説明

全周囲観察光学系及びそれを備えた全周囲観察システム

【課題】先端部の径を大型化させずに、側方の全周囲にわたる観察対象の画像を、同時に、歪ませることなく高解像に取得可能な全周囲観察光学系及びそれを備えた全周囲観察システムの提供。
【解決手段】軸Oに対して対称な角錐面をなし、且つ、夫々が軸Oに対して夫々対称な側方観察用の第1の瞳位置P1の近傍に配置され、側方の全周にわたる観察対象からの光を側方の3つ以上の領域ごとの光に分割して後方に反射する3面以上の反射面1aと、軸O上に配置され、軸Oに対して夫々対称な側方観察用の第2の瞳位置P2に瞳位置P1における瞳を拡大してリレーするリレー光学系2と、瞳位置P1と共役な瞳位置に配置された3つ以上の側方観察用の開口絞り3aと、開口絞り3aに対応して配置された3組以上の側方観察用の結像光学系3bと、結像光学系3bに対応して配置された3つ以上の側方観察用の撮像素子3cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、管状の内壁面等、側方に位置する観察対象を全周囲にわたって観察する全周囲観察光学系及びそれを備えた全周囲観察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械・設備等に設けられた管状部材や体内の器官等を観察する装置として、工業用及び医療用の内視鏡や観察装置などが広く用いられている。しかるに、このような管状体の観察においては、側方に位置する観察対象を全周囲にわたって観察できることが求められる。
従来、側方に位置する観察対象を全周囲にわたって観察することができる構成としては、例えば、次の先行文献1,2に記載の内視鏡や、特許文献3に記載の管状体の内面撮影装置に用いられたものがある。
【0003】
図8は特許文献1に記載の内視鏡における、側方に位置する観察対象を全周囲にわたって観察するための要部の構成例を示す説明図である。
特許文献1に記載の内視鏡は、図8に示すように、先端部にモータ51と、ミラー52と、撮像部53と、円筒状の観察窓54を有している。ミラー52は、モータ51の回転軸51aに取り付けられていて、観察窓54を通過した側方からの光を反射して撮像部53の方向に導くようになっている。そして、図8に示す構成を備えた特許文献1に記載の内視鏡は、モータ51を介してミラー52を回転させ、観察窓54を通過しミラー52で反射された光を、撮像部53に設けられている図示しない撮像素子で撮像することによって、側方に位置する観察対象を全周囲にわたって時分割で観察することができるようになっている。
【0004】
図9は特許文献2に記載の内視鏡における、側方に位置する観察対象を全周囲にわたって観察するための要部の構成例を示す説明図である。
特許文献2に記載の内視鏡は、図9に示すように、円錐形等の回転対称形状に形成された凸面鏡61と、凸面鏡61と対向する位置に配置された撮像部62と、円筒状の観察窓63を有している。そして、特許文献2に記載の内視鏡は、観察窓63を通過し、回転対称形状の凸面鏡61によって反射された光を撮像部63に設けられている図示しない撮像素子で撮像することによって、側方に位置する観察対象を全周囲にわたって同時に観察することができるようになっている。また、特許文献2に記載の内視鏡は、回転対称形状の凸面鏡61の頂点部に孔部61aを有し、孔部61aを介して前方に位置する観察対象も観察することができるようになっている。
【0005】
図10は特許文献3に記載の管状体の内面撮影装置における、側方に位置する観察対象を全周囲にわたって観察するための要部の構成例を示す説明図で、(a)は軸に沿う断面図、(b)は(a)に示される反射鏡部材を軸方向から示す図である。
特許文献3に記載の内面撮影装置は、図10に示すように、各々が管状体内周面の管状領域と対向する位置に、管状体の中心軸を囲むように配置された、3以上のN個の平坦な反射面71aを有する反射鏡部材71と、夫々の反射面71aに対向する位置に、管状体の円周方向に沿う向きに並べられた、N個のレンズ72及び一次元イメージセンサ73を有している。そして、特許文献3に記載の内視鏡は、側方の観察対象の円周方向の全領域からの光をN個の反射面71aでN個の領域に分割し、N個のレンズ72で集光しN個の一次元イメージセンサ73で撮像することによって、側方に位置する観察対象の一次元の像を全周囲にわたって同時に得ることができるようになっている。また、特許文献3に記載の内面撮影装置は、検査対象の円周方向の領域の分割数に応じて、レンズ72を含む一次元イメージセンサ73の有効視野が定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−40231号公報
【特許文献2】特開2002−233494号公報
【特許文献3】特開平08−261947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の内視鏡のように、ミラー52を回転させることによって側方に位置する観察対象を全周囲にわたって時分割で撮像する構成では、側方に位置する観察対象を全周囲にわたって同時に観察することができず、全周囲にわたる画像が得られるまでに、ミラー52の回転、撮像といった動作の繰り替えしが必要となり時間がかかってしまう。また、ミラー52を回転させるためのモータ51等の駆動部材を必要とする分、先端部が大型化し、コスト高となってしまう。
【0008】
これに対し、特許文献2に記載の内視鏡のように、回転対称形状の凸面鏡61を備えて構成すれば、側方に位置する観察対象を全周囲にわたって同時に観察することができ、特許文献1に記載の内視鏡におけるモータ51のような駆動部材が不要となる。
しかし、特許文献2に記載の内視鏡のような回転対称形状の凸面鏡61を備えた構成では、観察視野の周辺部にいくにしたがって像が縮小し歪みが大きくなってしまう。しかも、特許文献2に記載の内視鏡のように1つの撮像部62で側方に位置する観察対象の全周囲にわたる像を同時に撮像する構成では、特許文献1に記載の内視鏡に比べて、同じ面積の観察対象を撮像するために用いることのできる撮像素子の面積が減る分、撮像素子の解像度が悪くなってしまう。
【0009】
また、特許文献3に記載の内面撮影装置のように、観察対象の円周方向の全領域からの光をN個の反射面71aでN個の領域に分割し、N個のレンズ72で集光しN個の一次元撮像素子73で撮像するようにすれば、側方に位置する観察対象の一次元の像を全周囲にわたって同時に得ることができる。また、夫々の反射面71aが平坦であるので、特許文献2に記載の内視鏡における回転対称形状の凸面鏡61を備えた構成のような、観察視野の周辺部における像の歪みが生じない。
しかし、特許文献3に記載の内面撮影装置では、観察対象を全周にわたって同時に得られるのは一次元の像であり、二次元の像として観察するためには、内面撮影装置を管の長手方向に所定量移動し一次元の像を撮像し、撮像した一次元の画像を接合するといった処理を繰り返さなければならず、時間がかかってしまう。
また、特許文献3に記載の内面撮影装置では、上述のように、検査対象の円周方向の領域の分割数に応じて、レンズ72を含む一次元イメージセンサ73の有効視野が定められている。即ち、特許文献3に記載の内面撮影装置では、視野の起点が管状体の中心軸に一致するように、管状体の中心軸から反射面71aまでの距離と等距離、反射面71aから離れた位置に瞳を設けた構成となっている。しかし、それでは、反射面71aに光が入射する面積が大きくなってしまう。また、二次元の画像を同時に取得するためには、反射面71aを軸の長手方向に大きくするとともに、それに対応した撮像素子を用いる必要があるが、反射面71aから離れた位置に瞳を設けた構成では、反射面71aが非常に大きくなってしまい、先端部の径が大型化してしまう。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、先端部の径を大型化させずに、側方の全周囲にわたる観察対象の画像を、同時に、歪ませることなく、高解像に取得可能な全周囲観察光学系及びそれを備えた全周囲観察システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明による全周囲観察光学系は、所定の軸に対して対称な所定の角錐面をなし、且つ、夫々が前記所定の軸に対して夫々対称な側方観察用の第1の瞳位置の近傍に配置されていて、側方の全周にわたる観察対象からの光を側方の3つ以上の領域ごとの観察対象からの光に分割して後方に反射する3面以上の反射面と、前記所定の軸上に配置されていて、前記所定の軸に対して夫々対称な側方観察用の第2の瞳位置に、前記夫々の側方観察用の第1の瞳位置における瞳を拡大してリレーするリレー光学系と、前記夫々の側方観察用の第1の瞳位置と共役な瞳位置に夫々配置された3つ以上の側方観察用の開口絞りと、前記夫々の側方観察用の開口絞りに対応して夫々配置された3組以上の側方観察用の結像光学系と、前記夫々の側方観察用の結像光学系に対応して夫々配置された3つ以上の側方観察用の撮像素子、を有することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の全周囲観察光学系においては、前記3つ以上の側方観察用の開口絞りが、前記夫々の側方観察用の第2の瞳位置に夫々配置されているのが好ましい。
【0013】
また、本発明の全周囲観察光学系においては、前記夫々の反射面が、前記所定の軸に対して45°±15°の範囲内の所定角度で傾斜しているのが好ましい。
【0014】
また、本発明の全周囲観察光学系においては、前記夫々の反射面が、頭頂部に平坦面を有する角錐における角錐面に設けられ、前記夫々の反射面に囲まれた前記頭頂部の平坦面に開口が設けられ、前記開口は、前記所定の軸上に位置する前方観察用の第1の瞳位置の近傍に位置し、前記リレー光学系は、さらに、前記所定の軸上に位置する前方観察用の第2の瞳位置に、前記前方観察用の第1の瞳位置における瞳を拡大してリレーするように構成され、さらに、前記前方観察用の第1の瞳位置と共役な瞳位置に配置された前方観察用の開口絞りと、前記前方観察用の開口絞りに対応して配置された前方観察用の結像光学系と、前記前方観察用の結像光学系に対応して配置された前方観察用の撮像素子、を有するのが好ましい。
【0015】
また、本発明の全周囲観察光学系においては、前記前方観察用の開口絞りが、前記前方観察用の第2の瞳位置に配置されているのが好ましい。
【0016】
また、本発明の全周囲観察光学系においては、前記夫々の反射面が、角錐部材における夫々の角錐面に反射膜を設けてなるのが好ましい。
【0017】
また、本発明の全周囲観察光学系においては、前記夫々の反射面が、頭頂部に平坦面を有する透明な角錐部材における夫々の角錐面に反射膜を設けてなり、前記開口が、前記透明な角錐部材の前記頭頂部の平坦面で構成されているのが好ましい。
【0018】
また、本発明の全周囲観察光学系においては、前記夫々の反射面が、夫々板状のミラー面で構成されているのが好ましい。
【0019】
また、本発明の全周囲観察光学系においては、さらに、前記所定の軸と同軸に配置されていて、前記側方の全周にわたる観察対象からの光を前記夫々の反射面に入射させる円筒状の透明窓を有するのが好ましい。
【0020】
また、本発明による全周囲観察システムは、上記本発明のいずれかの全周囲観察光学系と、前記夫々の側方観察用の撮像素子が撮像した隣り合う領域の観察対象の画像同士を接合して、前記側方の全周にわたる観察対象のパノラマ画像を作成するパノラマ画像合成処理部と、前記パノラマ画像合成処理部で作成された前記側方の全周にわたる観察対象のパノラマ画像を表示するパノラマ画像表示部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、先端部の径を大型化させずに、側方の全周囲にわたる観察対象の画像を、同時に、歪ませることなく、高解像に取得可能な全周囲観察光学系及びそれを備えた全周囲観察システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる全周囲観察光学系の基本構成を示す説明図である。
【図2】第一実施形態の全周囲観察光学系をより具体化した一構成例を示す説明図で、(a)は軸に沿う断面図、(b)は側方観察用の第1の瞳と反射面の位置関係及び夫々の反射面に対応する側方の観察対象領域を軸方向から示す図、(c)は(b)に示す側方観察用の第1の瞳と側方用の撮像ユニットの位置関係を軸方向から示す図、(d)は側方観察用の撮像素子で撮像した夫々の観察対象領域の画像を構成したパノラマ画像の一例を概念的に示す図である。
【図3】本発明の第二実施形態にかかる全周囲観察光学系の一構成例を示す説明図で、(a)は軸に沿う断面図、(b)は側方観察用の第1の瞳と反射面、並びに前方観察用の第1の瞳と開口の位置関係を軸方向から示す図、(c)は側方観察用の第2の瞳と側方用の撮像ユニット、並びに前方観察用の第2の瞳と前方用の撮像ユニットの位置関係を軸方向から示す図である。
【図4】本発明の全周囲観察光学系の構成を備えたパイプカメラ式内面観察システムの概念図である。
【図5】本発明の全周囲観察光学系の構成を備えたパイプ観察用軟性鏡システムの概念図である。
【図6】本発明の全周囲観察光学系の構成を備えたパイプ観察用硬性鏡システム又はパイプ観察用観察システムの概念図である。
【図7】本発明の全周囲観察光学系の構成を備えたねじ穴観察用硬性鏡システム又はねじ穴観察用観察システムの概念図で、(a)はその一例を示す図、(b)は他の例を示す図である。
【図8】特許文献1に記載の内視鏡における、側方に位置する観察対象を全周囲にわたって観察するための要部の構成例を示す説明図である。
【図9】特許文献2に記載の内視鏡における、側方に位置する観察対象を全周囲にわたって観察するための要部の構成例を示す説明図である。
【図10】特許文献3に記載の管状体の内面撮影装置における、側方に位置する観察対象を全周囲にわたって観察するための要部の構成例を示す説明図で、(a)は軸に沿う断面図、(b)は(a)に示される反射鏡部材を軸方向から示す図である。
【図11】本件出願人が本発明の創出過程において検討した側方に位置する観察対象の全周囲にわたる像を同時に撮像する一構成例を軸方向から示す説明図である。
【図12】本件出願人が本発明の創出過程において検討した側方に位置する観察対象の全周囲にわたる像を同時に撮像する他の構成例を示す説明図で、(a)は軸方向から見た図、(b)は(a)に示される1組の側視光学系及び撮像素子の配置を軸に沿って示す図である。
【図13】視野の基点となる瞳位置を円周の中心に位置させたときの観察対象の径の大きさと、互いに隣接する観察対象領域との重なり度合いとの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態の説明に先立ち、本発明の創出過程及び本発明の作用効果について説明する。
まず、本件出願人は、側方に位置する観察対象の全周囲にわたる像を同時に撮像するための構成として、図11、図12に示すような構成例を着想し、これらについて検討・考察した。
図11の構成例は、レンズ81aや撮像素子81bを備えた撮像ユニット81を、軸Oを中心として放射状に複数個配置し、側方に位置する観察対象を夫々の撮像ユニット81に備わる撮像素子81bが撮像するように構成したものである。
また、図12の構成例は、側方からの光を反射して撮像素子92の方向に導くミラー91bを内部に備えた複数の側視光学系91を、軸Oを中心として放射状に複数組配置するとともに、夫々の側視光学系91を経由して結像される観察対象の像を撮像する撮像素子92を、夫々の側視光学系91に対応させて軸Oを中心とする円周上に複数個配置し、側方に位置する観察対象を夫々の撮像素子92が撮像するように構成したものである。図12中、91a,91cはレンズである。
【0024】
図11、図12のように構成すれば、側方の全周囲にわたる観察対象の像を同時に観察することが可能となる。
【0025】
しかし、図11、図12のように構成すると、視野の基点となる瞳位置Pが、円周の中心である軸Oから離れたものとなる。そして、視野の基点となる瞳位置Pが円周の中心から離れれば離れるほど、隣り合う夫々の撮像素子を介して撮像された画像における、互いに隣接する観察対象領域の重なり度合いが、側方に位置する観察対象の径の大きさによって大きく変化し、全周にわたる観察に悪影響を及ぼす。
【0026】
例えば、図11、図12に示すように、半径がR1の大きさの管状体を観察するときに互いに隣接する観察対象領域が重なることなく観察できる場合、半径がR1よりも大きな半径R2の大きさの管状体を観察する場合には、管状体の半径が大きくなればなるほど、互いに隣接する観察対象領域の重なり度合いが増加してしまう。一方、半径がR1よりも小さな半径R3の管状体を観察する場合には、観察できない領域が生じてしまう。
【0027】
また、図11の構成では、夫々の撮像ユニット81を放射状に配置するので、径が大きくなりすぎ、径の細い管状体の内部を観察することが難しい。
また、図11、図12のいずれの構成も、外径を小さくしようとすると、撮像素子の面積が小さくなるため、特許文献2に記載の内視鏡と同様、高解像な観察像が得られない。
【0028】
側方に位置する観察対象の径の大きさに依存する、互いに隣接した観察対象領域の重なり度合いの変化をなくして、全周にわたる観察に悪影響を及ぼさないようにするためには、図13に示すように、視野の基点となる瞳位置Pを円周の中心Oに位置させることが望ましい。しかし、瞳位置Pを円周の中心O近傍に設けたのでは、観察対象を結像するためのレンズや、撮像素子を配置することが難しい。
【0029】
このような検討・考察を経て、本件出願人は、本発明の全周囲観察光学系を想到するに至った。本発明の全周囲観察光学系は、所定の軸に対して対称な所定の角錐面をなし、且つ、夫々が前記所定の軸に対して夫々対称な側方観察用の第1の瞳位置の近傍に配置されていて、側方の全周にわたる観察対象からの光を側方の3つ以上の領域ごとの観察対象からの光に分割して後方に反射する3面以上の反射面と、所定の軸上に配置されていて、所定の軸に対して夫々対称な側方観察用の第2の瞳位置に、夫々の側方観察用の第1の瞳位置における瞳を拡大してリレーするリレー光学系を備えるとともに、夫々の側方観察用の第1の瞳位置と共役な瞳位置(例えば、夫々の側方観察用の第2の瞳位置)に夫々配置された3つ以上の側方観察用の開口絞りと、夫々の側方観察用の開口絞りに対応して夫々配置された3組以上の側方観察用の結像光学系と、夫々の側方観察用の結像光学系に対応して夫々配置された3つ以上の側方観察用の撮像素子を有する。
【0030】
上記構成によれば、リレー光学系は、像側から物体側へと光路を辿った場合、側方観察用の第2の瞳位置における瞳を縮小して側方観察用の第1の瞳位置にリレーする。従って、側方観察用の第1の瞳位置における瞳は側方観察用の第2の瞳位置における瞳よりも所定の軸に近づくことになる。しかるに、管状体を観察する装置においては、一般に、管状体の観察時に所定の軸を、側方の全周囲にわたる観察対象の面によって形成される円周の中心に一致させる。従って、上記構成によれば、視野の基点となる側方観察用の第1の瞳位置を側方の全周囲にわたる観察対象の面によって形成される円周の中心に極力近づけることができる。その結果、側方に位置する観察対象の径の大きさに依存する、互いに隣接した観察対象領域の重なり度合いの変化を極力少なくして、全周にわたる観察に悪影響を極力及ぼさないようにすることができるようになる。
【0031】
また、上記構成のように、反射面を側方観察用の第1の瞳位置に備えれば、反射面を所定の軸に近づけることができるとともに、反射面に光が入射する面積を最小にすることができる。このため、反射面を小型化でき、また、反射面を内蔵する先端部の径を小さくすることができる。その結果、螺子孔等、非常に細径の観察対象も観察できるようになる。また、先端部周辺に照明手段等の配置スペースを得やすくなる。
【0032】
また、上記構成のように、側方観察用の第1の瞳位置における瞳を拡大して側方観察用の第2の瞳位置にリレーするリレー光学系を備えれば、反射面を内蔵する先端部の径を小さくしたまま、反射面から離れた位置に面積の大きな撮像素子を配置することが可能となり、高解像な観察像が得られる。
【0033】
小型化した反射面を所定の軸に近づけて配置するにつれて、反射面に対応する光学系や撮像素子を配置することが、これらの光学部材の製造可能な大きさ等との関係から難しくなってくる。また仮に、反射面の大きさに合わせて小型化した光学系や撮像素子を配置することができたとしても、それでは、特許文献2に記載の内視鏡と同様、特許文献1に記載の内視鏡に比べて、同じ面積の観察対象を撮像する個々の撮像素子の面積が小さくなるため、撮像素子の解像度が悪くなってしまう。
撮像素子の解像度を上げるためには、撮像素子の面積を大きくする必要がある。しかるに、本発明の全周囲観察光学系によれば、リレー光学系が側方観察用の第1の瞳位置における瞳を拡大して側方観察用の第2の瞳位置にリレーするので、撮像素子の面積を大きくでき、観察画像の解像度を上げることができる。
【0034】
なお、本発明の全周囲観察光学系においては、夫々の反射面が、所定の軸に対して45°±15°の範囲内の所定角度で傾斜しているのが好ましい。
夫々の反射面の傾斜角が45°±15°の範囲内の所定角度であれば、側方の所定視野内におけるいずれの方向からの光も後方のリレー光学系へ向けて反射することができる。
【0035】
また、本発明の全周囲観察光学系においては、夫々の反射面を、頭頂部に平坦面を有する角錐における角錐面に設け、夫々の反射面に囲まれた前記頭頂部の平坦面に開口を設け、開口は、所定の軸上に位置する前方観察用の第1の瞳位置の近傍に位置するようにする。そして、リレー光学系は、さらに、所定の軸上に位置する前方観察用の第2の瞳位置に、前方観察用の第1の瞳位置における瞳を拡大してリレーするように構成する。そして、前方観察用の第1の瞳位置と共役な瞳位置(例えば、前方観察用の第2の瞳位置)に配置された前方観察用の開口絞りと、前方観察用の開口絞りに対応して対応して配置された前方観察用の結像光学系と、前方観察用の結像光学系に対応して配置された前方観察用の撮像素子を有するのが好ましい。
【0036】
先端部を小型化するためには上記夫々の側方観察用の第1の瞳位置における瞳を極力所定の軸に近づけるのが望ましいが、所定の軸に近づけすぎると、側方観察用の開口絞り、側方観察用の結像光学系、側方観察用の撮像素子を配置できる程度に、所定の軸から離れた側方観察用の第2の瞳位置にリレー光学系で瞳を拡大することが難しくなる。このため、上記夫々の側方観察用の第1の瞳位置における瞳は、所定の軸に近づけるようにしたとしても所定の軸からある程度離れた位置に設けざるを得ない。一方、管状体内部の観察に際しては、用途に応じて、側方の全周囲にわたる観察対象とともに前方の観察対象の観察が必要となる場合がある。
そこで、夫々の反射面を、頭頂部に平坦面を有する角錐における角錐面に設け、夫々の反射面に囲まれた頭頂部の平坦面が開口となるように構成する。そして、開口を、所定の軸上に位置する前方観察用の第1の瞳位置の近傍に位置させる。また、リレー光学系に、さらに、所定の軸上に位置する前方観察用の第2の瞳位置に、前方観察用の第1の瞳位置における瞳を拡大してリレーする機能を持たせる。そして、前方観察用の第1の瞳位置と共役な瞳位置(例えば、前方観察用の第2の瞳位置)に前方観察用の開口絞りを備えるとともに、前方観察用の開口絞りに対応して前方観察用の結像光学系、前方観察用の結像光学系に対応して前方観察用の撮像素子を夫々備え、開口を介して前方の観察対象を観察できるようにする。
このようにすれば、側方の全周囲にわたる観察対象と前方の観察対象とを同時に観察することができる。
【0037】
また、本発明の全周囲観察光学系においては、夫々の反射面を、角錐部材における夫々の角錐面に反射膜を設けて構成するのが好ましい。
あるいは、夫々の反射面を、頭頂部に平坦面を有する透明な角錐部材における夫々の角錐面に反射膜を設けて構成し、上記開口を、透明な角錐部材の頭頂部の平坦面で構成するのが好ましい。
夫々の反射面を角錐部材における夫々の角錐面に反射膜を設けて構成すれば、夫々の反射面同士の位置関係を高精度に維持することができる。
【0038】
また、本発明の全周囲観察光学系においては、夫々の反射面を、夫々板状のミラー面で構成してもよい。
夫々の反射面を、夫々板状のミラー面で構成すれば、その分、先端部を軽量化できる。
【0039】
また、本発明の全周囲観察光学系においては、さらに、所定の軸と同軸に配置されていて、側方の全周にわたる観察対象からの光を夫々の反射面に入射させる円筒状の透明窓を有するのが好ましい。
円筒状の透明窓を設ければ、側方の全周にわたる観察対象からの光を同時に取り込むことができるとともに、軸方向に視野を外れた領域からの不要な光をカットすることができる。また、ミラー部の汚れも排除できるので、メンテナンス時のクリーニングも簡易になる。
【0040】
そして、本発明による全周囲観察システムは、上記本発明のいずれかの全周囲観察光学系と、夫々の側方観察用の撮像素子が撮像した隣り合う領域の観察対象の画像同士を接合して、側方の全周にわたる観察対象のパノラマ画像を作成するパノラマ画像合成処理部と、パノラマ画像合成処理部で作成された側方の全周にわたる観察対象のパノラマ画像を表示するパノラマ画像表示部を有する。
これにより、先端部の径を大型化させずに、側方の全周囲にわたる観察対象の画像を、同時に、歪ませることなく、高解像に取得可能な全周囲観察システムが実現できる。
【0041】
第一実施形態
図1は本発明の第一実施形態にかかる全周囲観察光学系の基本構成を示す説明図で、(a)は軸に沿う断面図である。
【0042】
第一実施形態の全周囲観察光学系は、図1に示すように、3面以上の反射面1aと、リレー光学系2と、夫々の反射面1aに対応する3組以上の側方観察用の撮像ユニット3(図においては便宜上1つのみ示してある)を有している。なお、図1中、4は円筒状の透明窓、5は筒状のハウジング、6は側方に位置する観察対象を全周にわたって照明する側方観察用の照明部である。
【0043】
反射面1aは、角錐プリズム1における軸Oに対して対称な夫々の角錐面に反射膜を設けて構成されている。また、夫々の反射面1aは、軸Oに対して対称な側方観察用の第1の瞳位置P1の近傍に、軸Oに対して45°±15°の範囲内の所定角度で傾斜して配置されている。そして、夫々の反射面1aは、側方の全周にわたる観察対象からの光を側方の3つ以上の領域ごとの観察対象からの光に分割して後方(図1における右側)に反射する。
【0044】
リレー光学系2は、中間像結像レンズ2aと、瞳結像レンズ2bとで構成され、軸O上に配置されている。
中間像結像レンズ2aは、少なくとも夫々の反射面1aで分割して後方に反射された、側方の夫々の領域ごとの観察対象からの光を中間結像位置I1で結像させる。
瞳結像レンズ2bは、中間像結像レンズ2aよりも大きな径を有し、側方観察用の第1の瞳位置P1よりも軸Oから離れた、軸Oに対して夫々対称な側方観察用の第2の瞳位置P2に、側方観察用の第1の瞳位置P1における瞳を拡大して投影する。
【0045】
夫々の側方観察用の撮像ユニット3は、側方観察用の開口絞り3aと、側方観察用の結像光学系3bと、側方観察用の撮像素子3cを有している。
側方観察用の開口絞り3aは、夫々の側方観察用の第2の瞳位置P2に夫々配置されている。
側方観察用の結像光学系3bは、夫々の側方観察用の開口絞り3aに対応して、軸Oに対して対称な所定の位置に夫々配置されている。そして、夫々の反射面1aで後方に反射されリレー光学系2を介してリレーされた側方の夫々の領域ごとの観察対象からの光を、軸Oに対して夫々対称な最終結像位置I2に結像する。
側方観察用の撮像素子3cは、夫々の側方観察用の開口絞り3aに対応して、軸Oに対して対称な最終結像位置I2に夫々配置されている。
【0046】
円筒状の透明窓4は、先端部において軸Oと同軸に配置されており、側方の全周にわたる観察対象からの光を夫々の入射面に入射させる。
ハウジング5は、軸Oと同軸に配置された円筒状部材で構成されていて、内部に、リレー光学系2、撮像ユニット3を備えている。
照明部6は、ハウジング5の先端に環状に配置されていて、側方に位置する観察対象を全周にわたって照明する。
【0047】
このように構成された第一実施形態の全周囲観察光学系の作用効果について、図1の構成における側方観察用の第1の瞳位置P1での瞳と側方観察用の第2の瞳位置P2での瞳の大きさ及び軸Oからの瞳の中心までの距離を比較しながら説明する。
側方の全周にわたる観察対象からの光は、夫々の反射面1aで3つ以上の領域ごとの観察対象からの光に分割されて反射し、リレー光学系2で夫々の中間結像位置I1に中間結像された後、夫々の側方観察用の第2の瞳位置P2に配置された側方観察用の開口絞り3a、側方観察用の結像光学系3bを経て夫々の最終結像位置I2に結像し、側方観察用の撮像素子3cを介して撮像される。
このとき、リレー光学系2は、側方観察用の第1の瞳位置P1における瞳を拡大倍率β(ただし、1<β)で側方観察用の第2の瞳位置P2にリレーしている。
ここで、軸Oから側方観察用の第1の瞳位置P1における瞳の中心までの距離をrp、軸Oから側方観察用の第2の瞳位置における瞳の中心までの距離をRpとすると、
p=rp×β
と表すことができる。
即ち、リレー光学系2を用いることによって、側方観察用の第2の瞳位置P2においては、側方観察用の第1の瞳位置P1における軸Oから瞳の中心までの距離rpのβ倍、瞳の中心を軸Oから離すことができる。また、瞳の径もβ倍大きくなる。このため、撮像素子の面積を大きくし且つ配置スペースを作ることができ、その結果、解像度を上げることができる。
【0048】
また、リレー光学系2は、側方観察用の第1の瞳側からみた場合、側方観察用の第2の瞳位置P2における瞳を縮小倍率1/βで側方観察用の第1の瞳位置P1にリレーしている。
ここで、軸Oから側方観察用の第1の瞳位置P1における瞳の中心までの距離rpは、
p=Rp×1/β
と表すことができる。
即ち、リレー光学系2を用いることによって、側方観察用の第1の瞳位置P1においては、軸Oから側方観察用の第2の瞳位置P2における瞳の中心までの距離Rの1/βに、瞳の中心を軸Oに近づけることができる。このため、反射面1aを小型化でき、先端部を細径化できるとともに、視野の起点を円周の中心に近づけることができ、その結果、側方に位置する観察対象との距離によって得られる隣接する領域の画像の重なり度合いの変化を少なくし、全周にわたる観察に及ぼす悪影響を抑えることができる。
【0049】
次に、第一実施形態の全周囲観察光学系を用いて、側方の全周囲にわたる観察対象を同時に観察するための構成について説明する。
図2は第一実施形態の全周囲観察光学系をより具体化した一構成例を示す説明図で、(a)は軸に沿う断面図、(b)は側方観察用の第1の瞳と反射面の位置関係及び夫々の反射面に対応する側方の観察対象領域を軸方向から示す図、(c)は(b)に示す側方観察用の第1の瞳と側方用の撮像ユニットの位置関係を軸方向から示す図、(d)は側方観察用の撮像素子で撮像した夫々の観察対象領域の画像を構成したパノラマ画像の一例を概念的に示す図である。なお、図1の構成部材と実質的に同様の構成部材については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0050】
図2の全周囲観察光学系は、図2(a)に示すように、6面の反射面1a1〜1a6と、リレー光学系2と、夫々の反射面1a1〜1a6に対応する6組の側方観察用の撮像ユニット31〜36を有している。反射面1a1〜1a6は、頭頂部に平坦面をもつ6角錐プリズムの角錐面に反射膜を設けて構成されている。なお、図2の全周囲観察光学系には、図示しないパソコンの中央処理演算装置等で構成された観察制御装置が接続されている。観察制御装置は、夫々の側方観察用の撮像素子31〜36が撮像した隣り合う領域の観察対象の画像同士を接合して、側方の全周にわたる観察対象のパノラマ画像を作成するパノラマ画像合成処理部として機能する。
【0051】
このように構成された図2の全周囲観察光学系では、側方の全周にわたる観察対象からの光は、夫々の反射面1a1〜1a6で6つの領域ごとの観察対象からの光に分割されて反射し、リレー光学系2で中間結像位置I1に中間結像された後、夫々の側方観察用の第2の瞳位置P21〜P26に配置された側方観察用の開口絞り3a1〜3a6、側方観察用の結像光学系3b1〜3b6を経て夫々の最終結像位置I21〜I26に結像し、側方観察用の撮像素子3c1〜3c6を介して撮像される。
【0052】
ここで、撮像素子3c1は、図2(b)に示す観察対象領域A1の画像を、撮像素子3c2は図2(b)に示す観察対象領域A2の画像を、撮像素子3c3は図2(b)に示す観察対象領域A3の画像を、撮像素子3c4は図2(b)に示す観察対象領域A4の画像を、撮像素子3c5は図2(b)に示す観察対象領域A5の画像を、撮像素子3c6は図2(b)に示す観察対象領域A6の画像を、夫々撮像している。
パノラマ画像合成処理部は、観察対象領域A1の画像と観察対象領域A2の画像における隣り合う端部同士を画像情報に過不足のないように画像処理を行なって接合する。観察対象領域A2の画像と観察対象領域A3の画像における隣り合う端部同士、観察対象領域A3の画像と観察対象領域A4の画像における隣り合う端部同士、観察対象領域A4の画像と観察対象領域A5の画像における隣り合う端部同士、観察対象領域A5の画像と観察対象領域A6の画像における隣り合う端部同士、観察対象領域A6の画像と観察対象領域A1の画像における隣り合う端部同士についても、同時に同様の画像処理を行って接合する。これにより、側方の全周にわたって連続した観察対象の画像が出来上がる。このように合成された画像を展開した状態でモニタ等の表示装置(図示省略)を介して表示させることで側方の全周にわたる観察対象のパノラマ画像を同時に観察することができるようになる。
【0053】
第二実施形態
図3は本発明の第二実施形態にかかる全周囲観察光学系の一構成例を示す説明図で、(a)は軸に沿う断面図、(b)は側方観察用の第1の瞳と反射面、並びに前方観察用の第1の瞳と開口の位置関係を軸方向から示す図、(c)は側方観察用の第2の瞳と側方用の撮像ユニット、並びに前方観察用の第2の瞳と前方用の撮像ユニットの位置関係を軸方向から示す図である。なお、図1の構成部材と実質的に同様の構成部材については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0054】
第二実施形態の全周囲観察光学系は、図3(a)に示すように、8面の反射面1a1〜1a8と、1組のリレー光学系2と、夫々の反射面1a1〜1a8に対応する8組の側方観察用の撮像ユニット31〜38を有し、さらに、開口1bと、開口1bに対応する1組の前方観察用の撮像ユニット3’を有している。図3(a)中、7は前方視野を拡大する光学ユニット、8は前方に位置する観察対象を照明する前方観察用の照明部である。
反射面1a1〜1a8は、頭頂部に平坦面をもつ透明な8角錐プリズムの角錐面に反射膜を設けて構成されている。
開口1bは、夫々の反射面1a1〜1a8に囲まれた頭頂部の平坦面に構成されている。また、開口1bは、軸O上に位置する前方観察用の第1の瞳位置P1’の近傍に位置している。
また、リレー光学系2は、さらに、軸O上に位置する前方観察用の第2の瞳位置P2’に、前方観察用の第1の瞳位置P1’における瞳を拡大してリレーするように構成されている。
前方観察用の撮像ユニット3’は、前方観察用の開口絞り3a’と、前方観察用の結像光学系3b’と、前方観察用の撮像素子3c’を有している。
前方観察用の開口絞り3a’は、前方観察用の第2の瞳位置P2’に配置されている。
前方観察用の結像光学系3b’は、前方観察用の開口絞り3a’に対応して、軸O上の所定の位置に配置されている。そして、開口1bを通過し、リレー光学系2を介してリレーされた前方の観察対象からの光を、軸O上の最終結像位置I2’に結像する。
前方観察用の撮像素子3c’は、前方観察用の開口絞り3a’に対応して、軸O上の最終結像位置I2’に配置されている。
【0055】
このように構成された第二実施形態の全周囲観察光学系では、側方の全周にわたる観察対象からの光は、夫々の反射面1a1〜1a8で8つの領域ごとの観察対象からの光に分割されて反射し、リレー光学系2で夫々の中間結像位置I1に中間結像された後、夫々の側方観察用の第2の瞳位置P21〜P28に配置された側方観察用の開口絞り3a1〜3a8、側方観察用の結像光学系3b1〜3b8を経て夫々の最終結像位置I21〜I28に結像し、側方観察用の撮像素子3c1〜3c8を介して撮像される。
また、これと同時に、前方の観察対象からの光は、前方視野を拡大する光学系ユニット7を経て、開口1bを通り、リレー光学系2で中間結像位置I1に中間結像された後、前方観察用の第2の瞳位置P2’に配置された前方観察用の開口絞り3a’、前方観察用の結像光学系3b’を経て最終結像位置I2’に結像し、前方観察用の撮像素子3c’を介して撮像される。
従って、第二実施形態の全周囲観察光学系によれば、側方の全周囲にわたる観察対象と同時に前方の観察対象も観察できる。
その他の作用効果は、第一実施形態の全周囲観察光学系と略同じである。
【0056】
なお、図3の例では、前方視野を拡大する光学系ユニット7を備えた構成としたが、前方視野を拡大する光学系ユニット7を備えずに、前方の観察対象からの光を、8角錐プリズムに入射させるように構成してもよい。
また、図3の例では、夫々の反射面を、頭頂部に平坦面をもつ透明な8角錐プリズムの角錐面に反射膜を設けて構成したが、6角錐等、その他の多角錐プリズムにおける角錐面に構成してもよい。
また、図1〜図3の例では、夫々の反射面を、多角錐プリズムの角錐面に構成したが、板状のミラー面で構成してもよい。
さらに、図1〜図3の例では、リレー光学系を1組備えた構成としたが、夫々対称な側方観察用の第2の瞳位置に、夫々の側方観察用の第1の瞳位置における瞳を拡大してリレーする構成(図3の例では、さらに前方観察用の第2の瞳位置に、前方観察用の第1の瞳位置における瞳を拡大してリレーする構成)であれば、複数組のリレー光学系を備えて瞳を複数回リレーするようにしてもよい。例えば、図1〜図3の例における1組のリレー光学系に加えて、さらに、そのリレー光学系における瞳結像レンズと径、焦点距離の同じ2枚のレンズで構成された1組以上のリレー光学系を追加してもよい。また、追加する複数組のリレー光学系を、レンズの径が徐々に太く、あるいはレンズの焦点距離が徐々に長くなるようにして備えてもよい。
【0057】
次に、本発明の各実施形態の全周囲観察光学系の構成を備えた全周囲観察システムの例について図面を用いて説明する。
図4は本発明の全周囲観察光学系の構成を備えたパイプカメラ式内面観察システムの概念図である。
図4のシステムは、パイプカメラ11と、ケーブル12と、観察制御装置13と、モニタ(表示装置)14を有している。
パイプカメラ11は、細径の先端部11aと、先端部11aに比べて径の大きなカメラ部11bを有している。
先端部11aの内部には、第一実施形態と同様に構成された側方観察用の反射面(図示省略)が設けられている。また先端部11aには円筒状の透明窓が設けられている。
カメラ部11bの内部には、第一実施形態と同様に構成されたリレー光学系(図示省略)、側方観察用の撮像ユニット(図示省略)が設けられている。
ケーブル12は、パイプカメラ11と観察制御装置13とを接続している。
観察制御装置13は、パソコンの中央処理演算装置等で構成され、ケーブル12を介してパイプカメラ11の移動、撮像、照明等について所定の制御を行うとともに、パノラマ画像合成処理部として機能し、パイプカメラ11における夫々の側方観察用の撮像素子が撮像した隣り合う領域の観察対象の画像同士を接合して、側方の全周にわたるパイプ15内の内壁面のパノラマ画像を作成する。
モニタ14は、パノラマ画像合成処理部で作成されたパイプ15内の側方の全周にわたる内壁面のパノラマ画像を表示する。
なお、図4中、15はパイプ、16はパイプカメラ11の軸をパイプ15の軸に一致するように調整可能なセンタリング装置、17はパイプカメラ11をパイプ15内で移動可能にするため車輪である。
【0058】
そして、図4のパイプカメラ式内面観察システムでは、パイプカメラ11をパイプ15の内部に挿入し、センタリング装置16を介してパイプ15の軸にパイプカメラ11の軸をパイプ15の軸に一致するように調整する。次いで、車輪17を介してパイプカメラ11を所望の観察位置へとパイプ15の軸方向に沿って移動させ、パイプ15内の側方の全周にわたる内壁面の画像を、先端部11a内に設けられた側方観察用の反射面(図示省略)を介して分割された夫々の領域ごとに、パイプカメラ部11b内に設けられた側方観察用の撮像素子(図示省略)で撮像する。撮像した側方の夫々の領域の内壁面の画像は、観察制御装置13を介してパノラマ画像に合成され、合成されたパノラマ画像は、モニタ14に表示される。
【0059】
図5は本発明の全周囲観察光学系の構成を備えたパイプ観察用軟性鏡システムの概念図である。なお、図4のシステムに用いられている構成部材と実質的に同様の構成部材については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図5のシステムは、挿入部18と、観察制御装置13と、モニタ(表示装置)14を有している。
挿入部18は、細径の先端部18aと、先端部18aに比べて径の大きなカメラ部18bと、軟性鏡部18cを有している。
先端部18aの内部には、第二実施形態と同様に構成された側方観察用の反射面及び開口が設けられている。また先端部18aには円筒状の透明窓が設けられている。
カメラ部18bの内部には、第二実施形態と同様に構成されたリレー光学系(図示省略)、側方観察用の撮像ユニット(図示省略)、前方観察用の撮像ユニット(図示省略)が設けられている。
軟性鏡部18cの内部には、照明光を送る光ファイバ(図示省略)、又はLEDと電線ケーブル(図示省略)と、カメラ部18bと観察制御装置とを接続するケーブル(図示省略)が備えられている。
【0060】
そして、図5のパイプ観察用軟性鏡システムでは、挿入部18を図示しない管状体の内部に挿入し、管状体内の側方の全周にわたる内壁面の画像を、先端部18a内に設けられた反射面(図示省略)を介して分割された夫々の領域ごとに、カメラ部18b内に設けられた側方観察用の撮像素子(図示省略)で撮像するとともに、管状体内の前方の画像を、カメラ部18b内に設けられた前方観察用の撮像素子(図示省略)で撮像する。撮像した夫々の領域の内壁面の画像は、観察制御装置13を介してパノラマ画像に合成され、合成されたパノラマ画像は、モニタ14に表示される。また、撮像した前方領域の画像は、観察制御装置13を介して所定の画像処理が施され、モニタ14に表示される。
【0061】
図6は本発明の全周囲観察光学系の構成を備えたパイプ観察用硬性鏡システム又はパイプ観察用観察システムの概念図である。なお、図4のシステムに用いられている構成部材と実質的に同様の構成部材については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図6のシステムは、挿入部19と、把持部20と、ケーブル12と、観察制御装置13と、モニタ(表示装置)14を有している。
挿入部19は、細径の先端部19aと、先端部19aに比べて径の大きな硬性鏡部19bを有している。
先端部19aの内部には、第二実施形態と同様に構成された側方観察用の反射面及び開口が設けられている。また先端部19aには円筒状の透明窓が設けられている。
硬性鏡部19bの内部には、第二実施形態と同様に構成された1組のリレー光学系(図示省略)に加えて、さらに、上記リレー光学系における瞳結像レンズと径、焦点距離の同じレンズで構成された1組以上のリレー光学系が設けられており、中間結像された像や側方観察用の第2の瞳位置における瞳をリレーすることで、撮像ユニットを先端部19aからより遠くに離して配置することができるようにしている。
把持部20の内部には、第二実施形態と同様に構成された側方観察用の撮像ユニット(図示省略)、前方観察用の撮像ユニット(図示省略)が設けられている。
図6のパイプ観察用硬性鏡システム又はパイプ観察用観察システムの作用効果は、図5のパイプ観察用軟性鏡システムと略同じである。
【0062】
図7は本発明の全周囲観察光学系の構成を備えたねじ穴観察用硬性鏡システム又はねじ穴観察用観察システムの概念図で、(a)はその一例を示す図、(b)は他の例を示す図である。なお、図4のシステムに用いられている構成部材と実質的に同様の構成部材については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図7(a)のシステムは、挿入部21と、カメラ部22と、ケーブル12と、観察制御装置13と、モニタ(表示装置)14を有している。
挿入部21は、ねじ穴に挿入可能な細径の先端部21aのみで構成されている。先端部21aの内部には、第一実施形態と同様に構成された側方観察用の反射面(図示省略)が設けられている。また先端部21aには円筒状の透明窓が設けられている。
カメラ部22の内部には、第一実施形態と同様に構成されたリレー光学系(図示省略)、側方観察用の撮像ユニット(図示省略)が設けられている。
図7(b)のシステムは、モニタ(表示装置)14がカメラ部22と一体化しており、カメラ部22の内部には、第一実施形態と同様に構成されたリレー光学系(図示省略)、側方観察用の撮像ユニット(図示省略)に加えて、第一実施形態におけるパノラマ画像合成処理部として機能する中央処理演算装置(図示省略)が設けられている。その他の構成は、図7(a)のシステムと略同じである。なお、図7(b)中、23はプレート、23aはプレートに設けられたねじ穴である。
【0063】
そして、図7のねじ穴観察用硬性鏡システム又はねじ穴観察用観察システムでは、先端部21を、例えば図7(b)に示すプレート23のねじ穴23aに挿入し、ねじ穴23aの全周にわたる側面の画像を、先端部21内に設けられた反射面(図示省略)を介して分割された夫々の領域ごとに、カメラ部22内に設けられた側方観察用の撮像素子(図示省略)で撮像する。撮像した夫々の領域のねじ穴23aの側面の画像は、パノラマ画像合成処理部として機能する中央処理演算装置(図示省略)を介してパノラマ画像に合成され、合成されたパノラマ画像は、モニタ14に表示される。
【0064】
なお、図7(a),(b)の観察用硬性鏡システム及び観察用観察システムは、上記説明では、ねじ穴観察用としたが、それ以外にも、小径で長さの短い孔や溝を観察する用途に用いることができ、例えば、貫通孔の内面を観察するような用途に用いてもよい。
【0065】
また、上述した各実施形態では、側方観察用の開口絞りを、側方観察用の第2の瞳位置に夫々配置したが、側方観察用の開口絞りの配置はこれらに限られるものではない。側方観察用の開口絞りは、側方観察用の第1の瞳位置に共役な瞳位置であればどこに配置してもよく、例えば、側方観察用の第1の瞳位置を構成する角錐プリズムの角錐面に直接、側方観察用の開口絞りに相当する形状に遮光膜の蒸着を施し、あるいは、複数組のリレーレンズで伝送される光路上における、側方観察用の第1の瞳位置と側方観察用の第2の瞳位置との間の中間位置に形成される瞳位置に配置してもよい。同様に、図3の例における前方観察用の開口絞りは、前方観察用の第1の瞳位置に共役な瞳位置であればどこに配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の全周囲観察光学系及びそれを用いた全周囲観察システムは、これらの用途に限定されるものではなく、管状体の内側面を全周にわたって同時に観察することが求められる分野に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 多角錐プリズム
1a 角錐面形状の反射面
1b 開口
2 リレー光学系
2a 中間像結像レンズ
2b 瞳結像レンズ
3 側方観察用の撮像ユニット
3a、3a1、3a2、3a3、3a4、3a5、3a6、3a7、3a8 側方観察用の絞り
3b、3b1、3b2、3b3、3b4、3b5、3b6、3b7、3b8 側方観察用の結像レンズ
3c、3c1、3c2、3c3、3c4、3c5、3c6、3c7、3c8 側方観察用の撮像素子
3’ 前方観察用の撮像ユニット
3a’ 前方観察用の絞り
3b’ 前方観察用の結像レンズ
3c’ 前方観察用の撮像素子
4 円筒状の透明窓
5 ハウジング
6 側方観察用の照明部
7 前方視野を拡大する光学ユニット
8 前方観察用の照明部
11 パイプカメラ
11a 先端部
11b カメラ部
12 ケーブル
13 観察制御装置
14 モニタ(表示装置)
15 パイプ
16 センタリング装置
17 車輪
18 挿入部
18a 先端部
18b カメラ部
18c 軟性鏡部
19 挿入部
20 把持部
21 挿入部
21a 先端部
22 カメラ部
23 プレート
23a ねじ穴
O 軸
P1、P11、P12、P13、P14、P15、P16、P17、P18 側方観察用の第1の瞳位置
P2、P21、P22、P23、P24、P25、P26、P27、P28 側方観察用の第2の瞳位置
P1’ 前方観察用の第1の瞳位置
P2’ 前方観察用の第2の瞳位置
I1 中間結像位置
I2、I21、I22、I23、I24、I25、I26、I27、I28、I2’ 最終結像位置
51 モータ
51a 回転軸
52 ミラー
53 撮像部
54 観察窓
61 回転対称形状の凸面鏡
61a 孔部
62 撮像部
63 観察窓
71 反射鏡部材
71a 反射面
72 レンズ
73 一次元イメージセンサ
81 撮像ユニット81
81a レンズ
81b 撮像素子
91 側視光学系
91a、91c レンズ
91b ミラー
92 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸に対して対称な所定の角錐面をなし、且つ、夫々が前記所定の軸に対して夫々対称な側方観察用の第1の瞳位置の近傍に配置されていて、側方の全周にわたる観察対象からの光を側方の3つ以上の領域ごとの観察対象からの光に分割して後方に反射する3面以上の反射面と、
前記所定の軸上に配置されていて、前記所定の軸に対して夫々対称な側方観察用の第2の瞳位置に、前記夫々の側方観察用の第1の瞳位置における瞳を拡大してリレーするリレー光学系と、
前記夫々の側方観察用の第1の瞳位置と共役な瞳位置に夫々配置された3つ以上の側方観察用の開口絞りと、
前記夫々の側方観察用の開口絞りに対応して夫々配置された3組以上の側方観察用の結像光学系と、
前記夫々の側方観察用の結像光学系に対応して夫々配置された3つ以上の側方観察用の撮像素子、
を有することを特徴とする全周囲観察光学系。
【請求項2】
前記3つ以上の側方観察用の開口絞りが、前記夫々の側方観察用の第2の瞳位置に夫々配置されていることを特徴とする請求項1に記載の全周囲観察光学系。
【請求項3】
前記夫々の反射面が、前記所定の軸に対して45°±15°の範囲内の所定角度で傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の全周囲観察光学系。
【請求項4】
前記夫々の反射面が、頭頂部に平坦面を有する角錐における角錐面に設けられ、
前記夫々の反射面に囲まれた前記頭頂部の平坦面に開口が設けられ、
前記開口は、前記所定の軸上に位置する前方観察用の第1の瞳位置の近傍に位置し、
前記リレー光学系は、さらに、前記所定の軸上に位置する前方観察用の第2の瞳位置に、前記前方観察用の第1の瞳位置における瞳を拡大してリレーするように構成され、さらに、
前記前方観察用の第1の瞳位置と共役な瞳位置に配置された前方観察用の開口絞りと、
前記前方観察用の開口絞りに対応して配置された前方観察用の結像光学系と、
前記前方観察用の結像光学系に対応して配置された前方観察用の撮像素子、
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の全周囲観察光学系。
【請求項5】
前記前方観察用の開口絞りが、前記前方観察用の第2の瞳位置に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の全周囲観察光学系。
【請求項6】
前記夫々の反射面が、角錐部材における夫々の角錐面に反射膜を設けてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の全周囲観察光学系。
【請求項7】
前記夫々の反射面が、頭頂部に平坦面を有する透明な角錐部材における夫々の角錐面に反射膜を設けてなり、
前記開口が、前記透明な角錐部材の前記頭頂部の平坦面で構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の全周囲観察光学系。
【請求項8】
前記夫々の反射面が、夫々板状のミラー面で構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の全周囲観察光学系。
【請求項9】
さらに、前記所定の軸と同軸に配置されていて、前記側方の全周にわたる観察対象からの光を前記夫々の反射面に入射させる円筒状の透明窓を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の全周囲観察光学系。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の全周囲観察光学系と、
前記夫々の側方観察用の撮像素子が撮像した隣り合う領域の観察対象の画像同士を接合して、前記側方の全周にわたる観察対象のパノラマ画像を作成するパノラマ画像合成処理部と、
前記パノラマ画像合成処理部で作成された前記側方の全周にわたる観察対象のパノラマ画像を表示するパノラマ画像表示部を有することを特徴とする全周囲観察システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−163619(P2012−163619A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21863(P2011−21863)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】