説明

蓄電素子の接続構造および蓄電素子モジュール

【課題】組立時の位置合わせが良好に行え、金属バーの締めつけトルクを大きくでき、しかも、放熱性も良好な蓄電素子の接続構造、および当該接続構造を備える蓄電素子モジュールを提供する。
【解決手段】複数の蓄電素子1を金属バー2で導電接続しつつ回路基板3に固定してある蓄電素子の接続構造であって、前記蓄電素子1の端子1aに螺合する素子側螺合部と、その素子側螺合部と同軸に形成され前記回路基板側の螺合部材と螺合する基板側螺合部とを有する支柱10を備えると共に、前記支柱10と前記端子1aとの間に前記金属バー2を挟持しつつ前記素子側螺合部が前記端子1aと螺合すると共に、前記支柱10と前記螺合部材との間に前記回路基板3を挟持しつつ前記基板側螺合部が前記螺合部材22と螺合してある蓄電素子の接続構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を金属バーで導電接続しつつ回路基板に固定するための蓄電素子の接続構造、および当該接続構造を備える蓄電素子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサや蓄電池などの蓄電素子は、その蓄電原理に応じて、耐電圧や充電電圧などが自ずと決定される。例えば、電気二重層キャパシタの場合、電解液の分解電圧との関係から、耐電圧が2.5〜3.0V程度のものが多く、それ以上の高電圧に対応するには、その耐電圧に見合った数の蓄電素子を直列に接続し、モジュール化する必要がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
蓄電素子をモジュール化する場合、蓄電素子の電圧を均等化する回路などを組み合わせる必要があり、当該回路を構成する電子部品を実装した回路基板と蓄電素子とが導電接続される。また、蓄電素子間には大きな電流が流れるため、ブスバー等の金属バーによって蓄電素子間が導電接続される。
【0004】
従来、このような蓄電素子の接続構造としては、図4に示すように、まず、取付穴を有する金属バー2を用いて、ネジ1aにより複数の蓄電素子1を導電接続しつつ固定した後、金属バー2に支柱20をネジ21で取り付け、この支柱20に対して、回路基板3をネジ22により取り付けた構造が知られていた。
【0005】
しかしながら、この構造では、金属バー2の支柱20のピッチを精度良く組み立てないと、回路基板3の取付穴3aとの位置ズレが生じるため、組立時にピッチ調節をしながら、ネジ1aの締め付けを行い、更にネジ22によって金属バー2を回路基板3に取り付ける必要があった。つまり、金属バー2の支柱20の位置合わせを行うために、非常に煩雑な作業が必要となっていた。
【0006】
また、図5に示すように、複数の蓄電素子1の各端子1aに対して、金属バー2及び回路基板3をネジ22により締めつけて、取り付けた構造が存在する。この構造によると、上記のような位置合わせの問題が少ない。
【0007】
しかしながら、この構造では、金属バー2と蓄電素子1の端子1aとの導電接続を確実にするために、ネジ22による締めつけトルクを大きくする必要があるが、余り締めつけトルクを大きくすると、回路基板3に割れが生じる場合があった。また、回路基板3と金属バー2とが接触した構造となるため、特に金属バー2からの放熱が悪くなり、回路の温度が上がることにより、動作精度が悪化するという問題があった。
【非特許文献1】岡村廸夫「電気二重層キャパシタと蓄電システム(第2版)」日刊工業新聞社(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、組立時の位置合わせが良好に行え、金属バーの締めつけトルクを大きくでき、しかも、放熱性も良好な蓄電素子の接続構造、および当該接続構造を備える蓄電素子モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
【0010】
即ち、本発明の蓄電素子の接続構造は、複数の蓄電素子を金属バーで導電接続しつつ回路基板に固定してある蓄電素子の接続構造であって、前記蓄電素子の端子に螺合する素子側螺合部と、その素子側螺合部と同軸に形成され前記回路基板側の螺合部材と螺合する基板側螺合部とを有する支柱を備えると共に、前記支柱と前記端子との間に前記金属バーを挟持しつつ前記素子側螺合部が前記端子と螺合すると共に、前記支柱と前記螺合部材との間に前記回路基板を挟持しつつ前記基板側螺合部が前記螺合部材と螺合してあることを特徴とする。
【0011】
本発明の蓄電素子の接続構造によると、金属バーを固定する素子側螺合部と同軸に基板側螺合部が形成された支柱を用いて、回路基板を固定するため、金属バーの位置合わせを行う必要がなく、組立時の位置合わせが良好に行え、簡易な作業で組立を行うことができる。また、支柱の素子側螺合部によって金属バーを締め付けた後、別途支柱の基板側螺合部に対して回路基板の締め付けを行えるため、金属バーの締めつけトルクを大きくすることができる。更に、支柱がスペーサとなって、金属バーと回路基板との接触が避けられるため、金属バーからの放熱性も良好となる。
【0012】
上記において、前記支柱の素子側螺合部は雄ネジで構成されていると共に、前記支柱の基板側螺合部は雌ネジで構成されていることが好ましい。蓄電素子の端子は雌ネジを有するものが多く、雄ネジによって支柱の締め付けが可能となり、また、支柱の雌ネジに対して雄ネジの螺合部材を用いて回路基板を取り付けることができる。
【0013】
また、前記回路基板には、前記支柱の雌ネジに対応した位置に長穴が設けられていることが好ましい。これによって、蓄電素子の端子への位置合わせがより容易になり、また、蓄電素子の端子間距離が変化しても、同じ回路基板で対応できるようになる。
【0014】
一方、本発明の蓄電素子モジュールは、複数の蓄電素子と、これを導電接続する金属バーと、前記蓄電素子を固定しつつ導電接続された回路基板と、その回路基板に実装されて電子回路を構成する電子部品とを備える蓄電素子モジュールであって、前記蓄電素子の端子に螺合する素子側螺合部と、その素子側螺合部と同軸に形成され前記回路基板側の螺合部材と螺合する基板側螺合部とを有する支柱を備えると共に、前記支柱と前記端子との間に前記金属バーを挟持しつつ前記素子側螺合部が前記端子と螺合すると共に、前記支柱と前記螺合部材との間に前記回路基板を挟持しつつ前記基板側螺合部が前記螺合部材と螺合してあることを特徴とする。
【0015】
本発明の蓄電素子モジュールによると、本発明の蓄電素子の接続構造を備えているため、上記の如き作用効果により、組立時の位置合わせが良好に行え、金属バーの締めつけトルクを大きくでき、しかも、放熱性も良好な蓄電素子モジュールとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、蓄電素子の接続構造の一例を示す正面図であり、図2は、その接続構造の要部の一例を示す断面図である。
【0017】
本発明の蓄電素子の接続構造は、図1に示すように、複数の蓄電素子1を金属バー2で導電接続しつつ回路基板3に固定してあるものである。蓄電素子1は、回路基板3の回路パターンと導電接続されていても、導電接続されていなくてもよい(即ち、単なる固定でもよい)。また、金属バー2による導電接続は、直列でも並列でもよい。
【0018】
また、回路基板3には、電子回路を構成する電子部品(図示省略)が実装されていてもよく、電圧均等化回路などを構成して蓄電素子モジュールとしてもよい。蓄電素子モジュールについては、後に詳述する。
【0019】
蓄電素子1としては、蓄電機能を有するものであれば、各種のコンデンサ(電気二重層キャパシタを含む)、二次電池など何れでもよい。蓄電素子1のパッケージ形態は何れでも良いが、雌ネジ型の端子1aを有するものが好ましい。
【0020】
金属バー2は、銅、真鍮、アルミニウム等の金属に、必要に応じて貴金属メッキがなされたものが一般に使用され、金属バー2の断面サイズ(厚み,幅)は、使用時の電力(電流)の大きさなどに応じて、適宜決定される。金属バー2の両端には、円穴、長穴、切欠き穴などが設けられる。
【0021】
本発明の蓄電素子の接続構造には、図2に示すような支柱10が使用される。支柱10は、蓄電素子1の端子1aに螺合する素子側螺合部11と、その素子側螺合部11と同軸に形成され回路基板側の螺合部材22と螺合する基板側螺合部12とを有する。本実施形態では、支柱10の素子側螺合部11は雄ネジで構成されていると共に、基板側螺合部12は雌ネジで構成されている例を示す。
【0022】
金属バー2による蓄電素子1同士の導電接続は、支柱10と端子1aとの間に金属バー2が挟持されるように、素子側螺合部11が端子1aと螺合することで行う。このとき、支柱10が、図3(a)に示すような六角ボルト形状や、図3(b)に示すようなドライバーとの係合部13を有していれば、より簡易かつ強力に、支柱10を用いて金属バー2を締めつけることができる。その他、支柱10の本体部14の表面に、凹凸加工を施してもよい。
【0023】
支柱10は、好ましくは回路基板3への導通を行うために、導電性材料が用いられるが、締め付けの際の強度などを考慮すると、真鍮などの金属が好ましい。支柱10の本体部14の高さは、モジュールの高さを考慮すると低い方が好ましいが、十分な放熱性を確保する上で、5〜8mm程度が好ましい。
【0024】
本発明では、複数の蓄電素子1が支柱10を介して回路基板3に固定されるが、その際、支柱10と螺合部材22との間に回路基板3を挟持しつつ基板側螺合部12が螺合部材22と螺合される。本実施形態のように、螺合部材22として雄ネジを用いる場合、雄ネジの頭部と支柱10との間に回路基板3が挟持される。
【0025】
螺合部材22を螺合する際に、支柱10の基板側螺合部12の底面12aに、螺合部材22の先端が突き当たる状態で、回路基板3への固定が適度に行えるような長さの螺合部材22を使用することで、回路基板3を破損することなく、螺合部材22の締め付けによって、金属バー2の増し締めを行うことができる。また、当該増し締めを好適に行えるように、支柱10の基板側螺合部12のネジ径(タップサイズ)を、素子側螺合部11のネジ径(ボルトサイズ)と同等又はそれ以上にするのが好ましい。
【0026】
回路基板3には、支柱10の基板側螺合部12(雌ネジ)に対応した位置に、取付穴3aが設けられているが、取付穴としては長穴が好ましい。長穴を設ける場合の長径方向としては、蓄電素子1の一対の端子1aの配列方向が好ましい。回路基板3は、単層配線基板、両面配線基板、多層配線基板など何れでもよい。
【0027】
なお、図2に示す実施形態では、支柱10の基板側螺合部12は雌ネジで構成されているが、図3(c)に示すように、基板側螺合部12を雄ネジで構成することも可能である。その場合、螺合部材22として雌ネジ(ナット)が用いられる。
【0028】
また、図2に示す実施形態では、基板側螺合部12に対して、回路基板3を介して直接ネジ22で締め付けを行っているが、更に筒状スペーサを介してネジ22で締めつけることで、回路基板3を更に別の回路基板や函体に固定することができる。
【0029】
一方、本発明の蓄電素子モジュールは、以上のような蓄電素子の接続構造を備えるものである。従って、蓄電素子モジュールにおける追加の構成部分についてのみ説明する。
【0030】
本発明の蓄電素子モジュールは、複数の蓄電素子と、これを導電接続する金属バーと、前記蓄電素子を固定しつつ導電接続された回路基板と、その回路基板に実装されて電子回路を構成する電子部品とを備える。
【0031】
電子回路としては、電圧均等化回路、電源安定化回路、高電圧発生回路、充電回路、電圧モニター回路、過電圧防止回路、電流回生回路など、蓄電素子を構成部品又は電源とするものであれば何れでもよい。特に、蓄電素子が電気二重層キャパシタである場合、電圧均等化回路、充電回路、電圧モニター回路などがモジュール化される場合がある。このような電子回路は、直列に接続された各々の蓄電素子に対して、並列に導電接続される。
【0032】
回路基板には、実装される電子部品とともに電子回路を構成する配線パターンが形成される。また、配線パターンは、蓄電素子の取付穴にランド等を有しており、これを介して蓄電素子が電子回路に導電接続される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の蓄電素子の接続構造の一例を示す正面図
【図2】本発明の蓄電素子の接続構造の要部の一例を示す断面図
【図3】本発明の蓄電素子の接続構造の要部の他の例を示す斜視図
【図4】従来の蓄電素子の接続構造の一例を示す正面図
【図5】従来の蓄電素子の接続構造の他の例を示す正面図
【符号の説明】
【0034】
1 蓄電素子
1a 端子
2 金属バー
3 回路基板
3a 取付穴
10 支柱
11 素子側螺合部(雄ネジ)
12 基板側螺合部(雌ネジ)
22 回路基板側の螺合部材(ネジ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電素子を金属バーで導電接続しつつ回路基板に固定してある蓄電素子の接続構造であって、
前記蓄電素子の端子に螺合する素子側螺合部と、その素子側螺合部と同軸に形成され前記回路基板側の螺合部材と螺合する基板側螺合部とを有する支柱を備えると共に、
前記支柱と前記端子との間に前記金属バーを挟持しつつ前記素子側螺合部が前記端子と螺合すると共に、前記支柱と前記螺合部材との間に前記回路基板を挟持しつつ前記基板側螺合部が前記螺合部材と螺合してある蓄電素子の接続構造。
【請求項2】
前記支柱の素子側螺合部は雄ネジで構成されていると共に、前記支柱の基板側螺合部は雌ネジで構成されている請求項1記載の蓄電素子の接続構造。
【請求項3】
前記回路基板には、前記支柱の雌ネジに対応した位置に長穴が設けられている請求項2記載の蓄電素子の接続構造。
【請求項4】
複数の蓄電素子と、これを導電接続する金属バーと、前記蓄電素子を固定しつつ導電接続された回路基板と、その回路基板に実装されて電子回路を構成する電子部品とを備える蓄電素子モジュールであって、
前記蓄電素子の端子に螺合する素子側螺合部と、その素子側螺合部と同軸に形成され前記回路基板側の螺合部材と螺合する基板側螺合部とを有する支柱を備えると共に、
前記支柱と前記端子との間に前記金属バーを挟持しつつ前記素子側螺合部が前記端子と螺合すると共に、前記支柱と前記螺合部材との間に前記回路基板を挟持しつつ前記基板側螺合部が前記螺合部材と螺合してある蓄電素子モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−252792(P2006−252792A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63592(P2005−63592)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000103220)エルナー株式会社 (48)
【Fターム(参考)】