説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】従来の半導体装置では、容量素子の誘電体膜の膜厚がフォトレジストの剥離の際に一部除去され、その容量値がばらつき、耐圧特性が劣化するという問題があった。
【解決手段】本発明の半導体装置では、容量素子1の下部電極8上面に誘電体膜としてのシリコン窒化膜12が形成され、シリコン窒化膜12上面に上部電極15が形成される。上部電極15は、シリコン窒化膜12を保護する多結晶シリコン膜13とシリコン膜14の積層構造から成る。この構造により、フォトレジストの剥離の際等にシリコン窒化膜12の一部が除去され、容量素子1の容量値がばらつきや耐圧劣化が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量値のばらつきや耐圧劣化を防止する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置の製造方法一実施例として、下記の製造方法が知られている。図6(A)及び(B)は、従来の半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【0003】
先ず、図6(A)に示す如く、P型の半導体基板51上にN型のエピタキシャル層52を形成する。エピタキシャル層52は分離領域53により複数の素子形成領域に区分され、その1領域にはNPNトランジスタ54が形成され、他の領域のLOCOS酸化膜上には容量素子55が形成される。そして、NPNトランジスタ54の各拡散層を形成し、容量素子55の下部電極56と誘電体膜としてシリコン窒化膜57を形成した後、エピタキシャル層52上に絶縁層58を形成する。その後、容量素子55の形成領域では、上部電極を形成するために絶縁層58に開口領域59を形成し、シリコン窒化膜57を露出させる。
【0004】
次に、エピタキシャル層52上にフォトレジスト60を形成する。NPNトランジスタ54の各電極や容量素子55の下部引き出し電極を形成するために、フォトレジスト60に開口領域を形成する。そして、フォトレジスト60をマスクとして用いエッチングによりシリコン窒化膜57と絶縁層58にコンタクトホールを形成する。
【0005】
次に、図6(B)に示す如く、フォトレジスト60(図6(A)参照)をアッシングにより剥離し、絶縁層58上面等を、例えば、硫酸を用いて洗浄する。そして、絶縁層58に形成された開口領域59やコンタクトホールを介してNPNトランジスタ54の各電極や容量素子55の下部引き出し電極や上部電極61を形成する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−90492号公報(第3−4頁、第4−7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、容量素子55では、下部電極56上面に誘電体膜としてのシリコン窒化膜57を形成する。そして、絶縁層58に上部電極61を形成するための開口領域59を形成した後にエピタキシャル層52上面にフォトレジスト60を形成する。その後、絶縁層58にコンタクトホールを形成した後、アッシングにより絶縁層58上から剥離し、絶縁層58上面等を硫酸により洗浄する。このとき、容量素子55の形成領域では、フォトレジスト60の下面に配置されたシリコン窒化膜57の表面が酸化されたり、シリコン窒化膜57の一部が硫酸により除去される。また、シリコン窒化膜57は、開口領域59を形成する際にも同様に薬液による洗浄される。そして、誘電体膜としてのシリコン窒化膜57の膜厚が不均一になり、容量値がばらつくという問題が発生する。特に、電体膜としてのシリコン窒化膜57を薄膜化し、容量素子55の高密度化を図る場合、上記シリコン窒化膜57表面の酸化やその膜厚のばらつきによる影響が大きくなる。
【0008】
また、上述した問題に合わせて、シリコン窒化膜57では薬液による洗浄の際に、シリコン窒化膜57内の未反応物質や反応途中物質がエッチング除去される。そして、シリコン窒化膜57にはピンホールのようなウイークポイントが形成され、その構造により耐圧特性の劣化を招くという問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した各事情に鑑みて成されたものであり、本発明の半導体装置では、半導体層と、前記半導体層上に形成された容量素子の下部電極と、前記下部電極を被覆するように前記半導体層上に形成された絶縁層と、前記絶縁層に形成された開口領域と、前記開口領域から露出する前記下部電極と当接するように前記下部電極上に形成された誘電体膜と、少なくとも前記開口領域上に配置され、前記容量素子の上部電極となる第1のシリコン膜と、前記第1のシリコン膜を被覆し、前記誘電体膜上に形成された前記上部電極となる第2のシリコン膜とを有することを特徴とする。従って、本発明では、第1のシリコン膜により誘電体膜表面が酸化され、また、誘電体膜の一部がエッチングされることが防止され、容量値のばらつきや耐圧劣化が防止される。
【0010】
また、本発明の半導体装置の製造方法では、半導体層上に容量素子の下部電極を形成し、前記下部電極を被覆するように前記半導体層上に絶縁層を形成した後、前記下部電極が露出するように前記絶縁層に開口領域を形成する工程と、前記開口領域から露出する前記下部電極を被覆するように前記絶縁層上に誘電体膜を形成し、前記開口領域上を被覆するように前記誘電体膜上に前記容量素子の上部電極となる第1のシリコン膜を形成する工程と、前記第1のシリコン膜を被覆するように前記誘電体膜上に前記上部電極となる第2のシリコン膜を形成する工程とを有することを特徴とする。従って、本発明では、第1のシリコン膜と第2のシリコン膜とを積層して上部電極を形成することで、誘電体膜の膜厚のばらつきや誘電体膜へのピンホールの形成を防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、上部電極がシリコン膜による積層構造と成ることで、誘電体膜の膜厚のばらつきが防止される。この構造により、容量素子の容量値のばらつきが防止される。
【0012】
また、本発明では、誘電体膜が薬液に晒されることを防止し、誘電体膜にピンホールが形成されることを防止し、耐圧劣化が防止される。
【0013】
また、本発明では、積層構造の上部電極において、上部電極表面の平坦性を向上させることで、上部電極上面に配置されるコンタクトホールが容易に形成される。
【0014】
また、本発明では、少なくとも2層のシリコン膜を積層して上部電極を形成する。この製造方法により、その他の製造工程に用いる薬液により誘電体膜の一部が除去され、誘電体膜の膜厚がばらつくことやピンホールの発生を防止できる。
【0015】
また、本発明では、NPNトランジスタのエミッタ取り出し電極と容量素子の上部電極とを共用工程にて形成することで、製造コストの低減が図れる。
【0016】
また、本発明では、積層構造の上部電極において、その上部電極内に渡り不純物を拡散させることで、容量素子の電圧依存性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置を説明するための(A)断面図、(B)平面図である。
【図2】本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図6】従来の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための(A)断面図、(B)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の第1の実施の形態である半導体装置について、図1を参照し、詳細に説明する。図1(A)は、容量素子1を説明するための断面図であり、図1(B)に示すA−A線方向の断面図である。図1(B)は、容量素子1を説明するための平面図である。
【0019】
図1(A)に示す如く、P型の単結晶シリコン基板2上には、N型のエピタキシャル層3が形成される。尚、本実施の形態では、基板2上に1層のエピタキシャル層3が形成される場合を示すが、この場合に限定するものではない。例えば、基板上面に複数のエピタキシャル層が積層される場合でも良い。また、エピタキシャル層3は、分離領域4により複数の素子形成領域に区分される。そして、分離領域4は、P型の埋込層4AとP型の拡散層4Bから構成される。エピタキシャル層3表面からの拡散層4Bの拡散深さ(這い下がり幅)は、基板2表面からの埋込層4Aの拡散深さ(這い上がり幅)よりも浅くなり、分離領域4の形成領域を狭めることができる。
【0020】
容量素子1が、複数の素子形成領域の中の1領域上に形成される。容量素子1の形成領域では、エピタキシャル層3表面側にLOCOS酸化膜5が形成される。そして、LOCOS酸化膜5上面には、多結晶シリコン膜6とタングステンシリコン膜(以下、WSi膜と呼ぶ。)7が堆積され、下部電極8が形成される。多結晶シリコン膜6は、例えば、1000Åの膜厚を有し、WSi膜7は、例えば、1020Åの膜厚を有する。
【0021】
絶縁層9が、下部電極8上面に形成され、例えば、NSG(Non−Doped−Silicate Glass)膜から成る。絶縁層9には開口領域10が形成され、開口領域10からは下部電極8が露出する。そして、下部電極8と絶縁層9の側面には、絶縁スペーサー11が形成される。絶縁スペーサー11は、例えば、TEOS(Tetra−Ethyl−Ortho−Silicate)膜から成る。
【0022】
シリコン窒化膜12が、下部電極8上を含むエピタキシャル層3上に形成され、開口領域10を介して下部電極8と当接する。シリコン窒化膜12は、例えば、175Åの膜厚を有し、容量素子1では誘電体膜として用いられる。そして、シリコン窒化膜12は、上記膜厚のように薄膜として形成されることで、容量素子1の高密度化が実現される。尚、太線で示すように、多結晶シリコン膜13に被覆されたシリコン窒化膜12表面にはシリコン酸化膜が形成される。
【0023】
多結晶シリコン膜13が、少なくとも開口領域10上を被覆するように、下部電極8上に形成される。多結晶シリコン膜13は、例えば、525Åの膜厚を有する。詳細は後述するが、多結晶シリコン膜13は、開口領域10内に形成されたシリコン窒化膜12がエッチングされることやシリコン窒化膜12にピンホールが形成されることを防止する。そして、シリコン窒化膜12は、誘電体膜として用いられる領域の膜厚のばらつきがなくなり、容量素子1の容量値のばらつきが防止される。尚、シリコン窒化膜12がエッチングされることを防止するため、多結晶シリコン膜13は、シリコン膜14より薄い膜であり、シリコン窒化膜12が、後工程のフォトレジストの洗浄用の薬液やシリコン膜を堆積する前の洗浄用の薬液によりエッチングされない膜厚を有していればよい。
【0024】
シリコン膜14が、多結晶シリコン膜13を被覆するように、下部電極8上に形成される。シリコン膜14は、例えば、2000Åの膜厚を有する。シリコン膜14は、堆積時にはアモルファスシリコン膜として形成される。その後の製造工程での熱がシリコン膜14に加わることで、多結晶シリコン膜へと変遷する。そして、上部電極15は、多結晶シリコン膜13とシリコン膜14との積層構造により形成される。尚、シリコン膜14は、多結晶シリコン膜13上に連続して積層されないため、多結晶シリコン膜13上面には薄い酸化膜が形成される。その結果、多結晶シリコン膜13とシリコン膜14との結晶方位が若干異なる。また、シリコン膜14は、アモルファスシリコン膜として堆積することで、多結晶シリコン膜として堆積する場合よりもグレインが大きくなり、低抵抗化が図れ、また、低抵抗化による高周波特性も向上される。
【0025】
絶縁層16が、エピタキシャル層3上に形成される。絶縁層16は、例えば、TEOS膜、BPSG(Boron Phospho Silicate Glass)膜、SOG(Spin On Glass)膜等が積層され、構成される。そして、絶縁層16にはコンタクトホール17〜20が形成され、コンタクトホール17〜20を介して上部引き出し電極21〜23と下部引き出し電極24が形成される。
【0026】
図1(B)では、実線25、26に囲まれる領域は、分離領域4の形成領域を示す。一点鎖線27に囲まれる領域は、下部電極8の形成領域を示す。実線28に囲まれる領域は、上部電極15のシリコン膜14の形成領域を示す。点線29に囲まれる領域は、上部電極15の多結晶シリコン膜13の形成領域を示す。
【0027】
先ず、実線28及び点線29にて示すように、上部電極15では、シリコン膜14が、多結晶シリコン膜13を完全に被覆するように多結晶シリコン膜13上面に形成される。また、実線30は、絶縁層9に形成された開口領域10を示す。そして、点線29にて囲む領域であり、実線30の領域内には9つの四辺形が図示され、上部引き出し電極を形成するためのコンタクトホールを示す。この構造により、多結晶シリコン膜13上面はシリコン膜14により完全に被覆され、シリコン膜14表面の平坦な領域が増大し、絶縁層16(図1(A)参照)表面も平坦化される。そして、膜厚の均一な領域にはコンタクトホールが形成し易く、上部電極15に対して均一にコンタクトホールが配置され、容量素子1の均一動作が実現される。
【0028】
更に、実線28、30にて示すように、開口領域10の端部と上部電極15の端部との離間距離を短くすることで、上部電極15に起因して発生する寄生容量を低減させ、高周波特性を向上させる。
【0029】
更に、実線28、点線29にて示すように、多結晶シリコン膜13がシリコン膜14により完全に被服されることで、シリコン膜14を加工する際の多結晶シリコン膜13表面の酸化が防止される。
【0030】
更に、一点鎖線27にて示す下部電極8に対しては、紙面右側に7つの四辺形が図示され、下部引き出し電極を形成するためのコンタクトホールを示す。コンタクトホールは、紙面Y軸方向に均等に配置される。尚、下部引き出し電極は、実線28にて示すシリコン膜14の周囲に一環状に配置される場合でもよく、容量素子1の形成領域との関係によりその配置領域が決定される。
【0031】
尚、本実施の形態では、上部電極15は、多結晶シリコン膜13とアモルファスシリコン膜として堆積し、その後多結晶シリコン膜へと変遷するシリコン膜14の積層構造から成る場合について説明したがこの場合に限定するものではない。上部電極15は、アモルファスシリコン膜の積層構造の場合でも良く、また、シリコン膜14は多結晶シリコン膜として堆積される場合でも良い。
【0032】
次に、本発明の第2の実施の形態である半導体装置の製造方法について、図2〜図5を参照し、詳細に説明する。図2〜図5は、本実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。尚、以下の説明では、図1に示した容量素子1にて説明した各構成要素と同じ構成要素には同じ符番を付している。
【0033】
先ず、図2に示す如く、P型の単結晶シリコン基板2を準備し、基板2上にN型のエピタキシャル層3を形成する。基板2とエピタキシャル層3には分離領域4を形成し、エピタキシャル層3は分離領域4により複数の素子形成領域に区分される。1つの素子形成領域32にはNPNトランジスタ31が形成され、他方の素子形成領域33上には容量素子1が形成される。そして、素子形成領域32では、コレクタ領域としてのN型の埋込層34、N型の拡散層35が形成される。
【0034】
次に、エピタキシャル層3の所望の領域には、LOCOS酸化膜5を形成する。そして、LOCOS酸化膜5上面にCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、多結晶シリコン膜6、WSi膜7及び絶縁層9を順次堆積する。その後、多結晶シリコン膜6、WSi膜7及び絶縁層9をエッチングにより選択的に除去し、素子形成領域33にはLOCOS酸化膜5上面に容量素子1の下部電極8を形成する。尚、絶縁層9としてNSG膜を用いる。
【0035】
次に、図3に示す如く、エピタキシャル層3上にCVD法によりTEOS膜を堆積する。そして、そのTEOS膜をエッチバックすることで、下部電極8と絶縁層9の側面に絶縁スペーサー11を形成する。次に、絶縁層9をエッチングにより選択的に除去し、開口領域10を形成する。そして、エピタキシャル層3上にCVD法によりシリコン窒化膜12を形成する。シリコン窒化膜12は容量素子1の誘電体膜として用いられるため、開口領域10から露出する下部電極8上面を被覆する。その後、エピタキシャル層3上にCVD法により多結晶シリコン膜13を堆積し、多結晶シリコン膜13をエッチングにより選択的に除去する。ここで、太線で示すように、シリコン窒化膜12を堆積後、その表面にシリコン酸化膜を形成した後、多結晶シリコン膜13を堆積する。シリコン酸化膜を形成することで、シリコン窒化膜12内の未反応物質や反応途中物質が酸化され、ピンホールのようなウイークポイントが形成されことなく、耐圧特性の劣化が防止される。
【0036】
次に、エピタキシャル層3上にフォトレジスト36を形成し、NPNトランジスタ31のエミッタ領域の形成領域上が開口されるように、フォトレジスト36に開口領域を形成する。そして、フォトレジスト36をマスクとして用い開口領域から露出するシリコン窒化膜12をエッチングにより選択的に除去する。
【0037】
尚、シリコン窒化膜12を形成する工程前に、素子形成領域32にはNPNトランジスタ31のコレクタ領域としてのN型の拡散層37及びベース領域としてのP型の拡散層38、39が形成される。
【0038】
次に、図4に示す如く、フォトレジスト36(図3参照)を剥離し、シリコン窒化膜12上面等を洗浄する。例えば、アッシングによりシリコン窒化膜12上のフォトレジスト36を剥離し、シリコン窒化膜12上面等を硫酸により洗浄する。このとき、容量素子1の開口領域10では、シリコン窒化膜12上面に多結晶シリコン膜13が配置され、シリコン窒化膜12が硫酸に晒されることを防止できる。また、フォトレジスト36の剥離、洗浄工程において、開口領域10に配置されたシリコン窒化膜12表面が露出することはない。その結果、開口領域10及びその周辺領域では、シリコン窒化膜12の膜厚のばらつきやシリコン窒化膜12にピンホールが形成されることが防止される。特に、本実施の形態のように、容量素子1の高密度化のため誘電体膜の薄膜化が図られる構造では、シリコン窒化膜12の膜厚のばらつきやその表面の酸化を防止することで、容量値のばらつきが防止される。
【0039】
次に、シリコン窒化膜12表面(エピタキシャル層3の表面側)を、例えば、フッ酸とSC1(アンモニア水(NHOH)と過酸化水素水(H)と水(HO)とを1:1:5にて混合した液)にて洗浄した後、エピタキシャル層3上にCVD法によりシリコン膜40を堆積する。シリコン膜40としてアモルファスシリコン膜を堆積する。この洗浄工程においても、シリコン窒化膜12上面に多結晶シリコン膜13が配置され、シリコン窒化膜12がその洗浄用の薬液に晒されることを防止できる。尚、図示したように、シリコン膜40を堆積する前の洗浄工程において、シリコン窒化膜12表面のシリコン酸化膜が選択的に除去される。また、前述したSC1の混合比率は、使用状況に応じて種々の変更が可能である。
【0040】
そして、シリコン膜40に対してN型不純物、例えば、ヒ素(As)を加速電圧90〜110keV、導入量5.0×1014〜5.0×1016/cmでイオン注入する。その後、太線で示すシリコン酸化膜をエッチングストッパー膜として用い、シリコン膜40をエッチングにより選択的に除去し、NPNトランジスタ31のエミッタ取り出し電極42(図5参照)と容量素子1の上部電極15(図5参照)を形成した後、基板2を1100℃の酸化性雰囲気中に20秒間程度置き、熱処理を行う。この熱処理により、NPNトランジスタ31の形成領域では、シリコン膜40からベース領域のP型の拡散層38に対して上記不純物が拡散し、エミッタ領域としてのN型の拡散層41が形成される。一方、容量素子1の形成領域では、この熱処理によりシリコン膜40内の上記不純物が、多結晶シリコン膜13内へと拡散することで、上部電極15の空乏化が防止される。そして、容量素子1の電圧依存性が向上される。
【0041】
また、前述したように、シリコン膜40のみを選択的に除去し、上部電極15を形成し、シリコン膜40は多結晶シリコン膜13を完全に被覆する。この製造方法により、上部電極15での段差は、実質、シリコン膜40の膜厚となり、その段差領域が急峻となることを防止できる。例えば、多結晶シリコン膜13とシリコン膜40とを同時に選択的に加工する場合には、段差が2500Åとなるが、本実施の形態では、2000Å程度に抑えることができる。
【0042】
また、多結晶シリコン膜13とシリコン膜40との間には、太線にて図示したように、シリコン酸化膜が配置される。例えば、多結晶シリコン膜13とシリコン膜40とを同時に選択的に加工する場合には、そのシリコン酸化膜にてエッチングレート比の相違によりエッチングばらつきが発生する。しかしながら、本実施の形態では、シリコン膜40のみを選択的に除去することで、エッチングばらつきを防止し、膜厚のばらつきによる容量素子1の容量値のばらつきを防止できる。
【0043】
尚、上部電極15では、多結晶シリコン膜13とシリコン膜14との界面に酸化膜が形成されるが、その酸化膜もこの熱処理工程によりボールアップされ、導通される。また、図示したように、シリコン膜40をエッチングする際に、シリコン窒化膜12の一部はオーバーエッチングされる。
【0044】
次に、図5に示す如く、エピタキシャル層3上に絶縁層16を形成する。絶縁層16は、例えば、TEOS膜、BPSG膜、SOG膜等が積層され、構成される。そして、絶縁層16にコンタクトホール17〜20、43〜45を形成し、コンタクトホール17〜20、43〜45を介して上部引き出し電極21〜23、下部引き出し電極24、エミッタ電極46、ベース電極47、コレクタ電極48を形成する。
【0045】
尚、本実施の形態では、多結晶シリコン膜13自体に不純物をイオン注入しない製法について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、シリコン膜14自体にN型不純物、例えば、フッ化ホウ素(BF)を直接イオン注入した後に、多結晶シリコン膜13上にシリコン膜14を堆積する場合でも良い。この場合でも、上部電極15の空乏化が防止され、容量素子1の電圧依存性が向上される。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 容量素子
8 下部電極
12 シリコン窒化膜
13 多結晶シリコン膜
14 シリコン膜
15 上部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層上に形成された容量素子の下部電極と、
前記下部電極を被覆するように形成された絶縁層と、
前記絶縁層に形成された開口領域と、
前記開口領域から露出する前記下部電極と当接するように前記下部電極上に形成された誘電体膜と、
少なくとも前記開口領域上に配置され、前記容量素子の上部電極となる第1のシリコン膜と、
前記第1のシリコン膜を被覆し、前記誘電体膜上に形成された前記上部電極となる第2のシリコン膜とを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1のシリコン膜は、前記第2のシリコン膜よりも薄い膜であり、前記第1のシリコン膜は、フォトレジストを剥離するための薬液が前記誘電体膜に届かない膜厚を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2のシリコン膜は、前記第1のシリコン膜を完全に被覆することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記誘電体膜はシリコン窒化膜であり、前記シリコン窒化膜の表面には酸化膜が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体層上に容量素子の下部電極を形成し、前記下部電極を被覆するように前記半導体層上に絶縁層を形成した後、前記下部電極が露出するように前記絶縁層に開口領域を形成する工程と、
前記開口領域から露出する前記下部電極を被覆するように前記絶縁層上に誘電体膜を形成し、前記開口領域上を被覆するように前記誘電体膜上に前記容量素子の上部電極となる第1のシリコン膜を形成する工程と、
前記第1のシリコン膜を被覆するように前記誘電体膜上に前記上部電極となる第2のシリコン膜を形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記誘電体膜はシリコン窒化膜であり、前記シリコン窒化膜の表面に酸化膜を形成した後、前記誘電体膜上面に第1のシリコン膜を形成することを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体層にバイポーラトランジスタを形成し、前記バイポーラトランジスタのエミッタ取り出し電極と前記上部電極の第2のシリコン膜とを共用工程にて形成する半導体装置の製造方法において、
前記エミッタ取り出し電極を形成するためのコンタクトホールはフォトレジストをマスクとしてエッチングにより形成し、前記フォトレジストは前記第1のシリコン膜を形成した後に前記絶縁層上に形成することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2のシリコン膜としてアモルファスシリコン膜を堆積し、前記アモルファスシリコン膜に注入した不純物を前記第1のシリコン膜へと拡散させることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−245318(P2010−245318A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92783(P2009−92783)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】