説明

半導体装置の製造方法及び半導体集積回路装置

【課題】本発明は、簡素な工程で、デバイスの特性を均一化することができる半導体装置の製造方法及び半導体集積回路装置を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体基板40の表面の所定領域41に、LOCOS酸化膜70を形成するLOCOS酸化膜形成工程と、
該LOCOS酸化膜70と前記半導体基板40の表面の境界を覆うように、ポリシリコン膜90を形成するポリシリコン形成工程と、
該ポリシリコン膜90をマスクとして、前記半導体基板40の表面にイオンの打ち込みを行い、前記半導体基板40の表面に、不純物領域60を形成するイオン打ち込み工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体集積回路装置に関し、特に、半導体基板の表面の所定領域に、LOCOS酸化膜を形成して半導体装置を製造する半導体装置の製造方法及び半導体集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体基板の表面に、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法によりLOCOS酸化膜を形成し、更にレジストを用いて、LOCOS酸化膜とレジストをマスクとしてイオンの打ち込みを行い、デバイスを形成する半導体装置の製造方法が知られている。
【0003】
図10は、従来の半導体装置の製造方法の一例を示した図である。図10においては、NPNトランジスタの製造方法の一例を説明する。図10(a)は、LOCOS酸化膜形成工程を示した図である。左側が平面図、右側が断面図を示している。LOCOS酸化膜形成工程において、シリコン基板110上にN層120が形成された半導体基板140の表面に、LOCOS法によりLOCOS酸化膜170が形成される。左側の平面図に示すように、半導体基板140の表面のトランジスタ等のデバイスを形成する領域が、LOCOS酸化膜170で周囲を囲まれる。
【0004】
図10(b)は、ベース領域形成工程を示した図である。不純物領域を形成しない部分は、レジスト200で覆われ、不純物領域を形成する部分は、レジスト200で覆われないで露出された状態となる。この、レジスト200がパターニングされた状態で、半導体基板140にイオンが打ち込まれ、不純物の注入が行われる。イオンは、例えば、ボロン等が用いられる。イオンは、高エネルギーで打ち込みが行われ、LOCOS酸化膜170のある部分は、LOCOS酸化膜170を透過してイオンが打ち込まれる。LOCOS酸化膜170の無い部分は、直接N層120にイオンが打ち込まれる。イオンが打ち込まれた箇所は、不純物が注入されたベース領域150となる。LOCOS酸化膜170が無く、半導体基板140のN層120が露出した箇所は、高濃度ベース領域151となり、LOCOS酸化膜170の下の箇所は、低濃度ベース領域152となる。
【0005】
図10(c)は、熱処理工程を示した図である。図10(b)において、高エネルギーイオンの打ち込みが行われた後は、レジスト200が除去され、半導体基板140の加熱処理が行われる。これにより、ベース領域150の熱拡散が行われ、注入された不純物がベース領域150中を拡散し、不純物濃度の濃度分布が平均化の方向に向かうとともに、ベース領域150が側方及び下方に拡大する。
【0006】
図10(d)は、ゲート酸化膜形成工程を示した図である。ゲート酸化膜形成工程においては、高濃度ベース領域151が露出した部分に、ゲート酸化膜180が形成される。これにより、高濃度ベース領域151の表面は、ゲート酸化膜180に覆われる。なお、ゲート酸化膜180は、MOSトランジスタを製造するプロセスにおける、ゲート酸化膜180と同様の薄膜状の酸化膜という意味であり、必ずしもその領域にゲートを形成するという意味ではない。
【0007】
図11は、従来の半導体装置の製造方法の図10の続きの工程を示した図である。図11(a)は、エミッタ領域形成工程を示した図である。エミッタ領域形成工程においては、イオンの打ち込みを行わない箇所がレジスト202で覆われる。一方、イオンの打ち込みの際、有機物のレジスト202が削れてエミッタ領域160に混入すると、エミッタ領域160の特性に悪影響を与えるため、エミッタ領域160の端部は、LOCOS酸化膜170をマスクとしてイオンの打ち込みが行われる。イオンは、例えば、リンが用いられてよい。また、イオンの打ち込みは、ゲート酸化膜180の形成された領域に、LOCOS酸化膜170をマスクとして行われるため、ゲート酸化膜180を透過し、かつLOCOS酸化膜170を透過しない程度の低エネルギーで行われる。低エネルギーイオンの打ち込みにより、不純物領域であるベース領域150の表面に、やはり不純物領域であるエミッタ領域160が形成される。
【0008】
図11(b)は、熱処理工程を示した図である。熱処理工程においては、半導体基板140が加熱処理され、エミッタ領域160の熱拡散が行われる。これにより、エミッタ領域160の不純物濃度が平均化するとともに、エミッタ領域160が側方及び下方に拡大する。なお、N層120は、コレクタ領域として機能し、NPN型バイポーラトランジスタを形成することができる。なお、N層120は、例えば、エピタキシャル成長により、P型のシリコン基板の上に形成されてもよい。
【0009】
また、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタとバイポーラトランジスタが同一の半導体基板上に混載されているBi−CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)集積回路装置であって、バイポーラトランジスタは、ベース層に接続された、側面に絶縁体の側壁を有するベース引出電極を有し、当該絶縁体の側壁を用いて、エミッタ電極引出開口及びエミッタ層を自己整合的に形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
かかるBi−CMOS集積回路装置の絶縁体の側壁の形成は、ベース引出電極上に絶縁膜を形成する工程と、ベース引出電極の側面及びベース引出電極に取り囲まれたエミッタ形成領域を含む半導体基板全体にTEOS膜の絶縁膜を成長させる工程と、TEOS膜の絶縁膜を異方性エッチングして、エミッタ形成領域上のベース引出電極側面に側壁を残す工程と、を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−111873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述の図10及び図11の従来技術の構成では、エミッタ領域114のサイズが、LOCOS酸化膜170の加工精度及び膜厚に影響を受けてしまい、エミッタ領域160の変動により、隣接するデバイスの特性が不均一となるという問題があった。また、エミッタ領域160のサイズが大きくなると、ベース領域150の高濃度ベース領域151のサイズが小さくなり、バイポーラトランジスタを縦方向に動作させたいにも関わらず、横方向の寄生動作が発生するようになり、トランジスタ特性が悪化するとともにバラつきが生じてしまうという問題があった。
【0013】
図12は、図11(b)のA部分の拡大図である。図12に示すように、LOCOS酸化膜170の横方向の位置は、加工精度により変動するおそれがある。また、LOCOS酸化膜170の端部は、外側に向かうにつれて膜厚が減少する、三角形の頂点のような先端が尖った断面形状となっている。このような形状であると、LOCOS酸化膜170の端部の横方向の位置により、膜厚も微妙に変化し、エミッタ領域160の横方向の大きさもそれによって影響を受けて変動する。同様に、LOCOS酸化膜170の透過により不純物が注入される高濃度ベース領域151は、LOCOS酸化膜170の三角形状の膜厚が変化する部分の下方にあるため、LOCOS酸化膜170の加工精度及び膜厚が、その不純物濃度に影響を受ける。
【0014】
また、高濃度ベース領域151の不純物濃度は、トランジスタの動作中、エミッタ領域160から注入された小数キャリアの拡散長に影響を及ぼす。一方、低濃度ベース領域152は、LOCOS酸化膜170の厚膜部分を通して打ち込まれているので、高濃度ベース領域151よりも、不純物濃度が低い。また、低濃度ベース領域152は、不純物濃度が低いので、小数キャリアの拡散長が長い。このように、高濃度ベース領域151から低濃度ベース領域152にかけて、不純物の濃度勾配があるので、高濃度ベース領域151に注入された小数キャリアは、効率よく低濃度ベース領域152に移送され、トランジスタの横方向の寄生動作が大きくなってしまうという問題があった。
【0015】
更に、特許文献1に記載の構成では、エミッタ領域を酸化膜の側壁で精度よく形成することは可能であるが、上述のように、複雑な工程を必要とし、製造工程が複雑化し、コスト増にも繋がるという問題があった。また、通常のMOSトランジスタの製造工程とは異なる工程が多く、バイポーラトランジスタの製造を、MOSトランジスタの工程と同じ工程で製造することができず、工程数の増加に繋がるという問題があった。
【0016】
そこで、本発明は、簡素な工程で、デバイスの特性を均一化することができる半導体装置の製造方法及び半導体集積回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板(40)の表面の所定領域(41)に、LOCOS酸化膜(70)を形成するLOCOS酸化膜形成工程と、
該LOCOS酸化膜(70)と前記半導体基板(40)の表面の境界を覆うように、ポリシリコン膜(90)を形成するポリシリコン形成工程と、
該ポリシリコン膜(90)をマスクとして、前記半導体基板(40)の表面にイオンの打ち込みを行い、前記半導体基板(40)の表面に、不純物領域(60)を形成するイオン打ち込み工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
これにより、加工精度の高いポリシリコン膜をマスクとして利用することができ、簡素な製造工程で高精度に不純物領域を形成することができる。
【0019】
第2の発明は、第1の発明に係る半導体装置の製造方法において、
前記LOCOS酸化膜形成工程と前記ポリシリコン形成工程との間に、前記LOCOS酸化膜(70)を透過する高エネルギーのイオン打ち込みを行う高エネルギーイオン打ち込み工程を含むことを特徴とする。
【0020】
これにより、高エネルギーイオン打ち込みにより形成された不純物領域の表面に、更に別の不純物領域を形成する半導体装置の製造工程にも利用することができ、種々の半導体装置について高精度な不純物領域の形成を行うことができる。
【0021】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る半導体装置の製造方法において、
前記不純物領域(60)は、トランジスタの活性領域であることを特徴とする。
【0022】
これにより、トランジスタの活性領域を高精度に形成することができ、特性が良好でバラツキの少ないトランジスタを製造することができる。
【0023】
第4の発明は、第3の発明に係る半導体装置の製造方法において、
前記トランジスタは、バイポーラトランジスタであることを特徴とする。
【0024】
これにより、特性が良好でバラツキの少ないバイポーラトランジスタを製造することができる。
【0025】
第5の発明は、第4の発明に係る半導体装置の製造方法において、
前記バイポーラトランジスタは、NPN型トランジスタであって、
前記活性領域は、エミッタ領域(60)であることを特徴とする。
【0026】
第6の発明は、第5の発明に係る半導体装置の製造方法において、
前記エミッタ領域(60)の端部は、前記LOCOS酸化膜(70)の端部と対向していることを特徴とする。
【0027】
第7の発明は、第1〜5のいずれかの発明に係る半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板の表面の前記所定領域(41)外に、前記LOCOS酸化膜形成工程において、MOSトランジスタの形成領域を定めるLOCOS酸化膜(70)を更に形成し、
前記ポリシリコン形成工程において、前記MOSトランジスタのゲートを更に形成し、
前記不純物形成工程において、前記MOSトランジスタのドレイン領域(62)及びソース領域(63)を更に形成し、前記所定領域外にMOSトランジスタを同時に形成することを特徴とする。
【0028】
これにより、MOSトランジスタを製造するプロセスを利用しつつ、余分な工程を増やすことなく、特性が良好でバラツキの少ない半導体装置を製造することができる。
【0029】
第8の発明は、第7の発明に係る半導体装置の製造方法において、
前記MOSトランジスタは、CMOSであることを特徴とする。
【0030】
第9の発明に係る半導体集積回路装置は、第3〜8のいずれかの発明に係るトランジスタを用いて、基準電圧生成回路を構成し、
該基準電圧生成回路を含むことを特徴とする。
【0031】
これにより、特性が良好でバラツキの少ない半導体集積回路装置を提供することができる。
【0032】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、特性が良好で均一な半導体装置又は半導体集積回路装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】LOCOS酸化膜形成工程を示した図である。図1(a)は、半導体装置が製造される半導体基板40の平面図である。図1(b)は、半導体基板40の断面図である。
【図2】高エネルギーイオン打ち込み工程を示した図である。図2(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図である。図2(b)は、半導体基板40の断面図である。
【図3】熱処理工程を示した図である。図3(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図である。図3(b)は、半導体基板40の断面図である。
【図4】ゲート酸化膜形成工程を示した図である。図4(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図である。図4(b)は、半導体基板10の断面図である。
【図5】ポリシリコン膜形成工程を示した図である。図5(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図である。図5(b)は、半導体基板40の断面図である。
【図6】イオン打ち込み工程を示した図である。図6(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図である。図6(b)は、半導体基板40の断面図である。
【図7】熱処理工程を示した図である。図7(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図である。図7(b)は、半導体基板40の断面図である。
【図8】図7(b)のBの部分を拡大した図である。
【図9】本実施例に係るNPN型バイポーラトランジスタの動作例を説明する図である。
【図10】従来の半導体装置の製造方法の一例を示した図である。図10(a)は、LOCOS酸化膜形成工程を示した図である。図10(b)は、ベース領域形成工程を示した図である。図10(c)は、熱処理工程を示した図である。図10(d)は、ゲート酸化膜形成工程を示した図である。
【図11】従来の半導体装置の製造方法の図10の続きの工程を示した図である。図11(a)は、エミッタ領域形成工程を示した図である。図11(b)は、熱処理工程を示した図である。
【図12】図12は、図11(b)のA部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0036】
図1乃至図7は、本発明の実施例に係る半導体装置の製造方法の一連の工程を示した図である。
【0037】
図1は、LOCOS酸化膜形成工程を示した図である。図1(a)は、半導体装置が製造される半導体基板40の平面図であり、図1(b)は、半導体基板40の断面図である。
【0038】
図1(b)において、半導体基板40は、シリコン基板10と、N層20と、P層30とを有する。また、半導体基板40の表面に、LOCOS酸化膜70が形成されている。シリコン基板10は、他の半導体材料からなる基板であってもよいが、本実施例においては、シリコン基板10を用いた例を挙げて説明する。N層20は、例えば、エピタキシャル成長によって形成されてもよい。
【0039】
半導体基板40の表面は、バイポーラトランジスタ形成領域41と、MOSトランジスタ形成領域42とを有している。本実施例に係る半導体装置の製造方法は、MOSトランジスタの通常の製造工程を利用しつつ、高精度に不純物領域が形成された半導体装置を製造することができる。よって、図1乃至図7においては、本実施例に係る半導体装置の製造方法によりNPN型バイポーラトランジスタを製造するとともに、NチャネルMOSトランジスタを同じ半導体基板40上に形成する例を示すこととする。但し、本実施例に係る半導体装置の製造方法は、MOSトランジスタを同時に製造する工程だけでなく、単独でデバイスの製造に用いることができるので、MOSトランジスタの製造は、必ずしも同時に行われる必要は無い。
【0040】
図1(b)に示すように、LOCOS酸化膜形成工程においては、LOCOS法により、半導体基板40の表面に、LOCOS酸化膜70が形成される。LOCOS酸化膜70は、素子分離のため、バイポーラトランジスタ形成領域41と、NチャネルMOSトランジスタ42とを分離する位置に形成される。また、LOCOS酸化膜70は、イオン打ち込み時のマスクとしても用いられるため、バイポーラトランジスタ形成領域41内においては、高濃度の不純物領域を形成しない位置にも設けられている。なお、バイポーラトランジスタ形成領域41と、MOSトランジスタ形成領域42との間には、素子分離を行うべく、半導体基板40の縦方向(深さ方向)にP層30が設けられている。
【0041】
図1(a)においては、半導体基板10の表面の大半がLOCOS酸化膜70で覆われ、LOCOS酸化膜70で覆われていない領域に、半導体基板40のN層20が露出した図が示されている。このように、LOCOS酸化膜形成工程においては、LOCOS酸化膜70が半導体基板40の表面に形成され、LOCOS酸化膜70が、素子分離酸化膜又はマスクとして機能する。なお、図1(a)においては、バイポーラトランジスタ形成領域41の表面のみが示されており、図2乃至図7においても同様に、平面図については、バイポーラトランジスタ形成領域41のみを示すこととする。
【0042】
また、半導体基板40は、半導体材料であれば、種々の半導体材料からなる基板として構成することができる。例えば、半導体基板は、シリコン基板として構成されてもよい。また、本実施例に係る半導体装置の製造方法においては、半導体基板40が、N型の導電型である場合を例に挙げて説明することとする。
【0043】
図2は、高エネルギーイオン打ち込み工程を示した図である。図2(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図であり、図2(b)は、半導体基板40の断面図である。
【0044】
図2(b)において、半導体基板40の表面に、レジスト100が膜状に塗布され、イオンが打ち込まれた状態が示されている。高エネルギーイオン打ち込み工程においては、半導体基板10の表面に、不純物であるイオンが高エネルギーで打ち込まれ、ベース領域50及びP型ウェル層55が形成される。イオンは、例えば、ボロンが用いられてもよい。この場合、N型の半導体基板10の表面に、P型不純物領域であるベース領域50及びP型ウェル層55が形成されることになる。レジスト100は、半導体基板40上のP型不純物領域50、55を形成しない部分を覆うように、パターニングされて選択的に形成される。
【0045】
レジスト100の形成後は、半導体基板40にイオンを高エネルギーで打ち込み、ベース領域50及びP型ウェル層55を形成するが、イオンは高エネルギーで打ち込まれるため、LOCOS酸化膜70を透過して、LOCOS酸化膜70の下にもベース領域50及びP型ウェル層55が形成される。なお、ここで言う高エネルギーは、半導体基板10に打ち込まれたイオンが、LOCOS酸化膜70を透過してLOCOS酸化膜70の下に不純物領域を形成できる程のエネルギーという意味であり、具体的なエネルギー値は、半導体基板40やイオンの材質等により変化し得る。
【0046】
ベース領域50内において、LOCOS酸化膜70で覆われていない、半導体基板40の表面が露出した部分は、不純物の濃度が高い高濃度ベース領域51となる。また、LOCOS酸化膜70に覆われたLOCOS酸化膜70の下方の部分は、低濃度ベース領域52となる。MOSトランジスタ形成領域42にも同様に、高濃度P型ウェル層56及び低濃度P型ウェル層57を含むP型ウェル層55が形成される。
【0047】
図2(a)においては、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図が示されている。枠状にレジスト100が形成され、レジスト100の開口101に、マスクとして機能するLOCOS酸化膜70と、ベース領域50が露出した状態を示している。
【0048】
図3は、熱処理工程を示した図である。図3(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図であり、図3(b)は、半導体基板40の断面図である。
【0049】
熱処理工程においては、高エネルギーイオン打ち込み工程で用いたレジスト100が除去された後、半導体基板40が加熱処理され、ベース領域50及びP型ウェル層55内の不純物を拡散させ、不純物濃度分布の均一化が図られる。また、熱処理工程において、ベース領域50及びP型ウェル層55の大きさが、側方及び下方に拡大される。
【0050】
図3(b)には、図2(b)と比較して、ベース領域50及びP型ウェル層55が横方向及び下方向に拡大した状態の半導体基板40が示されている。図3(b)に示すように、半導体基板40が露出した部分は、高濃度ベース領域51及び高濃度P型ウェル層56が拡大し、LOCOS酸化膜70の下方は、低濃度ベース領域52及び低濃度P型ウェル層57が拡大した状態が示されている。
【0051】
図3(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図を透過的に示している。なお、参照符号の括弧内の符号が、透過的に表された領域を示している。図2(a)において、レジスト100で覆われていた部分には、LOCOS酸化膜70及び半導体基板40の露出部分が示されている。一方、図2(a)において、レジスト100の開口101に該当した部分については、LOCOS酸化膜70が形成されていない部分は、高濃度ベース領域51となり、LOCOS酸化膜70が形成されていた部分は、低濃度ベース領域52となっている。
【0052】
このように、レジスト100の有無により、ベース領域50及びP型ウェル層55の形成領域が制御され、LOCOS酸化膜70の有無により、ベース領域50及びP型ウェル層55内の不純物濃度が制御される。
【0053】
図4は、ゲート酸化膜形成工程を示した図である。図4(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図であり、図4(b)は、半導体基板10の断面図である。
【0054】
ゲート酸化膜形成工程においては、ベース領域50及びP型ウェル層55の表面の露出部分に、ゲート酸化膜80が形成される。ゲート酸化膜80は、MOSトランジスタ製造工程において、ゲート形成領域に形成する薄膜状の酸化膜である。この、薄膜状のゲート酸化膜80を、MOSトランジスタ形成領域42だけでなく、バイポーラトランジスタ形成領域41にも形成する。なお、ゲート酸化膜は、種々の材料で構成されてよいが、例えば、SiO酸化膜で構成されてもよい。
【0055】
また、ゲート酸化膜80を形成する領域は、LOCOS酸化膜70の存在しない、半導体基板40の表面が露出した部分であるので、N層20の表面、高濃度ベース領域51又は高濃度P型ウェル層56のいずれかになる。
【0056】
図4(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の透過的な平面図を示しているが、図3(a)と略同様の図となる。図4(a)において、高濃度ベース領域51の部分と、半導体基板40のN層20が露出した部分は、表面が薄膜状のゲート酸化膜80で覆われるが、透過的に図を描くと、図3(a)と同様の平面構成となる。
【0057】
図5は、ポリシリコン膜形成工程を示した図である。図5(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図であり、図5(b)は、半導体基板40の断面図である。
【0058】
図5(b)のバイポーラトランジスタ形成領域41において、LOCOS酸化膜70と半導体基板40の表面の境界を覆うように、ポリシリコン膜90が形成されている。ポリシリコン膜90は、MOSトランジスタ製造工程において、ゲートを形成する際に用いる。よって、MOSトランジスタ形成領域42においては、ゲートとしてポリシリコン膜90が形成されている。
【0059】
一方、バイポーラトランジスタ形成領域41においては、ポリシリコン膜90は、マスクとして利用されるために形成される。図12において説明したように、LOCOS酸化膜70の端部は、先端に接近するにつれて先が細くなって厚さが薄くなる形状であり、加工精度を高精度にすることができない。そこで、本実施例に係る半導体装置の製造方法においては、加工精度の高いポリシリコン膜90を用いて、高精度にマスクを形成している。よって、マスクの端部は、LOCOS酸化膜70ではなく、ポリシリコン膜90となり、マスク端部の位置を高精度に定めることができる。ポリシリコンは、本来的には、MOSトランジスタのゲートとして用いられる材料であり、MOSトランジスタのゲート長及びゲート幅は高精度に管理されているので、高精度な加工でポリシリコン膜90を形成することが、十分に可能となる。
【0060】
このように、マスクとしての加工精度に問題があるLOCOS酸化膜70の端部の代わりに、マスクとしての端部を加工精度の高いポリシリコン膜90で形成することにより、高精度にマスク形状を加工することができる。よって、ポリシリコン膜90は、LOCOS酸化膜70と半導体基板40の表面の境界を覆うように、半導体基板40の表面とLOCOS酸化膜70の傾斜部分に跨るように形成する。これにより、LOCOS酸化膜70の厚さが十分ある中央部分はそのままLOCOS酸化膜70を活かし、加工精度が低下する先端の傾斜部分を覆うようにすれば、最小限のポリシリコン膜90の形成で機能的に十分なマスク効果を得ることができる。
【0061】
また、ポリシリコン膜形成工程は、通常のMOSトランジスタの製造プロセスで行われる工程であるから、バイポーラトランジスタを製造するために、MOSトランジスタの製造工程に余分な工程を追加する必要がなく、MOSトランジスタの製造プロセスと同じ工程数で高精度なマスクを形成することができる。
【0062】
図5(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域11の平面図を示している。高濃度P型不純物領域51の周囲を、ポリシリコン膜90が囲むような平面構成となっている。その他の部分は、図4(a)と同様であるので、説明を省略する。
【0063】
図6は、イオン打ち込み工程を示した図である。図6(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図であり、図6(b)は、半導体基板40の断面図である。
【0064】
図6(b)において、半導体基板40の表面に、レジスト102が選択的に形成されてパターニングされている。また、ベース領域50の高濃度ベース領域51の表面に、不純物領域であるエミッタ領域60が形成されている。同様に、P型ウェル層55の表面には、ドレイン領域62及びソース領域63が形成されている。イオン打ち込み工程においては、領域50の表面に、イオンの打ち込みが行われ、更に不純物領域が形成される。また、バーポーラトランジスタ形成領域41のN層20が露出した部分の表面には、コレクタコンタクト領域61が形成される。
【0065】
イオン打ち込み工程においては、まず、レジスト102のパターニングが行われ、不純物領域を形成しない部分がレジスト102で覆われる。次いで、レジスト102と、LOCOS酸化膜70と、ポリシリコン膜90とをマスクとして、イオンの打ち込みが行われる。この場合、LOCOS酸化膜70をマスクの一部として用いるので、イオンは、LOCOS酸化膜70を透過しない程度の低エネルギーで打ち込まれる。また、LOCOS酸化膜70で覆われていない部分は、薄膜状のゲート酸化膜80で覆われているので、ゲート酸化膜80は透過するレベルの低エネルギーで、イオンは打ち込まれる。打ち込まれるイオンは、例えば、リンが用いられてもよい。これにより、エミッタ領域60、コレクタコンタクト領域61、ドレイン領域62及びソース領域63が、P型不純物領域50の表面にN型の導電型で形成されることになる。なお、ドレイン領域62とソース領域63は、同じ不純物領域であるので、配置が逆であってもよい。
【0066】
エミッタ領域60の形状及び大きさは、マスクとして機能するポリシリコン膜90により高精度に定められ、エミッタ領域60を高精度に形成することができる。これにより、ベース領域50の、高濃度ベース領域51の横幅の大きさを適切に確保することができる。
【0067】
図6(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図を示しているが、レジスト102と、LOCOS酸化膜70と、ポリシリコン膜90により、マスクが形成され、エミッタ領域60にイオンの打ち込みが行える状態となっていることが示されている。
【0068】
図7は、熱処理工程を示した図である。図7(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図であり、図7(b)は、半導体基板40の断面図である。
【0069】
熱処理工程においては、レジスト102を除去した後、半導体基板40が加熱処理される。これにより、図7(b)に示すように、半導体基板40の表面に形成されたエミッタ領域60、コレクタコンタクト領域61、ドレイン領域62及びソース領域63が側方及び下方に拡大する。
【0070】
なお、エミッタ領域60、コレクタコンタクト領域61、ドレイン領域62及びソース領域63は、低エネルギーのイオン打ち込みにより半導体基板40の表面上に薄く形成され、ベース領域50及びP型ウェル層55と比較して、厚さが相当に薄い層である。よって、熱拡散による側方への拡大量は、ベース領域50の熱拡散時に比較して相当に小さくなり、高濃度ベース領域51に大きく食い込まず、エミッタ領域60の端部を十分に制御することができる。
【0071】
また、バイポーラトランジス形成領域41のポリシリコン膜90は、LOCOS酸化膜70と同様に、半導体基板40上に残されたままとなるが、ゲート酸化膜80によりエミッタ領域60及びベース領域50とは、電気的に断線されており、電圧が印加される訳ではないので、何らバイポーラトランジスタの動作に悪影響は及ぼさない。また、MOSトランジスタ形成領域42においては、ポリシリコン膜90は、ゲートとして形成され、機能することになる。
【0072】
図7(a)は、バイポーラトランジスタ形成領域41の平面図を透過的に示しているが、ゲート酸化膜80で表面を覆われたエミッタ領域60が、ポリシリコン膜90に周囲が囲まれている状態が示されている。また、LOCOS酸化膜70の下には、低濃度ベース領域52が形成された状態が示されている。なお、高濃度ベース領域51が、ポリシリコン膜90に覆われず、ゲート酸化膜80にのみ覆われて露出した部分は、ベースコンタクト領域である。ここから、ベースへの電流入力を行うことになる。
【0073】
このように、本実施例に係る半導体装置の製造方法においては、図1乃至図7に示した一連の工程を経て、NPN型バイポーラトランジスタを製造することができる。
【0074】
図8は、図7(b)のBの部分を拡大した図である。図8において、完成したバイポーラトランジスタのエミッタ領域60と、ベース領域50の境界部分が示されている。図8に示すように、LOCOS酸化膜70の横方向の位置が変動しても、ポリシリコン膜90によりマスクが形成されているので、LOCOS酸化膜70の影響を受けず、エミッタ領域60を高精度に形成することができる。これにより、エミッタ領域60の端部が高濃度ベース領域51に食い込むことを回避することができ、高濃度ベース領域51の横方向の領域を十分に確保することができる。
【0075】
図9は、本実施例に係るNPN型バイポーラトランジスタの動作例を説明するための図である。図9において、NPN型バイポーラトランジスタは、エミッタ領域60に注入された小数キャリアの電子が、縦に移動してベース領域50を通過し、コレクタ領域であるN層20に流れ込む動作が好ましい正常な動作である。しかしながら、エミッタ領域60を側方から囲んでいる高濃度ベース領域51の幅が小さいと、小数キャリアが縦方向ではなく、横方向に流れてしまう。また、高濃度ベース領域51と、低濃度ベース領域52は、不純物の濃度勾配があるので、高濃度ベース領域51に注入された小数キャリアは、効率良く低濃度ベース領域52に移送される。つまり、寄生動作をしてしまう。
【0076】
一方、高濃度ベース領域51の幅が十分に長ければ、小数キャリアが高濃度ベース領域51に注入され、更に低濃度ベース領域52に移動する状態を抑制することができ、寄生動作を防止することができる。
【0077】
図8に戻る。図8に示すように、加工精度の高いポリシリコン膜90で、LOCOS酸化膜70と半導体基板40の表面の境界を覆うように形成し、これをマスクとしてイオン打ち込み工程を行うことにより、エミッタ領域60の端部が、ポリシリコン膜90に対向するように形成される。また、加工精度の高いポリシリコン膜90のマスクでエミッタ領域60の面積を規定することにより、エミッタ領域60の面積のバラツキを抑えることができる。また、エミッタ領域60の端部を設計通りに規定して加工することにより、エミッタ領域60を側方から囲んでいる高濃度ベース領域51の横方向の長さを大きくし、バイポーラトランジスタを縦方向に動作させることができる。これにより、設計通りの特性を有するバイポーラトランジスタとすることができる。更に、バイポーラトランジスタは、MOSトランジスタと同様の工程を用いて製造することができ、同一の半導体基板40上にバイポーラトランジスタとMOSトランジスタを製造する場合にも、効率的に半導体装置を製造することができる。
【0078】
なお、本実施例に係る半導体装置の製造方法により製造された半導体装置は、種々の電子回路に利用することができ、例えば、基準電圧生成回路として構成することができる。そして、半導体装置をパッケージに収容することにより、半導体集積回路装置として構成することができる。これにより、不純物領域が設計通りに形成され、特性のバラツキの無い優れた特性を有する半導体集積回路装置とすることができる。
【0079】
また、本実施例においては、半導体装置として、NPN型バイポーラトランジスタを製造する例を挙げて説明したが、LOCOS酸化膜70をマスクとしてイオン打ち込み工程を実行する半導体製造工程であれば、種々の半導体装置の製造工程に適用することができる。また、MOSトランジスタ形成領域42には、CMOSを製造するようにしてもよい。CMOSの製造工程も、MOSトランジスタの製造工程と同様であるので、本実施例を同様に適用することができる。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、バイポーラトランジスタ等を含む半導体装置の製造工程や、これらをデバイスとして用いる半導体集積回路装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
10、110 シリコン基板
20、120 N層
30 P層
40、140 半導体基板
41 バイポーラトランジスタ形成領域
42 MOSトランジスタ形成領域
50、150 ベース領域
51、151 高濃度ベース領域
52、152 低濃度ベース領域
60、160 エミッタ領域
61 コレクタコンタクト領域
62 ドレイン領域
63 ソース領域
70、170 LOCOS酸化膜
80、180 ゲート酸化膜
90 ポリシリコン膜
100、102、200、202 レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面の所定領域に、LOCOS酸化膜を形成するLOCOS酸化膜形成工程と、
該LOCOS酸化膜と前記半導体基板の表面の境界を覆うように、ポリシリコン膜を形成するポリシリコン膜形成工程と、
該ポリシリコン膜をマスクとして、前記半導体基板の表面にイオンの打ち込みを行い、前記半導体基板の表面に、不純物領域を形成するイオン打ち込み工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記LOCOS酸化膜形成工程と前記ポリシリコン形成工程との間に、前記LOCOS酸化膜を透過する高エネルギーのイオン打ち込みを行う高エネルギーイオン打ち込み工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記不純物領域は、トランジスタの活性領域であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記トランジスタは、バイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記バイポーラトランジスタは、NPN型トランジスタであって、
前記活性領域は、エミッタ領域であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記エミッタ領域の端部は、前記LOCOS酸化膜の端部と対向していることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体基板の表面の前記所定領域外に、前記LOCOS酸化膜形成工程において、MOSトランジスタの形成領域を定めるLOCOS酸化膜を更に形成し、
前記ポリシリコン膜形成工程において、前記MOSトランジスタのゲートを更に形成し、
前記不純物形成工程において、前記MOSトランジスタのドレイン領域及びソース領域を更に形成し、前記所定領域外にMOSトランジスタを同時に形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記MOSトランジスタは、CMOSであることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項3乃至8のいずれか一項に記載のトランジスタを用いて、基準電圧生成回路を構成し、
該基準電圧生成回路を含むことを特徴とする半導体集積回路装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−23429(P2011−23429A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165084(P2009−165084)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】