガイドリング3の押圧手段としてエアシリンダを説明したが、液体圧シリンダでも勿論よい。さらにガイドリングの押圧手段として機械的手段を説明したが、ピエゾ素子や電磁気力を使用した電気的手段であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 トップリング
2 弾性マット
3 ガイドリング
4 半導体ウエハ
5 ターンテーブル
6 研磨布
7 ボール
8 トップリングシャフト
9 トップリングヘッド
10 トップリング用エアシリンダ
18 キー
19 ベアリング
20 ガイドリング押え
22 ガイドリング用エアシリンダ
24 圧縮空気源
25 砥液供給ノズル
26 ガイドリング押え
27 ローラ
31 ガイドリング用エアシリンダ
32 ロータリージョイント
33 演算器
R1,R2 レギュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に研磨布を貼ったテーブルと、
ポリッシング対象物を保持するトップリングと、
前記ポリッシング対象物に押圧力を与えるための流体圧を調節する第1のレギュレータと、
前記トップリングの周囲に上下動自在に配置されたガイドリングと、
前記ガイドリングに押圧力を与えるための流体圧を調節する第2のレギュレータと、
前記トップリングを回転させる際の軸中心となるトップリングシャフトと、
該ガイドリングを保持するガイドリング押えと、
前記トップリングシャフトの周囲に別個に設けられ、ポリッシング対象物を研磨する際、前記トップリングシャフトとは一緒に回転しないよう構成された部材を備え、
前記第2のレギュレータからガイドリング押えを介してガイドリングへ行われる押圧力の伝達が、前記トップリングシャフトの周囲に別個に設けられた部材を介して行われることを特徴とするポリッシング装置。
【請求項2】
上面に研磨布を貼ったテーブルと、
ポリッシング対象物を保持するトップリングと、
弾性を有し前記ポリッシング対象物の上面と接して該ポリッシング対象物を均一に押圧する弾性体と、
前記ポリッシング対象物に押圧力を与えるための流体圧を調節するための第1の流体圧調節機構と、
前記トップリングの周囲に上下動自在に配置される前記研磨布を押圧するためのガイドリングと、
前記ガイドリングに押圧力を与えるための流体圧を調節するための第2の流体圧調節機構と、
前記ガイドリングに押圧力を与えるために該ガイドリングと前記第2の流体圧調節機構との間に設けられたガイドリング押えとを有することを特徴とするポリッシング装置。
【請求項3】
前記第1の流体圧調節機構及び第2の流体圧調節機構に接続される流体源を有することを特徴とする請求項2記載のポリッシング装置。
【請求項4】
上面に研磨布を貼ったテーブルと、
酸化膜を有するポリッシング対象物を保持するトップリングと、
前記ポリッシング対象物に押圧力F1を与えるための第1の流体圧を調整する第1のレギュレータと、
前記トップリングの周囲に上下動自在に配置されて前記研磨布を押圧するガイドリングと、
前記ガイドリングに押圧力F2を与えるための第2の流体圧を調整する第2のレギュレータを備え、
前記ポリッシング対象物を研磨する際、前記第1の流体圧と前記第2の流体圧は、前記ポリッシング対象物への押圧力F1よりも前記ガイドリングへの押圧力F2を小さくして、前記ポリッシング対象物の周縁部の研磨量を該ポリッシング対象物の内部側より少なくして該ポリッシング対象物の周縁部の酸化膜を厚く残すように前記第1のレギュレータと前記第2のレギュレータにより調整されることを特徴とするポリッシング装置。
【請求項5】
上面に研磨布を貼ったテーブルとトップリングとの間にポリッシング対象物を介在させて押圧し、研磨するポリッシング方法であって、
前記トップリングに前記ポリッシング対象物を保持したまま該トップリングをトップリングシャフトの軸中心に回転させ、調節された第1の流体圧を第1の押圧機構に供給してポリッシング対象物を前記研磨布に対して押圧し、
前記第1の流体圧と独立に調整された第2の流体圧を第2の押圧機構に供給し、該第2の押圧機構と前記ガイドリングとの間に設けられたガイドリング押えを介して、ガイドリングを前記研磨布に対して押圧することを特徴とするポリッシング方法。
【請求項6】
上下動自在に配置されたガイドリングの内側に配置され、ポリッシング対象物の上面と接して該ポリッシング対象物を均一に押圧する、弾性を有する弾性マットを有し、
ガイドリング押えを介して前記ガイドリングを前記研磨布に対して押圧する押圧手段とは独立に、研磨布に対して押圧する押圧手段によって下方に押圧されるようにされたトップリングを用いてポリッシング対象物をポリッシングする方法において、
前記ポリッシング対象物を研磨する際、前記ポリッシング対象物への押圧力F1よりもガイドリングへの押圧力F2を小さくして、前記ポリッシング対象物の周縁部の研磨量を該ポリッシング対象物の内部側より少なくして該ポリッシング対象物の周縁部の酸化膜を厚く残すようにしたことを特徴とするポリッシング方法。
【請求項7】
上下動自在に配置されたガイドリングの内側に配置され、ポリッシング対象物の上面と接して該ポリッシング対象物を均一に押圧する、弾性を有する弾性マットと、
トップリングを軸中心に回転させるためのトップリングシャフトと、
前記トップリングシャフトと接合するボールとを有し、
前記ガイドリングを前記研磨布に対して押圧する押圧手段とは独立に、研磨布に対して押圧する押圧手段を有するトップリングを用いてポリッシング対象物をポリッシングする方法において、
前記ポリッシング対象物を研磨する際、前記ポリッシング対象物への押圧力F1よりもガイドリングへの押圧力F2を小さくして、前記ポリッシング対象物の周縁部の研磨量を該ポリッシング対象物の内部側より少なくして該ポリッシング対象物の周縁部の酸化膜を厚く残すようにしたことを特徴とするポリッシング方法。
【請求項8】
前記トップリングと前記ガイドリングとが、一体に上下動および回転することができるように構成されたことを特徴とする請求項6又は7に記載のポリッシング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−201015(P2011−201015A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158797(P2011−158797)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【分割の表示】特願2008−161081(P2008−161081)の分割
【原出願日】平成8年2月14日(1996.2.14)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】