ワーク搬送用ロボット

【課題】アームの熱膨脹収縮により生じるハンド部材の偏位量を許容範囲内に収めることができるアーム回動形のワーク搬送用ロボットを提供する。
【解決手段】固定プーリ8,27と、一端が固定プーリ8,27に対して回動自在に支持されたアーム13,26と、アーム13,26の他端に回転自在に支持された回転プーリ15,29と、固定プーリと回転プーリとの間に張設されたベルト17,30とを備えたアーム機構を多段に設けて、最終段のアーム機構の回転プーリ29にハンド部材40を取り付けたワーク搬送用ロボットにおいて、アーム13,26の熱膨脹収縮によりハンド部材40に生じる偏位を許容範囲に収めるように、テンションローラ22,35からベルト17,30に与える張力を調整するようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶基板製造装置や半導体製造装置等において、基板やウェーハ等のワークを搬送するために用いるワーク搬送装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶基板製造装置や半導体製造装置においては、基板やウェハ等のワークを搬送する際に用いるワーク搬送用ロボットとして、アームの回動運動をワーク保持用のハンド部材に伝達して、該ハンド部材を所定の軌跡に沿って変位させるようにした回動アーム形のロボットが多く用いられている。
【0003】図1は、本発明を適用する搬送用ロボットの外観の一例を示したもので、電動機等により回転駆動される出力軸を有するアーム機構駆動装置Aと、複数のアーム機構25,38と、ハンド部材40とから構成される。複数のアーム機構25,38のうち、前段のアーム機構25は、その一端25aが入力部となっていて、該一端25aがアーム駆動機構駆動装置Aの出力軸に取り付けられている。したがって、アーム駆動機構25はアーム駆動機構駆動装置Aにより駆動されて、該駆動装置の出力軸の中心軸線を中心にして回動する。
【0004】また後段のアーム機構38はその一端38aが入力部となっていて、該一端38aが前段のアーム機構38の他端に回動自在に支持されている。この後段のアーム機構38は、後記する機構により、前段のアーム機構25の回動に伴って、該前段のアーム機構と反対方向に回動する。
【0005】更にハンド部材40はその基部41が後段のアーム機構の他端に回動自在に支持されていて、後段のアーム機構38に対して相対的に、該後段のアーム機構と反対方向に回動しつつ、図示の矢印H方向に沿って直線移動する。
【0006】図2は、前段の(この例では初段の)アーム機構25と後段の(この例では最終段の)アーム機構38との2段のアーム機構を備えた従来の回動アーム形のワーク搬送用ロボットの構成を概略的に示した平面図である。
【0007】図2に示されたワーク搬送用ロボットにおいて、前段のアーム機構25は、図示しない旋回部材に固定された固定プーリ8´と、一端が固定プーリ8´に対して回動自在に支持されたアーム13´と、アーム13´の他端側に回転自在に支持された回転プーリ15´と、固定プーリ8´と回転プーリ15´との間に張設されたベルト17´と、固定プーリ8´の中心軸線と回転プーリ15´の中心軸線とを含む平面の片側でベルト17´に当接して該ベルトに張力を与えるテンションローラ22´とを備えている。
【0008】また後段のアーム機構38は、前段のアーム機構のアーム13´の他端に固定された固定プーリ27´と、一端が前段のアーム機構の回転プーリ15´に接続されて固定プーリ27´に対して回動自在に支持されたアーム26´と、アーム26´の他端側に回転自在に支持された回転プーリ29´と、固定プーリ27´と回転プーリ29´との間に張設されたベルト30´と、固定プーリ27´の中心軸線と回転プーリ29´の中心軸線とを含む平面の片側でベルト30´に接して該ベルトに張力を与えるテンションローラ35´とを備えている。
【0009】図示のワーク搬送用ロボットにおいては、前段のアーム機構25の固定プーリ8´の有効径と回転プーリ15´の有効径との比が2対1に設定され、後段のアーム機構38の固定プーリ27´の有効径と回転プーリ29´の有効径との比が1対2に設定されている。また前段のアーム機構25の固定プーリ8´の中心と回転プーリ15´の中心との間の距離が、後段のアーム機構38の固定プーリ27´の中心と回転プーリ29´の中心との間の距離に等しく設定されている。
【0010】後段のアーム機構38の回転プーリ29´には、基部41と、1対のハンド42,42とからなるハンド部材40が、その基部の回動中心を回転プーリ29´の回転中心に一致させた状態で接続され、1対のハンド42,42の上に液晶基板等の図示しないワークが載置される。
【0011】図2に示した搬送用ロボットにおいては、前段のアーム機構25のアーム13´が、図示しない電動駆動装置により駆動されて、固定プーリ8´の中心軸線を回動中心として回動させられる。今図2においてアーム13´が反時計方向に回動させられたとすると、このアームの回動により、固定プーリ8´がアーム13´に対して相対的に時計方向に回転する。この固定プーリ8´の相対的な回転はベルト17´を介して回転プーリ15´に伝達されるため、回転プーリ15´が時計方向に回転する。これにより、回転プーリ15´に一端が接続されている後段のアーム機構のアーム26´が、固定プーリ27´の中心軸線を回動中心として、第1のアーム13´に対して時計方向に回動する。アーム26´が時計方向に回動すると、固定プーリ27´がアーム26´に対して相対的に反時計方向に回転するため、この固定プーリ27´の回転がベルト30´を介して伝達される回転プーリ29´が反時計方向に回転し、ハンド部材40が第2のアーム26´に対して反時計方向に回動する。
【0012】アーム機構25及び38のそれぞれの固定プーリと回転プーリの有効径の比が前述のように設定されていることにより、アーム26´はアーム13´の回動角度の2倍の角度だけアーム13´の回動方向と反対方向に回動し、ハンド部材40はアーム26´の回動角度の1/2の角度だけアーム26´の回動方向と反対方向に回動する。そのため、ハンド部材40は、アーム13´及び26´の回動に伴って、固定プーリ8´の中心と回転プーリ29´の中心とを結ぶ直線に沿って移動する。
【0013】上記のように、図2に示したロボットにおいては、固定プーリ8´の中心軸線を回動中心としてアーム13´を回動させることにより、ハンド部材40に保持したワークを直線移動させることができる。また固定プーリ8´を保持した旋回部材(図示せず。)を固定プーリ8´の中心軸線の回りに回転させることにより、全体を旋回させてワークの搬送方向を任意の方向に向けることができる。
【0014】一般にこの種のロボットは、固定プーリ8´,27´と、該固定プーリと中心軸線を共有した状態で配置される入力部を一端側に有して該入力部の中心軸線を中心にして回動し得るように固定プーリに対して回動自在に支持されたアーム13´,26´と、該アームの他端側に配置されて該アームに対して回転自在に支持された回転プーリ15´,29´と、固定プーリと回転プーリとの間に張設されてアームの回動に伴って生じる固定プーリのアームに対する相対的回転を回転プーリに伝達するベルト17´,30´とを備えた複数段のアーム機構25,38が設けられて、後段のアーム機構38のアームの入力部が前段のアーム機構25の回転プーリ15´に連結されるとともに、後段のアーム機構の固定プーリ27´が前段のアーム機構のアームに対して固定された構造を有する搬送機構と、この搬送機構の最終段のアーム機構38の回転プーリ29´に結合されたワーク保持用のハンド部材40と、搬送機構の初段のアーム機構25のアームの入力部を回転駆動するアーム機構駆動装置とを備えた構成を有する。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】図2に示したワーク搬送用ロボットは、例えば、トランスファチャンバと、該トランスファチャンバを囲むように配置されたロードロックチャンバ及び複数のプロセスチャンバとを備えた液晶基板製造装置や半導体製造装置のトランスファチャンバ内に配置されて、ロードロックチャンバやプロセスチャンバへのワーク(液晶基板やウェハ等)の搬入、搬出を行うために用いられる。
【0016】液晶製造装置や半導体製造装置においては、ロードロックチャンバやプロセスチャンバの入口の幅寸法が、それぞれの内部の真空度の低下を防ぐために、搬入、搬出をするワークの幅寸法よりも僅かに大きい程度に設定されるため、各チャンバの入口の幅寸法の余裕は極めて小さくなっている。ロードロックチャンバやプロセスチャンバにワークを搬入する際のワークの位置ずれが許容範囲を超えると、ワークがチャンバの入口に接触して破損するおそれがある。そのため、図2に示したワーク搬送用ロボットにおいては、ハンド部材40を目標位置まで移動させた際にその先端に生じる幅方向の偏位ΔLをできるだけ小さくする必要がある。
【0017】ところが、従来のこの種の搬送用ロボットでは、ロボットの温度が高くなったときに、ハンド部材の回動方向の偏位量が大きくなって、その先端の幅方向の偏位量ΔLが大きくなる傾向があったため、このロボットを液晶基板製造装置のように、熱処理を伴う装置に用いた場合に、チャンバ内へのワークの搬入、搬出に支障を来すおそれがあった。
【0018】本発明の目的は、温度の変化により生じるハンド部材の位置ずれを抑制することができるようにしたワーク搬送用ロボットを提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明は、固定プーリと、該固定プーリと中心軸線を共有した状態で配置される入力部を一端側に有して該入力部の中心軸線を中心にして回動し得るように固定プーリに対して回動自在に支持されたアームと、アームの他端側に配置されて該アームに対して回転自在に支持された回転プーリと、固定プーリと回転プーリとの間に張設されてアームの回動に伴って生じる固定プーリのアームに対する相対的回転を回転プーリに伝達するベルトとを備えたアーム機構が複数段設けられて、後段のアーム機構のアームの入力部が前段のアーム機構の回転プーリに連結されるとともに、後段のアーム機構の固定プーリが前段のアーム機構のアームに対して固定された搬送機構と、この搬送機構の最終段のアーム機構の回転プーリに結合されたワーク保持用のハンド部材と、搬送機構の初段のアーム機構のアームの入力部を回転駆動する駆動部とを備えたワーク搬送用ロボットを対象とする。
【0020】本発明者は、この種のロボットに対して種々の実験と解析とを行った結果、温度上昇時にハンド部材に偏位が生じる主な原因は、アームの熱膨脹に伴ってベルトが伸ばされることにより生じるベルトの両半部の張力の差によって、回転プーリに回転変位が生じることにあることを明らかにした。
【0021】例えば、図2に示したロボットでは、アーム13´が熱膨張してその長さが長くなったときに、ベルト17´の両半部17a´及び17b´のうち、長さが短い方の半部17b´に作用する張力の方が、長さが長い半部17a´に作用する張力よりも大きくなるため、回転プーリ15´は、ベルトの張力が均一になるように(張力の差を零にするように)、図面上時計方向にΔθ1 だけ回転する。これによりアーム26´が時計方向にΔθ1 だけ回転する。このアーム26´の回転によりハンド部材40が反時計方向にΔθ1 /2だけ回動する。またアーム26´が熱膨張したときにベルト30´の半部30b´に作用する張力と半部30a´に作用する張力との間に生じる差により、回転プーリ29´が時計方向に角度Δθ2 だけ回転するため、ハンド部材40は時計方向にΔθ2 −(Δθ1 /2)だけ回動する。このハンド部材の回動と、アーム26´のΔθ1 の回動とにより、ハンド部材40の先端に上記Δθ1 とΔθ2 との関数で定まる幅方向の変位ΔLが生じる。
【0022】そこで本発明においては、上記搬送機構を構成する複数段のアーム機構のそれぞれのアームの熱膨脹収縮に起因するベルトの張力の変化によりハンド部材に生じる回動方向の変位を許容範囲内に収めるように調整された張力をベルトに与える張力付与装置を、少なくとも1つのアーム機構に対して設けるようにした。
【0023】図2に見られるように、従来のワーク搬送用ロボットにおいても、アーム機構のベルトに張力を与える装置(テンションローラ)は設けられていたが、従来設けられていた張力付与装置は、もっぱら各アーム機構のベルトに緩みを生じさせないように所定の張力を与えるためのものであり、アームの熱膨脹収縮により生じるハンド部材の変位量を許容範囲内に収めるように調整された張力を各ベルトに与えるものではなかった。
【0024】そのため、従来のワーク搬送用ロボットでは、温度上昇時にハンド部材に顕著な偏位が生じるのを防ぐことができなかったが、本発明においては、温度上昇時のハンド部材の偏位を許容範囲に収めるように調整された張力を各アーム機構のベルトに与えるので、温度上昇時のハンド部材の偏位量を確実に許容範囲内に収めることができる。
【0025】アーム機構のベルトに上記のように調整された張力を与える際の基本的な考え方は、アームが熱膨脹収縮した際に複数段のアーム機構のそれぞれのベルトの両半部間に生じる張力の差に起因して生じるそれぞれのアーム機構の回転プーリの回転変位に基づいてハンド部材に生じる偏位が、互いにキャンセルするように調整された張力を少なくとも1つのアーム機構のベルトに与えることである。例えば、図2に示したように2つのアーム機構が設けられる場合には、前段のアーム機構25のアーム13´の熱膨脹により生じる回転プーリ15´の回転変位に基づいてハンド部材40に生じる偏位と、後段のアーム機構38のアーム26´の熱膨脹により生じる回転プーリ29´の回転変位に基づいてハンド部材40に生じる偏位が実質的にキャンセルし合うように、少なくとも一方のアーム機構のベルトに与える張力を微調節する。
【0026】このように少なくと1つのアーム機構のベルトに与える張力を調節すると、理想的な調整が行われた場合には、温度上昇時に一連のアーム機構の回転プーリに生じる変位がハンド部材に伝わらないようにすることができるため、温度上昇により生じるハンド部材の回動方向の偏位量を実質的に零にすることができる。
【0027】実際には、ベルト各部の熱膨脹収縮の不均一性や、各アームの熱膨張収縮量の差異や、各部の寸法誤差等が微妙に絡み合うため、ハンド部材の偏位量を完全に零にすることは困難であるが、少なくとも1つのアーム機構のベルトに本発明の考え方に従って調整された張力を与えることにより、温度上昇時にハンド部材に生じる回動方向の偏位量を実用上支障をきたさない範囲内に収めることができる。
【0028】本発明の好ましい態様では、上記のように調整された張力を各アーム機構のベルトに与えるために、各アーム機構の固定プーリの中心軸線と回転プーリの中心軸線とを含む平面の両側で各アーム機構のベルトに当接して該ベルトに張力を与える対のテンションローラを設け、搬送機構を構成する複数段のアーム機構のそれぞれのアームの熱膨脹収縮によりハンド部材に生じる回動方向の偏位を許容範囲内に収めるように、少なくとも1つのアーム機構に対して設けた対のテンションローラからベルトに与える張力を調節する。
【0029】この場合、各アーム機構に対して設ける対のテンションローラを、各アーム機構の固定プーリの中心軸線と回転プーリの中心軸線とを含む平面と平行な方向に位置調整可能に設けて、該対のテンションローラの位置を調整することにより各アーム機構のベルトに与える張力を調整し得るように構成することができる。
【0030】また、各アーム機構に対して設ける対のテンションローラを、各アーム機構の固定プーリの中心軸線と回転プーリの中心軸線とを含む平面と平行な方向に対して角度を持った方向に位置調整可能に設けて、該対のテンションローラの位置を調整することにより各アーム機構のベルトに与える張力を調整するようにしてもよい。
【0031】各アーム機構に対して設ける対のテンションローラは、それぞれの位置を一括して調整し得るように設けてもよく、それぞれの位置を個別に調整し得るように設けてもよい。
【0032】対のテンションローラを個別に調整し得るように設けておくと、各ベルトの半部の張力を個別に調整することができるため、ハンド部材の偏位量を許容範囲内に収めるための細かい調整を容易に行うことができる。
【0033】本発明においてはまた、各アーム機構の固定プーリの中心軸線と回転プーリの中心軸線とを含む平面の片側で固定プーリと回転プーリとの間に張設されたベルトの半部に当接して該ベルトに張力を与えるようにテンションローラを設けることもできる。この場合、各アーム機構に対して設けるテンションローラと隣接する他のアーム機構に対して設けるテンションローラとは、それぞれのアーム機構の固定プーリ側から回転プーリを見たときに左右方向の異なる側で固定プーリと回転プーリとの間を伸びているベルト半部に当接するように設ける。そして、搬送機構を構成する複数段のアーム機構のアームの熱膨脹収縮によりハンド部材に生じる回動方向の偏位を許容範囲内に収めるように、少なくとも1つのアーム機構に対して設けたテンションローラによりベルトに与える張力を調節する。
【0034】上記のように、各アーム機構のベルトの片側にのみテンションローラを設ける場合も、各テンションローラは、各アーム機構の固定プーリの中心軸線と回転プーリの中心軸線とを含む平面と平行な方向に位置調整可能に設けてもよく、各アーム機構の固定プーリの中心軸線と回転プーリの中心軸線とを含む平面と平行な方向に対して角度を持った方向に位置調整可能に設けてもよい。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、図3ないし図6を参照して、本発明の実施形態を説明する。図3及び図4は、本発明の第1の実施形態を示したもので、図3は縦断面図、図4は各アームの天板を外して内部の構成を概略的に示した平面図である。
【0036】図3において1はロボットの駆動機構部が収容されるハウジング、2はハウジング1の上部板1aに設けられた孔を貫通してハウジング内に挿入された筒状のケーシングである。ケーシング2はその上端にフランジ2aを有していて、フランジ2aをハウジング1の上部板1aにボルト止めすることによりハウジングに対して固定されている。
【0037】ケーシング2内の上部には、円筒状の旋回部材3がその中心軸線O1 −O1 を垂直方向に向けた状態で配置されて、軸受4及び5によりケーシング2に対して回転自在に支持されている。ケーシング2内の下部には、電動機と必要に応じて設けられる減速機とからなる旋回用電動駆動装置6が固定され、この電動駆動装置の回転軸が、旋回部材3の下端にカップリング部材7Aを介して連結されている。旋回部材3は、電動駆動装置6により、その中心軸線O1 −O1 を回転中心として回転駆動される。
【0038】図4にも示されているように、旋回部材3の上端には、外周部に多数の歯部が等間隔で設けられた歯付きプーリからなる固定プーリ8が、その中心軸線を図3に示した旋回部材の中心軸線O1 −O1 に一致させた状態で固定されている。
【0039】旋回部材3の内側には軸受9及び10が保持され、これらの軸受により、旋回部材3と中心軸線を共有した出力軸11が回転自在に支持されている。旋回部材3の下部に、電動機を駆動源として備えたアーム駆動用電動駆動装置12が固定され、この電動駆動装置の回転軸に出力軸11の下端がカップリング7Bを介して連結されている。従って出力軸11は、電動駆動装置12により、その中心軸線を回転中心として回転駆動される。
【0040】この例では、ハウジング1と、該ハウジングに回転自在に支持された旋回部材3、ハウジング1内に収容された旋回用電動駆動装置6、カップリング7A、アーム駆動用電動駆動装置12、カップリング7B及び出力軸11等とにより、アーム機構駆動装置Aが構成されている。
【0041】アーム機構駆動装置Aの出力軸11の上端には、第1のアーム13の一端が取り付けられている。第1のアーム13は、天板部13a及び底板部13bと側板部13cとを有する中空の筐体からなっていて、その一端側の底板部には、固定プーリを受け入れるための開口部が設けられている。第1のアーム13の一端側の天板部の内面には、底板部13bに設けられた開口部を通して該第1のアーム内に挿入された固定プーリ8と中心軸線を共有した状態で配置される入力部13dが設けられている。第1のアーム13は、その一端側に設けられた入力部13dをアーム機構駆動装置Aの出力軸11の上端に固定することにより、固定プーリ8の中心軸線を回動中心として、固定プーリ8に対して回動自在に支持されている。
【0042】第1のアーム13の他端側の天板部には、上方に突出した円環状の突出部13eにより囲まれた開口部が設けられていて、歯付きプーリからなる回転プーリ15が、この突出部13eの内側の開口部を通して第1のアーム13内に挿入されている。回転プーリ15は、その軸線を固定プーリ8の中心軸線と同じ方向に向けた状態で配置されて、突出部13eの内周に軸受14を介して回転自在に支持されている。
【0043】回転プーリ15の軸心部に設けられた孔を回転自在に貫通した状態で、該回転プーリと軸線を共有する固定軸16が設けられ、この固定軸の下端は第1のアームの底板部13bの内面に固定されている。
【0044】固定プーリ8と回転プーリ15との間に歯付きベルト17が張設され、アーム13が回動した際に生じる固定プーリ8のアーム13に対する相対的回転がベルト17を介して回転プーリ15に伝達されるようになっている。
【0045】また図4に示したように、第1のアーム13の底板部の幅方向の中央部には、該第1のアームの長手方向に伸びるガイド溝18が設けられ、このガイド溝18により、アーム18の長手方向と直角な方向に相対する起立壁部19a,19bを幅方向の両端に有するスライダ19が、第1のアームの長手方向にスライド自在に支持されている。スライダ19の上面にはローラ支持アーム20の一端がピン21を介して回動自在に支持され、該ローラ支持アームの他端に固定プーリ8の回転軸と平行な軸の回りを回転するテンションローラ22が取り付けられている。
【0046】テンションローラ22は、固定プーリ8の中心軸線と回転プーリ15の中心軸線とを含む平面の片側(図示の例では、固定プーリ8から回転プーリ15側を見て左側)で、固定プーリと回転プーリとの間を伸びているベルト17の半部17aに当接するように設けられていて、このテンションローラにより、ベルト17に張力が付与されるようになっている。
【0047】またスライダ19に設けられた起立壁19aに設けられたネジ孔に螺合されたテンション調整用ボルト23がローラ支持アーム20の側面に当接され、このボルト23を回転させて進退させることにより、テンションローラ22からベルト17に与える張力を自在に調整することができるようになっている。
【0048】図示してないが、スライダ19をガイド溝18に沿った任意の位置で第1のアームに対して固定する固定手段が設けられ、この固定手段によりスライダ19を第1のアームの長手方向の適宜の位置に位置決め固定することができるようになっている。この例では、スライダ19の位置を調整することによっても、テンションローラ22からベルト17に与える張力を調整し得るようになっている。
【0049】スライダ19と、このスライダにアーム20を介して支持されたテンションローラ22と、テンション調整用ボルト23とにより第1の張力付与装置24が構成され、第1のアーム13と、固定プーリ8と、回転プーリ15と、ベルト17と、第1の張力付与装置24とにより、前段のアーム機構25が構成されている。
【0050】第1のアーム13の他端側に支持された回転プーリ15には、第2のアーム26の一端側が接続されている。第2のアーム26は、天板部26a及び底板部26bと側板部26cとを有する中空の筐体からなっていて、その一端側の底板部26bには、固定軸16の上端を挿入するための開口部が設けられ、この開口部の周辺部に固定軸16と軸線を共有した状態で配置される円環状の突出部からなる入力部26dが設けられている。第2のアーム26の入力部26dは、回転プーリ15の上端に接続されて、該回転プーリ15とともに軸受14により回転自在に支持されている。入力部26dの内側の開口部に挿入された固定軸16の上端には、第2のアーム26の一端寄りの内部に配置された固定プーリ27が、その軸線を固定軸16の軸線に一致させた状態で取り付けられている。
【0051】第2のアーム26の他端側の底板部26bの内面には、環状のボスが突設され、このボスの内側に保持された軸受28により、回転プーリ29が、その軸線を固定プーリ27の軸線と同じ方向に向けた状態で回転自在に支持されている。
【0052】そして固定プーリ27と回転プーリ29との間に歯付きベルト30が張設され、アーム26が回動した際に生じる固定プーリ27のアーム26に対する相対的回転がベルト30を介して回転プーリ29に伝達されるようになっている。
【0053】また図4に示したように、第2のアーム26の底板部の幅方向の中央部に、該第2のアームの長手方向に伸びるガイド溝31が設けられ、このガイド溝31により、第2のアームの幅方向に相対する起立壁部32a,32bを幅方向の両端に有するスライダ32が、第2のアームの長手方向にスライド自在に支持されている。スライダ32の上面にはローラ支持アーム33の一端がピン34を介して回動自在に支持され、該ローラ支持アームの他端に固定プーリ27の中心軸線と平行な軸の回りを回転するテンションローラ35が取り付けられている。
【0054】テンションローラ35は、前記第1の張力付与装置のテンションローラ22とは反対の側でベルト30の半部30bに当接される。即ち、テンションローラ35は、固定プーリ27から回転プーリ29側を見て右側で、固定プーリと回転プーリとの間を伸びているベルト30の半部30bに当接するように設けられていて、このテンションローラにより、ベルト30に張力が付与されている。
【0055】またスライダ32の起立壁32bに設けられたネジ孔に螺合されたテンション調整用ボルト36がローラ支持アーム33の側面に当接され、このボルト36を回転させて進退させることにより、テンションローラ35からベルト30に与える張力を自在に調整することができるようになっている。
【0056】図示してないが、スライダ32をガイド溝31に沿った任意の位置で第2のアームに対して固定する固定手段が設けられて、この固定手段によりスライダ32を第2のアームの長手方向の適宜の位置に位置決め固定することができるようになっており、スライダ32の位置を調整することによっても、テンションローラ35からベルト30に与える張力を調整し得るようになっている。
【0057】スライダ32と、このスライダにアーム33を介して支持されたテンションローラ35と、テンション調整用ボルト36とにより第2の張力付与装置37が構成され、第2のアーム26と、固定プーリ27と、回転プーリ29と、ベルト30と、第2の張力付与装置37とにより、後段のアーム機構38が構成されている。
【0058】回転プーリ29の上端には、ハンド部材40が取り付けられている。図示のハンド部材40は、ぼぼコの字形に形成された板状の基部41と、互いに平行に配置されて基部41の幅方向の両端にそれぞれ一端が固定された帯板状の1対のワーク保持用のハンド42,42とからなっている。ハンド部材40は、その基部41の幅方向の中央部の、ハンド42,42から等距離の位置に回動中心軸を有していて、この回動中心軸を回転プーリ29の中心軸線O3 −O3 に一致させた状態で、基部41が回転プーリ29に固定されている。
【0059】図3及び図4に示したワーク搬送用ロボットにおいても、前段のアーム機構25の固定プーリ8の有効径と回転プーリ15の有効径との比が2対1に設定され、後段のアーム機構38の固定プーリ27の有効径と回転プーリ29の有効径との比が1対2に設定されている。また前段のアーム機構25の固定プーリ8の中心と回転プーリ15の中心との間の距離が、後段のアーム機構38の固定プーリ27の中心と回転プーリ29の中心との間の距離に等しく設定され、第1のアーム13の回動に伴って、ハンド部材40が、固定プーリ8の中心と回転プーリ29の中心とを結ぶ直線に沿って移動させられる。
【0060】図3及び図4に示したワーク搬送用ロボットにおいては、テンションローラ22及び35によりそれぞれベルト17及び30に、動力を支障なく伝達するために必要な張力(弛みを生じさせないようにするための張力)が与えられるとともに、ベルト17及び30の少なくとも一方に与えられる張力が、温度上昇時のハンド部材の偏位を許容範囲内に収めるように調整される。
【0061】図3及び図4に示したワーク搬送用ロボットにおいては、アーム機構25のテンションローラ22と、アーム機構38のテンションローラ35とが互いに反対の側に設けられていて、アーム機構25では、固定プーリ8から回転プーリ15側を見て左側に位置するベルト半部17aにテンションローラ22が当接しているため、左側のベルト半部17aの長さが、右側のベルト半部17bの長さよりも長くなっている。そのため、第1のアーム13が熱膨張により伸びると、ベルト半部17aに作用する張力よりもベルト半部17bに作用する張力の方が大きくなり、両ベルト半部17a,17bに作用する張力に差が生じる。そのため、回転プーリ15は、この張力の差を零にするように、図4において時計方向にΔθ1 だけ回転する。これによりアーム26が時計方向にΔθ1 回動して、その先端の位置がずれる。またこのアーム26の回転により回転プーリ29は反時計方向にΔθ1 /2だけ回転させられ、ハンド部材40が反時計方向にΔθ1 /2だけ回動する。
【0062】またアーム機構38では、固定プーリ27から回転プーリ29側を見て右側に位置するベルト半部30bにテンションローラ35が当接しているため、右側のベルト半部30bの長さが左側のベルト半部30aの長さよりも長くなっている。そのため、アーム26が熱膨張により伸びた際に、ベルト半部30aに作用する張力の方がベルト半部30bに作用する張力よりも大きくなり、回転プーリ29は、これらのベルト半部に作用する張力の差を零にするべく、図4においてΔθ2 だけ反時計方向に回転しようとし、ハンド部材40が反時計方向にΔθ2 だけ回動しようとする。
【0063】従って、アーム13及び26の熱膨張によって回転プーリ27及び29にそれぞれ生じる回転偏位に基づくハンド部材の先端位置の変位をキャンセルするように、張力付与装置24及び37によりベルト半部17a及び30bにそれぞれ与える張力を調整する(ベルト半部17a及び30bの長さを調節する)ことにより、アーム13及び26の熱膨張によりハンド部材40に生じる回動方向の偏位を零に近付けることができ、これにより、温度上昇時にハンド部材の先端の幅方向の偏位量ΔL(図2参照)を零に近付けることができる。
【0064】実際には、ベルト17及び30の各部の熱膨張の不均一性や、アーム13及び26の熱膨張の不均一性等により、ハンド部材40の偏位量を完全に零にすることは難しいが、上記のように構成して張力付与装置24及び37からベルト17及び30に与える張力を調整することにより、温度上昇時のハンド部材40の偏位量を実用上支障がない範囲に収めることができる。
【0065】上記の説明では、アーム13及び26の熱膨脹により回転プーリ27及び29にそれぞれ生じる回転変位をキャンセルするように、ベルト17及び30に与える張力の双方を調整するとしたが、ベルト17及び30の一方に与える張力のみをアーム13及び26の熱膨脹により回転プーリ27及び29にそれぞれ生じる回転変位をキャンセルするのに適した大きさに調整するようにしてもよいのはもちろんである。
【0066】図5は本発明の第2の実施形態を示したもので、この例では、アーム機構25の固定プーリ8の中心軸線と回転プーリ15の中心軸線とを含む平面の両側で、ベルト17の半部17a及び17bにそれぞれ当接する対のテンションローラ22A及び22Bが設けられ、テンションローラ22A及び22Bと、これらのテンションローラの位置を調整する機構(図示せず。)とにより、第1の張力付与装置が構成されている。同様に、アーム機構38の固定プーリ27の中心軸線と回転プーリ29の中心軸線とを含む平面の両側でベルト30の半部30a及び30bにそれぞれ当接する対のテンションローラ35A及び35Bが設けられ、テンションローラ35A及び35Bと、これらのテンションローラの位置を調整する機構(図示せず。)とにより、第2の張力付与装置が構成されている。
【0067】図5に示した例では、テンションローラ22A,22Bの位置及び35A,35Bの位置を調整することにより、ベルト17及び30に動力の伝達に必要な張力を与えるとともに、テンションローラ22A,22Bの位置及び35A,35Bの位置の少なくとも一方を微調整して、アーム13及び26の熱膨張に伴って生じるハンド部材40の回動方向の偏位を許容範囲内に収めるように、ベルト17及び30にそれぞれ与える張力の少なくとも一方を微調整する。
【0068】図5の例において、アーム13及び26の熱膨張に伴って生じるハンド部材40の回動方向の偏位を許容範囲内に収めるようにベルト17及び30の張力を調整する際の考え方は、図3及び図4に示した例と同様であり、温度上昇時にベルト17の両半部17a及び17bに作用する張力の差により生じる回転プーリ15の回転変位と、ベルト30の両半部30a及び30bに作用する張力の差により生じる回転プーリ29の回転変位とがキャンセルし合うように、テンションローラ22A,22B及び35A,35Bからベルト17及び30にそれぞれ与える張力の少なくとも一方を調整すればよい。
【0069】即ち、温度上昇時にベルト17の両半部の張力の差により回転プーリ15に生じる回転変位の方向が、ベルト30の両半部の張力の差により回転プーリ29に生じる回転変位の方向と逆方向で、かつベルト30の両半部の張力の差により回転プーリ29に生じる回転変位量の大きさが、ベルト17の両半部の張力の差により回転プーリ15に生じる回転変位量の大きさの1/2になるように、テンションローラ22A,22B及び35A,35Bの位置を調整すればよい。
【0070】例えば、図5において、ベルト17の半部17aの長さを17bの長さよりも長くするようにテンションローラ22Aの位置を第1のアーム13の幅方向の中央寄りに調整し、ベルト30の半部30Aの長さを半部30Bの長さよりも短くするようにテンションローラ35Bの位置を第2のアーム26の幅方向の中央寄りに調整すると、温度上昇時にアーム13の伸びにより回転プーリ15に生じる回転変位とアーム26の伸びにより回転プーリ29に生じる回転変位の方向とを逆にすることができ、この状態でテンションローラ22A及び35Bの位置を微調整することにより、ハンド部材の回動方向の偏位を許容範囲内に収めることができる。
【0071】図5のように各ベルトの両半部にそれぞれ当接する対のテンションローラを設ける場合、各対のテンションローラの位置は個別に調整し得るようにしてもよく、一括して調整し得るようにしてもよい。
【0072】例えば、固定プーリ8の中心軸線と回転プーリ15の中心軸線とを含む平面と平行なX方向に移動自在な1つのスライダを第1のアーム13に設けて、このスライダにテンションローラ22A及び22Bを支持するとともに、該スライダを任意の位置に固定する機構を設けることにより、テンションローラ22A及び22BのX方向の位置を一括して調整するように第1の張力付与装置を構成することができる。
【0073】前段のアーム機構25の対のテンションローラ22A及び22Bと後段のアーム機構38の対のテンションローラ35A及び35BとをX方向に一括して調整し得るように構成した場合、各対のテンションローラを対称に配置した場合でも、図1に示したアームの温度変化によりハンド部材40の先端に生じる偏位ΔLは半減する。この半減した偏位が許容範囲であれば、本発明の目的を達成することができる。
【0074】また、固定プーリ8の中心軸線と回転プーリ15の中心軸線とを含む平面と平行なX方向に移動自在な2つのスライダを第1のアーム13に設けて、これらのスライダにそれぞれテンションローラ22A及び22Bを支持するとともに、両スライダを任意の位置で固定する機構を設けて、テンションローラ22A及び22BのX方向の位置をそれぞれ個別に調整するように第1の張力付与装置を構成することもできる。
【0075】更に、固定プーリ8の中心軸線と回転プーリ15の中心軸線とを含む平面に対して角度を成す方向(例えばX方向に対して直角なY方向)に移動自在な2個のスライダを第1のアーム13に設けて、これらのスライダにテンションローラ22A及び22Bをそれぞれ支持するとともに、これらのスライダを任意の位置で固定する機構を設けて、テンションローラ22A及び22BのY方向の位置をそれぞれ個別に調整するように構成することもできる。
【0076】第2のアーム側に設けるテンションローラ35A及び35Bと、両ローラの位置調整機構とにより構成される第2の張力付与装置も、上記と同様に構成することができる。
【0077】図6は、図5のように、各ベルトの両半部にそれぞれテンションローラを当接させる場合のより具体的な実施形態を示したもので、この例では、第1のアーム13の底板部に設けたガイド溝18により、図4に示されたものと同様なスライダ19が第1のアームの長手方向にスライド自在に支持されている。スライダ19には、ローラ支持アーム20の一端がピン21を介して回動自在に支持されていて、このアーム20の他端に回転自在に支持されたテンションローラ22Aが、固定プーリ8から回転プーリ15側を見て左側に位置するベルト半部17aに外側から当接されている。またスライダ19に回転自在に支持されたテンションローラ22Bが固定プーリ8から回転プーリ15側を見て右側に位置するベルト半部17bに外側から当接されている。スライダ19の起立壁19aに設けられたネジ孔に螺合されたテンション調整用ボルト23がアーム20に当接され、このボルト23を回転させて進退させることにより、テンションローラ22Aの位置を調整し得るようになっている。またスライダ19を任意の位置で固定する図示しない固定機構が設けられていて、第1のアーム13の長手方向に対するスライダ19の位置を調整することにより、テンションローラ22A及び22Bからベルト半部17a及び17bにそれぞれ与えられる張力が調整されるようになっている。この例では、スライダ19と、アーム20と、テンションローラ22A及び22Bと、テンション調整用ボルト23とにより、第1の張力付与装置24が構成されている。
【0078】また第2のアーム26の底板部に設けたガイド溝31により、図4に示されたものと同様なスライダ32が第2のアームの長手方向にスライド自在に支持されている。スライダ32には、ローラ支持アーム33の一端がピン34を介して回動自在に支持されていて、このアーム33の他端に回転自在に支持されたテンションローラ35Bが、固定プーリ27から回転プーリ29側を見て右側に位置するベルト半部30bに外側から当接されている。またスライダ32に回転自在に支持されたテンションローラ35Aが固定プーリ27から回転プーリ29側を見て左側に位置するベルト半部30aに外側から当接されている。スライダ32の起立壁32bに設けられたネジ孔に螺合されたテンション調整用ボルト36がアーム33の側面に当接され、このボルト36を回転させて進退させることにより、テンションローラ35Bの位置を調整し得るようになっている。またスライダ32を任意の位置で固定する図示しない固定機構が設けられていて、第2のアーム26の長手方向に対するスライダ32の位置を調整することにより、テンションローラ35A及び35Bからベルト半部30a及び30bにそれぞれ与えられる張力が調整されるようになっている。この例では、スライダ32と、アーム33と、テンションローラ35A及び35Bと、テンション調整用ボルト36とにより、第2の張力付与装置37が構成されている。
【0079】図6に示した例では、スライダ19及び32の位置を調整して、テンションローラ22A,22B及び35A,35Bをそれぞれ一括して移動させることにより、ベルト17及び30に動力伝達に必要な張力を与えた上で、テンション調整用ボルト23及び36によりテンションローラ22A及び35Bの位置を個別に調整して、温度上昇時にアーム13及び26の熱膨脹に起因して回転プーリ15及び29により生じる回転変位に基づくハンド部材の偏位をキャンセルするように、テンションローラ22A及び35Bからベルト半部17a及び30bにそれぞれ与える張力を微調整することにより、温度上昇時のハンド部材40の回動方向の偏位を許容範囲内に収めることができる。
【0080】この場合も、テンションローラ22A及び35Bからベルト半部17a及び30bにそれぞれ与える張力の一方のみを微調整することにより、温度上昇時のハンド部材40の回動方向の偏位を許容範囲内に収めることができる。
【0081】図4に示した例では、アーム機構25及び38のテンションローラ22及び35を回動自在なアーム20及び32に支持することにより、各アームに支持されたテンションローラを固定プーリの中心軸線と回転プーリの中心軸線とを含む平面に対して角度をなす方向に位置調整し得るようにしているが、これらのテンションローラの位置調整機構は上記の例に限定されるものではなく、例えば、螺進機構等によりアーム13及び26のそれぞれの幅方向に進退可能に設けた支持部材にテンションローラ22及び35を取り付けて、両テンションローラを支持した支持部材を螺進機構等により変位させるように構成することによっても、テンションローラ22及び35の位置を微調整することができる。
【0082】図4に示した例では、アーム機構25及び38のテンションローラ22及び35をそれぞれのアーム機構の固定プーリから回転プーリ側を見て左側及び右側に位置するベルト半部に外側から当接させているが、同図に示した例において、アーム機構25及び38のテンションローラ22及び35をそれぞれのアーム機構の固定プーリから回転プーリ側を見て右側及び左側に位置するベルト半部に外側から当接させるようにしてもよいのはもちろんである。
【0083】また上記の各例では、テンションローラをベルトの外側に配置しているが、テンションローラをベルトの内側に設けて、該テンションローラをベルトに内側から当接させるようにしてもよい。
【0084】上記の例では、2段階のアーム機構を備えたワーク搬送用ロボットに本発明を適用したが、アーム機構が3段以上設けられる更に多段の回動アーム形搬送用ロボットにも本発明を適用することができるのはもちろんである。
【0085】また、複数のアーム機構の内、すべてのアーム機構のベルトに動力伝達に必要な張力を与える機構を備えた上で、少なくとも一つのアーム機構に、温度上昇時のハンド部材の回動方向の偏位を許容範囲内に調整するようにベルトに与える張力を微調整する張力微調整機構を設ける(例えば、動力伝達に必要な張力を与えるテンションローラの外に張力微調整用のテンションローラを設ける)ようにしてもよい。
【0086】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、複数段設けられるアーム機構のそれぞれのアームの熱膨脹収縮に起因するベルトの張力の変化により生じるハンド部材の偏位を許容範囲内に収めるように調整された張力を各アーム機構のベルトに与える張力付与装置を少なくとも1つのアーム機構に対して設けたので、アームの温度変化によりハンド部材の先端に生じる偏位により、ワークの搬送に支障を来すおそれをなくして、ロボットの信頼性を高めることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用するワーク搬送用ロボットの外観の一例を示した斜視図である。
【図2】従来のワーク搬送用ロボットの要部の構成を、アームの天板部を外した状態で示した平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の構造を示す縦断面図である。
【図4】図3に示したロボットの要部の構成をアームの天板部を外した状態で示した平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の要部の構成を構造を、アームの天板部を外した状態で示した平面図である。
【図6】図5に示したロボットにおいて用いる張力付与装置の構成を更に具体的にした実施形態の要部の構成を示した図5と同様の平面図である。
【符号の説明】
8…固定プーリ、12…アーム駆動用電動駆動装置、13…第1のアーム、15…回転プーリ、17…ベルト、17a,17b…ベルト半部、25…前段のアーム機構、26…第2のアーム、27…固定プーリ、29…回転プーリ、30…ベルト、38…後段のアーム機構、40…ハンド部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 固定プーリと、前記固定プーリと中心軸線を共有した状態で配置される入力部を一端側に有して該入力部の中心軸線を中心にして回動し得るように前記固定プーリに対して回動自在に支持されたアームと、前記アームの他端側に配置されて該アームに対して回転自在に支持された回転プーリと、前記固定プーリと回転プーリとの間に張設されて前記アームの回動に伴って生じる前記固定プーリの前記アームに対する相対的回転を前記回転プーリに伝達するベルトとを備えたアーム機構が複数段設けられて、後段のアーム機構のアームの入力部が前段のアーム機構の回転プーリに連結されるとともに、後段のアーム機構の固定プーリが前段のアーム機構のアームに対して固定された搬送機構と、前記搬送機構の最終段のアーム機構の回転プーリに結合されたワーク保持用のハンド部材と、前記搬送機構の初段のアーム機構のアームの入力部を回転駆動する駆動部と、を備えたワーク搬送用ロボットにおいて、前記搬送機構の複数段のアーム機構のそれぞれのアームの熱膨脹収縮に起因するベルトの張力の変化により前記ハンド部材に生じる回動方向の偏位を許容範囲内に収めるように調整された張力をベルトに与える張力付与装置を少なくとも1つのアーム機構に対して設けたこと、を特徴とするワーク搬送用ロボット。
【請求項2】 固定プーリと、前記固定プーリと中心軸線を共有した状態で配置される入力部を一端側に有して該入力部の中心軸線を中心にして回動し得るように前記固定プーリに対して回動自在に支持されたアームと、前記アームの他端側に配置されて該アームに対して回転自在に支持された回転プーリと、前記固定プーリと回転プーリとの間に張設されて前記アームの回動に伴って生じる前記固定プーリの前記アームに対する相対的回転を前記回転プーリに伝達するベルトとを備えたアーム機構が複数段設けられて、後段のアーム機構のアームの入力部が前段のアーム機構の回転プーリに連結されるとともに、後段のアーム機構の固定プーリが前段のアーム機構のアームに対して固定された搬送機構と、前記搬送機構の最終段のアーム機構の回転プーリに結合されたワーク保持用のハンド部材と、前記搬送機構の初段のアーム機構のアームの入力部を回転駆動する駆動部と、を備えたワーク搬送用ロボットにおいて、前記各アーム機構の固定プーリの中心軸線と回転プーリの中心軸線とを含む平面の両側で各アーム機構のベルトに当接して該ベルトに張力を与える対のテンションローラが各アーム機構に対して設けられていて、前記搬送機構を構成する複数段のアーム機構のアームの熱膨脹収縮により前記ハンド部材に生じる回動方向の偏位を許容範囲内に収めるように、少なくとも1つのアーム機構に対して設けられた対のテンションローラによりベルトに与えられる張力が調節されていること、を特徴とするワーク搬送用ロボット。
【請求項3】 前記各アーム機構に対して設けられた対のテンションローラは、各アーム機構の固定プーリの中心軸線と回転プーリの中心軸線とを含む平面と平行な方向に位置調整可能に設けられて、該対のテンションローラの位置を調整することにより各アーム機構のベルトに与える張力を調整し得るように構成されている請求項2に記載のワーク搬送用ロボット。
【請求項4】 前記各アーム機構に対して設けられた対のテンションローラは、各アーム機構の固定プーリの中心軸線と回転プーリの中心軸線とを含む平面と平行な方向に対して角度を持った方向に位置調整可能に設けられて、該対のテンションローラの位置を調整することにより各アーム機構のベルトに与える張力を調整し得るように構成されている請求項2に記載のワーク搬送用ロボット。
【請求項5】 前記各アーム機構に対して設けられた対のテンションローラは、それぞれの位置を一括して調整し得るように設けられている請求項2ないし4のいずれか1つに記載のワーク搬送用ロボット。
【請求項6】 前記対のテンションローラはそれぞれの位置を個別に調整し得るように設けられている請求項2ないし4のいずれか1つに記載のワーク搬送用ロボット。
【請求項7】 固定プーリと、前記固定プーリと中心軸線を共有した状態で配置される入力部を一端側に有して該入力部の中心軸線を中心にして回動し得るように前記固定プーリに対して回動自在に支持されたアームと、前記アームの他端側に配置されて該アームに対して回転自在に支持された回転プーリと、前記固定プーリと回転プーリとの間に張設されて前記アームの回動に伴って生じる前記固定プーリの前記アームに対する相対的回転を前記回転プーリに伝達するベルトとを備えたアーム機構が複数段設けられて、後段のアーム機構のアームの入力部が前段のアーム機構の回転プーリに連結されるとともに、後段のアーム機構の固定プーリが前段のアーム機構のアームに対して固定された搬送機構と、前記搬送機構の最終段のアーム機構の回転プーリに結合されたワーク保持用のハンド部材と、前記搬送機構の初段のアーム機構のアームの入力部を回転駆動する駆動部と、を備えたワーク搬送用ロボットにおいて、前記各アーム機構の固定プーリの中心軸線と回転プーリの中心軸線とを含む平面の片側で固定プーリと回転プーリとの間を伸びるベルトの半部に当接して該ベルトに張力を与えるテンションローラが各アーム機構に対して設けられ、各アーム機構に対して設けられたテンションローラと隣接する他のアーム機構に対して設けられたテンションローラとは、それぞれのアーム機構の固定プーリ側から回転プーリを見たときに左右方向の異なる側で固定プーリと回転プーリとの間を伸びているベルト半部に当接するように設けられ、前記搬送機構を構成する複数段のアーム機構のアームの熱膨脹収縮により前記ハンド部材に生じる回動方向の偏位を許容範囲内に収めるように、少なくとも1つのアーム機構に対して設けられたテンションローラからベルトに与えられる張力が調節されていること、を特徴とするワーク搬送用ロボット。
【請求項8】 前記各アーム機構に対して設けられたテンションローラは、各アーム機構の固定プーリの中心軸線と回転プーリの中心軸線とを含む平面と平行な方向に位置調整可能に設けられて、該テンションローラの位置を調整することにより各アーム機構のベルトに与える張力を調整し得るように構成されている請求項7に記載のワーク搬送用ロボット。
【請求項9】 前記各アーム機構に対して設けられたテンションローラは、各アーム機構の固定プーリの中心軸線と回転プーリの中心軸線とを含む平面と平行な方向に対して角度を持った方向に位置調整可能に設けられて、該テンションローラの位置を調整することにより各アーム機構のベルトに与える張力を調整し得るように構成されている請求項7に記載のワーク搬送用ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2002−283271(P2002−283271A)
【公開日】平成14年10月3日(2002.10.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−85779(P2001−85779)
【出願日】平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】