説明

農用作業車

【課題】自律走行を行う農用作業車において、オペレータが現在の機体位置の情報(即ち、機体位置が目標経路または目標方向に合致しているか否か、または、目標経路と合致していない場合には機体のズレ方向)を容易に知ることができる技術を提供する。
【解決手段】目標経路の生成後において、該目標経路に対する田植機1の機体位置の変位方向を表示し、かつ、田植機1が自律走行可能か否かを表示する自律走行位置表示ランプ45を具備する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行が可能である農用作業車の技術に関し、より詳しくは、目標経路に対する自律走行位置を表示する表示装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、GPSやセンサ類を備え、GPSにより車体位置を計測しつつ、障害物センサや倣いセンサ等の各種センサからの情報に基づいて自律的に走行・作業を行う農用作業車が知られている。例えば、特許文献1にその技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−16160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術においては、自律走行を行う農用作業車は、予め設定される目標経路上を自律走行する構成としているが、オペレータは目標経路を視認することができないため、機体が目標経路上に位置しているのか否かを知ることができず、目標経路に沿って正常に自律走行しているか否かを確認することができなかった。また、機体が目標経路上に位置していない場合には、目標経路に対するズレ方向が判らないために、自律走行を開始した際に、オペレータが予想している進行方向とは異なる方向に農用作業車が不意に走行するような事態が想定されるため、農用作業車が障害物等と接触する可能性も懸念されていた。
そこで本発明では、このような状況を鑑み、自律走行を行う農用作業車において、オペレータが現在の機体位置の情報(即ち、機体位置が目標経路または目標方向に合致しているか否か、または、目標経路と合致していない場合には機体のズレ方向)を容易に知ることができる技術を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、GPS装置と、ティーチング経路生成手段を備え、前記GPS装置により計測される位置情報に基づいて、前記ティーチング経路生成手段によりティーチング経路を生成し、さらに、前記ティーチング経路生成手段により前記ティーチング経路に対して平行な目標経路を生成し、該目標経路上を自律的に走行する農用作業車であって、前記目標経路の生成後において、該目標経路に対する前記農用作業車の機体位置の変位方向を表示し、かつ、前記農用作業車が自律走行可能か否かを表示する表示部を具備すること、を特徴としたものである。
【0006】
請求項2においては、GPS装置と、ティーチング経路生成手段を備え、前記GPS装置により計測される位置情報に基づいて、前記ティーチング経路生成手段によりティーチング経路を生成し、さらに、前記ティーチング経路生成手段により前記ティーチング経路に対して平行な目標経路を生成し、該目標経路上を自律的に走行する農用作業車であって、前記目標経路の生成後において、該目標経路に対する前記農用作業車の修正すべく自動走行する方向を表示し、かつ、前記農用作業車が自律走行可能か否かを表示する表示部を具備すること、を特徴としたものである。
【0007】
請求項3においては、前記表示部が、自律走行不可能な状態を表示するときには、自律走行を禁止すること、を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、農用作業車の挙動(即ち、自律走行しているときに目標経路に対してずれているか、どの方向をむいているかの状態)をオペレータがランプなどの表示装置により容易に認識することができる。
【0010】
請求項2においては、農用作業車の挙動(即ち、自律走行しているときに目標経路に対する修正方向)をオペレータがランプなどの表示装置により容易に認識することができる。
【0011】
請求項3においては、自律走行できない場合には、農用作業車が作業を停止して走行を停止するので、オペレータが予測しない進行方向へ自律走行し始めることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る田植機の全体的な構成を示した側面図、図2は同じく田植機の全体的な構成を示した平面図、図3は同じく田植機のメーターパネル部の一実施例の構成を示した斜視図、図4は同じく自律走行位置表示ランプ点灯時の流れを示すフロー図、図5は本発明の第一実施例にかかる自律走行位置表示ランプの表示パターンを示す模式図、図6は本発明の第二実施例にかかる自律走行位置表示ランプの表示パターンを示す模式図、図7は本発明の一実施例に係るGPS装置の全体的な構成を示した模式図、図8は本発明により生成する目標経路を示す模式図、図9は本発明の一実施例に係るティーチング作業の流れを示すフロー図、図10は本発明の一実施例に係る自動旋回走行時の流れを示すフロー図、図11は自動旋回時における田植機の挙動を示す模式図、図12は本発明の一実施例に係る目標経路方向と進行方向の関係を示す模式図、図13は本発明の一実施例に係る自律走行位置表示ランプの表示状況を示す模式図である。
尚、以下に示す本発明の実施例の説明においては、農用作業車の一例として、田植機を例にとって説明を行うが、本発明を適用する農用作業車を田植機に限定するものではなく、例えば、トラクタや散布作業機等であってもよく、圃場表面を走査しつつ農作業を行う農用作業車に広く適用することが可能である。
【0013】
まず始めに、本発明を実施するための最良の形態に係る田植機の全体構成について、図1及び図2を用いて説明する。
ここで説明する田植機1は、例えば6条植えの乗用田植機とし、機体の後部に昇降リンク機構27を介して植付部4を装着している。
また、車体フレーム3の前部上方にエンジン2を搭載し、前下部にフロントアクスルケース6aを介して前輪6を支持するとともに、後部にリアアクスルケース8aを介して後輪8を支持している。
前記エンジン2はボンネット9に覆われ、該ボンネット9の上方には門型状の取付フレーム24を配設している。そして、前記取付フレーム24の左右両側に予備苗載台10・10を配設し、また上部中央に後述するGPSアンテナ101および操作筐体128を固設している。
また、ボンネット9後部のダッシュボード5上にメーターパネル7やハンドル14を配置しており、該ボンネット9の両側とその後部の車体フレーム3上は車体カバー12で覆われている。
ハンドル14の後方位置には座席13を配置し、ボンネット9の両側と座席13の前部、座席13の左右両側、及び座席13の後方をステップとしている。
【0014】
田植機1の後部に設けられる植付部4には、ここでは6条分の苗載台16が設けられ、植付爪支持部となる植付伝動ケースの後部に設けるロータリーケース22・22・・・や該ロータリーケース22に取り付けられる植付爪や、センターフロート34や、サイドフロート35等が設けられている。
前記苗載台16は前高後低に配設して、苗載台16の下部は下ガイドレール18、前面の上部は上ガイドレール19によって左右往復摺動自在に支持されている。
この下ガイドレール18及び上ガイドレール19は、植付センターケース20や植付フレーム23等を介して支持されている。
また、植付センターケース20より左右両側方へ連結パイプ(図示せず)を突設して、伝動ケース(図示せず)を固設し、該伝動ケースを平行に後方へ突出させて、該伝動ケースの後部両側に一方向に回転させるロータリーケース22・22・・・を配置し、該ロータリーケース22・22・・・に植付爪を設けている。
尚、ロータリーケース22・22・・・は、1条分の苗載台16に対して1組配設されるので、6条用の田植機の場合には6つ設けられている。
更に、前記植付センターケース20の前部にはローリング支点軸を介して前記昇降リンク機構27と連結され、該昇降リンク機構27はトップリンク25やロワーリンク26等より構成され、座席13下方に配置したアクチュエータと油圧シリンダとからなる昇降シリンダ(図示せず)によって植付部4を昇降できるようにしている。
センターフロート34及びサイドフロート35は、上述した昇降リンク機構27の後部に連結される植付センターケース20や植付伝動ケースの下方にリンク機構を介して支持されている。
このセンターフロート34又はサイドフロート35には、角度センサが設けられ、後述する昇降用等のコントロールユニットに接続されている。
これにより、該コントロールユニットは、該角度センサより得られるフロートの角度に応じて、昇降シリンダを作動させて昇降リンク機構27を上下動させることによって、植付部4の昇降制御を行って適切に植付作業を行えるようにしている。
左右両側方の苗載台16の下方に設けられるパイプにはマーカ36・36が設けられており、該パイプを回動させることでマーカ36・36を左右両側へ突出させることが可能となり圃場にマーキングが可能となる。
以上が、本発明を実施するための最良の形態に係る田植機の全体構成についての説明である。
【0015】
次に、本発明の一実施例に係る農用作業車のメーターパネルについて、図1乃至図6を用いて説明をする。
図1または図2に示す如く、田植機1のメーターパネル7は、座席13に着座したオペレータ前方のダッシュボード5上に、オペレータから容易に視認できる車体中央付近の位置に配設されている。
【0016】
図3に示す如く、メーターパネル7上には、自動運転表示ランプ41、ティーチング表示ランプ42、GPS通信表示ランプ43、異常表示ランプ44、自律走行位置表示ランプ45、自動運転切替SW46、ティーチングSW47および自律運転SW48等を設けている。また、植付作業で消費される苗や肥料の残量が少なくなったことをオペレータに知らせるために、苗つぎ警告ランプ49、肥料補給警告ランプ50等が設けられている。但し、これらのスイッチやランプ等の配置位置は、図3に示す配置位置に限定されるものではなく、オペレータの操作性を考慮した位置に適宜配置することができる。
【0017】
自動運転表示ランプ41は、自動運転中に点灯するように構成しており、オペレータが自動運転表示ランプ41の点灯状態を確認することにより、現在自動運転中であるか否かを一目見て把握できる構成としている。
ティーチング表示ランプ42は、ティーチングが実行されていない時には消灯しており、また、ティーチングSW47を一度押下してティーチング中である時には、ランプを点滅するようにし、さらに、ティーチングSW47をもう一度押下してティーチングが完了した時には、ランプが点灯するように構成している。このように、オペレータがティーチング表示ランプ42の点灯状態を確認することにより、ティーチング状態を一目見て把握できる構成としている。
GPS表示ランプ43は、GPSユニット102がGPS衛星と通信可能な状態であるときには点灯するように構成しており、オペレータがGPS表示ランプ43の点灯状態を確認することにより、GPSユニット102による測位が使用可能か否かが一目見て把握できる構成としている。
異常表示ランプ44は、田植機1の本体各部やシステムに異常が発生した場合に点灯するようにしており、オペレータが異常表示ランプ44の点灯状態を確認することにより、田植機1各部が正常に作動しているか否かについて、田植機1の運転状態を一目見て把握できる構成としている。
【0018】
自律走行位置表示ランプ45は、左方ズレ表示ランプ45aと、正常走行表示ランプ45bと、右方ズレ表示ランプ45cにより構成している。
図4に示す如く、本発明において、自律運転SW48が「入」の状態であり、田植機1が自律走行する時(S01)には、田植機1は処理部110により生成した目標経路に沿って自律的に走行するようにしている。このとき、自律走行中の実際の走行経路をGPSユニット102により測定し(S02)、目標経路と実際の走行経路の差異(ズレ量)を処理部110で演算し(S03)、予め設定した閾値と比較して判定をするようにしている(S04)。
【0019】
前記ズレ量が閾値を越えない範囲である場合には、前記正常走行表示ランプ45bを点灯するようにしており(S04)、オペレータは田植機1が目標経路に沿って正常に自律走行していることを一目見て確認することができるように構成している。
また、前記ズレ量が閾値を越えている場合には、基準線に対するズレの方向を検知して判定を行い(S06)、左方にズレが生じている場合には前記左方ズレ表示ランプ45aを点灯し(S07)、そのズレ量に応じてステアリング装置を右方向に補正する(S08)。または、右方にズレが生じている場合には前記右方ズレ表示ランプ45cを点灯し(S09)、そのズレ量に応じてステアリング装置を左方向に補正するようにしている(S10)。
このように、オペレータは田植機1が目標経路から外れて自律走行していることを一目見て確認することができるように構成しており、自律運転SW48の「入」状態が継続している(S01)間は、前記のステップを繰り返し、現在位置と目標経路との差異を確認する手順を繰り返しながら目標経路に沿って自律走行するようにしている(S05)。
【0020】
さらに詳述すると、図5に示す如く、自律走行位置表示ランプ45は、(a)乃至(e)の五種類の点灯パターンを設定している。
(a)パターンは、中央の正常走行表示ランプ45bのみが点灯するパターンであり、この場合、目標経路方向と農用作業車の進行方向が一致しており、かつ、農用作業車が目標経路上を正常に自律走行している状態を示している。
(b)パターンは、左側の左方ズレ表示ランプ45aのみが点灯するパターンであり、この場合、目標経路方向と農用作業車の進行方向が一致しており、かつ、農用作業車が目標経路に対して左寄りに自律走行している状態を示すと同時に、三角形状のランプ頂点を右方に向けた配置として、右方に進行方向を修正すべき旨(即ち、右方に自動操舵する旨)を報知するようにしている。
(c)パターンは、右側の右方ズレ表示ランプ45cのみが点灯するパターンであり、この場合、目標経路方向と農用作業車の進行方向が一致しており、かつ、農用作業車が目標経路に対して右寄りに自律走行している状態を示すと同時に、三角形状のランプ頂点を左方に向けた配置として、左方に進行方向を修正すべき旨(即ち、左方に自動操舵する旨)を報知するようにしている。
(d)パターンは、左方ズレ表示ランプ45aと右方ズレ表示ランプ45cの2箇所が点灯しており、この場合、農用作業車の車両方位が演算できていない場合か、左右の目標経路に対して略中央付近に農用作業車が位置している場合(即ち、二つの目標経路から略等距離に位置している)か、または、目標経路方向が農用作業車の進行方向と異なっている状態を示すようにしている。
(e)パターンは、3箇所全ての各ランプ45a・45b・45cが点灯しており、この場合、農用作業車が目標経路上には位置しているが、目標経路方向が農用作業車の進行方向と異なっている状態を示すようにしている。
また、(d)および(e)パターンの表示状態であるときには、自律走行が出来ないように構成しており、オペレータが、自律走行位置表示ランプ45の表示状態から自律走行が可能であるか否かを判断できるようにしている。
尚、この自律走行位置表示ランプ45は、例えば、農用作業車の進行方向前方の機体の左右方向略中央に配設されるセンターマーカ近傍等に配設することもでき、オペレータが座席13に着座した状態で容易に視認可能な場所に配設すればよく、配置位置をメーターパネル7上に限定するものではない。また、自律走行位置表示ランプ45は三角形と四角形により構成しているが、円形や多角形、または、矢印や方向表示する図形等であってもよい。また、方向指示器と兼用する構成であってもよい。
自律走行できない場合には、農用作業車が作業を停止して走行を停止するので、オペレータが予測しない進行方向へ自律走行し始めることを防止できる。
【0021】
また、自律走行位置表示ランプ45の第二実施例として、図6に示す(a)乃至(e)の五種類の点灯パターンとすることもできる。
(a)パターンは、第一実施例と同様に、中央の正常走行表示ランプ45bのみが点灯するパターンであり、この場合、目標経路方向と農用作業車の進行方向が一致しており、かつ、農用作業車が目標経路上を正常に自律走行している状態を示している。
(b)パターンは、右側の左方ズレ表示ランプ45aのみが点灯するパターンであり、この場合、目標経路方向と農用作業車の進行方向が一致しており、かつ、農用作業車が目標経路に対して左寄りに自律走行している状態を示すと同時に、三角形状のランプ頂点を右方に向けた配置として、右方に進行方向を修正すべき旨(即ち、右方に自動操舵する旨)を報知するようにしている。
(c)パターンは、左側の右方ズレ表示ランプ45cのみが点灯するパターンであり、この場合、目標経路方向と農用作業車の進行方向が一致しており、かつ、農用作業車が目標経路に対して右寄りに自律走行している状態を示すと同時に、三角形状のランプ頂点を左方に向けた配置として、左方に進行方向を修正すべき旨(即ち、左方に自動操舵する旨)を報知するようにしている。
(d)パターンは、第一実施例と同様に、左方ズレ表示ランプ45aと右方ズレ表示ランプ45cの2箇所が点灯しており、この場合、農用作業車の車両方位が演算できていない場合か、左右の目標経路に対して略中央付近に農用作業車が位置している場合(即ち、二つの目標経路から略等距離に位置している)か、または、目標経路方向が農用作業車の進行方向と異なっている状態を示すようにしている。
(e)パターンは、第一実施例と同様に、3箇所全ての各ランプ45a・45b・45cが点灯しており、この場合、農用作業車が目標経路上には位置しているが、目標経路方向が農用作業車の進行方向と異なっている状態を示すようにしている。
【0022】
自動運転切替SW46は、自律運転を行うか否かを切替えるためのスイッチであり、スイッチの回動位置によって、自動走行モードか手動走行モードを選択できるようにしている。そして、自動運転モードに切替えている状態であれば、後述する自律運転SW48を「入」とすることにより自律運転をすることができ、手動運転モードに切替えている状態においては、自律運転SW48を「切」とするようにしている。
尚、本実施例においては、図3に示す如く、自動運転切替SW46として回転式のスイッチを採用した例を示しているが、自動運転切替SW46のスイッチの種類を限定するものではない。
【0023】
ティーチングSW47は、ティーチング作業を行うためのスイッチであり、本実施例においては、図3に示す如く、押し込み式のボタン型スイッチにより構成している。
そして、オペレータがティーチングを開始したいときにティーチングSW47を一度押下することによりティーチングが開始され、ティーチングを終了したいときにティーチングSW47をもう一度押下することによりティーチング作業が終了するように構成している。
尚、本実施例ではティーチングSW47をボタン型の押し込み式スイッチで構成した例を示しているが、本発明に適用するスイッチの種類をこれに限定するものではない。
【0024】
自律運転SW48は、自律走行の入切を切替えるためのスイッチである。
図3に示す如く、本実施例では、自律運転SW48を、自律運転(直進)SW48a(押し込み式スイッチ)と旋回SW48b(回動可能なダイヤル部を有する押しボタンスイッチ)という二つのスイッチにより構成している。
そして、自律運転(直進)SW48aを押下して「入」とするときに自律走行を開始し、また、自律運転(直進)SW48aをもう一度押下して「切」とするときに自律走行を終了するように構成している。
また、自律的に旋回走行するためには、自律走行開始後の最初の旋回には旋回方向を指示するために、オペレータが所望する旋回方向に旋回SW48bを回動操作する必要がある。回動操作を行うと、メーターパネル7上の左右ズレ表示ランプ45a・45cの左右いずれか一方が点滅し、設定された旋回方向をオペレータに示す。オペレータが所望する方向であることを確認した後に旋回SW48bを押下すると、所望する方向に自動的に旋回走行し、その後、次の目標経路を自律的に走行する。尚、次経路走行中には、左右ズレ表示ランプ45a・45cが前述したルールに則って点灯する。それ以降は枕地に到達する度に、左右交互に左右ズレ表示ランプ45a・45cが点滅し、オペレータが旋回SW48bを押下することで、該当方向に自動的に旋回走行し、旋回終了後、引き続き次経路を自律走行するようにしている。また、次経路走行開始後、植付開始位置で自動的に停止する機能も有している。
このように自律運転SW48を操作することにより、田植機1は直線植付部を自律的に走行したり、また、枕地においては、次の植付開始位置に向かって自動的に旋回走行したり、引き続き次の経路を自律的に走行することができる。
【0025】
つまり、GPSユニット102と、処理部110を備え、GPSユニット102により計測される位置情報に基づいて、処理部110によりティーチング経路を生成し、さらに、処理部110により前記ティーチング経路に対して平行な目標経路を生成し、該目標経路上を自律的に走行する田植機1において、オペレータにより、自律運転SW48が操作されることにより、次の目標経路へ向けて自動的に旋回し、かつ、前記次の目標経路上を自律的に走行するようにしている。また、作業開始および終了位置で、機体を自動停止することも可能である。
これにより、オペレータの手動操作による位置合わせが不要となり、作業性を向上させることができるのである。
尚、本実施例では自律運転SW48をボタン型の押し込み式スイッチやダイヤル型の回転式スイッチおよびレバー型スイッチ等で構成した例を示しているが、本発明に適用する自律運転SW48のスイッチの種類をこれらに限定するものではない。
【0026】
苗つぎ警告ランプ49は、植付部4の各条に配設された苗つぎ警告SW(図示せず)の入切に応じて点灯および消灯するように構成されている。苗つぎ警告SWは、例えば、機械式のリミットスイッチ等により構成し、苗つぎ警告SWが苗または苗マットにより押圧されている場合にはスイッチが「切」となり、この場合には苗つぎ警告ランプ49を消灯するようにし、また、苗が植え付けられて苗または苗マットが苗つぎ警告SWを押圧しなくなった場合にはスイッチが「入」となり、この場合には苗つぎ警告ランプ49を点灯するように構成している。
尚、苗つぎ警告SWは、例えば光学式等の非接触型センサを採用して、苗または苗マットの有無を検知する構成としてもよく、本発明に適用する苗つぎ警告SWの種類を限定するものではない。
【0027】
そして、この苗つぎ警告SWは、前記自律運転SW48をインターロックするように構成しており、つまり、苗つぎ警告SWが「切」の場合のみ、自律運転SW48が有効となるようにしている。
【0028】
肥料補給警告ランプ50は、植付部4の各条に配設された施肥機(図示せず)に設けられた肥料補給警告SW(図示せず)の入切に応じて点灯および消灯するように構成されている。肥料補給警告SWは、例えば、機械式のリミットスイッチ等により構成し、肥料補給警告SWが肥料により押圧されている場合にはスイッチが「切」となり、この場合には肥料補給警告ランプ50を消灯するようにし、また、肥料が消費されて肥料が肥料補給警告SWを押圧しなくなった場合にはスイッチが「入」となり、この場合には肥料補給警告ランプ50を点灯するように構成している。
尚、肥料補給警告SWは、例えば光学式の非接触型センサを採用して、肥料の有無を検知する構成としてもよく、本発明に適用する肥料補給警告SWの種類を限定するものではない。
【0029】
そして、この肥料補給警告SWは、前記自律運転SW48をインターロックするように構成しており、つまり、肥料補給警告SWが「切」の場合のみ、自律運転SW48が有効となるようにしている。
【0030】
つまり、農用作業車が、田植機1であって、植付け作業により植え付けられる苗と施肥される肥料の残量を検知し、前記苗の残量か、または、前記肥料の残量が、予め設定した閾値よりも少ないことを検知した場合には、自律運転SW48の操作を無効とするようにしている。
このように、苗つぎや肥料の補給が必要な状況においては、田植機1を自動的に旋回させないことにより、オペレータに苗や肥料の補充が必要であることを容易に知らせることができるとともに、植付け作業の最中に苗つぎや肥料の補給が必要となり、苗や肥料の補給のために圃場端まで走行することがなくなり、作業性を向上することができるのである。
以上が、本発明の一実施例に係る農用作業車のメーターパネルについての説明である。
【0031】
次に、本発明に適用する一実施例に係るGPSについて、図7を用いて説明をする。
GPS(グローバル・ポジショニング・システム)とは、元来航空機・船舶等の航法支援用として開発されたシステムであって、上空約二万キロメートルを周回する二十四個のGPS衛星(六軌道面に四個ずつ配置)、GPS衛星の追跡と管制を行う管制局、測位を行うための利用者の受信機で構成される。
GPSを用いた測量方法としては、単独測位、相対測位、DGPS(ディファレンシャルGPS)測位、RTK−GPS(リアルタイムキネマティック−GPS)測位など種々の方法が挙げられるが、本実施例では測定精度の高いRTK−GPS測位方式を採用している。
【0032】
RTK−GPS(リアルタイムキネマティック−GPS)測位は、位置が判っている基準局(基準局ユニット104)と、位置を求めようとする観測点(移動局ユニット103)とで同時にGPS観測を行い、基準局で観測したデータを無線等の方法で観測点にリアルタイムで送信し、基準局の位置成果に基づいて観測点の位置をリアルタイムに求める方法である。
詳しくは、基準局と観測点の両点で位相の測定(相対測位)を行い、基準局で観測した位相データを観測点に送信する。観測点のGPS受信機では、受信データと基準局から送信されたデータとをリアルタイムで解析することにより、観測点の位置を決定する。
なお、本発明に適用するGPSを用いた測量方法は前記の他の方法であってもよく、限定されるものではない。
【0033】
図7に示す如く、本発明のGPSの実施の一形態であるGPSユニット102は、主に、田植機1本体に搭載される移動局ユニット103と、圃場(本実施例では水田等)の近くに設置される基準局ユニット104からなる。該基準局ユニット104は地面に固定された基準局の役割を果たし、移動局ユニット103は位置を求めようとする移動局(観測点)として機能する。
【0034】
移動局ユニット103は、アンテナ108を具備したGPSアンテナ101の他、信号処理部109や、信号記憶部106や、該信号処理部109及び該信号記憶部106を収納する操作筐体128等から構成される。
本実施例では、操作筐体128上の図示しないボタン等を操作することより、GPSアンテナ101のアンテナ108で受信されたGPS衛星125・125・・・からの電波信号が、有線若しくは無線によって信号処理部109(本実施例では操作筐体128に収納されている。)を経て、信号記憶部106(本実施例では操作筐体128に収納されている。)に記憶される。
また、本実施例においては、GPSアンテナ101は、棒状の取り付けポール120の上端部に取り付けられ、該GPSアンテナ101の下方に操作筐体128を配設するようにしている。これにより、オペレータが操作筐体128を操作する際に、オペレータにより電波信号が遮られて通信が途絶えることがないような構成としている。
また、圃場計測時など、GPSアンテナ101を持って移動しながら計測を行う場合に、取り付けポール120を持つことにより、GPSアンテナ101が常に頭上に位置するような構成としている。
そして、GPSアンテナ101と取り付けポール120を田植機1に取り付けた状態で、該信号記憶部106に記憶された情報をRTK演算部に送信する。RTK演算部では、後述する基準局ユニット104から送信されてくる情報を記憶している記憶部105の情報と、信号記憶部106から送信されてくる情報とを演算し、車体位置を認識する。
【0035】
一方、図7に示す如く、基準局ユニット104は、GPSアンテナ114、信号処理部115、処理部116、操作部117、表示部118、無線部119などで構成されている。
そして、GPSアンテナ114で受信されたGPS衛星125・125・・・からの電波信号を、信号処理部115にて解析し、処理部116を介して無線データに変換する等して、無線部119から田植機1側の無線部113に該無線データを送信する。
このようにして、田植機1側の無線部113に送られてきた情報は、前述のように記憶部105に記憶され、RTK演算部が、前記信号記憶部106から送信されてくる情報と、記憶部105に記憶されている情報とをもとに車体位置を演算する。
【0036】
そして、田植機1が移動を始めたときは、田植機1側部に配設されたアンテナ108で受信されたGPS衛星125・125・・・からの電波信号が、有線若しくは無線によって信号処理部109等を経て、RTK演算部に送信され、RTK演算部では、基準局ユニット104から送信されてくる情報を記憶している記憶部105の情報と、該信号処理部109から随時送信されてくる情報とを演算し、田植機1および植付部4の現在位置を認識するのである。
【0037】
操作部111は後述する自律走行の設定などを行うためのインターフェースであり、処理部110にケーブル接続されている。表示部112は処理部110にケーブル接続されており、処理部110におけるデータ処理の状況や、操作部111により入力された各種設定を表示する。
【0038】
処理部110はCPUやRAMやROM等を備える制御手段であり、その内部に自律走行プログラム121を格納し、GPSユニット102により得られた位置情報や、処理部110に接続される内界センサ122や傾斜センサ123等の各種センサからの信号に基づいて、当該圃場における自律走行経路を生成するとともに自律走行手段124に指令を出して田植機1に自律走行をさせたり、自律走行の目標経路を生成するものである。
自律走行プログラム121は、田植機1に自律走行による田植作業を行わせるためのプログラムである。自律走行プログラム121に基づく自律走行の詳細については後述する。
【0039】
また、自律走行手段124としては、例えば油圧アクチュエータを用いることができ、該油圧アクチュエータと前記ハンドル14をリンク機構等により連結する構成とし、処理部110からの信号に応じて油圧アクチュエータを伸縮させるようにして、油圧アクチュエータの伸縮に応じてハンドル14を左右に回動させて自動的に操舵するように構成することができる。これにより、目標経路と実際の走行経路の差異を処理部110にフィードバックすることにより、目標経路と実際の走行経路にズレが生じている場合であっても、ハンドル14を自動的に回動させて走行経路を補正して、田植機1を正確に目標経路に沿って自律走行させることができる。また、自律走行中に機体を停止および発進させる構成については、処理部110からの信号に応じてクラッチ部およびブレーキ部を、例えば油圧アクチュエータ等で作動制御する構成とすることができる。
以上が、本発明に適用する一実施例に係るGPSについての説明である。
【0040】
次に、本発明の一実施例に係る目標経路の生成方法について、図8または図9を用いて説明をする。
図8または図9に示す如く、目標経路を生成するためには、まずティーチング作業を実行して基準線を設定するようにしている。
田植機1に設けられたGPSアンテナ101の位置を基準として田植機1の車体位置を計測するようにしており、ティーチング開始時にティーチングSW47を押下するようにし、その押下した時のGPSアンテナ101の位置を開始点(点A)として記憶部105に記憶し(S11)、またティーチング終了時にティーチングSW47を押下するようにし、その押下した時のGPSアンテナ101の位置を終了点(点B)として記憶部105に記憶するようにしている(S12)。このとき、前記開始点(点A)および終了点(点B)と機体寸法(即ち、植付部4の取付位置)の情報に基づき、実際の植付開始位置となる植付開始点(点C)と実際の植付終了位置となる植付終了点(点D)を算出し、そして、記憶部105に記憶した前記植付開始点(点C)と前記植付終了点(点D)の情報に基づいて、RTK演算部および処理部110により点Cと点Dを結ぶ基準線(線分CD)を生成して記憶部105に記憶し、その後該基準線(線分CD)に基づいて処理部110により目標経路を生成する構成としている。
また、開始点および終了点を植付開始位置(または植付終了位置)として対応付けるようにしており、線分CDに直交し、かつ、点Cまたは点Dを通過する植付基準線を生成し、さらに該植付基準線と目標経路との交点を生成し、該交点を植付開始位置(または植付終了位置)として記憶部105に記憶するようにしている。
そして、前記植付基準線よりも圃場の外側においては、田植機1を自律的に旋回走行するようにし、圃場の内側においては、田植機1を自律的に直進走行するようにして植付作業を行うようにしている。
【0041】
目標経路の生成は、基準線(線分CD)の情報と、田植機1の植付部4において設定されている植付幅aと植付条数bの情報に基づいて、処理部110にて生成するようにしている(S13)。
つまり、目標経路の間隔Wを、次式により求めるようにしている。
W=a*b
【0042】
尚、本実施例では、6条植えの乗用田植機を例にとって説明をしているため、6条分全ての植付爪を使用する場合には、植付条数b=6であるため、目標経路の間隔W=6aとなる。
そして、基準線(線分CD)に平行で、かつ、線間距離(線の間隔)を6aとした直線状の目標経路をN列生成するようにしている。
尚、本実施例においては、図6に示す如く、圃場の左手前から植付作業を開始して、線分CDを決定し、図上右側にN列の目標経路を生成した例を示しているが、線分CDの左側にN列の目標経路を生成することもでき、基準線から左右いずれの方向に対しても目標経路を生成することができるようにしている。また、作業開始位置は4隅のいずれからでも開始することは可能である。
【0043】
また、直線状の目標経路は、各々の直線が端部を有しない無限直線として生成されるため、線分CDを包含する圃場よりも外側(即ち、図8中の範囲Xおよび範囲Y、枕地)においても目標経路が存在しており、圃場端部で田植機1を旋回させる時等に目標経路を見失うことがないようにしている。
以上が、本発明の一実施例に係る目標経路の生成方法についての説明である。
【0044】
次に、本発明の一実施例に係る自律走行プログラムによる自律走行時の動作について、図8、図10または図11を用いて説明をする。
以下の説明では、田植機1が、ティーチング後にある一つの目標経路(縦方向の植付作業基準線)上を自律走行しながら植付作業を完了し植付終了位置まで到達した後に、自動的に旋回走行し、旋回後次の目標経路上を自律的に走行する場合の動作について説明をする。
【0045】
図10に示す如く、本発明の実施例では、田植機1が枕地に到達すると、機体の走行が自動的にあるいはオペレータの操作により停止される。そして、オペレータが植付部4を上昇させて、自律走行SW48を操作するとき、自律運転SW48が「入」であって(S21)、かつ、苗つぎ警告SWおよび肥料補給警告SWが「切」であれば(S22)、田植機1を所望する方向に自動的に旋回し(S23)、かつ、自動旋回を完了した後(S24)には、次の目標経路上を自律的に走行するようにしている。そして、植付開始位置に到達すると、機体の走行が自動的にあるいはオペレータ操作により停止される。その後、オペレータ操作により、植付部4を下降させることにより、引き続き目標経路上を自律的に走行するようにしている。
【0046】
具体的に言えば、図11に示す如く、田植機1の植付部4が枕地(図8中に示す点Cまたは点Dを通る横方向の植付始端または植付終端の基準線)に到達したときに、自律運転SW48を例えば右方と対応する方向に操作すると、田植機1は右方に機体を約180度回転するように自動的に旋回走行して、進行方向を反転するようにしている。このとき、機体の旋回直径が、前記数式により求められる目標経路の間隔Wと一致するように自動操舵するようにしており、旋回走行が完了したときには、田植機1がおおよそ目標経路上に位置するようにしている。
【0047】
そして、旋回走行が完了した後に、引き続き、次の目標経路上を自律的に走行する。植付開始位置に到達すると、機体の走行が自動的にあるいはオペレータ操作により停止される。その後、オペレータ操作により植付部4を下降させ植付クラッチを「入」として、引き続き目標経路上を自律的に走行する。
以上が、本発明の一実施例に係る自律走行プログラムによる自律走行時の動作についての説明である。
【0048】
次に、本発明の一実施例に係る目標経路方向と進行方向の関係について、図12を用いて説明をする。
前述したように、本実施例では目標経路が直線状に生成されるため、目標経路方向が2方向存在している。尚、本説明において目標経路方向とは、目標経路上に設定する目標方向を意味している。
図12に示す如く、目標経路上において、オペレータがハンドル操作等により進行方向を指定することにより、まず、目標経路方向が設定される。
そして、目標経路方向が設定された時点から、目標経路方向と、現在および過去の機体位置から算出する進行方向とが成す角度を随時算出するようにしており、その角度が±θ未満であれば、目標経路方向と進行方向が同じであると判断するようにしている。
また、目標経路方向と、進行方向とが成す角度が±θ以上であれば、目標経路方向と進行方向が異なっていると判断するようにしている。尚、前記角度θの値は、任意に設定することができる。
例えば、図12中の進行方向Aであれば、目標経路方向と進行方向が同じであると判断し、また、図12中の進行方向Bであれば、目標経路方向と進行方向が異なっていると判断するようにしている。
そして、目標経路方向と進行方向が同じであるか否かという信号は処理部110にも伝達されて、目標経路方向と進行方向が同じである場合には自律走行を許可し、また、目標経路方向と進行方向が異なっている場合には自律走行を許可しないようにしている。
即ち、自律走行位置表示ランプ45が、自律走行不可能な状態を表示するときには、自律走行を禁止するようにしており、これにより、自律走行できない場合には、農用作業車が作業を停止して走行を停止するので、オペレータが予測しない進行方向へ自律走行し始めることを防止できるのである。
以上が、本発明の一実施例に係る目標経路方向と進行方向の関係についての説明である。
【0049】
次に、本発明の一実施例に係る自律走行位置表示ランプの点灯状況について、図12または図13を用いて説明をする。
図13に示す如く、目標経路(n=0)上に田植機1の基準点が位置しており、かつ、目標経路方向と進行方向が一致している場合(即ち、図13中のP01、P04、P05またはP08)には、正常走行表示ランプ45bが点灯するようにしている。
また、目標経路(n=0)上に田植機1の基準点が位置しておらず、かつ、目標経路方向と進行方向は一致している場合(即ち、図13中のP06またはP07)には、正常走行表示ランプ45bは点灯せず、その代わりに、目標経路(n=0)に対して進行方向に向かって右側に機体が変位している場合(即ち、図13中のP06)には右方ズレ表示ランプ45cが点灯し、あるいは、目標経路(n=0)に対して進行方向に向かって左側に機体が変位している場合(即ち、図13中のP07)には左方ズレ表示ランプ45aが点灯するようにしている。
さらに、目標経路(n=0)上に田植機1の基準点が位置しているが、目標経路方向と進行方向が一致していない場合(即ち、図13中のP02またはP03)には、三灯全ての各ランプ45a・45b・45cを点灯するようにしている。
【0050】
そして、次の目標経路に向けて自律旋回走行をする場合(即ち、図13中のP09乃至P15)には、目標経路方向が進行方向と同じであると判断する場合(即ち、目標経路に対して進行方向が成す角度が±θの範囲内であり(即ち、図12中の範囲α)、例えば、図13中のP09、P13またはP15)には、ズレ方向に応じて、左方ズレ表示ランプ45aか右方ズレ表示ランプ45cを点灯するようにしており、また、目標経路方向が進行方向と違うと判断する場合(即ち、目標経路に対して進行方向が成す角度が±θの範囲外であり(即ち、図12中の範囲β)、例えば、図13中のP10乃至P12またはP14)には、左方ズレ表示ランプ45aと右方ズレ表示ランプ45cの二灯を同時に点灯するようにしている。
【0051】
さらに、自律旋回走行が完了した後に、次の目標経路(n=1)上に田植機1の基準点が位置しており、かつ、目標経路方向と進行方向が一致している場合(即ち、図13中のP16、P19、P20、P23またはP25)には、正常走行表示ランプ45bを点灯するようにしている。
また、目標経路(n=1)上に田植機1の基準点が位置しておらず、かつ、目標経路方向と進行方向は一致している場合(即ち、図13中のP17、P18またはP24)には、正常走行表示ランプ45bは点灯せず、その代わりに、目標経路(n=1)に対して進行方向に向かって右側に機体が変位している場合(即ち、図13中のP17またはP24)には右方ズレ表示ランプ45cが点灯し、あるいは、目標経路(n=1)に対して進行方向に向かって左側に機体が変位している場合(即ち、図13中のP18)には左方ズレ表示ランプ45aを点灯するようにしている。
【0052】
さらに、目標経路(n=1)上に田植機1の基準点が位置しているが、目標経路方向と進行方向が一致していない場合(即ち、図13中のP21またはP22)には、三灯全ての各ランプ45a・45b・45cを点灯するようにしている。
即ち、前述した第一実施例では、目標経路の生成後において、該目標経路に対する田植機1の機体位置の変位方向を表示し、かつ、田植機1が自律走行可能か否かを表示する自律走行位置表示ランプ45を具備する構成としており、これにより、田植機1の挙動(即ち、自律走行する進行方向)をオペレータが予測することができるのである。
【0053】
また、前述した第二実施例では、目標経路の生成後において、目標経路に対する田植機1の修正すべく自動走行する方向を表示し、かつ、田植機1が自律走行可能か否かを表示する自律走行位置表示ランプ45を具備する構成としており、これにより、田植機1の挙動(即ち、自律走行しているときに目標経路に対する修正方向)をオペレータがランプなどの表示装置により容易に認識することができるのである。
【0054】
また、田植機1が二つの目標経路と略等距離である位置している場合には、進行方向に応じて、図13中のP28乃至P31で示す点灯パターンとなり、また、田植機1が目標経路と目標経路の中間部に位置するような場合には、進行方向に応じて、図13中のZ1乃至Z4で示す点灯パターンで各ランプ45a・45b・45cを点灯するようにしている。
【0055】
さらに、図12に示す如く、田植機1の実際の走行状態においては、圃場のギャップ等を通過する際には、機体の振動により進行方向が前記θの角度を短時間で前後するような状況が発生する。この場合、表示ランプの点灯状況が短時間で変化したり、自律走行を許可するか否かの判断状況が短時間に変化するという問題が発生するため、本実施例においては、角度θの前後に±γの角度で不感帯を設けるようにしている。
例えば、目標経路方向と進行方向が成す角度がθ以上となる場合、自律走行位置表示ランプ45の点灯状態は目標経路方向と進行方向が一致していない表示に変化するが、自律走行を許可する状態は継続するようにし、さらに角度γ分の不感帯を超える角度まで進行方向の角度のズレが大きくなるときに初めて自律走行を不許可とするようにしている。
【0056】
また、この自律走行不許可の状態から、目標経路方向と進行方向の成す角度が小さくなるように変化していく場合には、目標経路方向と進行方向が成す角度がθ未満になるとき、自律走行位置表示ランプ45の点灯状態は目標経路方向と進行方向が同じである表示に変化するが、自律走行不許可である状態は継続するようにし、さらに角度γ分の不感帯を超える角度まで進行方向の角度のズレが小さくなるときに初めて自律走行を許可するようにしている。尚、前記角度γの値は、任意に設定することができる。
以上が、本発明の一実施例に係る自律走行位置表示ランプの点灯状況についての説明である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施例に係る田植機の全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく田植機の全体的な構成を示した平面図。
【図3】同じく田植機のメーターパネル部の一実施例の構成を示した斜視図。
【図4】同じく自律走行位置表示ランプ点灯時の流れを示すフロー図。
【図5】本発明の第一実施例にかかる自律走行位置表示ランプの表示パターンを示す模式図。
【図6】本発明の第二実施例にかかる自律走行位置表示ランプの表示パターンを示す模式図。
【図7】本発明の一実施例に係るGPS装置の全体的な構成を示した模式図。
【図8】本発明により生成する目標経路を示す模式図。
【図9】本発明の一実施例に係るティーチング作業の流れを示すフロー図。
【図10】本発明の一実施例に係る自動旋回走行時の流れを示すフロー図。
【図11】自動旋回時における田植機の挙動を示す模式図。
【図12】本発明の一実施例に係る目標経路方向と進行方向の関係を示す模式図。
【図13】本発明の一実施例に係る自律走行位置表示ランプの表示状況を示す模式図。
【符号の説明】
【0058】
1 田植機
45 自律走行位置表示ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS装置と、
ティーチング経路生成手段を備え、
前記GPS装置により計測される位置情報に基づいて、
前記ティーチング経路生成手段によりティーチング経路を生成し、さらに、
前記ティーチング経路生成手段により前記ティーチング経路に対して平行な目標経路を生成し、
該目標経路上を自律的に走行する農用作業車であって、
前記目標経路の生成後において、
該目標経路に対する前記農用作業車の機体位置の変位方向を表示し、かつ、
前記農用作業車が自律走行可能か否かを表示する表示部を具備すること、
を特徴とする農用作業車。
【請求項2】
GPS装置と、
ティーチング経路生成手段を備え、
前記GPS装置により計測される位置情報に基づいて、
前記ティーチング経路生成手段によりティーチング経路を生成し、さらに、
前記ティーチング経路生成手段により前記ティーチング経路に対して平行な目標経路を生成し、
該目標経路上を自律的に走行する農用作業車であって、
前記目標経路の生成後において、
該目標経路に対する前記農用作業車の修正すべく自動走行する方向を表示し、かつ、
前記農用作業車が自律走行可能か否かを表示する表示部を具備すること、
を特徴とする農用作業車。
【請求項3】
前記表示部が、
自律走行不可能な状態を表示するときには、
自律走行を禁止すること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載の農用作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−131880(P2008−131880A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320180(P2006−320180)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】