説明

多層配線板の製造方法及び多層配線板

【課題】屈曲部に樹脂付金属箔を使用することのできる多層配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂付銅箔10と銅張積層板20を積層して構成される多層配線板1の製造方法は、銅張積層板20に配線パターン26を形成するステップS10と、樹脂付銅箔10の樹脂層11に低剛性部12Aを形成するステップS20と、樹脂付銅箔10の樹脂層11を、銅張積層板20において配線パターン26が形成された面に貼り合わせるステップS30と、樹脂付銅箔10に配線パターン16を形成するステップS40と、を備えており、低剛性部12Aの少なくとも一部は、樹脂層11における他の部分よりも相対的に薄肉である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂付金属箔と金属箔付絶縁性基板を積層して構成される多層配線板の製造方法及び多層配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁樹脂フィルム上に銅箔を積層した絶縁樹脂付き銅箔(RCC(登録商標):Resin Coated Copper foil)を、リジッドフレックス配線板に貼り合わせる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−216593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、リジッドフレックス配線板のビルドアップ層を形成するために絶縁樹脂付き銅箔が用いられているに過ぎず、屈曲部はリジッドフレックス配線板のフレキシブル配線板によって構成されている。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、屈曲部に樹脂付金属箔を使用することのできる多層配線板の製造方法及び多層配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る多層配線板の製造方法は、樹脂付金属箔と金属箔付絶縁性基板を積層して構成される多層配線板の製造方法であって、前記金属箔付絶縁性基板に第1の配線パターンを形成する第1のステップと、前記樹脂付金属箔の樹脂層に低剛性部を形成する第2のステップと、前記樹脂付金属箔の前記樹脂層を、前記金属箔付絶縁性基板において前記第1の配線パターンが形成された面に貼り合わせる第3のステップと、前記樹脂付金属箔に第2の配線パターンを形成する第4のステップと、を備えており、前記低剛性部の少なくとも一部は、前記樹脂層における他の部分よりも相対的に薄肉であることを特徴とする。
【0007】
[2]上記発明において、前記第2のステップは、インプリント法によって、前記低剛性部を前記樹脂層に形成すると同時に前記低剛性部の表面を加熱して硬化させることを含んでもよい。
【0008】
[3]上記発明において、前記第2のステップは、前記樹脂層の所定部位を加熱して硬化させた後に前記所定部位に前記低剛性部を形成することを含んでもよい。
【0009】
[4]上記発明において、前記低剛性部は、前記樹脂層に形成された凹部、複数のスリット、又は複数の穴を有してもよい。
【0010】
[5]上記発明において、前記低剛性部の隅部は、曲線状の断面形状を有してもよい。
【0011】
[6]本発明に係る多層配線板は、樹脂付金属箔と金属箔付絶縁性基板とを積層して構成される多層配線板であって、前記金属箔付絶縁性基板は、絶縁性基板と、前記絶縁性基板上に形成された第1の配線パターンと、を有し、前記樹脂付金属箔は、低剛性部を有する樹脂層と、前記樹脂層上に形成された第2の配線パターンと、を有し、前記樹脂付金属箔の前記樹脂層が、前記金属箔付絶縁性基板において前記第1の配線パターンが形成された面に貼り付けられており、前記低剛性部の少なくとも一部は、前記樹脂層における他の部分よりも相対的に薄肉であることを特徴とする。
【0012】
[7]上記発明において、前記金属箔付絶縁性基板は、前記低剛性部に対向する部分を有しており、前記低剛性部によって前記樹脂付金属箔と前記金属箔付絶縁性基板との間に中空部が形成されていてもよい。
【0013】
[8]上記発明において、前記低剛性部は、前記金属箔付絶縁性基板から露出していてもよい。
【0014】
[9]上記発明において、前記低剛性部は、前記樹脂層に形成された凹部、複数のスリット、又は複数の穴を有してもよい。
【0015】
[10]上記発明において、前記低剛性部の隅部は、曲線状の断面形状を有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、樹脂付金属箔の樹脂層に低剛性部を形成することで、多層配線板の屈曲部に樹脂付金属箔を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(A)は、本発明の実施形態における多層配線板を示す断面図であり、図1(B)は、図1(A)のIB-IB線に沿った断面図である。
【図2】図2(A)は、本発明の実施形態における多層配線板の第1変形例を示す断面図であり、図2(B)は、図2(A)のIIB-IIB線に沿った断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態における多層配線板の第2変形例の低剛性部を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態における多層配線板の第3変形例の低剛性部を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態における多層配線板の第4変形例を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態における多層配線板の第5変形例を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態における多層配線板の第6変形例を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態における多層配線板の製造方法を示すフローチャートである。
【図9】図9(A)〜図9(E)は、図8の各ステップにおける多層配線板を示す断面図である。
【図10】図10(A)及び図10(B)は、本発明の実施形態における低剛性部の形成方法の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(A)及び図1(B)は本発明の実施形態における多層配線板を示す図である。
【0019】
本実施形態における多層配線板1は、図1(A)に示すように、屈曲部1aで屈曲可能な多層フレキシブルプリント配線板であり、樹脂付銅箔(RCC)10と銅張積層板(CCL:Copper Clad Laminate)20とを貼り合わせて構成されている。
【0020】
なお、本実施形態における樹脂付銅箔10が、本発明における樹脂付金属箔の一例に相当し、本実施形態における銅張積層板20が、本発明における金属箔付絶縁性基板の一例に相当する。また、以下に説明する多層配線板1の構成は一例に過ぎず、多層配線板1の層数は特に限定されない。
【0021】
樹脂付銅箔10は、樹脂層11と、当該樹脂層11上に形成された配線パターン16と、を有している。
【0022】
樹脂層11は、接着性及び電気絶縁性を有する樹脂材料から構成されている。この樹脂層11を構成する具体的な材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を例示することができる。
【0023】
また、配線パターン16は、樹脂付銅箔10の銅箔15(図9(D)参照)に対してエッチング処理等を施すことで形成されている。なお、樹脂付銅箔10の金属箔として、銅箔15に代えて、例えば、アルミニウム箔や銀箔等を用いてもよい。
【0024】
本実施形態では、図1(A)及び図1(B)に示すように、樹脂付銅箔10の樹脂層11において屈曲部1aに対応する部分に低剛性部12Aが形成されている。
【0025】
この低剛性部12Aは、樹脂層11に形成した凹部121を有している。この低剛性部12Aの層厚tは、樹脂層11における他の部分の層厚tよりも相対的に薄くなっており(t<t)、この低剛性部12Aは、樹脂層11における他の部分よりも剛性が低くなっている。また、この低剛性部12Aでは、樹脂層11を完全に除去せずに若干の厚さの樹脂層11を残存させているので、この低剛性部12A上にも配線パターン16を形成することが可能となっている。
【0026】
なお、この低剛性部は、樹脂層においてその他の部分よりも剛性が低ければ、その形状は特に限定されない。
【0027】
図2(A)及び図2(B)は本実施形態における多層配線板の第1変形例を示す図である。同図に示すように、低剛性部12Bが、樹脂層11に形成した多数のスリット122を有してもよい。この場合にも、低剛性部12Bの層厚tが、樹脂層11における他の部分の層厚tよりも部分的に薄くなっており(t<t)、低剛性部12Bは、樹脂層11における他の部分よりも剛性が低くなっている。
【0028】
また、図3は本実施形態における多層配線板の第2変形例の低剛性部を示す図である。同図に示すように、凹部121や多数のスリット122に代えて、低剛性部12Cが、樹脂層11に形成した多数の穴123を有してもよい。この場合にも、特に図示しないが、低剛性部12Cの層厚が、樹脂層11における他の部分の層厚よりも部分的に薄くなっており、低剛性部12Cは、樹脂層11における他の部分よりも剛性が低くなっている。なお、図3は、図1(B)や図2(B)と同じ視点から低剛性部12Cを見た図である。
【0029】
図4は本実施形態における多層配線板の第3変形例の低剛性部を示す図である。同図に示すように、低剛性部12Dの凹部121のコーナ部124を曲線状にしてもよい。これにより、多層配線板1を屈曲部1aで曲げたときに凹部121のコーナ部124に集中する応力を緩和することができる。なお、図4は、第3変形例の多層配線板において、図1(A)の符号1aで示す一点鎖線で囲まれた領域と同じ領域を示す図である。
【0030】
図1(A)に戻り、銅張積層板20は、絶縁性基板21と、当該絶縁性基板21上に形成された配線パターン26とを有している。なお、銅張積層板20として、絶縁性基板21の両面に銅箔25を貼り付けたもの(いわゆる両面銅張積層板)を用いてもよい。また、銅張積層板20として、絶縁性基板と配線パターンとの間に接着層が介在している銅張積層板を用いてもよい。
【0031】
絶縁性基板21は、電気絶縁性及び可撓性を有する樹脂フィルムから構成されている。この絶縁性基板21を構成する具体的な材料としては、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエステル(PE)、ガラスエポキシ樹脂等を例示することができる。なお、このフレキシブルな絶縁性基板21に代えて、例えば、ガラスエポキシ樹脂、セラミックス、ガラスなどのリジッドな絶縁性基板を用いてもよい。
【0032】
配線パターン26は、絶縁性基板21に貼り付けられた銅箔25(図9(A)参照)に対してエッチング処理等を施すことで形成されている。なお、銅張積層板20の金属箔として、銅箔25に代えて、例えば、アルミニウム箔や銀箔等を用いてもよい。
【0033】
以上に説明した樹脂付銅箔10は、樹脂付銅箔10の樹脂層11と銅張積層板20の配線パターン26とが重なるように、銅張積層板20の上に貼り付けられており、Bステージ状態の樹脂層11を加熱して硬化させることで、樹脂付銅箔10と銅張積層板20とが接着されている。この際、図1(A)に示すように、低剛性部12Aの凹部121が銅張積層板20に覆われるので、樹脂付銅箔10と銅張積層板20との間に中空部が形成される。なお、Bステージとは、樹脂が流動状のワニス状態にあるAステージと、樹脂が完全に硬化した状態にあるCステージと、の間の段階であり、硬化反応の中間段階のことである。
【0034】
なお、銅張積層板20の形状は特に限定されず、例えば、図5や図6に示す変形例のように、銅張積層板20に開口27や切欠28を形成してもよい。
【0035】
図5は本実施形態における多層配線板の第4変形例を示す断面図である。同図に示すように、銅張積層板20において低剛性部12Aに対向する部分に開口27を形成して、当該開口27を介して低剛性部12Aを銅張積層板20から露出させてもよい。これにより、屈曲部1aでの多層配線板1の屈曲性を向上させることができる。
【0036】
図6は本実施形態における多層配線板の第5変形例を示す断面図である。同図に示すように、低剛性部12Aを樹脂付銅箔10の端部に形成すると共に、銅張積層板20の端部に切欠28を形成することで、多層配線板1の端部をフライングテール構造としてもよい。切欠28は、銅張積層板20において樹脂付銅箔10の低剛性部12Aに対応する部分に形成されており、樹脂付銅箔10の低剛性部12Aは、切欠28を介して銅張積層板20から露出している。これにより、屈曲部1aでの多層配線板1の屈曲性を向上させることができる。
【0037】
また、図7に示すように、樹脂付銅箔10と銅張積層板20との間に中空部を形成しなくてもよい。図7は本実施形態における多層配線板の第6変形例を示す断面図である。同図に示すように、樹脂付銅箔10を銅箔付絶縁性基板20に貼り付ける際に、低剛性部12Aの凹部121を押し潰すことで、中空部を形成せずに樹脂付銅箔10と銅張積層板20とを密着させてもよい。
【0038】
図1(A)に戻り、銅張積層板20に貼り付けられた樹脂付銅箔10の上面には、カバーレイ30(CL:Coverlay)が積層されている。このカバーレイ30は、樹脂付銅箔10の配線パターン16を保護する樹脂層31と、当該樹脂層31を樹脂付銅箔10に貼り付ける接着層32と、を有している。
【0039】
カバーレイ30の樹脂層31は、例えば、ポリイミドから構成されている。また、カバーレイ30の接着層32は、例えば、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂からなる接着剤で構成されている。
【0040】
なお、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ポリイミド、ポリウレタン等を用いた感光性カバーレイ材料からなるドライフィルムで樹脂層31を構成してもよい。或いは、ポリイミドやエポキシをベースとしたカバーインクや液状の感光性カバーレイ材料を、樹脂付銅箔10上にスクリーン印刷することで、カバーレイ30を形成してもよい。
【0041】
一般的に、樹脂付銅箔はフレキシブルプリント配線板よりも低コストであるが、樹脂付銅箔の樹脂層がフレキシブルプリント配線板のベースフィルムと比較して柔軟性に劣るため、多層配線板の屈曲部には不向きである。
【0042】
これに対し、本実施形態では、樹脂付銅箔10の樹脂層11において屈曲部1aに対応する部分に、樹脂層11のその他の部分よりも相対的に剛性の低い低剛性部12Aを形成するので、多層配線板1の屈曲部1aに樹脂付銅箔10を使用することができる。これにより、多層配線板1のコスト低減を図ることができる。
【0043】
一方、樹脂層11における低剛性部12A以外の部分は、銅箔積層板20の配線パターン26を保護するのに十分な層厚tを有しているので、信頼性を損なうことがない。従って、本実施形態の樹脂付銅箔10では、屈曲性と信頼性の両立を実現することができる。
【0044】
以下に、本実施形態における多層配線板1の製造方法について、図8及び図9を参照しながら説明する。図8は本実施形態における多層配線板の製造方法を示すフローチャート、図9(A)〜図9(E)は図8の各ステップにおける多層配線板を示す断面図である。
【0045】
先ず、図8のステップS10において、図9(A)に示すように、銅張積層板20上に配線パターン26をサブトラクティブ法によって形成する。具体的には、銅張積層板20の銅箔25上に、配線パターン26に対応した形状のマスクを用いてレジストパターンを形成し、その後、塩化鉄エッチング液、塩化銅エッチング液又はアルカリエッチャント等を用いて銅箔に対してエッチング処理を行う。これにより、銅張積層板20上に配線パターン26が形成される。
【0046】
次いで、図8のステップS20において、図9(B)に示すように、インプリント法によって、樹脂付銅箔10の樹脂層11に低剛性部12Aを形成する。
【0047】
具体的には、先ず、低剛性部12Aの凹部121に対応した形状の凸部101を有するモールド100を準備する。このモールド100を構成する材料としては、例えば、石英、シリコン(Si)、シリコンカーバイト(SiC)、グラッシーカーボン(GC)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、ステンレス、プラスチック等を例示することができる。なお、離型性を向上させるために、モールド100の表面全体にフッ素コーティング等の表面処理を施してもよい。
【0048】
次いで、当該凸部101を樹脂層11において凹部121を形成すべき部位に対向させて、モールド100を樹脂層11に押し付ける。この際、モールド100の凸部101は、樹脂層11が硬化する程度の温度に加熱されているので、当該押圧及び加熱によって、凸部101の形状が樹脂層11に転写されて、当該樹脂層11に凹部121が形成される。
【0049】
また、モールド100が加熱されていることから、押圧時に凹部121の表面で硬化が進行する。このため、本実施形態では、樹脂付銅箔10と銅箔付絶縁性基板20との貼り合わせ時の凹部121の変形を抑制したり、貼り合わせ後も凹部121の形状を維持することができる。
【0050】
なお、低剛性部12Aの形成方法は特に上記に限定されず、以下の方法を用いてもよい。図10(A)及び図10(B)は本実施形態における低剛性部の形成方法の変形例を示す図である。
【0051】
先ず、図10(A)に示すように、樹脂付銅箔10の樹脂層11の表面に保護フィルム120を積層する。この保護フィルム120は、例えばポリエチレンから構成されており、樹脂層11において低剛性部12Aを形成すべき硬化対象部位11aに対応する部分に開口120aが形成されている。なお、本実施形態における硬化対象部位11aが、本発明における樹脂層の所定部位の一例に相当する。
【0052】
さらに、この保護フィルム120の上に、冷却ジャケット130を積層する。この冷却ジャケット130は、例えば、冷媒が流通可能な流路131が内部に形成された板状部材であり、保護フィルム120の開口120aと同一位置に開口132が形成されている。冷却ジャケット130の流路131は、配管を介してチラー133に接続されており、この冷却ジャケット130は、樹脂層11における硬化対象部位11a以外の部分を後述のヒータ110の熱から保護すると共に、保護フィルム120を介して樹脂層11を冷却することが可能となっている。なお、冷却ジャケット130の構成は、樹脂層11における硬化対象部位11a以外の部分をヒータ110の熱から保護するものであれば、上記のものに限定されない。
【0053】
そして、図10(A)に示すように、樹脂付金属箔10の樹脂層11をヒータ110で加熱する。ヒータ110の熱は、冷却ジャケット130及び保護フィルム120の開口132,120aを介して、樹脂層11の硬化対象部位11aに伝わり、この熱によって樹脂層11の硬化対象部位11aが硬化する。
【0054】
なお、図10(A)に示すように、それぞれの開口120a,132の幅wは、樹脂層11における熱の広がりを考慮して、樹脂層11における硬化対象部位11aの幅wよりも若干狭く設定されている(w<w)。一方、図10(B)に示すように、樹脂層11における硬化対象部位11aの幅wは、凹部121の幅wよりも若干広めに設定されている(w>w)。
【0055】
次いで、図10(B)に示すように、樹脂層11において冷却ジャケット130及び保護フィルム120の開口132,120aから露出している部分に向かって、レーザ照射装置140からレーザ光Lを照射しながら当該レーザ照射装置140を走査させることで、樹脂層11に凹部121を形成する。
【0056】
なお、レーザ加工に代えて、プラズマを用いたドライエッチングによって樹脂層11を選択的に除去することで、樹脂層11に凹部121を形成してもよい。この場合には、エッチング処理に際して、樹脂層11において凹部121を形成する部分以外の表面にエッチングレジストを形成しておく。
【0057】
また、レーザ加工に代えて、デスミア加工を応用して、例えば過マンガン酸塩によって樹脂層11を部分的に溶融させることで、樹脂層11に凹部121を形成してもよい。
【0058】
これらの変形例では、樹脂層11の硬化対象部位11aを事前に硬化させておくことで、レーザ加工、エッチング加工、或いはデスミア加工によって低剛性部12Aを正確に形成することが可能となっている。
【0059】
また、低剛性部12Aが硬化しているので、樹脂付銅箔10と銅箔付絶縁性基板20との貼り合わせ時の凹部121の変形を抑制したり、貼り合わせ後も凹部121の形状を維持することができる。
【0060】
なお、レーザ加工によって樹脂層11の硬化対象部位11aを硬化温度まで加熱することが可能である場合には、ヒータによる樹脂層11の加熱は不要である。
【0061】
図8に戻り、次いで、ステップS30において、図9(C)に示すように、樹脂付銅箔10の樹脂層11が、銅張積層板20において配線パターン26が形成された面に重なるように、銅張積層板20の上に樹脂付銅箔10を貼り合わせる。この際、樹脂付銅箔10と銅張積層板20を加熱しながらプレスすることで、Bステージ状態であった樹脂層11は、一度溶融した後に完全に硬化する。これにより、樹脂層11を介して、樹脂付銅箔10と銅張積層板20とが接着される。
【0062】
次いで、図8のステップS40において、図9(D)に示すように、銅張積層板20の配線パターン26と同様の要領で、樹脂付銅箔10上に配線パターン16をサブトラクティブ法によって形成する。
【0063】
次いで、図8のステップS50において、図9(E)に示すように、樹脂付銅箔10上にカバーレイ30を貼り合わせて、これらを加熱しながらプレスすることで、接着層32によってカバーレイ30と樹脂付銅箔10とを接着する。
【0064】
なお、以上に説明したステップS10〜S50の順序は、上記に限定されない。例えば、ステップS20をステップS10よりも先に実施してもよく、ステップS10とステップS20の先後は問わない。また、ステップS40は、ステップS50よりも先であれば、ステップS10、S20或いはS30よりも先であってもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態では、樹脂付銅箔10の樹脂層11において屈曲部1aに対応する部分に、樹脂層11のその他の部分よりも相対的に剛性の低い低剛性部12Aを形成するので、低コストな樹脂付銅箔10を多層配線板1の屈曲部1aに使用することができる。
【0066】
また、インプリント法によって低剛性部12Aを形成することで、樹脂部11に凹部121を形成すると同時に低剛性部12Aの表面を硬化させることもできるので、低剛性部12Aを有する多層配線板1の製造工程が簡素化される。
【0067】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0068】
1…多層配線板
1a…屈曲部
10…樹脂付銅箔
11…樹脂層
12A,12B,12C,12D…低剛性部
121…凹部
15…銅箔
16…配線パターン
20…銅張積層板
21…絶縁性基板
25…銅箔
26…配線パターン
30…カバーレイ
100…モールド
101…凸部
110…ヒータ
120…保護フィルム
130…冷却ジャケット
140…レーザ照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂付金属箔と金属箔付絶縁性基板を積層して構成される多層配線板の製造方法であって、
前記金属箔付絶縁性基板に第1の配線パターンを形成する第1のステップと、
前記樹脂付金属箔の樹脂層に低剛性部を形成する第2のステップと、
前記樹脂付金属箔の前記樹脂層を、前記金属箔付絶縁性基板において前記第1の配線パターンが形成された面に貼り合わせる第3のステップと、
前記樹脂付金属箔に第2の配線パターンを形成する第4のステップと、を備えており、
前記低剛性部の少なくとも一部は、前記樹脂層における他の部分よりも相対的に薄肉であることを特徴とする多層配線板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の多層配線板の製造方法であって、
前記第2のステップは、インプリント法によって、前記低剛性部を前記樹脂層に形成すると同時に前記低剛性部の表面を加熱して硬化させることを含むことを特徴とする多層配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の多層配線板の製造方法であって、
前記第2のステップは、前記樹脂層の所定部位を加熱して硬化させた後に前記所定部位に前記低剛性部を形成することを含むことを特徴とする多層配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の多層配線板の製造方法であって、
前記低剛性部は、前記樹脂層に形成された凹部、複数のスリット、又は複数の穴を有することを特徴とする多層配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の多層配線板の製造方法であって、
前記低剛性部の隅部は、曲線状の断面形状を有することを特徴とする多層配線板の製造方法。
【請求項6】
樹脂付金属箔と金属箔付絶縁性基板とを積層して構成される多層配線板であって、
前記金属箔付絶縁性基板は、
絶縁性基板と、
前記絶縁性基板上に形成された第1の配線パターンと、を有し、
前記樹脂付金属箔は、
低剛性部を有する樹脂層と、
前記樹脂層上に形成された第2の配線パターンと、を有し、
前記樹脂付金属箔の前記樹脂層が、前記金属箔付絶縁性基板において前記第1の配線パターンが形成された面に貼り付けられており、
前記低剛性部の少なくとも一部は、前記樹脂層における他の部分よりも相対的に薄肉であることを特徴とする多層配線板。
【請求項7】
請求項6に記載の多層配線板であって、
前記金属箔付絶縁性基板は、前記低剛性部に対向する部分を有しており、
前記低剛性部によって前記樹脂付金属箔と前記金属箔付絶縁性基板との間に中空部が形成されていることを特徴とする多層配線板。
【請求項8】
請求項6に記載の多層配線板であって、
前記低剛性部は、前記金属箔付絶縁性基板から露出していることを特徴とする多層配線板。
【請求項9】
請求項6〜8の何れかに記載の多層配線板であって、
前記低剛性部は、前記樹脂層に形成された凹部、複数のスリット、又は複数の穴を有することを特徴とする多層配線板。
【請求項10】
請求項6〜9の何れかに記載の多層配線板であって、
前記低剛性部の隅部は、曲線状の断面形状を有することを特徴とする多層配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−104530(P2012−104530A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249423(P2010−249423)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】