説明

配線基板及びその製造方法

【課題】クラックの発生を抑制してパッドの密着強度を高め、製品としての信頼性の向上を図り、ひいてはマザーボード等との接続信頼性の向上に寄与すること。
【解決手段】配線基板は、最外層の絶縁層12の開口部から露出するパッド11Pを備える。このパッド11Pは、配線基板からその表面が露出した第1の金属層21と、該金属層上に設けられた第2の金属層22と、該第2の金属層と基板内部のビア13との間に設けられた第3の金属層23とを有する。このパッド11Pの平面形状に対して、第2の金属層22の平面形状が小さく形成されている。第2の金属層22の周縁部は、その厚さと同じ分だけ、パッド11Pの周縁部から内側に後退している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板及びその製造方法に関し、より詳細には、半導体素子(チップ)等の電子部品の搭載用もしくは外部接続端子の接合用として供されるパッド(配線層の一部)を備えた配線基板及びその製造方法に関する。
【0002】
かかる配線基板は、半導体素子(チップ)等を搭載するパッケージとしての機能を果たすという点で、以下の記述では便宜上、「半導体パッケージ」ともいう。
【背景技術】
【0003】
配線基板において最外層の配線層にはその所定の箇所にパッドが画定されており、このパッドに、当該配線基板をマザーボード等に実装する際に使用される外部接続端子(はんだボールやピン等)や当該配線基板に搭載される半導体素子の電極端子等が接続されるようになっている。そして、このパッドの部分を除いて当該配線層が絶縁層(典型的には、樹脂層)によって覆われている。つまり、最外層の絶縁層の対応する部分が開口されており、その開口部からパッドが露出している。このパッドは、その表面が当該絶縁層(樹脂層)の表面と同一面となるように、もしくは当該絶縁層(樹脂層)の表面から基板内に後退した位置となるように形成されている。
【0004】
パッドは、その層構成として、一般に複数の金属層が積層された構造を有している。その典型的な層構成として、金(Au)層とニッケル(Ni)層からなる2層構造のものがある。このパッドのAu層は絶縁層(樹脂層)から露出しており、このAu層上のNi層には、ビア(基板内の樹脂層に形成されたビアホールに充填された導体で、各配線層間を接続するもの)が接続されるようになっている。このNi層は、ビアに含まれる金属(典型的には、銅(Cu))がAu層に拡散するのを防止するためのものである。
【0005】
しかしながら、Ni層は酸化され易いため、かかる2層(Au/Ni)構造のパッドを備えた配線基板、特に、「コアレス基板」と呼ばれているタイプのものを製造する際に不都合が生じる。このコアレス基板の基本的なプロセスは、先ず支持体としての仮基板を用意し、この仮基板上にパッドを形成し、次いで所要数のビルドアップ層(ビアホールを含む樹脂層、ビアホールの内部を含めた配線層)を順次形成した後、最終的に仮基板を除去するものである。つまり、パッドを形成した後、ビアが形成されて当該パッドのNi層に接続されることになる。このため、パッド形成後のNi層の表面には、Niの酸化物が形成されてしまう。その結果、酸化物が形成されたNi層にビアを接続させると、その酸化物の影響により、パッドとビアとの密着性が低下して、パッドとビアとの間の電気的接続信頼性が損なわれる。
【0006】
そこで、かかる不都合に対処する方法として、Ni層とビアとの間に、少なくともNi層よりも酸化され難い金属層(代表的にはCu層)を介在させる技術が知られている。この構造(Au/Ni/Cuの3層構造)によれば、パッドとビアとの間に酸化物が形成されないため、パッドとビアとの密着性向上を図ることができる。
【0007】
このようなパッドを備えた配線基板(特定的には、コアレス基板)においては、外力を受けた際、ビルドアップ層における配線層(Cu等の導体層)と樹脂層(エポキシ系樹脂等の絶縁層)との界面付近に応力が集中しやすくなるという問題がある。特に、パッドに外部接続端子等を接合する際に行うリフロー(240℃前後)等の熱履歴に晒されると、導体層と樹脂層の熱膨張係数が異なるため、その界面付近にはその熱膨張係数の違いに起因した相当の熱応力が集中する。最外層の配線層の一部に画定されるパッドについては、最外層の樹脂層の開口部から表面露出しており、パッドと樹脂層との接着面積が小さいために、応力集中が起きた際、特にパッドの端部においてクラックが発生し易い。
【0008】
図4(b)はそのクラックが発生している様子を例示したものである。図中、1はパッド、2は最外層の樹脂層、3は基板内部のビア(樹脂層2に形成されたビアホールに充填された導体)、20はパッド1に接合されたはんだボール(外部接続端子)を示す。パッド1は、はんだボール20が直接接合されるAu層1aと、このAu層1a上に設けられたNi層1bと、このNi層1bとビア3の間に設けられたCu層1cとを有している。熱履歴等に起因してパッド1と樹脂層2との界面に応力が集中すると、図示のように特にパッド1の端部(Cu層1cの外縁)にクラックCが発生し易い。かかるクラックが形成されると、パッドの密着強度が低下し、製品としての信頼性の低下を招くことになる。
【0009】
かかる不都合に対する対策の一例は、以下の特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された技術では、配線基板の少なくとも一方の面側の誘電体層の開口内に金属端子パッドを設け、このパッドを、上記開口内に露出面を有し、かつ該露出面の裏面で配線基板内部の導体層とビア接続されるパッド本体と、該パッド本体の外縁から配線基板の内層方向に上記開口の壁部に沿って形成される壁面導体部とから構成している。つまり、パッド本体に壁面導体部を付設することで、クラックの発生を防止している。
【特許文献1】特開2005−244108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したようにクラックの発生を防止するための技術(特許文献1)が提案されているが、この特許文献1に開示された技術では、パッド本体の外縁から基板の内層方向に特定の形状をもって壁面導体部が付加的に形成されている。そのため、一般的なパッドを形成するのに必要とされる通常のプロセスの他に、この壁面導体部を形成するための追加的なプロセスを必要とし、配線基板を製造する工程が全体として複雑化するといった不利があった。
【0011】
このような問題は、必ずしもコアレス基板に特有のものではなく、コア基板を有した形態の配線基板においても同様に起こり得る。すなわち、上述したように積層された複数の金属層からなるパッドを備えた配線基板であれば、上記の問題は同様に起こり得る。
【0012】
本発明は、かかる従来技術における課題に鑑み創作されたもので、クラックの発生を抑制してパッドの密着強度を高め、製品としての信頼性の向上を図り、ひいてはマザーボード等との接続信頼性の向上に寄与することができる配線基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
さらに本発明は、上記の目的を達成する配線基板におけるパッドを簡単に形成することができ、ひいてはプロセスの簡素化に寄与することができる配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した従来技術の課題を解決するため、本発明の一形態によれば、最外層の絶縁層の開口部から露出するパッドを備えた配線基板であって、前記パッドが、前記配線基板からその表面が露出した第1の金属層と、該第1の金属層上に設けられた第2の金属層と、該第2の金属層と基板内部のビアとの間に設けられた第3の金属層とを有し、前記第2の金属層の平面形状が前記パッドの平面形状に対して小さく形成されていることを特徴とする配線基板が提供される。
【0015】
この形態に係る配線基板の構成によれば、パッドを構成する第1、第2、第3の金属層のうち中間層の第2の金属層の平面形状をパッドの平面形状に対して小さく形成しているので、パッドの側面には段差状部分が形成され、パッドとその周囲の絶縁層との接着面積が相対的に大きくなる。これにより、熱履歴等に起因した応力がパッドと当該絶縁層の界面に及ぼされた場合でも、その段差状部分において応力が分散されて、パッドの端部に加わる応力を有効に緩和することができる。
【0016】
これにより、従来技術(図4(b))に見られたような、パッドの端部におけるクラックCの発生を抑制することができ、パッドの密着強度を高めることができる。これは、製品(配線基板)としての信頼性の向上に寄与し、ひいてはマザーボード等との接続信頼性の向上に寄与する。
【0017】
また、上述した従来技術の課題を解決するため、本発明の他の形態によれば、支持基材上に、所要の形状にパターン形成された開口部を有するレジスト層を形成する工程と、前記レジスト層の開口部から露出している前記支持基材上に、めっき法により、第1の金属層、第2の金属層及び第3の金属層を順次積層してパッドを形成する工程と、前記レジスト層を除去後、前記第2の金属層の周縁部をエッチングする工程と、前記支持基材上に、前記パッドを被覆するように絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層上に、前記第3の金属層に電気的に接続されるビアを含む配線層を形成する工程と、以降、所要の層数となるまで絶縁層と配線層を交互に積層した後、前記支持基材を除去する工程とを含むことを特徴とする配線基板の製造方法が提供される。
【0018】
この形態に係る配線基板の製造方法によれば、上記の形態に係る配線基板で得られた効果に加えて、さらに、第2の金属層の周縁部をエッチングするだけで、所要の段差状部分をその側面に備えたパッドが形成されるので、上記の特許文献1に開示されたプロセスと比べて、プロセスの簡素化を図ることができる。
【0019】
本発明に係る配線基板及びその製造方法の他の構成上の特徴及びそれに基づく有利な利点等については、以下に記述する発明の実施の形態を参照しながら説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0021】
(第1の実施形態…図1〜図4参照)
図1は本発明の第1の実施形態に係る配線基板(半導体パッケージ)の構成を断面図の形態で示したものである。
【0022】
本実施形態に係る配線基板10は、図示のように、複数の配線層11,13,15が絶縁層(具体的には、樹脂層)12,14を介在させて積層され、各絶縁層12,14に形成されたビアホールVH1,VH2に充填された導体(それぞれ配線層13,15を構成する材料の一部分)を介して層間接続された構造を有している。つまり、一般的なビルドアップ法を用いて作製される配線基板(支持基材としてのコア基板の両面もしくは片面に所要数のビルドアップ層を順次形成して積み上げていくもの)とは違い、支持基材を含まない「コアレス基板」の形態を有している。
【0023】
このコアレス基板の表層(図示の例では上側)には、保護膜として機能する絶縁層(ソルダレジスト層)16が、最外層の配線層(図示の例では配線層15)の所定の箇所に画定されたパッド15Pを除いて表面を覆うように形成されている。また、この絶縁層16が形成されている側と反対側(図示の例では下側)の面には、本発明を特徴付けるパッド11P(配線層11の所定の箇所に画定された部分)が露出しており、このパッド11Pは、その下面が絶縁層(樹脂層)12の下面と同一面となるように形成されている。
【0024】
パッド11Pは、図示のように金属層21と、金属層22と、金属層23とが順次積層された3層構造からなっている。絶縁層12から露出している側に配置される金属層21は、この露出している部分に外部接続端子もしくは半導体素子(チップ)等の電極端子が直接接合されるので、コンタクト性(はんだ付け性)の良好な材料から構成されるのが望ましい。例えば、金(Au)、金/パラジウム(Au/Pd)、錫(Sn)等を用いることができる。金属層21としてAu/Pdの2層構造を用いる場合には、Au層が外部に露出するよう、Au層とPd層を積層した構造とする。
【0025】
金属層22は、金属層21と金属層23の間に介在することで、ビア(ビアホールVH1に充填された導体)に含まれる金属(典型的には、銅(Cu))が金属層21に拡散するのを防止する役割を果たす。このような機能を実現するための材料としては、例えば、ニッケル(Ni)を用いることができる。
【0026】
金属層23は、この部分にビア(Cu)が直接接続されるので、良好な導電性を有し、かつ、その下層の金属層22よりも酸化され難い材料から構成されるのが望ましい。例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等を用いることができる。また、この金属層23は、その周囲の樹脂材(絶縁層12)と接する表面積が相対的に大きいので、樹脂との密着性が良好な材料から構成されるのが望ましい。これらの条件を考慮して、本実施形態では、金属層23の材料として銅(Cu)を用いている。
【0027】
そして、本発明の所期の目的を達成するため、Ni層(金属層22)のみをパッド11Pの径に対して小さく形成している。つまり、Ni層22の周縁部がパッド11Pの周縁部から内側に後退した位置となるようにNi層22を形成している。その後退させるべき量は、好適には、後述するようにNi層22の厚さと同じ程度に選定されている。
【0028】
このように本実施形態のパッド11Pの構造では、Ni層(金属層22)のみを他の金属層21,23の径より小径となるように形成しているので、このパッド11Pの側面には、図示のようにNi層22の周縁部近傍において段差状部分が形成される。このため、金属層21は、その側面と共に上面の一部が絶縁層(樹脂層)12に覆われ、金属層22は、その側面のみが絶縁層(樹脂層)12に覆われ、金属層23は、その側面と共に下面の一部及び上面の一部が絶縁層(樹脂層)12に覆われることになる。つまり、パッド11Pとその周囲の樹脂層(絶縁層12)との接着面積が相対的に大きくなっている。
【0029】
上側の絶縁層(ソルダレジスト層)16から露出するパッド15Pには、本配線基板10に搭載される半導体素子(チップ)等の電極端子がはんだバンプ等を介してフリップチップ接続され、下側の絶縁層(樹脂層)12から露出するパッド11Pには、本配線基板10をマザーボード等に実装する際に使用されるはんだボール等の外部接続端子が接合されるようになっている。つまり、上側の面はチップ搭載面、下側の面は外部接続端子接合面となっている。
【0030】
ただし、本配線基板10が使用される条件、状況等によっては、チップ搭載面と外部接続端子接合面を上下反対の形態としてもよい。この場合、上側のパッド15Pに外部接続端子が接合され、下側のパッド11Pに半導体素子等の電極端子が接続される。
【0031】
なお、本配線基板10の片面に形成されるソルダレジスト層16は、保護膜としての機能の他に、補強層としての役割も果たす。すなわち、本配線基板10は剛性の小さいコアレス基板であってその厚さも薄いため、基板の強度が少なからず低下することは否めないが、図示のように基板の片面にソルダレジスト層16を形成することで基板の補強を図っている。
【0032】
本実施形態に係る配線基板10を構成する各部材の具体的な材料や大きさ、厚さ等については、以下に記述するプロセスに関連させて具体的に説明する。
【0033】
次に、本実施形態に係る配線基板10(図1)を製造する方法について、その製造工程の一例を示す図2及び図3を参照しながら説明する。
【0034】
先ず最初の工程では(図2(a)参照)、仮基板としての支持基材30を用意する。この支持基材30の材料としては、後述するように最終的にはエッチングされることを考慮して、エッチング液で溶解可能な金属(典型的には、銅(Cu))が用いられる。また、支持基材30の形態としては、基本的には金属板もしくは金属箔で十分である。具体的には、例えば、プリプレグ(補強材のガラス布にエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させ、半硬化のBステージ状態にした接着シート)上に下地層及び銅箔を配置して加熱・加圧することにより得られた構造体(例えば、特開2007−158174号公報に開示された支持基材)を、支持基材30として好適に使用することができる。
【0035】
次の工程では(図2(b)参照)、支持基材30上に、パターニング材料を使用してめっき用レジストを形成し、所定の部分を開口する。この開口する部分は、形成すべき所要の配線層(特定的にはパッド)の形状に従ってパターニング形成される。パターニング材料としては、感光性のドライフィルム又は液状のフォトレジストを用いることができる。例えば、ドライフィルムを使用する場合には、支持基材30の表面を洗浄した後、ドライフィルムを熱圧着により貼り付け、このドライフィルムを、所要の配線層の形状にパターニングされたマスク(図示せず)を用いて紫外線(UV)照射による露光を施して硬化させ、さらに所定の現像液を用いて当該部分をエッチング除去し(開口部OP)、所要の配線層(パッド11P)の形状に応じためっきレジスト層31を形成する。液状のフォトレジストを用いた場合にも、同様の工程を経て、めっきレジスト層31を形成することができる。
【0036】
次の工程では(図2(c)参照)、めっきレジスト層31の開口部OPから露出している支持基材(Cu)30上に、この支持基材30を給電層として利用した電解めっきにより、配線層11を形成する。この配線層11の一部(所定の箇所に画定された部分)は、外部接続端子(図4のはんだボール20)を接合するためのパッド11P(もしくは半導体素子(チップ)を搭載するためのパッド)として機能する。
【0037】
パッド11Pが円形の場合、その大きさ(直径)は、外部接続端子接合用として用いる場合には200〜1000μm程度に選定され、チップ搭載用として用いる場合には50〜150μm程度に選定される。また、パッド11Pは、上述したように3層の金属層21,22,23が積層された構造を有しており、その最下層の金属層21を構成する材料としては、これに接触する支持基材30が最終的にエッチングされることを考慮して、そのエッチング液で溶解されない金属種を選定する。本実施形態では、支持基材30の材料として銅(Cu)を用いているので、これとは異なる金属として、良好なコンタクト性を確保できるという点を考慮し、金(Au)を使用している。
【0038】
具体的には、先ず支持基材(Cu)30上にAuフラッシュめっきを施して厚さ5nm以上(好適には40nm)のAu層を形成し、さらにAu層上にパラジウム(Pd)フラッシュめっきを施して厚さ5nm以上(好適には20nm)のPd層を形成して、Au/Pd層(金属層21)を形成する。次いで、このAu/Pd層(金属層21)上にニッケル(Ni)めっきを施して厚さ1〜10μm(好適には5μm)のNi層(金属層22)を形成し、さらにNi層(金属層22)上に銅(Cu)めっきを施して厚さ3〜20μm(好適には15μm)のCu層(金属層23)を形成する。ここに、金属層21の上層部分であるPd層は、その下層部分であるAu層の酸化を防止するために形成され、Ni層(金属層22)は、その上層の金属層23に含まれるCuが下層のAu/Pd層(金属層21)に拡散するのを防止するために形成されている。
【0039】
つまり、この工程では、Au/Pd層21とNi層22とCu層23の3層(厳密には4層)構造からなるパッド11P(配線層11)を形成している。そして、樹脂との密着性が良好なCu層23の厚さを比較的厚く形成している。なお、本工程ではAuとPdの2層構造からなる金属層21を形成しているが、Pd層については必ずしも形成する必要はなく、Au層のみからなる金属層21としてもよい。
【0040】
次の工程では(図2(d)参照)、めっきレジスト層31(図2(c))として用いたドライフィルムレジストを、例えば、水酸化ナトリウムやモノエタノールアミン系などのアルカリ性の薬液を用いて除去する。
【0041】
次の工程では(図2(e)参照)、支持基材(Cu)30上に形成されたパッド11P(Au/Pd層21、Ni層22、Cu層23)に対し、Ni層22(周縁部)のみを選択的にエッチングする。例えば、過水/硝酸系のエッチング液の入った処理槽中に処理対象物(図2(d)の構造体)を浸漬し、あるいはそのエッチング液を処理対象物にスプレーする(この後、水洗してエッチング液を洗い落とす)ことにより、Ni層22の周縁部のみを選択的に除去することができる。これにより、図示のようにNi層22の周縁部はパッド11Pの周縁部から内側に後退した位置となり、パッド11Pの側面(Ni層22の周縁部近傍)に段差状部分(図中、破線で囲んだAの部分)が形成される。
【0042】
Ni層22(周縁部)のエッチング量は、Ni層22の厚さ(1〜10μm、好適には5μm)に対して0.1〜3倍程度、好適には1倍(Ni層22の厚さと同じ)程度に選定されている。
【0043】
次の工程では(図3(a)参照)、Ni層22のみを選択エッチングしたパッド11P及び支持基材30上に、パッド11PのCu層23が露出するように絶縁層12を形成する。具体的には、先ず全面に、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等からなる絶縁層12を形成する。例えば、エポキシ系樹脂フィルムを支持基材30及び配線層11(パッド11P)上にラミネートし、この樹脂フィルムをプレスしながら130〜150℃の温度で熱処理して硬化させることにより、絶縁層12を形成することができる。
【0044】
次いで、この絶縁層12の所定の箇所(パッド11Pに対応する部分)に、CO2 レーザ、エキシマレーザ等による穴明け処理により、パッド11Pに達する開口部(ビアホールVH1)を形成する。なお、絶縁層12は、感光性樹脂膜をフォトリソグラフィによりパターニングして形成してもよいし、あるいは、スクリーン印刷により開口部が設けられた樹脂膜をパターニングして形成してもよい。
【0045】
次の工程では(図3(b)参照)、ビアホールVH1が形成された絶縁層12上に、ビアホールVH1を充填して(ビアの形成)配線層11(パッド11P)に接続される所要の配線層(パターン)13を形成する。この配線層13は、例えば、セミアディティブ法により形成される。具体的には、先ず、無電解めっきやスパッタリング等により、ビアホールVH1の内部を含めて絶縁層12上に銅(Cu)のシード層(図示せず)を形成した後、形成すべき配線層13の形状に応じた開口部を備えたレジスト膜(図示せず)を形成する。次に、このレジスト膜の開口部から露出しているシード層(Cu)上に、このシード層を給電層として利用した電解銅(Cu)めっきにより、導体(Cu)パターン(図示せず)を形成する。さらに、レジスト膜を除去した後に、導体(Cu)パターンをマスクにしてシード層をエッチングすることで、所要の配線層13が得られる。なお、上記のセミアディティブ法以外に、サブトラクティブ法など各種の配線形成方法を用いることも可能である。
【0046】
次の工程では(図3(c)参照)、図3(a)及び(b)の工程で行った処理と同様にして、絶縁層と配線層を交互に積層する。図示の例では、簡単化のため、1層の絶縁層と1層の配線層が積層されている。すなわち、絶縁層(樹脂層)12及び配線層13上に絶縁層(樹脂層)14を形成し、この絶縁層14に、配線層13のパッド(図示せず)に達するビアホールVH2を形成した後、このビアホールVH2の内部を含めて絶縁層14上に所要の配線層(パターン)15を形成する。この配線層15は、本実施形態では最外層の配線層を構成する。
【0047】
さらに、この最外層の配線層15の所定の箇所に画定されるパッド15Pを除いてその表面(絶縁層14及び配線層15)を覆うようにソルダレジスト層16を形成する。このソルダレジスト層16は、図2(b)の工程で行った処理と同様の手法を用いて形成することができる。すなわち、感光性のドライフィルムレジストをラミネートし、又は液状のフォトレジストを塗布し、当該レジストを所要の形状にパターニングすることでソルダレジスト層16を形成することができる。これによって、ソルダレジスト層16の開口部からパッド15Pが露出する。
【0048】
このパッド15Pには、搭載される半導体素子等の電極端子や、マザーボード等に実装する際に使用されるはんだボールやピン等の外部接続端子が接合されるので、コンタクト性を良くするためにAuめっきを施しておくのが望ましい。その際、パッド(Cu)15P上に無電解Niめっきを施してから無電解Auめっきを施す。つまり、Ni層とAu層の2層構造からなる導体層(図示せず)をパッド15P上に形成しておく。
【0049】
最後の工程では(図3(d)参照)、仮基板として用いた支持基材30(図3(c))を、パッド11P、樹脂層12、パッド15P及びソルダレジスト層16に対して選択的に除去する。例えば、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、過硫酸アンモニウム水溶液等を用いたウェットエッチングにより、パッド11P(その表層部にAu/Pd層21が形成されている)、樹脂層12、パッド15P(その表層部にAu層が形成されている)及びソルダレジスト層16に対して、支持基材(Cu)30を選択的にエッチングして除去することができる。
【0050】
以上の工程により、本実施形態の配線基板10(図1)が製造されたことになる。
【0051】
以上説明したように、第1の実施形態に係る配線基板(半導体パッケージ)10及びその製造方法(図1〜図3)によれば、パッド11Pを構成する3層の金属層21,22,23のうち中間層のNi層(金属層22)のみをパッド11Pの径に対して小さく形成しているので、パッド11Pの側面(Ni層22の周縁部近傍)に段差状部分が形成され、このパッド11Pと周囲の樹脂層(絶縁層12)との接着面積が相対的に大きくなる。これにより、熱履歴等に起因した応力がパッド11Pと樹脂層12の界面に及ぼされた場合でも、その段差状部分において応力が分散されるので、パッド11Pの端部(Cu層23の外縁)に加わる応力を有効に緩和することができる。
【0052】
その結果、従来技術(図4(b))に見られたような、パッドの端部におけるクラックCの発生を抑制することができ、パッド11Pの樹脂層12に対する密着強度を高めることができる。このことは、製品(配線基板10)としての信頼性の向上につながり、ひいては、配線基板10に半導体素子等を搭載もしくは配線基板10をマザーボード等に実装する際の接続信頼性の向上に寄与する。
【0053】
また、本実施形態に係る製造方法によれば、Ni層22の周縁部のみを選択的にエッチングするだけで(図2(e)の工程)、所要の段差状部分Aを有したパッド11Pが形成されるので、特許文献1に開示された技術(通常のパッド形成プロセスの他に、壁面導体部を形成するための追加的なプロセスを必要とする技術)と比べて、プロセスの簡素化を図ることができる。
【0054】
図4は、発明技術の配線基板(特定的には図1の配線基板10)によって得られる「クラック抑制」の効果を示したものである。図中、(a)は配線基板10におけるパッド11Pの近傍部分の拡大図であり、図示の例では、このパッド11Pに外部接続端子としてのはんだボール20を接合した状態を示している。また、(b)は現状技術のパッド1の拡大図であり、同様に、このパッド1(Au層1a/Ni層1b/Cu層1c)にはんだボール20を接合した状態を示している。
【0055】
現状技術では(図4(b))、熱履歴等に起因してパッド1と樹脂層2との界面に応力が集中すると、パッド1の端部(Cu層1cの外縁)にクラックCが発生している。これに対し、発明技術(図4(a))では、パッド11Pの側面に段差状部分Aが形成され、このパッド11Pと樹脂層(絶縁層12)との接着面積が相対的に大きいため、熱履歴等に起因する応力が界面に集中した場合でも、段差状部分Aで応力が分散されて、パッド11Pの端部(Cu層23の外縁)に加わる応力が緩和され、クラックの発生を抑制している。
【0056】
(第2の実施形態…図5〜図7参照)
図5は本発明の第2の実施形態に係る配線基板(半導体パッケージ)の構成を断面図の形態で示したものである。
【0057】
本実施形態に係る配線基板10aは、第1の実施形態に係る配線基板10(図1)の構成と比べて、下側の絶縁層(樹脂層)12aから露出しているパッド11Pの下面(金属層21の下面)が、当該絶縁層(樹脂層)12aの下面から基板内に後退した位置となるように形成されている(つまり、樹脂層12aの当該部分に凹部DPが形成され、この凹部DPにパッド11Pが露出している)点で相違している。他の構成については、第1の実施形態の配線基板10と同様であるのでその説明は省略する。
【0058】
本実施形態に係る配線基板10aは、一例として図6及び図7に示す製造方法により製造することができる。図6、図7の各工程で行う処理は、基本的には、第1の実施形態に係る製造方法の各工程(図2、図3)で行った処理と同様である。重複的な説明を避けるため、相違する処理についてのみ説明する。
【0059】
先ず、図2(a)及び(b)の工程で行った処理と同様にして、仮基板としての支持基材30を用意し(図6(a))、この支持基材30上に、所定の部分に開口部OPを備えためっきレジスト層31を形成する(図6(b))。
【0060】
次の工程では(図6(c)参照)、めっきレジスト層31の開口部OPから露出している支持基材(Cu)30上に、この支持基材30を給電層として利用した電解めっきにより、金属層24(本実施形態では、犠牲導体層として機能する)を形成し、さらにこの金属層24上に、図2(c)の工程で行った処理と同様にして、Au/Pd層21、Ni層22及びCu層23を順次積層してパッド11P(配線層11)を形成する。パッド11Pの大きさ(直径)については、第1の実施形態の場合と同じである(外部接続端子接合用:200〜1000μm程度、チップ搭載用:50〜150μm程度)。
【0061】
この工程で形成する最下層の金属層(犠牲導体層)24を構成する材料としては、これに接触する支持基材30と共に最終的にエッチングされることを考慮して、そのエッチング液で溶解され得る金属種、この場合、銅(Cu)を選定する。また、形成すべきCu層24の厚さは、要求される凹部DP(図5)の深さに応じて決定され、例えば、1〜30μm程度(好適には20μm程度)の厚さに形成される。
【0062】
次いで、図6(d)、図6(e)、図7(a)、図7(b)及び図7(c)の各工程において、それぞれ図2(d)、図2(e)、図3(a)、図3(b)及び図3(c)の工程で行った処理と同様の処理を行う。
【0063】
最後の工程では(図7(d)参照)、図3(d)の工程で行った処理と同様の手法を用いて、支持基材(Cu)30及び犠牲導体層(Cu層)24を、パッド11P(その表層部にAu/Pd層21が形成されている)、樹脂層12a、パッド15P(その表層部にAu層が形成されている)及びソルダレジスト層16に対して選択的にエッチングし、除去する。これによって、図示のように除去したCu層24の厚さに応じた凹部DPが形成され、この凹部DPにパッド11Pの最下層(Au/Pd層21)が露出する。つまり、下側の絶縁層(樹脂層)12aから露出しているパッド11Pの下面(Au/Pd層21の下面)が、当該樹脂層12aの下面から基板内に後退した位置となる。
【0064】
以上の工程により、本実施形態の配線基板10a(図5)が製造されたことになる。
【0065】
この第2の実施形態に係る配線基板(半導体パッケージ)10a及びその製造方法(図5〜図7)においても、その基本的な構成及びプロセスは第1の実施形態(図1〜図3)の場合と同じであるので、同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
上述した第1、第2の各実施形態に係る配線基板10,10aには、それぞれ使用される条件、状況等に応じて、当該配線基板の一方の面から露出するパッドに半導体素子(チップ)等の電極端子が接合され、他方の面から露出するパッドに外部接続端子が接合される。図8はその場合の構成例を示したものである。
【0067】
図8の例では、第1の実施形態に係る配線基板10に半導体素子(チップ)41を搭載した状態、すなわち、半導体装置50(50a)として構成した場合の断面構造を示している。半導体チップ41は、図中(a)に示すように配線基板10のパッド15Pが形成されている側の面に搭載してもよいし(この場合、反対側の面のパッド11Pにはんだボール20が接合される)、あるいは、図中(b)に示すように配線基板10のパッド11Pが形成されている側の面に搭載してもよい(この場合、反対側の面のパッド15Pにはんだボール20が接合される)。なお、42は半導体チップ41の電極端子、43は配線基板10と搭載した半導体チップ41との間に充填されたアンダーフィル樹脂を示す。
【0068】
図8の例では、第1の実施形態に係る配線基板10に半導体チップ41を搭載した状態を例示しているが、かかる構成に限定されることなく、第2の実施形態に係る配線基板10aについても同様に半導体チップ41を搭載できることはもちろんである。
【0069】
また、図示の例では、パッド11P(もしくは15P)にはんだボール20を接合したBGA(ボール・グリッド・アレイ)の形態としているが、当該パッドにピンを接合したPGA(ピン・グリッド・アレイ)や、当該パッド自体を外部接続端子としたLGA(ランド・グリッド・アレイ)の形態としてもよい。
【0070】
また、上述した第1、第2の各実施形態では、配線基板10,10aの形態として支持基材を含まない「コアレス基板」を使用した場合を例にとって説明したが、本発明の要旨からも明らかなように、コアレス基板に限定されないことはもちろんである。要は、積層された複数の金属層からなるパッドを備えた配線基板であれば、コア基板を有した配線基板についても本発明は同様に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る配線基板(半導体パッケージ)の構成を示す断面図である。
【図2】図1の配線基板の製造工程の一例(その1)を示す断面図である。
【図3】図2の製造工程に続く製造工程(その2)を示す断面図である。
【図4】発明技術の配線基板によって得られる「クラック抑制」の効果を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る配線基板(半導体パッケージ)の構成を示す断面図である。
【図6】図5の配線基板の製造工程の一例(その1)を示す断面図である。
【図7】図6の製造工程に続く製造工程(その2)を示す断面図である。
【図8】第1の実施形態に係る配線基板に半導体素子を搭載したときの構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
10,10a…配線基板(半導体パッケージ)、
11,13,15…配線層、
12,12a,14…樹脂層(絶縁層)、
11P,15P…パッド、
16…ソルダレジスト層(絶縁層)、
20…はんだボール(外部接続端子)、
21,22,23…(パッドを構成する)金属層、
24…金属層(犠牲導体層)、
41…半導体素子(チップ)、
50,50a…半導体装置、
A…パッド側面の段差状部分、
DP…凹部、
VH1,VH2…ビアホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層の絶縁層の開口部から露出するパッドを備えた配線基板であって、
前記パッドが、前記配線基板からその表面が露出した第1の金属層と、該第1の金属層上に設けられた第2の金属層と、該第2の金属層と基板内部のビアとの間に設けられた第3の金属層とを有し、
前記第2の金属層の平面形状が前記パッドの平面形状に対して小さく形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記第2の金属層の周縁部は、該第2の金属層の厚さと同じ分だけ、前記パッドの周縁部から内側に後退していることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1の金属層はAuもしくはAu/Pdからなり、前記第2の金属層はNiからなり、前記第3の金属層はCuからなることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記絶縁層の開口部から露出する前記パッドの第1の金属層の表面が、前記絶縁層の表面から基板内に後退した位置にあることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
支持基材上に、所要の形状にパターン形成された開口部を有するレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層の開口部から露出している前記支持基材上に、めっき法により、第1の金属層、第2の金属層及び第3の金属層を順次積層してパッドを形成する工程と、
前記レジスト層を除去後、前記第2の金属層の周縁部をエッチングする工程と、
前記支持基材上に、前記パッドを被覆するように絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に、前記第3の金属層に電気的に接続されるビアを含む配線層を形成する工程と、
以降、所要の層数となるまで絶縁層と配線層を交互に積層した後、前記支持基材を除去する工程とを含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項6】
支持基材上に、所要の形状にパターン形成された開口部を有するレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層の開口部から露出している前記支持基材上に、めっき法により、犠牲導体層を形成し、さらに第1の金属層、第2の金属層及び第3の金属層を順次積層してパッドを形成する工程と、
前記レジスト層を除去後、前記第2の金属層の周縁部をエッチングする工程と、
前記支持基材上に、前記パッドを被覆するように絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層上に、前記第3の金属層に電気的に接続されるビアを含む配線層を形成する工程と、
以降、所要の層数となるまで絶縁層と配線層を交互に積層した後、前記支持基材及び前記犠牲導体層を除去する工程とを含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記第2の金属層の周縁部のみをエッチングする工程において、該第2の金属層の厚さと同じ分だけエッチングすることを特徴とする請求項5又は6に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−67888(P2010−67888A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234622(P2008−234622)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】