説明

薬剤散布機

【課題】一台の薬剤ホッパと横溝ロール式の繰出部と下方に拡散部とを備えた薬剤散布機は、繰りだされた薬剤を田植機の全幅の範囲で直接土壌に拡散する。ここで、例えば畦際での作業においては、不必要な範囲まで薬剤を散布してしまうことになる。
【解決手段】前記薬剤散布機140において、2台の繰出ロール45L・45Rをそれぞれが独立に回動できるようにクラッチ機構90L・90Rを設け、前記薬剤散布機140の中央部に設けることによって、部分散布を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車両の後部に装着され、機体左右方向に薬剤を散布する薬剤散布機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植え直前の育苗箱に浸透移行性のある粒剤を散布し、移植後まもなく発生する害虫を駆除する箱施薬剤が知られているが、手散布により育苗箱に所定量の薬剤を丁寧に散布するのは非常に煩わしい作業であった。
そこで、田植機の苗載台上方に薬剤散布機を搭載して、該薬剤散布機によって苗マット上に薬剤を散布し、田植えと同時に施薬も行うことのできる作業機が特許文献1で公知となっている。
特許文献1記載の薬剤散布機は、一台の薬剤散布機が二つの苗マットに施薬可能である構成としている。また、該薬剤散布機は、植え付ける前の苗マットに直接薬剤を散布することを特徴としている。
【0003】
一方、一台の薬剤散布機にて田植機の植付け条数分の範囲を散布可能な薬剤散布機については、特許文献2で公知となっている。該薬剤散布機は薬剤散布機の下方に拡散部を設け、田植機の植付け条数分の幅まで薬剤を拡散させることが可能である。また、該薬剤散布機は、土壌に直接薬剤を散布することを特徴としている。
【0004】
ここで、薬剤散布機の薬剤ホッパから粒上の薬剤を繰出す繰出部については、特許文献1において横溝ロール式が公知となっている。
この横溝ロール式とは、ロールの柱方向にいくつかの溝を設けた構造であり、ロールを回転させて溝に入った種子を繰出す。ここで薬剤散布量の調整は、溝の幅やロール回転速度の調整によって行う。つまり、薬剤の大きさや散布量の変化に対応できる適応性の高い特徴がある。
また、横溝ロール式は簡潔な形状のため、収納する繰出部を省体積・軽量化することができる。
【特許文献1】特開2003−88291号公報
【特許文献2】特開平7−123895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、特許文献2の技術は、繰出装置は円形の繰出板の周囲に繰出孔を有する、所謂、目皿式の繰出装置を備えており、左右二つの繰出板を回転させて、薬剤ホッパ内の薬剤を繰出して、その下方に配置した散布羽根を回転させて、落下してくる薬剤を散布カバー内に沿って両側方へ散布するようにしている。
しかし、この繰出装置は繰出板を水平方向に配置して左右に並設しているために、繰出ケースが大きくなり、大きなスペースを必要としていた。更に、前記左右二つの繰出板を駆動するために、左右両側に駆動機構が配置されていいたので、部品点数が多く、重量も増加して、後側が重くなることでバランスが悪くなっていたのである。また、左右に駆動機構があるために、散布量を調節するためには、左右それぞれ調節する必要があり、微妙に散布量が異なる場合があった。
そこで本発明が解決しようとする課題は、一台の薬剤ホッパに二つの横溝ロール式の繰出部を設けてコンパクト化を図り、一つの駆動機構により二つの繰出ロールを駆動できるようにして、部品点数も減少し、左右別々に散布できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、一台の薬剤ホッパと、該薬剤ホッパから薬剤を供給する繰出部と、該繰出部にて操出された薬剤を走行車両の車幅方向に拡散して散布する散布部とを備えた薬剤散布機において、繰出ケース内のロール軸上に左右一対の繰出ロールを配置し、該左右の繰出ロールをそれぞれ独立して駆動可能に構成したものである。
【0008】
請求項2においては、前記繰出部の両側に、繰出ロールとロール軸の間にクラッチ機構を設けたものである。
【0009】
請求項3においては、前記繰出部の側方に、別体で駆動調量部を設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1の如く構成することにより、一つの繰出ケース内に一対の繰出ロールを収納して、省スペースでコンパクトな薬剤散布機を構成することができ、左右独立して駆動可能であるため、部分散布が可能である。
【0012】
請求項2の如く構成することにより、左右の繰出ロールの駆動の断接が簡単な構成で、別々に操作することが可能となり、左右対称に構成できることから、部品の共用化が可能となり、コスト低減化が図れる。
【0013】
請求項3の如く構成することにより、繰出部と駆動調量部を別々に組み立てることが可能となり、調整や組立性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。走行機体を田植機とした実施例について説明する。
図1は本発明の実施の一形態である薬剤散布機を具備する乗用田植機の側面図、図2は乗用田植機の苗載台の一部平面図、図3は乗用田植機の植付部の側面図、図4は本発明の実施の一形態である薬剤散布機の正面図、図5は同じく側面図、図6は薬剤散布機の駆動調量部を示す概略図、図7は薬剤散布機のクラッチ機構を示す概略図である。
【0015】
以下では、図1、図2および図3を用いて本発明の薬剤散布機の実施一形態である薬剤散布機140を具備する乗用田植機100の全体構成について説明する。
なお、本発明に係る薬剤散布機は田植機だけでなく、トラクタに装着する散布作業機等に広く適用可能であって、その適用範囲は本実施例の乗用田植機100に限定されるものではない。ここで、「田植機」とは、水田に稲の苗を植え付ける機械を指し、作業者が乗って操作する乗用田植機および作業者が手で押して操作する歩行式田植機の両方を含む。
また、以下の説明では、便宜上図1中の矢印Aの方向を「前方」と定義する。
【0016】
乗用田植機100は田植機の実施の一形態であり、走行部1の後部に昇降リンク機構27を介して植付部4を配置する。走行部1は車体フレーム3前部上方にエンジン2を搭載し、前下部にてフロントアクスルケースを介して前輪6を支持する。また、走行部1は、後部にてリヤアクスルケース7を介して後輪8を支持する。エンジン2はボンネット9に覆われる。乗用田植機100はボンネット9の後部に設けられたダッシュボード5の上に操向ハンドル14を配置し、ボンネット9の左右両側およびボンネット9の後部の車体フレーム3の上面を車体カバー12で覆っている。乗用田植機100は操向ハンドル14の後方に座席13を配置し、ボンネット9の左右両側、座席13の前方、座席13の左右両側、および座席13の後方を作業者が足を載せるステップとしている。
【0017】
乗用田植機100は、座席13の側部に走行変速レバー30、植付昇降および作業走行変速用の副変速レバー31、植付感度調節レバー等を配置する。乗用田植機100は、ダッシュボード5の下部のステップ上に主クラッチペダル32や左右ブレーキペダルを配設する。また、乗用田植機100は、座席13の後方に施肥機33を配設している。
【0018】
植付部4は、苗載台16、植付爪17、フロート34等で構成される。苗載台16は前高後低に配設され、苗載台16の下部は下ガイドレール18、苗載台16の前面の上部は上ガイドレール19により左右往復摺動自在に支持される。下ガイドレール18および上ガイドレール19は植付センターケース20よりフレーム等を介して支持される。植付ケース21は植付センターケース20より連結パイプを介して平行に後方へ突出される。植付ケース21の後部には、一方向に回転するロータリケース22が設けられ、ロータリケース22の左右両側に一対の植付爪17・17が設けられる。こうして、乗用田植機100は、前進走行とともに苗載台16を横送り機構により左右に往復運動(摺動)し、この往復運動に同期させて植付爪17・17を駆動して一株分の苗を切り出し、連続的に植え付け作業を行う。
【0019】
なお、植付センターケース20の前部にローリング支点軸を介して昇降リンク機構27が連結される。昇降リンク機構27はトップリンク25やロワーリンク26等より構成され、座席13下方に配置した昇降シリンダ28によって植付部4を昇降する。
【0020】
図1、図2および図3に示す如く、苗載台16の上面には各条の左右両側にリブ85・85・・・が突設され、苗マット載置部86・86・・・が形成される。隣り合うリブ85・85で挟まれた苗マット載置部86に載置された苗マットが、一条に対応する。苗マットの縦送り機構は、従動ローラ37、駆動ローラ38、苗送りベルト35等で構成される。苗マット載置部86の下部から上下中間位置にかけて開口部が設けられ、該開口部の上下に従動ローラ37と駆動ローラ38を配設され、従動ローラ37と駆動ローラ38の間に苗送りベルト35が巻回される。苗送りベルト35・35・・・の表面には多数の突起が設けられ、苗マット載置部86の下部から上下中間位置にかけて設けられた開口部からベルト表面が露出する。苗マットの縦送り機構の上方に設けられた苗マット押え機構36と苗送りベルト35とで苗マットを保持しながら、苗を正確に下方へ縦送りし、安定した植付けを行う。
【0021】
苗載台16の左右往復運動と、該往復運動に同期して植付爪17・17・・・が行う苗の切り出し作業とにより、苗マットの下端が一定幅ずつ切断され、切断された苗マットが下方へ搬送されて水田に植え付けられる。また、苗マットは苗載台16の左右端での折り返し時に縦送り機構の苗送りベルトによって下方へと運ばれる。この植付作業の際、本発明の薬剤散布機140により同時に土壌に直接施薬を行って、散布ムラのない確実な施薬を行う。
【0022】
以下では、図1、図3、図4を用いて、薬剤散布機140の本発明に係る実施例を説明する。
図1および図3に示す如く、薬剤散布機140は乗用田植機100の苗載台16の下後方に設けられ、苗の移植と同時に圃場に施薬するものである。薬剤散布機140が取り扱う薬剤は、主に粒状に成形したものであるが、他の粒状の薬剤(例えば、表面にコーティングを施した粒状の薬剤)や肥料や種子等に適用することも可能である。
図3に示す如く、薬剤散布機140は主に薬剤ホッパ41、繰出部42、散布部43等で構成される。薬剤散布機140は、支持フレーム53によって田植機100の植付けケース21に支持されている。
【0023】
ここで、図4乃至図7を用いて本発明に係る薬剤散布機140の詳細構成を説明する。
図5に示すように、薬剤ホッパ41は施薬する薬剤を貯蔵する容器である。薬剤ホッパ41の上部には蓋41aが設けられる。該蓋41aを開けて薬剤ホッパ41の内部に薬剤を補充する。薬剤ホッパ41の下半部は漏斗状になっており、下端部には開口部が設けられている。薬剤ホッパ41に貯蔵された薬剤は、自重で薬剤ホッパ41の下端部に設けられた開口部より下方に落下する。
【0024】
繰出部42は薬剤ホッパ41に貯蔵された薬剤を所定量ずつ繰出すものである。本実施例の繰出部42は主に繰出ケース47、横溝式の繰出ロール45、ロール軸49等で構成され、略左右対称に構成されている。繰出ケース47は上下面が開口した箱状の部材であり、その内部に繰出ロール45やブラシ46等を収容する。また、繰出ケース47の内部空間は、繰出ロール45を挟んで上半部と下半部に区画されている。繰出ケース47の上開口部は薬剤ホッパ41の下端部に連通される。従って、薬剤ホッパ41から落下してきた薬剤は、繰出ケース47の上半部の空間に充填される。
【0025】
前記繰出ケース47には左右一対の繰出ロール45L・45Rが回転自在に支持され、該左右の繰出ロール45L・45Rは同じ構成としている。該繰出ロール45はロール部45aとボス部45bからなり、ロール部45aは略円柱形状の部材であり、その外周面には複数の溝が設けられる。該溝の長手方向は、繰出ロール45の両端面を貫通するロール軸49の長手方向(軸心方向)と略一致(平行)している。但し、溝を設ける代わりに外周に適宜間隔をあけて凹部を設ける構成とすることも可能である。
左右のロール部45a・45aは繰出ケース47内に収容され、左右のロール部45a・45aの間には仕切板48が配設されて繰出ケース47のロール部より下方を仕切り、左右の薬剤が混じらないようにしている。即ち、仕切板48を繰出ケース47の左右中央に配置して、その両側に繰出ロール45L・45Rを配置して、二つの繰出ユニットを一つのケース内に収容して、コンパクト化を図り、同時に、2方向に薬剤を繰出可能としている。
【0026】
ここで、前記ボス部45bは繰出ケース47に回転自在に支持され、繰出ケース47より側方に突出され、該ボス部45bの外側端部には爪部45cが形成されている。該爪部45cは後述する摺動筒体94L・94Rの爪部94a・94aと咬合可能に構成され、爪クラッチを構成している。
ロール軸49は図7に示すように、繰出部用のロール軸49aと駆動調量部用のロール軸49bとに左右に分離することが可能であり、本実施例ではユニバーサルジョイントで連結している。繰出部用のロール軸49aは前記繰出ロール45の軸心部と仕切り板48を貫通して、繰出ロール45を介して繰出ケース47に支持され、ロール軸49aの両端は繰出ケース47の左右側面から突出して左右水平方向に配設される。該ロール軸49aを後述する駆動リンク機構69を介して回転駆動することにより、繰出ケース47に収容された繰出ロール45を回転させることが可能である。
また、繰出ロール45のロール部45aの斜め上部位置の外周面にはブラシ46の先端が当接される。本実施例ではロール部45aの斜め前上方位置で繰出ケース47に固定されている。
【0027】
図5に示すように、前記繰出ケース47下部内のロール部45aの下方にはガイド板50が配設され、該ガイド板50はロール部45aから落下する薬剤を前または後へ集めて後述する散布羽根62上に落とすようにガイドするものである。該ガイド板50はロール部45aと略同じ左右幅で、側面視において、ガイド板50の上部はロール部45aの上下略中央部の前後一側に位置し、ガイド板50の下部は後散布カバー51上部内に臨ませて散布羽根62の上方位置で前後他側となるように斜め下方に傾斜して延設し、仕切板48または繰出ケース47に固定している。つまり、左右のガイド板50・50は前後逆方向に下がるように傾斜して配設されている。具体的には、円板状の散布羽根62を左回り回転している場合において、散布羽根62上の外周近くに薬剤を落下させて側方へ跳ね飛ばすように、平面視(図7)において、左側のガイド板50の下部位置は、前方に位置させて、薬剤を前下方に集めるように落下させて、左側方に薬剤を飛ばすようにし、右側のガイド板50の下部位置は後方に位置させて、薬剤を後下方に落下させて、右側方に薬剤を飛ばすようにするのである。
【0028】
繰出ケース47の上半部の空間に充填された薬剤の一部は、繰出ロール45の外周面に接触しており、さらにその一部が繰出ロール45の外周面に設けられた溝に収容される。繰出ロール45をブラシ46方向に回転させると、該繰出ロール45の溝に収容されない余分な薬剤はブラシ46により除去され、溝内に収容された薬剤のみが繰出ケース47の下半部の空間に移動し、該溝から下方に落下する。すなわち薬剤ホッパ41に貯蔵された薬剤が繰出部42により所定量ずつ繰出される。
なお、繰出ロール45に設けられる溝の本数、長さ、深さ、幅を変更することにより、繰出される薬剤の量を適宜選択することが可能である。
【0029】
次に、図4を用いて散布部43について説明する。
ここで、薬剤散布機140の散布部43は、散布カバー51と中央に配置された散布羽根62と散布駆動モータ61から構成される。
また、散布カバー51の左右中央上面は繰出部42の下開口部と連通するように開口部が設けられ、下面は全面開口した箱状の部材であり、両端に取っ手52を備えている。通常、散布カバー51の幅は田植機で植付け可能な条数分の幅の長さを有する。つまり、苗載台16の幅と略一致させている。
【0030】
前記散布カバー51の左右中央下部に散布駆動モータ61が配置され、出力軸が上方を向けて設けられ、該出力軸上に散布羽根62の中心が固設されている。該散布羽根62は円板の上面に薬剤を撥ね飛ばすためのフィンが所定間隔をあけて設けられている。
このようにして散布駆動モータ61を駆動して、前記繰出ロール45より薬剤を繰出すと、薬剤は、散布羽根62の回動によって散布カバー51内を左右方向に散布される。このとき、散布カバー51内の要所に設けられたリード板60によって、薬剤は散布カバー51内で略均等に落下して圃場に散布される。
【0031】
次に、図5と図6を用いて薬剤散布機140の駆動調量部67について説明する。
まず、前記植付ケース21の後部の側面に動力取出軸70が設けられており、該動力取出軸70よりリンク機構69を介してロール軸49に動力が伝達される。
該リンク機構69は、繰出ケース47の側方に位置し、左右一側の支持フレーム53側部に配置される。そして、前記動力取出軸70に駆動アーム71が固設され、該駆動アーム71の先端に駆動ロッド72が枢結される。該駆動ロッド72は上方に延設されて、図6に示すように、該駆動ロッド72の上端にカウンターアーム73が枢支される。該カウンターアーム73は前記支持フレーム53の上部に枢支され、更に、連結リンク74の一端を枢支している。該連結リンク74の他端には長孔を設けて揺動アーム75の一端を枢支し、該揺動アーム75の回動基部はワンウェイクラッチを介して駆動調量部用のロール軸49bに支持されている。
【0032】
前記揺動アーム75には更にストッパーピンを兼ねる係止ピン76が左右両側に突設され、該係止ピン76の一端は調量ネジ77に螺装した摺動ボス78の下面に当接され、係止ピン76の他端にはバネ79の一端が係止され、該バネ79の他端は調量フレーム80の上部に係止されている。該調量フレーム80は前記散布カバー51の上面固設され、前記調量ネジ77を上下方向に回転自在に支持している。
このように構成することによって、前記駆動アーム71の回動により、前記駆動ロッド72、連結リンク74、揺動アーム75が往復揺動運動し、該揺動アーム75の揺動はワンウェイクラッチを介してロール軸49の回動運動へ変換する。
一方、前記揺動アーム75の上動最大位置、つまり、揺動アーム75のストローク量は係止ピン76が当接する摺動ボス78により定められ、該摺動ボス78は調量ネジ77を回動することにより、上下摺動可能となっている。従って、調量ネジ77を回動して揺動アーム75のストローク量を変更することによりロール軸49の回転数を変更することが可能となり、繰出ロール45より繰出す薬剤の散布量を変更することができるのである。
【0033】
ここで、図7を用いて本発明の実施形態である繰出部42の繰出ロール45L・45Rを、それぞれ独立して入切するクラッチ機構90L・90Rについて説明する。
前記ロール軸49上の左右の繰出ロール45L・45Rのボス部45b・45bの外側には、摺動筒体94L・94Rが相対回転不能、かつ、左右摺動自在に外嵌されている。該摺動筒体94L・94Rの機体左右中央側の端部には爪部94a・94aが形成され、前記ボス部45b・45bの爪部45c・45cと咬合可能に形成されている。また、摺動筒体94L・94Rの機体左右外側の端部には鍔部94b・94bが形成され、後述する操作アーム92・92と当接可能としている。さらに、図示しないバネが摺動筒体94L・94Rとロール軸49の間に配置されて、摺動筒体94L・94Rを機体左右中央側に付勢して、摺動筒体94L・94Rの爪部94a・94aとボス部45b・45bの爪部45c・45cが咬合するように付勢している。該摺動筒体94L・94Rの爪部94a・94aとボス部45b・45bの爪部45c・45cは繰出ケース47外側の側部に位置し、外側から断接しているかどうかを目視で確認できるようになっている。
【0034】
また、前記散布カバー51上の繰出ケース47の両側には支持プレート96・96が固設され、該支持プレート96・96に操作軸97・97が前後水平方向に回転自在に支持され、該操作軸97・97上に前記操作アーム92・92とクラッチレバー91・91が突設されている。該クラッチレバー91・91の先端にバネを介して操作ワイヤ93・93と連結され、該操作ワイヤ93・93の他端は苗載台16の裏面や運転座席13近傍等に配置した図示しない操作レバーと接続されている。図7では左側にクラッチが「接」とされた状態を示し、右側にクラッチを「断」とした状態を示している。
こうして実際に田植機100にて薬剤散布する場合には、田植機100の右側のみ散布、左側のみ散布といった作業が実施できる。
【0035】
以上で説明したように、薬剤散布機140は、繰出部42と駆動調量部67が散布カバー51(他のフレームであってもよい)上に左右別々に配置されて、組立性を向上している。繰出部42には左右一対の繰出ロール45L・45Rを一つの繰出ケース47内に配置してコンパクトに収納するとともに、一本のロール軸49により二つの繰出ロール45L・45Rを同時可能、かつ、別々に選択して駆動可能としている。そして、ロール軸49の回転は繰出部42の側方に配置した一つの駆動調量部67により変更可能であるため、左右の繰出ロール45L・45Rから繰出す薬剤の量を同量で同時に調節できることになり、左右の散布量が異なるようなことがないようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の一形態である薬剤散布機を具備する乗用田植機の側面図。
【図2】乗用田植機の苗載台の一部平面図。
【図3】乗用田植機の植付部の側面図。
【図4】本発明の実施の一形態である薬剤散布機の正面図。
【図5】同じく側面図。
【図6】薬剤散布機の駆動調量部を示す概略図。
【図7】薬剤散布機のクラッチ機構を示す概略図。
【符号の説明】
【0037】
42 繰出部
45 繰出ロール
49 ロール軸
100 乗用田植機
140 薬剤散布機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一台の薬剤ホッパと、該薬剤ホッパから薬剤を供給する繰出部と、該繰出部にて操出された薬剤を走行車両の車幅方向に拡散して散布する散布部とを備えた薬剤散布機において、
繰出ケース内のロール軸上に左右一対の繰出ロールを配置し、該左右の繰出ロールをそれぞれ独立して駆動可能に構成したことを特徴とする薬剤散布機。
【請求項2】
前記繰出部の両側に、繰出ロールとロール軸の間にクラッチ機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の薬剤散布機。
【請求項3】
前記繰出部の側方に、別体で駆動調量部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬剤散布機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−311829(P2006−311829A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136517(P2005−136517)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】