説明

撮像装置

【課題】より広視野な範囲の高精度な焦点検出を行うことができる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置であるデジタルカメラの撮影光学系後方には、観察,測距状態で撮影光路上に斜設されるダウン位置と、撮影可能状態で撮影光路から退避するアップ位置とに回動可能なメインミラー3と、メインミラーと共に回動移動するサブミラー4と、サブミラー後方に配置され、連動レバー23を介して上下方向にスライド連動移動可能な撮像素子ユニット2とが配されている。観察,測距状態でメインミラー3がダウン位置にあってサブミラー4が撮像素子ユニット2側に突き出でいる状態のときには、撮像素子ユニット2は、サブミラー4との干渉しないように上方に移動しているが、撮影可能な状態に切り替わるとメインミラー3とサブミラー4とが共にアップ位置に退避したとき、そのミラーに連動して、撮影位置に降下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察、測距のために撮像素子の前方に配置される可動ミラーを有した撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ等の撮像装置に使用される焦点検出装置に関しては、多くのものが提案されている。特に測距ポイント数を増やしてより広視野範囲の焦点検出を行う焦点検出装置に関して、特許文献1に開示されたものは、TTL位相差検出方式により焦点検出を行うカメラに関するものであって、該カメラは、例えば、メインミラーを透逼した光束を焦点検出部に導くサブミラーを回転楕円面形状のミラーとすることにより、より広い範囲の光束を焦点検出光学系に導いて、広範囲に渡った焦点検出を可能とする構成を有している。
【0003】
また、特許文献2に開示された焦点検出装置では、電気的に反射特性と透過特性とを切り換え可能な光路切換素子を撮像面前面に配置し、焦点検出時にはメインミラーを透過した被写体光束を該光路切換素子により反射させ、さらに該メインミラーにより反射して焦点検出部に導くことにより測距を行うようしている。従って、占有面積が広いサブミラーのない状態で広視野範囲の焦点検出が可能であって、しかも、撮像部とメインミラーまわりのコンパクト化を可能とする。
【特許文献1】特許文献1は、特開平9−184965号公報である。
【特許文献2】特許文献2は、特開2000−329997号公報である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示の装置では、検出しようとする範囲の大きさに応じて反射鏡の面積を拡大する必要があって、サブミラーのシャッタ部材等への干渉が広視野化への限界を生じさせてしまう。
【0005】
一方で、特許文献2に開示の装置では、光路切換素子を撮像面前面に配置することによる撮影光の光量減少に加えて、メインミラー裏面での再反射による焦点検出光学系への光量減少が生じるので、焦点検出精度を著しく低下させる可能性がある。
【0006】
本発明は、上述の事情に艦みてなされたものであり、より広視野な範囲の高精度な焦点検出を行うことができる撮像装置を提供することを目的としている.
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1記載の撮像装置は、観察状態では撮影レンズを通過した撮影光束を観察光学系に反射し、上記撮影光束の一部を透過させ、撮影状態では、上記撮影光束の光路中から退避する第一の反射鏡と、上記撮影光束の一部の光束を受けて被写体の被写体距離位置を測距するための測距手段と、観察状態では上記撮影光束の一部を上記測距手段に反射する位置に位置し、撮影状態では上記撮影光束の光路中から退避する位置に位置する第二の反射鏡と、観察状態では上記第二の反射鏡の位置する位置から退避し、撮影状態では上記第二の反射鏡が観察状態で位置していた領域中に移動して上記撮影光束を受けて撮像を行なう撮像素子手段とを有する。
【0008】
本発明の請求項2に記載の撮像装置は、請求項1記載の撮像装置において、上記撮像素子手段を上記第一の反射鏡の移動に連動して駆動する駆動手段を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より広視野な範囲の焦点検出を行うことが可能な撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1,2は、本発明の第一の実施形態の撮像装置であるデジタルカメラの主要構成および撮影光束光路を示す縦断面図であって、図1は、ミラーダウン状態(観察状態)を示し、図2は、ミラーアップ状態(撮影状態)を示す。図3は、上記デジタルカメラの撮像素子ユニット駆動機構部の斜視図である。図4は、ミラーダウン時の撮像素子ユニット駆動機構部の側面図である。図5は、ミラーアップ時の撮像素子ユニット駆動機構部の側面図である。
【0011】
なお、以下の説明において、撮影レンズ光軸を光軸Oとし、カメラの上下方向をY方向とし、上方向を+Y,下方向を−Yとする。
【0012】
本実施形態のデジタルカメラ10は、一眼レフタイプのデジタルカメラであって、図1に示すように主に撮影レンズ1と、カメラ本体11のミラーボックス部に回動可能に配置される第一の反射鏡としてのメインミラー3と、メインミラー3により回動可能に支持される第二の反射鏡としてのサブミラー4と、メインミラー3の後方に配置され、撮像素子手段を内蔵する撮像素子ユニット2と、メインミラー3の上方の撮像素子結像面と等価の位置に配置され、観察光学系である焦点板5およびプリズム6と、プリズム6の後方に配置される接眼レンズ7と、上記ミラーボックス部のメインミラー3の下方に配置され、被写体距離位置を測距する測距手段としての測距ユニット8と、駆動手段である連動レバー23(図3)と、メインミラー3を駆動するミラー駆動部19とを有してなる。
【0013】
メインミラー3は、撮影光束の一部を透過可能なハ−フミラ−で形成され、カメラ本体側の回動軸21により回動可能に軸支される。メインミラー3の背面部には、サブミラー4が公知の技術によりメインミラー3の回動動作に連動する状態で軸支されている。メインミラー3は、カメラ本体側の公知のモータやソレノイド駆動機構よりなるミラー駆動部19により駆動され、カメラ観察(測距を含む)状態で光軸Oの撮影光束の光路上に斜設されるダウン位置(図1)と、カメラ撮影可能状態で撮影光束の光路から上方に退避したアップ位置とに回動移動する(図2)。
【0014】
サブミラー4は、比較的広い反射面を有し、広範囲被写体の測距、例えば、マルチポイント測距等が可能なサブミラーである。そして、メインミラー3が観察状態のアップ位置にあるときは、メインミラー3より透過した撮影光束の一部を測距ユニット8側に反射する測距可能位置である第一の位置PA にあり(図1,4)、メインミラー3がアップ位置に回動したときは、メインミラー3の回動に連動して撮影光束の光路から上方に退避した第二の位置PB に移動する(図2,5)。
【0015】
連動レバー23は、図3〜5に示すようにカメラ本体11側の支持軸22に回動可能に支持されるシーソータイプのレバーであり、一端部がメインミラー3の下端部に当接し、他端部が後述する圧縮バネ25の付勢力を受けた撮像素子ユニット本体12の突起部12bと当接している。連動レバー23は、メインミラー3の上記観察状態のアップ位置と撮影可能状態のアップ位置への回動に連動して回動駆動され、撮像素子ユニット2を図4に示す非撮影位置から図5の撮影位置に移動させる。上記メインミラー3の移動に伴ってサブミラー4と撮像素子ユニット2とは後述する連動関係位置に移動する。
【0016】
撮像素子ユニット2は、Y方向にスライド移動が可能な電子シャッタ一体型撮像素子ユニットであり、摺動可能に支持される撮像素子ユニット本体12と、該ユニット本体12前面側に装着される液晶シャッタ(電子シャッタ)13と、該ユニット本体12内に液晶シャッタ13の後方に配される撮像素子手段であるCCD(または、CMOS撮像素子)14と、支持軸24に対して撮像素子ユニット本体12を−Y方向に付勢する圧縮バネ25とを有してなる。
【0017】
CCD14は、撮像素子ユニット2が上記撮影位置にあるとき、撮影光束は、CCD14の結像面上に結像する。
【0018】
撮像素子ユニット本体12には、図3に示すように支持軸24が摺動するY方向のガイド溝12aと、連動レバー23と当接する2つの突起部12bと、突起部12bの間のスペースであって、サブミラー4の先端部が進入可能な空間部12cとが設けられる。該本体12は、カメラ本体11に固定された支持軸24によってガイド溝12aに沿って光軸Oと直交する面上を摺動可能に支持される。そして、メインミラー3の移動に連動した状態で連動レバー23および圧縮バネ25の付勢力によって上下に駆動される。
【0019】
測距ユニット8は、カメラ本体に固定される測距ユニット本体に収納される測距光学系を構成する受光/結像レンズ15と、ミラー部16と、瞳マスク17と、AFセンサ18とを有してなる。この測距ユニット8は、第一の位置PA に位置するサブミラー4からの反射光束を受光可能な位置に配されており、AFセンサ18による焦点検出(測距)を可能とする。
【0020】
AFセンサ18は、被写体像が結像する面に配され、撮影エリア中の比較的広い範囲であるマルチ測距ポイントを含むからなる検出エリアを有している。従って、サブミラー4の大きさも上記検出エリアの広さに対応した反射面積を有する。
【0021】
次に、上述した構成を有する本実施形態のデジタルカメラ10における観察状態(非撮影状態)と撮影可能状態への切り替え動作について説明する。
【0022】
まず、カメラ観察状態にあるときは、図1,4に示すようにメインミラー3は、ダウン位置にあり、サブミラー4は、第一の位置PA にある。そして、圧縮バネ25の付勢力に抗して連動レバー23が回動し、撮像素子ユニット本体12は、該第一の位置PA の領域から+Y方向に退避した非撮影位置に位置している(図1,4)。第一の位置PA にあるサブミラー4の先端部が撮像素子ユニット本体12の空間部12cに入り込み、撮像素子ユニット2とサブミラー4とは干渉しない。この状態でメインミラー3を透過した撮影光束の一部は、サブミラー4で反射し、測距ユニット8に入射してAFセンサ18による焦点検出(測距)が行われる。
【0023】
続いて、カメラ撮影可能状態となり、ミラー駆動部19によってメインミラー3がアップ位置に駆動されると、サブミラー4も第二の位置PB に退避する。撮像素子ユニット本体12は、圧縮バネ25の付勢力によって連動レバー23を押圧してサブミラー4の上述した第一の位置PA の領域中に進入した撮影位置に移動するが(図2,5)、当然ながらサブミラー4は、上述のように上方に退避しており、撮像素子ユニット2と干渉しない。連動レバー23は、カメラ本体側ストッパ27に当接し、撮像素子ユニット本体12は、がたつきのない状態で上記撮影位置に正確に保持される。この状態で撮影光束は、液晶シャッタ13を透過し、CCD14の光電変換面上に結像し、露光が行われる。
【0024】
上述したように本実施形態のデジタルカメラ10によれば、撮像素子ユニット2をメインミラー3とサブミラー4の回動に連動させて観察,測距状態での非撮影位置と撮影位置に上下移動させることによって、広い反射面を有するサブミラー4を適用しても第一の位置PA にあるときの撮像素子ユニット2との干渉を避けることができ、より広視野な範囲の高精度な焦点検出を行うことができる。また、撮像素子ユニット2とメインミラー3,サブミラー4との連動機構も連動レバー23を利用した簡単な構成であり、大幅なコストアップは避けられる。
【0025】
次に、本発明の第二の実施形態の撮像装置であるデジタルカメラについて図6を用いて説明する。◎図6は、上記実施形態のデジタルカメラの主要構成およびミラーダウン状態(観察状態)における撮影光束光路を示す図である。
【0026】
本実施形態のデジタルカメラ30は、第一の実施形態のデジタルカメラ10と異なる構成として撮像素子ユニット32側にシャッタを配せず、シャッタ機構を撮影レンズ側に配置するものとする。その他の構成は、デジタルカメラ10と同様とし、その同一構成部材には、同一符号を付し、以下、異なる部分の構成について説明する。
【0027】
デジタルカメラ30には、撮影光学系内部にレンズシャッタ部35が配される。その後方位置のカメラ本体31のミラーボックス部には、デジタルカメラ10の場合と同様にミラー駆動部19によって駆動され、観察(測距)状態のダウン位置と撮影可能状態でのアップ位置とに回動可能なメインミラー3,サブミラー4が配される。その後方位置に連動レバーを介してY方向にスライド駆動される撮像ユニット32が配される。
【0028】
撮像素子ユニット32には、シャッタ部を有せず、撮像素子ユニット本体33には撮像素子手段のCCD(または、CMOS撮像素子)34が保持される。その他の構成は、デジタルカメラ10と同様とする。
【0029】
デジタルカメラ30における観察状態(非撮影状態)と撮影可能状態への切り替え動作は、デジタルカメラ10の場合と同様である。すなわち、メインミラー3,サブミラー4が退避して、撮像素子ユニット32が撮影位置に下がった場合、サブミラーの第一の位置PA の領域中に撮像素子ユニット32は、進入するが、サブミラー4は上方に退避しており、干渉しない。
【0030】
本実施形態のデジタルカメラ30によれば、第一の実施形態の場合と同様の効果を奏し、特にシャッタ部がレンズ鏡筒側に配されるために撮像素子ユニット32の構成が簡単となり、撮像素子まわりの配置が簡略化され、カメラ本体31のコンパクト化が期待できる。
【0031】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿諭である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明による撮像装置は、より広視野な範囲の高精度な焦点検出を行うことができる撮像装置として利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第一の実施形態の撮像装置であるデジタルカメラの主要構成およびミラーダウン状態(観察状態)における撮影光光路を示す縦断面図である。
【図2】図1のデジタルカメラのミラーアップ状態(撮影状態)での撮影光束光路を示す縦断面図である。
【図3】図1のデジタルカメラの撮像素子ユニットの駆動機構部の斜視図である。
【図4】図1のデジタルカメラの撮像素子ユニットの駆動機構部のミラーダウン状態での側面図である。
【図5】図1のデジタルカメラの撮像素子ユニットの駆動機構部のミラーアップ状態での側面図である。
【図6】本発明の第二の実施形態の撮像装置であるデジタルカメラの主要構成およびミラーダウン状態(観察状態)における撮影光束光路を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
2,32
…撮像素子ユニット(撮像素子手段)
3 …メインミラー(第一の反射鏡)
4 …サプミラー(第二の反射鏡)
5 …焦点板(観察光学系)
6 …ペンタプリズム(観察光学系)
7 …接眼レンズ(観察光学系)
8 …測距ユニット(測距手段)
23 …連動レバー(駆動手段)

代理人 弁理士 伊 藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察状態では撮影レンズを通過した撮影光束を観察光学系に反射し、上記撮影光束の一部を透過させ、撮影状態では、上記撮影光束の光路中から退避する第一の反射鏡と、
上記撮影光束の一部の光束を受けて被写体の被写体距離位置を測距するための測距手段と、
観察状態では上記撮影光束の一部を上記測距手段に反射する位置に位置し、撮影状態では上記撮影光束の光路中から退避する位置に位置する第二の反射鏡と、
観察状態では上記第二の反射鏡の位置する位置から退避し、撮影状態では上記第二の反射鏡が観察状態で位置していた領域中に移動して上記撮影光束を受けて撮像を行なう撮像素子手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
上記撮像素子手段を上記第一の反射鏡の移動に連動して駆動する駆動手段を有することを特徴とする上記請求項1記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−53172(P2006−53172A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232564(P2004−232564)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】