半導体光変調器の駆動制御装置
【課題】バイアスドリフトと駆動信号の振幅の両方を同時に制御し、安定的に半導体MZ変調器を動作させる駆動制御装置を提供する。
【解決手段】連続光を出射する光源からの光を受け、駆動電圧に対する光出力特性が周期的に変化する半導体光変調器の駆動制御装置であって、半導体光変調器から出力された出力光に応じて変化する電気信号を検波するピーク検波部と、発振回路と、発振回路の出力とピーク検波部のピーク検波出力信号とに基づいて同期検波する同期検波回路と、同期検波回路の出力に応じて半導体光変調器の位相バイアスを制御するバイアス制御部と、データ信号を増幅する増幅器と、同期検波回路の出力に応じて増幅器から出力された増幅されたデータ信号の振幅を制御する振幅制御部と、増幅器の出力に対して基準電圧を供給する電源回路と、増幅器の出力と基準電圧とを受けて駆動電圧を発生する加算器とを備える。
【解決手段】連続光を出射する光源からの光を受け、駆動電圧に対する光出力特性が周期的に変化する半導体光変調器の駆動制御装置であって、半導体光変調器から出力された出力光に応じて変化する電気信号を検波するピーク検波部と、発振回路と、発振回路の出力とピーク検波部のピーク検波出力信号とに基づいて同期検波する同期検波回路と、同期検波回路の出力に応じて半導体光変調器の位相バイアスを制御するバイアス制御部と、データ信号を増幅する増幅器と、同期検波回路の出力に応じて増幅器から出力された増幅されたデータ信号の振幅を制御する振幅制御部と、増幅器の出力に対して基準電圧を供給する電源回路と、増幅器の出力と基準電圧とを受けて駆動電圧を発生する加算器とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に用いる光変調器の駆動制御装置に関し、特に、半導体マッハツェンダ(Mach−Zehnder)型光変調器を安定して駆動制御できる駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの一つの変調方式として、レーザーダイオードを駆動電流で変調して電気信号に比例した光の強度信号を得る直接変調方式が用いられてきた。この直接変調方式は、装置構成が非常に簡単である長所を有している。
【0003】
しかし、伝送速度が数Gbit/sを超える超高速・広帯域光通信システムにおいては、直接変調時に光の波長が変化する波長変動(チャーピング)現象が伝送容量を制限する要因となっていた。
【0004】
このため、直接変調方式は、比較的低速な光通信システムに用いられている。
一方、超高速伝送用の光変調方式では、変調時のチャーピングを抑圧するため、半導体レーザを連続的に発光させて、この光を外部変調器でオン/オフする外部変調器方式が使用されている。なお、外部変調器として最も一般的なものはマッハツェンダ型光変調器(以下、MZ型変調器とする)である。
【0005】
図19は、MZ型光変調器の駆動信号に対する光出力特性の一例を示す図である。図19を参照して、従来のNRZ(non return to zero)変調符号では、周期Tでレベルが変化する駆動信号のハイレベルおよびローレベルを光出力特性の発光の頂点Aおよび消光の頂点Bにそれぞれ合わせることによって、光出力のオン/オフ変調を行っている。
【0006】
なお、以下の説明では、周期的に変化する光出力特性の発光/消光の各頂点A、Bに対応したバイアス電圧の差をVπで表記することにする。これによれば上記のNRZ変調方式における駆動信号の振幅はVπとなる。
【0007】
このMZ型光変調器については、チャーピング現象が少ないという長所がある。しかしながら、温度変化や経時変化等により駆動信号に対する光出力特性が時間的にドリフトして、光出力のオン/オフレベルに符号間干渉が生じてしまうという問題があった。
【0008】
このような問題を解決してMZ型変調器の動作点を安定に制御するためには、図19に示した駆動電圧に対する光出力特性を示す曲線aが曲線bに変動した場合には、駆動信号によるバイアス電圧をその変化に応じて小さくするという動作点の制御が必要となる。一方、曲線aが曲線cに変動した場合には、同様にバイアス電圧をその変化に応じて大きくするといった動作点の制御が必要である。
【0009】
このNRZ符号やRZ(return to zero)符号を用いた変調方式では、たとえば、特開平4−140712号公報(特許文献1)に開示された技術において、駆動信号に低周波信号を重畳して動作点の変動量および変動方向を検出し、フィードバックによりバイアス電圧を制御して、動作点を正常に保つ補償技術を用いてバイアス電圧の補償を行うことを目的としている。
【0010】
特開平10−048582号公報(特許文献2)に開示された技術は、バイアスと駆動振幅の両方を最適化することを目的とする。第一の同期検波回路と第二の同期検波回路が配置され、第一のディザ信号発生器と第二のディザ信号発生器は、加算器によって加算されDCバイアス端子に接続されている。第一の同期検波回路では、ディザ信号をDCバイアスに重畳し、ピーク検波器でディザ信号成分を検出する。検出した信号を元のディザ信号と掛け合わせ、最適なバイアス値との差に応じた誤差信号を得る。この値をDCバイアスにフィードバックすることで、変調器のバイアスを最適化することができる。第二の同期検波回路も同様の構成であり、変調器駆動振幅の最適値からのずれに対応した誤差信号が同期検波回路から出力されるため、誤差信号を利得可変増幅器にフィードバックすることで、光変調器への駆動信号の振幅を最適化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−140712号公報
【特許文献2】特開平10−048582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特開平4−140712号公報(特許文献1)に開示された技術を用いることにより、温度変化や経時変化等によりバイアスドリフトを補償することが可能となる。MZ型光変調器として一般的なLiNbO3を基板に用いたLN変調器などは安定的に使用することが可能となる。
【0013】
さらに近年、半導体導波路を用いてMZ変調器を構成する半導体MZ変調器が実現されている。半導体MZ変調器は、大幅な小型化が可能である。また半導体MZ変調器は、駆動振幅も小さい。従って、半導体MZ変調器を用いることにより、光送信装置の大幅な小型化が実現でき、将来の有望なデバイスとして期待されている。
【0014】
しかしながら、この半導体MZ変調器は、温度、経年変化などによるバイアスドリフトの他に、温度や波長によってVπ(駆動信号の振幅)も変化してしまう問題点がある。
【0015】
特開平10−048582号公報(特許文献2)に開示された技術では、最適なバイアス電圧が複数あることが前提であるため、最適なバイアス電圧が一つしかない場合は最適点に収束しない可能性があるという問題点もある。
【0016】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、バイアスドリフトと駆動信号の振幅の両方を同時に制御し、安定的に半導体MZ変調器を動作させる駆動制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明に係る半導体光変調器の駆動制御装置は、連続光を出射する光源からの光を受け、駆動電圧に対する光出力特性が周期的に変化する半導体光変調器の駆動制御装置であって、半導体光変調器から出力された出力光に応じて変化する電気信号を検波するピーク検波部と、発振回路と、発振回路の出力とピーク検波部のピーク検波出力信号とに基づいて同期検波する同期検波回路と、同期検波回路の出力に応じて半導体光変調器の位相バイアスを制御するバイアス制御部と、データ信号を増幅する増幅器と、同期検波回路の出力に応じて増幅器から出力された増幅されたデータ信号の振幅を制御する振幅制御部と、増幅器の出力に対して基準電圧を供給する電源回路と、増幅器の出力と基準電圧とを受けて駆動電圧を発生する加算器とを備える。
【発明の効果】
【0018】
この発明の駆動制御装置によれば、半導体MZ変調器の制御において、バイアスと駆動振幅を最適値に制御することが可能となり、安定的に半導体MZ変調器を動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1による駆動制御装置100を示すブロック図である。
【図2】半導体MZ変調器2の構成を示す図である。
【図3】図2に示した半導体MZ変調器の構成の変形例を示す図である。
【図4】Pバイアス電圧が適切に設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。
【図5】Pバイアス電圧が適切な値より高く設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。
【図6】Pバイアス電圧が適切な値より低く設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。
【図7】駆動振幅が適切に設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。
【図8】駆動振幅が適切な値より大きく設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。
【図9】駆動振幅が適切な値より小さく設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。
【図10】実施の形態2の駆動制御装置200を示すブロック図である。
【図11】半導体MZ変調器2のSバイアス電圧と駆動振幅の関係を示す図である。
【図12】実施の形態3による駆動制御装置300の接続関係の一例を説明するためのブロック図である。
【図13】実施の形態3による駆動制御装置300の接続関係の別の一例を説明するためのブロック図である。
【図14】実施の形態3の駆動制御装置300の変形例である駆動制御装置300Aを示すブロック図である。
【図15】実施の形態4による駆動制御装置400を示すブロック図である。
【図16】2つの異なる波長におけるPバイアスと光出力との関係を説明するための図である。
【図17】実施の形態5の駆動制御装置500を示すブロック図である。
【図18】実施の形態6の駆動制御装置600を示すブロック図である。
【図19】MZ型光変調器の駆動信号に対する光出力特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の各実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0021】
[実施の形態1]
図1は実施の形態1の駆動制御装置100を示すブロック図である。図1を参照して、駆動制御装置100は、連続光を出射する光源1と、半導体MZ変調器2と、出力信号を分波する分波器3と、光信号を電気信号に変換するフォトダイオード4と、フォトダイオード4の出力電気信号を増幅し、包絡線を検波するピーク検波部5と、ディザ信号(低周波信号)を発生する発振回路6と、ディザ信号とピーク検波信号とを掛け合わせ同期検波する同期検波回路7とを含む。発振回路6はディザ信号発生部6a、6bを含み、同期検波回路7は同期検波部7a、7bを含む。
【0022】
さらに、駆動制御装置100は、同期検波部7aからの出力信号に基づきバイアスを制御するバイアス制御部8と、同期検波部7bからの出力信号に基づきデータ信号の振幅を制御する振幅制御部9と、データ信号を増幅し半導体MZ変調器を駆動する増幅器10と、バイアス制御部8および振幅制御部9からの制御信号をそれぞれディザ信号に加算する加算器11a、11bと、データ信号が増幅器10によって増幅された信号に重畳するバイアス(基準電圧)を供給するDC電源12と、データ信号とDC電源12の出力電圧とを加算する加算器11cとを含む。
【0023】
同期検波回路7は様々な形態のものが実現されており、たとえばバンドパスフィルタ、ミキサ、低域透過フィルタで構成されるものが一般的である。さらに、デジタル信号処理によって実現することも可能である。また、ピーク検波部5は通常ダイオードとコンデンサとを用いて容易に構成され、またピーク検波器として容易に市場で入手できる。
【0024】
図2は、半導体MZ変調器2の構成を示す図である。図2を参照して、半導体MZ変調器2は、対称な2つのアーム20A、20Bと、光入出力のための導波路15と、データ信号で変調するための信号電極13と、各アームの位相とを調整する位相調整電極14とを含む。
【0025】
信号電極13は、データ信号とバイアス(Sバイアス)とを印加して各アームの位相を高速に変化させる。位相調整電極14は、位相調整バイアス(Pバイアス)を印加して各アームの位相を調整する。信号電極13と位相調整電極14とが分離されているのは、バイアスによって光吸収が発生することと、バイアスの値によって半波長電圧(Vπ)が変化するためである。ただ、必ずしも上記のように電極が分離されている必要はなく、1つの電極で制御することも可能である。
【0026】
次に、半導体MZ変調器2と比較しつつ半導体MZ変調器2Aを説明する。図3は、半導体MZ変調器2の変形例である半導体MZ変調器2Aを示す図である。図3を参照して、半導体MZ変調器2Aは、図2の半導体MZ変調器2の構成に加え、半導体MZ変調器2の1電極構成の信号電極13と位相調整電極14とに代えて、導波路直上に電極をそれぞれ配置する2電極構成する信号電極13a、13bと位相調整電極14a、14bとを含む。
【0027】
ただし、半導体MZ変調器2,2Aの構成について説明したが、これに限定されるものではない。
【0028】
次に実施の形態1の動作を説明する。光源1より出射された光源1は半導体MZ変調器2に入力される。データ信号は増幅器10によって増幅される。DC電源12の出力信号は、加算器11cによって増幅器10によって増幅された増幅信号と加算され、Sバイアスとして半導体MZ変調器2の信号電極13に入力される。
【0029】
このとき、データ信号を増幅する増幅器10の振幅調整端子には、ディザ信号発生部6aからのディザ信号が入力される。すなわち、データ信号はディザ信号発生部6aによって強度変調される。
【0030】
半導体MZ変調器2の出力光信号を分波器3によって分波し、フォトダイオード4で電気信号に変換してピーク検波部5に入力する。ピーク検波部5では、この入力信号の包絡線を検波するため、ディザ信号で変調した強度変調成分のみを抽出する。
【0031】
ピーク検波部5からのピーク検波出力信号の1つは同期検波部7aに入力される。同期検波部7aには、ディザ信号発生部6aから発生されたディザ信号がさらに入力される。ディザ信号発生部6aから発生されたディザ信号とピーク検波部5からのピーク検波出力信号を用いて同期検波部7aにおいて同期検波を実施する。
【0032】
上記同期検波に応じて、目標値との誤差信号が出力され、バイアス制御部8へ入力される。バイアス制御部8は誤差信号に基づき、バイアスを制御する制御信号を出力する。加算器11bにおいて、この制御信号はディザ信号発生部6bから発生されるディザ信号に加算され、この加算された出力信号は、半導体MZ変調器2のPバイアス電圧として入力される。
【0033】
上記の制御を行うことにより、Pバイアス電圧を最適な値に制御することができる。具体的に上記の制御に関して図4〜図6を用いて説明する。ここで各図はさらに(a)〜(d)を含む。
【0034】
(a)には、半導体MZ変調器2へPバイアス電圧として入力されるSバイアス電圧における信号が示される。(b)には、半導体MZ変調器2で与えられる動作特性曲線(消光カーブ)が示される。
【0035】
(c)には、半導体MZ変調器2から出力された光信号波形が示される。(d)には、半導体MZ変調器2から出力された光信号波形をフォトダイオード4で受光し、電気信号に変換され、ピーク検波部5においてピーク検波されたときのピーク検波部5の出力波形が示される。
【0036】
図4は、Pバイアス電圧が適切に設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。図4(a)〜図4(d)を参照して、加算器11aにおいてデータ信号に加算されたディザ信号は観測されず、ピーク検波部5の出力としてディザ信号の周波数の2倍の周波数成分を有する信号が発生する。このため、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号とディザ信号発生部6aから出力されるディザ信号とを同期検波したときの同期検波部7aの出力は0となる。従って、バイアス制御部8はこのときのPバイアスが適切に制御され設定されていると判断する。
【0037】
図5は、Pバイアス電圧が適切な値より高く設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。図5(a)〜図5(d)を参照して、加算器11aにおいてデータ信号に加算されたディザ信号は、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号とディザ信号発生部6aから出力されるディザ信号とは同じ周波数であり、かつ位相が反転していることが分かる。このため、同期検波の出力としてはマイナスであり、バイアス制御部はPバイアス電圧を増加させる方向に制御する。
【0038】
図6は、Pバイアス電圧が適切な値より低く設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。図6(a)〜図6(d)を参照して、加算器11aにおいてデータ信号に加算されたディザ信号は、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号とディザ信号発生部6aから出力されるディザ信号とは同じ周波数でかつ同じ位相であることが分かる。このため、同期検波の出力としてはプラスであり、バイアス制御部はPバイアス電圧を減少させる方向に制御する。
【0039】
図4〜図6を用いて説明したように、上記の制御を行えば、Pバイアス電圧を最適な値に制御することが可能となる。
【0040】
半導体MZ変調器2からの出力光信号は分波器3によって分波され、フォトダイオード4で電気信号に変換してピーク検波部5に入力される。ピーク検波部5では、入力された信号の包絡線を検波するため、ディザ信号で変調した強度変調成分のみを抽出する。
【0041】
ピーク検波部5からのピーク検波出力信号のもう1つは同期検波部7bに入力される。同期検波部7bにはディザ信号発生部6bから発生されたディザ信号も入力される。このディザ信号とピーク検波部5からのピーク検波出力信号とを用いて同期検波部7bにおいて同期検波を実施する。
【0042】
上記同期検波に応じて、目標値との誤差信号が出力され、振幅制御部9で振幅制御電圧が生成される。加算器11aにおいて、振幅制御電圧の出力波形にディザ信号発生部6aから発生されるディザ信号が加算される。加算器11aの出力信号が増幅器10の振幅制御端子に入力される。
【0043】
上記の制御を行うことにより、データ信号の駆動振幅を最適な値に制御することができる。具体的に上記の制御に関して図7〜図9を用いて説明する。ここで、各図はさらに(a)〜(d)を含む。
【0044】
(a)には、半導体MZ変調器2へPバイアス電圧として入力されるSバイアス電圧における信号が示される。(b)には、半導体MZ変調器2で与えられる動作特性曲線(消光カーブ)が示される。
【0045】
(c)には、半導体MZ変調器2から出力された光信号波形が示される。(d)には、半導体MZ変調器2から出力された光信号波形をフォトダイオード4で受光し、電気信号に変換され、ピーク検波部5においてピーク検波されたときのピーク検波部5の出力波形が示される。
【0046】
図7は、駆動振幅が適切に設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。図7(a)〜図7(d)を参照して、加算器11bにおいてPバイアス電圧に加算されたディザ信号は観測されず、ピーク検波部5の出力としてディザ信号の周波数の2倍の周波数成分を有する信号が発生する。このため、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号とディザ信号発生部6bから出力されるディザ信号とを同期検波したときの同期検波部7bの出力は0となる。従って、振幅制御部9はこのときの駆動振幅が最適値と判断する。
【0047】
図8は、駆動振幅が適切な値より大きく設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。図8(a)〜図8(d)を参照して、加算器11bにおいてPバイアス電圧に加算されたディザ信号は、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号とディザ信号発生部6bから出力されるディザ信号とは同じ周波数であり、かつ位相が反転していることが分かる。このため、同期検波の出力としてはマイナスであり、振幅制御部9は駆動振幅を減少させる方向に制御する。
【0048】
図9は、駆動振幅が適切な値より小さく設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。図9(a)〜図9(d)を参照して、加算器11bにおいてPバイアス電圧に加算されたディザ信号は、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号とディザ信号発生部6bから出力されるディザ信号とは同じ周波数であり、かつ同じ位相であることが分かる。このため、同期検波の出力としてはプラスであり、振幅制御部9は駆動振幅を増加させる方向に制御する。
【0049】
図7〜図9を用いて説明したように、上記の制御を行えば、駆動振幅を最適な値に制御することが可能となる。
【0050】
よって、図4〜図9を用いて説明したように、実施の形態1の駆動制御装置100を実施することによって、Pバイアス電圧の制御と駆動振幅の制御とを同時に実施することで、Pバイアス電圧および駆動振幅の両方を常に最適な制御にすることができる。
【0051】
なお、Pバイアス電圧と駆動振幅とを同時制御しているため、これらの制御で使用されているディザ信号を判別する必要がある。このためディザ信号発生部6a、6bの周波数は異なる周波数に設定を行う。
【0052】
以上のように、実施の形態1の駆動制御装置100では、2つの異なる周波数のディザ信号を用いることで、温度変化、経年変化、波長によって最適値が様々な値となるPバイアス電圧および駆動振幅を適切な値に制御にすることができる。
【0053】
[実施の形態2]
実施の形態1の駆動制御装置100と比較しつつ、駆動制御装置200について説明する。図10は、実施の形態2の駆動制御装置200を示すブロック図である。図10を参照して、駆動制御装置200は、図1の駆動制御装置100の構成に加え、駆動制御装置100のDC電源12に代えて、DC電源12Aを含み、かつ、図1の駆動制御装置100の加算器11aを含まない。駆動制御装置200の他の構成は、駆動制御装置100と同様のため説明は繰返さない。
【0054】
図1の駆動制御装置100では、振幅制御部9の出力信号を増幅器10の振幅制御端子に入力することで、駆動振幅の値を適切な値に制御していた。
【0055】
一方、駆動制御装置200では、振幅制御部9の出力信号をSバイアスに印加しているDC電源12Aに入力する。
【0056】
図11は、半導体MZ変調器2のSバイアス電圧と駆動振幅の関係を示す図である。図11を参照して、縦軸に光出力信号が示され、横軸にSバイアス電圧が示される。半導体MZ変調器2はSバイアス電圧の深さが深くなると、必要な駆動振幅(Vπ)が小さくなる。すなわち、バイアスが−3VのときのVπは1.7Vp−p、−6Vの時のVπは0.7Vp−pである。なお、Vp−pは、通常の変調波形のピーク間の振幅値である。
【0057】
つまり、データ信号の振幅を変化させることと、バイアスの深さを変化させることは、同じ効果となる。そのため、データ信号の振幅を固定し、DC電源12Aの出力電圧を制御しSバイアスを変化させることで、駆動振幅を適切な値にすることができる。
【0058】
以上のように、実施の形態2に係る駆動制御装置200では、増幅器10の出力振幅を変化させることなく、駆動振幅を最適な値に制御することができる。
【0059】
[実施の形態3]
実施の形態1の駆動制御装置100と比較しつつ、実施の形態3の駆動制御装置300について説明する。図12は、実施の形態3による駆動制御装置300の接続関係の一例を説明するためのブロック図である。
【0060】
図12を参照して、駆動制御装置300は、図1の駆動制御装置100の構成に加え、駆動制御装置100の発振回路6に代えて、発振回路106を含み、かつ、駆動制御装置100の同期検波回路7に代えて、同期検波回路107を含む。
【0061】
発振回路106は、ディザ信号発生部306と、ディザ信号の出力信号の接続先を切り替える切替部16aとをさらに含む。
【0062】
同期検波回路107は、同期検波部307と、同期検波部の出力信号の接続先を切り替える切替部16bとをさらに含む。
【0063】
加えて、切替部16a、16bを同期して制御する制御部21と、切替部16a、16bが切り替わる直前のバイアス制御部8および振幅制御部9のそれぞれの出力値を保持するバイアス記憶部17Tおよび振幅記憶部18Tとを含む。
【0064】
バイアス記憶部17Tおよび振幅記憶部18Tは、たとえばSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような揮発性記憶素子で実現できる。
【0065】
切替部16aは、ディザ信号発生部306からの出力信号が接続される端子16a1と、加算器11bへの入力信号に接続される端子16a2と、増幅器10の振幅調整端子に接続される端子16a3とを含む。
【0066】
一方、切替部16bは、同期検波部307からの出力信号に接続される端子16b1と、バイアス制御部8に接続される端子16b2と、振幅制御部9に接続される端子16b3とを含む。
【0067】
ディザ信号発生部306によって発生されたディザ信号の出力先および同期検波部出力先を制御部21によって切替部16a、16bが切り替えられ、Pバイアスの制御および駆動振幅の制御が時分割で実施する。
【0068】
実施の形態3に係る駆動制御装置300の動作について説明する。切替部16a、16bは制御部21によって、下記のような2つの接続関係が選択される。
【0069】
一方の接続関係は、切替部16aにおいて、端子16a1とa端子16a3とが接続される選択がされたときは、切替部16bにおいて、端子16b1と端子16b2とが接続される選択がされる場合である。
【0070】
他方の接続関係は、切替部16aにおいて、端子16a1とa端子16a2とが接続される選択がされたときは、切替部16bにおいて、端子16b1と端子16b3とが接続される選択がされる場合である。
【0071】
この接続関係は、制御部21の動作信号に同期して、切替部16a、16bの動作が切り替わる。
【0072】
バイアス制御部8および振幅制御部9のいずれかは、切替部16a、16bにより、ディザ信号発生部306からのディザ信号または同期検波部307からの出力信号と接続されていない。従って、接続されていないバイアス制御部8および振幅制御部9に対応するそれぞれのバイアス記憶部17Tおよび振幅記憶部18Tから切替直前までのバイアス制御出力信号または振幅制御出力信号のデータを用いてPバイアスの制御および駆動振幅の制御を行う。
【0073】
たとえば、制御開始時点において、切替部16a、16bが図12のような接続関係である場合、ディザ信号発生部306によって発生されたディザ信号は加算器11aを介して増幅器10の振幅調整端子に入力される。またこのディザ信号は同期検波部307にも入力される。増幅器10の振幅調整端子にディザ信号が入力されているため、増幅器10の出力信号はディザ信号によって振幅変調されている。なお、振幅記憶部18Tは振幅制御部9の制御開始直前の制御値を保持し、その制御値は振幅制御部の出力信号としてとして用いられる。
【0074】
この出力信号にDC電源からの電圧が加算されSバイアス電圧として半導体MZ変調器2に入力される。半導体MZ変調器2の出力信号をフォトダイオード4で電気信号に変換してピーク検波部5で包絡線を検波し、同期検波部307に入力される。
【0075】
同期検波部307ではディザ信号とピーク検波部5からのピーク検波出力信号によって同期検波をし、誤差信号を出力する。切替部16bによって誤差信号はバイアス制御部8に入力される。バイアス制御部8では、誤差信号からPバイアス電圧を生成し、半導体MZ変調器2に入力する。このPバイアスの制御に関しては、図4から図6に示した制御と同様であるため、説明は繰返さない。
【0076】
図13は、実施の形態3による駆動制御装置300の接続関係の別の一例を説明するためのブロック図である。図13を参照して、図12の切替部16a、16bの接続関係を保持したまま、Pバイアスの制御を一定時間繰返した後、制御部21によって、図13の切替部16a、16bの接続関係に切り替える。
【0077】
このとき、バイアス記憶部17Tは、バイアス制御部8の切替直前の制御値を保持し、以後の制御ではこの制御値はバイアス制御部8の出力信号として用いられる。ディザ信号は、加算器11bを介してPバイアスに入力される。また、このディザ信号は同期検波部307にも入力される。Pバイアスに印加されたディザ信号は、フォトダイオード4、ピーク検波部5で処理され同期検波部307に入力される。
【0078】
同期検波部307ではディザ信号とピーク検波部5からのピーク検波出力信号によって同期検波をし、誤差信号を出力する。誤差信号は切替部16bによって振幅制御部に入力される。振幅制御部では、誤差信号から振幅制御電圧を生成し、増幅器の振幅制御端子に入力する。この駆動振幅の制御に関しては、図7から図9に示した制御と同様であるため、説明は繰返さない。
【0079】
この駆動振幅の制御を一定時間繰返した後、切替部16a、16bを再度図12の接続関係に切り替える。このとき、振幅記憶部18Tは、振幅制御部9の切替直前の制御値を保持し、以後の制御では、この制御知は、振幅制御部9の出力信号として用いられる。以後は図12と図13の接続関係が制御部21によって繰返される。
【0080】
以上のように、実施の形態3に係る駆動制御装置300では、1つのディザ信号発生部306と同期検波部307を用いて、切替部16a、16bによって接続関係を切り替えることで、Pバイアスおよび駆動振幅を最適な値に制御にすることが可能となり、回路の簡素化、ディザ信号のS/N比を向上させることができる。
【0081】
また、実施の形態3においても、実施の形態2を組み合わせることで、振幅制御部の信号をDC電源に接続して制御することが可能である。
【0082】
実施の形態3の駆動制御装置300は、ピーク検波後の信号として1つのディザ信号発生部でよく、複数のディザ信号発生部を用いるときに比べ、ピーク検波信号のS/N比が劣化させることがない。
【0083】
また、実施の形態3の駆動制御装置300は、より高精度な同期検波部を必要とせずコストの減少となる。さらに実施の形態3の駆動制御装置300は、この高精度な同期検波部を配置することが必要ないため、チップサイズも小さくできる。
【0084】
実施の形態3の駆動制御装置300は、ディザ信号の振幅を増加させる必要もなく、主信号の品質劣化することなく維持できる。
【0085】
[実施の形態3の変形例]
実施の形態3の駆動制御装置300と比較しつつ、実施の形態3の駆動制御装置300Aについて説明する。図14は、実施の形態3の駆動制御装置300の変形例である駆動制御装置300Aを示すブロック図である。
【0086】
図14を参照して、駆動制御装置300Aは、図12の駆動制御装置300の構成に加え、駆動制御装置300のDC電源12に代えて、DC電源12Aを含み、かつ、図12の駆動制御装置300の加算器11aを含まない。駆動制御装置300Aの他の構成は、駆動制御装置300と同様のため説明は繰返さない。
【0087】
この駆動制御装置300Aは、実施の形態3の駆動制御装置300と実施の形態2の駆動制御装置200とを組み合わせた実施の形態となる。
【0088】
従って駆動制御装置300Aは、実施の形態2の駆動制御装置200と同様にデータ信号の振幅を固定し、DC電源12Aの出力電圧を制御しSバイアスを変化させることで、駆動振幅を適切な値にすることができる。この実施の形態3の変形例の動作について、実施の形態2および実施の形態3の動作と同様であるので説明は繰返さない。
【0089】
[実施の形態4]
実施の形態1の駆動制御装置100と比較しつつ、実施の形態4に係る駆動制御装置400について説明する。図15は、実施の形態4による駆動制御装置400を示すブロック図である。図15を参照して、この駆動制御装置400は、図1の駆動制御装置100の構成に加えて、異なる初期値を予め記憶されるバイアス記憶部17および振幅記憶部18をさらに含む。
【0090】
図1の駆動制御装置100では、制御電圧等の初期値は特に定めずに制御を開始していた。しかし、半導体MZ変調器2の場合、波長や温度によって、制御可能となる範囲が異なる。そこで、駆動制御装置400は、バイアス記憶部17および振幅記憶部18に波長毎あるいは温度毎に異なる値を記憶させ、その値を初期値として制御を開始する。
【0091】
バイアス記憶部17および振幅記憶部18には、光源1の波長の情報が格納される。たとえば、光源1が波長可変光源であれば波長情報は容易に得ることができ、波長可変レーザではない場合は波長計などを用いることで予め波長情報を得ることができる。
【0092】
バイアス記憶部17および振幅記憶部18には、それぞれ複数の初期値を有している。それらの初期値は波長毎に異なる値が予め準備され記憶される。入手した波長情報に基づき、制御が開始されると、バイアス記憶部17および振幅記憶部18にそれぞれ記憶されている初期値はバイアス制御部8および振幅制御部9に読み込まれ、駆動制御装置400は、制御を開始する。その後の動作については実施の形態1で説明した動作と同じになるため、説明は繰返さない。
【0093】
図16は、2つの異なる波長におけるPバイアスと光出力との関係を説明するための図である。図16を参照して、縦軸に光出力[dBm]が示され、横軸にPバイアス電圧が示される。
【0094】
たとえば、ある光源の波長が1550nmのときには、SバイアスがP1の電圧(1.03V程度)が最適点となり、また別の光源の波長が1590nmのときは、SバイアスがQ1の電圧(0.99V程度)が最適点である。
【0095】
同期検波制御においては、最小点になるようにSバイアスの制御を行うため、波長が1550nmの時はP1の電圧付近に、波長が1590nmの時はQ1の電圧付近にそれぞれSバイアスが制御されることが望ましい。
【0096】
しかしながら、全ての初期値から、最小点であるP1およびQ1の電圧へ制御することは難しい。たとえば、波長が1550nmの光源を用いるときに、初期値の電圧をP2の電圧(0.81V)より低い電圧に設定し制御を開始したとすると、最小点は、P2の電位よりも低い電圧にあると誤認識する可能性があり、P2の電圧以下の電圧で制御されてしまう。
【0097】
また波長が1590nmの場合は、Q2の電圧(0.77V)より低いSバイアス電圧を初期値として制御を開始したとすると、Q1の電圧へ制御されず、Q1の電圧より低い電圧に向かって制御されてしまう。
【0098】
このように、半導体MZ変調器2の場合、全ての初期値から制御することは難しい。従って、まず、制御可能な一定の範囲を予め設定を行う。そのために、バイアス記憶部17および振幅記憶部18に、どのSバイアス電圧から制御を開始するかの初期値を記憶させておくことで、確実に最適点に制御することが可能になる。
【0099】
また、図16のように、制御可能な範囲は波長毎に異なるため、バイアス記憶部17および振幅記憶部18は波長毎に異なる値を複数記憶することができる。
【0100】
なお、バイアス記憶部17および振幅記憶部18は、たとえばフラッシュメモリのような不揮発性記憶素子を用いて実現できる。
【0101】
以上のように、実施の形態4に係る駆動制御装置400では、バイアス記憶部17および振幅記憶部18を設け、波長毎に異なる複数の初期値をバイアス記憶部17および振幅記憶部18に初期値を予め記憶させ、記憶された初期値に基づいて同期検波制御を開始することで、最適点に制御することが可能となる。
【0102】
上記は波長が異なる場合の制御に関して記載したが、波長だけに限ったものではない。たとえば、温度センサを配置し、温度によって異なる初期値から開始することも可能である。
【0103】
[実施の形態5]
実施の形態4の駆動制御装置400と比較しつつ、実施の形態5の駆動制御装置500について説明する。図17は、実施の形態5の駆動制御装置500を示すブロック図である。図17を参照して、駆動制御装置500は、図15の駆動制御装置400の加え、駆動制御装置400に含まれる異なる初期値を予め記憶されるバイアス記憶部17および振幅記憶部18に代えて、バイアス制御部8が半導体MZ変調器2を制御するための初期値を検索する初期値検索部19aと、振幅制御部9が半導体MZ変調器2を制御するための初期値を検索する初期値検索部19bをさらに含む。
【0104】
実施の形態4の駆動制御装置400では、予め波長毎の初期値を記憶しておく必要がある。一方、実施の形態5の駆動制御装置500においては、予め初期値を記憶しておくのではなく、初期値検索部19a、19bによって自動的に初期値を検索し、検索された初期値を用いて同期検波制御を開始する。
【0105】
実施の形態5の駆動制御装置500の動作を説明する。初期値検索部19a、19bはバイアス制御部8と振幅制御部9の初期値をそれぞれ検索する。
【0106】
駆動制御装置500の制御動作開始時に、初期値検索部19a、19bは出力可能な全ての範囲の電圧を0Vから出力可能最大電圧まで掃引を行う。その掃引後、初期値検索部19a、19bは、光出力が減少している範囲を検出し、その範囲の電圧の最小値(制御開始電圧)を初期値として設定する。
【0107】
具体的に説明すると、再度図16を参照して、駆動制御装置500の制御動作開始時に、初期値検索部19a、19bが出力可能な全ての範囲の電圧を0Vから出力可能最大電圧まで一定の間隔で掃引を行う。この際の掃引の結果から最小値であるP1を検出し、さらに、P1の電圧(1.03V)を初期値として制御を開始する。また、このP1の電圧(1.03V)を用いて、P1の電圧付近を上記の一定の間隔より狭い間隔で部分的にさらに掃引し、最小値を選びなおすことも可能である。
【0108】
以上のように、実施の形態5の駆動制御装置500に初期値検索部19a、19bを設けることによって、実施の形態4の駆動制御装置400のように予め初期値をバイアス記憶部17および振幅記憶部18に記憶させることなく、初期値検索部19a、19bによって、自動的に初期値を検索してから、最適点の初期値を設定し、同期検波制御を開始することで、Pバイアスおよび駆動振幅を最適な値に制御することが可能となる。
【0109】
[実施の形態6]
実施の形態1の駆動制御装置100と比較しつつ、実施の形態6の駆動制御装置600について説明する。図18は、実施の形態6の駆動制御装置600を示すブロック図である。図18を参照して、この駆動制御装置600は、駆動制御装置100の構成に加え、図1の駆動制御装置100のDC電源12に代えて、電源回路12Bを含み、かつ、分波器3とフォトダイオード4とを含まない。電源回路12Bは、出力光信号の吸収量に応じて流れる電流が変化するDC電源312と、DC電源312に流れる電流を検出する電流検出部22とを含む。
【0110】
実施の形態1の駆動制御装置100では、半導体MZ変調器2の出力光を分波器3で分波し、フォトダイオード4で光・電気変換を実施する。
【0111】
一方、実施の形態6の駆動制御装置600では、電流検出部22は、DC電源312に流れる電流をモニタし、駆動制御装置100に含まれるフォトダイオード4の代わりに、電流量を検出する。ピーク検波部5は、この電流量に基づいて電気信号を検波する。このフィードバックにより、出力光信号の強度が向上する。すなわち、DC電源312は、Sバイアス電圧として使用している。
【0112】
ここで、DC電源312は、駆動振幅を制御するSバイアスに電圧を印加する。Sバイアスに電圧を印加すると、半導体MZ変調器2の位相が変化するだけでなく半導体MZ変調器2による光吸収も発生する。これはフォトダイオードの原理と同様である。
【0113】
半導体MZ変調器2を通過する光の強度によって光吸収量も変化する。従ってDC電源312が光吸収量を検出し、それに応じて電圧を印加し、電流検出部22によって検出されたDC電源312からの電流量をピーク検波部5に入力することで出力光信号の強度を向上させることができる。
【0114】
なお、DC電源312と電流検出部22とを個々に説明したが、DC電源312の内部に電流検出部22の機能を持たせることでも実現できる。
【0115】
以上のように、実施の形態6に係る駆動制御装置600では、半導体MZ変調器2の光吸収量によって光電気変換を実施するため、電源回路12Bを用いれば、実施の形態1の分波器3およびフォトダイオード4の構成を省くことができ、さらに実装面積を減少させることができる。さらに、半導体MZ変調器2より出力される変調信号は分波されないためあるいは光出力強度が低下しないために、変調効率が向上させることができる。
【0116】
以上説明したように、各実施の形態を実施することにより、バイアスと駆動振幅を最適値に制御することが可能となり、安定的に半導体MZ変調器を動作させることができる。
【0117】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0118】
1 光源、2,2A 変調器、3 分波器、4 フォトダイオード、5 ピーク検波部、6,106 発振回路、6a,6b,306 ディザ信号発生部、7,107 同期検波回路、7a,7b,107,307 同期検波部、8 バイアス制御部、9 振幅制御部、10 増幅器、11a,11b,11c 加算器、12,12A,312 DC電源、12B 電源回路、13 信号電極、14 位相調整電極、15 導波路、16a,16b 切替部、16a1,16a2,16a3,16b1,16b2,16b3 端子、17,17T バイアス記憶部、18,18T 振幅記憶部、19a,19b 初期値検索部、20A,20B アーム、21 制御部、22 電流検出部、100,200,300,300A,400,500,600 駆動制御装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に用いる光変調器の駆動制御装置に関し、特に、半導体マッハツェンダ(Mach−Zehnder)型光変調器を安定して駆動制御できる駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの一つの変調方式として、レーザーダイオードを駆動電流で変調して電気信号に比例した光の強度信号を得る直接変調方式が用いられてきた。この直接変調方式は、装置構成が非常に簡単である長所を有している。
【0003】
しかし、伝送速度が数Gbit/sを超える超高速・広帯域光通信システムにおいては、直接変調時に光の波長が変化する波長変動(チャーピング)現象が伝送容量を制限する要因となっていた。
【0004】
このため、直接変調方式は、比較的低速な光通信システムに用いられている。
一方、超高速伝送用の光変調方式では、変調時のチャーピングを抑圧するため、半導体レーザを連続的に発光させて、この光を外部変調器でオン/オフする外部変調器方式が使用されている。なお、外部変調器として最も一般的なものはマッハツェンダ型光変調器(以下、MZ型変調器とする)である。
【0005】
図19は、MZ型光変調器の駆動信号に対する光出力特性の一例を示す図である。図19を参照して、従来のNRZ(non return to zero)変調符号では、周期Tでレベルが変化する駆動信号のハイレベルおよびローレベルを光出力特性の発光の頂点Aおよび消光の頂点Bにそれぞれ合わせることによって、光出力のオン/オフ変調を行っている。
【0006】
なお、以下の説明では、周期的に変化する光出力特性の発光/消光の各頂点A、Bに対応したバイアス電圧の差をVπで表記することにする。これによれば上記のNRZ変調方式における駆動信号の振幅はVπとなる。
【0007】
このMZ型光変調器については、チャーピング現象が少ないという長所がある。しかしながら、温度変化や経時変化等により駆動信号に対する光出力特性が時間的にドリフトして、光出力のオン/オフレベルに符号間干渉が生じてしまうという問題があった。
【0008】
このような問題を解決してMZ型変調器の動作点を安定に制御するためには、図19に示した駆動電圧に対する光出力特性を示す曲線aが曲線bに変動した場合には、駆動信号によるバイアス電圧をその変化に応じて小さくするという動作点の制御が必要となる。一方、曲線aが曲線cに変動した場合には、同様にバイアス電圧をその変化に応じて大きくするといった動作点の制御が必要である。
【0009】
このNRZ符号やRZ(return to zero)符号を用いた変調方式では、たとえば、特開平4−140712号公報(特許文献1)に開示された技術において、駆動信号に低周波信号を重畳して動作点の変動量および変動方向を検出し、フィードバックによりバイアス電圧を制御して、動作点を正常に保つ補償技術を用いてバイアス電圧の補償を行うことを目的としている。
【0010】
特開平10−048582号公報(特許文献2)に開示された技術は、バイアスと駆動振幅の両方を最適化することを目的とする。第一の同期検波回路と第二の同期検波回路が配置され、第一のディザ信号発生器と第二のディザ信号発生器は、加算器によって加算されDCバイアス端子に接続されている。第一の同期検波回路では、ディザ信号をDCバイアスに重畳し、ピーク検波器でディザ信号成分を検出する。検出した信号を元のディザ信号と掛け合わせ、最適なバイアス値との差に応じた誤差信号を得る。この値をDCバイアスにフィードバックすることで、変調器のバイアスを最適化することができる。第二の同期検波回路も同様の構成であり、変調器駆動振幅の最適値からのずれに対応した誤差信号が同期検波回路から出力されるため、誤差信号を利得可変増幅器にフィードバックすることで、光変調器への駆動信号の振幅を最適化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−140712号公報
【特許文献2】特開平10−048582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特開平4−140712号公報(特許文献1)に開示された技術を用いることにより、温度変化や経時変化等によりバイアスドリフトを補償することが可能となる。MZ型光変調器として一般的なLiNbO3を基板に用いたLN変調器などは安定的に使用することが可能となる。
【0013】
さらに近年、半導体導波路を用いてMZ変調器を構成する半導体MZ変調器が実現されている。半導体MZ変調器は、大幅な小型化が可能である。また半導体MZ変調器は、駆動振幅も小さい。従って、半導体MZ変調器を用いることにより、光送信装置の大幅な小型化が実現でき、将来の有望なデバイスとして期待されている。
【0014】
しかしながら、この半導体MZ変調器は、温度、経年変化などによるバイアスドリフトの他に、温度や波長によってVπ(駆動信号の振幅)も変化してしまう問題点がある。
【0015】
特開平10−048582号公報(特許文献2)に開示された技術では、最適なバイアス電圧が複数あることが前提であるため、最適なバイアス電圧が一つしかない場合は最適点に収束しない可能性があるという問題点もある。
【0016】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、バイアスドリフトと駆動信号の振幅の両方を同時に制御し、安定的に半導体MZ変調器を動作させる駆動制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明に係る半導体光変調器の駆動制御装置は、連続光を出射する光源からの光を受け、駆動電圧に対する光出力特性が周期的に変化する半導体光変調器の駆動制御装置であって、半導体光変調器から出力された出力光に応じて変化する電気信号を検波するピーク検波部と、発振回路と、発振回路の出力とピーク検波部のピーク検波出力信号とに基づいて同期検波する同期検波回路と、同期検波回路の出力に応じて半導体光変調器の位相バイアスを制御するバイアス制御部と、データ信号を増幅する増幅器と、同期検波回路の出力に応じて増幅器から出力された増幅されたデータ信号の振幅を制御する振幅制御部と、増幅器の出力に対して基準電圧を供給する電源回路と、増幅器の出力と基準電圧とを受けて駆動電圧を発生する加算器とを備える。
【発明の効果】
【0018】
この発明の駆動制御装置によれば、半導体MZ変調器の制御において、バイアスと駆動振幅を最適値に制御することが可能となり、安定的に半導体MZ変調器を動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1による駆動制御装置100を示すブロック図である。
【図2】半導体MZ変調器2の構成を示す図である。
【図3】図2に示した半導体MZ変調器の構成の変形例を示す図である。
【図4】Pバイアス電圧が適切に設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。
【図5】Pバイアス電圧が適切な値より高く設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。
【図6】Pバイアス電圧が適切な値より低く設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。
【図7】駆動振幅が適切に設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。
【図8】駆動振幅が適切な値より大きく設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。
【図9】駆動振幅が適切な値より小さく設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。
【図10】実施の形態2の駆動制御装置200を示すブロック図である。
【図11】半導体MZ変調器2のSバイアス電圧と駆動振幅の関係を示す図である。
【図12】実施の形態3による駆動制御装置300の接続関係の一例を説明するためのブロック図である。
【図13】実施の形態3による駆動制御装置300の接続関係の別の一例を説明するためのブロック図である。
【図14】実施の形態3の駆動制御装置300の変形例である駆動制御装置300Aを示すブロック図である。
【図15】実施の形態4による駆動制御装置400を示すブロック図である。
【図16】2つの異なる波長におけるPバイアスと光出力との関係を説明するための図である。
【図17】実施の形態5の駆動制御装置500を示すブロック図である。
【図18】実施の形態6の駆動制御装置600を示すブロック図である。
【図19】MZ型光変調器の駆動信号に対する光出力特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の各実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0021】
[実施の形態1]
図1は実施の形態1の駆動制御装置100を示すブロック図である。図1を参照して、駆動制御装置100は、連続光を出射する光源1と、半導体MZ変調器2と、出力信号を分波する分波器3と、光信号を電気信号に変換するフォトダイオード4と、フォトダイオード4の出力電気信号を増幅し、包絡線を検波するピーク検波部5と、ディザ信号(低周波信号)を発生する発振回路6と、ディザ信号とピーク検波信号とを掛け合わせ同期検波する同期検波回路7とを含む。発振回路6はディザ信号発生部6a、6bを含み、同期検波回路7は同期検波部7a、7bを含む。
【0022】
さらに、駆動制御装置100は、同期検波部7aからの出力信号に基づきバイアスを制御するバイアス制御部8と、同期検波部7bからの出力信号に基づきデータ信号の振幅を制御する振幅制御部9と、データ信号を増幅し半導体MZ変調器を駆動する増幅器10と、バイアス制御部8および振幅制御部9からの制御信号をそれぞれディザ信号に加算する加算器11a、11bと、データ信号が増幅器10によって増幅された信号に重畳するバイアス(基準電圧)を供給するDC電源12と、データ信号とDC電源12の出力電圧とを加算する加算器11cとを含む。
【0023】
同期検波回路7は様々な形態のものが実現されており、たとえばバンドパスフィルタ、ミキサ、低域透過フィルタで構成されるものが一般的である。さらに、デジタル信号処理によって実現することも可能である。また、ピーク検波部5は通常ダイオードとコンデンサとを用いて容易に構成され、またピーク検波器として容易に市場で入手できる。
【0024】
図2は、半導体MZ変調器2の構成を示す図である。図2を参照して、半導体MZ変調器2は、対称な2つのアーム20A、20Bと、光入出力のための導波路15と、データ信号で変調するための信号電極13と、各アームの位相とを調整する位相調整電極14とを含む。
【0025】
信号電極13は、データ信号とバイアス(Sバイアス)とを印加して各アームの位相を高速に変化させる。位相調整電極14は、位相調整バイアス(Pバイアス)を印加して各アームの位相を調整する。信号電極13と位相調整電極14とが分離されているのは、バイアスによって光吸収が発生することと、バイアスの値によって半波長電圧(Vπ)が変化するためである。ただ、必ずしも上記のように電極が分離されている必要はなく、1つの電極で制御することも可能である。
【0026】
次に、半導体MZ変調器2と比較しつつ半導体MZ変調器2Aを説明する。図3は、半導体MZ変調器2の変形例である半導体MZ変調器2Aを示す図である。図3を参照して、半導体MZ変調器2Aは、図2の半導体MZ変調器2の構成に加え、半導体MZ変調器2の1電極構成の信号電極13と位相調整電極14とに代えて、導波路直上に電極をそれぞれ配置する2電極構成する信号電極13a、13bと位相調整電極14a、14bとを含む。
【0027】
ただし、半導体MZ変調器2,2Aの構成について説明したが、これに限定されるものではない。
【0028】
次に実施の形態1の動作を説明する。光源1より出射された光源1は半導体MZ変調器2に入力される。データ信号は増幅器10によって増幅される。DC電源12の出力信号は、加算器11cによって増幅器10によって増幅された増幅信号と加算され、Sバイアスとして半導体MZ変調器2の信号電極13に入力される。
【0029】
このとき、データ信号を増幅する増幅器10の振幅調整端子には、ディザ信号発生部6aからのディザ信号が入力される。すなわち、データ信号はディザ信号発生部6aによって強度変調される。
【0030】
半導体MZ変調器2の出力光信号を分波器3によって分波し、フォトダイオード4で電気信号に変換してピーク検波部5に入力する。ピーク検波部5では、この入力信号の包絡線を検波するため、ディザ信号で変調した強度変調成分のみを抽出する。
【0031】
ピーク検波部5からのピーク検波出力信号の1つは同期検波部7aに入力される。同期検波部7aには、ディザ信号発生部6aから発生されたディザ信号がさらに入力される。ディザ信号発生部6aから発生されたディザ信号とピーク検波部5からのピーク検波出力信号を用いて同期検波部7aにおいて同期検波を実施する。
【0032】
上記同期検波に応じて、目標値との誤差信号が出力され、バイアス制御部8へ入力される。バイアス制御部8は誤差信号に基づき、バイアスを制御する制御信号を出力する。加算器11bにおいて、この制御信号はディザ信号発生部6bから発生されるディザ信号に加算され、この加算された出力信号は、半導体MZ変調器2のPバイアス電圧として入力される。
【0033】
上記の制御を行うことにより、Pバイアス電圧を最適な値に制御することができる。具体的に上記の制御に関して図4〜図6を用いて説明する。ここで各図はさらに(a)〜(d)を含む。
【0034】
(a)には、半導体MZ変調器2へPバイアス電圧として入力されるSバイアス電圧における信号が示される。(b)には、半導体MZ変調器2で与えられる動作特性曲線(消光カーブ)が示される。
【0035】
(c)には、半導体MZ変調器2から出力された光信号波形が示される。(d)には、半導体MZ変調器2から出力された光信号波形をフォトダイオード4で受光し、電気信号に変換され、ピーク検波部5においてピーク検波されたときのピーク検波部5の出力波形が示される。
【0036】
図4は、Pバイアス電圧が適切に設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。図4(a)〜図4(d)を参照して、加算器11aにおいてデータ信号に加算されたディザ信号は観測されず、ピーク検波部5の出力としてディザ信号の周波数の2倍の周波数成分を有する信号が発生する。このため、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号とディザ信号発生部6aから出力されるディザ信号とを同期検波したときの同期検波部7aの出力は0となる。従って、バイアス制御部8はこのときのPバイアスが適切に制御され設定されていると判断する。
【0037】
図5は、Pバイアス電圧が適切な値より高く設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。図5(a)〜図5(d)を参照して、加算器11aにおいてデータ信号に加算されたディザ信号は、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号とディザ信号発生部6aから出力されるディザ信号とは同じ周波数であり、かつ位相が反転していることが分かる。このため、同期検波の出力としてはマイナスであり、バイアス制御部はPバイアス電圧を増加させる方向に制御する。
【0038】
図6は、Pバイアス電圧が適切な値より低く設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。図6(a)〜図6(d)を参照して、加算器11aにおいてデータ信号に加算されたディザ信号は、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号とディザ信号発生部6aから出力されるディザ信号とは同じ周波数でかつ同じ位相であることが分かる。このため、同期検波の出力としてはプラスであり、バイアス制御部はPバイアス電圧を減少させる方向に制御する。
【0039】
図4〜図6を用いて説明したように、上記の制御を行えば、Pバイアス電圧を最適な値に制御することが可能となる。
【0040】
半導体MZ変調器2からの出力光信号は分波器3によって分波され、フォトダイオード4で電気信号に変換してピーク検波部5に入力される。ピーク検波部5では、入力された信号の包絡線を検波するため、ディザ信号で変調した強度変調成分のみを抽出する。
【0041】
ピーク検波部5からのピーク検波出力信号のもう1つは同期検波部7bに入力される。同期検波部7bにはディザ信号発生部6bから発生されたディザ信号も入力される。このディザ信号とピーク検波部5からのピーク検波出力信号とを用いて同期検波部7bにおいて同期検波を実施する。
【0042】
上記同期検波に応じて、目標値との誤差信号が出力され、振幅制御部9で振幅制御電圧が生成される。加算器11aにおいて、振幅制御電圧の出力波形にディザ信号発生部6aから発生されるディザ信号が加算される。加算器11aの出力信号が増幅器10の振幅制御端子に入力される。
【0043】
上記の制御を行うことにより、データ信号の駆動振幅を最適な値に制御することができる。具体的に上記の制御に関して図7〜図9を用いて説明する。ここで、各図はさらに(a)〜(d)を含む。
【0044】
(a)には、半導体MZ変調器2へPバイアス電圧として入力されるSバイアス電圧における信号が示される。(b)には、半導体MZ変調器2で与えられる動作特性曲線(消光カーブ)が示される。
【0045】
(c)には、半導体MZ変調器2から出力された光信号波形が示される。(d)には、半導体MZ変調器2から出力された光信号波形をフォトダイオード4で受光し、電気信号に変換され、ピーク検波部5においてピーク検波されたときのピーク検波部5の出力波形が示される。
【0046】
図7は、駆動振幅が適切に設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。図7(a)〜図7(d)を参照して、加算器11bにおいてPバイアス電圧に加算されたディザ信号は観測されず、ピーク検波部5の出力としてディザ信号の周波数の2倍の周波数成分を有する信号が発生する。このため、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号とディザ信号発生部6bから出力されるディザ信号とを同期検波したときの同期検波部7bの出力は0となる。従って、振幅制御部9はこのときの駆動振幅が最適値と判断する。
【0047】
図8は、駆動振幅が適切な値より大きく設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。図8(a)〜図8(d)を参照して、加算器11bにおいてPバイアス電圧に加算されたディザ信号は、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号とディザ信号発生部6bから出力されるディザ信号とは同じ周波数であり、かつ位相が反転していることが分かる。このため、同期検波の出力としてはマイナスであり、振幅制御部9は駆動振幅を減少させる方向に制御する。
【0048】
図9は、駆動振幅が適切な値より小さく設定されたときの半導体MZ変調器2の動作を説明するための図である。図9(a)〜図9(d)を参照して、加算器11bにおいてPバイアス電圧に加算されたディザ信号は、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号とディザ信号発生部6bから出力されるディザ信号とは同じ周波数であり、かつ同じ位相であることが分かる。このため、同期検波の出力としてはプラスであり、振幅制御部9は駆動振幅を増加させる方向に制御する。
【0049】
図7〜図9を用いて説明したように、上記の制御を行えば、駆動振幅を最適な値に制御することが可能となる。
【0050】
よって、図4〜図9を用いて説明したように、実施の形態1の駆動制御装置100を実施することによって、Pバイアス電圧の制御と駆動振幅の制御とを同時に実施することで、Pバイアス電圧および駆動振幅の両方を常に最適な制御にすることができる。
【0051】
なお、Pバイアス電圧と駆動振幅とを同時制御しているため、これらの制御で使用されているディザ信号を判別する必要がある。このためディザ信号発生部6a、6bの周波数は異なる周波数に設定を行う。
【0052】
以上のように、実施の形態1の駆動制御装置100では、2つの異なる周波数のディザ信号を用いることで、温度変化、経年変化、波長によって最適値が様々な値となるPバイアス電圧および駆動振幅を適切な値に制御にすることができる。
【0053】
[実施の形態2]
実施の形態1の駆動制御装置100と比較しつつ、駆動制御装置200について説明する。図10は、実施の形態2の駆動制御装置200を示すブロック図である。図10を参照して、駆動制御装置200は、図1の駆動制御装置100の構成に加え、駆動制御装置100のDC電源12に代えて、DC電源12Aを含み、かつ、図1の駆動制御装置100の加算器11aを含まない。駆動制御装置200の他の構成は、駆動制御装置100と同様のため説明は繰返さない。
【0054】
図1の駆動制御装置100では、振幅制御部9の出力信号を増幅器10の振幅制御端子に入力することで、駆動振幅の値を適切な値に制御していた。
【0055】
一方、駆動制御装置200では、振幅制御部9の出力信号をSバイアスに印加しているDC電源12Aに入力する。
【0056】
図11は、半導体MZ変調器2のSバイアス電圧と駆動振幅の関係を示す図である。図11を参照して、縦軸に光出力信号が示され、横軸にSバイアス電圧が示される。半導体MZ変調器2はSバイアス電圧の深さが深くなると、必要な駆動振幅(Vπ)が小さくなる。すなわち、バイアスが−3VのときのVπは1.7Vp−p、−6Vの時のVπは0.7Vp−pである。なお、Vp−pは、通常の変調波形のピーク間の振幅値である。
【0057】
つまり、データ信号の振幅を変化させることと、バイアスの深さを変化させることは、同じ効果となる。そのため、データ信号の振幅を固定し、DC電源12Aの出力電圧を制御しSバイアスを変化させることで、駆動振幅を適切な値にすることができる。
【0058】
以上のように、実施の形態2に係る駆動制御装置200では、増幅器10の出力振幅を変化させることなく、駆動振幅を最適な値に制御することができる。
【0059】
[実施の形態3]
実施の形態1の駆動制御装置100と比較しつつ、実施の形態3の駆動制御装置300について説明する。図12は、実施の形態3による駆動制御装置300の接続関係の一例を説明するためのブロック図である。
【0060】
図12を参照して、駆動制御装置300は、図1の駆動制御装置100の構成に加え、駆動制御装置100の発振回路6に代えて、発振回路106を含み、かつ、駆動制御装置100の同期検波回路7に代えて、同期検波回路107を含む。
【0061】
発振回路106は、ディザ信号発生部306と、ディザ信号の出力信号の接続先を切り替える切替部16aとをさらに含む。
【0062】
同期検波回路107は、同期検波部307と、同期検波部の出力信号の接続先を切り替える切替部16bとをさらに含む。
【0063】
加えて、切替部16a、16bを同期して制御する制御部21と、切替部16a、16bが切り替わる直前のバイアス制御部8および振幅制御部9のそれぞれの出力値を保持するバイアス記憶部17Tおよび振幅記憶部18Tとを含む。
【0064】
バイアス記憶部17Tおよび振幅記憶部18Tは、たとえばSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような揮発性記憶素子で実現できる。
【0065】
切替部16aは、ディザ信号発生部306からの出力信号が接続される端子16a1と、加算器11bへの入力信号に接続される端子16a2と、増幅器10の振幅調整端子に接続される端子16a3とを含む。
【0066】
一方、切替部16bは、同期検波部307からの出力信号に接続される端子16b1と、バイアス制御部8に接続される端子16b2と、振幅制御部9に接続される端子16b3とを含む。
【0067】
ディザ信号発生部306によって発生されたディザ信号の出力先および同期検波部出力先を制御部21によって切替部16a、16bが切り替えられ、Pバイアスの制御および駆動振幅の制御が時分割で実施する。
【0068】
実施の形態3に係る駆動制御装置300の動作について説明する。切替部16a、16bは制御部21によって、下記のような2つの接続関係が選択される。
【0069】
一方の接続関係は、切替部16aにおいて、端子16a1とa端子16a3とが接続される選択がされたときは、切替部16bにおいて、端子16b1と端子16b2とが接続される選択がされる場合である。
【0070】
他方の接続関係は、切替部16aにおいて、端子16a1とa端子16a2とが接続される選択がされたときは、切替部16bにおいて、端子16b1と端子16b3とが接続される選択がされる場合である。
【0071】
この接続関係は、制御部21の動作信号に同期して、切替部16a、16bの動作が切り替わる。
【0072】
バイアス制御部8および振幅制御部9のいずれかは、切替部16a、16bにより、ディザ信号発生部306からのディザ信号または同期検波部307からの出力信号と接続されていない。従って、接続されていないバイアス制御部8および振幅制御部9に対応するそれぞれのバイアス記憶部17Tおよび振幅記憶部18Tから切替直前までのバイアス制御出力信号または振幅制御出力信号のデータを用いてPバイアスの制御および駆動振幅の制御を行う。
【0073】
たとえば、制御開始時点において、切替部16a、16bが図12のような接続関係である場合、ディザ信号発生部306によって発生されたディザ信号は加算器11aを介して増幅器10の振幅調整端子に入力される。またこのディザ信号は同期検波部307にも入力される。増幅器10の振幅調整端子にディザ信号が入力されているため、増幅器10の出力信号はディザ信号によって振幅変調されている。なお、振幅記憶部18Tは振幅制御部9の制御開始直前の制御値を保持し、その制御値は振幅制御部の出力信号としてとして用いられる。
【0074】
この出力信号にDC電源からの電圧が加算されSバイアス電圧として半導体MZ変調器2に入力される。半導体MZ変調器2の出力信号をフォトダイオード4で電気信号に変換してピーク検波部5で包絡線を検波し、同期検波部307に入力される。
【0075】
同期検波部307ではディザ信号とピーク検波部5からのピーク検波出力信号によって同期検波をし、誤差信号を出力する。切替部16bによって誤差信号はバイアス制御部8に入力される。バイアス制御部8では、誤差信号からPバイアス電圧を生成し、半導体MZ変調器2に入力する。このPバイアスの制御に関しては、図4から図6に示した制御と同様であるため、説明は繰返さない。
【0076】
図13は、実施の形態3による駆動制御装置300の接続関係の別の一例を説明するためのブロック図である。図13を参照して、図12の切替部16a、16bの接続関係を保持したまま、Pバイアスの制御を一定時間繰返した後、制御部21によって、図13の切替部16a、16bの接続関係に切り替える。
【0077】
このとき、バイアス記憶部17Tは、バイアス制御部8の切替直前の制御値を保持し、以後の制御ではこの制御値はバイアス制御部8の出力信号として用いられる。ディザ信号は、加算器11bを介してPバイアスに入力される。また、このディザ信号は同期検波部307にも入力される。Pバイアスに印加されたディザ信号は、フォトダイオード4、ピーク検波部5で処理され同期検波部307に入力される。
【0078】
同期検波部307ではディザ信号とピーク検波部5からのピーク検波出力信号によって同期検波をし、誤差信号を出力する。誤差信号は切替部16bによって振幅制御部に入力される。振幅制御部では、誤差信号から振幅制御電圧を生成し、増幅器の振幅制御端子に入力する。この駆動振幅の制御に関しては、図7から図9に示した制御と同様であるため、説明は繰返さない。
【0079】
この駆動振幅の制御を一定時間繰返した後、切替部16a、16bを再度図12の接続関係に切り替える。このとき、振幅記憶部18Tは、振幅制御部9の切替直前の制御値を保持し、以後の制御では、この制御知は、振幅制御部9の出力信号として用いられる。以後は図12と図13の接続関係が制御部21によって繰返される。
【0080】
以上のように、実施の形態3に係る駆動制御装置300では、1つのディザ信号発生部306と同期検波部307を用いて、切替部16a、16bによって接続関係を切り替えることで、Pバイアスおよび駆動振幅を最適な値に制御にすることが可能となり、回路の簡素化、ディザ信号のS/N比を向上させることができる。
【0081】
また、実施の形態3においても、実施の形態2を組み合わせることで、振幅制御部の信号をDC電源に接続して制御することが可能である。
【0082】
実施の形態3の駆動制御装置300は、ピーク検波後の信号として1つのディザ信号発生部でよく、複数のディザ信号発生部を用いるときに比べ、ピーク検波信号のS/N比が劣化させることがない。
【0083】
また、実施の形態3の駆動制御装置300は、より高精度な同期検波部を必要とせずコストの減少となる。さらに実施の形態3の駆動制御装置300は、この高精度な同期検波部を配置することが必要ないため、チップサイズも小さくできる。
【0084】
実施の形態3の駆動制御装置300は、ディザ信号の振幅を増加させる必要もなく、主信号の品質劣化することなく維持できる。
【0085】
[実施の形態3の変形例]
実施の形態3の駆動制御装置300と比較しつつ、実施の形態3の駆動制御装置300Aについて説明する。図14は、実施の形態3の駆動制御装置300の変形例である駆動制御装置300Aを示すブロック図である。
【0086】
図14を参照して、駆動制御装置300Aは、図12の駆動制御装置300の構成に加え、駆動制御装置300のDC電源12に代えて、DC電源12Aを含み、かつ、図12の駆動制御装置300の加算器11aを含まない。駆動制御装置300Aの他の構成は、駆動制御装置300と同様のため説明は繰返さない。
【0087】
この駆動制御装置300Aは、実施の形態3の駆動制御装置300と実施の形態2の駆動制御装置200とを組み合わせた実施の形態となる。
【0088】
従って駆動制御装置300Aは、実施の形態2の駆動制御装置200と同様にデータ信号の振幅を固定し、DC電源12Aの出力電圧を制御しSバイアスを変化させることで、駆動振幅を適切な値にすることができる。この実施の形態3の変形例の動作について、実施の形態2および実施の形態3の動作と同様であるので説明は繰返さない。
【0089】
[実施の形態4]
実施の形態1の駆動制御装置100と比較しつつ、実施の形態4に係る駆動制御装置400について説明する。図15は、実施の形態4による駆動制御装置400を示すブロック図である。図15を参照して、この駆動制御装置400は、図1の駆動制御装置100の構成に加えて、異なる初期値を予め記憶されるバイアス記憶部17および振幅記憶部18をさらに含む。
【0090】
図1の駆動制御装置100では、制御電圧等の初期値は特に定めずに制御を開始していた。しかし、半導体MZ変調器2の場合、波長や温度によって、制御可能となる範囲が異なる。そこで、駆動制御装置400は、バイアス記憶部17および振幅記憶部18に波長毎あるいは温度毎に異なる値を記憶させ、その値を初期値として制御を開始する。
【0091】
バイアス記憶部17および振幅記憶部18には、光源1の波長の情報が格納される。たとえば、光源1が波長可変光源であれば波長情報は容易に得ることができ、波長可変レーザではない場合は波長計などを用いることで予め波長情報を得ることができる。
【0092】
バイアス記憶部17および振幅記憶部18には、それぞれ複数の初期値を有している。それらの初期値は波長毎に異なる値が予め準備され記憶される。入手した波長情報に基づき、制御が開始されると、バイアス記憶部17および振幅記憶部18にそれぞれ記憶されている初期値はバイアス制御部8および振幅制御部9に読み込まれ、駆動制御装置400は、制御を開始する。その後の動作については実施の形態1で説明した動作と同じになるため、説明は繰返さない。
【0093】
図16は、2つの異なる波長におけるPバイアスと光出力との関係を説明するための図である。図16を参照して、縦軸に光出力[dBm]が示され、横軸にPバイアス電圧が示される。
【0094】
たとえば、ある光源の波長が1550nmのときには、SバイアスがP1の電圧(1.03V程度)が最適点となり、また別の光源の波長が1590nmのときは、SバイアスがQ1の電圧(0.99V程度)が最適点である。
【0095】
同期検波制御においては、最小点になるようにSバイアスの制御を行うため、波長が1550nmの時はP1の電圧付近に、波長が1590nmの時はQ1の電圧付近にそれぞれSバイアスが制御されることが望ましい。
【0096】
しかしながら、全ての初期値から、最小点であるP1およびQ1の電圧へ制御することは難しい。たとえば、波長が1550nmの光源を用いるときに、初期値の電圧をP2の電圧(0.81V)より低い電圧に設定し制御を開始したとすると、最小点は、P2の電位よりも低い電圧にあると誤認識する可能性があり、P2の電圧以下の電圧で制御されてしまう。
【0097】
また波長が1590nmの場合は、Q2の電圧(0.77V)より低いSバイアス電圧を初期値として制御を開始したとすると、Q1の電圧へ制御されず、Q1の電圧より低い電圧に向かって制御されてしまう。
【0098】
このように、半導体MZ変調器2の場合、全ての初期値から制御することは難しい。従って、まず、制御可能な一定の範囲を予め設定を行う。そのために、バイアス記憶部17および振幅記憶部18に、どのSバイアス電圧から制御を開始するかの初期値を記憶させておくことで、確実に最適点に制御することが可能になる。
【0099】
また、図16のように、制御可能な範囲は波長毎に異なるため、バイアス記憶部17および振幅記憶部18は波長毎に異なる値を複数記憶することができる。
【0100】
なお、バイアス記憶部17および振幅記憶部18は、たとえばフラッシュメモリのような不揮発性記憶素子を用いて実現できる。
【0101】
以上のように、実施の形態4に係る駆動制御装置400では、バイアス記憶部17および振幅記憶部18を設け、波長毎に異なる複数の初期値をバイアス記憶部17および振幅記憶部18に初期値を予め記憶させ、記憶された初期値に基づいて同期検波制御を開始することで、最適点に制御することが可能となる。
【0102】
上記は波長が異なる場合の制御に関して記載したが、波長だけに限ったものではない。たとえば、温度センサを配置し、温度によって異なる初期値から開始することも可能である。
【0103】
[実施の形態5]
実施の形態4の駆動制御装置400と比較しつつ、実施の形態5の駆動制御装置500について説明する。図17は、実施の形態5の駆動制御装置500を示すブロック図である。図17を参照して、駆動制御装置500は、図15の駆動制御装置400の加え、駆動制御装置400に含まれる異なる初期値を予め記憶されるバイアス記憶部17および振幅記憶部18に代えて、バイアス制御部8が半導体MZ変調器2を制御するための初期値を検索する初期値検索部19aと、振幅制御部9が半導体MZ変調器2を制御するための初期値を検索する初期値検索部19bをさらに含む。
【0104】
実施の形態4の駆動制御装置400では、予め波長毎の初期値を記憶しておく必要がある。一方、実施の形態5の駆動制御装置500においては、予め初期値を記憶しておくのではなく、初期値検索部19a、19bによって自動的に初期値を検索し、検索された初期値を用いて同期検波制御を開始する。
【0105】
実施の形態5の駆動制御装置500の動作を説明する。初期値検索部19a、19bはバイアス制御部8と振幅制御部9の初期値をそれぞれ検索する。
【0106】
駆動制御装置500の制御動作開始時に、初期値検索部19a、19bは出力可能な全ての範囲の電圧を0Vから出力可能最大電圧まで掃引を行う。その掃引後、初期値検索部19a、19bは、光出力が減少している範囲を検出し、その範囲の電圧の最小値(制御開始電圧)を初期値として設定する。
【0107】
具体的に説明すると、再度図16を参照して、駆動制御装置500の制御動作開始時に、初期値検索部19a、19bが出力可能な全ての範囲の電圧を0Vから出力可能最大電圧まで一定の間隔で掃引を行う。この際の掃引の結果から最小値であるP1を検出し、さらに、P1の電圧(1.03V)を初期値として制御を開始する。また、このP1の電圧(1.03V)を用いて、P1の電圧付近を上記の一定の間隔より狭い間隔で部分的にさらに掃引し、最小値を選びなおすことも可能である。
【0108】
以上のように、実施の形態5の駆動制御装置500に初期値検索部19a、19bを設けることによって、実施の形態4の駆動制御装置400のように予め初期値をバイアス記憶部17および振幅記憶部18に記憶させることなく、初期値検索部19a、19bによって、自動的に初期値を検索してから、最適点の初期値を設定し、同期検波制御を開始することで、Pバイアスおよび駆動振幅を最適な値に制御することが可能となる。
【0109】
[実施の形態6]
実施の形態1の駆動制御装置100と比較しつつ、実施の形態6の駆動制御装置600について説明する。図18は、実施の形態6の駆動制御装置600を示すブロック図である。図18を参照して、この駆動制御装置600は、駆動制御装置100の構成に加え、図1の駆動制御装置100のDC電源12に代えて、電源回路12Bを含み、かつ、分波器3とフォトダイオード4とを含まない。電源回路12Bは、出力光信号の吸収量に応じて流れる電流が変化するDC電源312と、DC電源312に流れる電流を検出する電流検出部22とを含む。
【0110】
実施の形態1の駆動制御装置100では、半導体MZ変調器2の出力光を分波器3で分波し、フォトダイオード4で光・電気変換を実施する。
【0111】
一方、実施の形態6の駆動制御装置600では、電流検出部22は、DC電源312に流れる電流をモニタし、駆動制御装置100に含まれるフォトダイオード4の代わりに、電流量を検出する。ピーク検波部5は、この電流量に基づいて電気信号を検波する。このフィードバックにより、出力光信号の強度が向上する。すなわち、DC電源312は、Sバイアス電圧として使用している。
【0112】
ここで、DC電源312は、駆動振幅を制御するSバイアスに電圧を印加する。Sバイアスに電圧を印加すると、半導体MZ変調器2の位相が変化するだけでなく半導体MZ変調器2による光吸収も発生する。これはフォトダイオードの原理と同様である。
【0113】
半導体MZ変調器2を通過する光の強度によって光吸収量も変化する。従ってDC電源312が光吸収量を検出し、それに応じて電圧を印加し、電流検出部22によって検出されたDC電源312からの電流量をピーク検波部5に入力することで出力光信号の強度を向上させることができる。
【0114】
なお、DC電源312と電流検出部22とを個々に説明したが、DC電源312の内部に電流検出部22の機能を持たせることでも実現できる。
【0115】
以上のように、実施の形態6に係る駆動制御装置600では、半導体MZ変調器2の光吸収量によって光電気変換を実施するため、電源回路12Bを用いれば、実施の形態1の分波器3およびフォトダイオード4の構成を省くことができ、さらに実装面積を減少させることができる。さらに、半導体MZ変調器2より出力される変調信号は分波されないためあるいは光出力強度が低下しないために、変調効率が向上させることができる。
【0116】
以上説明したように、各実施の形態を実施することにより、バイアスと駆動振幅を最適値に制御することが可能となり、安定的に半導体MZ変調器を動作させることができる。
【0117】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0118】
1 光源、2,2A 変調器、3 分波器、4 フォトダイオード、5 ピーク検波部、6,106 発振回路、6a,6b,306 ディザ信号発生部、7,107 同期検波回路、7a,7b,107,307 同期検波部、8 バイアス制御部、9 振幅制御部、10 増幅器、11a,11b,11c 加算器、12,12A,312 DC電源、12B 電源回路、13 信号電極、14 位相調整電極、15 導波路、16a,16b 切替部、16a1,16a2,16a3,16b1,16b2,16b3 端子、17,17T バイアス記憶部、18,18T 振幅記憶部、19a,19b 初期値検索部、20A,20B アーム、21 制御部、22 電流検出部、100,200,300,300A,400,500,600 駆動制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続光を出射する光源からの光を受け、駆動電圧に対する光出力特性が周期的に変化する半導体光変調器の駆動制御装置であって、
前記半導体光変調器から出力された出力光に応じて変化する電気信号を検波するピーク検波部と、
発振回路と、
前記発振回路の出力と前記ピーク検波部のピーク検波出力信号とに基づいて同期検波する同期検波回路と、
前記同期検波回路の出力に応じて前記半導体光変調器の位相バイアスを制御するバイアス制御部と、
データ信号を増幅する増幅器と、
前記同期検波回路の出力に応じて前記増幅器から出力された増幅された前記データ信号の振幅を制御する振幅制御部と、
前記増幅器の出力に対して基準電圧を供給する電源回路と、
前記増幅器の出力と前記基準電圧とを受けて前記駆動電圧を発生する加算器とを備える半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項2】
前記電源回路は、前記振幅制御部の出力に応じて前記基準電圧を発生する、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項3】
前記発振回路は、
発振部と、
前記発振部の出力の接続先を前記増幅器と前記半導体光変調器とのいずれかに切り替える第1の切替部とを含む、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項4】
前記同期検波回路は、
同期検波部と、
前記同期検波部の出力の接続先を前記バイアス制御部と前記振幅制御部といずれかに切り替える第2の切替部とを含む、請求項3に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項5】
前記第1および第2の切替部を同期制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1の切替部に前記増幅器を選択させたときは、前記第2の切替部に前記バイアス制御部を選択させ、
前記第1の切替部に前記半導体光変調器を選択させたときは、前記第2の切替部に前記振幅制御部を選択させる、請求項4に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項6】
前記第1および第2の切替部の接続先が切り替わる直前の前記バイアス制御部および前記振幅制御部のそれぞれの出力値を保持するバイアス記憶部および振幅記憶部をさらに備える、請求項4に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項7】
前記バイアス制御部が前記半導体光変調器を制御するために予め準備された参照データを記憶するバイアス記憶部をさらに備える、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項8】
前記振幅制御部が前記半導体光変調器を制御するために予め準備された参照データを記憶する振幅記憶部をさらに備える、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項9】
前記バイアス制御部が前記半導体光変調器を制御するための初期値を検索する初期値検索部をさらに備える、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項10】
前記振幅制御部が前記半導体光変調器を制御するための初期値を検索する初期値検索部をさらに備える、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項11】
前記電源回路は、
前記出力光の吸収量に応じて流れる電流が変化する電源部と、
前記電源部に流れる電流を検出する電流検出部とを含み、
前記ピーク検波部は、前記検出された電流値に基づいて前記電気信号を検波する、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項12】
前記発振回路は、ディザ信号発生器を含む、請求項1から請求項11のいずれかに記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項1】
連続光を出射する光源からの光を受け、駆動電圧に対する光出力特性が周期的に変化する半導体光変調器の駆動制御装置であって、
前記半導体光変調器から出力された出力光に応じて変化する電気信号を検波するピーク検波部と、
発振回路と、
前記発振回路の出力と前記ピーク検波部のピーク検波出力信号とに基づいて同期検波する同期検波回路と、
前記同期検波回路の出力に応じて前記半導体光変調器の位相バイアスを制御するバイアス制御部と、
データ信号を増幅する増幅器と、
前記同期検波回路の出力に応じて前記増幅器から出力された増幅された前記データ信号の振幅を制御する振幅制御部と、
前記増幅器の出力に対して基準電圧を供給する電源回路と、
前記増幅器の出力と前記基準電圧とを受けて前記駆動電圧を発生する加算器とを備える半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項2】
前記電源回路は、前記振幅制御部の出力に応じて前記基準電圧を発生する、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項3】
前記発振回路は、
発振部と、
前記発振部の出力の接続先を前記増幅器と前記半導体光変調器とのいずれかに切り替える第1の切替部とを含む、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項4】
前記同期検波回路は、
同期検波部と、
前記同期検波部の出力の接続先を前記バイアス制御部と前記振幅制御部といずれかに切り替える第2の切替部とを含む、請求項3に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項5】
前記第1および第2の切替部を同期制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1の切替部に前記増幅器を選択させたときは、前記第2の切替部に前記バイアス制御部を選択させ、
前記第1の切替部に前記半導体光変調器を選択させたときは、前記第2の切替部に前記振幅制御部を選択させる、請求項4に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項6】
前記第1および第2の切替部の接続先が切り替わる直前の前記バイアス制御部および前記振幅制御部のそれぞれの出力値を保持するバイアス記憶部および振幅記憶部をさらに備える、請求項4に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項7】
前記バイアス制御部が前記半導体光変調器を制御するために予め準備された参照データを記憶するバイアス記憶部をさらに備える、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項8】
前記振幅制御部が前記半導体光変調器を制御するために予め準備された参照データを記憶する振幅記憶部をさらに備える、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項9】
前記バイアス制御部が前記半導体光変調器を制御するための初期値を検索する初期値検索部をさらに備える、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項10】
前記振幅制御部が前記半導体光変調器を制御するための初期値を検索する初期値検索部をさらに備える、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項11】
前記電源回路は、
前記出力光の吸収量に応じて流れる電流が変化する電源部と、
前記電源部に流れる電流を検出する電流検出部とを含み、
前記ピーク検波部は、前記検出された電流値に基づいて前記電気信号を検波する、請求項1に記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【請求項12】
前記発振回路は、ディザ信号発生器を含む、請求項1から請求項11のいずれかに記載の半導体光変調器の駆動制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−257164(P2012−257164A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130232(P2011−130232)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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