説明

狭路走行支援装置、狭路走行支援方法

【課題】狭路を走行する際に、運転者に対して適切なステアリング操作を直感的に促す。
【解決手段】ソナー11L及び11Rによって、走路境界との距離yL及びyRを検出し、検出結果に応じて狭路支援制御の介入が必要か否かを判断する(S103)。制御介入が必要であると判断したら、最終トルク指令値Ifに対して制御介入し、操舵支援を行う(S105)。ここでは、回避トルク指令値Iaと助勢トルク指令値Isとの加算によって最終トルク指令値Ifを演算する(S205)。回避トルク指令値Iaは、走路境界から離れる方向の支援トルクとなる。一方、助勢トルク指令値Isは、運転者の操舵方向と同一の支援トルクとなるので、運転者の操舵方向が走路境界に向かっていれば、この助勢トルク指令値Isを減少補正することで、走路境界に対する接近が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭路走行支援装置、狭路走行支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
狭路を走行する際に、ステレオ撮像系にて狭路を認識し、自車両が障害物と接触することなく通行可能か否かを判断し、その判断結果に応じて、フロントフェンダ上に設置した緑色・黄色、赤色のランプの何れかを点灯するものがあった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−106500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自車両が障害物と接触するか否かを表示するだけでは、操作方向、操作量、操作タイミングなどを含め、どのようなステアリング操作が必要なのかが運転者には分りにくい。
本発明の課題は、狭路を走行する際に、運転者に対して適切なステアリング操作を直感的に促すことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る狭路走行支援装置は、運転者のステアリング操作に対して支援トルクを付与可能とし、自車から左右の走路境界までの距離を検出し、検出した走路境界までの距離に応じて、狭路の走行と判断しつつ、前記支援トルクに対して制御介入することで、回避対象となる走路境界からの回避操作を運転者に促す。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る狭路走行支援装置によれば、狭路を走行する際に、自車から左右の走路境界までの距離を検出し、検出した走路境界までの距離に応じて、支援トルクに対して制御介入することで、回避対象となる走路境界からの回避操作を運転者に促すことで、狭路を走行する際に、運転者に対して、適切なステアリング操作を直感的に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】操舵支援システムの概略構成図である。
【図2】モータ制御処理を示すブロック線図である。
【図3】モータ制御処理を示すフローチャートである。
【図4】制御介入判断処理を示すフローチャートである。
【図5】狭路支援制御介入処理を示すブロック線図を示す。
【図6】狭路支援制御介入処理を示すフローチャートである。
【図7】フィードバック偏差演算処理を示すフローチャートである。
【図8】回避トルク指令値演算処理を示すフローチャートである。
【図9】助勢トルク指令値補正処理を示すフローチャートである。
【図10】補正係数kの算出に用いるマップである。
【図11】走行シーンの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《構成》
図1は、操舵支援システムの概略構成図である。
自車10のフロント左側に設けられたソナーセンサ11Lは、自車10の左側に存在する壁やガードレールやフェンス等の側方物体までの距離yLを検出し、検出した距離yLをコントローラ12へ入力する。また、自車10のフロント右側に設けられたソナーセンサ11Rは、自車10の右側に存在する壁やガードレールやフェンス等の側方物体までの距離yRを検出し、検出した距離yRをコントローラ12へ入力する。トルクセンサ14は、ステアリングシャフト15に作用する運転者の操舵トルクTを検出し、検出した操舵トルクTをコントローラ12へ入力する。舵角センサ17は、ステアリングホイール16の操舵角θを検出し、検出した操舵角θをコントローラ12へ入力する。車速センサ18は、自車速Vを検出し、検出した車速Vをコントローラ12へ入力する。
【0009】
なお、舵角センサ17は、操舵角θが左旋回領域にあるときに検出値を負値とし、操舵角θが右旋回領域にあるときに検出値を正値として出力する。トルクセンサ14は、操舵トルクTが左旋回方向にあるときに検出値を負値とし、操舵トルクTが右旋回方向にあるときに検出値を正値として出力する。
【0010】
コントローラ12は、例えばマイクロコンピュータで構成され、入力された各種信号に基づいて電動パワーステアリング用の電動モータ13を駆動制御する。ここでは、電動パワーステアリング装置について説明しているが、ステアリングホイール16と車輪とを機械的に分離可能なステアリングバイワイヤの構成でもよい。また、油圧のパワーステアリング装置において、電動モータを駆動源として油圧制御を行う構成でもよい。
【0011】
図2は、モータ制御処理を示すブロック線図である。
コントローラ12は、制御介入判断部19と、助勢トルク指令値演算部20と、狭路支援制御介入部21と、を備える。
制御介入判断部19には、ソナー11L及び11Rで検出した側方物体までの距離yL及びyRと、舵角センサ17で検出した操舵角θと、車速センサ18で検出した車速Vと、が入力される。制御介入判断部19は、入力した各種信号に基づいて、側方物体から離れる方向のステアリング操作を運転者に促すための狭路支援制御を開始するか否かを判断する。
【0012】
助勢トルク指令値演算部20には、トルクセンサ14で検出した操舵トルクTと、車速センサ18で検出した車速Vと、が入力される。助勢トルク指令値演算部20は、一般的な電動パワーステアリング装置と同様の演算を行い、入力した各種信号に基づいて、通常のEPSアシストトルクを実現するための電流指令値を助勢トルク指令値Isとして演算する。
【0013】
狭路支援制御介入部21には、制御介入判断部19の判断結果と、助勢トルク指令値演算部20の演算結果と、ソナー11L及び11Rで検出した側方物体までの距離yL及びyRと、舵角センサ17で検出した操舵角θと、が入力される。狭路支援制御介入部21は、入力した各種信号に基づいて、電動モータ13に対する最終的な電流指令値を最終トルク指令値Ifとして演算し、演算した最終トルク指令値Ifに応じて電動モータ13を駆動制御する。
【0014】
図3は、モータ制御処理を示すフローチャートである。
コントローラ12は、所定の演算周期毎にモータ制御処理を実行する。
先ずステップS101では、各種信号を読込み、メモリ内に保持する。
続くステップS102では、助勢トルク指令値演算部20によって助勢トルク指令値演算処理を実行し、操舵トルクT及び車速Vに応じた通常のEPSアシストトルクを実現するための助勢トルク指令値Isを演算する。
【0015】
続くステップS103では、制御介入判断部19によって制御介入判断処理を実行し、側方物体から離れる方向のステアリング操作を運転者に促すための狭路支援制御を行うか否かを判断するサブルーチンを実行する。判断結果は、狭路支援フラグfとして取得する。
【0016】
続くステップS104では、狭路支援フラグfの設定状態を判定する。ここで、狭路支援フラグが『f=1』にセットされていれば、狭路支援制御が必要であると判断してステップS105に移行する。一方、狭路支援フラグが『f=0』にリセットされていれば、狭路支援制御は不要であると判断してステップS106に移行する。
【0017】
ステップS105では、狭路支援制御介入部21によって狭路支援制御介入処理を実行し、側方物体から離れる方向のアシストトルクを実現するための最終トルク指令値Ifを演算してからステップS107に移行する。
ステップS106では、通常の操舵支援としてアシストトルクを実現するための助勢トルク指令値Isを、そのまま最終トルク指令値としてからステップS107に移行する。
ステップS107では、最終トルク指令値Ifに応じて電動モータ13を駆動制御してから所定のメインプログラムに復帰する。
【0018】
図4は、制御介入判断処理を示すフローチャートである。
コントローラ12は、前述したステップS103のサブルーチンとして、制御介入判断部19により、制御介入判断処理を実行する。
【0019】
先ずステップS601では、各種信号を読込む。
続くステップS602では、左側の側方物体までの距離yLと右側の側方物体までの距離yRとの総和Sが、予め設定された第一の閾値th1以下であるか否かを判定する。ここで、判定結果が『S≦th1』であれば、狭路の走行であり、左右両側の側方物体に対して適切なステアリング操作を促す必要があると判断してステップS603に移行する。一方、判定結果が『S>th1』であれば、左右片側の側方物体に対してのみ適切なステアリング操作を促す必要があると判断して後述するステップS607に移行する。
【0020】
ステップS603では、左側の側方物体までの距離yLと、右側の側方物体までの距離yRとを比較し、どちらが大きいかを判定する。ここで、判定結果が『yL≦yR』であれば、左側の側方物体に対する回避操作が必要であると判断してステップS604に移行する。一方、判定結果が『yL>yR』であれば、右側の側方物体に対する回避操作が必要であると判断してステップS606に移行する。
【0021】
ステップS604では、制御モードを『両側支援・左方物体回避』として設定し、且つ狭路支援フラグを『f=1』にセットする。
続くステップS605では、制御モード情報、及び狭路支援フラグ情報を出力してから制御介入判断処理を終了する。
ステップS606では、制御モードを『両側支援・右方物体回避』として設定し、且つ狭路支援フラグを『f=1』にセットしてから前記ステップS605に移行する。
【0022】
一方、ステップS607では、左側の側方物体までの距離yLが予め定められた第二の閾値th2より小さく、且つ操舵角θが左旋回領域に相当する負値であるか否かを判定する。ここで、判定結果が『yL<th2、且つθ<0』であれば、狭路の走行であり、左側の側方物体に対する回避操作が必要であると判断してステップS608に移行する。一方、判定結果が『yL≧th2、又はθ≧0』であれば、左側の側方物体に対する回避操作は不要であると判断してステップS609に移行する。
【0023】
ステップS608では、制御モードを『片側支援・左方物体回避』として設定し、且つ狭路支援フラグを『f=1』にセットしてから前記ステップS605に移行する。
ステップS609では、右側の側方物体までの距離yRが予め定められた第二の閾値th2より小さく、且つ操舵角θが右旋回領域に相当する正値であるか否かを判定する。ここで、判定結果が『yR<th2、且つθ>0』であれば、狭路の走行であり、右側の側方物体に対する回避操作が必要であると判断してステップS610に移行する。一方、判定結果が『yR≧th2、又はθ≦0』であれば、右側の側方物体に対する回避操作は不要であると判断してステップS611に移行する。
【0024】
ステップS610では、制御モードを『片側支援・右方物体回避』として設定し、且つ狭路支援フラグを『f=1』にセットしてから前記ステップS605に移行する。
ステップS611では、狭路支援フラグを『f=0』にリセットしてから前記ステップS605に移行する。
【0025】
図5は、狭路支援制御介入処理を示すブロック線図を示す。
狭路支援制御介入部21は、フィードバック偏差演算部22と、回避トルク指令値演算部23と、レートリミッタ24と、助勢トルク指令値補正部25と、加算器26と、を備える。
【0026】
フィードバック偏差演算部22には、ソナー11L及び11Rで検出した側方物体までの距離yL及びyRと、制御介入判断部19の判断結果と、が入力される。フィードバック偏差演算部22は、狭路支援フラグが『f=1』にセットされているときに、例えば現在の距離yL及びyRと参照値Cとの偏差をフィードバック偏差eとして演算する。したがって、自車両が側方物体に接近し、現在の距離yL及びyRが参照値Cから離れるときに、フィードバック偏差eが大きくなる。
【0027】
回避トルク指令値演算部23には、フィードバック偏差演算部22の演算結果と、ソナー11L及び11Rで検出した側方物体までの距離yL及びyRと、制御介入判断部19の判断結果と、が入力される。回避トルク指令値演算部23は、例えば比例フィードバック方式により、フィードバック偏差に比例ゲインKを乗算した値を回避トルク指令値Iaとして演算する。回避トルク指令値Iaは、側方物体から離れる方向のトルクとなり、側方物体までの距離が短いほど大きくなる。
【0028】
レートリミッタ24には、回避トルク指令値演算部23の演算結果と、制御介入判断部19の判断結果と、が入力される。レートリミッタ24は、狭路支援フラグが変化したときや制御モードが変化したときに、回避トルク指令値Iaの急激な変化を防ぐために、変動レートの大きさを制限する。例えばLPF(Low-Pass Filter)により実現してもよいし、現在値と目標値とを滑らかに接続する回避トルク指令値Iaを演算してもよい。
【0029】
助勢トルク指令値補正部25には、助勢トルク指令値演算部20の演算結果と、舵角センサ17で検出した操舵角θと、制御介入判断部19の判断結果と、が入力される。助勢トルク指令値補正部25は、狭路支援フラグが『f=0』から『f=1』に変化したときの操舵角θを介入開始操舵角θsとしてメモリに保持し、以後、介入開始操舵角θsよりも側方物体の側に操舵角θが増加するときに、予め定められたマップに応じて助勢トルク指令値Isを減少補正する。具体的には、助勢トルク指令値演算部20で演算した助勢トルク指令値Isに対して、0〜1の範囲の補正係数kを乗算することにより、助勢トルク指令値Isを減少補正する。したがって、狭路支援フラグが『f=1』に変化した後に、運転者が側方物体に接近する側にステアリング操作を行うと、側方物体の側へのアシストトルクが減少することで、側方物体の側へのステアリング操作に対して重みを増加させる。
【0030】
加算器26は、レートリミッタ24で処理された回避トルク指令値Iaと、助勢トルク指令値補正部25で補正された助勢トルク指令値Isとを加算して最終トルク指令値Ifを演算する。
【0031】
図6は、狭路支援制御介入処理を示すフローチャートである。
コントローラ12は、前述したステップS105のサブルーチンとして、狭路支援制御介入部21により、狭路支援制御介入処理を実行する。
【0032】
ステップS201では、フィードバック偏差演算部22によってフィードバック偏差演算処理を実行し、現在の距離yL及びyRと予め設定された参照値Cとの差分をフィードバック偏差eとして演算する。
続くステップS202では、回避トルク指令値演算部23によって回避トルク指令値演算処理を実行し、フィードバック偏差eに比例ゲインKを乗じることで回避トルク指令値Iaを演算する。
【0033】
続くステップS203では、レートリミッタ24により、狭路支援フラグが変化したときや制御モードが変化したときに、回避トルク指令値Iaの変化レートを制限する。例えば時定数1秒程度のLPFにより行う。
続くステップS204では、助勢トルク指令値補正部25によって助勢トルク指令値補正処理を実行し、助勢トルク指令値Isに対して、0〜1の範囲の補正係数kを乗算することにより、助勢トルク指令値Isを減少補正する。
【0034】
続くステップS205では、加算器26により、前記ステップS203で処理した回避トルク指令値Iaと、前記ステップS204で補正した助勢トルク指令値Isと、を加算して最終トルク指令値Ifを演算してから狭路支援制御介入処理を終了する。
図7は、フィードバック偏差演算処理を示すフローチャートである。
コントローラ12は、前述したステップS201のサブルーチンとして、フィードバック偏差演算部22により、フィードバック偏差演算処理を実行する。
【0035】
先ずステップS301では、予め設定されたデフォルトの参照値Cを読込む。例えば、C=100cm程度である。
続くステップS302では、制御モードが『片側支援』であるか否かを判定する。ここで、制御モードが『片側支援』に設定されていればステップS303に移行する。一方、制御モードが『両側支援』に設定されていればステップS304に移行する。
【0036】
ステップS303では、下記(1)式に示すように、参照値Cと、左右のうち選択された何れか一方の側方物体までの距離y1との差分によって、フィードバック偏差eを演算する。ここで、y1は左右両側の側方物体までの距離yL及びyRのうち、制御モードに応じて選択された何れか一方の距離である。すなわち、制御モードが『左方物体回避』に設定されていれば、左側の側方物体までの距離yLをy1として選択し、制御モードが『右方物体回避』に設定されていれば、右側の側方物体までの距離yRをy1として選択する。
【0037】
e=C−y1 …………(1)
ステップS304では、下記(2)式に示すように、参照値Cと、左右のうち選択された何れか一方の側方物体までの距離y1と、左右のうち他方の側方物体までの距離y2とに応じて、フィードバック偏差eを演算する。ここで、y1は左右両側の側方物体までの距離yL及びyRのうち、制御モードに応じて選択された何れか一方の距離であり、y2は左右両側の側方物体までの距離yL及びyRのうち、y1として選択されなかった他方の距離である。すなわち、制御モードが『左方物体回避』に設定されていれば、左側の側方物体までの距離yLをy1として選択し、右側の側方物体までの距離yRをy2として選択する。一方、制御モードが『右方物体回避』に設定されていれば、右側の側方物体までの距離yRをy1として選択し、左側の側方物体までの距離yLをy2として選択する。{(y2+y1)/2}は、左側の側方物体と右側の側方物体との中央位置、つまり狭路の幅中央位置となる。
【0038】
【数1】

【0039】
なお、制御モードが『片側支援』と『両側支援』との間で変化してから少しの期間は、下記(3)式に示すように、参照値Cと、左右のうち選択された何れか一方の側方物体までの距離y1と、左右のうち他方の側方物体までの距離y2とに応じて、フィードバック偏差eを演算する。ここで、{(y2−y1)/(y1+y2)}は、車両左右の総余裕量(yL+yR)に対する片側への偏り量(y2−y1)の割合をとなる。
【0040】
【数2】

【0041】
また、上記(1)〜(3)式に限らず、考え方を同様にしたマップを用いてフィードバック偏差を演算してもよい。すなわち、両側壁制御モードの場合は、狭路幅の中央位置に対する偏差を元に任意に変換した量をフィードバック偏差として使用してもよい。
【0042】
図8は、回避トルク指令値演算処理を示すフローチャートである。
コントローラ12は、前述したステップS202のサブルーチンとして、回避トルク指令値演算部23により、回避トルク指令値演算処理を実行する。
先ずステップS401では、予め設定されたデフォルトのゲインKdを読込む。
続くステップS402では、制御モードが『片側支援』であるか否かを判定する。ここで、制御モードが『片側支援』に設定されていればステップS403に移行する。一方、制御モードが『両側支援』に設定されていればステップS405に移行する。
【0043】
ステップS403では、デフォルトのゲインKdを、フィードバックゲインKとして設定する。
続くステップS404では、フィードバック偏差eにフィードバックゲインKを乗算した値を回避トルク指令値Iaとして演算してから、回避トルク指令値演算処理を終了する。
【0044】
ステップS405では、下記(4)式に示すように、参照値Cと、デフォルトのゲインKdと、左右のうち選択された何れか一方の側方物体までの距離y1と、左右のうち他方の側方物体までの距離y2とに応じて、フィードバックゲインKを演算する。ここで、αは任意の設計パラメータである。
【0045】
【数3】

【0046】
なお、P制御を用いているが、回避トルク指令値Iaの演算は他の如何なるフィードバックコントローラを使用してもよく、例えばPID制御を用いてもよいし、最適制御のようなモデルを用いたコントローラ設計を行ってもよい。
【0047】
図9は、助勢トルク指令値補正処理を示すフローチャートである。
コントローラ12は、前述したS204のサブルーチンとして、助勢トルク指令値補正部25により、助勢トルク指令値補正処理を実行する。
先ずステップS501では、現在の操舵角θを読込む。
続くステップS502では、狭路支援フラグが『f=0』から『f=1』に変化したか否かを判定する。ここで、狭路支援フラグが『f=1』に変化した直後であれば、ステップS503に移行する。一方、狭路支援フラグが『f=1』に変化した直後でなければステップS504に移行する。
【0048】
ステップS503では、現在の操舵角θを介入開始操舵角θsとしてメモリに保持する。
続くステップS504では、操舵トルクTの方向が、回避対象となっている側方物体の側と一致しているか否かを判定する。すなわち、制御モードが『左方物体回避』に設定されていれば、操舵トルクTが左旋回方向に相当する負値であるか否かを判定し、制御モードが『右方物体回避』に設定されていれば、操舵トルクTが右旋回方向に相当する正値であるか否かを判定する。ここで、操舵トルクTが回避対象に向いていれば、助勢トルク指令値Isを減少補正する必要があると判断してステップS505に移行する。一方、操舵トルクTが回避対象に向いていなければ、助勢トルク指令値Isを減少補正する必要はないと判断してステップS507に移行する。
【0049】
続くステップS505では、図10のマップを参照し、現在の操舵角θと介入開始操舵角θsとの差分Δθに応じて補正係数kを算出する。
図10は、補正係数kの算出に用いるマップである。
差分Δθは、制御モードが『左方物体回避』に設定されていれば、操舵角θから介入開始操舵角θsを減算して算出され、制御モードが『右方物体回避』に設定されていれば、介入開始操舵角θsから操舵角θを減算して算出される。すなわち、差分Δθが負値となるときには、狭路支援制御を開始した時点よりも回避対象の側にステアリング操作されていることを表し、差分Δθが正値となるときには、狭路支援制御を開始した時点よりも回避対象の反対側にステアリング操作されていることを表す。
【0050】
差分Δθが0以上の領域にあるときには、補正係数kは1を維持し、0より小さくなるほど、特性線L1に示すように、補正係数kが1から0の範囲で減少する。また、特性線L2やL3に示すように、車速Vが高いほど、側方物体までの距離の減少化率が高いほど、且つ側方物体までの距離が短いほど、差分Δθの減少に対する補正係数kの減少率が高くなるように設定する。他にも、補正係数kを1から減少させ始める操舵角を、介入開始操舵角θsよりも回避対象の反対側に設定してもよい。また、特性線L1〜L3を任意の形状に設定してもよい。
【0051】
続くステップS506では、下記(5)式に示すように、助勢トルク指令値Isに補正係数kを乗算することにより、助勢トルク指令値Isを補正してから助勢トルク指令値補正処理を終了する。
Is ← Is×k …………(5)
ステップS507では、下記(6)式に示すように、補正係数kを1に設定してから前記ステップS506に移行する。
【0052】
k=1 …………(6)
【0053】
《作用》
先ず、運転者のステアリング操作に対する助勢トルク指令値Isを演算し(S102)、この助勢トルク指令値Isを最終トルク指令値Ifとして電動モータ13を駆動制御する(S106、S107)。助勢トルク指令値Isは、運転者の操舵方向と同一の支援トルクとなるので、運転者の操舵負担が軽減される。
【0054】
ところで、幅の狭い道路を走行する際、運転者のステアリング操作が適切でないと、自車両が左右の側方物体に接触してしまう可能性がある。
図11は、走行シーンの一例を示した図である。
【0055】
自車両は、左側の走路境界30と、右側の走路境界31とに挟まれた狭路を走行しているとする。ここで、走路境界30及び31は、例えば壁やガードレールやフェンス等の側方物体を想定している。このような、狭路を走行する場合、左右の走路境界に対して適切なステアリング操作を直感的に促すために、電動モータ13の支援トルクに対して制御介入し、操舵支援を行う。
【0056】
先ず、ソナー11L及び11Rによって、走路境界との距離yL及びyRを検出し、検出結果に応じて狭路支援制御の介入が必要か否かを判断する(S103)。
ここで、走行中の走行路が、左側の距離yLと右側の距離yRとの総和Sが第一の閾値th1以下となる狭路であるときには(S602の判定が“Yes”)、制御モードが『両側支援』に設定される。この場合、自車両が狭路の左側に寄っているときには(S603の判定が“Yes”)、左側の走路境界30に対して回避操作が必要であると判断し、制御モードが『左方物体回避』に設定される(S604)。一方、自車両が狭路の右側に寄っているときには(S603の判定が“No”)、右側の走路境界31に対して回避操作が必要であると判断し、制御モードが『右方物体回避』に設定される(S605)。
【0057】
また、走行中の走行路が、左側の距離yLと右側の距離yRとの総和Sが第一の閾値th1となる走行路であるとする(S602の判定が“No”)。この場合、左側の距離yLが第二の閾値th2を下回っており、且つ操舵角θが左旋回領域にあるときには(S607の判定が“Yes”)、左の走路境界30に対して回避操作が必要であると判断し、制御モードが『片側支援・左方物体回避』に設定される(S608)。一方、右側の距離yRが第二の閾値th2を下回っており、且つ操舵角θが右旋回領域にあるときには(S609の判定が“Yes”)、右の走路境界31に対して回避操作が必要であると判断し、制御モードが『片側支援・右方物体回避』に設定される(S610)。
【0058】
なお、左側の走路境界30までの距離yLと、右側の走路境界31までの距離yRとが共に第二の閾値th2を上回っていれば(S607及びS609の判定が共に“No”)、左右の何れにも回避操作は必要なく、狭路支援制御は不要であると判断する(S611)。
こうして、狭路支援制御の要否を判断し、制御介入が必要であると判断したら、最終トルク指令値Ifに対して制御介入し、操舵支援を行う(S105)。
【0059】
ここでは、回避トルク指令値Iaと助勢トルク指令値Isとの加算によって最終トルク指令値Ifを演算する(S205)。回避トルク指令値Iaは、走路境界から離れる方向の支援トルクとなる。一方、助勢トルク指令値Isは、運転者の操舵方向と同一の支援トルクとなるので、運転者の操舵方向が走路境界に向かっていれば、この助勢トルク指令値Isを減少補正することで、走路境界に対する接近が抑制される。つまり、助勢トルクが弱まり、運転者からするとステアリング操作が重くなるので、走路境界に対する接近が抑制される。このように、回避トルク指令値Iaの増加と、助勢トルク指令値Isの減少とによって、最終トルク指令値Ifに対する制御介入を行う。したがって、回避トルク指令値Iaの発生量(0からの増加量)と、運転者の操舵方向が走路境界に向かっているときにおける助勢トルク指令値Isの減少量とが、狭路支援制御による制御介入量となる。
【0060】
このように、回避トルク指令値Iaと助勢トルク指令値Isとの加算によって最終トルク指令値Ifを演算することで、回避対象の側の走路境界に対する接近が抑制されたり、離間が促進されたりする。すなわち、回避トルク指令値Iaと助勢トルク指令値Isとが異なる符号(方向)である場合、回避トルク指令値Iaの絶対値が助勢トルク指令値Isの絶対値よりも小さければ、回避対象の側の走路境界に対する接近が抑制され、回避トルク指令値Iaの絶対値が助勢トルク指令値Isの絶対値よりも大きければ、回避対象の側の走路境界に対する離間が促進される。また、回避トルク指令値Iaと助勢トルク指令値Isとが同じ符号(方向)である場合には、常に回避対象の側の走路境界に対する離間が促進される。
【0061】
先ず、回避トルク指令値Iaは、フィードバック偏差eとフィードバックゲインKとの乗算によって演算される(S404)。
ここで、制御モードが『片側支援』の場合には(S302の判定が“Yes”)、前記(1)式により、デフォルトの参照値Cと回避対象の側の距離y1との差分をフィードバック偏差eとして演算する(S303)。これにより、回避対象の側の距離y1が小さいほど、つまり自車量が回避対象に接近するほど、回避トルク指令値Iaが大きくなるので、より確実に回避操作を運転者に促すことができる。
【0062】
また、制御モードが『両側支援』の場合には(S302の判定が“No”)、『片側支援』のときとは異なり、前記(2)式により、自車両が走行路の幅方向の中央位置となるときの走路境界との距離{(y2+y1)/2}と、回避対象の側の距離y1との差分をフィードバック偏差eとして演算する(S304)。すなわち、『片側支援』のときのように、参照値Cと距離y1との差分をフィードバック偏差eとして演算してしまうと、例えば参照値Cが100cmで、車両左右の余裕(yL+yR)が200cm未満となるような狭路の場合に、回避対象とは反対側の走路境界に向かってステアリングホイールを切り過ぎてしまう可能性があるからである。したがって、『両側支援』のときには、『片側支援』のときよりもフィードバック偏差eの増大を抑制するために、フィードバック偏差eの演算式を切換え、回避トルク指令値Iaが大きくなり過ぎることを抑制する。
【0063】
また、制御モードが『両側支援』から『片側支援』に変化してから、又は『片側支援』から『両側支援』に変化してから少しの期間は、前記(3)式により、車両左右の総余裕量(yL+yR)に対する片側への偏り量(y2−y1)の割合を、デフォルトの参照値Cに乗算して、フィードバック偏差eとして演算する。この演算式によれば、『片側支援』と『両側支援』との切換え時において、制御モードの移行時にスムーズに接続することができる。
【0064】
このように、フィードバック偏差eの演算式を切換えることで、制御モードが『両側支援』のときよりも『片側支援』のときの方が、フィードバック偏差eが大きくなり、回避トルク指令値Iaが大きくなる。すなわち、左側の距離yLと右側の距離yRとの総和Sが大きいほど、回避トルク指令値Iaが大きくなり、より確実に回避操作を促すことができる。
【0065】
また、制御モードが『片側支援』の場合には(S402の判定が“Yes”)、デフォルトのゲインKdをフィードバックゲインKとして設定する(S403)。一方、制御モードが『両側支援』の場合には(S402の判定が“No”)、車両左右の総余裕量(yL+yR)の加算項を分母に有する前記(4)により、フィードバックゲインKを演算する(S405)。これにより、道幅が狭くなったとしても、回避対象となる走路境界からの距離y1が略一定であれば、回避トルク指令値Iaを略一定に維持することができる。すなわち、道幅が狭くなるほど、つまり車両左右の総余裕量(yL+yR)が小さくなるほど、フィードバックゲインKが増加するので、前述したフィードバック偏差eの相対的な減少によって回避トルク指令値Iaが小さくなり過ぎることを防止することができる。
【0066】
次に、助勢トルク指令値Isは、補正係数kの乗算によって演算される(S506)。
ここで、狭路支援フラグが『f=0』から『f=1』に変化したときの操舵角θを、介入開始操舵角θsとして設定し(S502、S503)、それ以降は、現在の操舵角θと介入開始操舵角θsとの差分Δθに応じて補正係数kを算出する(S505)。これにより、狭路支援制御を開始してから、運転者が更に回避対象の側へとステアリング操作するほど、補正係数kが1から0の範囲で減少するので、助勢トルク指令値Isが減少補正される。
【0067】
例えば、左側の走路境界30が回避対象にとされ、操舵角θが左旋回方向となる−5°のときに、制御介入が開始された場合には、その後は、操舵角θが−5°未満となるときに、差分Δθが0未満の領域となるので、補正係数kが1から0の範囲で減少する。この補正係数kを助勢トルク指令値Isに乗算するので、左旋回方向への助勢トルク指令値Isが減少補正され、左旋回方向へのステアリング操作が重くなり、左側の走路境界30への接近が抑制される。一方、制御介入してからの操舵角θが−5°以上となるときに、差分Δθが0以上の領域となるので、補正係数kが1を維持する。したがって、助勢トルク指令値Isの補正を中止する。
【0068】
このように、制御介入を開始してからの操舵角θが、介入開始操舵角θsよりも回避対象となる走路境界の側に増加するほど、助勢トルク指令値Isに対する減少補正量を大きくすることで、より確実に回避操作を促すことができる。
また、車速Vが高いほど、差分Δθの減少に対する補正係数kの減少率を高くする。すなわち、車速Vが高いほど、走路境界への接近速度も早いので、助勢トルク指令値Isに対する減少補正量を大きくする。これにより、より確実に回避操作を促すことができる。
【0069】
また、回避対象となる走路境界との距離y1の減少率が高いほど、差分Δθの減少に対する補正係数kの減少率を高くする。すなわち、単位時間当たりの距離y1の減少率が高いほど、走路境界への接近速度も早いので、助勢トルク指令値Isに対する減少補正量を大きくする。これにより、より確実に回避操作を促すことができる。
【0070】
また、回避対象となる走路境界との距離y1が短いほど、差分Δθの減少に対する補正係数kの減少率を高くする。すなわち、距離y1が短いほど、助勢トルク指令値Isに対する減少補正量を大きくする。これにより、より確実に回避操作を促すことができる。
【0071】
また、運転者の操舵トルクTが、回避対象となる走路境界から離れる側に作用していれば(S504の判定が“No”)、補正係数kの値を1に設定する(S507)。したがって、運転者が回避対象から離れようとステアリング操作を実行すれば、助勢トルク指令値Isの減少補正は中止する。すなわち、回避対象となる走路境界から離れようとするときには、通常の電動パワーステアリング装置と同様に、助勢トルク指令値Isは運転者の操舵方向と同一の支援トルクに戻るので、運転者の操舵負担が軽減され、スムーズな回避操作を実現することができる。
【0072】
《応用例》
なお、走路境界として、例えば壁やガードレールやフェンス等の側方物体を検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、路面に標示された通行区分線や、又は側溝などを検出し、これら走路境界までの距離を検出してもよい。
【0073】
《効果》
以上より、電動モータ13、助勢トルク指令値演算部20が「付与手段」に対応し、ソナーセンサ11L及び11Rが「距離検出手段」に対応し、制御介入判断部19及び狭路支援制御介入部21が「制御介入手段」に対応する。また、ステップS505で回避対象となる走路境界までの距離y1の減少率を算出する処理が「減少率算出手段」に対応し、車速センサ18が「車速検出手段」に対応し、舵角センサ17が「操舵角検出手段」に対応する。
【0074】
(1)運転者のステアリング操作に対して支援トルクを付与可能な付与手段と、自車から左右の走路境界までの距離を検出する距離検出手段と、前記距離検出手段で検出した左右の走路境界までの距離に応じて、狭路の走行と判断しつつ、前記付与手段の前記支援トルクに対して制御介入することで、回避対象となる前記走路境界からの回避操作を運転者に促す制御介入手段と、を備える。
このように、自車から走路境界までの距離を検出し、検出した走路境界までの距離に応じて、支援トルクに対して制御介入し、操舵支援を行うことで、狭路を走行する際に、運転者に対して、適切なステアリング操作を直感的に促すことができる。
【0075】
(2)前記制御介入手段は、回避対象となる前記走路境界までの距離が短いほど、前記支援トルクに対する制御介入量を、回避対象となる前記走路境界の回避方向に、大きくする。
このように、走路境界までの距離が短いほど、制御介入量を、走路境界の回避方向に、大きくすることで、より確実に回避操作を促すことができる。
【0076】
(3)前記制御介入手段は、回避対象となる前記走路境界までの距離の減少率を算出する減少率算出手段を有し、前記減少率算出手段で算出した減少率が高いほど、前記支援トルクに対する制御介入量を、回避対象となる前記走路境界の回避方向に、大きくする。
このように、走路境界までの距離の減少率が高いほど、制御介入量を、走路境界の回避方向に、大きくすることで、より確実に回避操作を促すことができる。
【0077】
(4)前記制御介入手段は、自車速を検出する車速検出手段を有し、前記車速検出手段で検出した自車速が高いほど、前記支援トルクに対する制御介入量を、回避対象となる前記走路境界の回避方向に、大きくする。
このように、自車速が高いほど、制御介入量を、走路境界の回避方向に、大きくすることで、より確実に回避操作を促すことができる。
【0078】
(5)前記制御介入手段は、操舵角を検出する操舵角検出手段を有し、前記操舵角検出手段で検出した操舵角が回避対象となる前記走路境界に近づく側にあるほど、前記支援トルクに対する制御介入量を、回避対象となる前記走路境界の回避方向に、大きくする。
このように、操舵角が走路境界に近づく側にあるほど、制御介入量を、走路境界の回避方向に、大きくすることで、より確実に回避操作を促すことができる。
【0079】
(6)前記制御介入手段は、左の前記走路境界までの距離と右の前記走路境界までの距離との総和が長いほど、前記支援トルクに対する制御介入量を、回避対象となる前記走路境界の回避方向に、大きくする。
このように、左右の走路境界までの距離の総和が長いほど、制御介入量を、走路境界の回避方向に、大きくすることで、より確実に回避操作を促すことができる。
【0080】
(7)前記付与手段は、運転者のステアリング操作を助勢する方向の助勢トルクを演算し、演算した前記助勢トルクを前記支援トルクとして付与し、前記制御介入手段は、前記付与手段が演算した前記助勢トルクを減少補正すると共に、回避対象となる前記走路境界から離れる方向の回避トルクを演算し、減少補正した前記助勢トルクと演算した前記回避トルクとを加算した値を最終的な前記支援トルクとする。
このように、減少補正した助勢トルクと演算した回避トルクとを加算した値を最終的な支援トルクとする構成なので、より確実に回避操作を促すことができる。
【0081】
(8)前記制御介入手段は、前記助勢トルクの減少補正量を大きくすることで、前記制御介入量を大きくする。
このように、助勢トルクを減少補正量を大きくするときに、制御介入量が大きくなり、より確実に回避操作を促すことができる。
【0082】
(9)前記制御介入手段は、前記回避トルクを大きくすることで、前記制御介入量を大きくする。
このように、回避トルクを大きくするときに、制御介入量が大きくなり、より確実に回避操作を促すことができる。
【0083】
(10)前記制御介入手段は、運転者の操舵トルクが、回避対象となる前記走路境界の回避方向に作用しているときには、前記制御介入量を制限する。
このように、走路境界の回避方向に運転者がステアリング操作するときには、制御介入量を制限することにより、回避操作を阻害することを抑制できる。
【0084】
(11)前記制御介入手段は、前記支援トルクに対して制御介入を開始した時点の操舵角を介入開始操舵角とし、制御介入を開始した以降の操舵角が、前記介入開始操舵角よりも回避対象となる前記走路境界の側に大きくなるほど、前記支援トルクに対する制御介入量を、回避対象となる前記走路境界の回避方向に、大きくする。
このように、制御介入を開始した以降の操舵角が、介入開始操舵角よりも走路境界の側に大きくなるほど、制御介入量を、走路境界の回避方向に、大きくすることで、より確実に回避操作を促すことができる。
【0085】
(12)前記制御介入手段は、左の前記走路境界までの距離と右の前記走路境界までの距離との総和が、予め定められた第一の閾値よりも短いときに、前記支援トルクに対する制御介入を開始する。
このように、左右の走路境界までの距離の総和が、第一の閾値よりも短いときに、制御介入を開始することで、適切なタイミングで制御介入を開始することができる。
【0086】
(13)前記制御介入手段は、左右の何れか一方の前記走路境界までの距離が、予め定められた第二の閾値よりも短いときに、前記支援トルクに対する制御介入を開始する。
このように、左右の何れか一方の走路境界までの距離が、第二の閾値よりも短いときに、制御介入を開始することで、適切なタイミングで制御介入を開始することができる。
【0087】
(14)運転者のステアリング操作に対して支援トルクを付与可能とし、自車から左右の走路境界までの距離を検出し、検出した走路境界までの距離に応じて、狭路の走行と判断しつつ、前記支援トルクに対して制御介入することで、回避対象となる前記走路境界からの回避操作を運転者に促す。
このように、自車から走路境界までの距離を検出し、検出した走路境界までの距離に応じて、支援トルクに対して制御介入し、操舵支援を行うことで、狭路を走行する際に、運転者に対して、適切なステアリング操作を直感的に促すことができる。
【符号の説明】
【0088】
10 自車
11L ソナーセンサ
11R ソナーセンサ
12 コントローラ
13 電動モータ
14 トルクセンサ
15 ステアリングシャフト
16 ステアリングホイール
17 舵角センサ
18 車速センサ
19 制御介入判断部
20 助勢トルク指令値演算部
21 狭路支援制御介入部
22 フィードバック偏差演算部
23 回避トルク指令値演算部
24 レートリミッタ
25 助勢トルク指令値補正部
26 加算器
30 走路境界
31 走路境界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者のステアリング操作に対して支援トルクを付与可能な付与手段と、
自車から左右の走路境界までの距離を検出する距離検出手段と、
前記距離検出手段で検出した左右の走路境界までの距離に応じて、狭路の走行と判断しつつ、前記付与手段の前記支援トルクに対して制御介入することで、回避対象となる前記走路境界からの回避操作を運転者に促す制御介入手段と、を備えることを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項2】
前記制御介入手段は、回避対象となる前記走路境界までの距離が短いほど、前記支援トルクに対する制御介入量を、回避対象となる前記走路境界の回避方向に、大きくすることを特徴とする請求項1に記載の狭路走行支援装置。
【請求項3】
前記制御介入手段は、回避対象となる前記走路境界までの距離の減少率を算出する減少率算出手段を有し、前記減少率算出手段で算出した減少率が高いほど、前記支援トルクに対する制御介入量を、回避対象となる前記走路境界の回避方向に、大きくすることを特徴とする請求項1又は2に記載の狭路走行支援装置。
【請求項4】
前記制御介入手段は、自車速を検出する車速検出手段を有し、前記車速検出手段で検出した自車速が高いほど、前記支援トルクに対する制御介入量を、回避対象となる前記走路境界の回避方向に、大きくすることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の狭路走行支援装置。
【請求項5】
前記制御介入手段は、操舵角を検出する操舵角検出手段を有し、前記操舵角検出手段で検出した操舵角が回避対象となる前記走路境界に近づく側にあるほど、前記支援トルクに対する制御介入量を、回避対象となる前記走路境界の回避方向に、大きくすることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の狭路走行支援装置。
【請求項6】
前記制御介入手段は、左の前記走路境界までの距離と右の前記走路境界までの距離との総和が長いほど、前記支援トルクに対する制御介入量を、回避対象となる前記走路境界の回避方向に、大きくすることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の狭路走行支援装置。
【請求項7】
前記付与手段は、運転者のステアリング操作を助勢する方向の助勢トルクを演算し、演算した前記助勢トルクを前記支援トルクとして付与し、
前記制御介入手段は、前記付与手段が演算した前記助勢トルクを減少補正すると共に、回避対象となる前記走路境界から離れる方向の回避トルクを演算し、減少補正した前記助勢トルクと演算した前記回避トルクとを加算した値を最終的な前記支援トルクとすることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の狭路走行支援装置。
【請求項8】
前記制御介入手段は、前記助勢トルクの減少補正量を大きくすることで、前記制御介入量を大きくすることを特徴とする請求項7に記載の狭路走行支援装置。
【請求項9】
前記制御介入手段は、前記回避トルクを大きくすることで、前記制御介入量を大きくすることを特徴とする請求項7又は8に記載の狭路走行支援装置。
【請求項10】
前記制御介入手段は、運転者の操舵トルクが、回避対象となる前記走路境界の回避方向に作用しているときには、前記制御介入量を制限することを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の狭路走行支援装置。
【請求項11】
前記制御介入手段は、前記支援トルクに対して制御介入を開始した時点の操舵角を介入開始操舵角とし、制御介入を開始した以降の操舵角が、前記介入開始操舵角よりも回避対象となる前記走路境界の側に大きくなるほど、前記支援トルクに対する制御介入量を、回避対象となる前記走路境界の回避方向に、大きくすることを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の狭路走行支援装置。
【請求項12】
前記制御介入手段は、左の前記走路境界までの距離と右の前記走路境界までの距離との総和が、予め定められた第一の閾値よりも短いときに、前記支援トルクに対する制御介入を開始することを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の狭路走行支援装置。
【請求項13】
前記制御介入手段は、左右の何れか一方の前記走路境界までの距離が、予め定められた第二の閾値よりも短いときに、前記支援トルクに対する制御介入を開始することを特徴とする請求項1〜12に記載の狭路走行支援装置。
【請求項14】
運転者のステアリング操作に対して支援トルクを付与可能とし、自車から左右の走路境界までの距離を検出し、検出した走路境界までの距離に応じて、狭路の走行と判断しつつ、前記支援トルクに対して制御介入することで、回避対象となる前記走路境界からの回避操作を運転者に促すことを特徴とする狭路走行支援方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−230666(P2011−230666A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103253(P2010−103253)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】