説明

ロボットおよびその制御方法

【課題】部品組立の時間が短縮でき、生産性の高いロボットおよびその制御方法を提供すること。
【解決手段】ハンド部165の指部166で第1の部品210を把持する際に、摂動アクチュエーター164によって摂動トルクを与えながら把持作業を行うことができ、ハンド部165の指部166と第1の部品210とがよく馴染み、第1の部品210の把持精度を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持部、ナット締め具、溶接ガン、スプレーガン等のエンドエフェクターに加わる力を検出する力覚センサーを備えたロボットおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品の組立作業を自動化をするためのロボットとして、部品を把持するチャック部とアーム部との間に、平行移動方向、角度方向のズレを吸収するコンプライアンス素子としてのRCC(Remote Center Compliance)と、チャック部から加わる力とトルクとを検出する力覚センサーとを備えている部品自動組立装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ロボットが、被対象物である第1の部品を第2の部品へ挿入する作業では、予め部品の寸法や位置、作業のサイクルタイム等をコマンドとしてロボットの制御部へ入力しておく。作業を開始すると、ロボットのアーム部やハンド部は、初期位置から第1の部品を取りにいくために移動し、ハンド部が下降しハンド部が第1の部品を把持する。次に、第1の部品を把持したままハンド部を上昇させ、第1の部品の挿入位置までアーム部を移動させ、第2の部品と接触するまでハンド部を下降させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−241733号公報(5頁〜6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この時に、第1の部品と第2の部品との相対位置が、想定内に収まっていれば、挿入作業はうまくいくが、各種の理由から両者の相対位置にはバラツキが生じる。その結果として、挿入作業がうまくいかないことがある。一旦、こうした不具合が生じると、人間が復旧作業をすることとなり生産性は著しく低下する。
図15に、不具合の状態を説明する図を示した。(a)は第1の部品210を第2の部品220に挿入する前の状態、(b)は挿入作業が良好にいき、うまく第1の部品210が第2の部品220に挿入される状態、(c)は第1の部品210と第2の部品220との位置が少しズレており、両者が接触してハンド部160と第1の部品210との間で滑りを生じている状態、(d)は第1の部品210が第2の部品220に少し斜めに挿入されている状態をそれぞれ表している図である。
【0005】
(c)の位置ズレに対して従来のロボット作業では、ひたすら位置精度を向上させ、位置のフィードバックを繰り返し行うことに注力してきた。しかしながら、部品を搬送する位置精度を向上させることや、部品をパレットなどに並べる位置精度を向上させることには限界があった。さらに、部品をロボットのハンド部160が把持する際の把持位置にもバラツキが生じることで、想定している部品の中心位置と実際の部品の中心位置に差が生じることもあった。
(d)の斜めになった場合には、ロボットのハンド部160に力覚センサーや平行移動のズレや角度のズレを吸収するためのコンプライアンス素子を備えれば、力覚センサーの信号をフィードバックすることで斜めになった状態を補正しながら挿入を行うことが可能になる。これと似ている作業として、第1の部品210と第2の部品220の隙間が小さい圧入作業の場合にも、同様な制御によって行うことができる。
【0006】
しかしながら、位置ズレによって挿入ができないのか、斜めになって挿入ができないかを判断してそれを補正するには時間がかかり、ロボットによる部品組立の自動化による生産性は、人間の手作業に比べて高くはなっていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
被対象物を把持するハンド部と、前記ハンド部を振動させる摂動アクチュエーターと、前記ハンド部に加わる力を検出する力覚センサーと、前記ハンド部を移動させるアーム部と、前記力覚センサーの出力に基づいて、前記摂動アクチュエーターを前記ハンド部または前記アーム部の駆動と同時に駆動制御する制御手段とを備えたことを特徴とするロボット。
【0009】
この適用例によれば、ハンド部で被対象物を把持する際に、摂動アクチュエーターによって摂動トルクを与えながら把持作業を行うことができ、ハンド部と被対象物とがよく馴染み、被対象物の把持精度が向上する。
また、被対象物の位置合わせの際に、摂動アクチュエーターによって摂動トルクを与えながら、コンプライアンス機能を持つ力覚センサーで、ハンド部に加わる力を検出し、摂動アクチュエーターをハンド部またはアーム部の駆動と同時に駆動制御することにより、被対象物の位置合わせが容易に行える。
したがって、部品組立の時間が短く、生産性の向上したロボットが得られる。
【0010】
[適用例2]
上記ロボットであって、前記力覚センサーは、ヨークを備えた磁界発生部で形成される磁気回路を有する第1の基体と、前記磁気回路を横切る磁気センサーを有する第2の基体と、前記第1の基体と前記第2の基体との間に介在し、両者の間に加わる荷重によって弾性変形する弾性部材と、前記磁気センサーの位置調整手段または前記ヨークのパーミアンス調整手段のうち少なくとも一方とを備えていることを特徴とするロボット。
この適用例では、磁気センサーの位置調整手段または磁気回路を構成するヨークのパーミアンス調整手段のうち少なくとも一方を備えているので、組立後において磁気回路と磁気センサーとの相対位置または磁気回路の少なくとも一方の調整が可能である。第1の基体と第2の基体とを弾性部材を介して組立てた際に、弾性部材の弾性変形等によって、第1の基体と第2の基体との相対位置がずれることにより、磁気回路と磁気センサーとの相対位置がずれて組立てられても、磁気回路中の磁気センサーの位置または磁気回路の少なくとも一方を調整できる。したがって、感度や加わる力に応じた出力のばらつきの少ない力覚センサーが得られる。このような力覚センサーによりハンド部および摂動アクチュエーターに加わる力をより正確に検出できるので、被対象物の位置合わせがより容易に行え、部品組立の時間が短く、より生産性の向上したロボットが得られる。
【0011】
[適用例3]
上記ロボットであって、前記ヨークの形状は、前記磁気センサーの出力と前記荷重によって前記磁気回路中を移動する前記磁気センサーの移動距離とが比例関係になるような前記磁気回路を形成する形状であることを特徴とするロボット。
この適用例では、磁気回路が、磁気センサーの出力と磁気センサーの移動距離とが比例関係になるように、ヨークの形状が形成されている。したがって、磁気センサーがヨークによって形成された磁気回路中のどの位置にあっても、感度や力に応じた出力が一定の力覚センサーが得られる。このような力覚センサーによりハンド部および摂動アクチュエーターに加わる力をより正確に検出できるので、被対象物の位置合わせがより容易に行え、部品組立の時間が短く、より生産性の向上したロボットが得られる。
【0012】
[適用例4]
上記ロボットであって、前記磁界発生部は、永久磁石を備えていることを特徴とするロボット。
この適用例では、磁界発生部に、配線の不要な永久磁石を用いているので、構造が簡単で小型の製造コストの低減した力覚センサーが得られる。このような力覚センサーを備えているので、製造コストの低い生産性の向上したロボットが得られる。
【0013】
[適用例5]
被対象物を把持するハンド部と、前記ハンド部を振動させる摂動アクチュエーターと、前記ハンド部および前記摂動アクチュエーターに加わる力を検出する力覚センサーと、前記ハンド部を移動させるアーム部とを備えたロボットの制御方法であって、前記摂動アクチュエーターの駆動信号と、前記力覚センサーの出力信号とに基づいて、前記被対象物の接触状態を判断して、前記ハンド部の把持および前記アーム部の駆動制御を行うことを特徴とするロボットの制御方法。
【0014】
この適用例によれば、摂動アクチュエーターの駆動信号と、力覚センサーの出力信号とに基づいて、被対象物の接触状態を判断して、ハンド部の把持およびアーム部の駆動制御を行うので、被対象物の位置合わせが容易に行える。したがって、部品組立の時間が短く、生産性の向上したロボットの制御方法が得られる。
【0015】
[適用例6]
上記ロボットの制御方法であって、前記駆動制御は、前記摂動アクチュエーターの駆動周波数または振幅のうち少なくとも一方を変化させて制御することを特徴とするロボットの制御方法。
この適用例では、摂動アクチュエーターの駆動周波数または振幅のうち少なくとも一方を変化させることにより、駆動信号と出力信号の違いにより被対象物の接触位置、安定点等の制御のための情報が増える。したがって、被対象物の位置合わせがより容易に行え、部品組立の時間が短く、より生産性の向上したロボットの制御方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態におけるロボットの概略斜視図。
【図2】ロボットの全体構成図。
【図3】(a)は力覚センサーを有するハンド機構部の一例として側面図、(b)および(c)は、指部の例を示す(a)におけるA−A概略断面図。
【図4】偏重心錘を使った摂動アクチュエーターの概略側面図。
【図5】圧電素子を使った摂動アクチュエーターの概略側面図。
【図6】力覚センサーの概略図。(a)は概略平面図、(b)は、(a)におけるA−A概略断面図。
【図7】(a)は、力覚センサーの磁界発生部および磁気センサー付近の概略拡大断面図、(b)は、磁気センサーの出力電圧と磁界発生部からの距離との関係図。
【図8】磁気センサーがホール素子の場合の回路図。
【図9】ロボットの動作フローチャート図。
【図10】変形例における(a)は、力覚センサーの磁界発生部および磁気センサー付近の概略拡大断面図、(b)は、磁気センサーの出力電圧と磁界発生部からの距離との関係図。
【図11】弾性部材の圧縮特性を示した図。
【図12】第2実施形態における力覚センサーの概略図。(a)は概略平面図、(b)は、(a)におけるA−B−C−D−E−F概略断面図。
【図13】軸部の中心と物体の接触位置との関係を示した図。
【図14】第3実施形態における力覚センサーの概略図。(a)は概略平面図、(b)は、(a)におけるB−B概略断面図。
【図15】(a)は挿入前の状態を表す図、(b)は挿入作業が良好にいきうまく部品が挿入される状態を表す図、(c)では第1の部品と第2の部品の位置が少しズレており、両者が接触してハンド部と第1の部品との間で滑りを生じている状態を表す図、(d)では第1の部品と第2の部品とが少し斜めに挿入されている状態を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
(第1実施形態)
図1に本実施形態におけるロボット100の概略斜視図を、図2にロボット100の全体構成図を示した。
【0018】
図1および図2において、ロボット100は、コマンド入力部110と演算部120と制御手段としての制御部130と支持部140とアーム部150とハンド機構部160とを備えている。
アーム部150は、アクチュエーター151とアーム152とを備えている。ハンド機構部160は、アクチュエーター161とスライド軸162と力覚センサー163と摂動アクチュエーター164とハンド部165とを備えている。また、ハンド部165は、把持部としての2つの指部166を備えている。
【0019】
図1において、土台としての支持部140は、例えば、組立装置または床等に固定されている。ロボット100は、水平多関節ロボットであり、アーム152は、アクチュエーター151によって水平方向に動作する。
アーム部150の先端には、ハンド機構部160が設けられている。ハンド機構部160のスライド軸162は、アクチュエーター161によって、縦方向(垂直方向)に動く。また、スライド軸162は、アクチュエーター161によって、回転してもよい。
スライド軸162には、力覚センサー163が設けられ、その先に摂動アクチュエーター164、ハンド部165が設けられている。ハンド部165が先端に位置し、ハンド部165と力覚センサー163との間に、摂動アクチュエーター164が設けられている。
【0020】
ロボット100は、例えば、第1の部品210を第2の部品220へ挿入する作業を行う。第2の部品220は、搬送部230に設けられた位置決め221によって位置決めされ、挿入作業が行われる挿入位置240に順次送られてくる。
図1には、搬送部230によって、第2の部品220が搬送されてくる方向をX軸、スライド軸162の移動方向をZ軸として、X軸、Y軸、Z軸からなる直交座標を示した。
一方、ロボット100のアーム部150およびハンド部165は、例えば、パレット211に並べられた第1の部品210を取りにいくために、X−Y平面内の水平方向に移動し、ハンド部165がZ軸方向に下降し、ハンド部165の指部166が第1の部品210を把持する。ロボット100は、第1の部品210を把持したままハンド部165をZ軸方向に上昇させ、第1の部品210の挿入位置240までアーム152を水平方向に移動させ、ハンド部165をZ軸方向に下降させる。
【0021】
以下に、ロボット動作について詳しく述べる。
図2において、コマンド入力部110では、オペレーターまたは他のシステム等から被対象物である第1の部品210および第2の部品220の位置やロボット動作の命令を入力する。
演算部120では、コマンドまたは力覚センサー163により得られた信号に基づいてロボット100のアーム部150およびハンド部165の動作目標値を決める。
制御部130では、動作目標値に基づきアーム部150およびハンド機構部160のサーボ制御を行う。
【0022】
以下に、演算部120の動作を説明する。演算部120は、動作目標値演算部121と動作目標値指令部122と比較部123と接触位置演算部124とを備えている。
動作目標値演算部121は、コマンド入力部110からのコマンドに基づいて、被対象物までのアーム部150およびハンド機構部160の移動量や角度を演算する。
動作目標値指令部122は、演算された移動量を、それぞれアーム部150およびハンド機構部160のサーボ制御部131,132へ出力し、アーム部150およびハンド機構部160のサーボ制御が行われる。
また、接触位置演算部124は、力覚センサー163により得られた信号を基にして、後に述べる方法での被対象物とハンド部165との接触位置を演算する。比較部123は、この接触位置とハンド部165の中心部とが一致しているか否か判断し、その結果を動作目標値指令部122へ入力する。動作目標値指令部122はこの比較結果に基づき、新たな動作目標値を制御部130へ送り、アーム部150およびハンド機構部160の移動を行わせる。
【0023】
次に、ロボット100のハンド機構部160の動作を詳しく説明する。
図3(a)に力覚センサー163を有するハンド機構部160の一例として側面図を示す。
図3(b)および(c)には、指部166の例として、図3(a)におけるA−A概略断面図を2例示した。ハンド部165および指部166は、いずれも制御部130により移動、物体の把持、その他の動作の制御が行われる。
【0024】
図3(a)において、2つの指部166は相互に接近および離隔する方向に開閉され、両側から挟むようにして被対象物である第1の部品210を把持する。
図3(b)は、第1の部品210が円筒形の場合における指部166の概略断面図である。指部166には、円筒部を把持するためにV溝167が形成され、第1の部品210が垂直に把持し易い構造となっている。
【0025】
図3(c)は、第1の部品210が矩形状の場合の指部166の概略断面図である。指部166には、矩形部を把持するためにテーパー部168を有する凸部169が4隅に形成されている。
【0026】
摂動アクチュエーター164には、周知のものを用いることができる。
図4に摂動アクチュエーター164の一例として摂動アクチュエーター300の概略側面図を示した。
図4において、摂動アクチュエーター300は、回転軸310と円柱形の偏重心錘320と歯車輪列330と第1のラジアル軸受340と第2のラジアル軸受350とスラスト軸受360とモーター370とこれらを収める容器380とを備えている。
【0027】
回転軸310の一方側には、偏重心錘320と歯車輪列330の歯車331とが取り付けられている。回転軸310の他方側は、第1のラジアル軸受340によって支えられている。また、偏重心錘320の側面は、第2のラジアル軸受350に支えられている。さらに、偏重心錘320の底面は、スラスト軸受360によって支えられている。
モーター370には、歯車332が取り付けられ、歯車331と噛みあっている。歯車331と歯車332とで、歯車輪列330を構成している。ここで、歯車輪列330は、3以上の歯車から構成されていてもよい。
【0028】
偏重心錘320の一部には、重さの異なる部分321が設けられ、重心位置が偏っている。
摂動アクチュエーター300は、偏重心錘320を歯車輪列330を介してモーター370で回転させることによって振動を起こし、摂動トルクを生じるものである。
振動の周波数は、モーター370の回転数と歯車輪列330によって決まり、図3に示したハンド部165の大きさや重量などによって適正な値を選ぶ。また駆動電圧も同様である。
【0029】
図3において、この摂動アクチュエーター300(164)によって生じる摂動トルクにより、摂動アクチュエーター300に取り付けられたハンド部165が振動して、第1の部品210と第2の部品220の嵌合部も振動し、嵌合の中心からずれている場合には、力覚センサー163にその信号が生じることになる。その信号がかなり大きい場合には、ハンド部165の位置にフィードバックをかけて補正する。その信号が、力覚センサー163のコンプライアンスで吸収できる範囲であれば、次の嵌合(挿入)のステップへ移行できる。
【0030】
図5には、摂動アクチュエーター164の一例として、摂動アクチュエーター400の概略側面図を示した。
図5において、摂動アクチュエーター400は、圧電素子410と上下の板421,422と駆動回路420と弾性体430とを備えている。
摂動アクチュエーター400は、圧電素子410を駆動回路420の交流電圧で駆動することによって振動を起こし、摂動アクチュエーター300と同様に摂動トルクを生じるものである。
【0031】
上下の板421,422は、弾性体430で結合されており、上下の板421,422の間に圧電素子410が配置されている。圧電素子410は、駆動回路420からの駆動信号によって振動する。圧電素子410は単層のものより積層された圧電素子410の方が変位量を大きく取れ、また発生する力も大きくなる。積層された圧電素子410の変位はその積層数や積層の厚さが大きければ、変位量も大きくなる。ハンド部165の大きさや重量を考慮して、十分な変位量がとれるように選ぶ。
【0032】
図6に、本実施形態における力覚センサー163の一例として、力覚センサー10の概略図を示した。(a)は力覚センサー10の概略平面図、(b)は(a)におけるA−A概略断面図である。
【0033】
図6において、力覚センサー10は、第1の基体としての軸部1と弾性部材2と第2の基体としてのハウジング3と4つの磁界発生部4と4つの磁気センサー5と磁気センサー5の位置調整手段50とを備えている。
軸部1の中程にはリング状の凸部11が形成されている。また、ハウジング3はリング状でその内面には、溝31が形成されている。軸部1の凸部11が弾性部材2を介してハウジング3の溝31に嵌め込まれている。したがって、弾性部材2は、軸部1とハウジング3との間に介在している。
図には、軸部1の軸方向をZ軸として、力を検知する方向をX軸方向、Y軸方向として示した。
【0034】
また、凸部11と溝31との間のZ軸方向には、スラスト方向の受け6A,6Bが配置され、軸部1のZ軸方向への移動あるいは軸部1のねじれるような変形はしにくくなっている。
したがって、本実施形態における力覚センサー10は、力のモーメントを検出しない力覚センサーである。
【0035】
軸部1の凸部11の外周111には、軸部1の中心1Cを挟んで、X軸方向に2ヶ所、Y軸方向に2ヶ所、凹部12が形成され、凹部12の底面125には磁界発生部4が設けられている。また、磁界発生部4に対向するハウジング3の溝31の位置には、凹部32が形成され、凹部32の底面325には、磁気センサー5が配置されている。
【0036】
軸部1やハウジング3は、弾性部材2よりも変形し難く、しかも非磁性の材料で構成される。例えば、金属ではアルミニウム、非磁性のステンレス、黄銅、亜鉛、マグネシウムなど、その他セラミックや硬い樹脂なども使用することができる。
弾性部材2としては、シリコンゴム、フッ素系ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴムなど、およびこれらを発泡成形させた、より変形量が大きく取れるものなどを、それぞれの必要な荷重や変形量に応じて適宜選択することができる。
【0037】
磁界発生部4には、電磁石、永久磁石等を用いることができるが、配線等が不要で構造が簡単、小型にできる点から永久磁石が好ましい。
永久磁石としては、フェライト系磁石、NdFeB系磁石、SmCo系磁石、アルニコ系磁石などが適している。永久磁石の数は1つでも2つでも良い。
磁気センサー5としては、ホール素子や磁気抵抗素子の半導体型のもの、フラックスゲート式のものなどが利用できる。
【0038】
力覚センサー10では、軸部1が、X軸方向又はY軸方向の力を受けると、軸部1が弾性部材2を変形させるように作用し、その変形量に応じた出力が生じる仕組みとなっている。
例えば、図6(b)中に示した白抜き矢印で示したように、軸部1の+X軸方向に力Fxが加えられた時には、弾性部材2にも+X軸方向に力が加わり、弾性部材2が変形し、軸部1は+X方向にある磁気センサー5に近づく。軸部1の移動に伴い磁界発生部4が移動すると、磁気センサー5を取り巻く磁界も変化し、4つの磁気センサー5の出力電圧は変化する。
【0039】
ここで、+X軸方向にある磁気センサー5を磁気センサー(+X)、−X軸方向にある磁気センサー5を磁気センサー(−X)、+Y軸方向にある磁気センサー5を磁気センサー(+Y)、−Y軸方向にある磁気センサー5を磁気センサー(−Y)とする。
例えば、+X軸方向に力Fxが加わる前の出力電圧をV0とすると、+X軸方向に力Fxが加わった後の磁気センサー5の出力電圧V+X、V-X、V+Y、V-Yは、以下のとおり変化する。
磁気センサー(+X)の出力電圧V+X>V0
磁気センサー(−X)の出力電圧V-X<V0
磁気センサー(+Y)の出力電圧V+Y=V0
磁気センサー(−Y)の出力電圧V-Y=V0
これらの出力電圧の比較から、力覚センサー10として、+X軸方向への力Fxが作用したと判断される。力Fxの大きさは、予め力の大きさに応じて出力電圧Vの大きさを測定しておくことによって、出力電圧Vが分かれば、力Fxの大きさが分かる。
【0040】
+Y軸方向の力Fyについても同様であり、以下のとおり変化する。
磁気センサー(+X)の出力電圧V+X=V0
磁気センサー(−X)の出力電圧V-X=V0
磁気センサー(+Y)の出力電圧V+Y>V0
磁気センサー(−Y)の出力電圧V-Y<V0
X軸方向とY軸方向の出力電圧の合成から、斜めからの力も計算することが出来る。
【0041】
図7(a)に、力覚センサー10の磁界発生部4および磁気センサー5付近の概略拡大断面図を示した。
図7(b)に、磁気センサー5の出力電圧と磁気センサー5の初期位置L0としたときの磁界発生部4に対する相対移動距離との関係図を示した。ここでは、磁界発生部4に向かう方向を正方向として表している。以下、図に基づいて検出原理を説明する。
図7(a)において、磁界発生部4と磁気センサー5とは、弾性部材2を介在させ、対向して配置されている。磁界発生部4は、2つの永久磁石41,42とヨーク43から構成されており、磁束44が軸部1の凸部11の外周側へ広がるように流れて再び戻るように磁気回路45が形成されている。
【0042】
この磁束44を磁気センサー5で検出し、電圧として出力する。
軸部1が磁気センサー5に向かって力を受けると、弾性部材2が変形して、磁界発生部4と磁気センサー5との距離が小さくなり、磁気センサー5の出力は磁束44が増えて大きくなる。結果として、力を電圧として検出することができる。
図7(b)において、磁気センサー5の初期位置L0からの磁界発生部4に対する相対移動距離が大きくなる(磁界発生部4と磁気センサー5との距離が小さくなる)と、磁気センサー5の出力電圧が大きくなる。
【0043】
図8に、磁気センサー5がホール素子の場合の回路例を回路図として示した。OPAmpはオペレーションアンプを、Trはトランジスターを、Rは抵抗を表している。
回路は、定電流部と計装アンプ部とバランス調整部とを備えている。これら各部の回路は周知の回路を用いることができ、また、具体的に図に示した回路に限らない。
【0044】
ホール素子では、以下の原理で磁束44の密度である磁界の強度を測定する。
p型またはn型の半導体試料において、例えば、x方向に電流を流し、y方向に磁場を加える。この時半導体試料を流れている荷電粒子(キャリア)は磁場によるローレンツ力を受けてz方向に動く。これによって電流と磁場の両方に直交する方向に電場(ホール電場)が現れる。これがホール効果であり、ホール素子はホール効果を利用して、磁界の強度を測定できる。
ホール素子に利用される半導体としては、ガリウム・ヒ素(GaAs)、インジウム・ヒ素(InAs)、インジウム・アンチモン(InSb)などであり、インジウム・アンチモンは高感度だが温度による影響を受け易く、ガリウム・ヒ素は温度による影響を受け難い等の特徴があり、用途によって使い分けることができる。
【0045】
精度良く磁界を測定しようとすると、ホール電流は一定である方が良く、定電流部によってホール電流を一定とする。ホール電流は抵抗Rhによって決めることができる。
ホール素子の出力部には、ホール電圧が発生するが、その電圧は小さいので、計装アンプ部によって増幅される。計装アンプ部は、1対の差動入力端子と基準端子を電位基準とするシングルエンド出力を持っており、入力インピーダンスが高く、同相信号除去比(CMR:COMMON MODE REJECTION)が70dB〜100dB程度あり優れている。
計装アンプ部の出力電圧Voutは、ホール電圧Vhと計装アンプ部のゲインによって式(1)のように表される。
【0046】
【数1】

【0047】
以上示したように、磁界に比例したホール電圧Vhが出力として得られる。また、計装アンプ部によって増幅されたホール電圧Vhのゼロ点がずれている場合には、バランス調整部によって調整することが出来る。
永久磁石41,42の材質や寸法・形状などを適切に設計することで、2つの永久磁石41,42に挟まれた空間の磁気回路である磁界勾配の傾きを加減することができる。
また、磁気センサー5の位置調整手段50によって、磁気センサー5の位置を磁束44の分布に対して移動させることができる。位置調整手段50としては、例えば、ネジ、マイクロメーター等を用いて、機械的に磁気センサー5の位置をX、Y、Z軸方向に調整することができる。
【0048】
次に、ロボット100の制御方法について、制御の流れを図1および図2と図9に示すロボット100の動作フローチャート図に基づいて説明する。
図1、図2および図9において、作業開始によって、演算部120は、コマンド入力部110からのコマンド入力(目標設定)を受け、その内容を解析して第1の部品210までの動作量である動作目標値を演算する。
次に、第1の部品210の把持命令によって、決定された動作目標値にしたがってアーム152をパレット211の把持位置へと移動する。この動作は、アーム部150のサーボ制御部132により行われる。
【0049】
次に、ハンド部165が、第1の部品210の把持動作を行う。この動作は、ハンド機構部160のサーボ制御部131により行われる。具体的には、ハンド部165を下降させ、第1の部品210を把持させる。このとき、摂動アクチュエーター164によって摂動させながら把持を行う。ハンド部165による把持は、摂動アクチュエーター164の駆動周波数または振幅のうち少なくとも一方を変化させて制御する。
【0050】
次に、第1の部品210の挿入位置240への移動命令によって、ハンド部165を上昇させ、挿入位置240へ移動させ、ハンド部165を下降させる。このときも、摂動アクチュエーター164の駆動周波数または振幅のうち少なくとも一方を変化させる。
ハンド機構部160に設けられた力覚センサー163が、センサー信号を出力する。出力されたセンサー信号は、接触位置演算部124に入力され、第1の部品210と第2の部品220との接触位置や角度を演算する。
【0051】
次に、演算された接触位置や角度の値は、比較部123へ入力され、第1の部品210の中心位置と第2の部品220の中心位置とが一致しているか否かが判断される。ここで、第1の部品210の中心位置と第2の部品220の中心位置とが一致している場合は、挿入動作へ移行する。
【0052】
一方、第1の部品210の中心位置と第2の部品220の中心位置とが一致していない場合は、ハンド部165の位置合わせのためのアーム152の角度の補正値を演算し、その補正値をアーム152のサーボ制御部132へ、ハンド部165の位置合わせの指令を出し、アーム152の角度を補正すべくアクチュエーター151を動作させる。
その後また、ハンド部165の移動動作を行い、その時も、力覚センサー163の信号を受けて、再度接触位置演算部124において、第1の部品210と第2の部品220との接触位置や角度を演算する。結果が良ければ次の挿入動作へ移行する。このルーチンを第1の部品210の中心位置と第2の部品220の中心位置とが一致するまで行う。
【0053】
ハンド部165を挿入方向へ移動させるための指令がハンド機構部160のサーボ制御部131を経由して送られ、ハンド機構部160のアクチュエーター161の動作を行う。その時も、力覚センサー163の信号を受けて、挿入位置の演算を行い、挿入動作が適切に行われたかを判断する。
【0054】
挿入動作が終わっていない場合、ハンド部165の移動量の補正演算を行い、ハンド部165の移動量の補正命令を出し、ハンド部165の移動動作を行う。挿入動作が終了するまでこのルーチンを繰り返す。
【0055】
挿入動作が終わった場合、把持の開放を行い、アーム152およびハンド部165の初期化を行い作業を終了する。
なお、把持動作の終了後は、物体の目的位置への移動、配置などの動作が行われる。また、把持する物体によっては慎重を期すべく、力覚センサー163からの信号より少なくなるまで、アームの角度を移動させるまでの動作を複数回繰り返えすように構成してもよい。
ハンド部165による把持またはアーム152の駆動制御は、摂動アクチュエーター164の駆動周波数または振幅のうち少なくとも一方を変化させて制御する。
【0056】
(変形例)
図10(a)に、変形例における磁界発生部40および磁気センサー5付近の概略拡大断面図を示した。図10(b)に、第1実施形態と同様に、磁気センサー5の出力電圧と磁気センサー5の初期位置L0としたときの磁界発生部40に対する相対移動距離との関係図を示した。第1実施形態と同じ構成要素には、第1実施形態と同じ符号を付した。
【0057】
磁界発生部40は、永久磁石49と2つのヨーク46,47から構成され、磁束44が軸部1の外周側へ広がるように流れて、再び戻るように磁気回路48が構成されている。
この場合、2つの46,47に挟まれた空間の磁界勾配を比較的均一に設計することも可能であり、ヨーク46,47の形状次第で磁界勾配の傾きも加減ができる。例えば、ヨーク46,47の形状を永久磁石から離れるに従って薄くするようにテーパーをつけ、そのテーパーの形状を変えることで磁界勾配の傾きも変えることができる。
【0058】
図10(a)において、ヨーク46,47に挟まれた空間の略均一になった磁界勾配中に磁気センサー5が配置されている。
また、ヨーク46,47の形状によっては、ヨーク46,47と弾性部材2が接触しないように、弾性部材2の形状を変えることも可能である。変形例では、ヨーク46,47の軸部1の凸部11からはみ出した部分には、弾性部材2が配置されていない。
【0059】
ヨーク46,47は、パーミアンス調整手段60を備えており、磁界勾配の傾き等を調整できるようになっている。パーミアンス調整手段60は、位置調整手段50と同様に、例えば、ネジ、マイクロメーター等を用いて、機械的にヨーク46,47の位置をX、Y、Z軸方向に調整することができる。
【0060】
ヨーク46,47に挟まれた空間の磁界勾配が均一な場合、図10(b)に示すように、磁気センサー5の出力電圧と磁気センサー5の初期位置L0としたときの磁界発生部40に対する相対移動距離とは比例関係になる。
【0061】
第1実施形態および変形例において、ヨーク43,46,47としては、飽和磁束密度が高い鉄系の材料、電磁軟鉄、低炭素鋼、珪素鋼板などが適しており、必要に応じて熱処理や防錆のためのメッキや塗装などが施される。ヨーク43,46,47の形状は、永久磁石からの磁束が磁気センサー5をできるだけ多く通るように磁気抵抗が小さくなるような形状が良い。永久磁石のパーミアンスから適した形状を選択し、それに応じたヨーク43,46,47の形状を設計することができる。
【0062】
図11には、弾性部材2の圧縮特性の例を示した。横軸が荷重を縦軸が変位量を示している。
図11では、荷重に対して変位量が比例せず、緩やかな上に凸の曲線になるが、選択される弾性部材2の種類や発泡の仕方によってもこの曲線の形状は変化する。
力覚センサー10の出力特性(荷重−出力電圧)は、弾性部材2の圧縮特性(荷重−変位量)と図7(b)および図10(b)に示した磁気センサー5の出力特性の両方によって決まる。
弾性部材2の種類を選択するには、弾性部材2の圧縮特性やその他繰り返し荷重に対する安定性、温度特性など総合的な観点で選ばれるが、特にロボットのエンドエフェクターとしては圧縮特性が重要である。先ず、弾性部材2の圧縮特性を決めて弾性部材2の種類やグレードなどを決め、次に磁気センサー5の出力特性が比例関係となるように、磁界発生部4,40の磁界勾配を設計する。
磁気センサー5の出力特性が比例関係であれば、出力電圧から簡単に荷重を求めることができ、弾性部材2の圧縮特性を考慮して変換する手段を必要としない。
【0063】
また、磁気センサー5の位置調整手段50またはヨーク46,47のパーミアンス調整手段60のうち少なくとも一方を備えていればよく、位置調整手段50またはヨーク46,47のパーミアンス調整手段60によっても、磁界勾配の調整が可能である。
【0064】
このような本実施形態および変形例によれば、以下の効果がある。
(1)ハンド部165の指部166で第1の部品210を把持する際に、摂動アクチュエーター164によって摂動トルクを与えながら把持作業を行うことができ、ハンド部165の指部166と第1の部品210とがよく馴染み、第1の部品210の把持精度を向上することができる。
具体例については、第1の部品210を支持するパレット211と第1の部品210との相対位置はそれほど正確ではないため、第1の部品210を把持するとV溝167に必ず収まるわけではない。そこで、指部166で第1の部品210を把持する際に、摂動アクチュエーター164で摂動を与えながら把持すると、円筒形の第1の部品210が指部166のV溝167に馴染んで把持することができる。
摂動アクチュエーター164で摂動を与えながら把持すると、矩形状の第1の部品210が指部166のテーパー部168に馴染んで把持することができる。
【0065】
また、第1の部品210と第2の部品220との位置合わせの際に、摂動アクチュエーター164によって摂動トルクを与えながら、コンプライアンス機能を持つ力覚センサー163で、ハンド部165および摂動アクチュエーター164に加わる力を検出し、摂動アクチュエーター164をハンド部165およびアーム部150の駆動と同時に駆動制御することにより、第1の部品210と第2の部品220との位置合わせを容易に行うことができる。
したがって、部品組立の時間が短く、生産性の向上したロボット100を得ることができる。
【0066】
(2)磁気センサー5の位置調整手段50または磁気回路48を構成するヨーク46,47のパーミアンス調整手段60のうち少なくとも一方を備えているので、組立て後において磁気回路45,48と磁気センサー5との相対位置または磁気回路45,48の少なくとも一方の調整を可能にできる。軸部1とハウジング3とを弾性部材2を介して組立てた際に、弾性部材2の弾性変形等によって、軸部1とハウジング3との相対位置がずれることにより、磁気回路45,48と磁気センサー5との相対位置がずれて組立てられても、磁気回路45,48中の磁気センサー5の位置または磁気回路48の少なくとも一方を調整できる。したがって、感度や加わる力に応じた出力のばらつきの少ない力覚センサー10を得ることができる。このような力覚センサー10によりハンド部165および摂動アクチュエーター164に加わる力をより正確に検出できるので、第1の部品210と第2の部品220との位置合わせがより容易に行うことができ、部品組立の時間が短く、より生産性の向上したロボット100を得ることができる。
【0067】
(3)磁界発生部4,40に、配線の不要な永久磁石を用いているので、構造が簡単で小型の製造コストの低減した力覚センサー10を得ることができる。このような力覚センサー10を備えているので、製造コストの低い生産性の向上したロボット100を得ることができる。
【0068】
(4)摂動アクチュエーター164の駆動信号と、力覚センサー10の出力信号とに基づいて、第1の部品210と第2の部品220との接触状態を判断して、ハンド部165の把持およびアーム部150の駆動制御を行うので、第1の部品210と第2の部品220との位置合わせを容易に行うことができる。したがって、部品組立の時間が短く、生産性の向上したロボット100の制御方法を得ることができる。
【0069】
(5)摂動アクチュエーター164の駆動周波数または振幅のうち少なくとも一方を変化させることにより、駆動信号と出力信号の違いにより第1の部品210と第2の部品220との接触位置、安定点等の制御のための情報が増える。したがって、第1の部品210と第2の部品220との位置合わせがより容易に行え、部品組立の時間が短く、より生産性の向上したロボット100の制御方法を得ることができる。
【0070】
変形例によれば、以下の効果がある。
(6)磁気回路48が、磁気センサー5の出力と磁気センサー5の移動距離とが比例関係になるように、ヨーク46,47の形状が形成されている。したがって、磁気センサー5がヨーク46,47によって形成された磁気回路48中のどの位置にあっても、感度や力に応じた出力が一定の力覚センサー10が得られる。このような力覚センサー10によりハンド部165および摂動アクチュエーター164に加わる力をより正確に検出できるので、第1の部品210と第2の部品220との位置合わせがより容易に行え、部品組立の時間が短く、より生産性の向上したロボット100を得ることができる。
【0071】
(第2実施形態)
図12(a)には、本実施形態における力覚センサー163の一例として、力覚センサー20の概略平面図を、(b)には、(a)におけるA−B−C−D−E−F概略断面図を示した。
本実施形態では、磁気センサー5と磁界発生部4とを多数配置して、力覚センサー20を多軸化したものである。同じ構成要素には同じ符号を付し、説明の必要なものだけ符号を付した。説明のない構成要素は、大きさ、形状が異なっていても第1実施形態と同様の機能、構造である。また、磁気センサー5の位置調整手段50およびパーミアンス調整手段60は省略してある。
本実施形態では、磁気センサー5と磁界発生部4との対は、12ヶ所設けられている。そのうち、8ヶ所は、Z軸方向に設けられている。
【0072】
弾性部材21は、Z軸方向に設けられた8ヶ所の磁気センサー5と磁界発生部4との対の内側にリング状に設けられている。また、第1実施形態におけるスラスト方向の受け6A,6Bは設けられていない。したがって、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の他に、X、Y、Z軸方向へのモーメントMx、My、Mzについても測定可能である。
一例として図中斜線矢印でモーメントMを示した。モーメントMは、X成分およびY成分を持っている。
なお、本実施形態の軸部13には、貫通孔14が形成されている。
【0073】
図13は、軸部13の中心と物体の接触位置との関係を示した図である。
座標の原点0は軸部13の中心1Cであり、N’(X1,Y1)は軸部13と物体との接触位置である。原点0を中心として物体の位置N’点の合成モーメントMは、モーメントのX成分をMx、モーメントのY成分をMyとして、M=(Mx2+My2(1/2)と表される。
原点0からN’点までの距離をrとすればZ軸周りのモーメントMは、力FによりM=F×rと表される。
モーメントMx、Myの符号の正負からN’点がどの領域(X−Y平面上の第1〜第4象限のいずれか)にあるかがわかる。さらに、モーメントMx、Myの比から、角度θは、tanθ=My/Mxとなる。
距離rから、N’点の座標X1、Y1は、それぞれX1=r×cosθおよびY1=r×sinθとなる。
【0074】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(7)X軸、Y軸、Z軸方向への力だけでなく、モーメントMの各成分Mx、My、Mzについても測定可能である。
【0075】
(第3実施形態)
図14には、本実施形態における力覚センサー163の一例として、力覚センサー70の概略平面図を、(b)には(a)におけるB−B概略断面図を示した。同じ構成要素には同じ符号を付し、説明の必要なものだけ符号を付した。説明のない構成要素は、大きさが異なっていても第1実施形態と同様の機能、構造である。
本実施形態においても、磁気センサー5の位置調整手段50およびパーミアンス調整手段60は省略してある。
【0076】
図14において、力覚センサー70は、第1の基体としての軸部71と第2の基体としてのベース73とを備えている。
軸部71の片端には、円盤形状の支持板72が設けられている。また、ベース73の形状は、底部731を有する円筒形状であり、リング状の蓋部74を備えている。蓋部74には中央に開口部741が形成されている。ベース73の底部731には回路部75が設けられ、その上には支持部76が設けられている。
支持板72には、磁界発生部4A,4B,4C,4Dが軸部71の中心7Cに対し回転対称になるように配置されている。一方、支持部76には、磁気センサー5A,5B,5C,5Dが磁界発生部4A,4B,4C,4Dに対向するように配置されている。
【0077】
軸部71の支持板72と支持部76とが平行になるように、軸部71の支持板72は、蓋部74と支持部76との間に弾性部材22で保持されている。したがって、軸部71とベース73との間には、弾性部材22が介在している。軸部71は、開口部741から突出している。
【0078】
軸部71に、例えば、図中に白抜き矢印で示す+X方向の力Fxが加えられた時には、軸部71はベース73に対して+X方向に変位を生じる。すると、4つの磁気センサー5A,5B,5C,5Dの出力が平衡点からずれて、出力電圧が変化する。
ここで、4つの磁界発生部4A,4B,4C,4Dの磁界勾配の向きを変えて、出力電圧の符号を変え、X−Y平面上で力の方向が分かるようにしておく。例えば、表1のように各磁気センサーの出力電圧を設定しておく。
【0079】
【表1】

【0080】
ここで、第1象限方向への力(+X+Y)に対して、5Aは+、5Bは〜0、5Cは−、5Dは〜0の出力となり、第2象限方向への力(−X+Y)に対して、5Aは〜0、5Bは−、5Cは〜0、5Dは+の出力となり、第3象限方向への力(+X−Y)に対して、5Aは〜0、5Bは+、5Cは〜0、5Dは−の出力となり、第4象限方向への力(−X−Y)に対して、5Aは−、5Bは〜0、5Cは+、5Dは〜0の出力となる。
【0081】
このような本実施形態によれば、以下の効果がある。
(8)磁気センサー5A,5B,5C,5Dの出力電圧の変化量から、X−Y平面上で加わった力の方向および大きさを知ることができる。
【0082】
上述した実施形態および変形例以外にも、種々の変更を行うことが可能である。
ヨーク46,47の形状は、変形例で示した平面で囲まれた形状に限らず、曲面を持つ形状であってもよい。例えば、磁気センサー5の出力特性が比例関係となるように、磁界発生部4,40の磁界勾配を設計する際に、弾性部材2の圧縮特性に合わせて、ヨーク46,47の形状を、曲面を持つ形状としてもよい。
【0083】
また、磁界発生部と磁気センサーとの配置は、原点、X軸、Y軸、Z軸に対して対称な位置に配置されるものに限らず、非対称の位置に配置されていてもよい。
さらに、第1の基体としては、円柱状の軸部1,13,71を備えたものに限らない。例えば、三角柱や四角柱であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1,13,71,72…第1の基体としての軸部および支持板、2,21,22…弾性部材、3…第2の基体としてのハウジング、4,4A,4B,4C,4D,40…磁界発生部、5,5A,5B,5C,5D…磁気センサー、10,20,70,163…力覚センサー、41,42,49…永久磁石、43,46,47…ヨーク、45,48…磁気回路、50…位置調整手段、60…パーミアンス調整手段、73…第2の基体としてのベース、100…ロボット、130…制御手段としての制御部、150…アーム部、164…摂動アクチュエーター、165…ハンド部、210…被対象物としての第1の部品、220…被対象物としての第2の部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被対象物を把持するハンド部と、
前記ハンド部を振動させる摂動アクチュエーターと、
前記ハンド部に加わる力を検出する力覚センサーと、
前記ハンド部を移動させるアーム部と、
前記力覚センサーの出力に基づいて、前記摂動アクチュエーターを前記ハンド部または前記アーム部の駆動と同時に駆動制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とするロボット。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットにおいて、
前記力覚センサーは、
ヨークを備えた磁界発生部で形成される磁気回路を有する第1の基体と、
前記磁気回路を横切る磁気センサーを有する第2の基体と、
前記第1の基体と前記第2の基体との間に介在し、両者の間に加わる荷重によって弾性変形する弾性部材と、
前記磁気センサーの位置調整手段または前記ヨークのパーミアンス調整手段のうち少なくとも一方とを備えている
ことを特徴とするロボット。
【請求項3】
請求項2に記載のロボットにおいて、
前記ヨークの形状は、前記磁気センサーの出力と前記荷重によって前記磁気回路中を移動する前記磁気センサーの移動距離とが比例関係になるような前記磁気回路を形成する形状である
ことを特徴とするロボット。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のロボットにおいて、
前記磁界発生部は、永久磁石を備えている
ことを特徴とするロボット。
【請求項5】
被対象物を把持するハンド部と、前記ハンド部を振動させる摂動アクチュエーターと、前記ハンド部および前記摂動アクチュエーターに加わる力を検出する力覚センサーと、前記ハンド部を移動させるアーム部とを備えたロボットの制御方法であって、
前記摂動アクチュエーターの駆動信号と、前記力覚センサーの出力信号とに基づいて、
前記被対象物の接触状態を判断して、
前記ハンド部の把持または前記アーム部の駆動制御を行う
ことを特徴とするロボットの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のロボットの制御方法において、
前記駆動制御は、前記摂動アクチュエーターの駆動周波数または振幅のうち少なくとも一方を変化させて制御する
ことを特徴とするロボットの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−214573(P2010−214573A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67546(P2009−67546)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】