説明

田植機

【課題】圃場の環境に左右されることなく、進行方向と苗の並び方向とを確実に整合させることができる田植機を提供する。
【解決手段】左フロントカメラ及び右フロントカメラ21にて圃場に植え付けられた苗を撮像し、撮像された苗を表示部8に表示する。操作者は、表示部8に表示された苗の並び方向を確認して田植機を操舵し、表示部8に表示された線を最も端に位置する苗の列に一致させて、進行方向と苗の並び方向とを整合させることができる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は苗の植付けを連続的に行う田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
田植機によって圃場に苗の植付けを行う場合、栽培される作物の品質を保ち且つ収穫量を向上させるために、所定の間隔を空けた状態で苗を整列させる必要がある。一般に田植機は、横方向を軸方向とした回転軸に支持された多数の爪部を備えており、回転軸の回転数を調整することによって苗同士の間隔を調整することができる。また田植機は、走行フレームの側方に突出したアームと、該アームの突出端部に位置し、該突出端部を中心として回転する略円形のマーカとを備える。該マーカの外周部分には複数の突起部が設けてある。
【0003】
田植機を走行させた場合、マーカは圃場に接触して回転し、前記突起部によって圃場に凹部が形成される。該凹部は、田植機の進行方向に沿って連続的に列状に形成され、操作者が田植機の進行方向を決定する指標となる。操作者は、列状の凹部とフロントバンパーに立設してあるポール(センターマーカ)との左右方向の位置を一致させることによって、田植機の進行方向を既に植付けた苗の並び方向に整合させることができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−22832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしマーカによって形成された凹部は、圃場内の水位によっては水中に沈んでしまい、操作者が視認できないことがある。また運転席から観察される凹部は、センターマーカに比べて小さく、センターマーカと凹部との整合は容易ではなかった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、圃場の環境に左右されることなく、進行方向と苗の並び方向とを確実に整合させることができる田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る田植機は、走行部の後部に位置し、苗を植付ける植付部を備える田植機において、前方を撮像する撮像部と、該撮像部によって撮像された画像を表示する表示部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、撮像部にて圃場に植え付けられた苗を撮像し、撮像された苗を表示部に表示する。操作者は、表示部に表示された苗の並び方向を確認して田植機を操舵し、進行方向と苗の並び方向とを整合させることができる。
【0009】
本発明に係る田植機は、前記撮像部は前記走行部の右側又は左側を撮像することができるようにしてあり、前記走行部の右側又は左側を選択する選択部を備え、前記選択部にて選択された側を前記撮像部が撮像し、前記撮像部にて撮像された画像が前記表示部に表示されるようにしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、田植機の右側に苗が植えてある場合には、右側を撮像部にて撮像し、撮像した苗を表示部に表示し、田植機の左側に苗が植えてある場合には、左側を撮像部にて撮像し、撮像した苗を表示部に表示する。
【0011】
本発明に係る田植機は、前記撮像部は前記走行部の右側又は左側を撮像することができるようにしてあり、前記走行部の旋回の前後で、前記表示部に表示される画像を、前記撮像部にて撮像された一側の画像から前記撮像部にて撮像された他側の画像に切り替える手段を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、旋回する都度、植付けた苗のと田植機との進行方向に対する位置関係は、左右反対となるので、表示部に表示される画像を、旋回の前後において、撮像部にて撮像された一側の画像から他側の画像に切り替える。
【0013】
本発明に係る田植機は、前記表示部に表示される苗の並び方向に沿う並び指標が前記表示部に配置してあることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、走行部の進行方向と苗の並び方向とを整合させるための整合指標を視認可能な態様で表示部に表示する。
【0015】
本発明に係る田植機は、前記並び指標は線であることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、整合指標を線で表し、線と苗の列との左右方向における位置を一致させることで、走行部の進行方向と苗の並び方向とを整合させることができるようにする。
【0017】
本発明に係る田植機は、前記走行部が進行すべき方向を示す方向指標が前記表示部に配置してあることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、田植機の進行方向と苗の並び方向と整合させるべく、田植機が進行すべき方向を示す方向指標を表示部に表示する。
【0019】
本発明に係る田植機は、前記方向指標は矢印であることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、方向指標を矢印で表し、苗を整列させるべく、田植機を矢印の方向に向けて操舵するように操作者に促す。
【0021】
本発明に係る田植機は、前記撮像部が苗を撮像している場合に、撮像された苗を認識する手段を備え、該手段にて認識した苗を前記表示部にて強調表示するようにしてあることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、撮像部にて撮像された苗を認識し、認識した苗を表示部に表示する。このとき認識した苗の周囲を、例えば枠で囲むか又は着色して強調する。
【0023】
本発明に係る田植機は、前記植付部によって植え付けられるべき苗の植付け後の位置を示す位置指標が前記表示部に配置してあることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、現在植え付けている苗の次に植付けるべき苗を圃場に植付けた場合を想定し、想定される植付け後の苗の位置を示す位置指標を視認可能な態様で表示部に表示する。
【0025】
本発明に係る田植機は、前記位置指標は、植付け後の苗の列を示す線であることを特徴とする。
【0026】
本発明においては、位置指標を線で表し、該線上に植付け後の苗の列が位置することを示し、想定される苗の位置を操作者が直感的に理解できるようにする。
【0027】
本発明に係る田植機は、走行部を操向する操向部と、該操向部による操舵量を検出する検出手段とを備え、前記検出手段にて検出された操舵量に基づいて、前記走行部の進行方向を示す指標が前記表示部に配置してあることを特徴とする。
【0028】
本発明においては、走行部の進行方向を示す指標を操作者が容易に認識しやすくなり、田植機を直進させやすくなる。
【0029】
本発明に係る田植機は、苗の植付けを禁止すべき範囲を示す指標が前記表示部に配置してあることを特徴とする。
【0030】
本発明においては、苗の植付けを禁止すべき範囲を示す指標を認識することによって、例えば枕地形成のためのスペースを確保しやすくなる。
【0031】
本発明に係る田植機は、駆動源を備え、前記植付部は、横方向に並設されており、苗を植付ける複数の爪部と、該爪部を支持し、横方向を軸方向として前記駆動源からの駆動力によって回転する回転軸と、前記駆動源及び回転軸の間における駆動力の伝達経路を継断する継断部とを有しており、前記表示部に表示された画像に基づいて、前記継断部の継断を制御する手段を備えることを特徴とする。
【0032】
本発明においては、表示部に表示された画像を解析し、苗の植付けが不要な場所(例えば畔)が表示部に表示されている場合又は枕地仕上げ等において一定間隔のスペースが必要な場合に、苗の植付けが不要な場所又は前記スペースに苗を植付けないように、爪部の動作を自動的に停止させる。
【0033】
本発明に係る田植機は、後方を撮像する後方撮像部を備え、該後方撮像部に撮像された画像を前記表示部に表示することができるようにしてあることを特徴とする。
【0034】
本発明においては、表示部をいわゆるバックモニタとして使用する。
【発明の効果】
【0035】
本発明にあっては、撮像部にて圃場に植え付けられた苗を撮像し、撮像された苗を表示部によって表示する。操作者は、表示部に表示された苗の並び方向を確認して田植機を操舵し、進行方向と苗の並び方向とを整合させることができる。撮像部にて撮像された苗は、圃場の環境に拘わらず、表示部を介して確実に視認される。また従来使用していたマーカはバネ及びワイヤなどを組み合わせた複雑な機構、例えば走行部に対する進出又は退入を行うための機構を備えており、製造費用が嵩むが、撮像部及び表示部は構成が簡素であり、製造費用を削減することができる。
【0036】
本発明にあっては、対向する畔の間を田植機が往復する場合、往路及び復路において、圃場に植付けた苗の位置は、田植機の進行方向に対して左右反対となる。そのため往路又は復路において、撮像部にて撮像した田植機の右側又は左側の画像を、操作者が選択部を操作して選択することによって、操作者は基準とする苗を確実に視認することができる。
【0037】
本発明にあっては、田植機が旋回する都度、圃場に植付けた苗の位置は、田植機の進行方向に対して左右反対となる。そのため田植機が旋回する都度、表示部に表示される画像を、撮像部にて撮像した田植機の右側又は左側の画像に自動的に切り替えることによって、操作者の利便性を向上させることができる。
【0038】
本発明にあっては、走行部の進行方向と苗の並び方向とを整合させるための整合指標を視認可能な態様で表示することによって、操作者は、該指標と表示部に表示された苗とを整合させて、圃場に植付ける苗を容易に整列させることができる。
【0039】
本発明にあっては、整合指標を線で表し、線と苗の列とを表示部にて重畳させ、走行部の進行方向と苗の並び方向とを整合させて、操作者による操作を容易ならしめることができる。
【0040】
本発明にあっては、田植機の進行方向と植え付けられた苗の並び方向とが整合していない場合に、田植機が進行すべき方向を示す指標を表示部に表示することによって、該指標を視認した操作者は、直ちに該指標が示す方向へ田植機を操舵することができる。
【0041】
本発明にあっては、苗を整列させるべく、田植機を矢印の方向に向けて操舵するように操作者に促すので、操作者が迅速に操舵方向を変更することができる。
【0042】
本発明にあっては、撮像部にて撮像された苗を認識し、認識した苗を表示部に表示する。認識した苗の周囲を、例えば枠で囲むか又は着色することによって、苗の視認性を向上させることができ、操作者に苗を容易に認識させることができる。
【0043】
本発明にあっては、現在植え付けている苗の次に植付けるべき苗を圃場に植付けた場合を想定し、想定される植付け後の苗の位置を指標(例えば線)を使用して視認可能な態様で表示部に表示することによって、前記指標が畔の上に表示されている場合に、畔に重畳して表示された指標の上に苗の植付けを行わないように、操作者は植付部の設定を変更し、苗の不要な植付けを回避することができる。また従来、植付部によって植付け可能な幅(例えば苗の植付けを行う爪8条分の幅)の枕地を設定し、前記幅を有する枕地を形成すべく、枕地以外での植付けを行っているときに、植付部の設定を適宜変更していたが、前記指標を確認することで、枕地の幅が植付部によって植付け可能な幅よりも狭くなっても、枕地での植付けを行う直前に枕地の幅に対応させて植付部の設定を変更することができ、操作者の負担を軽減させることができる。
【0044】
本発明にあっては、位置指標を線で表し、該線上に植付け後の苗の列が位置することを示し、想定される苗の位置を操作者が直感的に理解できるので、操作者は植付部の設定を容易に且つ迅速に変更することができる。
【0045】
本発明にあっては、走行部の進行方向を示す指標を操作者が容易に認識しやすくなり、田植機を直進させやすくなる。そのため苗を容易に整列させることができる。
【0046】
本発明にあっては、苗の植付けを禁止すべき範囲を示す指標を認識することによって、例えば枕地形成のためのスペースを確保しやすくなり、ユーザの利便性が向上する。
【0047】
本発明にあっては、表示部に表示された画像を解析し、苗の植付けが不要な場所(例えば畔)が表示部に表示されている場合又は枕地仕上げ等において一定間隔のスペースが必要な場合に、苗の植付けが不要な場所又は前記スペースに苗を植付けないように、爪部の動作を自動的に停止させて、苗の不要な植付けを回避することができる。
【0048】
本発明にあっては、前記表示部に、後方撮像部にて撮像した画像を表示し、いわゆるバックモニタとして表示部を使用することによって、従来バックミラーでは死角となっていた領域をも確認することができ、安全確保を徹底することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】右後方から見た実施の形態1に係る田植機を略示する斜視図である。
【図2】左前方から見た田植機を略示する斜視図である。
【図3】アームを略示する斜視図である。
【図4】ダッシュボードパネル付近を略示する平面図である。
【図5】植付昇降レバーの操作を説明する説明図である。
【図6】条止レバーを略示する拡大図である。
【図7】エンジンからの駆動力の伝達を略示する伝動機構図である。
【図8】コントローラ周りの構成を略示するブロック図である。
【図9】表示部に表示された画像の一例を示す模式図である。
【図10】コントローラによる苗認識処理を説明するフローチャートである。
【図11】苗認識処理を説明する説明図である。
【図12】苗認識処理後に表示部に表示される画像の一例を示す模式図である。
【図13】コントローラによる方向指標表示処理を説明するフローチャートである。
【図14】右方向を示す方向指標を表示した画像の一例を示す模式図である。
【図15】左方向を示す方向指標を表示した画像の一例を示す模式図である。
【図16】前方向を示す方向指標を表示した画像の一例を示す模式図である。
【図17】実施の形態2に係る田植機のステアリングホイール付近の構成を略示する分解斜視図である。
【図18】コントローラ周りの構成を略示するブロック図である。
【図19】コントローラによる予想線表示処理を説明するフローチャートである。
【図20】予想線を表示した画像の一例を示す模式図である。
【図21】実施の形態3に係る田植機において現在植付けを行っている圃場の箇所及び該箇所に隣接しており、次に苗の植付けを行う箇所の画像の一例を示す模式図である。
【図22】実施の形態4に係る表示部に表示された画像の一例を示す模式図である。
【図23】実施の形態5に係るコントローラ周りの構成を略示するブロック図である。
【図24】コントローラによるカメラ切替処理を示すフローチャートである。
【図25】実施の形態6に係る田植機の条止レバー付近の構成を略示する斜視図である。
【図26】コントローラ周りの構成を略示するブロック図である。
【図27】コントローラによる条止処理を説明するフローチャートである。
【図28】表示部に表示された画像の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下本発明を実施の形態1に係る田植機を示す図面に基づいて詳述する。図1は右後方から見た田植機を略示する斜視図であり、図2は左前方から見た田植機を略示する斜視図、図3はアームを略示する斜視図である。
【0051】
田植機は、車台を含む走行部1を備えており、該走行部1の前部にボンネット2が設けてあり、該ボンネット2の内側にエンジン3が設けてある。走行部1の前部の下側にエンジン3の駆動力を伝達する伝動機構及びサスペンションなどを収容したフロントアクスルケース(図示せず)が設けてあり、該フロントアクスルに前輪30が支持されている。走行部1の後部の下側にエンジン3の駆動力を伝達する伝動機構及びクラッチなどを収容したリヤアクスルケース(図示せず)が設けてあり、該リヤアクスルに後輪31が支持されている。
【0052】
ボンネット2の左右それぞれには、後述する植付部10に供給する苗を載置する複数の予備苗載台4、4、・・・、4が上下方向に並設してある。ボンネット2の後側には、ダッシュボードパネル5が設けてあり、該ダッシュボードパネル5の上側に田植機を操舵するためのステアリングホイール7が配してある。該ステリングホイール7の後側に、運転席6が設けてある。
【0053】
該運転席6の後側に苗を植え付ける植付部10が設けてあり、該植付部10は、植付部10を昇降させる昇降リンク16を介して走行部1に連結してある。植付部10は、左右方向に並んだ上下に細長い8個の苗載台11と、該苗載台11の下端部付近に配置してあり、苗の植付けを行う植付爪14とを備える。なお苗載台11は8個に限定されず、例えば6個又は4個でも良い。苗載台11の中途部に、マット状の土台にて育成した複数の苗(苗マット)を押さえる苗マット押え12が設けてある。苗載台11の下端部には、上方に突出した柵状の苗マット保持機構13が設けてある。苗載台11の下端部の左右に植付部10の沈下を防ぐフロート15、15がそれぞれ設けてある。
【0054】
前記走行部1における予備苗載台14付近に、左右にそれぞれ突出した二つのアーム20、22が設けてある。右側に突出したアーム20の先端部に右フロントカメラ21が設けてあり、左側に突出したアーム22の先端部に左フロントカメラ23が設けてある。アーム20、22の先端部と逆側の端部(基端部)は、上下方向に突出した枢軸(図示せず)を介して走行部1に連結してあり、図3に示すように、基端部側を中心にしてアーム20、22を回動させることができる。なお図3はアーム22を示しているが、アーム20においても同様に回動させることができることは言うまでもない。操作者は、苗の植付け作業を行う場合にアーム20、22を右側又は左側に回動させることによって、左右のフロントカメラ21、23をそれぞれ走行部1から左右に所定距離離間させた位置(走行部1に最も接近した苗の略真上)に配し、苗を撮像することができる。また苗の植付け作業を終了する場合にアーム20、22を前側に回動させることによって、アーム20、22を前方へ向けて折り畳むことができる。
【0055】
前記植付部10の左側に上下に延びる軸17が設けてあり、該軸17の上端部にリヤカメラ18が設けてある。リヤカメラ18は、植付部10の後方を撮像するように苗載台11の上側に配置してある。前記ダッシュボードパネル5の上側に、表示パネル(例えば液晶パネル)を有する表示部8が、表示パネルの表示面を運転席6側に向けて設けてある。表示パネルの左右方向中央部に、表示部8に表示される苗の列に沿う上下に延びる線(並び指標)100が配置してある(後述する図9参照)。該線100は視認される態様であればよく、例えば表示パネルの表面に予め印刷されているか又は表示パネルにて画像(GUI:Graphical User Interface)として表示される。前記左右のフロントカメラ21、23又はリヤカメラ18にて撮像された画像は表示部8に表示される。なお表示部8と左右のフロントカメラ21、23及びリヤカメラ18とは、後述するコントローラ90を介して接続してある。線100の左右方向の位置は中央に限定されず、中央よりも右寄り又は左寄りであってもよい。また並び指標として線100を使用しているが、破線、矢印又は苗の並び方向を示すその他の図形又は記号を使用してもよい。
【0056】
表示部8の構成としては、反射型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置又は高輝度液晶表示装置が挙げられる。高輝度液晶表示装置は、例えばLED(Light Emitting Diode)を使用する。フロントカメラ21、23及びリヤカメラ18には、フィルタ又は絞りを設けても良い。該フィルタによって、ハレーションを防止することができる。また絞りによって各カメラのピントを精度良く調整することができる。
【0057】
図4はダッシュボードパネル5付近を略示する平面図である。ダッシュボードパネル5には、田植機の状態を表示する表示ユニット50と、進行方向及び走行速度の切替に使用する主変速レバー51と、走行速度を一定にする場合に使用する変速固定レバー52と、植付部10の昇降、植付部10のオン/オフ及び左右のフロントカメラ21、23の切替を行う植付昇降レバー53と、表示部8に表示された苗を認識させる苗認識スイッチ54と、植付部10を設定された高さにする昇降ボタン55と、表示部8にリヤカメラ18の画像を表示させるバックモニタスイッチ56とが配設してある。
【0058】
図5は植付昇降レバー53の操作を説明する説明図である。図5に示すように、植付昇降レバー53を上側に移動させた場合に、植付部10が作動し、植付昇降レバー53を下側に移動させた場合に、植付部10が停止する。植付昇降レバー53を上側に移動させた後、右側に移動させた場合に、右フロントカメラ21にて撮像された画像が表示部8に表示される。植付昇降レバー53を上側に移動させた後、左側に移動させた場合に、左フロントカメラ23にて撮像された画像が表示部8に表示される。植付昇降レバー53を最も下に位置させた場合、植付部10は上昇する。植付昇降レバー53を、植付部10が作動する位置よりも若干下側に位置させた場合、植付部10は下降する。植付昇降レバー53を、植付部10が上昇又は下降する位置の間であって、該位置よりも右側に位置させた場合、植付部10の上昇又は下降は停止する。
【0059】
植付昇降レバー53には、植付昇降レバー53の位置を検出する植付昇降レバーセンサ53a(後述する図8参照)が設けてある。該植付昇降レバーセンサ53aによって、上述した植付昇降レバー53の位置が検出される。植付昇降レバーセンサ53aは、例えばポテンショメータにて構成される。
【0060】
図6は条止レバー63を略示する拡大図である。またダッシュボードパネル5の下方の床面には、走行速度の調節を行う変速ペダル60、走行停止時に使用するブレーキペダル61及び駐車時に使用する駐車ブレーキレバー62が設けてある。また運転席6の下側には、植付爪14、14、・・・、14の駆動を停止させる条止レバー63、63、63、63が左右に二つずつ設けてある。各条止レバー63は、二つの植付爪14、14を駆動又は停止させるために使用される。図6に示すように、条止レバー63が前側に位置する場合に、植付爪14、14は駆動し、後側に位置する場合に、植付爪14、14は停止する。なお条止レバー63は、図示しないワイヤを介して植付爪14、14への駆動力の伝達を継断する後述のクラッチに接続してある。
【0061】
図7は、エンジン3からの駆動力の伝達を略示する伝動機構図である。エンジン3の出力軸は、Vベルト81、軸82及び軸受83を介して伝達機構80に連結している。伝達機構80は、軸84及び軸受85を介して前輪30に連結しており、軸86及び軸受87を介して後輪31に連結している。また伝達機構80は、植付部10に連結している。なお前述したフロントアクスル及びリヤアクスルは、伝達機構80に含まれる。植付部10は、二つの植付爪14を左右端部にて支持し、左右方向を軸方向とした回転軸41と伝達機構50とを接続する四つのクラッチ40、40、40、40を備えている。各クラッチ40、40、40、40は条止レバー63、63、63、63の操作によって個別に継断される。
【0062】
図8は、コントローラ90周りの構成を略示するブロック図である。ダッシュボードパネル5内に、CPU91(Central Processing Unit)、ROM92(Read Only Memory)、RAM93(Random Access Memory)並びに右フロントカメラ21、左フロントカメラ23及びリヤカメラ18と表示部8との接続を切り替える切替スイッチ94を備えるコントローラ90が設けてある。切替スイッチ94は、表示部8と右フロントカメラ21、左フロントカメラ23及びリヤカメラ18との接続を切り替える3接点式のロータリスイッチを使用している。なお切替スイッチ94は、3接点以上の接点を有する他のスイッチを使用しても良い。
【0063】
CPU91は、ROM92に格納された制御プログラムをRAM93に読出して実行する。右フロントカメラ21、左フロントカメラ23及びリヤカメラ18からコントローラ90に画像信号が入力される。植付昇降レバーセンサ53aからコントローラ90に右フロントカメラ21又は左フロントカメラ23を選択したことを示す信号が入力される。バックモニタスイッチ56からコントローラ90にリヤカメラ18を選択したことを示す信号が入力される。苗認識スイッチ54からコントローラ90に表示部8に表示された苗を認識させる信号が入力される。コントローラ90は表示部8に画像信号を出力する。
【0064】
バックモニタスイッチ56からコントローラ90にオフ信号が入力され、植付昇降レバー53の操作によって、右フロントカメラ21又は左フロントカメラ23を選択した信号がコントローラ90に入力されている場合に、コントローラ90は、選択された右フロントカメラ21又は左フロントカメラ23と表示部8とを切替スイッチ94を介して接続する。表示部8には、選択されたフロントカメラによって撮像された画像が表示される。
【0065】
図9は表示部8に表示された画像の一例を示す模式図である。図9Aは右フロントカメラ21によって撮像された画像の一例を示す模式図である。
【0066】
図9Aに示すように、右フロントカメラ21によって圃場を撮像した場合、圃場に植付けられた苗140が表示部8に表示される。操作者は、表示された苗140の最も左の列と線100とを重畳させる、換言すれば左右方向の位置を一致させることによって、田植機の進行方向と苗140の並び方向とを略一致させることができる。その結果、植付部10にて植付けられる苗は、既に圃場に植付けた苗140の列と同方向に沿って植付けられ、苗を整列させることができる。なお左フロントカメラ23によって撮像された画像を表示部8に表示している場合には左右が逆転し、操作者は、表示された苗140の最も右の列と線100とを重畳させることによって、田植機の進行方向と苗140の並び方向とを略一致させることができる。
【0067】
バックモニタスイッチ56からコントローラ90にオン信号が入力された場合に、コントローラ90は、リヤカメラ18と表示部8とを切替スイッチ94を介して接続し、リヤカメラ18にて撮像された画像を示す画像信号を表示部8に出力する。
【0068】
図9Bはリヤカメラ18によって撮像された画像の一例を示す模式図である。なお図9Bにおいて線100は省略してある。図9Bに示すように、リヤカメラ18にて撮像した場合、植付部10及びその後方が表示部8に表示される。そのため、操作者は植付部10付近に障害物又は人がいないか確認することができ、安全を確保した上で田植機を後進させるか又は植付部10を駆動させることができる。
【0069】
苗認識スイッチ54からコントローラ90にオン信号が入力された場合、コントローラ90は苗認識処理を実行し、実行結果を表示部8に表示する。
【0070】
図10はコントローラ90による苗認識処理を説明するフローチャート、図11は苗認識処理を説明する説明図、図12は苗認識処理後に表示部8に表示される画像の一例を示す模式図である。
【0071】
コントローラ90のCPU91は、苗認識スイッチ54からオン信号が入力されるまで待機する(ステップS1:NO)。苗認識スイッチ54からオン信号が入力された場合(ステップS1:YES)、CPU91は、表示パネルに表示された画像を縦長の複数の帯状領域101、101、・・・、101に分割して認識し(図11A参照)、一の帯状領域101を抽出して、抽出した帯状領域101における緑色の画素を計数する(ステップS2)。このとき計数する画素数としては、所定の時間間隔で計数した画素数の移動平均値又は所定の時刻における画素数が挙げられる。なお画素数に限定されず、苗140を認識するための特徴を示す値を計算してもよい。例えば帯状領域101の全画素数に占める緑色の画素数の割合を計算しても良い。
【0072】
そしてCPU91は、緑色の画素数が閾値Aを超過しているか否か判定する(ステップS3)。なおはRAM93には閾値Aが予めROM92から読み込まれており、CPU91はRAM93から閾値Aを参照可能であるとする。緑色の画素数が閾値Aを超過していない場合(ステップS3:NO)、RAM93の所定の記憶領域に非候補フラグを設定し(ステップS4)、後述するステップS6に処理を進める。
【0073】
緑色の画素数が閾値Aを超過している場合(ステップS3:YES)、RAM93の所定の記憶領域に候補フラグを設定する(ステップS5)。図11Bは、候補フラグを設定した帯状領域101をハッチングにて示し、非候補フラグを設定した帯状領域101を無地で示している。なおRAM93の所定の記憶領域には、各帯状領域101に対応したアドレスが設定してある。該アドレスが示す記憶領域に非候補フラグ又は候補フラグが設定される。そのため、アドレスを参照することによって各帯状領域101のフラグを確認することができる。
【0074】
次にCPU91は、全ての帯状領域101について緑色の画素を計数したか否かを判定する(ステップS6)。例えばCPU91は、アドレスを参照し、フラグが未設定の記憶領域が存在するか否かを判定する。全ての帯状領域101、101、・・・、101について緑色の画素を計数していない場合(ステップS6:NO)、例えば帯状領域101に対応したフラグが未設定の記憶領域が存在する場合、CPU91はステップS2に処理を戻す。全ての帯状領域101、101、・・・、101について緑色の画素を計数した場合(ステップS6:YES)、例えばフラグが未設定の記憶領域が存在しない場合、CPU91は、候補フラグを設定した帯状領域101の中から、田植機の進行方向の基準となる苗140の列を表示する帯状領域101を選択する(ステップS7)。例えば右フロントカメラ21にて撮像した画像を表示部8に表示している場合には、候補の中から最も左側に位置する帯状領域101を選択し、左フロントカメラ23にて撮像した画像を表示部8に表示している場合には、候補の中から最も右側に位置する帯状領域101を選択する。図11Cは、選択された帯状領域101をハッチングにて示している。そしてCPU91は、選択した帯状領域101を着色する指令を表示部8に出力する(ステップS8)。表示部8は選択された帯状領域101を着色して表示する。図12は、着色された帯状領域101を破線ハッチングにて示している。操作者は、ステアリングホイール7を操作し、着色された帯状領域101内に線100を位置させることによって、容易に田植機の進行方向を苗140の並び方向に整合させることができる。なお上記苗認識処理は、苗140を含む帯状領域101を認識しているが、表示部8に表示された各苗140を個別に認識して、認識した苗140の周囲に、苗140それぞれを囲む枠を表示させるようにしてもよい。
【0075】
なお着色された帯状領域101内に線100が存在しない場合に、田植機が進行すべき方向を示す方向指標を表示部8に表示させるようにコントローラ90を構成してもよい。図13はコントローラ90による方向指標表示処理を説明するフローチャート、図14は右方向を示す方向指標を表示した画像の一例を示す模式図、図15は左方向を示す方向指標を表示した画像の一例を示す模式図、図16は前方向を示す方向指標を表示した画像の一例を示す模式図である。コントローラ90のRAM93には、予め線100の位置を示す情報がROM92から読み込まれており、CPU91は線100の位置を示す情報を参照可能であるとする。
【0076】
CPU91は、線100を示す情報を参照し、選択された帯状領域101よりも左側に線100が位置するか否か判定する(ステップS21)。選択された帯状領域101よりも左側に線100が位置する場合(ステップS21:YES)、CPU91は右向きの矢印を表示する指令を表示部8に出力する(ステップS22)。表示部8は右向きの矢印120を表示する(図14参照)。そのため操作者に対し、ステアリングホイール7を操作して田植機の進路を右に向けるように促すことができる。
【0077】
選択された帯状領域101よりも左側に線100が位置しない場合(ステップS21:NO)、CPU91は選択された帯状領域101よりも右側に線100が位置するか否か判定する(ステップS23)。選択された帯状領域101よりも右側に線100が位置する場合(ステップS23:YES)、CPU91は左向きの矢印を表示する指令を表示部8に出力する(ステップS24)。表示部8は左向きの矢印121を表示する(図15参照)。そのため操作者に対し、ステアリングホイール7を操作して田植機の進路を左に向けるように促すことができる。
【0078】
選択された帯状領域101よりも右側に線100が位置しない場合(ステップS23:NO)、CPU91は前向きの矢印を表示する指令を表示部8に出力する(ステップS25)。表示部8は前向きの矢印122を表示する(図16参照)。そのため操作者に対し、田植機の進路を維持するように促すことができる。
【0079】
なお上記方向指標表示処理においては、帯状領域101が着色されているが、帯状領域101は無着色でもよい。また方向指標として矢印を使用しているが、「右」、「左」及び「直進」のように文字を使用しても良いし、その他の方向を示す図形又は記号を使用しても良い。
【0080】
実施の形態1に係る田植機にあっては、左右のフロントカメラ21、23にて圃場に植え付けられた苗を撮像し、撮像された苗を表示部8に表示する。操作者は、表示部8に表示された苗の並び方向を確認して田植機を操舵し、線100を最も端に位置する苗の列に一致させて、進行方向と苗の並び方向とを整合させることができる。左右のフロントカメラ21、23にて撮像された苗は、圃場の環境に拘わらず、表示部8を介して確実に視認される。また従来使用していたマーカはバネ及びワイヤなどを組み合わせた複雑な機構、例えば走行部1に対する進出又は退入を行うための機構を備えており、製造費用が嵩むが、左右のフロントカメラ21、23及び表示部8は構成が簡素であり、製造費用を削減することができる。
【0081】
また最も端に位置する苗の周囲を着色して強調表示し、苗の視認性を向上させることができ、操作者に容易に苗を認識させることができる。また線100と最も端に位置する苗の列とが一致していない場合に、右向きの矢印120及び左向きの矢印121を表示し、操作者に両者を一致させるように促すので、操作者は迅速に操舵方向を変更することができる。
【0082】
実施の形態1に係る田植機は、左右にフロントカメラ21、23をそれぞれ配置しているが、レールを介して左右に移動可能な台座を走行部に設け、該台座に一のフロントカメラを設けてもよい。この場合、台座を移動させることによって、一つのフロントカメラで左右に植付けられた苗を撮像することができる。また上下方向を軸方向として軸周りに回転可能な台座を走行部に設け、該台座に一のフロントカメラを設けてもよい。この場合も、台座の回転によって一つのフロントカメラで左右に植付けられた苗を撮像することができる。また上下を枢軸方向として一端部を枢着した支持棒を走行部に設け、該支持棒の他端部に一つのフロントカメラを設けても良い。この場合、一端部を中心にフロントカメラは左右に回動するので、一つのフロントカメラで左右に植付けられた苗を撮像することができる。
【0083】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る田植機を示す図面に基づいて詳述する。図17はステアリングホイール7付近の構成を略示する分解斜視図である。
【0084】
図17に示すように、ステアリングホイール7は、コラムブッシュ71及びシャフトブッシュ72を介して、上下方向に設けられたステアリングシャフト70の上端部に連結してある。ステアリングシャフト70はその周面に磁性体を有し、ステアリングシャフト70の中途部の周囲に、ステアリングシャフト70の回転角を検出する回転角センサ73が設けてある。該回転角センサ73は、ステアリングシャフト70の軸周りの位置を検出する手段、例えばホール素子又は磁気センサを有する。
【0085】
図18はコントローラ90周りの構成を略示するブロック図である。回転角センサ73の検出値はコントローラ90に入力される。コントローラ90は、回転角センサ73の検出値を積算し、回転角の大きさを求める。ROM92には、回転角の大きさと予想される進行方向との関係を示すLUT(Look Up Table)が記憶してある。またROM92には、閾値が記憶してある。
【0086】
回転角の大きさが前記閾値よりも大きい場合、換言すれば直進不可能な角度まで回転した場合、コントローラ90は、LUTを参照し、表示部8に後述する進行方向を予想する予想線を表示させる(後述する図20参照)。なお閾値はROM92からRAM93に読み込まれ、CPU91は閾値を参照可能であるとする。
【0087】
図19はコントローラ90による予想線表示処理を説明するフローチャート、図20は予想線を表示した画像の一例を示す模式図である。図20Aはステアリングホイール7を左側に回転させた場合の画像を示し、図20Bはステアリングホイール7を右側に回転させた場合の画像を示す。
【0088】
CPU91は、回転角の大きさが閾値よりも大きくなるまで待機する(ステップS61:NO)。回転角の大きさが閾値よりも大きくない場合、田植機は略直進していると考えられる。回転角の大きさが閾値よりも大きい場合(ステップS61:YES)、CPU91は、ROM92にアクセスして予想テーブルを参照する(ステップS62)。そしてCPU91は、回転角に対応する進行方向を決定し、表示部8に予想線を表示する信号を出力する(ステップS63)。図20Aに示すように、ステアリングホイール7を左側に回転させた場合、左側に湾曲した予想線123が表示部8に表示される。図20Bに示すように、ステアリングホイール7を右左側に回転させた場合、左側に湾曲した予想線123が表示部8に表示される。
【0089】
実施の形態2に係る田植機にあっては、予想線123を表示することによって、操作者は、予想される田植機の進行方向を直感的に把握することができ、ステアリングホイール7を操作して田植機を直進させることができる。なお予想線表示処理を実行するためのスイッチを設けて、該スイッチがオンの場合にのみ、予想線表示処理を実行するように構成しても良い。
【0090】
実施の形態2に係る田植機の構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0091】
(実施の形態3)
以下本発明を実施の形態3に係る田植機を示す図面に基づいて詳述する。図21は現在植付けを行っている圃場の箇所及び該箇所に隣接しており、次に苗の植付けを行う箇所の画像の一例を示す模式図である。
【0092】
実施の形態3に係る田植機の右フロントカメラ21及び左フロントカメラ23は、遠距離の条合せに対応すべく、広角レンズを使用している。図21は、右フロントカメラ21にて撮像された圃場を表示する表示部8を示しており、広角レンズによる画像の歪み具合に応じて湾曲した線100が右側に表示されている。また表示部8の左端部には畔130が表示されており、ハッチングにて畔130を示してある。表示部8の左側には、現在植付けを行っている箇所に隣接する箇所において、次に植え付けられるべき苗の列の位置を示す8本の植付予想線(位置指標)110、110、・・・、110が配置してある。なお植付予想線110は視認される態様であればよく、例えば表示パネルの表面に予め印刷されているか又は表示パネルにて画像として表示される。植付予想線の本数は、植付爪14の数に対応しており、植付爪14の数に応じて増減する。
【0093】
図21においては、最も左の植付予想線110と該植付予想線110の右隣に位置する植付予想線110とが畔130の上に表示されている。そのため、次に苗を植付けを行う場合には、前記二つの植付予想線110、110に対応する植付爪14、14を駆動させる必要はない。操作者は、旋回して次の植付けを行う場合に、前記二つの植付予想線110、110に対応する植付爪14、14(本実施例においては右端の植付爪14及び該植付爪14の左隣に位置する植付爪14)の駆動を、前記条止レバー63を操作することによって停止させることができる。このため操作者は、不要な苗の植付けを行う箇所を予め直感的に把握することができ、駆動を停止させるべき植付爪14を容易に把握し、植付け作業を円滑に進めることができる。なお左フロントカメラ23にて撮像した場合は、左右の位置が反対になること以外は、右フロントカメラ21にて撮像した場合と同様である。
【0094】
なお位置指標として植付予想線110を使用しているが、破線、矢印又は苗の位置を示すその他の図形又は記号を使用してもよい。実施の形態3に係る田植機の構成の内、実施の形態1又は2と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0095】
(実施の形態4)
以下本発明を実施の形態4に係る田植機を示す図面に基づいて詳述する。図22は表示部8に表示された画像の一例を示す模式図である。
右フロントカメラ21及び左フロントカメラ23は広角レンズを使用している。図22は、右フロントカメラ21にて撮像された圃場を示しており、広角レンズによる画像の歪み具合に応じて湾曲した線100が右側に表示されている。表示部8の左端部には畔130が表示されており、ハッチングにて畔130を示してある。線100から左方向を向いた矢印125が表示部8の上下方向中央部に表示されている。また矢印125の上側に「8条残し」と表示されている。
【0096】
田植機には、枕地仕上げのためにスペースを確保する場合を考慮して、上述した矢印125及び「8条残し」を表示するためのスイッチ(図示せず)が設けてある。該スイッチがオンの場合に、矢印125及び「8条残し」が表示される。なお矢印限定されず、他の記号又はマークを表示されるように構成してもよい。また田植機の仕様又は確保すべきスペースの大きさに応じて、「4条残し」又は「6条残し」のように文字の表示を変えることができる。
【0097】
前記スイッチをオンにすることで、矢印125及び「8条残し」を表示部8に表示させることができる。矢印125の先端が畔130に近づいた場合に、往路又は復路における現在の植付け作業が終了した時点で、条止レバー63を操作して全ての植付爪14の駆動を停止させることによって、操作者は、所望のスペースを確実に確保することができる。
【0098】
実施の形態4に係る田植機の構成の内、実施の形態1〜3と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0099】
(実施の形態5)
以下本発明を実施の形態5に係る田植機を示す図面に基づいて詳述する。図23はコントローラ90周りの構成を略示するブロック図である。ダッシュボードパネル5には、田植機の旋回時に表示部8に表示される画像を、右フロントカメラ21又は左フロントカメラ23にて撮像された画像に自動的に切り替えるためのカメラ自動切替スイッチ57が設けてある。該カメラ自動切替スイッチ57のオン/オフ信号は、コントローラ90に入力される。
【0100】
カメラ自動切替スイッチ57からオン信号が入力されている場合に、コントローラ90は、回転角センサ73の検出値を積算する。積算した回転角の大きさが予めRAM93に記憶された閾値Bよりも大きい場合、換言すればステアリングホイール7が旋回に必要な角度まで回転した場合、コントローラ90は、切替スイッチ94を動作させて、表示部8に表示される画像を、右フロントカメラ21又は左フロントカメラ23にて撮像された画像に切り替える。なお閾値Bは予めROM92に記憶してあり、RAM93には閾値BがROM92から読み込まれ、CPU91は閾値Bを参照可能であるとする。
【0101】
図24はコントローラ90によるカメラ切替処理を示すフローチャートである。CPU91は、カメラ自動切替スイッチ57からオン信号が入力されているか否かを判定する(ステップS31)。カメラ自動切替スイッチ57からオン信号が入力されていない場合(ステップS31:NO)、CPU91は処理を終了する。
【0102】
カメラ自動切替スイッチ57からオン信号が入力されている場合(ステップS31:YES)、CPU91は回転角の大きさが閾値Bよりも大きくなるまで待機する(ステップS32:NO)。回転角の大きさが閾値Bよりも大きくなった場合(ステップS32:YES)、換言すれば田植機が旋回した場合、CPU91は、表示部8に表示する画像を右フロントカメラ21にて撮像した画像から左フロントカメラ23にて撮像した画像に切り替えるか又は左フロントカメラ23にて撮像した画像から右フロントカメラ21にて撮像した画像に切り替える(ステップS33)。
【0103】
旋回する都度、表示部8に表示される画像が切り換わるので、操作者は、基準とする苗の列を確実に視認し、苗の植付け作業を円滑に進めることができる。
【0104】
実施の形態5に係る田植機の構成の内、実施の形態1〜4と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0105】
(実施の形態6)
以下本発明を実施の形態6に係る田植機を示す図面に基づいて詳述する。図25は条止レバー63付近の構成を略示する斜視図、図26はコントローラ90周りの構成を略示するブロック図である。条止レバー63の一端部は、操作者が把持しやすいように構成されている。条止レバー63の他端部は、横方向を軸方向とした枢軸63aに連結してあり、該枢軸63aは運転席6下部の適所に回動可能に設けてある。条止レバー63は、枢軸63aを中心として回動することができるようにしてある。枢軸63aには、サーボモータ63cの出力軸が電動式のモータクラッチ63dを介して接続してあり、また枢軸63aの回転角を検出するポテンショメータ63bが設けてある。なおモータクラッチ63dは、後述する条止処理において植付爪14の駆動を停止する処理がなされない限り、切断されているものとする。
【0106】
前記ダッシュボードパネル5には、自動的に植付爪14の駆動を停止させるための自動条止スイッチ58が設けてある。自動条止スイッチ58からコントローラ90にオン/オフ信号が入力され、またポテンショメータ63bからコントローラ90に検出値が入力される。コントローラ90はモータクラッチ63dに継断信号を出力し、サーボモータ63cに駆動信号を出力する。コントローラ90は、自動条止スイッチ58からオン信号が入力されている場合、表示部8に表示された画像に基づいて植付爪14の駆動を停止する条止処理を実行する。
【0107】
図27はコントローラ90による条止処理を説明するフローチャートである。なおROM92には各帯状領域101、101、・・・、101と植付爪14とを対応付けたテーブルが予め記憶してあり、ROM92からRAM93に前記テーブルが読み込んであり、CPU91はRAM93からテーブルを参照可能であるとする。
コントローラ90のCPU91は、自動条止スイッチ58からオン信号が入力されているか否か判定する(ステップS41)。自動条止スイッチ58からオン信号が入力されていない場合(ステップS41:NO)、CPU91は処理を終了する。自動条止スイッチ58からオン信号が入力されている場合(ステップS41:YES)、CPU91は、表示部8に表示されている画像を、前述した帯状画像に分割して認識し、一の帯状領域101を抽出して、抽出した帯状領域101の各画素の輝度を合計する(ステップS42)。そしてCPU91は、合計した輝度の値が閾値C未満であるか否かを判定する(ステップS43)。輝度の合計値としては、所定の時間間隔で合計した移動平均値又は所定の時刻における合計値が挙げられる。なお閾値Cは予めROM92に記憶してあり、RAM93には閾値CがROM92から読み込まれており、CPU91はRAM93から閾値Cを参照可能であるとする。
【0108】
水を張った圃場に比べて畔130の輝度は小さいため、輝度を算出することで帯状領域101に畔130が表示されているか否かを判定することができる。なお輝度の合計値に限定されず、畔130を認識するための特徴を示す値を計算してもよい。例えば輝度の合計値を補正関数に適用した値又は前記合計値を補正係数にて処理(加減乗除)した値を計算しても良い。また輝度に限らず、水面と畔130とを識別する特性値(例えば色の種類に基づく値:圃場内を茶色に、畔130を緑色に対応付けて各色の画素数を計数した値など)に基づいて判定すればよい。
【0109】
合計した輝度の値が閾値C未満でない場合(ステップS43:NO)、CPU91はRAM93の所定の記憶領域に非畔フラグを設定し(ステップS44)、後述するステップS46に処理を進める。合計した輝度の値が閾値C未満である場合(ステップS43:YES)、CPU91はRAM93の所定の記憶領域に畔フラグを設定する(ステップS45)。なおRAM93の所定の記憶領域には、各帯状領域101、101、・・・、101に対応したアドレスが設定してあり、輝度の合計値を演算した帯状領域101に対応するアドレスが示す記憶領域に非畔フラグ又は畔フラグが設定される。そのため、アドレスを参照することによって各帯状領域101、101、・・・、101のフラグを確認することができる。
【0110】
次にCPU91は、全ての帯状領域101、101、・・・、101について輝度の合計を算出したか否かを判定する(ステップS46)。全ての帯状領域101、101、・・・、101について輝度の合計を算出していない場合(ステップS46:NO)、CPU91はステップS42に処理を戻す。全ての帯状領域101、101、・・・、101について輝度の合計を算出している場合(ステップS46:YES)、CPU91は、畔フラグを設定した帯状領域101が存在するか否かを判定する(ステップS47)。畔フラグを設定した帯状領域101が存在しない場合(ステップS47:NO)、CPU91は処理を終了する。畔フラグを設定した帯状領域101が存在する場合(ステップS47:YES)、CPU91は、前記テーブルを参照し、停止すべき植付爪14を決定する(ステップS48)。例えば右フロントカメラ21にて撮像した画像を表示部8に表示している場合、畔フラグを設定した帯状領域101及び該帯状領域101よりも左側にて苗の植付けを行う植付爪14に決定する。なお左フロントカメラ23にて撮像した画像を表示部8に表示している場合、畔フラグを設定した帯状領域101及び該帯状領域101よりも右側にて苗の植付けを行う植付爪14に決定する。
【0111】
そしてCPU91は、ポテンショメータ63bの検出値を参照し、停止すべき植付爪14に対応する条止レバー63が後側に位置するか否か、換言すれば条止レバー63が植付爪14の駆動を停止させる位置にあるか否かを判定する(ステップS49)。条止レバー63が植付爪14の駆動を停止させる位置にある場合(ステップS49:YES)、CPU91は処理を終了する。条止レバー63が植付爪14の駆動を停止させる位置にない場合(ステップS49:NO)、CPU91は、決定した植付爪14に対応するモータクラッチ63dに接続信号を出力し(ステップS50)、モータクラッチ63dを接続したサーボモータ63cに駆動信号を出力する(ステップS51)。サーボモータ63cは、駆動信号に基づいて条止レバー63を植付爪14の駆動を停止させる位置まで移動させる。そしてCPU91は、モータクラッチ63dに切断信号を出力する(ステップS52)。
【0112】
図28は表示部8に表示された画像の一例を示す模式図である。図28は右フロントカメラにて撮像された画像の一例を示し、畔130をハッチングにて示し、帯状領域101を破線にて示している。帯状領域101に畔130が表示されている場合、該帯状領域101に対応する植付爪14の駆動を停止させる。例えば図28においては、左端の帯状領域101に畔130が表示されており、該帯状領域101の右に隣接した二つの帯状領域101、101には圃場が表示されている。コントローラ90は、左端の帯状領域101よりも左側にて苗の植付けを行う植付爪14の駆動を停止させる。具体的には、コントローラ90はサーボモータ63cに駆動信号を出力して条止レバー63を動作させ、右端に位置する二つの植付爪14、14を残して、他の六つの植付爪14、14、・・・、14の駆動を停止させる。なお帯状領域101はコントローラ90が認識できればよく、表示部8に表示させる必要はない。
【0113】
実施の形態6に係る田植機にあっては、表示部8に表示された画像を解析し、例えば畔が表示部8に表示されている場合に、畔に対応する位置にある爪14の動作を自動的に停止させて、苗の不要な植付けを回避することができる。
【0114】
以下のように構成しても良い。実施の形態4のように、矢印125が表示されている場合に、矢印125の先端部が畔130に近接しているか否かを画像を解析して判定する。近接していると判定された場合、走行部1が旋回したか否か判断する。走行部1が旋回した場合、枕地が形成されるべき部分を走行すると考えられる。走行部1が旋回したと判定された場合、全ての植付爪14の駆動を停止する。このように構成することで、枕地形成のためのスペースを自動的に確保することができる。
【0115】
実施の形態6に係る田植機の構成の内、実施の形態1〜5と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0116】
以上説明した実施の形態は本発明の例示であり、本発明は特許請求の範囲に記載された事項及び特許請求の範囲の記載に基づいて定められる範囲内において種々変更した形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0117】
1 走行部
8 表示部
10 植付部
14 植付爪(爪部)
18 リヤカメラ(後方撮像部)
21 右フロントカメラ(撮像部)
23 左フロントカメラ(撮像部)
40 クラッチ(継断部)
41 回転軸
53 植付昇降レバー(選択部)
53a 植付昇降レバーセンサ(選択部)
100 線(並び指標)
110 植付予想線(位置指標)
120、121、122 矢印(方向指標)
123 予想線
125 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部の後部に位置し、苗を植付ける植付部を備える田植機において、
前方を撮像する撮像部と、
該撮像部によって撮像された画像を表示する表示部と
を備えることを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記撮像部は前記走行部の右側又は左側を撮像することができるようにしてあり、
前記走行部の右側又は左側を選択する選択部を備え、
前記選択部にて選択された側を前記撮像部が撮像し、前記撮像部にて撮像された画像が前記表示部に表示されるようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記撮像部は前記走行部の右側又は左側を撮像することができるようにしてあり、
前記走行部の旋回の前後で、前記表示部に表示される画像を、前記撮像部にて撮像された一側の画像から前記撮像部にて撮像された他側の画像に切り替える手段を備えること
を特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項4】
前記表示部に表示される苗の並び方向に沿う並び指標が前記表示部に配置してあること
を特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の田植機。
【請求項5】
前記並び指標は線であることを特徴とする請求項4に記載の田植機。
【請求項6】
前記走行部が進行すべき方向を示す方向指標が前記表示部に配置してあること
を特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の田植機。
【請求項7】
前記方向指標は矢印であることを特徴とする請求項6に記載の田植機。
【請求項8】
前記撮像部が苗を撮像している場合に、撮像された苗を認識する手段を備え、
該手段にて認識した苗を前記表示部にて強調表示するようにしてあること
を特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の田植機。
【請求項9】
前記植付部によって植え付けられるべき苗の植付け後の位置を示す位置指標が前記表示部に配置してあること
を特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の田植機。
【請求項10】
前記位置指標は、植付け後の苗の列を示す線であることを特徴とする請求項9に記載の田植機。
【請求項11】
走行部を操向する操向部と、
該操向部による操舵量を検出する検出手段とを備え、
前記検出手段にて検出された操舵量に基づいて、前記走行部の進行方向を示す指標が前記表示部に配置してあること
を特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の田植機。
【請求項12】
苗の植付けを禁止すべき範囲を示す指標が前記表示部に配置してあること
を特徴とする請求項1から11のいずれか一つに記載の田植機。
【請求項13】
駆動源を備え、
前記植付部は、
横方向に並設されており、苗を植付ける複数の爪部と、
該爪部を支持し、横方向を軸方向として前記駆動源からの駆動力によって回転する回転軸と、
前記駆動源及び回転軸の間における駆動力の伝達経路を継断する継断部と
を有しており、
前記表示部に表示された画像に基づいて、前記継断部の継断を制御する手段を備えることを特徴とする請求項1から12のいずれか一つに記載の田植機。
【請求項14】
後方を撮像する後方撮像部を備え、
該後方撮像部に撮像された画像を前記表示部に表示することができるようにしてあること
を特徴とする請求項1から13のいずれか一つに記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−157333(P2012−157333A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21165(P2011−21165)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】