説明

自動芝刈り機

【課題】走行路面に柔軟に対応して傾斜地形のカッティングも可能な自動芝刈り機を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも位置検出手段を含む各種センサとモータ制御の駆動輪とを有し、学習機能を担う制御ユニットを備えた自律走行型の自動芝刈り機であって、制御ユニットは、センサの情報を基に駆動輪を制御して目標地点に移動させるためのドラム制御部と、走行路面の傾斜に応じて車軸を動かし車体の平衡を保つ車体平衡部と、走行路面に沿ってカッティングユニットを追従させて芝刈りを行うカッティング部と、センサの情報を基に各ユニットを制御するための各種演算及び該演算に対応する処理を行う演算処理部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動芝刈り機に関し、より詳細には、位置情報を正確に把握して障害物や傾斜地にも対応する無人作業が可能な自律走行型の自動芝刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場、公園、サッカー場等において、芝生の状態を維持するためには、定期的な芝刈りを必要とし、特にゴルフ場のような広い場所では、大きな労力や費用が掛かり、このような背景から、例えば特許文献1のような手動運転と自動運転とを選択することが可能な芝刈り機や特許文献2のような自律航法装置を有する無人芝刈り機が開示されている。
【0003】
しかし、従来の自動運転を行う無人芝刈り機には、いくつかの不具合が散見され、例えば、走行路面に穴や窪地等のような段差がある場合或いは傾斜地形を有する場合、予め想定できる場合は、その地点を避ける或いは傾斜地に対応したプログラムとする等の方法により対処していたが、直前にできた穴等の場合は対応できず、また地図データを基に傾斜地を判断する場合は装置の位置にずれが生じた場合に不具合が発生する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−128044号公報
【特許文献2】特開平9−37610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、走行する路面に柔軟に対応して傾斜地形のカッティングも可能な自動芝刈り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明の自動芝刈り機は、少なくとも位置検出手段を含む各種センサとモータ制御の駆動輪とを有し、学習機能を担う制御ユニットを備えた自律走行型の自動芝刈り機であって、前記制御ユニットは、前記センサの情報を基に前記駆動輪を制御して目標地点に移動させるためのドラム制御部と、走行路面の傾斜に応じて車軸を動かし車体の平衡を保つ車体平衡部と、前記走行路面に沿ってカッティングユニットを追従させて芝刈りを行うカッティング部と、前記センサの情報を基に各ユニットを制御するための各種演算及び該演算に対応する処理を行う演算処理部と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の自動芝刈り機において、前記演算処理部は、加速度センサにより検出した水平(X、Y方向)軸及び垂直(Z方向)軸の加速度のうちの進行方向の水平成分と垂直方向の成分を、ジャイロセンサにより検出した水平(X、Y方向)軸及び垂直(Z方向)軸の角速度より求めた角度のうちの進行方向と直交する角度成分により分解し、該分解したそれぞれの成分を積分することで移動経路の高低差による影響を補償した速度と距離を求める。
前記車体平衡部は、前記ジャイロセンサで検出した角速度から前記演算処理部により算出した車体の傾きに応じて車軸を動かし車体の平衡を保つ。
前記カッティング部は、前記ジャイロセンサで検出した角速度から前記演算処理部により算出した傾きに応じて前記カッティングユニットの各軸に設けた可動機構を作動させて走行経路の傾斜面に追従させる路面追従機構を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動芝刈り機によれば、走行パターンを学習させることで無人の自動運転を可能とすると共に、その場の走行路面や移動経路に対応した自律走行を可能にし、これにより芝刈りに要する労力や経費を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の外観図である。
【図2】図1に示す自動芝刈り機のカッティングユニットの説明図である。
【図3】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の概略構成図である。
【図4】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の加速度センサ及びジャイロセンサの動作を説明するための図面である。
【図5】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の車体傾きを平衡にする動作説明図である。
【図6】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の障害物センサの動作説明図である。
【図7】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の移動パターンを説明するための図面である。
【図8】図7に示す移動パターンの動作説明図である。
【図9】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の移動パターンを処理するための説明図である。
【図10】図9に示す移動パターンを処理する演算処理部の概略構成図である。
【図11】図10に示す移動コマンドによる車体の動きを説明するための図面である。
【図12】図10に示す演算処理部の構成図である。
【図13】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の動作概要を示すフロー図である。
【図14】図13に示すセルフチェックの処理フロー図である。
【図15】図13に示す状態監視の処理フロー図である。
【図16】図15に示す状態監視の割り込み処理フロー図である。
【図17】図13に示すティーチング処理の概略フロー図である。
【図18】図17に示すティーチング処理の割り込み処理フロー図である。
【図19】本発明の一実施形態による自動芝刈り機のティーチング処理シーケンスを示す図面である。
【図20】図13に示す自動芝刈りモードの概略フロー図である。
【図21】図20に示す自動芝刈りモードの割り込み処理フロー図である。
【図22】図20に示すGPSデータの処理フロー図である。
【図23】図20に示すジャイロデータの処理フロー図である。
【図24】本発明の一実施形態による自動芝刈り機の自動芝刈り処理シーケンスを示す図面である。
【図25】図13に示す手動・移動処理の概略フロー図である。
【図26】図25に示す手動・移動処理の割り込み処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の自動芝刈り機を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の外観図であり、図2は、図1に示す自動芝刈り機のカッティングユニットの説明図である。
【0012】
図1を参照すると、本実施形態の自動芝刈り機1は、位置情報を取得するためのGPS受信機、車体の向きや傾斜を感知する3Dジャイロセンサ、表示画面を備えた操作・設定用のタッチパネル、演算部を含む制御ユニット、赤外線レーザーを用いた障害物センサ、立ち入り禁止区域や位置補正値取得のためのRFIDリーダ、基地局との情報の授受やRTK−GPS基準局からのデータを取得するための無線機、運行中や警告用のモニタランプ、走行路面の追従機構を備えた芝生を刈るためのカッティング部、モータ制御の駆動輪(ドラム)及び方向舵、車輪の回転を検出して走行状態をモニタするためのエンコーダ、バッテリの他、図示していないが周囲の状況を撮像し基地局で運行状況を確認し監視することや障害物認識等に用いる全方位カメラ等を有する。カメラの撮像画像を画像処理することでその地形から障害物と判断することができ、障害物センサによる認識と組み合わせることで認識率を向上させることができる。
【0013】
本実施形態では、基地局(又はGPS基準局)と移動局(自動芝刈り機1)との通信方式に小エリア無線を使用して1km程度の広域エリアをカバーする。RTK−GPSの場合、通常160バイト/秒の補正データがGPS基準局から送出されるが、補正データをそのまま送出した場合、伝送速度が低いとデータを送りきることができない場合が生じる。これに対しては、RTK−GPS通信専用の通信回線と、他のデータ用との通信回線を分けることが考えられるが、無線機の数、複雑化、電波干渉、コスト等の問題が発生する。そのため、本実施形態では、WGS−84世界測地系座標を2km×2kmのエリアに分割し、左下を原点とするオフセット座標に変換してバイト数を4バイトから2バイトに削減し、データ圧縮を行うことで160バイトの補正データを50バイト程度まで削減する。この処理により通信時間を短くでき、自動芝刈り機1と基地局との運行状況データの送受信を可能としている。
【0014】
図2を参照すると、自動芝刈り機1は、ブレード8枚を有しカット幅350mの刃形状で1.3m/秒〜1.5m/秒のカッティング速度でカッティングするカッティングユニット2と、カッティングユニット2を走行路面に追従させるための演算部を含む制御ユニットとを備える。
【0015】
図3は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の概略構成図であり、主に制御ユニットを中心とした構成図である。
【0016】
自動芝刈り機1は、演算処理部を含む制御ユニット21を備え、制御ユニット21には位置検出ユニット22が接続され、位置検出ユニット22には、搬送波の数及び位相より基準局で誤差を求め移動局に通知することによりcmレベルの精密測位が可能なRTK(realtime kinematic)−GPS受信機11、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等を用いた小型の振動型3Dジャイロセンサ(3軸角速度センサ)12、ホール素子等を用いた多軸の地磁気センサ(電子コンパス)13、MEMS等を用いた半導体式の多軸加速度センサ14が接続される。
【0017】
制御ユニット21は、図示していないが、処理全体に亘る制御を司るCPU(中央制御部)、デジタル信号処理のためのDSP(Digital Signal Prosessor)、各種入出力(I/O)インタフェース等の各種機能を含む周辺回路を集積したデジタル及びアナログASIC(Application Specific Integrated Circuit)、制御プログラムや各種データを記憶する不揮発性Flashメモリを含むROM、演算時の作業領域等の一時記憶として用いるRAM等を有し、モニタ画面を有するタッチパネル型の入出力装置、基地局との通信装置等が接続されるが、本発明の要旨ではないこれらの説明及びその構成図面については省略する。
【0018】
制御ユニット21には、また、各種設定のための応答、警告、注意喚起等に用いるモニタランプ15及びアラーム16、赤外線レーザー等を用いて人、物、木、段差等を検出する障害物センサ17、周囲の状況を撮像して基地局での監視や障害物認識等に用いるCCD又はCMOS型の全方位カメラ18、立ち入り禁止区域の検知や緯度経度補正のために固定地点に設置されたICタグの情報を読み取るRFIDリーダ19が接続される。
【0019】
走行時に、車体を持ち上げたことを検知するリフトセンサ23、車体の傾きを検知するチルトセンサ24からの情報は、制御ユニット21に接続されると共にインターロック部25に伝えられ、インターロック部25は、制御ユニット21を介さずに直接モータドライバ31を制御し、カッティングユニット2に異物が挟まった時、装置を持ち上げた時、規定以上の傾きを検出した時や転倒、衝突等の異常時にカッティング及び駆動輪(ドラム)を即時に停止する。自動芝刈り機の動作状況を常時基地局がある監視センターに送信し、異常を検知した場合に基地局から遠隔操作で自動芝刈り機1の走行を停止するようにしてもよい。また、異常を検知した場合、予め登録されたメールアドレスに異常情報を送信するようにしてもよい。リフトセンサ23及びチルトセンサ24は、ジャイロセンサ12や加速度センサ14で兼用することもできる。加速度センサ14は、所定以上の加速度を検出した場合に衝突とみなす衝突センサとして用いることもできる。
【0020】
モータドライバ31は、制御ユニット21と通信し、制御ユニット21の演算処理部で演算された結果を基に制御され、駆動輪及びカッティングユニット2のモータ32、34、36を駆動する。モータ32、34、36で駆動される駆動輪及びカッティングユニット2の回転状態は、回転軸に連動して備え付けられたパルスエンコーダ33、35、37で発生した回転情報を制御ユニット21に入力してその回転状態をモニタし、制御ユニット21における演算処理にフィードバックする。これらの情報の授受は制御コマンドを介して行われる。
【0021】
自動芝刈り機1は、この他にも、自動芝刈り機1を作動させるための電源用バッテリ27、バッテリ27を充電するための充電コネクタ26、各ユニットに電源を供給する安定化電源及びその電圧をモニタする電圧検出部28、各ユニットの異常温度を検出して電源供給を停止するサーマルプロテクタ29等を備える。なお、図示していないが、上記制御ユニット21の制御処理は主にCPU1が担い、それ以外の総合的な制御を担うCPU2を備える。CPU2には、全方位カメラ、操作・設定用の表示画面及びタッチパネル、基地局との通信回路の他、メモリカード、USB、RS232C等の各種入出力インタフェースが接続される。
【0022】
図4は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の加速度センサ及びジャイロセンサの動作を説明するための図面であり、図5は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の車体傾きを平衡にする動作説明図である。
【0023】
図4を参照すると、3軸加速度センサ14は、MEMS等を用いた半導体式の加速度センサを用いてX(水平横)、Y(水平縦)、Z(垂直)軸の加速度を検出し、角速度を検出するジャイロセンサ12は、機械式(レート)ジャイロ或いはMEMSシリコン振動子リングを用いた振動式ジャイロ等の高精度角速度検出が可能なものを使用してX、Y、Z軸の角速度(ロール、ピッチ、ヨー)を検出し、角速度を積分することでその角度を算出する。
【0024】
図5を参照すると、移動経路にアップダウン(高低差)がある場合、その距離及び速度は(仮に進行方向がX方向の場合)、X軸加速度とZ軸加速度及びY軸のピッチ角を用い、水平成分(X軸方向)と垂直成分(Z軸方向)をピッチ角により分解(サンプリング)してそれぞれの成分を積分することで得ることができる。ジャイロセンサ12は、X(水平横)、Y(水平縦)、Z(垂直)軸の角速度から車体の傾き(ピッチング、ローリング、ヨーイング)を検出して自動芝刈り機1を常に平衡に保つために使用する。このとき、カッティングユニット2の路面追従機構(図示せず)は、駆動輪(ドラム)の回転差に対応するヨー方向、地形によるピッチ、ロール、上下方向を吸収するために、カッティングユニットの各軸に可動機構を設けており、これにより走行路面に追従した芝刈りを行うことができる。
【0025】
図6は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の障害物センサの動作説明図である。
【0026】
図6を参照すると、自動芝刈り機1は、移動目標経路に存在する人、物、木等の障害物を障害物センサ17により検知して障害物が取り除かれるまで所定時間待機し、予め経路データとして記憶されている場合又は所定時間経過後に、衝突を避けるために迂回する。障害物センサ17には超音波センサやレーザーLEDを用いた赤外線センサを使用し、その反射波又は反射光を計測することで障害物を検知して障害物までの距離を測定する。走行経路の路面の段差は、所定の角度(θ1、θ2)で照射した超音波又はレーザー光の反射よりその距離を測定し、平担時との反射距離差を計測することで判断する。
【0027】
障害物との違いを認識するため或いは要所に設けられた固定ポイントの微弱無線信号のICタグ情報を取得した場合は、立ち入り禁止区域と判断して迂回すると共に、ポイント通過時に緯度経度データを取得して自位置の補正を行う。立ち入り禁止区域には専用ロープ等を使用し、ロープ内部に例えば50cm間隔でICタグを埋め込み、自動芝刈り機の先端に取り付けたRFIDアンテナでICタグの情報を読み取る。
【0028】
図7は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の移動パターンを説明するための図面であり、図8は、図7に示す移動パターンの動作説明図である。
【0029】
図7を参照すると、自動芝刈り機1の移動パターンは、後述するティーチング機能により、先ず移動経路をトレースしてそのルートを記憶し、次回の自律走行時に記憶した移動経路(ティーチングデータ)に基づき自動で芝刈り機1を作動させる。移動ルートはGPS受信機11等により取得した地図座標に基づき記憶させるか、或いは地図からその外周を指定することでその内側の最適ルートを自動計算させて取得する。
【0030】
図8を参照すると、自動芝刈り機1の起動時にGPS受信機11からのRTK−GPS受信データより現在地を取得する。GPS受信が不可能な場合は、予めPC(パーソナルコンピュータ)等により位置、進行方向等の情報を編集してメモリカード等に記録し、これを自動芝刈り機1に記憶される地図データ上に転送し、通過ポイント(目標地点)の座標データを記憶した移動パターンを利用して移動ルートをトレースする。
【0031】
RTK−GPSの場合、起動時に測位まで5〜10分程度の時間を要することから、何らかの理由によりGPSデータが途絶えた場合、自動芝刈り機1の動作停止状態が続いてしまうことになるため、GPS信号が途絶えた場合でも緯度経度のデータを取得できるようにジャイロセンサ12により方位角を取得し、エンコーダ33、35、37から取得した回転数及び回転差を利用して方位及び移動距離データを作成する。これにより無人作業も可能になり、防水構造を採用した場合は雨天の利用も可能になる。
【0032】
移動時は、加速度センサ14及びジャイロセンサ12からのデータを積分して連続記憶させ、自動芝刈り機1の現在位置を求めて記憶された座標とのずれを補正するように自動芝刈り機1を移動させる。このとき、エンコーダ33、35、37からのパルスをカウントすることで移動距離を求めて移動データの精度を高める。また、地磁気センサ13によってもそのずれを補正する。自動芝刈り機1のモニタ画面に表示される地図画面には、地図データと共に補正されたその走行軌跡が表示される。
【0033】
図9は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の移動パターンを処理するための説明図であり、図10は、図9に示す移動パターンを処理する演算処理部の概略構成図である。図11は、図10に示す移動コマンドによる車体の動きを説明するための図面であり、図12は、図10に示す演算処理部の構成図である。
【0034】
図9を参照すると、先ず、予めPC(パーソナルコンピュータ)等により地図データを基に位置、進行方向等の情報を編集して通過ポイントの座標データを記憶した移動パターンを作成し、複数の移動目標地点を設定する。その際、地図からその外周を指定することでその内側の最適ルートを自動計算させるようにしてもよい。自動ルートの作成の際は、予め障害物の位置座標とその範囲を設定し、障害物を避けて移動ルートを設定する。なお、最適化モデルについての説明は省略する。作成された移動パターンはメモリカード等を用いて自動芝刈り機1に転送し記憶させる。自動芝刈り機1は、現在の移動目標地点と次の移動目標地点との間を移動する動作を繰り返すことで移動経路をトレースする。
【0035】
図10を参照すると、自動芝刈り機1の演算処理部は、次の移動目標地点を設定し、各種センサ及びエンコーダ33、35、37からの情報を基に目標地点に向けて駆動輪を制御するための駆動軸移動コマンドをモータ制御部に伝達する。
【0036】
図11を参照すると、モータドライバ31は、移動コマンドを受信して駆動輪又は方向舵を駆動して進行方向を定める。本実施形態では、図11に示すように方向舵はコントロールせず駆動輪のみで後輪タイヤの向きを変えて方向を定める。
【0037】
図12を参照すると、演算処理部は、RTK−GPS受信機11から緯度経度データ111、加速度センサ14からX、Y、Z加速度データ131、ジャイロセンサ12及び地磁気センサ13から方位データ121をそれぞれ移動方向取得部215に入力し、エンコーダ33、35、37からの走行情報を基に補正して自動芝刈り機1の現在位置及び移動方向を取得する。演算処理部は、設定された移動目標地点の教示データ211と移動方向取得部215で取得した現在のデータ値を目的地計算部212で比較演算して制御コマンドを生成し、サンプリング部213で進行方向の水平成分(X軸方向)と垂直成分(Z軸方向)を進行方向と直交するY軸のピッチ角により分解して傾斜成分による距離誤差を補正し、積分器214により一旦距離又は速度成分に変換してエンコーダ33、35、37からの走行情報を基に補正し、再度サンプリング部311でサンプリングして舵角・モータ出力部321に伝達する。移動位置に誤差が生じている場合は移動目標値に近づくように、左右の駆動軸モータに回転差を与えて移動方向を修正する。相対方位は左右の駆動軸の回転数をエンコーダ33、35、37から取得して求めると共に、エンコーダ33、35、37から取得したデータを補正値として使用する。
【0038】
図13は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の動作概要を示すフロー図であり、自動芝刈り機1全体の処理を司るCPU2の処理フロー図である。
【0039】
図13を参照すると、先ず、CPU2は「初期設定処理」を行う(ステップS101)。初期設定処理における初期化処理としては、CPU設定として、ポート設定、インターロック関連の設定、RS232C送受信割り込み設定、インターバルタイマ設定(10ms)を行う。各処理で使用する変数の初期化処理の対象としては、フラグ類として、モード開始フラグ、ティーチング完了フラグ、CPU1及び2、ジャイロセンサ、M(モータ)コントローラ等の間の通信タイムアウトフラグ、GPSステータスフラグ、ジャイロステータスフラグ、禁止区域を示すRFID等によるUターン停止フラグ、例えば初期値=1(待機)、動作中=0、センサ異常=1(待機)とする動作状態フラグ等、カウンタ類として、CPU1及び2、ジャイロセンサ、M(モータ)コントローラ等の間の通信タイムアウト判定カウンタ、GPS異常カウンタ、ジャイロステータス異常カウンタ等、データ類として、セルフ状態、ティーチングデータ数、ティーチングデータ、緯度経度、左右回頭(回頭:自動芝刈り機の先頭を目標位置方向に向ける操作)、芝刈り、カッティング角度、GPS目標方位角等がある。なお、本実施形態では、CPU1、2、GPS、ジャイロセンサ、M(モータ)コントローラ等の間の通信にRS232Cを使用しているが、USB等のシリアル通信や他の通信プロトコルを使用してもよい。また、本実施形態では制御部の処理をCPU1、2に分担させて行っているが、これらは、一つのCPUで構成しても良いし、DSPやASICを組み合わせることや、更にこれらを一つのチップに内蔵したもの等、様々な構成の演算・制御部を用いて構成することができる。
【0040】
初期設定処理後、「セルフチェック」を行い(ステップS102)、セルフチェックが正常に行われたか否かを判断し(ステップS103)、正常であればセルフ状態フラグを正常にセットし(ステップS105)、異常を検出した場合はセルフチェックで判定した状態(アラーム通知)をCPU1へ通知し(S104)、異常が取り除かれるまで監視を行い他の動作を行なわずにセルフチェックを続行する。セルフチェックが正常に終了した場合はCPU1へイニシャル完了通知を行い(ステップS106)、セルフチェックと略同様の項目の監視を継続する「状態監視」に移行し(ステップS107)各動作モード開始待ちに移行する。動作モード開始待ちの間に状態が正常であるか否かを判断し(ステップS108)、正常であれば動作モードに応じて(ステップS109)「自動芝刈りモード」(ステップS111)、「ティーチングモード」(ステップS110)、「手動・移動モード」(ステップS112)に移行し、状態監視を継続する。動作モードが変更された場合は、変数の初期化を実施する。状態異常を検出した場合は動作モードに移行せず状態監視を継続する。
【0041】
割り込み処理としては、ジャイロセンサ情報の受信(例えば10ms毎)、CPU1を介してGPSデータ(例えば50ms毎)、モード状態、他のセンサ状態、ティーチング関連の受信、駆動M(モータ)及び芝刈りM(モータ)の状態をエンコーダ情報から取得したコマンドデータの受信がある。
【0042】
図14は、図13に示すセルフチェックの処理フロー図である。
【0043】
図14を参照すると、「セルフチェック」は、インターロック機能と各センサポート(I/Oポート:IN)を監視して正常であることを確認する。監視項目としては、非常停止SW(スイッチ)、リフトセンサ、チルトセンサ、衝突センサ(加速度センサ)がある。インターロック機能及びセンサポートが正常であるか否かを判断し(ステップS132)、正常であればI/Oを介してモータサーボ機能をONにし(ステップS133)、異常を検出した場合は該当する異常フラグをセットし、モータサーボ機能をOFFにして(ステップS135)次のチェック処理(ステップS136)に移行する。正常であるとモータサーボ機能をONにし、500msのウェイト(ステップS134)後にRS232Cの通信チェックを行い、ジャイロ機能をスタートして受信データのステータスが正常であるかのチェックを行い、駆動モータ及び芝刈りモータに対してモータ回転数制御パラメータ要求に対する応答がある事及びモータサーボ機能がONである事を確認し(ステップS136)、作業領域のRAMチェックを行い(ステップS137)、図13のメインルーチン(ステップS103)に戻る。
【0044】
図15は、図13に示す状態監視の処理フロー図であり、図16は、図15に示す状態監視の割り込み処理フロー図である。
【0045】
図15を参照すると、「状態監視」は、セルフチェックと同様、インターロック機能と各センサポートを監視して正常であることを確認する。監視項目は、非常停止SW、リフトセンサ、チルトセンサ、衝突センサである。インターロック機能及びセンサポートの状態に変化がなく且つ状態が正常であるか否かを判断し(ステップS202)、状態に変化がなく且つ状態が正常であれば、セルフチェックで得られたフラグ等の状態データをセットし(ステップS203)、ティーチングが開始されたか(ステップS206)自動芝刈りが開始されたか(ステップS207)を判断する。状態に変化があるか或いは状態に異常を検出した場合は該当する異常フラグをセットした後、駆動モータ及び芝刈りモータを停止してモータサーボ機能をOFFにし(ステップS204)、セルフチェックで得られた状態データをセットし(ステップS205)、ティーチングが開始されたか(ステップS206)自動芝刈りが開始されたか(ステップS207)を判断するステップに移行する。
【0046】
ティーチング又は自動芝刈りが開始されると、ジャイロセンサから受信したデータを規定値と比較してピッチ及びロールを監視すると共に、駆動モータ及び芝刈りモータの回転停止、逆転を含む回転状態をエンコーダからの情報により監視する(ステップS208)。ジャイロ機能及びモータ回転の状態に変化がなく且つ状態が正常であるか否かを判断し(ステップS209)、状態に変化がなく且つ状態が正常であれば、セルフチェックで得られた状態をセットする(ステップS203)と共に、セルフチェックにおける状態データに変化があったか否かを判断する(ステップS213)。ジャイロ機能及びモータ回転の状態に変化があるか或いは状態に異常を検出した場合は該当する異常フラグをセットした後、駆動モータ及び芝刈りモータを停止してモータサーボ機能をOFFにし(ステップS211)、セルフチェックで得られた状態データをセットする(ステップS212)と共に、セルフチェックにおける状態に変化があったか否かを判断するステップS213に移行する。
【0047】
図16を参照すると、駆動モータ及び芝刈りモータの回転状態を監視するステップS208は、RS232Cによる100msのインターバル割り込みにより、エンコーダの情報を基にモータ回転中か否かを判断し(ステップS231)、モータ回転中であればそのエンコーダ値を取得してCPU1に送信し、動作状態フラグを動作中にセットして元の処理に戻る。モータ停止中と判断した場合は終了フラグをセットして元の処理に戻る。ここでRS232Cの受信割り込みを説明すると、モータ制御の駆動輪に連動したエンコーダ値を取得し(ステップS251)、エンコーダより得られたモータ回転状態をセットして(ステップS252)異常があったか否かを判断する(ステップS253)。正常なモータ回転状態であればそのまま元の処理に戻り、異常と判断した場合は該当する異常フラグをセットした後、駆動モータ及び芝刈りモータを停止してモータサーボ機能をOFFにし(ステップS254)元の処理に戻る。
【0048】
再び図15を参照すると、セルフチェックにおける状態と比較して変化がなく且つセルフチェックが正常であれば(S214)、動作状態が待機中か否かを判断する(ステップS215)。動作状態が待機中であれば、手動・移動モードであるか否かを判断し(ステップS217)、動作状態が進行中あるか或いは手動・移動モードであればモータサーボ機能をONにし、CPU1へセルフチェックの状態を通知し(S218)元の処理に戻る。セルフチェックの状態に変化がない場合はそのまま元の処理に戻り、セルフチェックの状態が異常の場合は該当する異常フラグをセットしてCPU1へセルフチェックの状態を通知し(S218)元の処理に戻る。なお、手動・移動モードでは動作状態フラグは使用しない。
【0049】
図17は、図13に示すティーチング処理の概略フロー図であり、図18は、図17に示すティーチング処理の割り込み処理フロー図である。
【0050】
図17を参照すると、「ティーチング処理」が開始されると(ステップS301)、センサデータが正常か否かを判断した(ステップS302)後、ティーチング指示に変化があったか否かを判断する(ステップS303)。「ティーチング処理」を終了する場合は(ステップS304)、ジャイロセンサからのデータ受信を停止して(ステップS305)元の処理に戻り、「ティーチング処理」を行わない場合はそのまま元の処理に戻る。センサデータの異常を検出した場合は、センサの種類を識別して該当する異常フラグをセットした(ステップS306)後、駆動モータ及び芝刈りモータを停止し(ステップS307)、動作状態フラグを待機状態にセットして(ステップS308)モータサーボ機能をOFFにし(ステップS309)元の処理に戻る。異常が発生した場合は動作を停止して異常が取り除かれるまで待機する。ティーチング指示に変化がなかった場合もそのまま元の処理に戻る。監視するセンサを機能別に挙げると、赤外線レーザー等を用いた障害物センサ及び距離センサ、レインセンサ等がある。センサ異常により待機状態にセットされた動作状態フラグは、CPU1からデータを受信した時に解除する。
【0051】
ティーチング指示に変化があると、動作状態が待機常態か否かを判断し(ステップS311)、待機状態の場合はモータサーボ機能をONにして駆動モータ及び芝刈りモータを始動させた後、停止/前進/回頭動作に移行する(ステップS313)。稼動状態の場合はそのまま停止/前進/回頭動作ステップS313に移行する。
【0052】
回頭動作の場合は駆動モータへ回頭コマンドを送信する。このとき回頭レベルを0にセットし、停止時には回頭開始から回頭停止までの現在の方位角の差をCPU1へ送信する(ステップS316)。回頭コマンドは左右で送信する回頭角速度値を変更することもある。前進動作の場合は駆動モータへ前進コマンドを送信する。このとき回頭レベルを0にセットし、停止時には前進前の方位角と現在の方位角の差をCPU1へ送信する(ステップS315)。停止動作の場合は駆動モータへ停止コマンドを送信し、ジャイロセンサで取得した方位角を保存する。各コマンドの送信は条件が変化した時に1回送信する。
【0053】
その後、停止/前進/回頭動作に対応した芝刈り動作ON/OFFに応じ(ステップS317)、前進/回頭動作に対応した芝刈り動作ONの場合は芝刈りモータへONコマンドを送信して(ステップS318)元の処理に戻り、停止動作に対応した芝刈り動作OFFの場合は芝刈りモータへOFFコマンドを送信し(ステップS319)、動作状態フラグを動作中にセットして(ステップS320)元の処理に戻る。ティーチング処理中は、CPU1からのGPSデータ受信及び他のRS232Cのデータを割り込みにより受け付ける。
【0054】
図18を参照すると、図13に示した動作モードの変更は割り込み受信により受け付けられ、ティーチングモードが開始されると、該当するモード開始フラグをONにセットし、ジャイロセンサからのデータ受信を開始する(ステップS331)。ティーチングモードが中断されると、該当するモード開始フラグをOFFにセットし(ステップS332)、ティーチングモードの再開によりモード開始フラグを再びONにセットする(ステップS333)。ティーチングモードの終了時は、モータ停止コマンドを送出してモータ開始フラグをOFFにセットして(ステップS334)元の処理に戻る。各動作モードの変更は、タッチパネルによる操作、或いは基地局からの指示によりイベント割り込みを発生させることで該当する動作モードに移行する。
【0055】
図19は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機のティーチング処理シーケンスを示す図面である。
【0056】
図19を参照すると、CPU2は、CPU1から開始、終了、停止、又は中断のいずれかのティーチングモード指示コマンドを受信し、受け付け可能であればACK応答を返し、そうでない場合はNACK応答を返す。CPU2は、ティーチングモードを開始するとジャイロセンサにデータ送信開始要求を行い、ジャイロデータの受信を開始する。これに応じてジャイロセンサは指定間隔でデータをCPU2に送信する。ティーチングモード停止の場合は、ジャイロセンサにデータ停止要求を行い。ジャイロデータの受信を停止する。
【0057】
ティーチングモードが開始されると、CPU1は、前進開始をCPU2に要求しACK又はNACK応答を待つ。CPU1から前進開始要求を受信したCPU2は、駆動モータコントローラに前進速度に応じた所定比率のPWM(Pulse Width Modulation)信号出力コマンドを送信して自動芝刈り機1を前進させると共にCPU1にACK応答を返す。また、併せて、CPU2は停止方位角との差の移動角度をCPU1に通知してACK又はNACK応答により確認する。CPU2は、CPU1から停止コマンドを受信すると、駆動モータコントローラにPWM信号出力を停止するコマンドを送信して自動芝刈り機1を停止させると共にCPU1にACK応答を返し、ジャイロ受信で得られたジャイロ方位角を保存する。なお、以下に説明する回頭中には移動角度送信は行わない。
【0058】
CPU1から右回頭(右回転による回頭)指示コマンドX(1、2、3)を受信したCPU2は、駆動モータコントローラに右回頭指示コマンドX(1、2、3)に対応した回頭角速度コマンドを出力して自動芝刈り機1を回頭させると共にCPU1にACK応答を返す。CPU2は、CPU1から右回頭停止コマンドを受信すると、駆動モータコントローラに回頭角速度0のコマンドを出力して自動芝刈り機1の回頭を停止させると共にCPU1にACK応答を返し、併せて停止方位角との差である回頭開始から回頭停止までの移動角度を通知してACK又はNACK応答を待つ。左回頭の場合も上記右回頭と同様の処理を行う。
【0059】
CPU1から芝刈りONコマンドを受信すると、CPU2は芝刈りモータコントローラにカッターの回転速度に応じた所定比率のPWM信号出力コマンドを送信して自動芝刈り機1に芝刈り動作を開始させると共に芝刈りモータコントローラの出力制御タイマーをスタートさせ、CPU1にACK応答を返す。所定時間後に出力制御量を変更しカッターの回転速度を所定の回転数にする。CPU1から芝刈りOFFコマンドを受信すると、CPU2は芝刈りモータコントローラにPWM信号出力を停止するコマンドを送信してカッターの回転を停止させて自動芝刈り機1の芝刈り動作を停止させると共に芝刈りモータコントローラの出力制御タイマーを停止させ、CPU1にACK応答を返す。
【0060】
図20は、図13に示す自動芝刈りモードの概略フロー図であり、図21は、図20に示す自動芝刈りモードの割り込み処理フロー図である。
【0061】
図20を参照すると、自動芝刈りモードは、先ずモード開始フラグを確認して(ステップS401)自動芝刈りモードが開始されていない場合はそのまま元の処理に戻り、自動芝刈りモードが開始されると、ティーチングデータをCPU1から取得して目標地点単位でRAMへ展開し、ティーチング処理によるデータ受信が完了したか否かを判断して(ステップS402)ティーチングデータの受信が完了すると、「GPSデータ受信処理」及び「ジャイロデータ受信処理」(ステップS403)に移行する。ティーチングデータの受信が未完了の場合は、先ずCPU1へ基準点のデータを要求して(ステップS404)「基準点受信処理」(ステップS405)を行い、引き続きCPU1へティーチングデータを要求して(ステップS406)「ティーチングデータ処理」(ステップS407)を行う。ティーチングデータが正常か否かを判断し(ステップS408)、ティーチングデータが正常に取得できなかった場合は、CPU1へ異常終了を通知し(ステップS414)、自動芝刈りモードのモード開始フラグをOFFにし、目標カウンタをリセットして(ステップS413)元の処理に戻る。ティーチングデータが正常であると、ティーチングデータ受信完了フラグをONにして(ステップS409)ジャイロデータの受信を開始し(ステップS410)、「GPSデータ受信処理」及び「ジャイロデータ受信処理」ステップS403に移行する。「GPSデータ受信処理」及び「ジャイロデータ受信処理」が終了すると(ステップS411)、CPU1へ正常或いは異常終了したことを通知し(ステップS412)、モード開始フラグをOFFにし、目標カウンタをリセットして(ステップS413)元の処理に戻る。「GPSデータ受信処理」及び「ジャイロデータ受信処理」が終了していない場合はそのまま元の処理に戻る。
【0062】
図21を参照すると、図18を参照して説明したように、図13に示した動作モードの変更は割り込み受信により受け付けられ、自動芝刈りモードが開始されると、モード開始フラグをONにセットし、目標カウンタをリセットする(ステップS431)。自動芝刈りモードが中断されると、モード開始フラグをOFFにセットし(ステップS432)、自動芝刈りモードの再開によりモード開始フラグを再びONにセットする(ステップS433)。自動芝刈りモードの終了時は、モータ停止コマンドを送出してモータ開始フラグをOFFにセットし、目標カウンタをリセットして元の処理に戻る(ステップS434)。
【0063】
図22は、図20に示すGPSデータの処理フロー図である。
【0064】
図22を参照すると、「GPSデータ受信処理」は、センサデータが正常か否かを判断した(ステップS501)後、GPSデータを正常に受信できたか否かを判断する(ステップS508)。センサデータの異常を検出した場合は、センサの種類を識別して該当する異常フラグをセットし(ステップS502)、駆動モータ及び芝刈りモータを停止してモータサーボ機能をOFFにし(ステップS509)、動作状態フラグを待機状態にセットして(ステップS510)元の処理に戻る。異常が発生した場合は動作を停止して異常が取り除かれるまで待機する。GPSデータを正常に受信できなかった場合も、駆動モータ及び芝刈りモータを停止してモータサーボ機能をOFFにし(ステップS509)、動作状態フラグを待機状態にセットして(ステップS510)元の処理に戻る。センサの種類を識別するステップS502でRFIDリーダがICタグの情報を検出した場合は、Uターン停止フラグを確認し(ステップS503)、Uターンしない場合はそのまま元の処理に戻り、Uターン停止の場合は、Uターン停止フラグをセットして目標方位を+180度にセットし(ステップS504)、駆動モータへ送信する回頭角速度を計算して(ステップS505)駆動モータへ計算した回頭角速度を送信し(ステップS506)動作状態フラグを動作中にセットして元の処理に戻る。
【0065】
GPSからデータを正常に受信すると、動作状態が待機中であるか否かを判断し(ステップS511)、待機中であればモータサーボ機能をONにして駆動モータ及び芝刈りモータを始動させ(ステップS512)、稼働中であればそのまま、移動目標地点までの距離と方位を計算し(ステップS513)、回頭角速度を計算して駆動モータへ送信して自動芝刈り機1の先頭を次の目標地点へ向け(ステップS514)、現在の位置を確認しながら目標地点に到達したかどうかを判定する(ステップS515)。目標地点に到達したか否かを判断し(ステップS516)、目標地点に到達していなければ、駆動モータへの回頭角速度を計算して(ステップS522)駆動モータへ計算した回頭角速度を送信し(ステップS523)、動作状態フラグを動作中にセットして元の処理に戻る。最終目標地点に到達するまでは、次の移動目標地点を示すインデックスを更新して(ステップS520)移動目標地点までの距離と方位を計算し(ステップS521)、駆動モータへの回頭角速度を計算して(ステップS522)駆動モータへ計算した回頭角速度を送信して次の目標地点へ方向を変え(ステップS523)、動作状態フラグを動作中にセットして元の処理に戻る。最終目標地点に到達すると(ステップS517)、駆動モータを停止してモータサーボ機能をOFFにし(ステップS518)、終了フラグを正常状態にセットして(ステップS519)元の処理に戻る。GPSデータ受信処理中は、RS232Cデータを割り込みにより受け付けCPU1からセンサ状態を受信する。
【0066】
図23は、図20に示すジャイロデータの処理フロー図である。
【0067】
図23を参照すると、「ジャイロデータ受信処理」は、ジャイロデータを正常に受信したか否かを判断し(ステップS601)、規定回数以上の異常データを連続して受信した場合等正常にジャイロデータを受信できなかった場合は、異常カウンタを更新し(ステップS602)、異常の場合(ステップS603)、駆動モータを停止してモータサーボ機能をOFFにし(ステップS604)、終了フラグを異常状態にセットして(ステップS605)元の処理に戻る。ジャイロデータを正常に受信すると、方位を補正する計算を行って異常カウンタを0にセットする(ステップS606)。補正が実施されない場合も、Uターン停止フラグを確認し(ステップS608)、Uターンしない場合はそのまま元の処理に戻り、Uターン停止の場合は、駆動モータを停止してモータサーボ機能をOFFにし(ステップS609)、終了フラグを異常状態にセットして(ステップS610)元の処理に戻る。方位補正を実施すると、動作状態を確認し(ステップS611)、動作中でなければそのまま元の処理に戻り、動作中の場合は、駆動モータへ送信する回頭角速度を計算して(ステップS612)駆動モータへ計算した回頭角速度を送信して(ステップS613)元の処理に戻る。ジャイロデータ受信処理中は、RS232Cデータを割り込みにより受け付けCPU1からセンサ状態を受信する。
【0068】
図24は、本発明の一実施形態による自動芝刈り機の自動芝刈り処理シーケンスを示す図面である。
【0069】
図24を参照すると、CPU2は、CPU1から開始、終了、停止、又は中断のいずれかの自動芝刈りモードの指示を受信し、受け付け可能であればACK応答を返し、そうでない場合はNACK応答を返す。CPU2は、自動芝刈りモードを開始するとジャイロセンサにデータ送信開始要求を行い、ジャイロデータの受信を開始する。自動芝刈りモード停止の場合は、ジャイロセンサにデータ停止要求を行い。ジャイロデータの受信を停止する。
【0070】
芝刈りの準備ができると、CPU2は、CPU1に基準点の送信を要求してACK又はNACK応答を待つ。CPU1から基準点の通知を受けたCPU2は、受信した基準点を座標変換(「DDmm.Mmmmm」を「DD.ddddddddddd」に変換)してオフセット座標を元のWGS−84世界測地系座標に戻し、CPU1にACK応答を返す。CPU1は、CPU2からティーチングデータが要求されると、ACK応答を返してティーチングデータをCPU2に送信する。CPU1はCPU2からのACK応答を受け、次の目標地点のティーチングデータの送信を繰り返す。ティーチングデータの送信は、例えば90ms毎に繰り返される。CPU2は、取得したティーチングデータをシーケンスNo(ナンバー)順にRAMへ保存する。CPU2は、ティーチングデータの受信を全て完了すると、完了通知をCPU1へ送信してACK応答を待ち、ACK応答を受けてティーチングフラグをOKにセットする。
【0071】
芝刈り動作が開始されると、CPU2は、CPU1から各センサの状態を受信してデータが正常な場合は、駆動モータコートローラ及び芝刈りモータコントローラにそれぞれモータ回転開始コマンドを送信して自動芝刈り機1を作動させ、CPU1にACK応答を返す。データが異常の場合は、180度方向転換コマンドを送出した後、駆動モータコートローラ及び芝刈りモータコントローラにそれぞれモータ停止コマンドを送信して自動芝刈り機1を停止させ、CPU1にNACK応答を返す。またCPU1からGPSデータを、ジャイロセンサからジャイロデータをそれぞれ受信し、GPSデータにより目標地点への距離と方位を計算して駆動モータコントローラへ通知すると共に、ジャイロ受信データの方位角により移動方向を調節し、ジャイロ方位角とGPS方位とのずれを計算し、駆動モータコントローラへ回頭角度を送信して方向を調整し、自動芝刈り機1の先頭を目標地点へ向けて移動する。最終目標地点に到達するまで、上記動作を繰り返し、最終目標地点に到達すると、CPU2は、駆動モータコントローラ及び芝刈りモータコントローラにそれぞれモータ回転停止コマンドを送信してCPU1に終了通知をし、ACK又はNACK応答を待つ。CPU2は、CPU1からACK応答を受けてジャイロセンサに送信停止要求を送信する。
【0072】
図25は、図13に示す手動・移動処理の概略フロー図であり、図26は、図25に示す手動・移動処理の割り込み処理フロー図である。
【0073】
図25を参照すると、タッチパネル等の操作や基地局からの指示により手動による移動操作、即ち「手動・移動処理」が開始されると(ステップS701)、ティーチング指示に変化があったか否かを判断し(ステップS702)、「ティーチング処理」を行わない場合はそのまま元の処理に戻る。ティーチング指示に変化があると停止/前進/回頭動作に移行する(ステップS703)。稼動状態の場合はそのまま停止/前進/回頭動作ステップS313に移行する。
【0074】
回頭動作の場合は駆動モータへ回頭コマンドを送信する(ステップS706)。回頭コマンドは左右で送信する回頭角速度値を変更することもある。前進動作の場合は駆動モータへ前進コマンドを送信すると共に、回頭角速度を0にセットして駆動モータへ回頭停止コマンドを送信する(ステップS705)。停止動作の場合は駆動モータへ停止コマンドを送信する。
【0075】
その後、停止/前進/回頭動作に対応した手動芝刈り動作ON/OFFに応じ(ステップS707)、前進/回頭動作に対応した手動芝刈り動作ONの場合は芝刈りモータへONコマンドを送信して(ステップS708)元の処理に戻り、停止動作に対応した手動芝刈り動作OFFの場合は芝刈りモータへ停止コマンドを送信して(ステップS709)、元の処理に戻る。手動・移動処理中は、CPU1からのGPSデータ受信及び他のRS232Cのデータを割り込みにより受け付ける。
【0076】
図26を参照すると、図13に示した動作モードの変更は割り込み受信により受け付けられ、手動・移動モードが開始されると、モード開始フラグをONにセットし、ティーチング指示データをクリアする(ステップS731)。手動・移動モードが中断されると、モード開始フラグをOFFにセットし(ステップS732)、手動・移動モードの再開によりモード開始フラグを再びONにセットする(ステップS733)。手動・移動モードの終了時は、モータ停止コマンドを送出してモータ開始フラグをOFFにセットして(ステップS734)元の処理に戻る。
【0077】
以上、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 自動芝刈り機
2 カッティングユニット
11 GPS受信機
12 ジャイロセンサ
13 地磁気センサ
14 加速度センサ
15 モニタランプ
16 アラーム
17 障害物センサ
18 全方位カメラ
19 RFIDリーダ
21 制御ユニット(演算処理部)
22 位置検出ユニット
23 リフトセンサ
24 チルトセンサ
25 インターロック部
26 充電コネクタ
27 バッテリ
28 安定化電源(電圧検出部)
29 サーマルプロテクタ
31 モータドライバ
32、34、36 モータ
33、35、37 エンコーダ
111 緯度経度データ
121 方位データ
131 X、Y、Z加速度データ
201 演算処理部
211 教示データ
212 目的地計算部
214 積分器
213、311 サンプリング部
215 移動方向取得部
216 変位検出部
321 舵角・モータ出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも位置検出手段を含む各種センサとモータ制御の駆動輪とを有し、学習機能を担う制御ユニットを備えた自律走行型の自動芝刈り機であって、
前記制御ユニットは、
前記センサの情報を基に前記駆動輪を制御して目標地点に移動させるためのドラム制御部と、
走行路面の傾斜に応じて車軸を動かし車体の平衡を保つ車体平衡部と、
前記走行路面に沿ってカッティングユニットを追従させて芝刈りを行うカッティング部と、
前記センサの情報を基に各ユニットを制御するための各種演算及び該演算に対応する処理を行う演算処理部と、を有することを特徴とする自動芝刈り機。
【請求項2】
前記演算処理部は、加速度センサにより検出した水平(X、Y方向)軸及び垂直(Z方向)軸の加速度のうちの進行方向の水平成分と垂直方向の成分を、ジャイロセンサにより検出した水平(X、Y方向)軸及び垂直(Z方向)軸の角速度より求めた角度のうちの進行方向と直交する角度成分により分解し、該分解したそれぞれの成分を積分することで移動経路の高低差による影響を補償した速度と距離を求めることを特徴とする請求項1に記載の自動芝刈り機。
【請求項3】
前記車体平衡部は、前記ジャイロセンサで検出した角速度から前記演算処理部により算出した車体の傾きに応じて車軸を動かし車体の平衡を保つことを特徴とする請求項2に記載の自動芝刈り機。
【請求項4】
前記カッティング部は、前記ジャイロセンサで検出した角速度から前記演算処理部により算出した傾きに応じて前記カッティングユニットの各軸に設けた可動機構を作動させて走行経路の傾斜面に追従させる路面追従機構を備えることを特徴とする請求項2に記載の自動芝刈り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−105557(P2012−105557A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255153(P2010−255153)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(503320968)株式会社オリジナルソフト (4)
【Fターム(参考)】