説明

作業車の伝動構造

【課題】 ミッションケースに対する伝動系の組み付け性を効果的に向上させる。
【解決手段】 共通の軸心P1を有するようにミッションケース5に内蔵した一対の伝動軸25,26間での伝動状態を切り換えるクラッチ27を、軸心P1と直交する姿勢の操作軸45のその軸心P2周りでの回動に連動して、一方の伝動軸25に備えた被接続部43に対して、他方の伝動軸26に備えた接続部44が軸心P1に沿って断続変位するよう構成し、ミッションケース5を、一方の伝動軸25を収容する上手側ケース部58と、他方の伝動軸26を収容する下手側ケース部59とに分割可能に構成し、それら上手側ケース部58と下手側ケース部59との分割位置を、クラッチ27における被接続部43と接続部44との接続位置と一致するよう設定し、接続部44を収容する下手側ケース部59の上手側ケース部58との分割端近くに、操作軸45を支持する支持部71を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミッションケースに内蔵される伝動系に、共通の軸心を有するように一直線状に並設される一対の伝動軸、及び、それら一対の伝動軸を連動連結する伝動入り状態と、その連動連結を解除する伝動切り状態とに切り換え可能なクラッチを備えてある作業車の伝動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車の伝動構造においては、共通の軸心を有するように一直線状に並設される一対の伝動軸である駆動軸と従動軸との伝動状態を切り換えるクラッチとして手動操作式クラッチを備え、この手動操作式クラッチを、駆動軸とその軸心周りに一体回転する駆動側の爪体、従動軸とその軸心に沿う方向に相対摺動可能な状態でその軸心周りに一体回転する従動側の爪体、駆動軸及び従動軸を一連で覆うように形成されたミッションケースの側壁部に、駆動軸及び従動軸の軸心と交差する方向に向き設定された軸心周りに相対回動可能に支持された操作軸、及び、その操作軸と従動側の爪体とを、操作軸のその軸心周りでの回動に連動して従動側の爪体が従動軸の軸心に沿う方向に変位するように連係するL字形ピン、などを備えて、操作軸のその軸心周りの回動で、従動側の爪体が駆動側の爪体に接続して駆動軸と従動軸とを連動連結する伝動入り状態と、従動側の爪体が駆動側の爪体から離間して駆動軸と従動軸との連動連結を解除する伝動切り状態とに切り換え可能となるように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−297978号公報(段落番号0008〜0009、図2〜3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の構成によると、駆動軸及び従動軸と交差する方向に姿勢設定された状態となる手動操作式クラッチの操作軸を、駆動軸及び従動軸を一連で覆うように形成されたミッションケースの側壁部に、その軸心周りに相対回動可能となるように支持させることから、ミッションケース内に手動操作式クラッチを組み付ける際には、手動操作式クラッチの構成部品や駆動軸及び従動軸などを、ミッションケース内の所定位置に規定の組み付け順で個々に組み付けていく必要がある上に、操作軸と従動側の爪体とをL字形ピンで連係する際には、従動側の爪体を支持する従動軸及び操作軸や連係部材などの組み付けを終えた後の作業領域が制限された狭いミッションケース内において、従動側の爪体を、従動軸に支持させるようにしながら、その従動軸と交差する方向に姿勢設定された操作軸に、連係部材を介して連係させるようにしなければならないことから、クラッチの組み付けにかなりの手間を要することになり、そのため、ミッションケースに対する伝動系組み付け行程のライン化を図るようにしても、手間のかかるクラッチ組み付け行程などおいてライン速度を上げることができず、ライン化による生産性の向上を図ることが難しくなっていた。
【0004】
本発明の目的は、ミッションケースに内蔵されるクラッチなどの組み付けを簡単に行えるようにして、ミッションケースに対する伝動系組み付け行程のライン化による生産性の向上を効果的に図れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための手段として、本発明では、ミッションケースに内蔵される伝動系に、共通の軸心を有するように一直線状に並設される一対の伝動軸を備え、それら一対の前記伝動軸のうちの一方の伝動軸に、この伝動軸と前記軸心周りに一体回転する被接続部を備え、一対の前記伝動軸のうちの他方の伝動軸に、この伝動軸と前記軸心に沿う方向に相対摺動可能な状態で前記軸心周りに一体回転する接続部を備え、前記ミッションケースに、前記軸心と交差する方向に姿勢設定された操作軸をその軸心周りに相対回動可能に支持する支持部を設け、前記接続部と前記操作軸とを、前記操作軸のその軸心周りでの回動に連動して前記接続部が前記伝動軸の前記軸心に沿う方向に変位するように連係する連係部材を設け、前記被接続部と前記接続部と前記操作軸と前記連係部材とから、前記操作軸のその軸心周りの回動で、前記接続部が前記被接続部に接続して一対の前記伝動軸を連動連結する伝動入り状態と、前記接続部が前記被接続部から離間して一対の前記伝動軸の連動連結を解除する伝動切り状態とに切り換え可能なクラッチを構成し、前記ミッションケースを、前記伝動系における一対の前記伝動軸のうちの伝動方向上手側に位置する伝動軸を収容する上手側ケース部と、前記伝動系における一対の前記伝動軸のうちの伝動方向下手側に位置する伝動軸を収容する下手側ケース部とに分割可能に構成し、それら前記上手側ケース部と前記下手側ケース部との分割位置を、前記クラッチにおける前記被接続部と前記接続部との接続位置と一致又は略一致するように設定し、前記上手側ケース部と前記下手側ケース部のうち、前記接続部を収容する一方のケース部における他方のケース部との分割端近傍箇所に前記支持部を設けてある。
【0006】
この構成によると、例えば、上手側ケース部に接続部を収容する構造では、その上手側ケース部における下手側ケース部との分割端に形成される開口から、上手側ケース部に収容される各種伝動軸や伝動ギヤなどを上手側ケース部の所定位置に組み付け、かつ、操作軸を、その上手側ケース部における下手側ケース部との分割端近傍箇所に設けた支持部に支持させた後、接続部を、その上手側ケース部に収容した一方の伝動軸に装着するようにしながら、連係部材を介して操作軸に連係する一方で、下手側ケース部における上手側ケース部との分割端に形成される開口から、下手側ケース部に収容される各種伝動軸や伝動ギヤなどを下手側ケース部の所定位置に組み付けた後、被接続部を、その下手側ケース部に収容した他方の伝動軸に装着し、その後、上手側ケース部と下手側ケース部とを連結することで、伝動系をミッションケースに内蔵できるとともに、一対の伝動軸間での伝動状態を切り換えるクラッチを、操作軸による被接続部に対する接続部の断続操作が可能な状態に構成できる。
【0007】
逆に、下手側ケース部に接続部を収容する構造では、その下手側ケース部における上手側ケース部との分割端に形成される開口から、下手側ケース部に収容される各種伝動軸や伝動ギヤなどを下手側ケース部の所定位置に組み付けるとともに、操作軸を、その下手側ケース部における上手側ケース部との分割端近傍箇所に設けた支持部に支持させた後、接続部を、その下手側ケース部に収容した一方の伝動軸に装着するようにしながら、連係部材を介して操作軸に連係する一方で、上手側ケース部における下手側ケース部との分割端に形成される開口から、上手側ケース部に収容される各種伝動軸や伝動ギヤなどを上手側ケース部の所定位置に組み付けた後、被接続部を、その上手側ケース部に収容した他方の伝動軸に装着し、その後、上手側ケース部と下手側ケース部とを連結することで、伝動系をミッションケースに内蔵できるとともに、一対の伝動軸間での伝動状態を切り換えるクラッチを、操作軸による被接続部に対する接続部の断続操作が可能な状態に構成できる。
【0008】
つまり、上手側ケース部及び下手側ケース部の所定位置に、それらに収容される各種伝動軸や伝動ギヤなどを、それらの各ケース部の分割端に形成される開口から簡単に組み付けられる上に、クラッチの構成部品である被接続部や接続部などを組み付ける際に、先に組み付けた各種伝動軸や伝動ギヤなどによって作業領域が制限される、といった不都合を生じ難くすることができて、クラッチの被接続部や接続部などを、上手側ケース部又は下手側ケース部の所定位置にそれらの開口から簡単に組み付けられるようになり、更に、それらの組み付けを終えた上手側ケース部と下手側ケース部とを連結してミッションケースを構成するのに伴って、クラッチを、操作軸による断続操作が可能な状態に簡単に構成できる。
【0009】
従って、ミッションケースの分割位置やクラッチの操作軸を支持する支持部の配置などに創意工夫を凝らすことで、ミッションケース内に、共通の軸心を有するように一直線状に並設される一対の伝動軸や、それらの伝動軸の伝動状態を切り換えるクラッチなどを備える伝動系を組み付ける際の組み付け性を向上させることができて、伝動系組み付け行程のライン化とともにそのライン速度の上昇を図れるようになり、結果、ライン化による生産性の向上を効果的に図れることになる。
【0010】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記伝動系における複数の伝動軸とそれらの各伝動軸に対応して装備される複数の伝動ギヤとを、各伝動軸ごとに一体化して複数の伝動ユニットを構成し、前記上手側ケース部を、その上手側ケース部に内蔵される各伝動ユニットを外囲するとともに、それらの伝動ユニットにおける前記下手側ケース部から離れる側の端部を支持する支持部分が一体装備される上手側ケース本体と、この上手側ケース本体の前記下手側ケース部側に着脱可能に連結されるとともに、前記上手側ケース部に内蔵される各伝動ユニットにおける前記下手側ケース部側の端部を支持する支持部材とを備えて構成し、前記下手側ケース部を、その下手側ケース部に内蔵される各伝動ユニットを外囲するとともに、それらの伝動ユニットにおける前記上手側ケース部から離れる側の端部を支持する支持部分が一体装備される下手側ケース本体と、この下手側ケース本体の前記上手側ケース部側に着脱可能に連結されるとともに、前記下手側ケース部に内蔵される各伝動ユニットにおける前記上手側ケース部側の端部を支持する支持部材とを備えて構成し、前記上手側ケース部と前記下手側ケース部とを、それらの前記支持部材間に前記クラッチの収容空間を備えるように形成し、前記支持部を、前記上手側ケース部と前記下手側ケース部のうち、前記接続部を収容する一方のケース部における他方のケース部との分割端と前記支持部材の連結位置との間に設けてある。
【0011】
この構成によると、先ず、ミッションケースに内蔵される伝動系を構成する複数の伝動軸やそれらの各伝動軸に対応して装備される複数の伝動ギヤなどを、各伝動軸ごとに一体化して複数の伝動ユニットを構成し、それらの各伝動ユニットにおける所定の一端部が、上手側ケース本体と下手側ケース本体のそれぞれに一体装備した支持部分の所定位置に位置して支持されるように、上手側ケース本体及び下手側ケース本体に、それらに対応して内蔵される各伝動ユニットを、それぞれのケース本体における支持部材との連結端に形成される開口から組み付け、その後、各伝動ユニットにおける所定の他端部が、対応する支持部材の所定位置に位置して支持されるように、上手側ケース本体と下手側ケース本体のそれぞれに対応する支持部材を連結する。
【0012】
そして、その連結後に、上手側ケース部と下手側ケース部のうちの接続部を収容する一方のケース部における他方のケース部との分割端と支持部材の連結位置との間に設けた支持部に操作軸を支持させ、かつ、接続部を、その一方のケース部に収容した一方の伝動軸に装着するようにしながら、連係部材を介して操作軸に連係する一方で、被接続部を、他方のケース部に収容した他方の伝動軸に装着した後、上手側ケース部と下手側ケース部とを、操作軸による被接続部に対する接続部の断続操作が可能な状態に連結することで、伝動系をミッションケースに内蔵できるとともに、一対の伝動軸間での伝動状態を切り換えるクラッチを構成できる。
【0013】
つまり、伝動系を構成する各種伝動軸や伝動ギヤなどを各伝動軸ごとにユニット化し、かつ、上手側ケース部と下手側ケース部のそれぞれを、ケース本体と支持部材とに分離可能にしたことで、上手側ケース部及び下手側ケース部の所定位置に対する各種伝動軸や伝動ギヤなどの組み付けを、個々の部品単位で組み付ける場合に比較して、それらの各ケース部の分割端に形成される開口からより簡単かつ迅速に行えるようになり、又、クラッチの構成部品である被接続部や接続部などを組み付ける際には、上手側ケース本体及び下手側ケース本体のそれぞれに支持部材が連結されて、クラッチの収容空間が伝動ユニットの収容空間から区画されることで、先に組み付けた各種伝動軸や伝動ギヤなどによって作業領域が制限される、といった不都合が更に生じ難くなっていることから、クラッチの被接続部や接続部などを、上手側ケース部及び下手側ケース部の所定位置にそれらの開口からより簡単に組み付けられるようになる。
【0014】
従って、伝動系やミッションケースにおける上手側ケース部及び下手側ケース部の構成などに更に創意工夫を凝らすことで、ミッションケース内に、共通の軸心を有するように一直線状に並設される一対の伝動軸や、それらの伝動軸の伝動状態を切り換えるクラッチなどを備える伝動系を組み付ける際の組み付け性を更に向上させることができて、ライン化した伝動系組み付け行程でのライン速度の上昇を更に図れるようになり、結果、ライン化による生産性の向上をより効果的に図れるようになる。
【0015】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記上手側ケース部と前記下手側ケース部のうちの前記接続部を収容する側のケース部に備えられる前記支持部材を、そのケース部のケース本体から他方のケース部にわたる周壁を備えるスペーサ状に形成し、この支持部材に、前記他方のケース部との連結端側から前記接続部を収容する収容空間を備え、かつ、その前記周壁に前記支持部を設けてある。
【0016】
この構成によると、スペーサ状に形成された支持部材が連結されるケース本体は、その支持部材における周壁の長さに応じて、その収容空間が浅くなることから、そのケース本体に対するその開口からの各種伝動軸や伝動ギヤなどの組み付けが行い易くなる。
【0017】
又、支持部材の周壁に設けた支持部に操作軸を装着してユニット化することが可能になり、そのユニット化したものを対応するケース本体に連結するようにすれば、そのケース本体に支持部材や操作軸などを個々に装着する場合に比較して、そのケース本体に対する支持部材や操作軸などの装着をより簡単かつ迅速に行えることになる。
【0018】
従って、接続部を収容する側のケース部における支持部材の形状や支持部の配置などに更に創意工夫を凝らすことで、そのケース部に各種伝動軸や伝動ギヤあるいはクラッチの操作軸などを組み付ける際の組み付け性を更に向上させることができて、ライン化した伝動系組み付け行程でのライン速度の上昇を更に図れるようになり、結果、ライン化による生産性の向上をより一層効果的に図れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1には作業車の一例であるトラクタの全体側面が示されており、このトラクタは、前部フレーム1に搭載支持されたエンジン2の後端部にクラッチハウジング3を連結し、このクラッチハウジング3の後端部に主変速装置として機能する静油圧式無段変速装置4を連結し、この静油圧式無段変速装置4の後端部にミッションケース5を連結して機体フレーム6が構成され、その機体フレーム6の後半部に、ステアリングホイール7や運転座席8などを備える搭乗運転部9が形成され、機体フレーム6の前下部に、ステアリングホイール7によって操向されるとともにエンジン動力の伝達が可能に構成された左右一対の前輪10が配備され、機体フレーム6の後下部に、エンジン動力の伝達が可能に構成された左右一対の後輪11が配備され、機体フレーム6の後端部に、図示しない各種作業装置の連結装備を可能にする左右一対のリフトアーム12やリンク機構13などが装備されるとともに、その後端部に連結装備した作業装置などに対するエンジン動力の取り出しを可能にする動力取出軸14が配備されている。
【0020】
図2〜5に示すように、エンジン2からの動力は、クラッチハウジング3に内蔵した乾式単板形の主クラッチ15を介して静油圧式無段変速装置4に伝達され、この静油圧式無段変速装置4からミッションケース5に内蔵した伝動系16などを介して左右の前輪10や左右の後輪11あるいは動力取出軸14に伝達される。
【0021】
伝動系16には、静油圧式無段変速装置4のモータ軸4aから出力される変速動力を走行用として左右の前輪10や左右の後輪11に伝達する走行伝動系16Aと、静油圧式無段変速装置4のポンプ軸4bから出力される非変速動力を作業用として動力取出軸14に伝達する作業伝動系16Bとが備えられ、走行伝動系16Aは、静油圧式無段変速装置4による変速後の動力を更に変速する副変速装置として機能するギヤ式変速装置17、このギヤ式変速装置17による変速後の動力を前輪駆動系18と後輪駆動系19とに分配する動力分配軸20、この動力分配軸20と一体回転する前輪駆動ギヤ(伝動ギヤの一例)21から左右の前輪10への伝動状態を切り換える前輪用クラッチ22、及び、左右の後輪11の差動を許容しながら動力分配軸20の後端部に一体形成した後輪駆動用のスパイラルベベルピニオンギヤ20aからの動力を左右の後輪11に分配供給する後輪用差動装置23、などを備えて構成され、作業伝動系16Bは、静油圧式無段変速装置4のポンプ軸4bにカップリング24を介して連動連結される第1伝動軸(一方の伝動軸の一例)25、この第1伝動軸25と共通の軸心P1を有するように一直線状に並設される第2伝動軸(他方の伝動軸の一例)26、第1伝動軸25から第2伝動軸26への伝動状態を切り換える作業用クラッチ(クラッチの一例)27、及び、第2伝動軸26の中間部に一体形成した小径ギヤ26aから動力取出軸14に減速伝動する減速装置28、などを備えて構成されている。
【0022】
ギヤ式変速装置17は、静油圧式無段変速装置4のモータ軸4aにカップリング29を介して連動連結される第1変速軸(伝動軸の一例)30、第1変速軸30と所定間隔を隔てて平行に並設される第2変速軸(伝動軸の一例)31、第1変速軸30に一体形成される第1低速ギヤ30a、第1変速軸30と一体回転するように第1変速軸30にスプライン嵌合される第1中速ギヤ(伝動ギヤの一例)32と第1高速ギヤ(伝動ギヤの一例)33、第1低速ギヤ30aと噛合する状態で第2変速軸31に相対回転可能に支持される第2低速ギヤ(伝動ギヤの一例)34、第2変速軸31と相対摺動可能な状態で一体回転するように第2変速軸31にスプライン嵌合される第2中速ギヤ(伝動ギヤの一例)35、及び、第1高速ギヤ33と噛合する状態で第2変速軸31に相対回転可能に支持される第2高速ギヤ(伝動ギヤの一例)36、などを備え、その第2中速ギヤ35が、図外の連係機構を介して搭乗運転部9に配備した副変速レバー37(図1参照)に連係され、この副変速レバー37の操作に基づいて、第2中速ギヤ35に一体形成した噛合部35aが第2低速ギヤ34に一体形成した被噛合部34aに噛合する低速伝動状態と、第2中速ギヤ35が第1中速ギヤ32に噛合する中速伝動状態と、第2中速ギヤ35の噛合部35aが第2高速ギヤ36に一体形成した被噛合部36aに噛合する高速伝動状態との3段に変速するように構成されている。
【0023】
前輪用クラッチ22は、ミッションケース5の下部において前方に向けて突出する前輪用出力軸38や、この前輪用出力軸38と相対摺動可能な状態で一体回転するように前輪用出力軸38にスプライン嵌合されるスライドギヤ39、などを備え、そのスライドギヤ39が、搭乗運転部9に配備した図外の操作具に操作連係され、この操作具の操作に基づいて、スライドギヤ39が前輪駆動ギヤ21と連動する中継ギヤ(伝動ギヤの一例)40に噛合する伝動入り状態と、スライドギヤ39が中継ギヤ40との噛合を解除する伝動切り状態とに切り換わるように構成されている。
【0024】
そして、前輪用出力軸38から取り出される動力は、前輪用伝動軸41や前輪用差動装置42などを介して、左右の前輪10にそれらの差動を許容する状態で分配伝達される。
【0025】
つまり、前輪駆動ギヤ21、中継ギヤ40、前輪用クラッチ22、前輪用伝動軸41、及び前輪用差動装置42、などによって、動力分配軸20からの動力を前輪駆動用として左右の前輪10に伝達する前輪駆動系18が構成されている。
【0026】
これに対し、動力分配軸20のスパイラルベベルピニオンギヤ20aや後輪用差動装置23などによって、動力分配軸20からの動力を後輪駆動用として左右の後輪11に伝達する後輪駆動系19が構成されている。
【0027】
中継ギヤ40には、前輪駆動ギヤ21に噛合する小径ギヤ部40aとスライドギヤ39が噛合される大径ギヤ部40bとを備える二段ギヤが採用されている。
【0028】
図2〜4、図6及び図7に示すように、作業用クラッチ27は、第1伝動軸25と相対摺動可能な状態で一体回転するように第1伝動軸25にスプライン嵌合される被接続部43、第2伝動軸26と相対摺動可能な状態で一体回転するように第2伝動軸26にスプライン嵌合される接続部44、ミッションケース5に相対回動可能に支持される操作軸45、及び、接続部44と操作軸45とを連係する連係部材46、などを備えて構成され、その操作軸45が、連係機構47を介して搭乗運転部9に配備したPTOクラッチレバー48に連係されている。
【0029】
被接続部43及び接続部44は、それぞれ乗り上げカムによって構成され、被接続部43を構成する一方の乗り上げカムは、第1伝動軸25における第2伝動軸26側の端部にボルト連結されたカム受け用の座金49によって抜け止めされた状態で、第1伝動軸25に外嵌した押しバネ50によって接続部44に向けて噛合付勢されている。接続部44を構成する他方の乗り上げカムは、その後部側の外周部に連係用の環状溝44aが形成されている。操作軸45は、その軸心P2が第2伝動軸26の軸心P1と直交する方向に沿うように姿勢設定され、その軸心P2周りにミッションケース5に対して回動する。連係部材46は、L字状に屈曲形成された丸棒鋼材からなり、その一端部が操作軸45に溶接され、かつ、他端部が接続部44の環状溝44aに係入され、操作軸45がその軸心P2周りに回動するのに伴って、その軸心P2周りに揺動して接続部44を第2伝動軸26の軸心P1に沿って摺動変位させる。
【0030】
図6及び図7に示すように、連係機構47は、操作軸45の外端部にピン連結される揺動アーム51、この揺動アーム51とPTOクラッチレバー48とにわたる操作ワイヤ52、及び、接続部44を被接続部43から離間させる方向に操作軸45が回動するように揺動アーム51を揺動付勢する捩りバネ53、などによって、PTOクラッチレバー48を切り位置から入り位置に揺動させた場合には、捩りバネ53の付勢に抗して操作軸45が回動操作され、PTOクラッチレバー48を入り位置から切り位置に揺動させた場合には、捩りバネ53の付勢で操作軸45が回動操作されるように、PTOクラッチレバー48と操作軸45とを連係する状態に構成されている。
【0031】
つまり、作業用クラッチ27は、PTOクラッチレバー48の操作に基づいて、接続部44が被接続部43に接続して第1伝動軸25と第2伝動軸26とを連動連結する伝動入り状態と、接続部44が被接続部43から離間して第1伝動軸25と第2伝動軸26との連動連結を解除する伝動切り状態とに切り換わるように、又、伝動入り状態では、第1伝動軸25から第2伝動軸26へのエンジン動力の伝達を行う一方で、作業装置の慣性力による第1伝動軸25に対する第2伝動軸26の過剰回転を許容するように構成されており、これによって、作業装置の慣性力に起因して発生する静油圧式無段変速装置4の損傷などを未然に回避できる。
【0032】
図2、図4及び図5に示すように、減速装置28は、第2伝動軸26の小径ギヤ26aに噛合する状態で動力分配軸20に相対回転可能に支持される第1減速ギヤ(伝動ギヤの一例)54、この第1減速ギヤ54に噛合する第2減速ギヤ(伝動ギヤの一例)55、及び、この第2減速ギヤ55と一体回転するようにスプライン嵌合されるとともに動力取出軸14がカップリング56を介して連動連結される減速軸(伝動軸の一例)57、などを備えて構成されている。
【0033】
第1減速ギヤ54には、第2伝動軸26の小径ギヤ26aに噛合する大径ギヤ部54aと第2減速ギヤ55が噛合される小径ギヤ部54bとを備える二段ギヤが採用されている。又、減速軸57には、前輪駆動系18の中継ギヤ40が相対回転可能に外嵌装着されている。
【0034】
図1〜7に示すように、ミッションケース5は、走行伝動系16Aのギヤ式変速装置17や作業伝動系16Bの第1伝動軸25などの伝動系16における伝動方向上手側に位置するもの収容する上手側ケース部58と、走行伝動系16Aの動力分配軸20及び後輪用差動装置23や作業伝動系16Bの第2伝動軸26及び減速装置28などの伝動系16における伝動方向下手側に位置するもの収容する下手側ケース部59とに分割可能に構成されるとともに、その分割位置が、作業用クラッチ27における被接続部43と接続部44との接続位置と一致するように設定されている。
【0035】
上手側ケース部58は、ギヤ式変速装置17や第1伝動軸25などを外囲する上手側ケース本体58Aと、この上手側ケース本体58Aの下手側ケース部59側に着脱可能にボルト連結される壁状のベアリングホルダ(支持部材の一例)58Bとを備えて構成され、上手側ケース本体58Aには、ギヤ式変速装置17の各変速軸30,31や第1伝動軸25における下手側ケース部59から離れる側の各軸端部を、それぞれに対応するベアリング60〜62を介して支持する壁状のベアリングホルダ部分(支持部分の一例)58aが一体形成されている。ベアリングホルダ58Bは、ギヤ式変速装置17の各変速軸30,31や第1伝動軸25における下手側ケース部59側の各軸端部を、それぞれに対応するベアリング63〜65を介して支持するように形成されている。
【0036】
下手側ケース部59は、動力分配軸20や第2伝動軸26及び後輪用差動装置23などを外囲する下手側ケース本体59A、この下手側ケース本体59Aの上手側ケース部58側に着脱可能にボルト連結されるベアリングホルダ(支持部材の一例)59B、下手側ケース本体59Aの底壁部に着脱可能にボルト連結される補助ケース59C、下手側ケース本体59Aの天壁部に着脱可能にボルト連結されるシリンダケース59D、下手側ケース本体59Aの後壁部に着脱可能にボルト連結される第1ベアリングケース59E、及び、ベアリングホルダ59Bに着脱可能にボルト連結される第2ベアリングケース59F、などを備えて構成され、下手側ケース本体59Aには、動力分配軸20や第2伝動軸26及び減速装置28の減速軸57における上手側ケース部58から離れる側の各軸端部を、それぞれに対応するベアリング66〜68を介して支持する壁状のベアリングホルダ部分(支持部分の一例)59aが一体形成されている。
【0037】
ベアリングホルダ59Bは、第2伝動軸26及び減速装置28の減速軸57における上手側ケース部58側の各軸端部を、それぞれに対応するベアリング69,70を介して支持する支持壁59bと、下手側ケース本体59Aから上手側ケース部58にわたる周壁59cとを備えるスペーサ状に形成され、その内部空間59dが、上手側ケース部58との連結端側から作業用クラッチ27の接続部44を収容する収容空間に利用され、その周壁59cに、作業用クラッチ27の操作軸45を相対回動可能に支持する支持部71が形成されている。
【0038】
補助ケース59Cは、前輪用クラッチ22の前輪用出力軸38を一対のベアリング72,73を介して支持するとともに、前輪用クラッチ22を下方から外囲し、かつ、下手側ケース本体59Aの底壁部への連結に伴って、その底壁部に形成した前輪駆動力取り出し用の開口59eを閉塞するように形成されている。
【0039】
シリンダケース59Dは、左右一対のリフトアーム12を上下揺動可能に軸支するとともに、それらのリフトアーム12を揺動駆動する油圧シリンダ74を内蔵し、かつ、下手側ケース本体59Aの天壁部への連結に伴って、後輪用差動装置23の上方を大きく開放するように天壁部に形成した開口59fを閉塞するように形成されている。
【0040】
第1ベアリングケース59Eは、動力取出軸14をベアリング75を介して支持するとともに、下手側ケース本体59Aの後壁部への連結に伴って、その後壁部に形成した作業動力取り出し用の開口59gを閉塞するように形成されている。
【0041】
第2ベアリングケース59Fは、動力分配軸20における上手側ケース部58側の軸端部を一対のベアリング76,77を介して支持するとともに、ベアリングホルダ59Bへの連結に伴って、そのベアリングホルダ59Bに形成した走行伝動用の開口59hを閉塞するように形成されている。又、ベアリングホルダ59Bと第2ベアリングケース59Fとの間には、動力分配軸20の軸心P3の沿う方向での後輪用差動装置23のスパイラルベベルギヤ78に対する動力分配軸20に備えたスパイラルベベルピニオンギヤ20aの位置を調節するためのシム79が介装されている。
【0042】
伝動系16は、6つの伝動ユニットU1〜U6を前もって構成できるようになっており、それらの伝動ユニットU1〜U6のうち、第1伝動ユニットU1は、第1変速軸30の所定位置に第1中速ギヤ32や第1高速ギヤ33などを配備して構成され、第2伝動ユニットU2は、第2変速軸31の所定位置に第2低速ギヤ34や第2中速ギヤ35及び第2高速ギヤ36などを配備して構成され、第3伝動ユニットU3は、動力分配軸20の所定位置に前輪駆動ギヤ21や第1減速ギヤ54などを配備して構成され、第4伝動ユニットU4は、補助ケース59Cに前輪用出力軸38をスライドギヤ39などを備えた状態で支持させて構成され、第5伝動ユニットU5は、減速軸57の所定位置に中継ギヤ40や第2減速ギヤ55などを配備して構成され、第6伝動ユニットU6は、第1ベアリングケース59Eに動力取出軸14を支持させて構成されている。
【0043】
第4伝動ユニットU4における補助ケース59Cと前輪用出力軸38との間、及び、第6伝動ユニットU6における第1ベアリングケース59Eと動力取出軸14との間には、それぞれオイルシール80が介装されている。
【0044】
以上の構成から、ミッションケース5内に伝動系16を組み付ける場合の手順としては、先ず、伝動系16においてユニット化が可能な伝動用の各軸14,20,30,31,38,57ごとに第1〜6の伝動ユニットU1〜U6を構成する。
【0045】
次に、上手側ケース部58の上手側ケース本体58Aに対して、先ず、第1伝動軸25と第1伝動ユニットU1及び第2伝動ユニットU2を、第1伝動軸25はその下手側ケース部59から離れる側の軸端部が、第1伝動ユニットU1は第1変速軸30における下手側ケース部59から離れる側の軸端部が、第2伝動ユニットU2は第2変速軸31における下手側ケース部59から離れる側の軸端部が、それぞれ対応するベアリング60〜62を介して上手側ケース本体58Aのベアリングホルダ部分58aに支持される状態となるように、上手側ケース本体58Aにおける下手側ケース部59との分割端に形成される開口(上手側ケース部58の開口)58bから組み入れる。
【0046】
その組み入れ後、第1伝動軸25と第1変速軸30と第2変速軸31のそれぞれにおける下手側ケース部59側の軸端部が、対応するベアリング63〜65を介して、ベアリングホルダ58Bに支持される状態となるように、上手側ケース本体58Aにベアリングホルダ58Bをボルト連結して上手側ケース部58を形成する。
【0047】
その連結後、第1伝動軸25におけるベアリングホルダ58Bから突出する軸端部に、押しバネ50及び被接続部43を外嵌装着するとともに座金49をボルト連結し、かつ、第2変速軸31におけるベアリングホルダ58Bから突出する軸端部にスプラインボス81を、相対摺動不能な状態で一体回転するように外嵌装着する。
【0048】
一方、下手側ケース部59の下手側ケース本体59Aに対して、先ず、その天壁部に形成した開口59fから後輪用差動装置23を組み入れる。
【0049】
その組み入れ後、第2伝動軸26と第3伝動ユニットU3及び第5伝動ユニットU5を、第2伝動軸26はその上手側ケース部58から離れる側の軸端部が、第3伝動ユニットU3は動力分配軸20における上手側ケース部58から離れる側の軸端部が、第5伝動ユニットU5は減速軸57における上手側ケース部58から離れる側の軸端部が、それぞれ対応するベアリング66〜68を介して下手側ケース本体59Aのベアリングホルダ部分59aに支持される状態となるように、下手側ケース本体59Aにおける上手側ケース部58との分割端に形成される開口(下手側ケース部59の開口)59iから組み入れ、かつ、ベアリングホルダ59Bの支持部71に、連係部材46を備えた操作軸45を組み入れる。
【0050】
それらの組み入れ後、第2伝動軸26と動力分配軸20と減速軸57のそれぞれにおける上手側ケース部58側の軸端部が、対応するベアリング69,70、又は、第2ベアリングケース59F及び一対のベアリング76,77を介して、ベアリングホルダ59Bの支持壁59bに支持される状態となるように、下手側ケース本体59Aにベアリングホルダ59Bをボルト連結し、かつ、後輪用差動装置23のスパイラルベベルギヤ78に対する適正位置に動力分配軸20のスパイラルベベルピニオンギヤ20aが位置するように、ベアリングホルダ59Bの支持壁59bと第2ベアリングケース59Fとの間に介装されるシム79による位置調節を行った後に、ベアリングホルダ59Bの支持壁59bに第2ベアリングケース59Fをボルト連結する。
【0051】
それらの連結後、第2伝動軸26におけるベアリングホルダ59Bの支持壁59bから突出する軸端部に接続部44を外嵌装着しながら、その接続部44の環状溝44aに連係部材46の遊端を係入し、かつ、動力分配軸20におけるベアリングホルダ59Bから突出する軸端部にスプラインボス82を一体回転する状態にスプライン嵌合し、ナット83で固定する。
【0052】
次に、下手側ケース本体59Aの底壁部に第4伝動ユニットU4を、底壁部の開口59eから挿通されるスライドギヤ39の中継ギヤ40に対する噛合が可能な状態にボルト連結するとともに、下手側ケース本体59Aの後壁部に第6伝動ユニットU6を、後壁部の開口59gから挿通された動力取出軸14がカップリング56を介して減速軸57に連動連結される状態にボルト連結し、それらの連結後、下手側ケース本体59Aの天壁部にシリンダケース59Dをボルト連結して、天壁部に形成した開口59fを閉塞し、下手側ケース部59を形成する。
【0053】
そして、上記の組み付けで得られた上手側ケース部58と下手側ケース部59とを、被接続部43に対する接続部44の接続が可能で、かつ、第2変速軸31側のスプラインボス81と動力分配軸20側のスプラインボス82とがカップリング84を介して連結されて、第2変速軸31と動力分配軸20とが連動する状態となるようにボルト連結すれば、ミッションケース5を形成しながら、そのミッションケース5に伝動系16を組み付けられるとともに、第1伝動軸25と第2伝動軸26との間での伝動状態を切り換える作業用クラッチ27を、操作軸45の回動による連係部材46を介した被接続部43に対する接続部44の断続操作が可能な状態に構成できる。
【0054】
つまり、ミッションケース5に内蔵される伝動系16のうち、ミッションケース5の伝動方向上手側部位に収容される走行伝動系16Aのギヤ式変速装置17や作業伝動系16Bの第1伝動軸25などは、上手側ケース部58における下手側ケース部59との分割端に形成される開口58bから容易に組み付けることができる。
【0055】
一方、ミッションケース5の伝動方向下手側部位に収容される走行伝動系16Aの後輪用差動装置23や作業伝動系16Bの減速装置28などのうち、伝動方向最下手側に位置する走行伝動系16Aの後輪用差動装置23は、下手側ケース部59における後輪用差動装置23の上方に形成された開口59fから、又、作業伝動系16Bの動力取出軸14は、下手側ケース部59の後壁部に形成した開口59gから、それぞれ容易に組み付けることができ、更に、それら後輪用差動装置23及び動力取出軸14よりも伝動方向上手側に位置する走行伝動系16Aの動力分配軸20及び作業伝動系16Bの第2伝動軸26及び減速装置28などは、下手側ケース部59における上手側ケース部58との分割端に形成される開口59iから容易に組み付けることができる。
【0056】
しかも、それらの組み付けを、ユニット化が可能な伝動用の各軸14,20,30,31,38,57ごとに前もって第1〜6の伝動ユニットU1〜U6を構成してから行うようにしたことで、それらのユニット化を行わずに個々に組み付ける場合に比較して、組み付け性を格別に向上させることができる。
【0057】
又、第1伝動軸25及び第2伝動軸26と直交する操作軸45の回動で操作される作業用クラッチ27の収容空間が、ミッションケース5における上手側ケース部58のベアリングホルダ58Bと下手側ケース部59のベアリングホルダ59Bとの間に位置する上手側ケース部58の開放空間58cと下手側ケース部59の開放空間59dとで形成され、又、操作軸45に連係部材46を介して連係される接続部44を収容する下手側ケース部59の開放空間59dを形成するベアリングホルダ58Bの周壁59cに、操作軸45を相対回動可能に支持する支持部71を形成することから、第1伝動軸25に対する被接続部43などの組み付け、第2伝動軸26に対する接続部44の組み付け、及び、接続部44とその移動方向と直交する姿勢に設定した操作軸45との連係部材46を介した連動連結などを、それぞれの開放空間58c,59dの開放端から容易に行える。
【0058】
そして、上記のような組み付け手順によってミッションケース5内に伝動系16を容易に組み付けられることから、その組み付け行程のライン化とともにそのライン速度の上昇を図れるようになり、結果、ライン化による生産性の向上を効果的に図れることになる。
【0059】
尚、ミッションケース5は、その前端部に静油圧式無段変速装置4をボルト連結する際に、その伝動系16の第1伝動軸25が静油圧式無段変速装置4のポンプ軸4bにカップリング24を介して連動連結され、又、その伝動系16の第1変速軸30が静油圧式無段変速装置4のモータ軸4aにカップリング29を介して連動連結されることになる。
【0060】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
〔1〕作業車としては田植機や芝刈機などであってもよい。
【0061】
〔2〕上記の最良の形態では、本発明におけるクラッチ27を作業用クラッチ27に適用したものを例示したが、それ以外に、例えば前輪用クラッチ22などに適用するようにしてもよい。
【0062】
〔3〕クラッチ27の形式としては、上記最良の形態で例示したカム式以外の例えば多板式や噛合爪式などであってもよい。
【0063】
〔4〕作業用クラッチ27の構成としては、上手側ケース部58に収容される第1伝動軸25に接続部44を装備し、下手側ケース部59に収容される第2伝動軸26に被接続部43を装備し、第1伝動軸25を収容する上手側ケース部58に、接続部44に連係部材46を介して連係される操作軸45を相対回動可能に支持する支持部71を設けるものであってもよい。
【0064】
〔5〕下手側ケース部59としては、ベアリングホルダ(支持部材)59Bに周壁59cを備えずに、下手側ケース本体59Aを、周壁59cに相当する周壁部分を有する長尺に形成してもよい。
【0065】
〔6〕下手側ケース部59の下手側ケース本体に59Aに、前輪用出力軸38やスライドギヤ39などを収容するように構成するとともに、それら前輪用出力軸38やスライドギヤ39などをユニット化した状態で、下手側ケース本体59Aにおける上手側ケース部58との分割端に形成される開口59iから組み入れるようにしてもよい。
【0066】
〔7〕ミッションケース5における上手側ケース部58と下手側ケース部59との分割位置を、作業用クラッチ27における被接続部43と接続部44との接続位置と略一致するように設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】トラクタの伝動構成を示す概略図
【図3】ミッションケースにおける上手側の伝動構成を示す縦断側面図
【図4】ミッションケースにおける中間部の伝動構成を示す縦断側面図
【図5】ミッションケースにおける下手側の伝動構成を示す縦断側面図
【図6】作業用クラッチの構成を示す要部の縦断側面図
【図7】作業用クラッチの構成を示す要部の横断平面図
【符号の説明】
【0068】
5 ミッションケース
16 伝動系
20 伝動軸(伝動ユニット)
21 伝動ギヤ(伝動ユニット)
25 伝動軸
26 伝動軸
27 クラッチ
30 伝動軸(伝動ユニット)
31 伝動軸(伝動ユニット)
32 伝動ギヤ(伝動ユニット)
33 伝動ギヤ(伝動ユニット)
34 伝動ギヤ(伝動ユニット)
35 伝動ギヤ(伝動ユニット)
36 伝動ギヤ(伝動ユニット)
40 伝動ギヤ(伝動ユニット)
43 被接続部
44 接続部
45 操作軸
46 連係部材
54 伝動ギヤ(伝動ユニット)
55 伝動ギヤ(伝動ユニット)
57 伝動軸(伝動ユニット)
58 上手側ケース部
58A 上手側ケース本体
58B 支持部材
58a 支持部分
58c 収容空間
59 下手側ケース部
59A 下手側ケース本体
59B 支持部材
59a 支持部分
59c 周壁
59d 収容空間
71 支持部
P1 軸心
P2 軸心
U1 伝動ユニット
U2 伝動ユニット
U3 伝動ユニット
U5 伝動ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッションケースに内蔵される伝動系に、共通の軸心を有するように一直線状に並設される一対の伝動軸を備え、
それら一対の前記伝動軸のうちの一方の伝動軸に、この伝動軸と前記軸心周りに一体回転する被接続部を備え、
一対の前記伝動軸のうちの他方の伝動軸に、この伝動軸と前記軸心に沿う方向に相対摺動可能な状態で前記軸心周りに一体回転する接続部を備え、
前記ミッションケースに、前記軸心と交差する方向に姿勢設定された操作軸をその軸心周りに相対回動可能に支持する支持部を設け、
前記接続部と前記操作軸とを、前記操作軸のその軸心周りでの回動に連動して前記接続部が前記伝動軸の前記軸心に沿う方向に変位するように連係する連係部材を設け、
前記被接続部と前記接続部と前記操作軸と前記連係部材とから、前記操作軸のその軸心周りの回動で、前記接続部が前記被接続部に接続して一対の前記伝動軸を連動連結する伝動入り状態と、前記接続部が前記被接続部から離間して一対の前記伝動軸の連動連結を解除する伝動切り状態とに切り換え可能なクラッチを構成し、
前記ミッションケースを、前記伝動系における一対の前記伝動軸のうちの伝動方向上手側に位置する伝動軸を収容する上手側ケース部と、前記伝動系における一対の前記伝動軸のうちの伝動方向下手側に位置する伝動軸を収容する下手側ケース部とに分割可能に構成し、
それら前記上手側ケース部と前記下手側ケース部との分割位置を、前記クラッチにおける前記被接続部と前記接続部との接続位置と一致又は略一致するように設定し、
前記支持部を、前記上手側ケース部と前記下手側ケース部のうち、前記接続部を収容する一方のケース部における他方のケース部との分割端近傍箇所に設けてある作業車の伝動構造。
【請求項2】
前記伝動系における複数の伝動軸とそれらの各伝動軸に対応して装備される複数の伝動ギヤとを、各伝動軸ごとに一体化して複数の伝動ユニットを構成し、
前記上手側ケース部を、その上手側ケース部に内蔵される各伝動ユニットを外囲するとともに、それらの伝動ユニットにおける前記下手側ケース部から離れる側の端部を支持する支持部分が一体装備される上手側ケース本体と、この上手側ケース本体の前記下手側ケース部側に着脱可能に連結されるとともに、前記上手側ケース部に内蔵される各伝動ユニットにおける前記下手側ケース部側の端部を支持する支持部材とを備えて構成し、
前記下手側ケース部を、その下手側ケース部に内蔵される各伝動ユニットを外囲するとともに、それらの伝動ユニットにおける前記上手側ケース部から離れる側の端部を支持する支持部分が一体装備される下手側ケース本体と、この下手側ケース本体の前記上手側ケース部側に着脱可能に連結されるとともに、前記下手側ケース部に内蔵される各伝動ユニットにおける前記上手側ケース部側の端部を支持する支持部材とを備えて構成し、
前記上手側ケース部と前記下手側ケース部とを、それらの前記支持部材間に前記クラッチの収容空間を備えるように形成し、
前記支持部を、前記上手側ケース部と前記下手側ケース部のうち、前記接続部を収容する一方のケース部における他方のケース部との分割端と前記支持部材の連結位置との間に設けてある請求項1に記載の作業車の伝動構造。
【請求項3】
前記上手側ケース部と前記下手側ケース部のうちの前記接続部を収容する側のケース部に備えられる前記支持部材を、そのケース部のケース本体から他方のケース部にわたる周壁を備えるスペーサ状に形成し、この支持部材に、前記他方のケース部との連結端側から前記接続部を収容する収容空間を備え、かつ、その前記周壁に前記支持部を設けてある請求項2に記載の作業車の伝動構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−82646(P2006−82646A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268299(P2004−268299)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】